要点まとめ
- 水虫の正体は「白癬菌」というカビの一種で、日本の成人人口の多くが罹患している非常に一般的な皮膚感染症です12。高温多湿の環境を好み、特に靴の中や浴室のマットで繁殖しやすいため、日々のケアが重要です26。
- 症状は「趾間型(指の間のジュクジュク)」、「小水疱型(足裏の水ぶくれ)」、「角質増殖型(かかとのカサカサ)」の主に3タイプに分かれ、かゆみがない場合もあるため自己判断は禁物です2。爪の変色や肥厚は「爪水虫」のサインであり、放置すると歩行困難や家族への感染源となる可能性があります2。
- 治療の基本は抗真菌薬の塗布ですが、症状が消えても菌は潜伏しているため、最低でも1~2ヶ月は根気強く治療を続けることが再発防止の鍵です1。特に爪水虫や角質増殖型には飲み薬が必要な場合が多く、専門医の診断が不可欠です13。
- 予防策として、毎日の足の洗浄と完全な乾燥、靴のローテーション、スリッパやバスマットの共用を避けることが極めて重要です610。白癬菌は付着後24時間以内に洗い流せば感染を防げる可能性が高いため、帰宅後の足洗いを習慣にしましょう26。
1. はじめに:水虫(白癬)とは?多くの人が悩む身近な皮膚トラブル
一般的に「水虫」として知られているこの症状の医学的な名称は「白癬(はくせん)」です。その原因となるのは、「白癬菌(はくせんきん)」という真菌(カビ)の一種です1。白癬菌は、皮膚の最も外側にある角質層や、爪、毛髪などに含まれるケラチンというタンパク質を栄養源として増殖します。水虫という通称は、特に足の指の間などに小さな水ぶくれ(水疱)ができる症状がよく見られることから名付けられたと言われています2。
日本における水虫の現状:あなたは大丈夫?
日本において水虫は非常にありふれた疾患であり、足白癬の推定患者数は約2,500万人2、爪白癬(爪の水虫)の患者数は約1,200万人で、これは日本の総人口の約10%に相当すると報告されています3。特に高齢者においては有病率が高く、70歳以上では約半数の方に足白癬が見られ5、90歳以上の男性では5割を超えるというデータもあります4。このように、水虫は年齢とともに増加する傾向にあります3。
かつて水虫は成人男性に多い疾患というイメージがありましたが、近年では男女差が少なくなり、生活様式の変化に伴い女性の患者さんも増加傾向にあります。特に、ブーツやパンプス、ストッキングなどを長時間着用する習慣は、足が蒸れやすい環境を作り出し、水虫の感染リスクを高める要因の一つとして指摘されています6。
子供の水虫の罹患率は大人と比較すると低いものの、決して無縁ではありません6。プールや入浴施設などでの集団生活や、家族内での感染など、子供でも水虫に感染する可能性は十分にあります。近年の研究では、子供における足白癬の有病率に関する報告も散見され、その実態解明の重要性が指摘されています7。
爪白癬が進行すると、爪が変形したり厚くなったりすることで、見た目の問題だけでなく、歩行時に痛みを感じたり、日常生活の質(QOL)を低下させたりする原因となることがあります。さらに、高齢者においては、爪の異常が歩行バランスを不安定にし、転倒のリスクを高める可能性も指摘されています2。このように、水虫は単なるかゆみや不快感だけでなく、様々な問題を引き起こしうる疾患です。
これほどまでに罹患率が高いと、特に高齢者層においては、水虫を「年齢のせい」「よくあること」と捉え、医療機関を受診せずに放置してしまうケースも少なくないと考えられます。しかし、水虫は治療可能な感染症であり、放置することで症状が悪化したり、他人に感染を広げたりするリスクがあります。適切な知識を持ち、早期に対処することが重要です。
2. なぜ水虫になるの?主な原因と感染経路
水虫の原因である白癬菌は、私たちの身の回りのどこにでも存在する可能性があります。しかし、白癬菌が皮膚に付着したからといって、誰もがすぐに水虫になるわけではありません。白癬菌が繁殖し、感染症として成立するためには、特定の条件や環境が深く関わっています。
白癬菌が好む環境とは?
