糖尿病の検査費用はいくら?保険適用の範囲・自己負担額から特定健診の活用法まで徹底解説
糖尿病

糖尿病の検査費用はいくら?保険適用の範囲・自己負担額から特定健診の活用法まで徹底解説

糖尿病の疑いを指摘された、または自覚症状があり検査を考えているものの、「費用は一体いくらかかるのだろう?」と不安に思っていませんか。日本の医療制度では、健康保険が適用されるため自己負担は抑えられますが、検査の種類や受診のきっかけによって金額は大きく変わります。この記事では、日本糖尿病学会の最新ガイドラインや厚生労働省の公的データに基づき、糖尿病検査の費用をシナリオ別に徹底的に解説します。初診料から、各種検査の具体的な自己負担額、さらには費用を賢く抑える「特定健shin」の活用法まで、あなたの疑問と不安を解消します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下の一覧には、実際に参照された情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性のみが含まれています。

  • 日本糖尿病学会 (JDS): この記事における診断基準(例:HbA1c値)や推奨される検査の種類に関するガイダンスは、日本糖尿病学会が発行した「糖尿病診療ガイドライン」に基づいています1
  • 厚生労働省 (MHLW): 日本国内の糖尿病患者数に関する統計データや、特定健診・高額療養費制度などの公的医療制度に関する情報は、厚生労働省の公式発表に基づいています234
  • 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター (NCGM): 治療シナリオ別の詳細な費用例(薬物療法、インスリン療法など)は、糖尿病情報センターが提供する資料「糖尿病とお金のはなし」を主な根拠としています5

要点まとめ

  • 糖尿病検査の初診費用は、健康保険の3割負担で約3,000円から7,000円が目安です。ただし、実施する検査内容により変動します。
  • 40歳から74歳までの方が対象の「特定健診」を賢く活用することで、初期のスクリーニング費用を大幅に抑えることが可能です。
  • 検査費用は、空腹時血糖検査やHbA1c検査などの基本的なものから、診断を確定するためのブドウ糖負荷試験(OGTT)など、目的によって異なります。
  • 診断後の治療費は、飲み薬のみの場合とインスリン療法の場合で大きく異なり、月々の自己負担額も変わってきます。
  • 「高額療養費制度」や「医療費控除」といった公的制度を利用することで、医療費の経済的負担を軽減できる場合があります。

まず知っておきたい:糖尿病検査の基本と受けるべき人

糖尿病は自覚症状がないまま進行することが多く、早期発見と早期治療が将来の健康を大きく左右します。費用への不安から検査をためらう前に、まずは基本的な知識を身につけましょう。

なぜ早期検査が重要なのか?

糖尿病の早期発見は、深刻な合併症を防ぐための鍵です。厚生労働省の2023年の患者調査によると、日本国内で糖尿病の治療を受けている患者数は増加傾向にあります67。この数字は、糖尿病が誰にとっても身近な病気であることを示しています。治療が遅れると、腎症、網膜症、神経障害といった三大合併症を引き起こし、人工透析や失明に至る危険性もあります。早期に発見し、適切な管理を始めることで、これらの重篤な合併症を予防し、健康な生活を長く維持することが可能になります。

どんな人が検査を受けるべき?

日本糖尿病学会のガイドラインでは、特定の危険因子を持つ人々に対して積極的な検査を推奨しています1。具体的には、以下のような方が対象となります。

  • 40歳以上の方
  • 肥満傾向のある方(BMI指数が25以上)
  • 家族に糖尿病の人がいる方
  • 高血圧、脂質異常症(高コレステロールなど)を指摘されている方
  • 妊娠中に妊娠糖尿病と診断されたことがある女性

特に、会社や自治体で毎年行われる健康診断(健診)や人間ドックで、血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値に異常を指摘された場合は、速やかに医療機関で精密検査を受けることが強く推奨されます8

【シナリオ別】糖尿病検査の費用と自己負担額(3割負担の場合)

