生理が2日で終わるのは大丈夫?受診すべきタイミングとは
女性の健康

生理が2日で終わるのは大丈夫?受診すべきタイミングとは

最近、これまで安定していた生理が2日程度で終わってしまうという経験はありませんか。「以前は5日間はあったのに、急に短くなって何かの病気だろうか」「量が減った気がするし、これって年齢のせい?」など、月経期間の急な変化に戸惑い、一人で悩みを抱えてしまう女性は少なくありません。特に日本では、月経に関する悩みを周囲に打ち明けにくいと感じる方も多く、不安がさらに募るケースも見受けられます12。厚生労働省の調査によれば、働く女性の多くが月経関連の不調によって仕事のパフォーマンスに影響を感じていると回答しており2、こうした心身の負担がホルモンバランスを乱す一因とも考えられます。

この記事では、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、産婦人科領域の専門家の監修のもと、国内外の最新の医学研究と診療ガイドラインに基づき、「生理が2日で終わる」という現象について徹底的に解説します。この記事を読むことで、ご自身の症状が医学的に見て「心配ないケース」なのか「注意が必要なケース」なのかを判断するための知識を得て、不安を解消し、適切な次の一歩を踏み出すためのお手伝いをします。

要点まとめ

  • 生理が2日以内で終わる状態を「過短月経」と呼びます。元々の体質や一時的なストレスで起こることもありますが、ホルモンバランスの乱れや婦人科疾患のサインである可能性もあります34
  • 原因は多岐にわたり、生活習慣の乱れ、過度なダイエット、妊娠初期症状(着床出血など)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺疾患、更年期の影響などが考えられます567
  • 3周期以上続く場合、不正出血や強い腹痛など他の症状を伴う場合、妊娠を希望している場合などは、早めに婦人科を受診することが推奨されます8
  • 放置すると、不妊、骨粗鬆症、心血管疾患、子宮体がんなどのリスクに繋がる可能性があるため、自己判断は禁物です910
  • 医療機関では問診、内診、超音波検査、血液検査などを行い、原因に応じた治療(生活習慣指導、ホルモン療法、漢方薬など)が行われます11

1. 「生理が2日で終わる」とは?正常な月経との違い

まず、ご自身の月経が正常範囲内にあるのかを理解することが重要です。月経の状態は健康のバロメーターとも言えます。

1.1. 正常な月経の基準:期間・周期・経血量

国際産婦人科連合(FIGO)などの国際的な基準では、正常な月経はおおむね以下のように定義されています1213。ただし、これらはあくまで目安であり、個人差が大きいことも理解しておく必要があります。

  • 期間: 3日から7日間程度141516
  • 周期: 24日から38日程度の間隔で次の月経が来ること16
  • 経血量: 1回の月経期間中の総出血量が20mLから140mL程度17。ナプキンの交換頻度などで判断します。

これらの基準は年齢によっても変動し、特に初経から数年間の思春期や、閉経が近づく更年期には不規則になりやすい傾向があります。

1.2. 「過短月経」と「過少月経」の定義

生理が2日で終わる状態は、医学的に以下のように呼ばれることがあります。

  • 過短月経 (Shortened Menstrual Bleeding): 月経の出血が続く日数が2日以内で終わる状態を指します4151819。これは日本産科婦人科学会(JSOG)の定義でも同様です1115
  • 過少月経 (Light Menstrual Bleeding): 経血量が極端に少ない状態(例:総量が20mL未満、ナプキンがほとんど汚れない、おりものシートで済んでしまうなど)を指します1720

過短月経と過少月経は、しばしば同時に起こることがあります。これらの状態が必ずしも病的な異常を意味するわけではありませんが、体が発している何らかのサインである可能性も考え、注意を払うことが大切です。

1.3. なぜ生理期間が短くなるのか?基本的なメカニズム

月経は、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の周期的な変動によってコントロールされています。単純化して説明すると、以下のようになります。