白癬菌は、高温多湿の環境を特に好みます。具体的には、温度が26℃前後、湿度が70%以上になると最も活発に増殖すると言われています2。このような条件が揃いやすい場所として、靴の中、浴室の足ふきマット、スポーツジムのロッカールームなどが挙げられます6。
白癬菌は、皮膚の角質層に含まれるケラチンというタンパク質を栄養源としています11。角質層に侵入した白癬菌は、このケラチンを分解しながら増殖し、水虫の症状を引き起こします。
こんな行動が危ない!水虫の感染リスクを高める要因
水虫の感染リスクを高める要因は、環境的なものから個人の皮膚の状態、生活習慣に至るまで多岐にわたります。
環境的要因:
長時間同じ靴を履き続けること、特に通気性の悪い革靴、ブーツ、長靴、安全靴などを日常的に使用する場合、靴の中は高温多湿になりやすく、白癬菌の温床となります6。厚手の靴下や防水加工された靴下も同様にリスクを高めます10。
足の指の間隔が狭く密着している方や、足に汗をかきやすい体質(多汗症)の方も、足が蒸れやすいため注意が必要です6。
皮膚の状態:
足にできた小さな傷や靴ずれ、皮膚のバリア機能が低下している状態は、白癬菌の侵入を容易にします6。例えば、乾燥によるひび割れや、合わない靴による摩擦、スポーツなどによる微細な外傷などが挙げられます。
特に注目すべきは、目に見えないほどの小さな傷でも感染の入り口になり得るという点です。ある研究では、微小な傷に白癬菌の菌液を付着させると、湿度が低い条件下でも早期に白癬菌が侵入することが示されています13。これは、日常的な活動や、場合によっては過度な足のケア(例えば、硬い軽石で強くこするなど)によって生じる微細な皮膚損傷が、意図せず感染リスクを高めている可能性を示唆しています。健康サンダルの突起による刺激や、軽石による過度な擦過も、角質層にダメージを与えたり、過角化を促したりすることで、白癬菌の侵入を助長する可能性があります12。
その他:
体の免疫力が低下している状態(例えば、高齢者、特定の全身疾患の治療中、極端な栄養不足など)では、白癬菌に対する抵抗力が弱まり、感染しやすくなることがあります11。
糖尿病や末梢血行障害などの基礎疾患を持つ方は、皮膚の血流が悪くなったり、感覚が鈍くなったりすることで、感染に気づきにくく、また治りにくい傾向があります5。
水虫はうつる!主な感染経路
水虫は感染症であるため、人から人へ、あるいは環境を介して感染が広がります。
人から人へ:
水虫に感染している人との直接的な皮膚の接触によってうつることがあります9。
より一般的なのは、感染者が使用したものを共有することによる間接的な感染です。例えば、家庭内や共同生活の場でのスリッパ、バスマット、タオル、爪切りなどの共用は、高い感染リスクを伴います6。特に家庭内に水虫の人がいる場合、他の家族が水虫になるリスクは約10倍にもなると言われています13。
場所から人へ:
多くの人が裸足で利用する場所、例えば公衆浴場、温泉、プール、スポーツジムのシャワールームやロッカールーム、サウナなどの床やマットには、水虫患者から剥がれ落ちた皮膚(鱗屑:りんせつ)に潜む白癬菌が存在している可能性があります6。これらの場所を利用することで感染するケースも少なくありません。
動物から人へ:
頻度は高くありませんが、白癬菌に感染したペット(特に犬や猫)から人にうつることもあります11。これは主に体部白癬(ぜにたむし)や頭部白癬(しらくも)の原因となることがあります。
感染のメカニズム:白癬菌はいつ侵入する?
