この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性を示したリストです。
- 世界保健機関(WHO): この記事における閉経周辺期(ペリメノポーズ)、閉経(メノポーズ)の定義は、WHOが発表した国際基準に基づいています2。
- 北米閉経学会(NAMS): ホルモン補充療法(MHT)の有効性と安全性に関する記述は、NAMSの2022年版公式声明に基づき、最新の科学的コンセンサスを反映しています3。
- 日本女性医学学会(JMWH): 日本人女性に特有の症状リストや国内の診療状況に関する情報は、JMWHが提供するガイドラインや公開情報に準拠しています45。
- 厚生労働省(MHLW): 日本国内の女性が経験する更年期症状の有病率、受診行動、そして生活への影響に関する統計データは、MHLWが実施した大規模な意識調査に基づいています1。
- パーソル総合研究所: 更年期症状が仕事の生産性や離職意向に与える経済的・社会的影響に関する具体的なデータは、同研究所の詳細な定量調査を引用しています6。
要点まとめ
- 更年期は病気ではなく、月経周期の変化から始まる自然な移行期です。日本の女性の平均閉経年齢は約50.5歳ですが、変化は40代から始まることが一般的です。
- サインは多様で、ほてりや発汗などの身体的症状だけでなく、気分の落ち込み、不安、「ブレインフォグ」と呼ばれる思考力の低下などの精神的症状も含まれます。
- 症状の評価には、医療現場でも使われる「簡略更年期指数(SMI)」という自己診断ツールが役立ちます。スコアに応じて、生活習慣の見直しや専門医への相談を検討しましょう。
- 更年期症状は、仕事の生産性を最大50%低下させ、離職の原因にもなり得る深刻な問題です。適切な対処は個人の健康だけでなく、社会経済的にも重要です。
- ホルモン補充療法(MHT)は多くの症状に有効な治療法ですが、漢方薬や生活習慣の改善など、多様な選択肢があります。どの治療法が最適か、医師との相談が不可欠です。
第1部:更年期の解読 – 最初の変化から医学的定義まで
更年期に関する正確な知識は、漠然とした不安を解消し、適切な第一歩を踏み出すための基盤となります。ここでは、国際的な医学基準に基づき、この移行期の全体像を明らかにします。
1.1. 閉経への旅の各段階:ペリメノポーズ、メノポーズ、ポストメノポーズとは?
女性の生殖能力の終わりは、突然訪れるものではなく、長い時間をかけた段階的なプロセスです。医学的には主に3つの段階に分けられ、それぞれの特徴を理解することが重要です。
- ペリメノポーズ(閉経周辺期): 「ペリ」は「周辺」を意味し、閉経に向かう移行期全体を指します。この時期に、卵巣機能が徐々に低下し始め、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が不安定になります。その結果、月経不順や、ほてり、気分の変動といった最初の更年期症状が現れ始めます。期間は個人差が大きく、数年間続くこともあります。
- メノポーズ(閉経): 医学的には「最後の月経から12ヶ月間連続して月経がなかった時点」と定義されます。これは、ある特定の日付を指すものであり、後から振り返って判断されるものです。世界保健機関(WHO)もこの定義を国際基準として採用しています2。日本の女性の平均閉経年齢は約50.5歳とされていますが、40歳から50代後半まで大きな個人差があります78。
- ポストメノポーズ(閉経後): 閉経を迎えた後の期間を指します。この段階では、卵巣からのエストロゲン分泌はほぼ停止し、体は低エストロゲン状態に順応します。更年期症状の多くは時間とともに軽快しますが、エストロゲンの保護作用が失われることで、骨粗しょう症や心血管疾患などの長期的な健康上の危険性が高まるため、継続的な健康管理がより重要になります。
1.2. 日本人女性の平均閉経年齢と個人差
前述の通り、日本人女性の平均閉経年齢は約50.5歳ですが、これはあくまで平均値です7。実際には40代前半で閉経を迎える人もいれば、50代後半まで月経が続く人もいます。この個人差には、遺伝的要因、喫煙、体格指数(BMI)、生活習慣などが関与していると考えられています。特に、喫煙は閉経を1〜2年早めることが多くの研究で示されています。大切なのは、平均年齢に一喜一憂するのではなく、自身の体の変化に注意を向けることです。
1.3. 「プレ更年期」:一般用語の裏にある真実
