歯肉がんの生存率、なぜ日本は低いのか?専門医が最新治療と早期発見の重要性を徹底解説【2025年版】
がん・腫瘍疾患

歯肉がんの生存率、なぜ日本は低いのか?専門医が最新治療と早期発見の重要性を徹底解説【2025年版】

日本は世界トップクラスの長寿国であり、高度な医療制度を誇ります。しかし、その一方で「口腔がん」、特に歯肉(歯茎)に発生する「歯肉がん」による死亡率が、米国をはじめとする他の先進国と比較して著しく高いという、見過ごされがちな厳しい現実が存在します1。なぜ、このような憂慮すべき事態が起きているのでしょうか。それは単なる医療技術の問題ではなく、社会的な認識の低さ、検診制度の課題、そして一般的な口のトラブルと初期症状を見分ける知識の不足が複雑に絡み合った結果です。この記事では、JHO編集委員会が最新の科学的根拠と日本のトップ専門家の知見に基づき、この「日本の口腔がん問題」の深層を徹底的に解明します。歯肉がんの正確な知識、見逃してはならない初期症状、最新の治療法から、あなた自身と大切な人の命を守るための具体的な行動指針まで、網羅的かつ分かりやすく解説します。

この記事の科学的根拠

本記事は、ご提供いただいた研究報告書に明示された最高品質の医学的エビデンスにのみ基づいて作成されています。以下に、本記事で提示される医学的指導の根拠となった主要な情報源とその関連性を示します。

  • 日本口腔腫瘍学会 (JSOO) / 口腔癌診療ガイドライン 2023年版: 本記事におけるステージ別の標準治療法に関する記述は、日本の臨床現場における最も権威ある指針である本ガイドラインに基づいています2
  • 国立がん研究センター (NCCJ): 日本国内の歯肉がんに関する罹患数、死亡数などの公式な統計データは、すべて同センターのがん情報サービスから引用しています3
  • Mahuli, A. et al. (2023) のメタアナリシス研究: 歯周病が口腔がんのリスクを2.14倍に高めるという具体的な数値的根拠は、医学雑誌Cureusに掲載されたこの大規模なメタアナリシス研究に基づいています4
  • 口腔がん撲滅委員会 / 柴原 孝彦 教授: 日本における口腔がん死亡率の高さや、発見が遅れる背景(ステージIVでの発見率の高さなど)に関する分析は、同委員会が公表したデータおよび、委員長である柴原教授の専門的見解を基にしています5
  • 米国がん協会 (American Cancer Society): 国際的な治療法の視点や比較情報を提供するため、米国における標準的な治療ガイドラインを参考にしています6

要点まとめ

  • 日本の口腔がん死亡率は米国より著しく高く、特に歯肉がんは発見の遅れが深刻な課題です1
  • 歯周病は歯肉がんの危険性を2.14倍高めるという科学的根拠があり、口腔衛生の徹底が極めて重要です4
  • 「2週間以上治らない口内炎や潰瘍」は最も警戒すべき初期症状であり、自己判断せず専門医の受診が必須です7
  • 治療の基本は外科手術であり、早期発見であれば機能温存と高い治癒率が期待できますが、進行すると大規模な手術と術後の補助療法が必要になります2
  • 多くの自治体で低額な「口腔がん検診」が実施されていますが、認知度が低く利用率が課題です。自身の自治体の制度を確認することが命を守る行動に繋がります8

歯肉がん(歯茎がん)とは?知っておくべき基本

まず、歯肉がんがどのような病気であるかを正確に理解することが、すべての対策の第一歩となります。

1.1. 歯肉がんの定義と特徴

歯肉がんとは、その名の通り歯茎(歯肉)の組織から発生する悪性腫瘍です。口腔内にできるがん「口腔がん」の一種であり、日本では舌にできる「舌がん」に次いで多いとされています9。国立がん研究センターがん情報サービスによると、口腔がんに含まれるがんの90%以上は、口の粘膜の上皮から発生する「扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)」であり、歯肉がんもそのほとんどがこの種類に分類されます3

