筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎・封入体筋炎)の全貌:症状、原因から最新治療まで専門家が徹底解説
筋骨格系疾患

筋炎(多発性筋炎・皮膚筋炎・封入体筋炎)の全貌:症状、原因から最新治療まで専門家が徹底解説

原因不明の筋力低下、階段の上り下りが辛い、あるいは奇妙な皮膚の発疹に悩んでいませんか?それは「筋炎(きんえん)」と呼ばれる、自己の免疫系が誤って自身の組織を攻撃してしまう稀な自己免疫疾患のサインかもしれません。日本の厚生労働省により「指定難病」にも認定されているこの疾患群は、早期発見と正確な診断、そして適切な治療が患者さまの生活の質を維持するために極めて重要です4。本記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、日本の公式な医学的指針と最新の研究に基づき、多発性筋炎、皮膚筋炎、そしてしばしば誤解されがちな封入体筋炎を含む筋炎の全体像を、症状、診断、そして標準治療から先進的な治療法に至るまで、包括的かつ深く掘り下げて解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、提供された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいて作成されています。以下は、本記事で提示される医学的指導に直接関連する主要な情報源のリストです。

  • 難病情報センター: 本記事における多発性筋炎・皮膚筋炎4および封入体筋炎11に関する定義、公的支援制度、および基本的な疾患情報は、日本の公式情報源である難病情報センターが公開する情報を基にしています。
  • 日本リウマチ学会 (JCR): 治療法に関する記述は、日本の臨床現場における標準治療を定める「多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン」8に準拠しており、専門家向けの深い知見を反映しています。
  • ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン (NEJM): 先進的治療法に関する記述には、皮膚筋炎に対する免疫グロブリン静注療法(IVIG)の有効性を証明した画期的なProDERM研究など、国際的に評価の高い学術雑誌に掲載された最新の研究成果20を取り入れています。
  • 国立精神・神経医療研究センター (NCNP): 筋炎の各病型の特徴や診断アプローチに関する解説は、日本の神経・筋疾患研究の第一線機関であるNCNP病院からの情報1に基づいています。

この記事の要点

  • 筋炎は、免疫系が自身の筋肉や皮膚、時には肺などの内臓器官を誤って攻撃する自己免疫疾患です。
  • 主要な病型には「多発性筋炎(PM)」「皮膚筋炎(DM)」「封入体筋炎(IBM)」があり、それぞれ特徴、予後、治療法が大きく異なります。
  • 診断は、血液検査(CK値)、筋電図、画像検査、そして確定診断のための筋生検を組み合わせて行われます。近年では、特定の自己抗体(MSA)の測定が病型分類や予後予測に不可欠です6
  • 間質性肺炎は最も危険な合併症の一つであり、命に関わることもあるため、早期発見と迅速な治療介入が極めて重要です3
  • 治療の基本はステロイドと免疫抑制薬ですが、難治例には免疫グロブリン療法や生物学的製剤も用いられます。一方で、封入体筋炎はこれらの治療に反応しないため、正確な鑑別診断が不可欠です11

筋炎とは?—全体像を理解する

筋炎とは、本来体を守るべき免疫システムが異常をきたし、自身の筋肉や皮膚、血管などを異物とみなして攻撃してしまう自己免疫疾患の一群です。これは、結合組織に炎症が起こる「膠原病(こうげんびょう)」の一種に分類されます1。1942年にクレンペラー博士が複数の臓器で膠原線維の変化を観察したことから名付けられたこの疾患群の中で、筋炎は主に筋肉の炎症を特徴とします4

日本の現状:増加する患者数と指定難病制度

日本国内における診断技術の進歩は目覚ましく、筋炎患者の数は顕著に増加しています。厚生労働省の報告によると、多発性筋炎(PM)および皮膚筋炎(DM)で医療費助成を受けている患者数は、1991年の約6,000人から、2021年には約25,000人へと大幅に増加しました4。これは、単に疾患が増えただけでなく、これまで見過ごされていた症例が正確に診断されるようになったことを示唆しています。一方で、高齢者に多い封入体筋炎(IBM)の推定患者数は約1,000人から1,500人とされていますが、実際の数はこれを上回る可能性が指摘されています11