  1. 卵胞期:エストロゲンの働きで、受精卵が着床するためのベッドとなる子宮内膜が厚くなります。
  2. 排卵:成熟した卵子が卵巣から排出されます。
  3. 黄体期:排卵後、卵巣には黄体が形成され、プロゲステロンを分泌します。プロゲステロンは厚くなった子宮内膜を維持し、妊娠に適した状態に整えます。
  4. 月経:妊娠が成立しない場合、黄体は衰え、エストロゲンとプロゲステロンの分泌が急激に減少します。これにより、不要になった子宮内膜が血液とともに剥がれ落ち、体外へ排出されます。これが月経です。

この仕組みから、生理期間が短くなったり、経血量が少なくなったりするのは、主に「子宮内膜が十分に厚くならなかった」場合や、「厚くなった子宮内膜を維持するホルモンの働きが不十分だった」場合に起こると考えられます。

2. 生理が2日で終わる主な原因:心配ないケースから注意すべきケースまで

生理が2日で終わる原因は非常に多岐にわたります。一時的で心配の少ないものから、治療が必要な病気が隠れているものまで様々です。

2.1. 心配の少ない可能性のあるケース

  • 元々の体質: 初経のときから生理期間が短く、その後もずっと同じようなパターンで、周期も安定している場合は、その人の体質である可能性が高いです。他に気になる症状がなければ、過度に心配する必要はないでしょう。
  • 一時的なホルモンバランスの乱れ:
    • 精神的ストレス: 仕事や人間関係の悩み、環境の変化といった強いストレスは、ホルモン分泌をコントロールしている脳の視床下部や下垂体に影響を与え、一時的に月経パターンを乱すことがあります2122
    • 生活習慣の乱れ: 睡眠不足、不規則な食生活、過労なども同様にホルモンバランスを崩す原因となります2122。特に日本の働く女性は、長時間労働などの影響を受けやすい環境にあると言えます12
    • 激しい運動や急激なダイエット: アスリートや、急激な体重減少を伴うダイエットをしている場合、体はエネルギー不足と判断し、生命維持に直接関係のない生殖機能を後回しにします。その結果、排卵が抑制され、生理が短くなったり、止まってしまったり(視床下部性無月経)することがあります616

これらの原因による月経期間の短縮は、原因が取り除かれれば自然に元に戻ることが多いです。しかし、長期間続く場合や、他の不調を伴う場合は、医療機関への相談を検討しましょう。

2.2. 妊娠に関連するケース(注意・確認が必要)

  • 妊娠初期の着床出血: 受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる少量の出血で、通常の月経と間違われることがあります。ピンク色や茶褐色で、1~2日程度で終わることが多いのが特徴です6。着床出血は排卵後およそ1~2週間後に起こり、米国産科婦人科学会(ACOG)によれば、妊娠した女性の約15~25%が経験するとされています6。心当たりがある場合は、市販の妊娠検査薬で確認することが重要です。
  • 子宮外妊娠(異所性妊娠): 受精卵が子宮内腔以外の場所(主に卵管)に着床してしまう非常に危険な状態で、卵管破裂などを起こし、生命に関わることもあります。少量の不正出血(生理が短く終わったように見える)や、腹痛(特に片側)、肩の痛み、めまいといった症状が見られます。35歳以上、過去の子宮外妊娠歴、不妊治療中などのリスク因子がある場合は特に注意が必要です。疑わしい場合は、直ちに産婦人科を受診してください。
  • ごく初期の流産(化学流産など): 妊娠検査薬で陽性反応が出たものの、超音波検査で胎嚢が確認される前に流産してしまう状態です。軽い出血のみで、月経と区別がつかないこともあります。腹痛や腰痛を伴うこともあり、妊娠を希望していて短い出血が続く場合は、専門医への相談が推奨されます。

