徹底解説:糖尿病の放置は危険!知っておくべき合併症と予防・最新治療法
糖尿病

徹底解説:糖尿病の放置は危険!知っておくべき合併症と予防・最新治療法

糖尿病は、現代の日本および世界において最も深刻な健康問題の一つです。しかし、初期段階では自覚症状がほとんどないため、その危険性が見過ごされがちです。この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、日本の厚生労働省や日本糖尿病学会などの権威ある情報源に基づき、糖尿病を放置することの真の危険性、特に全身に及ぶ深刻な合併症について徹底的に解説します。さらに、糖尿病の基本的な知識から、日常生活で実践できる予防策、そして最新の治療アプローチまで、あなたの健康を守るために不可欠な情報を包括的に提供します。

要点まとめ

  • 日本の現状: 日本では「糖尿病が強く疑われる者」が約1,150万人、その予備群も約1,000万人存在し、成人の多くがリスクに晒されています1, 2。自覚症状がないまま進行することが多いため、早期発見が極めて重要です。
  • 放置する危険性: 血糖コントロールが不十分な状態が続くと、血管や神経が障害され、深刻な合併症を引き起こします3。特に、網膜症による失明、腎症による人工透析、神経障害による足の切断は「三大合併症」として知られています4
  • 全身への影響: 糖尿病は動脈硬化を10〜20年早め、心筋梗塞や脳卒中といった生命を脅かす疾患のリスクを大幅に高めます4。さらに、認知症、歯周病、感染症、がんなど、全身の様々な病気との関連も指摘されています3, 5
  • 予防と管理が鍵: 遺伝的要因もありますが、バランスの取れた食事、定期的な運動、適正体重の維持、禁煙といった生活習慣の改善によって、発症リスクを大幅に低減できます6。診断後は、適切な治療と自己管理で合併症の進行を防ぐことが可能です。

1. 糖尿病の現状:日本と世界が直面する静かなる脅威

糖尿病は、単なる個人の健康問題ではなく、国全体の医療システムや社会経済に大きな影響を与える地球規模の課題となっています。日本国内でもその影響は深刻であり、多くの人々が知らず知らずのうちにリスクにさらされています。

1.1. 日本における糖尿病の蔓延

日本における糖尿病の有病者数は依然として高い水準にあり、国民の健康における主要な課題の一つです。厚生労働省の令和元年(2019年)「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」の割合は男性で19.7%、女性で10.8%に上ります1。これは約1,150万人に相当すると推計されています1。さらに、「糖尿病の可能性を否定できない者」、いわゆる「予備群」も約1,000万人存在するとされ、これらを合わせると日本の成人人口の相当数が糖尿病のリスクに直面していることになります2

特に懸念されるのは、これらの数値には自覚症状がないために未診断のケースが多く含まれている可能性が高い点です。糖尿病は初期段階では症状が現れにくいため、多くの人々が自身のリスクに気づかないまま生活しており、診断が遅れることで重篤な合併症を発症する危険性が高まります。この未診断・未治療の期間が長引くほど、不可逆的な合併症へと進行する可能性が増大するため、早期発見と早期介入の重要性は極めて高いと言えます。

最新の統計として、厚生労働省の令和5年(2023年)「患者調査の概況」によれば、糖尿病で継続的に治療を受けている総患者数は552万3,000人と報告されています7。この数値は実際に医療機関で治療を受けている患者数であり、潜在的な患者や予備群を含めると、対策の必要性はさらに大きいことが示唆されます。

1.2. 世界における糖尿病の広がり

糖尿病の脅威は日本国内に留まらず、全世界的な健康問題として深刻化しています。国際糖尿病連合(IDF)の2025年版の報告によると、世界の成人人口(20~79歳)の11.1%、すなわち9人に1人が糖尿病を抱えて生活しており、その総数は約5億8,900万人に達するとされています8。さらに憂慮すべきは、これらの有病者のうち10人中4人以上が、自身が糖尿病であることに気づいていないという事実です8。IDFは、この状況が続けば2050年までには成人の8人に1人、約8億5,300万人が糖尿病と共に生きることになると予測しており、これは46%もの増加を意味します8。この世界的な蔓延は、個人の健康寿命を縮めるだけでなく、各国の医療財政にも大きな負担を強いる喫緊の課題です。