ご注意ここで示す費用は、健康保険の自己負担割合が3割の場合の一般的な目安です。受診する医療機関の種類(診療所か病院か)、追加される検査、処方される薬によって金額は変動する可能性があります。正確な費用については、事前に医療機関へお問い合わせください。

シナリオ1:初めて医療機関で検査を受ける場合(初診)

糖尿病を疑う症状(喉の渇き、頻尿、体重減少など)がある、または健康診断で異常を指摘され、初めて専門の医療機関を受診する場合の費用です。費用は、行われる検査の範囲によって変わります。

基本的な診察と診断に必要な最小限の検査であれば費用は比較的抑えられますが、医師が他の生活習慣病の可能性も考慮し、より包括的な検査を行った場合は高くなる傾向があります910

表1:初診時の費用内訳(3割負担の目安)
項目 費用目安 備考
初診料 約860円 どの医療機関でも初めて受診する際にかかる基本料金です11
血液検査・尿検査(基本) 約2,000円~3,000円 空腹時血糖値、HbA1c、尿糖検査などが含まれます。診断に必須の検査です910
合計(基本的なスクリーニング) 約3,000円~4,000円 糖尿病の診断に最低限必要な検査のみを行った場合の目安です。
追加検査(脂質、肝・腎機能など) 約1,000円~2,000円 高血圧や脂質異常症など、他の生活習慣病の合併を調べるために追加されることがあります。
合計(包括的な診断) 約5,000円~7,000円 健康状態を総合的に評価するために追加検査まで行った場合の目安です8

シナリオ2:「特定健診」の結果を受けて再検査する場合

特定健診(特定健康診査)は、40歳から74歳の公的医療保険加入者を対象とした、メタボリックシンドロームに着目した健康診断です312。これは、糖尿病を含む生活習慣病の早期発見を目的としており、多くの場合、自己負担は無料または非常に低額で受けることができます。この特定健診を有効活用することは、費用を抑えるための非常に賢い方法です。

厚生労働省の指針に基づき、特定健診で血糖値やHbA1cに異常が見つかった場合、結果に応じて「動機づけ支援」や「積極的支援」といった保健指導、または医療機関への「受診勧奨」が行われます13。この「受診勧奨」に基づいて医療機関で再検査を受ける場合、それは「病気の疑いがあるための診察」と見なされ、健康保険が適用されます。その際の費用は、前述のシナリオ1とほぼ同等になります。つまり、特定健診を利用することで、初期のスクリーニング検査にかかる費用を実質的に節約できるのです。

【種類別】主要な糖尿病検査の内容と費用詳細

糖尿病の診断や管理には、目的の異なる様々な検査が用いられます。日本糖尿病学会のガイドラインでは、これらの検査を組み合わせて総合的に判断することが推奨されています114

表2:主要な検査の内容と費用目安(3割負担)
検査名(日本語) 目的 費用目安 保険適用の条件
空腹時血糖検査 10時間以上絶食した後の血糖値を測定します。診断の基本となる検査です。 表1の「血液検査・尿検査(基本)」に含まれることが多いです。 医師が糖尿病を疑う症状や所見を認めた場合。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)検査 過去1~2ヶ月間の平均血糖値を反映する指標。診断だけでなく、治療効果の判定にも重要です15
75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT) ブドウ糖の入った甘い液体を飲み、時間経過による血糖値の変動を調べます。糖尿病予備群(境界型)や妊娠糖尿病の診断に特に有効です16 約2,000円~4,000円 空腹時血糖検査やHbA1c検査だけでは診断が確定できない場合など。
自己抗体検査(GAD抗体など) 1型糖尿病の原因となる自己抗体の有無を調べ、1型と2型糖尿病の鑑別に用いられます。 変動あり(比較的高額になる場合がある) 医師が1型糖尿病を強く疑う場合。

診断後の費用は?月々の治療費の目安

糖尿病と診断された場合、継続的な治療が必要になります。月々の費用は、治療法によって大きく異なります。国立国際医療研究センターの資料によると、一般的な費用は以下の通りです517