疫学的には、PM/DMは5歳から14歳の小児期と、35歳から64歳の中年期に発症のピークが見られ、女性の罹患率が男性の約3倍と高くなっています39。対照的に、IBMは50歳以上の男性に多く見られます11

これらの疾患は、その希少性と治療の困難さから、日本では「指定難病」として認定されています(PM/DMは指定難病504、IBMは指定難病1526)。これにより、診断基準を満たした患者は医療費の助成を受けることができ、経済的負担の軽減が図られています5

筋炎の原因:遺伝と環境の複雑な相互作用

筋炎の正確な原因は、現代医学をもってしてもまだ完全には解明されていません3。しかし、特定の遺伝的素因(自己免疫疾患になりやすい体質)を持つ人が、ウイルスや細菌への感染、特定の薬剤の使用、紫外線などの環境要因にさらされることをきっかけに、免疫系が異常な反応を起こし発症すると考えられています34。これは、親から子へ直接遺伝する「遺伝病」とは異なりますが、家族内で複数の自己免疫疾患が見られる場合があるのは、この遺伝的素因が背景にあるためです。


主な症状:早期発見のためのサイン

筋炎の症状は多岐にわたりますが、早期に気づくべき重要なサインがいくつかあります。症状は主に「筋肉」「皮膚」「全身および他の臓器」に現れます。

筋肉の症状:日常生活に潜むサイン

筋炎の最も中核的な症状は筋力低下です。特徴的なのは、体の中心に近い部分(体幹近位筋)である太もも、腰、肩、上腕、首の筋肉が、左右対称に弱くなることです1。これにより、以下のような具体的な困難が生じます。

  • 椅子やソファから手を使わずに立ち上がれない1
  • 階段を一段上るだけで疲れてしまう
  • 髪をとかしたり、洗濯物を干したりする際に腕を上げ続けるのが辛い
  • 仰向けに寝た状態から頭を持ち上げられない(枕から頭が上がらない)1

これらに加え、筋肉痛や、全身の強い倦怠感、疲労感も多くの患者が経験する症状です1

皮膚の症状:皮膚筋炎に特有の目印

皮膚筋炎(DM)では、診断の手がかりとなる特徴的な発疹が現れます。これらの皮膚症状は、筋力低下より先に出現することもあります。

  • ヘリオトロープ疹: 上まぶたに現れる、紫がかった赤色の腫れぼったい発疹です。DMに最も特徴的な所見(pathognomonic sign)とされています2。日本人では紫色よりも赤みが目立つことが多いです4
  • ゴットロン徴候・丘疹: 手指の関節の背中側(伸側)を中心に、肘や膝にも見られる、盛り上がった赤い発疹です。これもDMに極めて特異的なサインです2
  • その他の皮膚所見: 首から胸の上部にかけてV字型に広がる「V徴候」、肩から背中上部にかけてショールを羽織ったように現れる「ショール徴候」6、指先や側面の皮膚が硬くひび割れる「機械工の手(mechanic’s hands)」2なども見られます。
  • かゆみ: これらの発疹には強いかゆみを伴うことが多く、時には筋症状より先にかゆみが主な悩みとなることもあります4