2. 糖尿病とは何か?基本を理解する

糖尿病の危険性を知るためには、まずこの病気がどのようなメカニズムで起こり、どのような種類があるのかを正しく理解することが不可欠です。

2.1. 糖尿病の定義とメカニズム

糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用が不十分であるか、またはインスリンの分泌量が不足することにより、血液中のブドウ糖(血糖)濃度が慢性的に高い状態が続く病気です3。インスリンは、私たちが食事から摂取したブドウ糖を、体の細胞がエネルギーとして取り込むのを助ける「鍵」のような役割を担っています。この「鍵」がうまく働かない、あるいは数が足りなくなると、ブドウ糖は細胞に入れず血液中に溢れかえり、血糖値が高い状態(高血糖)が続いてしまいます。この高血糖が、全身の血管や神経を徐々に傷つけていく元凶となるのです3

2.2. 糖尿病の主な種類

糖尿病は、その原因によって主にいくつかのタイプに分類されます。適切な治療方針を立てる上で、タイプを正確に理解することが重要です。

  • 1型糖尿病: 主に自己免疫反応により、膵臓のインスリンを産生するβ細胞が破壊されることで発症します。インスリンがほとんど、あるいは全く分泌されなくなるため、生命維持のためにインスリン注射が不可欠です。比較的若年層での発症が多い傾向がありますが、どの年齢でも発症する可能性があります3
  • 2型糖尿病: インスリンの分泌量が低下する(インスリン分泌不全)、またはインスリンが十分に機能しない状態(インスリン抵抗性)によって発症します。遺伝的要因に加え、過食、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が深く関与しているとされています3。日本の糖尿病患者の大多数(90%以上)がこのタイプです。
  • 妊娠糖尿病: 妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常です。母体および胎児への影響があるため、適切な管理が必要です。
  • その他の特定の機序、疾患による糖尿病: 遺伝子異常、他の内分泌疾患、膵疾患、薬剤や化学物質の影響などが原因で発症するタイプです。

3. 糖尿病のサインを見逃さない:症状と早期発見の重要性

糖尿病は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれるように、初期段階ではほとんど自覚症状がありません5。しかし、病状が進行すると、体は様々なSOSサインを出し始めます。これらのサインに早く気づき、対策を講じることが、深刻な事態を防ぐための鍵となります。

3.1. 注意すべき糖尿病の症状

血糖値が高い状態が続くと、以下のような症状が現れることがあります3。これらの症状は、血糖値がかなり高くなってから現れることが多いため、一つでも当てはまる場合は注意が必要です。

  • 喉が異常に渇く (口渇)、水をたくさん飲む (多飲)
  • トイレの回数が増える (頻尿)、尿の量が多い (多尿)
  • 食事量は変わらない、あるいは増えているのに体重が減る
  • 全身がだるい、疲れやすい (倦怠感、易疲労感)
  • 手足のしびれ、ピリピリとした痛み、感覚が鈍くなる
  • 目がかすむ、視力が低下する
  • 立ちくらみ
  • 性機能障害 (EDなど)
  • 感染症にかかりやすくなる、傷が治りにくい

3.2. なぜ早期発見が重要なのか

これらの症状が出現した時点では、既に病状がある程度進行している可能性があります5。特に日本の糖尿病患者の多くを占める2型糖尿病は、ゆっくりと進行するため、本人が気づかないうちに合併症が静かに進行していることも少なくありません。糖尿病の本当の恐ろしさは、高血糖そのものよりも、それが長期間続くことによって引き起こされる「合併症」にあります3。合併症が一度進行してしまうと、元の健康な状態に戻すことは困難です。したがって、症状がなくても定期的な健康診断を受け、血糖値のチェックを行うことが、将来の深刻な合併症を防ぐために最も効果的な手段なのです5

4. あなたは大丈夫?糖尿病の危険因子チェック

糖尿病の発症には、複数の危険因子が関与しています。これらの因子を理解し、ご自身の生活を振り返ってみることが、糖尿病予防の第一歩となります。以下の因子の多くは、生活習慣の見直しによって改善が可能です6