メディアや日常会話で「プレ更年期」という言葉を耳にすることがありますが、これは正式な医学用語ではないことを理解しておくことが非常に重要です。30代後半から40代前半にかけて現れる不調を指して使われることが多いですが、この時期の症状は更年期の前兆とは限らず、他の原因による可能性も十分にあります。
例えば、月経前症候群(PMS)、甲状腺機能の異常、鉄欠乏性貧血などは、更年期と似たような疲労感、気分の落ち込み、イライラなどを引き起こすことがあります。自己判断で「プレ更年期だから」と決めつけず、まずは婦人科を受診し、症状の原因を正確に鑑別診断してもらうことが、適切な対処への第一歩です。
第2部:症状の全リスト – 体と心の変化を認識する
更年期のサインは、よく知られる「ほてり」だけではありません。非常に多岐にわたり、身体的なものから精神的なものまで、個人によって現れ方も様々です。ここでは、日本女性医学学会などの権威ある機関の情報を基に、包括的な症状リストを提供します49。
2.1. 最も早く、最も一般的なサイン:月経周期の変化
多くの場合、更年期への移行を示す最初のサインは月経周期の乱れです。これは、卵巣機能が低下し、ホルモンバランスが揺らぎ始めることで起こります。典型的な変化のパターンは以下の通りです。
- 周期の短縮: 意外に思われるかもしれませんが、移行期の初期には、脳からの指令に卵巣が過剰に反応し、周期が25日未満など、以前より短くなることがあります7。
- 周期の延長と不規則化: 次第に排卵が不規則になり、周期が長くなったり、数ヶ月間飛んだりするようになります。
- 経血量の変化: 経血量が極端に多くなったり、逆に少なくなってだらだらと続いたりすることもあります。
米国国立老化研究所(NIA)も、こうした月経パターンの変化を更年期移行の重要な指標として挙げています10。
2.2. 身体的症状:ほてりから関節の痛みまで
エストロゲンの減少は、体の様々なシステムに影響を及ぼします。
- 血管運動神経症状: 最も代表的な症状で、自律神経の調節がうまくいかなくなることで起こります。
- ほてり(ホットフラッシュ): 突然、顔や上半身がカッと熱くなる感覚。
- 寝汗(夜間発汗): 夜中に大量の汗をかき、目が覚めてしまう。
- 冷え: ほてりの後に、逆に強い冷えを感じることもある。
- 運動器系の症状:
- 関節痛・こわばり: 特に朝起きた時に関節が痛んだり、動きにくかったりする。エストロゲンには関節の炎症を抑える働きがあるため、その減少が影響します。
- 腰痛、肩こり、背中の痛み: 筋肉や骨の変性も関与します。
- 皮膚・毛髪の症状:
- 皮膚の乾燥・かゆみ: コラーゲンの生成が減少し、皮膚の潤いが失われます。
- 髪の毛が細くなる、抜け毛: ホルモンバランスの変化が毛周期に影響します。
- その他の身体症状:
- 疲労感・倦怠感: 十分に休んでも疲れが取れない。
- 動悸・息切れ: 心臓の働きを調節する自律神経の乱れが原因。
- 頭痛・めまい・耳鳴り: 血管の収縮や拡張が不安定になることで起こる。
2.3. 精神・認知機能の症状:「ブレインフォグ」と感情の波
更年期の影響は身体だけに留まりません。脳機能や精神状態にも顕著な変化が現れることがあり、これらはしばしば誤解されたり、本人の気のせいだと片付けられたりしがちです。
- 感情の変動: イライラ、不安感、突然の悲しみ、気分の落ち込み。
- 意欲の低下: 何事にもやる気が出ない、興味が持てない。
- 睡眠障害: 寝つきが悪い、夜中に目が覚める(寝汗が原因の場合も)、朝早く目覚めてしまう。
- 認知機能の変化(ブレインフォグ): 「頭に霧がかかったようだ」と表現される状態で、集中力の低下、物忘れ、判断力の低下などがみられます。これは決して気のせいではなく、エストロゲンが記憶や学習に関わる脳の部位(海馬など)の機能に影響を与えるためと考えられています。
日本の専門家である寺内公一医師の研究では、更年期女性における頭痛やめまいといった身体症状が、不安や抑うつといった精神症状と密接に関連していることが示されており、心と体のつながりの重要性を強調しています1112。
2.4. 泌尿生殖器の健康(GSM):隠された、しかし大きな問題
非常に一般的でありながら、羞恥心から相談しにくいのが、泌尿器や生殖器に関する症状です。近年、医学界ではこれらの問題を包括的に捉えるため、「閉経関連泌尿生殖器症候群(Genitourinary Syndrome of Menopause: GSM)」という正式な用語を使用しています2。これは、エストロゲン欠乏が膣や尿路の組織に直接影響を与えることで生じます。
- 膣の乾燥、かゆみ、灼熱感
- 性交時痛