全身症状と他の臓器への影響

筋炎の攻撃対象は筋肉や皮膚だけにとどまりません。特に注意すべきは、生命を脅かす可能性のある合併症です。

  • 間質性肺炎(かんしつせいはいえん): 最も危険な合併症です。PM/DM患者の約30〜40%に合併すると報告されています6。肺のガス交換を担う「肺胞」の壁に炎症が起こり、硬くなることで呼吸機能が低下します。主な症状は、痰を伴わない乾いた咳(空咳)や、坂道や階段での息切れです10。特に「急速進行性間質性肺炎」と呼ばれる病型は、数週間から数ヶ月で呼吸不全に陥るため、迅速な診断と強力な治療が不可欠です3
  • 嚥下障害(えんげしょうがい): 喉や食道の筋肉が弱まることで、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる症状です。これにより、食物が誤って気管に入り、誤嚥性肺炎を引き起こす危険性があります1
  • 心臓の合併症: 頻度は低いものの、心臓の筋肉に炎症が及ぶ心筋炎や、不整脈、心不全を引き起こすことがあります2
  • 関節症状: 関節リウマチのような関節破壊は稀ですが、手指などの小さな関節に痛みや腫れを伴うことがあります4
  • 全身症状: 原因不明の発熱、食欲不振、体重減少などがみられることもあります1。また、寒冷刺激で指先が白や紫色に変化するレイノー現象も特徴の一つです4

診断と検査:正確な診断への道のり

筋炎の診断は、単一の検査で決まるものではなく、患者の症状、診察所見、そして複数の検査結果を総合的に評価して行われます。疑わしい症状がある場合、まずは膠原病・リウマチ内科を受診することが推奨されます。皮膚症状が主体の場合は皮膚科が最初の窓口になることもあります27

  1. 血液検査: 筋肉が破壊されると、筋肉由来の酵素であるクレアチンキナーゼ(CK)やアルドラーゼが血中に漏れ出します。これらの数値を測定し、高値であれば筋損傷の存在を示唆します6
  2. 筋炎特異的自己抗体(MSA)検査: 近年の診断における最大の進歩は、この自己抗体検査です。血液検査で特定の抗体を調べることで、筋炎をより詳細なサブタイプに分類し、合併症のリスク(特に間質性肺炎や悪性腫瘍)を予測し、治療方針を決定する上で極めて重要な情報が得られます9
  3. 画像検査: 筋肉のMRI検査は、どの筋肉に炎症が起きているかを視覚的に評価するのに役立ちます1。また、間質性肺炎を評価するため、呼吸器症状の有無にかかわらず、胸部の高分解能CT(HRCT)検査は必須とされています9
  4. 筋電図(EMG): 筋肉に細い針を刺し、筋肉の電気的な活動を記録する検査です。筋力低下が筋肉自体の問題(筋原性)によるものか、神経の問題(神経原性)によるものかを鑑別するのに有用です6
  5. 筋生検: 確定診断のための「ゴールドスタンダード(黄金標準)」とされる検査です。局所麻酔下で、炎症が起きている筋肉(通常は太ももや上腕)から小さな組織片を採取し、顕微鏡で詳細に観察します。これにより、炎症細胞の種類や分布を直接確認し、病型を確定します1
表1:主要な筋炎特異的自己抗体(MSA)とその臨床的意義6
自己抗体 (MSA) 主な臨床的関連性
抗ARS抗体 (例: 抗Jo-1抗体) 「抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体症候群」と関連。筋炎、間質性肺炎、関節炎、「機械工の手」、発熱などを特徴とする。
抗MDA5抗体 筋症状が乏しいか全くない皮膚筋炎(ADM)と強く関連し、急速進行性間質性肺炎を発症する危険性が非常に高く、生命予後が悪いことが多い。
抗TIF1-γ抗体 成人では、胃癌、肺癌、卵巣癌などの内臓悪性腫瘍を合併するリスクと極めて強く関連する。
抗NXP2抗体 成人では悪性腫瘍のリスク、小児では皮下の石灰化(カルシノーシス)と関連する。
抗Mi-2抗体 典型的な皮膚症状を呈する皮膚筋炎と関連し、ステロイド治療への反応が良好で、比較的予後が良いとされる。
抗SRP抗体 「免疫介在性壊死性筋症(IMNM)」という特殊な病型と関連。重度の筋力低下と著しいCK高値を特徴とする。
抗HMGCR抗体 同じくIMNMと関連し、脂質異常症治療薬であるスタチン製剤の使用が引き金となることがある。

現在の治療法:科学的根拠に基づくアプローチ

筋炎の治療目標は、異常な免疫反応を抑制して炎症を鎮め、筋力の回復を図り、合併症の進行を防ぐことです。診断が確定したら、可及的速やかに治療を開始することが重要です6。治療法は病型や重症度、合併症の有無に応じて個別に選択されます4