表3:月々の治療費の目安(3割負担)
治療法 月々の費用目安 主な内訳
飲み薬のみ(1~2種類) 約2,500円~5,000円 再診料、生活習慣病管理料、薬剤費
インスリン療法+自己血糖測定(SMBG) 約7,000円~15,000円以上 再診料、在宅自己注射指導管理料、インスリン製剤費、血糖測定器の消耗品(針、センサー)費

特にインスリン療法は、使用するインスリンの種類や量、血糖測定の頻度によって費用が大きく変動します。これらはあくまで目安であり、合併症の治療などが加わるとさらに費用が必要になる場合があります。

知って得する!医療費の負担を軽減する公的制度

継続的な治療が必要な場合、経済的な負担が心配になるかもしれません。しかし、日本には医療費の負担を軽減するための公的な制度が整備されています。

高額療養費制度

これは、1ヶ月(月の初日から末日まで)の医療費の自己負担額が、所得に応じて定められた上限額を超えた場合に、その超えた金額が後から払い戻される制度です4。例えば、インスリン治療などで月々の医療費が高額になった場合でも、この制度を利用すれば自己負担を一定額に抑えることができます。加入している公的医療保険(健康保険組合、協会けんぽ、国民健康保険など)に申請することで利用できます。

医療費控除

これは、1年間(1月1日から12月31日まで)に支払った医療費の合計が一定額(通常は10万円)を超えた場合に、確定申告を行うことで所得税や住民税が軽減される制度です18。本人だけでなく、生計を同一にする家族の医療費も合算できます。通院のための交通費(公共交通機関)も対象になる場合がありますので、領収書は必ず保管しておきましょう。

よくある質問

市販の検査キットは信頼できますか?

薬局などで購入できる尿糖検査キットなどは、手軽な自己チェックの手段としては有用です19。しかし、これらのキットの結果だけでは医学的な診断はできません。陽性の結果が出た場合や、陰性でも症状が続く場合は、必ず医療機関を受診して正確な診断を受ける必要があります。

高齢者の検査費用や注意点はありますか?

75歳以上の方の後期高齢者医療制度など、加入する保険制度によって自己負担割合が異なる(通常1割、一定以上の所得者は2割または3割)ため、費用は変わります。また、日本老年医学会と日本糖尿病学会の合同ガイドラインでは、高齢者の場合、重度の低血糖を避けることが重視され、血糖コントロールの目標値が若年者よりも緩やかに設定されることがあります。これにより、使用する薬剤の種類や検査の頻度が調整され、結果的に費用に影響する可能性があります。

病院やクリニックによって費用は大きく違いますか?

健康保険が適用される標準的な検査や診察については、費用は国が定めた「診療報酬点数表」によって全国一律で計算されます11。そのため、施設による基本的な費用の差はほとんどありません。ただし、自由診療(保険適用外)の特殊な検査や、施設管理料などが若干異なるため、全く同じ金額にならない場合もあります。

結論

糖尿病の検査費用は、健康保険の適用により、多くの方にとって決して手の届かない金額ではありません。初診時の自己負担額は3,000円から7,000円程度が一つの目安となりますが、これはあなたの健康への重要な投資です。特に、公的制度である「特定健診」を最大限に活用することで、費用を抑えながら早期発見の機会を得ることができます。

診断後の治療においても、「高額療養費制度」や「医療費控除」といったセーフティネットが存在します。費用に関する不安が、検査や治療を受ける上での障壁になるべきではありません。この記事で得た知識を元に、もし糖尿病に関する心配事があれば、ためらわずに最寄りの医療機関に相談してください。医師との対話を通じて、あなたに合った最適な検査と治療の計画を立てることが、健康な未来への第一歩となります。