皮膚に白癬菌が付着したとしても、直ちに感染が成立するわけではありません。白癬菌が皮膚の角質層に侵入し、増殖を開始するまでには、ある程度の時間が必要とされています。多くの資料では、付着後24時間以内に適切なケア(洗浄など)を行えば感染を防げる可能性が高いとされていますが6、より詳細な研究では、皮膚表面に付着してから約12時間後くらいから徐々に角質層への侵入が始まるとも報告されています2。
この「12時間から24時間」という時間は、感染予防における「機会の窓」とも言えます。つまり、白癬菌に接触した可能性のある状況の後、この時間内に足を丁寧に洗い流すことで、白癬菌が角質層に定着する前に除去できる可能性が高まります。このため、毎日の入浴時の丁寧な足の洗浄は、非常に効果的な予防策となります。特に、公衆浴場やプールを利用した後などは、できるだけ早く足を洗うことを心がけるのが賢明です。
感染は、単に白癬菌に接触したという事実だけでなく、個人の感受性や皮膚の状態、そして環境要因が複雑に絡み合って成立します。免疫力が低下している人や、皮膚に傷がある人、糖尿病などの基礎疾患を持つ人は、そうでない人と比較して感染しやすい傾向があります5。
3. これって水虫?種類別の症状と見分け方
水虫(白癬)は、感染する部位や白癬菌の種類、個人の体質などによって様々な症状を示します。足にできる水虫が最も一般的ですが、爪や手、さらには体の他の部分にも感染することがあります。ここでは、代表的な水虫の種類とその症状、そして水虫と間違えやすい他の皮膚疾患について解説します。
足の水虫(足白癬:あしはくせん)の主なタイプ
足白癬は、症状の現れ方によって主に以下の3つのタイプに分けられます2。これらのタイプは単独で現れることもあれば、混在することもあります。
趾間型(しかんがた):指の間のジュクジュク・皮むけ
最もよく見られるタイプで、足の指の間に症状が現れます。特に薬指と小指の間(第4趾間)に好発します17。初期には、皮膚が白くふやけて柔らかくなったり、赤くなったりします。進行すると、皮がむけたり、ジュクジュクとした浸出液が出たり、小さな水ぶくれができたりします。乾燥するとカサカサになることもあります。かゆみは比較的少ない場合もありますが、強いかゆみやただれ、亀裂が生じて痛みを伴うこともあります。特にジュクジュクした状態が続くと、細菌による二次感染(蜂窩織炎など)を引き起こすリスクもあるため注意が必要です2。
小水疱型(しょうすいほうがた):足の裏や縁にできる水ぶくれ
足の裏(特に土踏まず周辺17)、足の縁、指の付け根などに、米粒大から小豆大くらいの小さな水ぶくれ(水疱)が多発するのが特徴です。多くの場合、強いかゆみを伴います。水疱は初めは赤みを帯びていますが、次第に黄色っぽく変化することもあります。水疱が破れると液体(漿液)が出てきますが、この液体自体に感染力があるわけではありません12。水疱が破れた後は乾燥し、カサカサになって皮がむけてきます。このタイプは、梅雨時から夏場にかけて症状が悪化しやすく、冬になると症状が軽快する傾向が見られます2。
角質増殖型(かくしつぞうしょくがた):かかとなどのカサカサ・ひび割れ
足の裏全体、特にかかとを中心に、皮膚が厚く硬くなり、乾燥してカサカサになるタイプです2。皮膚の表面はザラザラし、白い粉をふいたようになることもあります。かゆみは少ないか、全くないことが多く、そのため水虫であることに気づきにくい場合があります。進行すると、硬くなった角質がひび割れ(亀裂)を生じ、出血したり痛みを伴ったりすることがあります。このタイプは、白癬菌が角質層の奥深くまで侵入しているため、治療に時間がかかり、治りにくい傾向があります。
爪の水虫(爪白癬:つめはくせん):爪の変色・肥厚
爪白癬は、主に足の爪に起こる水虫です。多くの場合、足白癬が進行し、爪に白癬菌が侵入することで発症します2。
症状:
- 爪が白っぽく、あるいは黄色っぽく濁って見えるようになります2。
- 爪が厚く硬くなり、もろくなってボロボロと欠けやすくなります。
- 爪の表面に縦や横のスジが入ったり、凹凸ができたり、爪が変形したりすることもあります。