ステロイド療法

副腎皮質ステロイドは、強力な抗炎症作用と免疫抑制作用を持ち、筋炎治療の第一選択薬であり、治療の根幹をなします3。通常、プレドニゾロンなどの経口薬を、まずは高用量(例:体重1kgあたり0.75〜1mg/日)で開始し、急性期の炎症を強力に抑え込みます。その後、筋力やCK値の改善を見ながら、数ヶ月から数年にかけて慎重に減量していきます3。自己判断での急な中断や減量は、病状の再燃を招くため絶対に避けるべきです。

免疫抑制薬

ステロイドの長期・大量使用による副作用(感染症、糖尿病、骨粗鬆症、肥満など)を軽減するため、多くの場合、早期から免疫抑制薬が併用されます5。これにより、ステロイドの減量をスムーズに進めることが可能になります。日本でよく使用される薬剤には、メトトレキサート(MTX)、アザチオプリン(AZA)、タクロリムス、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、シクロホスファミド(CPA)などがあります5。特に間質性肺炎を合併している場合には、タクロリムスやシクロスポリンが積極的に選択されます8

先進的な治療法

  • 免疫グロブリン大量静注療法(IVIG): 重症例や、標準治療に抵抗性を示す難治例、特に重篤な嚥下障害や皮膚症状を持つ患者に対して有効な治療法です5。2022年に権威ある医学雑誌「The New England Journal of Medicine (NEJM)」で発表されたProDERM研究により、皮膚筋炎に対するIVIGの有効性が高い科学的根拠をもって証明され、米国食品医薬品局(FDA)の承認にも繋がりました20
  • 生物学的製剤: B細胞を標的とするリツキシマブなど、特定の免疫細胞の働きをピンポイントで抑える生物学的製剤が、極めて難治性の症例に対して検討されることがあります8
  • 新しい治療法の開発: 近年では、CAR-T細胞療法のような先鋭的な治療法が筋炎に対しても研究されており、米国では臨床試験が開始されるなど、未来に向けた希望も生まれています12

リハビリテーションの重要性

薬物療法と並行して、リハビリテーションは治療の不可欠な柱です。炎症が非常に強い急性期には安静が必要ですが、CK値が低下し病状が安定したら、専門家の指導のもとで理学療法や作業療法を開始することが極めて重要です4。適切な運動療法は、筋力の回復、関節の拘縮予防、そして全体的な身体機能の維持・向上に繋がり、安全かつ有効であることが多くの研究で示されています28


専門家による詳細分析:筋炎の主要な病型

「筋炎」と一括りにされがちですが、その中には性質が全く異なる病型が存在します。特に、多発性筋炎(PM)、皮膚筋炎(DM)、そして封入体筋炎(IBM)の3つを正確に理解し、鑑別することが適切な治療への第一歩です。

皮膚筋炎(DM)と多発性筋炎(PM)の比較対照

PMとDMは長らく近縁の疾患と考えられてきましたが、研究の進歩により、異なる病態であることが明らかになっています。

  • 決定的差異: 最も明確な違いは、DMにはヘリオトロープ疹やゴットロン徴候といった特異的な皮膚症状が存在するのに対し、PMには存在しない点です17
  • 病態メカニズム: 筋生検による組織学的研究から、攻撃のメカニズムが異なることがわかっています。DMでは、筋肉や皮膚の微小な血管への免疫攻撃(血管炎)が主体であるのに対し、PMでは、免疫細胞(CD8陽性T細胞)が筋線維そのものを直接攻撃します17
  • 悪性腫瘍のリスク: 成人発症のDM患者では、悪性腫瘍(胃癌、肺癌、卵巣癌など)を合併するリスクがPM患者に比べて著しく高く、約30%に達するとも報告されています3。そのため、DMの診断時には、全身の徹底的ながん検診が必須となります。