  • 遺伝的要因: 家族(特に両親や兄弟姉妹)に糖尿病の人がいる場合、リスクは高まります。
  • 生活習慣:
    • 過食・高カロリー食: エネルギーの過剰摂取は肥満につながり、インスリンの働きを悪くします。
    • 運動不足: 身体活動の不足は、血糖コントロールを悪化させます。
    • 肥満 (特に内臓脂肪型肥満): お腹周りの脂肪は、インスリンの効きを妨げる物質を分泌し、2型糖尿病の強力なリスク因子となります5
    • 喫煙: 喫煙はインスリンの働きを妨げ、糖尿病の発症リスクを高めることが知られています5
    • 過度な飲酒: 大量のアルコール摂取は、膵臓や肝臓に負担をかけ、リスクを高める可能性があります9
    • ストレス: 慢性的なストレスは血糖値を上昇させるホルモンの分泌を促します。
  • その他の要因:
    • 加齢: 年齢とともにインスリンの分泌能力が低下する傾向があります。
    • 高血圧: 高血圧と糖尿病は密接に関連し、互いに悪影響を及ぼし合います。
    • 脂質異常症: コレステロールや中性脂肪の異常も、インスリンの働きを悪くする一因です。
    • 妊娠: 過去に妊娠糖尿病と診断された女性は、将来2型糖尿病を発症するリスクが高まります。

健康に関する注意事項

  • ここに挙げた危険因子に複数当てはまる方は、症状がなくても一度医療機関で血糖値の検査を受けることを強くお勧めします。
  • 健康診断で血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の異常を指摘された場合は、決して軽視せず、速やかに専門医に相談してください。自己判断で放置することが最も危険です。

5. 糖尿病の放置がもたらす深刻な危険性:合併症の徹底解説

糖尿病を治療せずに放置したり、血糖コントロールが不十分な状態が長期間続いたりすると、全身の様々な臓器に深刻な合併症が引き起こされます。これらの合併症こそが、生活の質(QOL)を著しく低下させ、時には生命を脅かす、糖尿病の真の恐怖です。

5.1. なぜ合併症は起こるのか?

高血糖状態が続くと、血液中の過剰なブドウ糖が全身の血管や神経をじわじわと傷つけていきます3。特に、細い血管(微小血管)と太い血管(大血管)の両方が標的となり、それぞれ特有の合併症を引き起こします6。これらの合併症は自覚症状がないまま静かに進行し、気づいた時には深刻な状態になっていることも少なくありません。

5.2. 微小血管合併症(三大合併症)

微小血管合併症は糖尿病に特有で、特に眼、腎臓、神経に影響を及ぼします。「三大合併症」とも呼ばれ、早期発見と適切な管理が不可欠です4

糖尿病網膜症:失明につながる眼の病気

眼の奥にある網膜の毛細血管が傷つくことで発症します4。網膜はカメラのフィルムのように、見たものを映像として脳に伝える重要な組織です10。高血糖により血管がもろくなると、出血や血漿成分の漏れ、血管の詰まりなどが生じます11。初期は無症状ですが、進行すると視界のかすみや視力低下が現れ、最悪の場合は失明に至ります3。日本では、糖尿病網膜症が成人の失明原因の上位を占め、年間約3,000人がこれにより失明していると報告されています2。糖尿病と診断されたら、症状がなくても定期的な眼底検査が必須です11

糖尿病性腎症:人工透析に至る腎臓の病気

腎臓にある微細な血管の集まり(糸球体)が傷つき、腎機能が徐々に低下していく病気です4。腎臓は血液をろ過し、老廃物を尿として排泄するフィルターの役割を担っています。初期は無症状で、尿検査で微量のタンパク質(アルブミン)が検出されることで発見されます12。進行すると、むくみや倦怠感などが現れ、末期腎不全に至ると生命維持のために人工透析療法や腎移植が必要となります3。驚くべきことに、日本で新たに透析導入となる原因疾患の第1位は糖尿病性腎症であり、2022年には全体の39.5%を占めています13。2021年には、年間15,271人もの人々がこの病気により新たに透析を開始しているのです14