2.3. ホルモン分泌の異常やバランスの乱れが原因のケース

  • 排卵障害(無排卵周期症、稀発排卵など): 排卵が正常に行われないと、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が不十分になり、子宮内膜が十分に成熟・維持されません。その結果、剥がれ落ちる内膜の量が少なくなり、月経が短くなったり量が減ったりします。基礎体温を記録していると、体温が低温期のまま二相性にならないことで気づくことがあります。
  • 黄体機能不全: 排卵はあっても、その後の黄体からのプロゲステロン分泌が不十分な状態です。子宮内膜の維持が困難になり、月経期間の短縮や、月経と月経の間に少量の出血(不正出血)が起こりやすくなります。不妊の原因にもなりうると考えられています17
  • 高プロラクチン血症: 脳下垂体から分泌されるプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)が過剰になると、排卵が抑制され、無月経や過短・過少月経などを引き起こすことがあります16。原因としては、薬剤の副作用、下垂体の良性腫瘍、甲状腺機能低下症などが挙げられます。
  • 授乳中の月経: 授乳中はプロラクチンの影響で排卵が抑制されるため、産後に月経が再開しても、しばらくは不規則だったり、期間が短かったりすることが一般的です6。産後9~18ヶ月頃に月経が再開することが多いとされています6

2.4. 子宮や卵巣の病気が原因のケース

  • 多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS): 排卵障害を引き起こす代表的な疾患で、生殖年齢女性の5~10%に見られます。卵巣内で多数の小さな卵胞が発育するものの、うまく排卵できなくなる状態で、男性ホルモン過剰やインスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンが効きにくくなる状態)が関与しています。月経不順(無月経、希発月経)、過短・過少月経のほか、にきび、多毛、肥満などの症状が見られますが、日本人では肥満を伴わないタイプも多いのが特徴です232425。日本産科婦人科学会が2024年に改訂した診断基準では、「月経異常」「多嚢胞性卵巣(超音波所見)」「血中男性ホルモン高値またはLH高値かつFSH正常」の3項目中2つ以上を満たす場合に診断されます23242526。放置すると不妊だけでなく、子宮体がんやメタボリックシンドロームのリスクも高まるため、適切な管理が必要です。
  • 子宮筋腫: 子宮にできる良性の腫瘍で、発生する場所や大きさによっては過多月経の原因となることが多いですが、月経周期の乱れや過短月経を引き起こすこともあります11
  • 子宮内膜症・子宮腺筋症: 強い月経痛や過多月経が主な症状ですが、炎症や癒着が卵巣機能や子宮の収縮に影響し、月経パターンを変化させる可能性があります。
  • アッシャーマン症候群(子宮内腔癒着症): 流産や中絶手術などで子宮内膜の掻爬(そうは)を行った後などに、子宮の内腔が癒着してしまう状態です。これにより、月経血の排出が妨げられたり、内膜の再生が不十分になったりして、過少月経や無月経になることがあります62027
  • 卵巣機能不全・早期卵巣不全 (POF) / 早発卵巣機能不全 (POI): 40歳未満で卵巣機能が著しく低下し、閉経に近い状態になることを指します616。エストロゲンの分泌が減少するため、月経が不規則になったり、短くなったりし、最終的には無月経に至ります。ほてり、発汗、イライラといった更年期様の症状を伴うことがあり、骨粗鬆症や心血管疾患のリスクも高まるため、ホルモン補充療法などが必要になる場合があります28

2.5. 甲状腺の病気が原因のケース

甲状腺ホルモンは、全身の代謝をコントロールするだけでなく、女性ホルモンの働きにも密接に関わっています。

  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など): 甲状腺ホルモンが過剰になると、卵巣機能に影響を及ぼし、月経不順(過少月経、稀発月経、無月経など)を引き起こすことがあります。動悸、体重減少、手の震え、暑がりなどの症状が見られます。
  • 甲状腺機能低下症(橋本病など): 甲状腺ホルモンが不足すると、高プロラクチン血症を介して排卵を抑制したり、月経周期を乱したりすることがあります。一般的には過多月経が多いとされますが、過少月経や無月経の原因にもなり得ます。倦怠感、むくみ、体重増加、寒がりなどの症状が特徴です。

