足底疣贅(足裏のいぼ)完全ガイド:原因・症状から日本皮膚科学会推奨の治療法、予防策まで専門医が解説
皮膚科疾患

足底疣贅(足裏のいぼ)完全ガイド:原因・症状から日本皮膚科学会推奨の治療法、予防策まで専門医が解説

足の裏にできた硬いできもの、歩くたびに感じる痛み。「もしかして、いぼ(疣贅)?」と悩んでいませんか。足底疣贅(そくていゆうぜい)、一般に「足裏のいぼ」として知られるこの皮膚疾患は、多くの方が経験する一般的な問題ですが、魚の目やタコと見分けがつきにくく、放置すると治りにくくなることもあります1。しかし、正しい知識を持ち、適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、日本皮膚科学会の診療ガイドライン2をはじめとする最新の医学的知見に基づき、足底疣贅の原因から症状、正確な診断方法、効果的な治療法、そして日常生活での予防策に至るまで、包括的かつ分かりやすく解説します。皆様の不安を少しでも和らげ、適切な一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。

要点まとめ

  • 足底疣贅(足裏のいぼ)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)が足裏の小さな傷から感染してできる良性の皮膚病変です2, 3
  • 表面のザラつきや黒い点々(血栓化した毛細血管)、皮紋の途絶が特徴で、芯のある「魚の目」とは異なります4, 5。自己判断は禁物です。
  • 治療の第一選択は、日本皮膚科学会が強く推奨する液体窒素凍結療法です2。サリチル酸外用(スピール膏™など)も有効な選択肢で、通常これらは健康保険が適用されます6, 7
  • 市販薬でのセルフケアも可能ですが、効果が限定的であったり、悪化させたりするリスクも伴います。改善しない場合は速やかに皮膚科専門医に相談することが、早期治癒への鍵となります。

1. 足底疣贅(足裏のいぼ)とは何か?

1.1. 定義と医学的特徴

足底疣贅とは、ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus: HPV)の感染が原因で、足の裏(足底)に形成される、硬く盛り上がった良性の皮膚病変を指します2。特に体重がかかりやすい、かかとや足指の付け根によく発生します。見た目の特徴としては、表面がザラザラしており、中心部に黒い点状のものが見られることがよくあります。これは、いぼの内部で血栓(血の塊)ができた毛細血管であり、「いぼの目」とも呼ばれ、診断の重要な手がかりとなります4, 5。歩行時や患部を圧迫した際に痛みを伴うことが多いですが、痛みが全くない場合もあります。

1.2. 尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)との関連

一般的に「ウイルス性のいぼ」と言われるものの多くは、医学的には尋常性疣贅と呼ばれます。足底疣贅は、この尋常性疣贅が足の裏にできたものです。足の裏は体重によって常に圧迫され、角質が厚くなりやすいという特殊な環境にあるため、いぼが外側に大きく盛り上がらず、皮膚の内側に向かって深く増殖する傾向があります。これが痛みの原因となりやすいのです2

2. 足底疣贅の主な原因:ヒトパピローマウイルス(HPV)

2.1. ヒトパピローマウイルス(HPV)とは?

HPVは、皮膚や粘膜に感染するDNAウイルスで、現在までに200種類以上の型が発見されています3。このウイルスは非常にありふれたもので、多くの人が生涯のうちに一度は感染すると言われています。HPVの型によって引き起こされる病気は異なり、足底疣贅のような皮膚のいぼのほか、尖圭コンジローマや、子宮頸がんなどの原因となる型も存在します8。足底疣贅は、これらのがんを引き起こすタイプのHPVとは異なる型が原因です。

2.2. 足底疣贅を引き起こす主なHPVの型

足底疣贅の原因となりやすいHPVの型は、主に1型、2型、4型、27型、57型などです2, 3。これらの型は皮膚に感染するタイプであり、特に足底の厚い角質層に親和性があると考えられています。

2.3. 感染経路とメカニズム

HPVは、皮膚にできたごく小さな傷やひび割れから侵入することで感染します1。感染からいぼが目に見えるようになるまでの潜伏期間は、数週間から数ヶ月、時には1年以上と個人差があります3。特に、プールサイド、公衆浴場の脱衣所、ジムのシャワー室など、多くの人が裸足で歩く高温多湿な環境は、ウイルスが生存しやすく、感染のリスクが高まる場所です。また、既にできたいぼを自分でいじったり、削ったりすると、ウイルスが周囲に飛び散り、他の場所にも感染を広げてしまう「自己接種」が起こる可能性があります。