封入体筋炎(IBM):全く異なる疾患としての理解

高齢者の筋力低下において、IBMをPMと誤診することは、臨床現場における深刻な問題です。なぜなら、IBMはステロイドや免疫抑制薬に全く反応しないため、誤診に基づいた不適切な治療は、患者に改善をもたらさないばかりか、重篤な副作用のリスクのみを負わせることになるからです11。責任ある医療情報として、この違いを明確にすることが我々の使命です。

  • 特徴的な症状: IBMはほぼ50歳以上に発症し、男性に多い疾患です11。筋力低下は数ヶ月から数年かけて非常にゆっくりと進行し、左右非対称であることが多いです。特に、指を深く曲げる筋肉(つまむ、鍵を開ける動作が困難になる)と、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が侵されやすく、階段昇降の困難や、膝が急に折れる「膝折れ」による転倒をきたします11
  • 診断の決め手: 筋生検が決定的な診断根拠となります。顕微鏡で観察すると、「縁取り空胞(rimmed vacuoles)」と呼ばれる特徴的な構造や、アルツハイマー病で見られるアミロイドβのような異常タンパク質を含む「封入体(inclusion bodies)」が筋線維内に確認されます11
  • 治療と予後: 前述の通り、免疫を抑える治療は無効です。治療は、理学療法による関節可動域の維持、杖や装具、車椅子といった補助具の活用による安全性確保と自立の維持が中心となります11。日本では、ロボットスーツHAL®を用いた歩行機能改善治療が保険適用となっています11。病気はゆっくりと、しかし確実に進行し、発症から5〜10年で車椅子が必要となることが多いですが、生命予後自体を直接短縮するものではありません。ただし、嚥下障害による肺炎や転倒による重傷が危険因子となり得ます11
表2:主要3病型の詳細比較
特徴 多発性筋炎 (PM) 皮膚筋炎 (DM) 封入体筋炎 (IBM)
好発年齢 成人 (>18歳)8 全年齢層 (5-14歳と35-64歳にピーク)3 高齢者 (>50歳)11
性差 女性 > 男性9 女性 > 男性 (約3:1)9 男性 > 女性 (約3:1)11
筋力低下の分布 左右対称、体幹近位筋10 左右対称、体幹近位筋10 非対称性が多い、近位・遠位筋(特に大腿四頭筋と手指屈筋)11
皮膚症状 なし17 あり(ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候)8 なし
CK値 中等度〜高度上昇9 中等度〜高度上昇9 正常〜軽度上昇34
悪性腫瘍との関連 DMよりは低いが存在する18 成人で強い関連あり (約30%)3 明らかな関連なし26
ステロイドへの反応 通常、反応良好3 通常、反応良好3 反応しない11
筋生検所見 筋線維内への炎症細胞浸潤17 血管周囲・筋束周囲の炎症、筋束周囲萎縮6 縁取り空胞、封入体、炎症細胞11

よくある質問

Q1: 筋炎と診断されました。食事や生活で気をつけることはありますか?

バランスの取れた食事を心がけることが基本です。特にステロイド治療中は食欲が増進しやすいため、体重管理に注意が必要です。皮膚筋炎の患者さまは、紫外線が皮膚症状を悪化させる可能性があるため、日光対策が極めて重要になります。外出時には日焼け止めを塗り、長袖の衣類や帽子を活用してください5。また、適切な休息と、医師や理学療法士の指導に基づいた運動を継続することが、筋力維持のために大切です。

Q2: 筋炎の予後はどうなのでしょうか?

予後は、病型、発症年齢、合併症(特に間質性肺炎や悪性腫瘍)の有無、そして診断と治療がどれだけ早期に行われたかによって大きく左右されます。現代の治療法により、多くのPM/DM患者さまは病状を良好にコントロールし、通常の社会生活を送ることが可能です17。しかし、急速進行性間質性肺炎や悪性腫瘍を合併した場合は、生命予後に深刻な影響を及ぼすことがあります3。IBMは生命予後への直接的な影響は少ないものの、筋力低下が進行性であるため、長期的な介助が必要となることが多いです11

Q3: 筋炎は遺伝しますか?