- 頻尿、尿意切迫感(急に強い尿意を感じる)
- 繰り返す膀胱炎、尿漏れ
これらの症状は生活の質を著しく低下させるため、専門医に相談することが非常に重要です。
2.5. 年代別症状の傾向(40代 vs 50代)
更年期の症状は、年代によって現れやすいものが異なります。これはあくまで一般的な傾向であり、個人差が大きいことを念頭に置いてください13。
年代 | 主な傾向 |
---|---|
40代(特に前半~半ば) | 月経周期の乱れ(特に周期の短縮)が最初のサインとして現れることが多い。月経前症候群(PMS)の症状が悪化したり、原因不明の疲労感や気分の変動が目立ち始めたりする。 |
50代(特に閉経後) | 閉経を迎えると、ほてりや寝汗といった血管運動神経症状がピークに達することが多い。また、エストロゲン欠乏が長期化するため、GSM(泌尿生殖器症候群)の症状がより顕著になり、骨密度の低下も進行し始める。 |
第3部:あなたの行動計画 – 自己チェックと受診のタイミング
自身の症状を客観的に把握し、適切なタイミングで専門家の助けを求めることは、更年期を上手に乗り切るための鍵です。ここでは、具体的な行動をサポートするツールとガイドラインを提供します。
3.1. 自宅でできる自己診断ツール:簡略更年期指数(SMI)
「簡略更年期指数(Simplified Menopause Index: SMI)」は、日本の多くの婦人科で使用されている、信頼性の高い自己診断チェックシートです141516。10個の質問に答えることで、ご自身の症状の重症度を客観的に評価することができます。
簡略更年期指数(SMI)チェックシート
各症状について、ご自身の状態に最も近いものを選んでください。(強:常に強く感じる、中:時々強く感じる、弱:たまに感じる、無:感じない)
- 顔がほてる
- 汗をかきやすい
- 腰や手足が冷えやすい
- 息切れ、動悸がする
- 寝つきが悪い、または眠りが浅い
- 怒りやすく、イライラする
- くよくよしたり、憂うつになることがある
- 頭痛、めまい、吐き気がよくある
- 疲れやすい
- 肩こり、腰痛、手足の痛みがある
採点方法と評価
各質問の答えに以下の点数をつけ、合計点を計算します。
- 強: 10点
- 中: 6点
- 弱: 3点
- 無: 0点
合計点による評価の目安:
- 0~25点: 健全。現在の生活習慣を続けましょう。
- 26~50点: 注意。食事や運動など、生活習慣の見直しを始めましょう。
- 51~65点: 婦人科の受診を推奨します。専門家のアドバイスを受けましょう。
- 66点以上: 長期間の計画的な治療が必要です。速やかに専門医に相談してください。
3.2. 「何科を受診すればいい?」- もう迷わないための明確なガイド
多くの女性が医療機関へのアクセスをためらう最大の理由の一つが、「どの科に行けばいいかわからない」という混乱です17。症状によって適切な専門科は異なりますが、以下のガイドを参考にしてください。
主な症状 | 最初に相談すべき科 | 考えられる連携先 |
---|---|---|
月経不順、ほてり、寝汗、GSM症状(膣の乾燥など) | 婦人科 または 女性外来 | – |
強い不安、抑うつ、不眠、意欲低下 | 心療内科 または 精神科 | 婦人科(ホルモンの影響を評価するため) |
激しい関節痛、腰痛 | 整形外科 | 婦人科(他の病気の可能性を除外した後) |
動悸、息切れ、高血圧 | 内科 または 循環器内科 | 婦人科(心血管疾患の危険因子を評価するため) |
最も重要なポイント:どの科から始めても構いませんが、必ずご自身のすべての症状を伝えるようにしてください。優れた医師は、必要に応じて他の専門科との連携を調整してくれます。近年、女性の健康問題を総合的に診る「女性外来」を設置する病院も増えており、どこに相談すべきか迷う場合の最初の窓口として非常に有用です18。
第4部:科学的根拠に基づく管理と治療の選択肢
更年期症状は「我慢」するものではありません。現在では、生活の質を大きく改善するための、安全で効果的な治療法が多数存在します。ここでは、客観的で最新の情報を提供し、あなたが医師と効果的な対話をするための準備を支援します。
4.1. ホルモン補充療法(MHT/HRT):血管運動神経症状の標準治療
ホルモン補充療法(MHT、またはHRTとも呼ばれる)は、減少したエストロゲンを少量補充することで、ホルモンバランスの乱れに起因する様々な症状を緩和する治療法です。特に、ほてり、寝汗といった血管運動神経症状に対しては、現在利用可能な治療法の中で最も効果が高い「標準治療」と位置づけられています。