これらの甲状腺疾患は血液検査で診断でき、適切な治療により月経異常も改善することが期待できます。

2.6. 更年期・早期更年期が原因のケース

40代以降に生理が短くなってきた場合、更年期の影響が考えられます。

  • 更年期の定義とメカニズム: 日本人女性の平均閉経年齢は約50歳で、その前後各5年間(計10年間)を更年期と呼びます29。この時期は卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が不安定にゆらぎながら減少し、閉経に向かいます。
  • 更年期における月経の変化: このホルモンのゆらぎにより、周期が短くなったり長くなったりする(頻発月経、希発月経)、期間が短くなる(過短月経)、経血量が減る(過少月経)または逆に増える(過多月経)、不正出血が起こるなど、様々な変化が現れます29。そして最終的に、1年間月経が来ない状態(閉経)を迎えます。
  • 早期更年期(早発卵巣不全 POI)との関連: 前述の通り、40歳未満で閉経様の状態になることを指します。30代や40代前半で月経期間の短縮とともに、ホットフラッシュ、イライラ、不眠、疲労感などの更年期様症状が見られる場合は、この可能性も考慮します30。診断にはホルモン検査(FSH高値、エストロゲン低値など)が重要です3031。治療にはホルモン補充療法(HRT)などが検討されます30313233

2.7. 骨盤内の感染症や炎症が原因のケース

  • 骨盤内炎症性疾患 (Pelvic Inflammatory Disease, PID): クラミジアや淋菌などの性感染症(STD)が、子宮頸部から上行性に広がり、子宮内膜、卵管、卵巣などに炎症を起こす病気です。この炎症が卵巣機能や子宮内膜に影響し、月経不順、不正出血、過短・過少月経などを引き起こすことがあります。下腹部痛、発熱、おりものの異常などを伴うことが多く、放置すると不妊や異所性妊娠の原因にもなるため、早期の診断と治療が極めて重要です。

健康に関する注意事項

  • 生理が2日で終わるという症状は、自己判断せずに専門医に相談することが最も安全です。この記事は情報提供を目的としており、医学的診断に代わるものではありません。
  • 特に、突然の激しい腹痛や大量の出血、発熱、めまいなどを伴う場合は、救急受診も視野に入れてください。それは子宮外妊娠の破裂など、緊急を要する状態のサインかもしれません。

3. 病院を受診すべきサインとタイミング

どのような場合に医療機関を受診すべきか、具体的な目安を知っておくことは非常に重要です。

3.1. 緊急性の高いサイン:すぐに医療機関へ

以下の症状が見られる場合は、時間外や休日であっても、すぐに産婦人科を受診するか、救急外来に連絡してください。

  • 突然の激しい下腹部痛(特に片側が突き刺すように痛む場合)
  • 意識が遠のくようなめまい、冷や汗、失神
  • 大量の出血(昼用ナプキンが1時間もたない、レバー状の大きな血の塊が次々と出るなど)
  • 高熱や悪寒を伴う下腹部痛や不正出血
  • 妊娠の可能性がある状態での異常な出血や強い腹痛(子宮外妊娠や切迫流産の兆候)

3.2. 早めの受診が推奨されるケース

緊急性はないものの、婦人科を受診して原因を調べることが強く推奨されるケースです。

  • これまで周期的だった生理が、急に2日程度で終わるようになった状態が3周期以上続く場合。
  • 経血量が以前と比べて明らかに極端に減った、または逆に極端に増えた場合。
  • 生理期間の短縮とともに、強い月経痛、月経以外の不正出血、持続する下腹部痛や腰痛、発熱、おりものの異常など、他の気になる症状がある場合。
  • 妊娠を希望しているが、生理が2日で終わる状態が続き、1年程度(35歳以上の場合は半年程度)妊娠に至らない場合。
  • 3ヶ月以上月経がない(続発性無月経)状態が続いている場合(妊娠の可能性がない場合)8
  • ほてり、のぼせ、イライラ、不眠といった更年期様の症状とともに月経が短縮してきた場合(特に40代前半以前の女性)。
  • 基礎体温を記録していて、排卵の兆候(高温期)が見られない、または高温期が短い(10日未満)状態が続く場合。
  • その他、原因が分からず不安な場合や、月経トラブルによって日常生活に支障が出ている場合。

3.3. 何科を受診すればよいか?