初期の段階では痛みを感じにくいため発見が遅れやすく、進行すると顎の骨(顎骨)にまで浸潤(がん細胞が広がること)しやすいという危険な特徴を持っています。このため、早期発見と早期治療が予後を大きく左右するのです。

1.2. 歯周病や口内炎との決定的な違い

多くの人が歯肉がんの初期症状を、ありふれた口内炎や歯周病による腫れと誤解してしまいます。この誤解が、受診を遅らせる最大の原因の一つです。以下の点を参考に、その違いを理解してください。

  • 治癒期間: 通常の口内炎は、長くても2週間程度で自然に治癒します。しかし、2週間以上経っても治らない、あるいは大きくなるような潰瘍やしこりは、がんの可能性を疑うべき最も重要なサインです7
  • 形状と硬さ: 口内炎は表面が白く、境界が比較的明瞭な円形の潰瘍であることが多いです。一方、歯肉がんは不正形で、境界が不明瞭なしこりや、赤や白のまだら模様を呈することがあります。指で触れた際に、ただの腫れとは違う「硬さ」を感じるのも特徴です10
  • 出血: 歯周病でも出血は見られますが、歯肉がんの場合、軽く触れただけで簡単に出血したり、理由なく出血が続くことがあります。
  • 歯の動揺: 歯周病が進行すると歯がぐらつきますが、歯肉がんが顎の骨に浸潤した場合も、特定の歯が原因不明で急にぐらつき始めることがあります10

これらの違いを知識として持つことは非常に重要ですが、自己判断は絶対に禁物です。少しでも疑わしい場合は、迷わず専門医の診察を受けてください。


日本における口腔がんの厳しい現実:データが示すもの

歯肉がんについて理解を深める上で、日本が直面している客観的なデータを知ることは不可欠です。口腔がん撲滅委員会が提示するデータによると、日本の口腔がんによる死亡率は、歯科医療の先進国である米国と比較して2.5倍以上高いという衝撃的な事実があります15

国立がん研究センターの最新の統計(2019年データ)によれば、日本国内で新たに口腔・咽頭がんと診断された人は23,568人、同部位のがんによる死亡者数は7,975人に上ります11。世界保健機関(WHO)も、口腔疾患が世界的な健康課題であることを指摘しており、日本もその例外ではありません12

この高い死亡率の背景には、次章で詳しく解説するリスク因子の問題に加え、国民全体の口腔がんに対する認識の低さ、そして早期発見システムの普及が不十分であるという構造的な課題が存在しているのです。

なぜ歯肉がんになるのか?最新研究に基づく原因とリスク因子

歯肉がんの発症には、特定の生活習慣や口内環境が深く関わっていることが科学的に明らかになっています。ここでは、最新の研究に基づいた主要な原因とリスク因子を解説します。

3.1. 主要なリスク因子:喫煙と飲酒

喫煙と飲酒は、口腔がんにおける二大リスク因子として確立されています。米国がん協会(ACS)によると、これらの習慣はがんのリスクを著しく高め、特に両方の習慣を持つ人は、どちらか一方しか持たない人やどちらも持たない人に比べて、リスクが何倍にも増大します6。タバコの煙に含まれる数多くの発がん性物質が直接口の粘膜を刺激し、アルコールがそれらの物質の細胞内への浸透を助長すると考えられています。

3.2. 【新常識】口腔衛生と歯肉がんの密接な関係

かつては喫煙と飲酒が主たる原因とされてきましたが、近年の研究では口腔内の衛生状態が極めて重要なリスク因子であることが常識となりつつあります。この点に関する科学的根拠は非常に強力です。

2023年に医学雑誌Cureusで発表された大規模なシステマティックレビューおよびメタアナリシス研究は、衝撃的な結論を示しました。歯周病に罹患している人は、健康な歯肉を持つ人と比較して口腔がんを発症するリスクが2.14倍高い(オッズ比=2.14)ことが明らかになったのです4。また、単に口腔衛生状態が悪いだけでも、リスクは1.29倍に上昇しました。