北米閉経学会(NAMS)が発表した2022年の公式声明によると、60歳未満または閉経後10年以内の健康な女性のほとんどにおいて、MHTの利益は危険性を上回ると結論づけられています319。また、骨密度の低下を防ぎ、骨粗しょう症を予防する効果も確立されています。日本の2025年版HRTガイドラインも、日本人女性に対する最新の知見と推奨事項を反映する予定です20。ただし、乳がんや血栓症の既往があるなど、MHTが適さない場合もあるため、必ず専門医との詳細な相談が必要です。
4.2. 非ホルモン療法と漢方医学の選択
MHTを希望しない、あるいは医学的な理由で使用できない女性のためにも、有効な選択肢が存在します。
- 非ホルモン薬物療法: 内分泌学会の診療ガイドラインによると、SSRI/SNRIと呼ばれる種類の抗うつ薬は、ほてりの頻度と重症度を軽減する効果が示されています21。これらは、脳内の神経伝達物質に作用することで、体温調節中枢を安定させると考えられています。
- 漢方医学(Kampo): 日本では、伝統的な漢方薬も更年期症状の治療に広く用いられています。漢方医学は、特定の症状を抑えるだけでなく、「気・血・水」のバランスを整えることで心身全体の不調を改善することを目指します。当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などが、個人の体質(証)に合わせて処方されます922。
第5部:仕事と生活への影響 – 見えない負担を乗り越える
更年期症状は、単なる個人の健康問題に留まりません。特に、キャリアの中核を担う年代の女性にとって、その影響は職場や社会にまで及びます。この問題に光を当てることは、JAPANESEHEALTH.ORGの重要な責務です。
5.1. 更年期が仕事のパフォーマンスに与える影響:データが語る現実
「体調が悪くて仕事に集中できない」という感覚は、主観的なものではありません。具体的なデータがその深刻さを示しています。パーソル総合研究所が実施した大規模調査では、症状が重い日には仕事の生産性が最大で50%も低下する可能性があることが明らかになりました623。さらに、NHKと日本女性医学学会による共同調査では、更年期症状が原因で約2割の女性が離職を考えたり、実際に仕事を辞めたりしており、これは約46万人に相当すると推計されています24。この経済的損失は、個人だけでなく日本社会全体にとって大きな課題です。
5.2. 職場でのコミュニケーションとサポートの求め方
多くの女性が、職場で更年期の問題を打ち明けることにためらいを感じています。しかし、状況を改善するためには、勇気を出して行動することも必要です。信頼できる上司や人事部の担当者に相談することを検討してみましょう。近年、女性の健康課題をテクノロジーで支援する「フェムテック」への関心が高まり、従業員の健康を支援する制度を導入する企業も増えつつあります。自身の状況を伝える際は、「個人的な不調」としてではなく、「医学的な状態であり、適切なサポートがあれば生産性を維持できる」という視点で話すことが有効です。例えば、「現在、更年期に伴う症状の治療を受けており、一時的に集中力が途切れることがありますが、業務への影響を最小限に抑えるため、短時間の休憩を柔軟に取らせていただくことは可能でしょうか」といった具体的な相談が考えられます。
第6部:閉経後の健やかな生活 – 長期的な健康への投資
更年期の症状が落ち着いた後も、健康管理の重要性は変わりません。むしろ、エストロゲンの保護作用がなくなることで高まる、特定の疾患の危険性に対する予防が新たなテーマとなります。
6.1. 骨の健康を守る:骨粗しょう症の予防
エストロゲンは、骨の破壊(骨吸収)を抑制する重要な役割を担っています。閉経によるエストロゲンの急激な減少は、骨密度の低下を加速させ、骨粗しょう症の危険性を著しく高めます。骨粗しょう症自体に症状はありませんが、転倒などによる骨折、特に大腿骨や脊椎の骨折は、生活の質を著しく損ない、寝たきりの原因にもなります。北米閉経学会のガイドラインでは、閉経後の女性に対し、十分なカルシウムとビタミンDの摂取、ウォーキングや筋力トレーニングなどの体重がかかる運動、そして危険性が高い場合には骨粗しょう症治療薬の使用を推奨しています3。
6.2. 心血管の健康とコレステロール管理