2.4. 感染リスクを高める要因

以下のような要因があると、HPVに感染しやすくなったり、いぼが発症しやすくなったりします。

  • 皮膚バリア機能の低下: アトピー性皮膚炎、乾燥肌、ささくれ、靴ずれなど、皮膚に傷がつきやすい状態。
  • 免疫力の低下: 疲労、ストレス、睡眠不足、他の疾患(例:糖尿病)、あるいは免疫抑制剤の使用などにより、体の抵抗力が落ちている状態。
  • 生活習慣: 裸足で公共の場所を歩く機会が多い、通気性の悪い靴を長時間履いて足が蒸れやすいなど。
  • 年齢: 子供や若者は、免疫が未熟であったり、活発に活動して足に傷ができやすかったりするため、感染リスクが高い傾向にあります。

3. 足底疣贅の症状と見分け方

3.1. 代表的な症状

足の裏に以下のような特徴を持つできものがあれば、足底疣贅の可能性があります。

  • 硬い隆起: 足の裏に硬いしこりができ、徐々に大きくなる。
  • 表面の性状: 表面がザラザラ、ブツブツしており、時にカリフラワーのような見た目をしている1
  • 黒い点々: 中心部に黒い点(出血による血栓)が見られる。これは魚の目には見られない、いぼの重要な特徴です4, 1
  • 痛み: 歩行時や、患部を指でつまんだり、真上から垂直に押したりすると痛みを感じる(点状圧痛)。
  • 皮紋(ひもん)の途絶: いぼができている部分では、指紋や足紋のような皮膚の細かい溝(皮紋)が途切れている。

これらの症状は、ウイルスによって異常増殖した皮膚細胞と、それに栄養を供給する毛細血管によって引き起こされます。

3.2. 子供の足底疣贅の特徴

子供の足底疣贅には、深く食い込み、痛みが強い「ミルメシア型(Myrmecia type)」と呼ばれるタイプが見られることがあります5。このタイプは表面が比較的滑らかでドーム状に盛り上がることもあり、一見して典型的ないぼとは分かりにくい場合があります。子供は痛みをうまく表現できないこともあるため、保護者が歩き方の変化(びっこを引くなど)に気づくことが早期発見のきっかけになることも少なくありません。学校での体育の授業などに支障をきたす前に、早めに皮膚科で相談することが大切です。

3.3. 自己チェックのポイントと注意点

ご自身の足の裏を定期的に観察し、上記のような症状がないか確認しましょう。もし、いぼのようなものを見つけても、自分でカッターや爪切りで削ったり、針でつついたりすることは絶対にやめてください1。ウイルスを周囲に広げたり、細菌感染を起こしたりして、症状を悪化させる原因となります。

4. 鑑別診断:これは本当にいぼ?魚の目・タコとの違い

足底疣贅は、魚の目(鶏眼)やタコ(胼胝)としばしば混同されます。しかし、原因も治療法も全く異なるため、正確な鑑別が非常に重要です4, 5。自己判断で魚の目用の市販薬をいぼに使用すると、かえって悪化させることがあります。

表:足底疣贅・魚の目・タコの比較
特徴 足底疣贅 魚の目 (鶏眼) タコ (胼胝)
原因 HPVウイルス感染1 持続的な機械的圧迫・摩擦4 持続的な機械的圧迫・摩擦4
表面 ザラザラ、点状出血あり4 比較的平滑、中心に半透明の硬い芯5 平滑で厚く硬い角質の肥厚4
痛み 垂直圧で痛むことが多い、つまむと痛い 芯の部分を押すと鋭い痛み4 通常痛みは少ないか、ない。圧迫により鈍痛の場合も
出血 表面を削ると点状出血しやすい 通常出血しない 通常出血しない
皮紋 途絶する 維持される 維持される
好発部位 足裏の体重がかかる部位、時に非荷重部にも 特定の骨突起部の上など、圧迫を受けやすい部位 広範囲の圧迫部位
多発性 あり(モザイク状になることも) 通常単発 単発または広範囲

皮膚科では、ダーモスコピー検査などでこれらの違いを正確に鑑別します。

5. 皮膚科での診断と検査

5.1. 問診と視診

診察では、まず医師が症状について詳しく尋ねます(いつから、どんな症状か、痛みはあるかなど)。その後、患部を直接見て、形状、色、表面の状態、黒い点の有無、皮紋の状態などを詳細に観察します。多くの場合、この視診によって診断が可能です2