この関連性のメカニズムとして、特定の歯周病原細菌の役割が注目されています。2019年のシステマティックレビューでは、歯周病の主要な原因菌である「ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)」が、口腔がんの発生と進行を促進する可能性があることが示唆されています13。これらの細菌が産生する毒素や、それが引き起こす慢性的な炎症が、細胞のがん化を誘発すると考えられているのです。

3.3. その他のリスク因子

上記以外にも、以下のような因子がリスクを高めることが知られています。

  • 慢性的な機械的刺激: サイズが合わない入れ歯や、欠けたり尖ったりした歯が長期間にわたって粘膜の同じ場所を刺激し続けることも、がん化の一因となり得ます。あるメタアナリシスでは、このような慢性的な刺激が口腔がんのリスクを2.56倍に高めると報告されています14
  • ウイルス感染: 特にヒトパピローマウイルス(HPV)は、中咽頭がんの主要な原因として知られていますが、一部の口腔がんとの関連も指摘されています。
  • 栄養状態: 果物や野菜の摂取が少ないなど、栄養バランスの偏りもリスク因子の一つと考えられています。

見逃さないで!歯肉がんの初期症状セルフチェックリスト

歯肉がんの予後は、いかに早く発見できるかにかかっています。月に一度は鏡の前でご自身の口の中をチェックする習慣をつけましょう。以下に、米国国立がん研究所(NCI)や日本の専門機関が示す、注意すべき初期症状のチェックリストを挙げます1015

  • 2週間以上治らない口内炎や潰瘍、びらんがある。
  • ✅ 歯茎の色が部分的に白くなったり(白板症)、赤くなったり(紅板症)している。あるいは黒っぽいシミがある。
  • ✅ 歯茎に硬いしこりや、カリフラワーのような凹凸のある腫れがある。
  • ✅ 特定の歯が、歯周病でもないのにぐらぐらする、または抜歯後の傷がなかなか治らない。
  • ✅ 理由もなく歯茎から出血したり、痛みが続いたりする。
  • ✅ 入れ歯が急に合わなくなった、装着時に痛みを感じる。
  • ✅ 口の開けにくさや、顎の周辺にしびれを感じる。

【重要な行動喚起】
このリストのうち、一つでも当てはまる症状が2週間以上続く場合は、絶対に放置しないでください。すぐに歯科、口腔外科、または耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門医を受診してください9

早期発見が命を救う:日本の口腔がん検診の現状と活用法

多くの歯肉がんは、早期に発見すれば高い確率で治癒が可能です。しかし、日本ではその発見が遅れるという深刻な課題があります。

5.1. なぜ日本では発見が遅れるのか?

この問題の核心について、口腔がん撲滅委員会の委員長であり、東京歯科大学口腔がんセンター長の柴原孝彦教授は警鐘を鳴らしています。教授によれば、日本の口腔がん死亡率が高い主な理由の一つは、発見の遅れにあります。驚くべきことに、日本の口腔がん患者のうち35.8%もの症例が、発見時にはすでに遠隔転移のない最も進行した段階であるステージIVで診断されているのです5。これは、胃がんや大腸がんなど他の主要ながんと比較しても著しく高い割合です。

この背景には、国民の間に「口内炎だろう」と自己判断してしまう傾向や、口腔がん検診の認知度・受診率が低いという問題があります。胃がんや大腸がん検診と異なり、口腔がん検診は国が主体となった対策型検診の対象ではなく、各自治体が任意で実施しているため、情報が行き渡りにくいのが現状です。

5.2. 自治体の口腔がん検診を賢く利用する

しかし、多くの自治体では、住民を対象とした安価な口腔がん検診(任意型検診)を実施しています。これは、自分と家族の健康を守るために非常に有効な手段です。

  • 探し方: 「お住まいの市区町村名 口腔がん検診」で検索してみてください。自治体のウェブサイトや広報誌で情報が見つかるはずです。
  • 対象と費用: 対象年齢(例:40歳以上など)や費用は自治体によって異なりますが、多くは無料または数百円から二千円程度の自己負担で受診できます。
  • 実施例:
    • 千葉市では、40歳以上の市民を対象に、指定の歯科医療機関で口腔がん検診を実施しています8
    • 栃木市でも同様に、40歳以上の市民を対象とした個別検診を行っています16