基本的には産婦人科または婦人科を受診します34。医療機関によっては、月経異常を専門とする「女性ヘルスケア外来」や「内分泌外来」を設けているところもあります。甲状腺疾患が疑われる場合は、内科(特に内分泌代謝科)と連携して診療が進められることもあります。

4. 医療機関で行われる検査

婦人科を受診すると、原因を特定するためにいくつかの検査が行われます。

4.1. 問診:最も重要な情報収集

医師があなたの状態を把握するための最も重要なステップです。以下のようなことを質問されますので、事前に整理しておくと診察がスムーズに進みます。

  • 最終月経開始日、月経周期、期間、経血量の変化
  • 初経年齢やこれまでの月経歴
  • 現在の症状(いつから、どのような変化か)
  • 妊娠の可能性、性交渉の状況、避妊方法
  • 既往歴、手術歴、服用中の薬やサプリメント、アレルギーの有無
  • 生活習慣(食事、運動、睡眠、ストレス状況)、最近の体重変化
  • 家族歴(血縁者に婦人科疾患や内分泌疾患の人がいるか)

基礎体温表や、症状を記録したメモを持参することを強くお勧めします。

4.2. 内診・視診

外陰部、腟、子宮頸部の状態を直接見て確認(視診)し、腟から指を入れて子宮や卵巣の大きさ、形、硬さ、圧痛(押したときの痛み)の有無などを調べます(内診)。性交渉の経験がない方や、内診に抵抗がある場合は、無理に行うことはありませんので、必ず医師に伝えてください35

4.3. 超音波(エコー)検査

超音波を使って、子宮や卵巣の状態を画像で詳しく観察する検査です。

  • 経腟超音波検査: 腟から細い棒状の器具(プローブ)を挿入して行います。子宮や卵巣を間近で観察できるため、非常に鮮明な画像が得られます。子宮内膜の厚さ、子宮筋腫や子宮内膜症の有無、卵巣の大きさや卵胞の発育状態(PCOSに特徴的な多数の小卵胞など)、卵巣腫瘍の有無などを評価します。
  • 経腹超音波検査: 下腹部の上からプローブを当てて観察します。内診が困難な場合や、大きな腫瘍などで全体像を把握したい場合に用いられます。検査前におしっこを溜めて膀胱を膨らませた状態で行うことが多いです35

4.4. 血液検査

ホルモン値や他の体の状態を調べるために行われます。

検査項目 調べる内容
ホルモン検査 卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストロゲン(E2)、プロゲステロン(P4)などを測定し、卵巣機能、排卵の有無、更年期の状態などを評価します。プロラクチン(PRL)や男性ホルモン、抗ミュラー管ホルモン(AMH)なども必要に応じて測定されます232425
甲状腺ホルモン検査 TSH, FT3, FT4などを測定し、甲状腺機能亢進症や低下症がないかを調べます。
貧血検査 ヘモグロビン、フェリチンなどを測定し、隠れた貧血がないかを確認します。
その他 血糖値やHbA1c(PCOSとの関連)、必要に応じて腫瘍マーカーなどを調べることがあります。

4.5. その他の検査(必要に応じて)

上記の検査で異常が見つかった場合や、さらに詳しく調べる必要がある場合には、以下のような検査が追加されることがあります。

  • 子宮頸がん・体がん検査: 不正出血がある場合などに行われます。
  • MRI検査: 子宮筋腫や子宮内膜症の広がりを詳細に見たり、下垂体の異常を調べたりする場合に有効です。
  • 子宮鏡検査: 細いカメラを子宮内に挿入し、子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫、子宮内腔の癒着などを直接観察します。
  • 骨密度検査: 長期的な無月経や早期更年期が疑われる場合に、骨粗鬆症のリスクを評価するために行われます。

よくある質問 (FAQ)

生理が2日で終わるのは、ストレスが原因ですか?

はい、その可能性は十分に考えられます。強い精神的ストレスや、過労・睡眠不足といった身体的ストレスは、女性ホルモンの分泌をコントロールしている脳の視床下部や下垂体の働きを乱すことがあります2122。これにより、排卵が抑制されたり、子宮内膜の増殖や維持が不十分になったりして、結果的に生理期間が短縮したり、経血量が減少したりします。ただし、ストレスが原因だと自己判断する前に、他の病気が隠れていないかを確認するため、症状が続く場合は一度婦人科で相談することが重要です。

30代・40代で生理が2日になったら更年期の始まりでしょうか?