糖尿病神経障害:足の切断にもつながる神経の病気

高血糖により末梢神経や自律神経が障害される病気で、三大合併症の中で最も早く現れるとされています4

  • 末梢神経障害: 主に手足、特に足先の感覚が障害されます。初期症状は、しびれ、ピリピリ・ジンジンとした痛み、冷感などです3。進行すると感覚が鈍くなり、痛みや熱さを感じにくくなります。そのため、怪我や火傷に気づかず、足の潰瘍や壊疽(えそ)を引き起こし、最悪の場合は足を切断せざるを得なくなることもあります4
  • 自律神経障害: 内臓の働きを調節する自律神経が障害されると、立ちくらみ、胃腸の不調(便秘、下痢)、排尿障害、発汗異常、勃起障害(ED)など、全身に多彩な症状が現れます3。心筋梗塞の痛みを感じない「無痛性心筋梗塞」など、生命に関わる危険な状態を引き起こすこともあります15

5.3. 大血管合併症(動脈硬化による病気)

糖尿病は、心臓や脳、足などの太い動脈の動脈硬化を強力に促進します。高血圧や脂質異常症などを合併しやすいため、動脈硬化の進行はさらに加速されます4。特筆すべきは、糖尿病のある人は、そうでない人に比べて動脈硬化が10~20年も早く進むと指摘されている点です4。これは、糖尿病が血管を早期に老化させる深刻な状態であることを意味します。

  • 心血管疾患(狭心症・心筋梗塞): 心臓に栄養を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりすることで発症します。生命に関わる危険な病気です3
  • 脳血管疾患(脳梗塞・脳出血): 脳の血管が詰まったり破れたりすることで発症し、麻痺や言語障害などの後遺症を残すことがあります3。日本の糖尿病患者約1,000万人において、脳血管疾患や心血管疾患の発症者は年間約17.2万人に上ると推定されています2
  • 末梢動脈疾患(PAD): 主に足の動脈硬化により血流が悪くなる病気です。悪化すると足に潰瘍や壊疽が生じ、切断に至ることがあります。

5.4. その他の重大な危険性と合併症

糖尿病の影響はこれだけにとどまりません。

  • 足壊疽・切断: 神経障害と血流障害が重なり、小さな傷から感染・壊疽へと進行しやすくなります3。国際糖尿病連合(IDF)の報告では、糖尿病患者の下肢切断リスクは非糖尿病患者の7.4倍から41.3倍にも上るとされています16
  • 認知症: 糖尿病患者は、アルツハイマー型認知症や血管性認知症を発症するリスクが高いことが報告されています3
  • 歯周病: 糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼし合います。歯周病は「第6の合併症」とも呼ばれ、血糖コントロールを悪化させる一因となります5。米国糖尿病協会(ADA)は、年1回以上の歯科検診を推奨しています17
  • 感染症: 免疫力が低下するため、肺炎や尿路感染症など、様々な感染症にかかりやすく、重症化しやすい傾向があります3
  • 低血糖症: 糖尿病治療薬(特にインスリンや一部の飲み薬)の副作用として、血糖値が下がりすぎることがあります。冷や汗、動悸、手の震えなどが現れ、重症化すると意識障害や昏睡に至る危険な状態です18
  • 肝臓の病気 (MASLD/MASH): 糖尿病患者には、肝臓への脂肪蓄積から始まる「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」が高頻度で合併します。これが炎症や線維化を伴う「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)」に進行すると、肝硬変や肝細胞癌のリスクが高まります17
合併症 影響部位 主な症状・リスク 日本の関連統計(出典年) 推奨される検査
糖尿病網膜症 眼(網膜) 視力低下、かすみ目、飛蚊症、失明 成人失明原因の上位、年間約3,000人失明2(2005年等のデータ) 定期的な眼底検査
糖尿病性腎症 腎臓 初期無症状、タンパク尿、むくみ、倦怠感、腎不全、人工透析 新規透析導入原因第1位(39.5%)13(2022年)、年間新規透析導入15,271人14(2021年) 定期的な尿検査(アルブミン尿)、血液検査(eGFR)
糖尿病神経障害(末梢) 手足の神経 しびれ、痛み、感覚鈍麻、足潰瘍・壊疽リスク 足潰瘍年間発症率0.3%、足切断率0.05%(福岡県FDR研究)19 定期的な神経学的検査、フットケア指導
糖尿病神経障害(自律) 内臓の神経 立ちくらみ、胃腸障害、排尿障害、ED、無自覚性低血糖 症状に応じた自律神経機能検査
心血管疾患 心臓、脳血管 胸痛(狭心症)、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血 糖尿病患者の動脈硬化は10-20年早く進行4、年間約17.2万人が脳・心血管疾患発症(推計)2 定期的な血圧測定、脂質検査、心電図等
足病変(潰瘍・壊疽) 潰瘍、感染、壊疽、下肢切断リスク 糖尿病患者の足切断リスクは非糖尿病者の7.4-41.3倍16 毎日の足の観察、定期的な専門医によるフットチェック
認知症 記憶障害、判断力低下(アルツハイマー型、血管性) 糖尿病患者でリスク増加3 必要に応じた認知機能検査
MASLD/MASH 肝臓 初期無症状、進行すると肝硬変・肝癌リスク 糖尿病患者に高頻度で合併17 定期的な肝機能検査、FIB-4等によるスクリーニング
歯周病 口腔 歯肉の腫れ・出血、歯の動揺、口臭 糖尿病患者でリスク増加・重症化しやすい5 定期的な歯科検診