かかりつけの歯科医院がない場合でも、こうした検診は専門家によるチェックを受ける絶好の機会です。定期的な歯科受診と併せて、ぜひ活用を検討してください。

5.3. 社会的な取り組み:レッド&ホワイトリボンキャンペーン

医療界もこの状況を座視しているわけではありません。日本口腔腫瘍学会(JSOO)、日本口腔外科学会(JSOMS)、そして楽天メディカルジャパンなどが連携し、「レッド&ホワイトリボンキャンペーン」を展開しています1718。これは、口腔がんの正しい知識の普及と早期発見の重要性を訴える社会的な活動です。また、過去にはアーティストの堀ちえみさんが舌がんの経験を公表したことで、社会的な関心が一時期高まりました19。このような活動は、口腔がんへの認識を高める上で重要な役割を果たしています。


歯肉がんの診断プロセス:何が行われるのか?

専門医を受診した場合、歯肉がんが疑われると以下のようなプロセスで診断が確定されます1520

  1. 視診・触診: 医師が直接口の中を見て、病変部の大きさ、形、色、硬さなどを詳細に確認します。また、首のリンパ節に腫れがないかなども触って確かめます。
  2. 生検(組織診): 診断を確定するための最も重要な検査です。病変部の一部を少量(米粒程度)採取し、顕微鏡でがん細胞の有無を調べます。これは「病理診断」と呼ばれ、がんの確定診断(ゴールデンスタンダード)となります。
  3. 画像診断: がんの広がりや深さ、顎の骨への浸潤、リンパ節や他の臓器への転移の有無を評価するために行われます。
    • CT検査: 主に骨への浸潤の程度を詳しく見るのに適しています。
    • MRI検査: 歯肉や舌、筋肉といった軟らかい組織への広がりを詳細に評価するのに優れています。
    • PET検査: 全身への転移を一度に調べることができる検査です。

これらの検査結果を総合的に評価し、がんの進行度(ステージ)を決定した上で、最適な治療方針が立てられます。

【ステージ別】歯肉がんの標準治療法と最新動向

歯肉がんの治療は、がんの進行度(ステージ)や患者さんの全身状態などを考慮して決定されます。ここでは、「口腔癌診療ガイドライン 2023年版」2や米国がん協会6の指針を基に、標準的な治療法を解説します。

7.1. 早期がん(ステージ0, I, II)の治療

早期の歯肉がんの場合、治療の第一選択は外科手術です。がんができた部分を、周囲の正常な組織を含めて切除する「局所切除術」が行われます。早期であればあるほど切除範囲は小さく済み、顎の骨を温存できる可能性も高くなります。機能的な障害も少なく、この段階で治療できれば予後は非常に良好です。状況によっては、放射線治療が選択されることもあります。

7.2. 進行がん(ステージIII, IVA, IVB)の治療

がんが進行し、顎の骨や周囲の組織に広がっている場合は、より広範囲な手術が必要となります。

  • 顎骨切除術: がんの浸潤の程度に応じて、下顎または上顎の骨を部分的に、あるいは広範囲に切除します。
  • 頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ): 首のリンパ節への転移が疑われる、またはその危険性が高い場合、予防的にリンパ節と周囲の組織を切除する手術です。
  • 再建手術: 顎の骨や皮膚などを広範囲に切除した場合、機能(話す、食べる)と見た目(整容性)を回復させるために、体の他の部分(腕、足、腹部など)から骨や皮膚、血管を移植する再建手術が同時に行われます。これは治療後の生活の質(QOL)を維持するために極めて重要です。

さらに、手術後に再発のリスクを減らす目的で、術後補助療法として放射線治療や化学療法(抗がん剤治療)、あるいはその両方を組み合わせた化学放射線療法が行われることが一般的です。

7.3. 転移性がん(ステージIVC)と再発がんの治療

がんが肺や骨など、口から離れた臓器に転移している場合(遠隔転移)や、治療後に再発した場合は、全身に効果を及ぼす治療法が中心となります。

  • 化学療法: 抗がん剤を点滴や内服で投与し、全身のがん細胞を攻撃します。
  • 分子標的治療: がん細胞の増殖に関わる特定の分子の働きを阻害する薬剤を使用します。
  • 免疫チェックポイント阻害薬: ニボルマブやペムブロリズマブといった薬剤で、患者さん自身の免疫システムががん細胞を攻撃する力を回復させる、比較的新しい治療法です。