エストロゲンには、血管のしなやかさを保ち、悪玉(LDL)コレステロールを低く、善玉(HDL)コレステロールを高く維持する働きがあります。閉経後はこの保護作用が失われるため、悪玉コレステロール値が上昇し、動脈硬化が進行しやすくなります8。これにより、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の危険性が男性と同等、あるいはそれ以上に高まります。定期的な健康診断で血圧やコレステロール値を確認し、バランスの取れた食事や有酸素運動を心がけるなど、生活習慣の見直しがこれまで以上に重要になります。
よくある質問
ホルモン補充療法(MHT)は安全ですか?乳がんの危険性が心配です。
これは非常によくある、そして重要な質問です。過去の研究でMHTと乳がんの関連が指摘されたため、多くの女性が不安を感じています。しかし、最新の研究と専門家の見解では、適切な人が適切な時期に適切な方法で行えば、MHTの利益は危険性を大きく上回るとされています19。北米閉経学会の2022年の声明では、50代または閉経後10年以内にMHTを開始した場合、乳がんの危険性の増加はごくわずかであると結論付けています3。一方で、子宮がある女性がエストロゲン単独の療法を受けると子宮体がんの危険性が高まるため、必ず黄体ホルモンを併用します。個々の健康状態や家族歴によって最適な治療法は異なるため、専門医と利益・危険性について十分に話し合うことが不可欠です。自己判断で避けるのではなく、正確な情報に基づいて判断することが大切です。
更年期症状と月経前症候群(PMS)はどう違うのですか?
症状が似ているため混同されがちですが、発生するタイミングに大きな違いがあります。PMSは、月経が始まる前の約2週間に起こり、月経が始まると症状が軽快または消失するのが特徴です。これは、排卵後のホルモン変動に関連しています。一方、更年期症状は、月経周期に関係なく、持続的に現れる傾向があります。特に40代では、PMSが悪化し、さらに更年期症状が重なって現れることもあり、区別が難しい場合があります。症状が現れるパターン(月経周期との関連性)を記録し、婦人科医に相談することが、正確な診断につながります。
薬を使わずに症状を管理する方法はありますか?
はい、あります。症状が比較的軽い場合や、薬物療法を希望しない場合、生活習慣の改善が非常に有効です。具体的には、大豆製品(イソフラボンがエストロゲンに似た働きをする)を積極的に摂る、ウォーキングやヨガなどの定期的な運動を行う、質の良い睡眠を確保する、ストレス管理(瞑想、趣味の時間など)を心がける、といったことが挙げられます。ただし、これらの方法だけで重い症状を管理するのは難しい場合もあります。最近では、英国の医学雑誌『The Lancet』が、社会全体が更年期を過度に医療の対象とすることへの警鐘を鳴らし、健康的な老化の一部として捉え直す視点の重要性も指摘しています2526。生活習慣の改善を基本としつつ、必要であれば薬物療法の選択肢についても医師と相談するのが最も賢明なアプローチです。
いつになったら更年期は終わるのでしょうか?
更年期症状が続く期間には大きな個人差があります。一般的に、閉経(平均約50.5歳)を挟んだ前後10年間を更年期と呼びます。ほてりなどの血管運動神経症状は、平均して7~10年続くと報告されていますが、中には10年以上続く人もいます。多くの女性では、閉経後、体が新しいホルモンバランスに慣れるにつれて、症状は徐々に軽快していきます。しかし、GSM(泌尿生殖器症候群)のように、治療をしない限り進行する症状もあります。終わりを待つのではなく、症状が生活の質を損なっていると感じたら、どの段階であっても専門家に相談し、積極的に管理していくことが重要です。
結論
更年期は、女性の人生における避けられない自然な移行期です。しかし、それは決して、心身の不調をただ「我慢」して耐え忍ぶべき時期ではありません。この記事で解説したように、月経不順から始まり、身体、精神、そしてキャリアにまで及ぶ多岐にわたるサインを正確に理解することは、あなた自身が健康の主導権を握るための第一歩です。科学的根拠に基づいた知識は、漠然とした不安を解消し、あなたに力を与えてくれます。SMIのような自己診断ツールを活用し、必要であればためらわずに専門医の扉を叩いてください。ホルモン補充療法から漢方薬、生活習慣の改善まで、現代医学にはあなたの生活の質を維持・向上させるための多くの選択肢があります。更年期は終わりではなく、新しい健康観を持って、より賢く、より健やかに生きるための新たな始まりです。この情報が、あなたが自信を持ってその一歩を踏み出すための、信頼できる羅針盤となることを願っています。
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