6. 危険を回避するために:今日から始める予防と管理

糖尿病の深刻な合併症を予防し、健康な生活を維持するためには、日々の生活習慣の見直しと、診断された場合の適切な管理が不可欠です。幸いなことに、多くのリスクは自らの行動によってコントロールすることが可能です。

6.1. 糖尿病予防・管理のための生活習慣チェックリスト

ご自身の生活を振り返り、改善点を見つけるための具体的なツールとしてご活用ください。各項目は、厚生労働省や日本糖尿病学会の推奨に基づいています5, 6, 20

カテゴリー チェック項目
食事 □ 1日3食、規則正しく食べていますか?5
□ 間食や夜食を控えていますか?20
□ 腹八分目を心がけていますか?20
□ ゆっくりよく噛んで食べていますか?20
□ 野菜、海藻、きのこなど食物繊維を多く摂っていますか?20
□ 食事の最初に野菜を食べる「ベジファースト」を実践していますか?
□ 甘い飲み物や脂肪分の多い食品を控えめにしていますか?5
□ 塩分を控えめにしていますか?20
運動 □ 週に150分以上の有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)を目標にしていますか?5
□ 筋力トレーニングを週に2~3回取り入れていますか?20
□ 運動しない日が2日以上続かないようにしていますか?20
□ エレベーターでなく階段を使うなど、日常生活で体を動かす機会を増やしていますか?5
体重 □ 健康的な体重を維持していますか?5
□ 腹囲を定期的に測定し、内臓脂肪の蓄積に注意していますか?5
喫煙 □ 禁煙していますか?(または禁煙を試みていますか?)5
ストレス □ 自分に合ったストレス解消法を持っていますか?6
□ 十分な睡眠をとっていますか?
定期健診 □ 年に一度は健康診断を受けていますか?5
□ 健診結果で血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合、医療機関を受診しましたか?5

6.2. 糖尿病と診断された方へ:定期検査の重要性

糖尿病と診断された場合、合併症を早期に発見し、進行を防ぐために定期的な検査が不可欠です。主治医と相談の上、ご自身の状態に合わせた検査計画を立てましょう。

検査の種類 目的 推奨頻度の目安 主な指標・目標値の例
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 過去1~2ヶ月の平均血糖コントロール状態の把握 医師の指示による(例:1~3ヶ月ごと) 個別設定(例:7.0%未満21
眼底検査 糖尿病網膜症の早期発見・進行度評価 年1回以上、または眼科医の指示による5 網膜症の有無、進行度
腎機能検査(尿中アルブミン、eGFRなど) 糖尿病性腎症の早期発見・進行度評価 年1回以上、または医師の指示による5 尿中アルブミン/クレアチニン比、eGFR値
足のチェック(神経障害・血流障害の評価) 糖尿病神経障害、末梢動脈疾患の評価、足病変の早期発見 定期的な医師による診察、毎日の自己チェック3 感覚異常、皮膚の状態、脈拍
血圧測定 高血圧の管理、心血管疾患リスク評価 受診ごと、家庭血圧測定も推奨 個別設定(例:130/80mmHg未満)21
脂質検査(コレステロール、中性脂肪) 脂質異常症の管理、動脈硬化リスク評価 年1回以上、または医師の指示による LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪の目標値
歯科検診 歯周病の早期発見・管理 年1回以上17 歯肉の状態、歯周ポケット
体重・腹囲測定 肥満の評価、メタボリックシンドロームの管理 受診ごと 適正体重、適正腹囲

注意:推奨頻度や目標値は一般的な目安です。個々の患者の状態に応じて主治医が判断します。

よくある質問 (FAQ)

糖尿病は砂糖の食べ過ぎが直接の原因ですか?