- 通常、かゆみはありません2。そのため、自覚症状がないまま進行し、気づいた時にはかなり進行しているケースも少なくありません。
問題点:
- 爪白癬を放置すると、見た目の問題だけでなく、厚くなった爪が靴に当たって痛んだり、歩行が困難になったりすることがあります2。
- 治療が難しく、塗り薬だけでは効果が得られにくいことが多いです。
- 感染した爪は白癬菌の貯蔵庫(リザーバー)となり、足白癬を繰り返し引き起こす原因となったり、家族など周囲の人への感染源となったりする可能性があります。
足以外の水虫:手、体、股など
白癬菌は足や爪だけでなく、体の様々な部位にも感染します。
- 手白癬(てはくせん): 足白癬の患者さんの約1割程度に見られると言われています17。症状は足白癬と同様で、多くの場合、片方の手だけに症状が現れるのが特徴です(利き手と反対側に多い傾向があります)2。
- 体部白癬(たいぶはくせん、通称:ぜにたむし): 顔、首、腕、お腹など毛の生えていない部分にできる水虫です14。典型的な症状は、円形で縁が盛り上がった赤い発疹で、強いかゆみを伴います。感染したペットからうつることもあります14。
- 股部白癬(こぶはくせん、通称:いんきんたむし): 股間や太ももの内側にできる水虫です。境界がはっきりした半円状の赤い発疹で、強いかゆみを伴います。男性に多く見られますが、女性にも起こりえます14。
- 頭部白癬(とうぶはくせん、通称:しらくも): 主に子供に見られ、頭皮のフケや円形の脱毛が生じます。格闘技選手の間での集団感染も問題となっています14。
水虫と間違えやすい他の皮膚疾患
水虫の症状は、他の様々な皮膚疾患と似ていることがあります。自己判断で市販薬を使っても効果がない、あるいはかえって悪化してしまうケースも少なくありません。正確な診断のためには、皮膚科専門医の診察が非常に重要です。
疾患名 | 主な症状 | 水虫との違い・特徴 |
---|---|---|
接触皮膚炎(かぶれ)12 | 赤み、かゆみ、小さな水ぶくれ、ただれ。原因物質に触れた部位に一致して発症。 | 原因物質(例:靴の素材、洗剤、植物など)との接触歴が重要。水虫薬で悪化することも。 |
汗疱状湿疹(かんぽうじょうしっしん)/異汗性湿疹(いかんせいしっしん)12 | 手のひらや足の裏、指の側縁に小さな水ぶくれが多発。かゆみを伴うことが多い。 | 汗をかきやすい人に多く、季節性がある(春~夏に悪化しやすい)。白癬菌は検出されない。 |
皮膚カンジダ症12 | 指の間や陰部など、湿りやすい部位に好発。赤み、びらん(ただれ)、白いカスが付着。かゆみを伴う。 | 水虫(白癬菌)とは異なるカンジダという真菌が原因。趾間型水虫と似るが、治療薬が異なる場合がある。中心治癒傾向は通常みられない14。 |
細菌感染(特に趾間びらんなど)17 | 指の間が赤くただれたり、ジュクジュクしたり、悪臭を伴うことがある。 | 白癬菌感染に細菌感染が合併することもある。抗真菌薬だけでは改善しない場合がある。 |
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)6 | 手のひらや足の裏に、無菌性の膿疱(うみを持った水ぶくれ)が多発し、赤みや角化を伴う。 | 周期的に良くなったり悪くなったりを繰り返すことが多い。喫煙との関連が指摘される。白癬菌は検出されない。 |
4. 水虫の検査と診断:自己判断は禁物!
水虫の症状は多様であり、前述のように他の皮膚疾患と見分けがつきにくいことが多々あります。そのため、正確な診断を下し、適切な治療を開始するためには、皮膚科専門医による検査と診断が不可欠です。
なぜ専門医の診断が大切なのか
専門医の診断が重要である最大の理由は、症状が似ている他の皮膚疾患(接触皮膚炎、汗疱状湿疹など、Table 1参照)と正確に区別する必要があるためです1。自己判断で市販薬を使用した場合、もしそれが水虫でなかったり、タイプに合わない薬だったりすると、効果がないばかりか、症状を悪化させる可能性があります。特に、湿疹用のステロイド含有薬を水虫に使用すると、白癬菌の増殖を助長し、感染を広げてしまうことがあります9。
皮膚科ではどんな検査をするの?
