赤ちゃんの夜泣き・便秘はロイテリ菌で改善?科学的根拠と正しい使い方
小児科

赤ちゃんの夜泣き・便秘はロイテリ菌で改善?科学的根拠と正しい使い方

赤ちゃんの絶え間ない夜泣き、つらそうな便秘。我が子の不快な症状に心を痛め、解決策を探し求める保護者の方々の悩みは尽きません。近年、こうした乳児期特有の消化器系の問題に対し、健康な腸内環境、すなわち「腸内フローラ」の役割が注目されています1。その中でも、母乳由来のプロバイオティクス「ロイテリ菌」を含んだ製品、バイオガイアが多くの関心を集めています。しかし、その効果は本物なのでしょうか?どのような科学的根拠があるのでしょうか?この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が最新の国際的な研究論文や日本の専門機関の指針に基づき、赤ちゃんへのバイオガイア使用に関する有効性、安全性、そして正しい使い方を徹底的に解説します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、参照された実際の情報源のみを含み、提示された医学的指針と直接の関連性があるものです。

  • Sung V, et al. (Pediatrics誌, 2018年): この記事における「乳児疝痛(夜泣き)に対するL. reuteri DSM 17938の効果、特に母乳栄養児における有効性」に関する指針は、この高品質なメタアナリシスに基づいています2
  • Gutiérrez-Castrellón P, et al. (Medicine誌, 2017年): 「L. reuteriが他の治療法と比較して乳児疝痛に有効な介入の一つである」という記述は、この広範なネットワーク・メタアナリシスに基づいています3
  • 欧州小児栄養消化器肝臓学会 (ESPGHAN, 2023年): 「国際的な専門機関がL. reuteri DSM 17938の使用を推奨している」という権威付けは、ESPGHANの最新のポジションペーパーに基づいています4
  • 日本小児栄養消化器肝臓学会 (JSPGHAN, 2013年): 「日本の診療ガイドラインが小児の便秘治療においてプロバイオティクスの使用を考慮している」という記述は、JSPGHANが発行した公式ガイドラインに基づいています5
  • 米国食品医薬品局 (FDA): 「L. reuteri DSM 17938の安全性が国際的に認められている」という点は、FDAによるGRAS(一般に安全と認められる)認証に基づいています6

この記事のポイント

  • 乳児疝痛(夜泣き)に対し、プロバイオティクス「L. reuteri DSM 17938」は、特に母乳で育てられている赤ちゃんにおいて、泣いている時間を大幅に短縮するという多数の質の高い科学的根拠(エビデンス)があります23
  • 赤ちゃんの便秘については、日本の「小児慢性機能性便秘症 診療ガイドライン」においても、プロバイオティクスが治療の選択肢の一つとして考慮されています5
  • その安全性は、米国食品医薬品局(FDA)によるGRAS認証などによって高く評価されていますが6、効果には個人差があり、特に人工乳(粉ミルク)で育てられている赤ちゃんにおける科学的根拠はまだ限定的です2
  • どのようなサプリメントであっても、使用を開始する前には、必ずかかりつけの小児科医に相談することが最も重要です。

バイオガイアとは?主成分「Limosilactobacillus reuteri DSM 17938」の正体

バイオガイアは、スウェーデンで開発されたプロバイオティクス製品です。その中心となる有効成分は、「Limosilactobacillus reuteri DSM 17938」(以前はLactobacillus reuteriとして知られていました)という特定の菌株です。この菌株の最大の特徴は、もともと人の母乳から分離された天然の乳酸菌であるという点にあります7。これにより、赤ちゃんの体と自然に調和しやすいと考えられています。

L. reuteri DSM 17938の作用機序は、複数の側面から研究されています。一つは、ロイテリンという天然の抗菌物質を産生し、腸内の有害な細菌の増殖を抑制する能力です。もう一つは、腸管の免疫系に働きかけ、炎症を調整し、腸内環境のバランスを整える役割です8。この「菌株特異性」、つまり特定の菌株だけが持つ独自の科学的根拠こそが、他の多くのプロバイオティクス製品と一線を画す重要な要素です。


【最重要エビデンス】乳児疝痛(激しい夜泣き)への科学的効果

乳児疝痛、一般的には「激しい夜泣き」として知られるこの症状は、多くの保護者を心身ともに疲弊させます。この問題に対するL. reuteri DSM 17938の効果は、数多くの臨床研究によって検証されており、現在利用可能なプロバイオティクスの中で最も強力な科学的根拠を持つ分野の一つです。