筋炎は、親から子へ必ず伝わるような典型的な遺伝病ではありません。しかし、自己免疫疾患になりやすい遺伝的な体質(疾患感受性遺伝子)は存在し、それが家族内で受け継がれる可能性はあります。そのため、稀に家族内で筋炎や他の膠原病を発症する方が見られることがあります4

Q4: 同じ病気を持つ人々と交流したり、支援を受けたりする場所はありますか?

はい、あります。同じ悩みを持つ患者同士の交流は、精神的な支えとなるだけでなく、貴重な情報交換の場にもなります。日本では、まず「難病情報センター」のウェブサイトで公式情報を確認することが重要です。国際的には、米国の「The Myositis Association (TMA)」30や「Myositis Support and Understanding (MSU)」31といった大規模な患者支援団体があり、オンラインフォーラムや豊富な資料を提供しています。これらの国際的なコミュニティに参加することも有益です。

結論

筋炎は、単一の疾患ではなく、それぞれが異なる特徴と経過をたどる複雑な疾患群です。近年の自己抗体研究の目覚ましい進歩は、その診断と治療戦略に革命をもたらし、より個別化された医療を可能にしました。特に、多発性筋炎と誤診されやすい封入体筋炎を正確に鑑別すること、そして皮膚筋炎における間質性肺炎や悪性腫瘍といった重篤な合併症を早期に発見し、介入することの重要性は、いくら強調してもし過ぎることはありません。