5.2. ダーモスコピー検査

ダーモスコピー検査は、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使って皮膚を観察する、痛みのない検査です。この検査により、足底疣贅に特徴的な点状の出血や、乳頭腫と呼ばれる構造をはっきりと確認することができます。これにより、魚の目やタコ、あるいは稀ですが皮膚がんなどの悪性腫瘍との鑑別がより正確になります。

5.3. 病理組織検査(必要な場合)

診断が非常に難しい場合や、悪性の可能性が否定できない場合には、組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく調べる病理組織検査が行われることがあります。ただし、典型的な足底疣贅の診断でこの検査が必要になることは稀です2

6. 足底疣贅の治療法:日本皮膚科学会ガイドラインに基づく選択肢

治療の基本方針は、いぼの組織を物理的または化学的に破壊・除去すること、あるいは体の免疫反応を活性化させてウイルスを排除することです。どの治療法を選択するかは、いぼの大きさや数、場所、患者さんの年齢やライフスタイル、痛みの許容度、そして保険が適用されるかどうかなどを総合的に考慮して、皮膚科医が決定します。いぼの治療は根気が必要な場合が多いことを理解しておくことが大切です9, 1。ここでは、日本皮膚科学会の「尋常性疣贅診療ガイドライン2019」2で示された推奨度を明記しながら解説します。

6.1. 液体窒素凍結療法 (推奨度A)

概要: マイナス196℃の超低温である液体窒素を綿棒やスプレーで患部に当て、いぼ組織を凍らせて壊死させる治療法です。日本で最も一般的に行われています7, 9

  • メカニズム: 細胞を急速に凍結させ、その後の融解過程で細胞を破壊します。
  • 手順: まず、硬くなった角質をメスなどで削り(デブリードマン)、液体窒素を数秒から数十秒間、患部が白くなるまで当てます。これを数回繰り返すこともあります6, 7
  • 治療間隔: 通常1~3週間ごとに行います6, 7
  • 痛みと副作用: 治療中および治療後数日間、ヒリヒリとした痛みを伴います。水ぶくれや血豆(血疱)ができることもありますが、これは治療が効いている証拠でもあります。痛みには個人差が大きいです。
  • 保険適用: 通常、健康保険が適用されます。
  • 専門家の声(例): 大木皮膚科のウェブサイトでは、角質をしっかり削ってから液体窒素療法を行う「いぼ剥ぎ変法」など、効果を高めるための工夫が紹介されており、臨床現場での実践的なアプローチがうかがえます6, 10

6.2. サリチル酸外用 (推奨度A)

概要: サリチル酸を含む絆創膏(スピール膏™など)や塗り薬を患部に適用し、いぼの硬い角質を軟化させて剥がれやすくする治療法です。液体窒素療法と併用されることも多くあります7

  • メカニズム: サリチル酸の角質溶解作用により、ウイルスに感染した細胞を物理的に除去します。
  • 使用方法: いぼの大きさに合わせて薬剤を貼り、数日間固定します。交換する際に、白くふやけた角質を清潔な器具で除去します。
  • 注意点: 周囲の正常な皮膚に付着すると、炎症や痛みを引き起こすことがあります。糖尿病や血行障害のある方は、自己判断での使用を避け、必ず医師に相談してください。
  • 保険適用: 医師が処方するスピール膏™などは保険適用される場合があります。市販薬も多数あります。
  • 国際的エビデンス: 複数の研究で、サリチル酸はプラセbo(偽薬)よりも有効であることが示されており11, 12、液体窒素療法との併用で効果が高まる可能性も報告されています11

6.3. ヨクイニン内服 (推奨度B)

概要: ハトムギの種子である「薏苡仁(よくいにん)」を原料とする漢方薬です。いぼに対する体の免疫力を高める効果が期待されます7, 6

  • メカニズム: 正確な作用機序は未だ完全には解明されていませんが、ウイルスの増殖を抑えたり、ウイルスに対する体の免疫反応を高めたりすると考えられています。
  • 対象: 特にいぼが多発している場合や、子供、痛みを伴う治療が難しい場合に選択されることがあります7
  • 効果と期間: 効果が現れるまでには、通常2~3ヶ月以上の内服継続が必要です。
  • 保険適用: 医師による処方の場合、保険適用となります。

6.4. その他の治療法

上記の標準的な治療で効果が見られない難治性の場合や、特定の状況下で以下のような治療法が検討されることがあります。多くは保険適用外(自費診療)となるか、実施できる医療機関が限られます。