国際的な大規模研究が示すこと:母乳栄養児への明確な効果

この分野で最も信頼性の高い証拠は、複数の質の高い研究結果を統合して分析する「メタアナリシス」から得られます。

  • Pediatrics誌のメタアナリシス(Sung V. et al., 2018): 権威ある小児科専門誌「Pediatrics」に掲載されたこの研究は、4つの質の高いランダム化比較試験(研究の信頼性を担保する手法)に参加した個々の赤ちゃんのデータを統合したものです。その結論として、「母乳栄養児の乳児疝痛において、L. reuteri DSM 17938を補給すると、偽薬(効果のない薬)を投与されたグループと比較して、1日あたりの平均啼泣時間が統計的に有意に減少した」と報告しています2。これは現在存在する中で最高レベルの科学的根拠の一つとされています。
  • Medicine誌のネットワーク・メタアナリシス(Gutiérrez-Castrellón P. et al., 2017): さらに、この研究では、乳児疝痛に対する様々な治療法(食事療法など)を比較分析しました。その結果、L. reuteri DSM 17938は他の多くの選択肢よりも優れた結果を示し、最も効果的な介入の一つであると結論づけています3
  • 欧州小児栄養消化器肝臓学会(ESPGHAN)の推奨: これらの強力な科学的根拠に基づき、世界で最も権威ある小児医療組織の一つであるESPGHANは、2023年の指針で「母乳栄養児の乳児疝痛による啼泣時間を短縮するために、L. reuteri DSM 17938の使用を考慮する」という推奨(弱い推奨)を公式に発表しました4。これは、この治療法が国際的な専門家コミュニティによって認められていることを示しています。

なぜ人工乳(粉ミルク)栄養児では効果が限定的なのか?

科学的誠実さの観点から、この治療法の限界を明確に理解することが極めて重要です。前述のSung氏らによる大規模なメタアナリシスを含む複数の研究では、人工乳(粉ミルク)のみで育てられている赤ちゃんにおいては、母乳栄養児で見られたような明確な効果は確認されませんでした29

この違いが生じる理由は完全には解明されていませんが、プロバイオティクス菌株と、母乳に特有に含まれる成分(ヒトミルクオリゴ糖など)との複雑な相互作用が関係している可能性が指摘されています。これらの成分は人工乳には含まれておらず、プロバイオティクスの効果を最大限に引き出すための環境が異なる可能性があります。


赤ちゃんの便秘やその他の消化器症状への効果

便秘:日本の診療ガイドラインの見解

赤ちゃんの便秘もまた、保護者にとって大きな心配事です。この点に関して、国際的なエビデンスを日本の医療現場の文脈で捉えることが重要です。

日本の小児医療における権威ある組織、日本小児栄養消化器肝臓学会(JSPGHAN)は、2013年に発行した「小児慢性機能性便秘症 診療ガイドライン」の中で、プロバイオティクスを治療法の一つとして位置づけています。このガイドラインでは、プロバイオティクスは「行うことを考慮しても良い」(推奨度B)とされており、L. reuteriが乳児の排便回数を改善させる可能性を示唆した研究も引用されています5。これは、バイオガイアのような製品が日本の専門家の間でも治療の選択肢として認識されていることを意味します。

逆流症(吐き戻し)など:今後の研究が期待される分野

一部の保護者のレビューでは、バイオガイアの使用により赤ちゃんの逆流症(吐き戻し)やその他のお腹の不調が改善したとの報告が見られます。しかし、これらの症状に対する効果を証明するための大規模な臨床試験からの科学的根拠は、現時点ではまだ限定的であり、確定的な結論を出すにはさらなる研究が必要です。したがって、これらの効果については過度な期待をせず、慎重な姿勢で臨むべきです。


バイオガイアの安全性:赤ちゃんに使っても本当に大丈夫?

赤ちゃんに与えるものに関して、安全性が最優先されるのは当然です。バイオガイアに含まれるL. reuteri DSM 17938は、安全性に関しても広範な検証が行われています。

  • 国際的な安全認証: 米国食品医薬品局(FDA)は、この菌株に対して「GRAS(Generally Recognized As Safe)」、すなわち「一般に安全と認められる」という認証を与えています6。これは、食品への使用において高い安全基準を満たしていることを示す国際的な証明です。
  • 臨床試験での実績: 早産児を含む非常にデリケートな乳児を対象としたものも含め、数多くの臨床研究において、このプロバイオティクスの使用に関連する重大な副作用は報告されていません。
  • 日本の専門家の見解: 日本国内においても、順天堂大学の清水俊明教授(元JSPGHAN理事長)のような第一線の専門家たちが、生後早期からの健康な腸内フローラの確立の重要性を強調しています10

これらの情報から、L. reuteri DSM 17938は、適切に使用される限り、赤ちゃんにとって安全性の高い成分であると評価できます。


正しい使い方と注意点:効果を最大限に引き出すために

バイオガイアの効果を期待するためには、製品を正しく使用することが不可欠です。以下の点に注意してください。

  • 用法・用量: 推奨される摂取量は、1日5滴です。使用前によくボトルを振り、垂直に傾けてゆっくりと滴下してください11
  • 温度に関する注意: 最も重要な注意点の一つは、熱です。プロバイオティクスは生きた菌であるため、40℃以上の熱い飲み物や食べ物に混ぜると死滅してしまいます。人肌程度の温度のものに混ぜるか、スプーンに直接滴下して与えてください12
  • 継続的な使用: プロバイオティクスの効果は、数日から数週間かけて徐々に現れることがあります。腸内環境が安定するためには、毎日継続して使用することが推奨されます13
  • 医師への相談: そして何よりも、使用を開始する前や、使用中に何か気になる点があれば、必ずかかりつけの小児科医に相談してください。

よくある質問

Q1. 製品は高価ですが、本当に試す価値はありますか?