必ずしもそうとは言えません9。1型糖尿病は自己免疫が主な原因であり、食事とは直接関係ありません。2型糖尿病は、遺伝的な要因に加えて、過食や運動不足などの生活習慣が積み重なることで発症します。砂糖の摂り過ぎを含む高カロリーな食生活は、肥満を招き、結果として2型糖尿病のリスクを高める一因にはなりますが、砂糖だけが直接の原因というわけではありません。全体のカロリーバランスや栄養の偏りの方がより重要です。

血糖値が高くても症状がなければ、治療は不要ですか?

いいえ、それは大きな誤解です9。糖尿病の最も恐ろしい点は、自覚症状がないまま合併症が静かに進行することです。症状がないからといって放置していると、数年後には網膜症や腎症、神経障害といった深刻な合併症が姿を現し、取り返しのつかない事態になりかねません。健康診断などで血糖値の異常を指摘されたら、症状がなくても必ず専門医の診察を受け、適切な指導のもとで治療を開始することが重要です。

糖尿病になったら、もう好きなものは食べられないのですか?

「絶対に食べてはいけない食品はない」というのが現代の糖尿病食事療法の考え方です9。重要なのは、量とバランスです。医師や管理栄養士と相談し、ご自身の状態に合ったエネルギー摂取量を守り、栄養バランスを整えることが基本です。その範囲内であれば、嗜好品を楽しむことも可能です。我慢しすぎによるストレスは、かえって血糖コントロールに悪影響を及ぼすこともあります。正しい知識を身につけ、上手に食事をコントロールすることが大切です。

薬を飲み始めたら、一生やめられないのですか?

血糖値が正常になったからといって、自己判断で薬をやめてはいけません9。薬によって血糖値が良好にコントロールされている場合、中断すれば再び血糖値は上昇します。ただし、食事療法や運動療法を徹底し、体重が減少するなどして血糖コントロールが大幅に改善した場合、医師の判断で薬を減らしたり、中止したりできる可能性はあります。必ず主治医と相談しながら治療方針を決めることが重要です。

血糖値は低ければ低いほど良いのですか?

いいえ、そうではありません9。血糖値が下がりすぎる「低血糖」は、高血糖と同様に危険な状態です。特にインスリン注射や一部の血糖降下薬を使用している方は注意が必要です。低血糖は、冷や汗、動悸、手の震えなどの症状を引き起こし、重症化すると意識を失ったり、昏睡状態に陥ったりすることもあります18。適切な血糖値を維持することが目標であり、低すぎることにはリスクが伴います。

結論

糖尿病は、自覚症状のない初期段階から着実に進行し、放置すれば失明、腎不全による人工透析、足の切断、さらには心筋梗塞や脳卒中といった生命を脅かす深刻な合併症を引き起こす、極めて危険な病気です3, 4。しかし、その一方で、糖尿病は正しい知識を身につけ、日々の生活習慣を見直し、専門家と共に適切な管理を行うことで、その進行を食い止め、合併症のリスクを大幅に減らすことができる病気でもあります。

この記事を通じて、糖尿病の真の危険性を理解し、ご自身の健康を振り返るきっかけとしていただけたなら幸いです。健康診断で異常を指摘された方、気になる症状がある方、そしてご家族に糖尿病の方がいる方は、決してためらわずに医療機関の扉を叩いてください。早期発見・早期介入こそが、あなたの未来を守る最も確実な一歩です。そして、すでに糖尿病と診断されている方も、希望を失わないでください。適切な自己管理は、「糖尿病があっても、なにひとつやりたいことを阻害されず、自分の夢を実現できる社会」への道を開きます22。JAPANESEHEALTH.ORGは、科学的根拠に基づいた信頼できる情報提供を通じて、皆様一人ひとりが健康で充実した人生を送ることを心から応援しています。