- 直接鏡検(ちょくせつきょうけん、KOH法):水虫診断の基本となる最も一般的な検査です。患部の皮膚の表面(鱗屑)や爪の一部を少量こすり取り、水酸化カリウム(KOH)溶液で処理して、顕微鏡で白癬菌の菌糸や胞子が存在するかを直接観察します12。この検査は短時間で結果が判明することが多いですが、実際に感染していても菌が検出されない偽陰性の可能性も約3分の1程度あるとされています19。
- 真菌培養検査:直接鏡検で菌が見つかりにくい場合や、菌の種類を特定する必要がある場合に行われます14。採取した検体を特殊な培地で数日から数週間培養し、白癬菌の有無や種類を同定します。結果が出るまでに時間がかかるのが難点です。
検査を受ける際の注意点として、受診前に水虫薬を塗っていると、菌が検出しにくくなることがあります19。可能であれば数日間は薬の使用を中止するか、受診時に医師に使用薬剤を正確に伝えてください。
こんな場合は特に医療機関の受診を
初めて水虫と思われる症状が出た場合、爪に異常が見られる場合1、足以外の部位に症状がある場合1、炎症がひどい場合1、市販薬を2週間使っても改善しない場合1、または糖尿病などの基礎疾患をお持ちの方15は、自己判断せず、速やかに皮膚科専門医を受診してください。
5. 水虫の効果的な治療法:早く治して再発を防ぐ
水虫治療の目標は、原因である白癬菌を完全に除去し、症状を改善させ、再発を防ぐことです。治療の中心は「抗真菌薬」で、主に「塗り薬(外用薬)」と「飲み薬(内服薬)」に分けられます13。
塗り薬(外用薬)による治療:選び方と正しい使い方
塗り薬は、皮膚の白癬治療における第一選択です13。趾間型や小水疱型の足白癬、体部白癬などに主に用いられます。市販薬には軟膏、クリーム、液体、スプレーなど様々な剤形があり18、患部の状態に応じて使い分けます。
症状・水虫のタイプ | 推奨される剤形 | 主な有効成分例(抗真菌成分 + 付加成分) | 使用上のポイント・注意点 |
---|---|---|---|
指の間などジュクジュクした水虫 | 軟膏、パウダースプレー18 | テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩など | 刺激が少ない。パウダースプレーは乾燥を助ける。 |
足裏などカサカサした水虫 | クリーム、液体18 | ラノコナゾール、ミコナゾール硝酸塩など | 浸透性が良い。液体はひび割れにしみることがある。 |
かかとなど角質が厚く硬い水虫 | クリーム(尿素配合など)18 | テルビナフィン塩酸塩 + 尿素 | 角質を軟化させ薬剤の浸透を助ける。 |
かゆみが強い水虫 | クリーム、液体(かゆみ止め成分配合)1 | クロトリマゾール + リドカイン、クロタミトンなど | かゆみを和らげる。抗真菌成分による根本治療も重要。 |
ひび割れがある水虫 | 軟膏18 | テルビナフィン塩酸塩など | 低刺激で保護効果も期待できる。液体は避ける。 |
薬剤にかぶれやすい方 | クリーム、軟膏(抗真菌成分単味)18 | テルビナフィン塩酸塩(単味)など | 余計な成分が少ないものを選ぶ。 |
水疱がある水虫 | クリーム、軟膏22 | ブテナフィン塩酸塩など | 水疱が破れている場合は刺激の少ない軟膏を。 |
*この表は、市販薬を選ぶ際のあくまで目安です。日本の市販薬市場には多種多様な水虫薬があり、それぞれ特徴が異なります18, 21, 22。自己判断が難しい場合は、薬剤師に相談するか、皮膚科を受診してください。
正しい塗り方1
- 広範囲に塗る:症状のある部分だけでなく、その周囲の正常に見える皮膚にも広く塗布します。
- 毎日続ける:医師や薬剤師の指示、または製品の説明書に従い、毎日欠かさず塗り続けます。
- 清潔な皮膚に:入浴後など、患部を清潔にし、よく乾燥させてから塗るのが最も効果的です。
飲み薬(内服薬)による治療:どんな時に必要?