これは多くの保護者が直面する現実的な問題です。価値があるかどうかは、状況によって異なります。科学的根拠が最も強力な「母乳栄養児の乳児疝痛」に該当する場合、試す価値は高いと考えられます。製品の費用だけでなく、保護者の睡眠不足による心身の健康への影響や、不要な医療機関の受診回数が減る可能性といった「目に見えないコスト」の削減も考慮に入れると、費用対効果は高いと判断できるかもしれません14。しかし、最終的な判断は、必ず医師と相談の上で行うべきです。

Q2. 使ってみても効果が感じられない場合、どのような理由が考えられますか?

効果が実感できない場合、いくつかの理由が考えられます。客観的に以下の可能性を検討することが重要です。
1. お子様が人工乳(粉ミルク)栄養児である場合:前述の通り、このグループでは効果の科学的根拠が弱いため、効果が出にくい可能性があります2
2. 症状の原因が腸内環境以外にある場合:赤ちゃんの不快症状の原因は多様です。もし原因がアレルギーや他の医学的問題であれば、プロバイオティクスでは解決しません。
3. 使用期間が不十分な場合:効果が現れるまでには、数週間の継続的な使用が必要な場合があります13
4. 個人差:すべての赤ちゃんに同じ効果が出るとは限りません。一人ひとりの体質や腸内環境の状態によって反応は異なります。

Q3. 他のプロバイオティクス製品との違いは何ですか?

最も重要な違いは「菌株」です。プロバイオティクスの効果は「菌株特異的」であり、ある菌株で証明された効果が、別の菌株にも当てはまるわけではありません。ビーンスターク社の製品1516など、日本市場には他にも乳児向けの優れた製品がありますが、バイオガイアの主成分であるL. reuteri DSM 17938は、特に「乳児疝痛」に対して世界で最も多くの質の高い研究が行われ、その有効性が証明されている菌株の一つです。製品を選ぶ際は、どの症状に対して、どの菌株の科学的根拠を期待するのかを明確にすることが重要です。


結論

バイオガイア(主成分L. reuteri DSM 17938)は、単なる気休めではなく、特に「母乳栄養児の乳児疝痛(激しい夜泣き)」に対しては、国際的な科学的根拠に裏打ちされた有望な選択肢です。また、日本の診療ガイドラインでも考慮されているように、便秘に対しても一定の役割を果たす可能性があり、その安全性も高く評価されています。しかし、その効果は万能ではなく、特に人工乳栄養児に対するエビデンスは限定的であるという事実も認識しておく必要があります。多くの保護者が「藁にもすがる思い」で情報を探している中、最も重要な行動は、信頼できる科学的情報に基づいて、かかりつけの小児科医という最高の専門家と相談し、お子様にとって最善の決断を下すことです。

【重要】医療専門家への相談この記事は正確な情報提供を目的としていますが、医学的アドバイスに代わるものではありません。お子様の健康状態、アレルギーの有無、およびプロバイオティクスを含むあらゆるサプリメントの使用については、必ずかかりつけの小児科医または医療専門家にご相談の上、その指導に従ってください。

参考文献

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  2. Sung V, D’Amico F, Cabana MD, et al. Lactobacillus reuteri to Treat Infant Colic: A Meta-analysis. Pediatrics. 2018;141(1):e20171811. doi:10.1542/peds.2017-1811. Available from: https://publications.aap.org/pediatrics/article/141/1/e20171811/37402/Lactobacillus-reuteri-to-Treat-Infant-Colic-A
  3. Gutiérrez-Castrellón P, Indrio F, Bolio-Galvis A, et al. Efficacy of Lactobacillus reuteri DSM 17938 for infantile colic: Systematic review with network meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2017;96(51):e9375. doi:10.1097/MD.0000000000009375. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5758237/
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  5. 日本小児栄養消化器肝臓学会, 日本小児消化管機能研究会. 小児慢性機能性便秘症 診療ガイドライン. 東京: 診断と治療社; 2013. [インターネット]. [引用日: 2025年7月21日]. Available from: https://www.jspghan.org/constipation/files/guideline.pdf
  6. U.S. Food and Drug Administration. GRAS Notices. [インターネット]. [引用日: 2025年7月21日]. Available from: https://www.cfsanappsexternal.fda.gov/scripts/fdcc/?set=GRASNotices
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  15. 雪印ビーンスターク株式会社. 赤ちゃんのプロバイオ ビフィズスM1. [インターネット]. [引用日: 2025年7月21日]. Available from: https://www.mamecomi.jp/products/pro_bio
  16. 雪印ビーンスターク株式会社. 赤ちゃんのプロバイオ ビフィズスM1. [インターネット]. [引用日: 2025年7月21日]. Available from: https://www.beanstalksnow.co.jp/babymom/probiotics_m1/
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