免責事項この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 厚生労働科学研究成果データベース. 糖尿病の実態把握と環境整備のための研究 令和2年度~令和4年度 総合研究報告書. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/download_pdf/2022/202209011B.pdf.
  2. 再生医療オンライン. 糖尿病合併症になる割合は?三大合併症について調査. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://saisei-iryo.online/archives/1063.
  3. 西春内科・在宅クリニック. 【放置すれば危険】糖尿病が引き起こす可能性のある合併症とは…. [インターネット]. 2022年4月27日 [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://nishiharu-clinic.com/2022/04/27/tonyobyo/.
  4. 全国健康保険協会. 【糖尿病】 何より怖い合併症. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat450/sb4502/p014/.
  5. 厚生労働省. みんなで知ろう! からだのこと. [インターネット]. 2024年11月 [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202411_006.html.
  6. 日本生活習慣病予防協会. 糖尿病. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://seikatsusyukanbyo.com/guide/diabetes.php.
  7. seikatsusyukanbyo.com. 糖尿病で治療を受けている総患者数は、552万3,000人 令和5年(2023…. [インターネット]. 2025年1月 [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2025/010845.php.
  8. International Diabetes Federation. Diabetes Facts and Figures. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://idf.org/about-diabetes/diabetes-facts-figures/.
  9. 福州市疾病予防管理センター. 糖尿病这些常见误区要当心!. [インターネット]. 2023年11月22日 [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://cdc.fuzhou.gov.cn/zz/jkjy/mxfcrxjb/202311/t20231122_4722255.htm.
  10. ファストドクター. 糖尿病網膜症とは?症状や治療方法について解説!. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://fastdoctor.jp/columns/dm-DRD.
  11. 済生会. 糖尿病網膜症 (とうにょうびょうもうまくしょう)とは. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/diabetic_retinopathy/.
  12. 順天堂大学医学部附属順天堂医院. 腎・高血圧内科|糖尿病腎症. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://hosp.juntendo.ac.jp/clinic/department/zinzo/disease/disease04.html.
  13. seikatsusyukanbyo.com. 糖尿病性腎症(39.5%) 日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況(2022年末)」より. [インターネット]. 2024年1月 [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010782.php.
  14. 糖尿病情報センター. 糖尿病に関する統計・調査と社会的な取組み. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/04.html.
  15. に科クリニック. 糖尿病神経障害とは?初期症状から予防・治療まで徹底解説します!. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://nishina-clinic.jp/blog/tounyoubyousyougai/.
  16. 日本糖尿病学会. 11 章 糖尿病性足病変. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/11_1.pdf.
  17. Khoury N, Al-Sofiani ME, Al-Kallas M, et al. Summary of Revisions: Standards of Care in Diabetes—2025. Diabetes Care. 2025;48(Supplement_1):S6-S10. doi:10.2337/dc25-SREV. https://diabetesjournals.org/care/article/48/Supplement_1/S6/157564/Summary-of-Revisions-Standards-of-Care-in-Diabetes.
  18. Mayo Clinic. 糖尿病低血糖症- 症状与病因. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://www.mayoclinic.org/zh-hans/diseases-conditions/diabetic-hypoglycemia/symptoms-causes/syc-20371525.
  19. DM-net. 日本の糖尿病足潰瘍の発症率は欧米の10分の1 日本初の大規模調査. [インターネット]. 2017年 [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://dm-net.co.jp/calendar/2017/026918.php.
  20. Npartner. 2024年糖尿病診療ガイドライン改定の概要と栄養指導の変更点. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://npartner.jp/topics/2024%E5%B9%B4%E7%B3%96%E5%B0%BF%E7%97%85%E8%A8%BA%E7%99%82%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%94%B9%E5%AE%9A%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81%E3%81%A8%E6%A0%84%E9%A4%8A%E6%8C%87/.
  21. 日本予防医学協会. 特定健康診査(メタボリックシンドローム). [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://www.jpm1960.org/jushinsya/exam/exam15.html.
  22. 日本糖尿病協会. 日本糖尿病学会・JADEC(日本糖尿病協会)合同 アドボカシー活動. [インターネット]. [2025年6月10日引用]. 以下より入手可能: https://www.nittokyo.or.jp/modules/about/index.php?content_id=46.
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