飲み薬は、体の内側から白癬菌に作用します。爪水虫の治療では第一選択とされ13、角質増殖型の足白癬18や広範囲の体部白癬14などにも用いられます。これらは全て医師の処方が必要で、市販されていません。肝機能障害などの副作用の可能性があるため、定期的な血液検査が必要です12。
治療期間の目安と根気の大切さ
水虫治療で最も重要なのは、「症状が良くなっても自己判断で治療を中断しないこと」です1。かゆみが消えても菌は生き残っているため、皮膚の水虫では最低でも1~2ヶ月以上1、爪水虫では3~6ヶ月程度の治療継続が必要です20。根気強く治療を続けることが、再発を防ぐ何よりの近道です。
健康に関する注意事項
6. 水虫を寄せ付けない!今日からできる予防策
水虫は、日常生活でのちょっとした心がけで、感染リスクを大幅に減らすことができます。治療中の方や治った後の再発防止にも非常に重要です。
毎日の足ケア:清潔と乾燥が基本
- 足を丁寧に洗う:毎日1回、石鹸をよく泡立て、指の間まで丁寧に洗いましょう。ただし、強くこすりすぎると皮膚を傷つけるため禁物です610。
- しっかり乾燥させる:足を洗った後は、清潔なタオルで、特に指の間を重点的に拭き、完全に乾燥させます6。
- 「12~24時間ルール」の活用:白癬菌は皮膚に付着後、約12~24時間で角質層に侵入し始めると言われています2。温泉やジムなどに行った後は、なるべく早く足を洗い流す習慣が感染リスクを低減します。
生活習慣の見直し:環境を整える
- 靴の管理:毎日同じ靴を履くのを避け、複数の靴をローテーションさせ、1日履いた靴は翌日休ませて十分に乾燥させましょう6。
- 靴下・履物の工夫:通気性の良い綿素材の靴下や、指の間の通気性を確保できる5本指ソックスがおすすめです10。汗をかいたらこまめに履き替えましょう6。
家族に水虫の人がいる場合の対策
家庭内に感染者がいる場合、他の家族への感染を防ぐ対策が非常に重要です。感染者本人が早期に治療を開始することが大前提です13。
- 共有物を避ける:バスマット、スリッパ、タオルの共有は感染の主な原因です。それぞれ個人専用にしましょう10。爪切りも同様です。
- 住環境の清潔:床に落ちた皮膚の角片(鱗屑)には白癬菌が潜んでいる可能性があるため、こまめに掃除機をかけ、清掃しましょう12。
- 感染者の配慮:感染している方は、家の中では清潔な靴下を履き、床への菌の飛散を減らすように心がけましょう12。
公共の場での注意点
温泉、銭湯、スポーツジムなど、不特定多数の人が裸足で利用する場所では、利用後にできるだけ早く足を石鹸で丁寧に洗い、しっかりと乾燥させることが重要です6。
よくある質問
Q1: 水虫は自然に治りますか?
Q2: 水虫の薬はいつまで塗ればいいですか?かゆみがなくなったらやめてもいい?
Q3: 家族に水虫の人がいます。うつらないためにはどうすればいいですか?
Q4: 水虫の人が使ったお風呂のマットや洗濯物からうつりますか?
Q5: 爪水虫は市販の塗り薬で治せますか?
Q6: 子供も水虫になりますか?
Q7: 水虫の予防にアルコール消毒は効果がありますか?
Q8: 水虫の治療中に飲酒はしても大丈夫ですか?
Q9: 水虫の薬を塗るときの注意点は?
Q10: 水虫の人が素足で歩いた床を歩くと、すぐにうつりますか?
結論
水虫(白癬)は、日本において非常に多くの人が経験するありふれた皮膚感染症です。しかし、「たかが水虫」と軽視したり、誤った情報で自己判断したりすると、症状の悪化や治療の長期化、さらには大切な家族への感染拡大を招く可能性があります。
本記事で解説してきたように、正しい知識を持つことが非常に重要です。特に、爪の異常や足以外の症状、市販薬で改善しない場合は、速やかに皮膚科専門医を受診することが、適切な治療への第一歩となります。
水虫治療は根気が必要ですが、医師の指示に従って継続すれば、多くの場合、治癒が期待できます。症状が改善しても自己判断で治療を中断せず、菌を完全に排除するまでやり遂げることが、再発を防ぐ最も大切なポイントです。そして、治療と並行し、日々の足のケアや生活環境の整備といった予防策を習慣化することが、水虫から解放された快適な生活を維持するための鍵となります。
水虫は決して恥ずかしい病気ではありません。正しい知識を身につけ、早期に適切な対処を行うことで克服できる疾患です。この記事が、水虫に悩む方々、そしてそのご家族の方々にとって、前向きに対策に取り組むための一助となることを心より願っています。
この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。
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- 水虫はうつる?家族に感染を広げないためにできる5つの対策 | はつ花皮ふ科クリニック. [インターネット]. [引用日: 2025年6月9日]. 以下より入手可能: https://www.hatsuhana-derma.com/column/2024/01/10/20230110/