  • レーザー治療(炭酸ガスレーザー、色素レーザーなど): いぼ組織を蒸散させたり、栄養血管を破壊したりします。効果は期待できますが、費用が高額になることが多く、傷跡(瘢痕)が残るリスクもあります9, 6。国際的なレビューでは、パルス色素レーザー(PDL)は再発率が低いとの報告もあります13
  • モノクロロ酢酸/トリクロロ酢酸外用: 強酸性の薬剤でいぼを化学的に腐食させます。難治性のいぼに有効な場合がありますが、取り扱いには専門的な知識が必要です7, 6
  • 外科的切除: いぼをメスで切り取る方法です。足の裏では術後の傷跡が痛みの原因となるリスクや、再発の可能性もあるため、通常は第一選択にはなりません2, 6

6.5. 治療法の選択における注意点

治療法の選択は、自己判断で行わず、必ず皮膚科専門医と相談してください。効果には個人差があり、完治まで根気強い通院が必要な場合が多いことを理解しましょう。また、費用や保険適用については、治療を始める前に医療機関に確認することが大切です。

7. 市販薬(OTC医薬品)によるセルフケアとその限界

7.1. 代表的な市販薬

薬局で購入できる代表的な市販薬には、サリチル酸を含む絆創膏タイプ(スピール膏™など)や液体タイプ(イボコロリ™など)があります。

7.2. 市販薬のメリット・デメリット

メリットは手軽に入手できる点ですが、デメリットも多く存在します。特に、診断が間違っている(いぼではなく魚の目など)場合、効果がないばかりか症状を悪化させる危険性があります1。また、正しい使い方をしないと健康な皮膚を傷つけ、かぶれや炎症を引き起こす可能性もあります6

7.3. 市販薬を使用する際の注意点

市販薬の使用は、小さないぼが一つだけあるようなごく初期の場合に限定し、数週間使用しても改善しない場合や、悪化する兆候が見られた場合は、すぐに使用を中止して皮膚科を受診してください。糖尿病や血行障害のある方、アレルギー体質の方、そして特にお子様への使用は、自己判断せず必ず医師や薬剤師に相談することが重要です。

8. 足底疣贅のセルフケアと日常生活での注意点

8.1. 患部の清潔保持と保護

毎日足を優しく洗い、清潔に保つことが基本です。また、患部を刺激から守るために、保護パッドや絆創膏を貼ることも有効です。

8.2. いぼを悪化させないために

最も重要なことは、いぼを自分でいじったり、削ったり、無理に剥がそうとしないことです1。これらの行為はウイルスを拡散させ、いぼを増やしたり、細菌感染を引き起こしたりする原因となります。

8.3. 靴選びと足の環境

足に合った、通気性の良い靴を選びましょう。同じ靴を毎日履かず、ローテーションさせて内部を乾燥させることも大切です。靴下は毎日清潔なものに交換し、吸湿性の良い綿素材などが推奨されます。

8.4. 他人への感染を防ぐために

いぼに触れた後は、必ず石鹸で手を洗いましょう。タオルやスリッパ、爪切りなどを家族と共有するのは避けてください。プールや公衆浴場、温泉など、裸足になる公共の場所では、自分専用のサンダルを使用し、利用後は足をよく洗って乾燥させることが感染拡大防止につながります。

9. 足底疣贅の再発予防策

一度治っても、再発することがあるのが足底疣贅の厄介なところです。以下の点を心がけ、再発を防ぎましょう。

  • 皮膚のバリア機能を高める: 足を乾燥させすぎないように保湿ケアを行い、小さな傷や靴ずれは放置せず早めに手当てをしましょう。
  • 免疫力を維持する: バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけ、体の抵抗力を高く保つことが、ウイルスに対する最も基本的な防御策です。
  • 公共の場での注意: プールやジムなど、裸足になる場所では引き続き注意を払い、自分専用の履物を使用しましょう。

10. いつ皮膚科を受診すべきか?

以下のような場合は、自己判断をせずに皮膚科専門医に相談することをお勧めします。

  • 足の裏にできたものが、いぼか魚の目か自分で判断できない場合。
  • いぼが痛む、急に大きくなる、数が増える、出血するなどの変化が見られる場合。
  • 市販薬を2~3週間使用しても改善しない、または悪化した場合。
  • 糖尿病や免疫不全などの基礎疾患がある方。
  • お子様の足にいぼができた場合(特に痛みを訴えたり、数が多かったりする場合)。

迷ったら専門医に相談することが、治療期間の短縮と確実な治癒への近道です。

健康に関する注意事項

  • 本記事に記載された情報は、一般的な医学的知見に基づくものであり、個々の診断や治療に代わるものではありません。
  • 足の裏に異常を発見した場合は、自己判断で処置を行わず、必ず皮膚科専門医の診察を受けてください。
  • 市販薬の使用、特に糖尿病や血行障害のある方、妊娠中の方、お子様への使用は、事前に医師または薬剤師に相談してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 足底疣贅は自然に治りますか?