40代以降で生理が短くなってきた場合、卵巣機能が低下し始める更年期への移行期(プレ更年期)のサインである可能性はあります29。特に、ほてりや発汗、イライラ、不眠といった他の更年期様症状を伴う場合は、その可能性が高まります。一方、30代や40代前半で急に生理が短くなった場合は、「早発卵巣不全(POI)」という40歳未満で閉経に近い状態になる病気の可能性もゼロではありません30。また、この年代は子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患や甲状腺疾患も起こりやすいため、年齢だけで判断せず、婦人科でホルモン値などを調べてもらうことが大切です。

生理が2日で終わる状態は、妊娠しにくくなりますか?

必ずしもそうとは限りませんが、妊娠しにくくなる可能性はあります。生理期間が短い背景に、排卵が正常に行われていない「排卵障害」や、着床に必要な子宮内膜を維持するホルモンが不足する「黄体機能不全」、あるいは着床の場である「子宮内膜が薄い」といった状態が隠れていることがあるからです17。実際に、月経期間が4日未満の女性は、それ以上の女性に比べて妊娠する力が若干低いという最新のメタアナリシス報告もあります9。妊娠を希望していて、生理が2日で終わる状態が続く場合は、早めに婦人科(特に不妊治療専門クリニック)で相談することをお勧めします。

ピルを飲んでいると生理が2日で終わることがありますが、問題ないですか?

低用量ピルや超低用量ピルを服用している場合、生理(正しくは消退出血)の期間が短くなったり、経血量が減ったりすることは非常によく見られる変化であり、通常は心配ありません11。ピルに含まれるホルモンが子宮内膜の増殖を抑えるため、剥がれ落ちる内膜の量が少なくなるからです。これはピルの正常な作用の一つであり、むしろ月経痛や過多月経の治療目的で利用される効果でもあります。ただし、服用中にこれまでと違うパターンの出血があったり、不安な点があったりする場合は、処方してくれた医師に相談してください。

生理が短い状態を改善するために、自分でできることはありますか?

特定の病気が原因でない場合、生活習慣の見直しが有効です。まず、栄養バランスの取れた食事を3食きちんと摂り、特に鉄分やタンパク質、ビタミン、ミネラルを意識しましょう。次に、ウォーキングなどの適度な運動を習慣にし、血行を促進します。また、質の高い睡眠を7〜8時間確保し、ストレスを溜めないよう自分なりのリラックス法を見つけることも非常に重要です。体を冷やさない工夫や、基礎体温を記録して自身の体のリズムを知ることもお勧めします。ただし、これらのセルフケアを続けても改善しない場合は、必ず医療機関を受診してください。

短い月経を放置すると、将来どんなリスクがありますか?

短い月経の背景にある原因によっては、将来的な健康リスクに繋がる可能性があります。例えば、排卵のない状態(無排卵)が長期間続くと、子宮体がんのリスクが上昇することが知られています。また、早期卵巣不全などで女性ホルモン(エストロゲン)が低い状態が続くと、骨密度が低下し、若くして骨粗鬆症になるリスクや、コレステロール値が上昇しやすくなるなど心血管疾患のリスクが高まる可能性があります2810。月経異常は、単なる婦人科の問題だけでなく、全身の健康に関わるサインと捉え、放置しないことが大切です。

結論

生理が2日で終わるという症状は、個人の体質や一時的なストレスによる心配のないケースから、治療を要する病気が隠れているケースまで、その原因は非常に多岐にわたります。自己判断は禁物であり、この記事で示した「受診すべきサイン」に当てはまる場合は、迷わず婦人科のドアを叩いてください。専門医による正確な診断は、重篤な疾患の早期発見・早期治療に繋がり、将来の健康リスクを低減させ、そして何よりもあなたの不安を解消するための最も確実な一歩となります。

また、近年の研究では、月経パターンが妊孕性や将来の心血管疾患リスクとも関連しうることが示唆されており910、月経は単なる毎月の出来事ではなく、自身の健康状態を映し出す重要な鏡であることがわかってきています。バランスの取れた食事、質の高い睡眠、適度な運動、効果的なストレスマネジメントといった日々のセルフケアを大切にし、基礎体温の記録などで自身の体のリズムを知ることは、全ての女性にとって重要です。