原因不明の筋力低下や皮膚症状に気づいたとき、それは体からの重要なサインです。ためらうことなく専門医に相談し、正確な診断を受けることが、あなたの未来の生活の質を守るための最も確実な一歩となります。筋炎は確かに困難な病気ですが、適切な治療とリハビリテーション、そして周囲のサポートがあれば、病と向き合いながら充実した人生を送ることは十分に可能です。この記事が、筋炎と共に歩む患者さまとそのご家族にとって、確かな知識と希望の光となることを心から願っています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 筋炎・ミオパチー | NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease33.html
  2. 多発筋炎・皮膚筋炎・封入体筋炎などの炎症性筋疾患 – 東京逓信病院 – 日本郵政. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/shinnai/myositis.html
  3. Q7皮膚筋炎とはどういう病気ですか?. 日本皮膚科学会. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.dermatol.or.jp/qa/qa7/s2_q07.html
  4. 皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50) – 難病情報センター. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/entry/4079
  5. 皮膚筋炎/多発性筋炎(指定難病50) – 難病情報センター. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/entry/4081
  6. 多発性筋炎・皮膚筋炎(polymyositis / dermatomyositis: PM/DM). 慶應義塾大学病院 KOMPAS. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000065/
  7. 別添1 多発(性)筋炎・皮膚筋炎治療ガイドライン. 厚生労働科学研究成果データベース. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2016/162051/201610040B_upload/201610040B0009.pdf
  8. < 資料 > 多発性筋炎・皮膚筋炎診療ガイドライン(2020 年暫定版). 自己免疫疾患研究の推進. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: http://www.aid.umin.jp/wp-aid/wp-content/uploads/2024/03/PMDMGL2020.pdf
  9. 多発性筋炎・皮膚筋炎(症状・原因・治療など) – ドクターズ・ファイル. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://doctorsfile.jp/medication/262/
  10. 多発性筋炎について – メディカルノート. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://medicalnote.jp/diseases/%E5%A4%9A%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%AD%8B%E7%82%8E
  11. 封入体筋炎(指定難病15) – 難病情報センター. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/entry/3801
  12. RESET-Myositis: An Open-Label Study to Evaluate the Safety and Efficacy of CABA-201 in Subjects With Active Idiopathic Inflammatory Myopathy or Juvenile Idiopathic Inflammatory Myopathy. ClinicalTrials.gov. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT06154252
  13. Clinical Study Cohort of Idiopathic Inflammatory Myositis. ClinicalTrials.gov. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.clinicaltrials.gov/study/NCT06306547?cond=Acquired%20idiopathic%20inflammatory%20myopathy%20OR%20%22idiopathic%20inflammatory%20myopathies%22%20OR%20%22%20idiopathic%20inflammatory%20myositis%22%20OR%20%22%20IIm%22%20OR%20%22%20IMM%22&aggFilters=status:not%20rec&viewType=Table&rank=1
  14. Global Myositis Patient Organizations. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://imyos.org/global-myositis-patient-organizations/
  15. Patient and Care Partner Support – The Myositis Association. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.myositis.org/patient-support/
  16. Patient and Care Partner Support – The Myositis Association. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.myositis.org/patient-support/support-groups/
  17. 多発性筋炎・皮膚筋炎(PM・DM) – 東広島記念病院. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://hmh.or.jp/disease/pm-dm/
  18. 多発性筋炎・皮膚筋炎|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: http://www.imed3.med.osaka-u.ac.jp/disease/d-immu04-3.html
  19. 日本リウマチ学会 関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂 – 診断と治療社. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.shindan.co.jp/np/isbn/9784787826336/
  20. NEJM article releases positive results of clinical trial investigating treatment for rare inflammatory disease, dermatomyositis – KUMC. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.kumc.edu/about/news/news-archive/dimachkie-dermatomyositis-clinical-trial.html
  21. 強皮症・筋炎先進医療センター – 学校法人日本医科大学. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.nms.ac.jp/hosp/section/rheumatism/_12072.html
  22. 皮膚筋炎を得意な領域としている医師を探す – メディカルノート. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://medicalnote.jp/search/doctors/diseases/176
  23. NEJM Makes Myositis as Clear as Possible – HCPLive. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.hcplive.com/view/nejm-makes-myositis-clear-possible
  24. 皮膚筋炎/多発性筋炎とは どんな病気? – 大阪市. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.city.osaka.lg.jp/kenko/cmsfiles/contents/0000494/494143/13_hihukinentahatsuseikinen.pdf
  25. 封入体筋炎の患者数に対応する分布図 県別推移(2016年~2019年)(Annual change(2016-2019) of sIBM patients number in prefectures, Japan) | Akio Mirai Web. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://akiomirai6590.org/sibm_patients/
  26. 封入体筋炎(指定難病15). [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.nanbyou.or.jp/entry/3802
  27. 多発性筋炎/皮膚筋炎:どんな病気? 検査や治療は? 完治できるの? – 株式会社プレシジョン. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.premedi.co.jp/%E3%81%8A%E5%8C%BB%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3/h00627/
  28. Alexanderson H, et al. Physical exercise for dermatomyositis and polymyositis: a systematic review and meta-analysis. J Rehabil Med. 2022 Jul 11;54:jrm00305. doi: 10.2340/jrm.v54.2144. PMID: 35821167. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35821167/
  29. 皮膚筋炎/多発性筋炎 – 障害者職業総合センター. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.nivr.jeed.go.jp/option/nanbyo/10.html
  30. The Myositis Association – National Organization for Rare Disorders. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://rarediseases.org/organizations/myositis-association/
  31. Myositis Support and Understanding, Patient-Centered Nonprofit. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://understandingmyositis.org/
  32. 炎症性筋疾患のポイント―多発性筋炎・皮膚筋炎を中心に – 宇多野病院 – 国立病院機構. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://utano.hosp.go.jp/outpatient/other_know_rheum_06.html
  33. Dermatomyositis – Wikipedia. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://en.wikipedia.org/wiki/Dermatomyositis
  34. Wakim-Fleming J, et al. Inclusion Body Myositis. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK538200/
  35. Inclusion body myositis – Wikipedia. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://en.wikipedia.org/wiki/Inclusion_body_myositis
  36. Inclusion Body Myositis | National Institute of Neurological Disorders and Stroke. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.ninds.nih.gov/health-information/disorders/inclusion-body-myositis
  37. Inclusion Body Myositis | Johns Hopkins Medicine. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.hopkinsmedicine.org/health/conditions-and-diseases/inclusion-body-myositis
  38. Types of Myositis. The Myositis Association. [インターネット]. [引用日: 2025年7月22日]. Available from: https://www.myositis.org/about-myositis/types-of-myositis/
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