免責事項本記事は情報提供を目的としたものであり、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024. 2024. Available from: https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
  2. 厚生労働省. 令和5年(2023)患者調査の概況. 2023. Available from: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/index.html
  3. 厚生労働省. 特定健診・特定保健指導について. Available from: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000161103.html
  4. 厚生労働省. 高額療養費制度を利用される皆さまへ. Available from: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html
  5. 国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター. 糖尿病とお金のはなし. 2022. Available from: https://dmic.ncgm.go.jp/content/080_100_01.pdf
  6. seikatsusyukanbyo.com. 糖尿病で治療を受けている総患者数は、552万3000人 令和5年(2023)「患者調査の概況」より. 2025. Available from: https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2025/010845.php
  7. 株式会社パコラ. 糖尿病患者数が急増し1,197万人に!(令和5年(2023)患者調査の概況). Available from: https://www.pacola.co.jp/%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E6%82%A3%E8%80%85%E6%95%B0%E3%81%8C%E6%80%A5%E5%A2%97%E3%81%971197%E4%B8%87%E4%BA%BA%E3%81%AB%EF%BC%81%EF%BC%88%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%95%E5%B9%B4%EF%BC%88%EF%BC%92/
  8. 福岡内科クリニック. 糖尿病ってどんな病気? (症状・診断・合併症・治療・費用について). Available from: https://fukuoka-naikaclinic.jp/blog/%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%A9%E3%82%93%E3%81%AA%E7%97%85%E6%B0%97%EF%BC%9F-%E7%97%87%E7%8A%B6%E3%83%BB%E8%A8%BA%E6%96%AD%E3%83%BB%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%97%87%E3%83%BB%E6%B2%BB/
  9. NOBUヘルシーライフ内科クリニック. 糖尿病の疑いがある場合の検査について. Available from: https://www.nobu-healthylife-clinic.com/blog/diabetes-test/
  10. 福岡内科クリニック. 糖尿病の検査っていくらかかるの?(初めてクリニックを受診したときの費用のお話). Available from: https://fukuoka-naikaclinic.jp/blog/%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E3%81%AE%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8B%EF%BC%9F%EF%BC%88%E5%88%9D%E3%82%81%E3%81%A6%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B/
  11. 日本医業総研グループ. 医療事務の基礎知識(18). Available from: https://www.lets-nns.co.jp/blog/article_12076.html
  12. 全国健康保険協会. 特定健診の検査項目について. Available from: https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/ibaraki/cat040/20140206-4/20140226-1/
  13. 千葉県食品製造健康保険組合. 特定健診の受診は、生活習慣病(生活習慣の悪化により発症する糖尿病)の予防に有効です. Available from: https://www.cs-kenpo.or.jp/member/health/files/measure_guide.pdf
  14. ユビー. お金がなく糖尿病の治療費負担が苦しい場合はどうすればいいですか?. Available from: https://ubie.app/byoki_qa/clinical-questions/6_4jgruw8
  15. こころみクリニック. 糖尿病の検査はどこでできる?検査方法・費用について解説. Available from: https://cocoromi-cl.jp/knowledge/internal-disease/diabetes/diabetes-test/
  16. 健美クリニック. 血糖値スパイクを見逃さない3つの検査を紹介. Available from: https://kenbi-clinic.com/column/2022-12-27-1036/
  17. 糖尿病HACK. 糖尿病による検査にかかる料金は保険適用になる?初診料はいくら?. Available from: https://tonyobyo-h.info/inspection-hoken/
  18. 国税庁. 医療費を支払ったとき(医療費控除). Available from: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
  19. 佐藤内科クリニック. 血液検査の結果が10分でわかります|糖尿病の検査. Available from: https://www.sato-naika-clinic.com/diabetes_speciality/test/
  20. 日本老年医学会, 日本糖尿病学会. 高齢者糖尿病診療ガイドライン2023. 2023. Available from: https://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=25
  21. 厚生労働省. 糖尿病. Available from: https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b7.html
  22. seikatsusyukanbyo.com. 糖尿病で治療を受けている総患者数は、579万1000人 令和2年(2020)「患者調査の概況」より. 2024. Available from: https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010775.php
  23. あらまき内科クリニック. 健診・セルフケア(自費). Available from: https://www.aramaki-clinic.jp/about-4
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