あなたの体が発する小さなサインを見逃さず、あなた自身の健康と未来のために、賢明な行動を選択しましょう。

免責事項この記事は、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、産婦人科領域の専門家の監修のもと、信頼できる医学的情報源に基づき作成していますが、一般的な情報提供を目的とするものであり、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。症状がある場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診し、専門の医師にご相談ください。

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  21. ハナマルキ株式会社(運営). Life8739(ハナサンキュー)マガジン:生理の周期や期間が短いのはなぜ?原因と対処法を解説. 以下より入手可能: https://magazine.life8739.co.jp/article/24030033/
  22. オムロン ヘルスケア株式会社. 生理のときの出血量が急に少なくなりました。病院で診てもらうべきでしょうか。. 以下より入手可能: https://www.healthcare.omron.co.jp/bijin/qa/menstruation_Q01.html
  23. 日本産科婦人科学会. 多囊胞性卵巣症候群に関する全国症例調査の結果と本邦における新しい診断基準(2024)について. 2023. 以下より入手可能: https://www.jsog.or.jp/news/pdf/PCOS1_20231204.pdf
  24. ResearchGate. Japan Society of Obstetrics and Gynecology revised diagnostic criteria for polycystic ovary syndrome: JSOG2024 criteria. 2024. 以下より入手可能: https://www.researchgate.net/publication/386023206_Japan_Society_of_Obstetrics_and_Gynecology_revised_diagnostic_criteria_for_polycystic_ovary_syndrome_JSOG2024_criteria
  25. sokuyaku. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?診断基準や治療方法について詳しく説明します. 以下より入手可能: https://sokuyaku.jp/column/%E5%A4%9A%E5%9A%A2%E8%83%9E%E6%80%A7%E5%8D%B5%E5%B7%A3%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4pcos%E3%81%A8%E3%81%AF%EF%BC%9F%E8%A8%BA%E6%96%AD%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%82%84%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%96%B9%E6%B3%95.html
  26. 日本生殖内分泌学会. 多囊胞性卵巣症候群患者のステロイド代謝. 以下より入手可能: https://jsre.umin.jp/16_21kan/13-topix2.pdf
  27. Yellow Gazebo Natural Health Care. Hypomenorrhea Treated. 以下より入手可能: https://yellowgazeboclinic.com/health-info/womens-health/menstrual-irregularities/hypomenorrhea-very-light-periods/
  28. 日本産科婦人科医会. (1)月経困難症. 以下より入手可能: https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%881%EF%BC%89%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%9B%B0%E9%9B%A3%E7%97%87/
  29. 小林製薬株式会社. 「命の母」ブランドサイト:更年期のお悩みと対処法 – 生理の変化は更年期のサイン?. 以下より入手可能: https://www.kobayashi.co.jp/brand/inochinohaha/kounenki/menstrualdisorders.html
  30. 日本女性医学学会. 理事長ご挨拶. 以下より入手可能: https://www.jmwh.jp/n-aisatu.html
  31. 久光製薬. 更年期応援 ガイドブック. 以下より入手可能: https://www.hisamitsu-pharm.jp/medicalsupport/guidance/estrana/sizai06.pdf
  32. ひなたクリニック. 【一覧】低用量ピル8種類はそれぞれどんな人におすすめ?特徴や超低用量ピルやミニピルとの違いを解説. 以下より入手可能: https://hinataclinic.com/pill-types/
  33. 小室医院. 更年期ホルモン補充療法の効果と副作用. 以下より入手可能: https://www.komuroclinic.or.jp/kounenki-hormone.php
  34. 病院なび. 「月経周期が短い」症状を感じたときに行くとよい診療科は?. 以下より入手可能: https://byoinnavi.jp/ym11
  35. 日本産科婦人科医会. (1)月経困難症. 以下より入手可能: https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%881%EF%BC%89%E6%9C%88%E7%B5%8C%E5%9B%B0%E9%9B%A3%E7%97%87/
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