A1. 小さなものであれば、数ヶ月から数年かけて自然に治癒することもあります。しかし、その間に大きくなったり、数が増えたり、痛みが強くなったりする可能性も十分にあります。特に足の裏のいぼは角質が厚く、体重による刺激も加わるため治りにくい傾向にあります。日本皮膚科学会のガイドラインでも、無治療での治癒率は低いとされており2、積極的な治療が推奨されています。例えば、ある研究では13週間での自然治癒率は8%程度であったとの報告もあります10

Q2. 子供の足底疣贅は大人と治療法が違いますか?

A2. 基本的な治療法(液体窒素凍結療法、サリチル酸外用など)は大人と同じです。しかし、子供は大人よりも痛みに敏感なことが多いため、治療の強さを加減したり、痛みの少ない治療法を選択したりすることがあります。例えば、副作用が少なく試しやすいヨクイニンの内服や、活性型ビタミンD3軟膏の外用などが選択肢となることがあります6, 7。いずれにせよ、医師がお子様の性格やいぼの状態を考慮し、保護者と相談しながら最適な治療法を決定します。

Q3. 治療中の痛みはどの程度ですか?

A3. 治療法によって異なります。最も一般的な液体窒素凍結療法は、治療中にチクチク、ヒリヒリとした痛みを伴い、治療後も数日間痛みが続くことがあります7。痛みの感じ方には個人差が大きく、全く平気な方もいれば、強く感じる方もいます。痛みが心配な場合は、事前に医師に伝えることで、治療の強さを調整したり、麻酔テープを使用したり、痛みの少ない他の治療法を検討したりすることが可能です。モノクロロ酢酸塗布などは比較的痛みが少ないとされています7

Q4. 治療期間はどのくらいかかりますか?

A4. いぼの大きさ、数、深さ、選択した治療法、そして患者さん自身の治癒力によって大きく異なります。数回の治療で短期間に治ることもあれば、数ヶ月から1年以上といった長期間を要することも珍しくありません。特に足の裏のいぼは難治性であることがあり、根気強く通院を続けることが非常に重要です6

Q5. 治療に保険は適用されますか?

A5. はい、多くの標準的な治療には健康保険が適用されます。具体的には、液体窒素凍結療法、医師が処方するサリチル酸外用薬(スピール膏™など)、ヨクイニンの内服などは保険診療の範囲内です6, 7。一方で、レーザー治療や接触免疫療法など、一部の特殊な治療は保険適用外の自費診療となることがほとんどです。治療を開始する前に、費用について医療機関に確認することをお勧めします。

Q6. いぼの「芯」を取れば治りますか?

A6. よく言われる「芯」とは、実際にはウイルスに感染した細胞の塊や、いぼに栄養を送るために増生した毛細血管(黒い点々として見えます)のことです。治療の目標は、まさにこのウイルスに感染した組織を完全に除去または破壊することにあります6。しかし、これを自己判断で無理やりえぐり取ろうとすると、ウイルスを周囲にまき散らしてしまったり、皮膚を深く傷つけて細菌感染を起こしたりする危険が非常に高いです。いぼの「芯」の除去は、必ず皮膚科専門医による適切な治療によって行われるべきです。

12. まとめと医師からのアドバイス

足底疣贅はありふれた皮膚疾患ですが、痛みによる歩行への影響や、見た目の問題など、生活の質(QOL)を大きく損なう可能性があります。放置せずに皮膚科で適切な診断と治療を受けることが、早期解決への最も確実な道です。治療は時に根気を要しますが、医師と二人三脚で粘り強く取り組むことで、多くは改善が期待できます。また、日頃から足の観察とケアを心がけ、再発を予防することも同様に重要です。

足の裏のできものにお悩みの方は、決して自己判断で処置をしたり、放置したりせず、まずは皮膚科専門医にご相談ください。この記事が、皆様の不安を少しでも和らげ、適切な一歩を踏み出すためのお役に立てれば幸いです。

免責事項

この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。

参考文献

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