治療後の生活(QOL)の維持とリハビリテーション

歯肉がんの治療、特に進行がんの手術は、話す(構音)、食べる(嚥下)、そして容貌に影響を及ぼす可能性があります。そのため、治療後の生活の質(QOL)を最大限に維持・向上させることが非常に重要です21

手術後早期から、言語聴覚士による発音や嚥下の訓練、歯科医師による特殊な入れ歯(顎補綴)の作製、管理栄養士による食事指導など、多職種の専門家からなるチームによるリハビリテーションが行われます。また、術後の口腔ケアは感染予防や機能回復のために不可欠であり、専門的な指導が必要となります22

科学的根拠に基づく歯肉がんの予防法

歯肉がんは、その多くが生活習慣に関連しており、予防が可能な病気です。以下の行動は、科学的にその有効性が示されています。

  1. 禁煙と節酒: 最大のリスク因子である喫煙と過度な飲酒をやめることが、最も効果的な予防策です6
  2. 口腔衛生の徹底: 歯周病が口腔がんの確かなリスク因子であることが示されている以上4、毎日の丁寧な歯磨きやフロス使用、歯科医院での定期的な清掃が極めて重要です。
  3. バランスの取れた食事: 新鮮な果物や野菜を豊富に含む、バランスの取れた食事を心がけましょう。
  4. 定期的な歯科検診: 少なくとも年に1~2回は歯科医院を受診し、口の中に異常がないかプロの目でチェックしてもらうことが、万が一の際の前がん病変や早期がんの発見に繋がります。

よくある質問

歯肉がんの治療費はどのくらいかかりますか?

治療費は、がんのステージや治療内容(手術の規模、入院期間、使用する薬剤など)によって大きく異なります。日本では公的医療保険が適用されるため、自己負担は通常1~3割です。さらに、月々の医療費の自己負担額が上限を超える場合に超過分が払い戻される「高額療養費制度」を利用できます。具体的な金額については、治療を受ける医療機関の相談窓口(ソーシャルワーカーなど)に確認することをお勧めします。

手術後の食事はどうなりますか?

手術の範囲によりますが、術後しばらくは流動食や刻み食、ミキサー食など、噛まずに食べられる形態の食事が必要になることが多いです。顎の骨を切除した場合などは、嚥下(飲み込み)のリハビリが必要になることもあります。栄養士や言語聴覚士と相談しながら、段階的に食事の形態を上げていくことになります。栄養をしっかり摂ることが、体力回復のために非常に重要です。

若い人でも歯肉がんになりますか?

歯肉がんは中高年者に多く見られますが、若い世代での発症も皆無ではありません。特に、喫煙や不衛生な口腔環境などのリスク因子があれば、年齢に関わらず注意が必要です。近年では、若年者の口腔がんも報告されており、年齢を理由に「自分は大丈夫」と過信するのは危険です。口の中の異常に気づいたら、年齢にかかわらず専門医に相談してください。

結論

歯肉がんは、日本の高い死亡率という厳しい現実を持つ、決して軽視できない病気です。しかし、その原因の多くは生活習慣に根差し、予防が可能であることもまた事実です。そして何よりも、早期に発見しさえすれば、機能を温存しながら高い確率で克服することができます。

この記事を通じてお伝えしたかった最も重要なメッセージは、「ご自身の口の中に関心と責任を持つこと」です。2週間以上治らない口内炎を放置しないこと。毎月のセルフチェックと、年に一度の専門家による検診を習慣にすること。それが、この静かで危険な病からあなた自身を守るための、最も確実で強力な方法です。もし今、何か少しでも不安な症状があるならば、ためらわずに専門医の扉を叩いてください。本記事が提供する正確で信頼できる情報が、その一歩を踏み出すための確かな支えとなることを、JHO編集委員会一同、心から願っています。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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