- 糖尿病食事療法における飲み物の基本ルール
- 牛乳の利点・危険性と、専門家が推奨する選び方
- 植物性ミルクの代表格、豆乳の正しい選択基準
- 日本のスーパーマーケットで手に入る人気商品の具体的な比較
- よくある質問への専門的な回答
この記事を通じて、読者の皆様が日々の血糖値管理に役立つ、実践的で安心できる知識を得られることを目指します。
この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性が含まれています。
- 厚生労働省・日本糖尿病学会: この記事における食事療法の基本目標、推奨される飲み物、避けるべき飲み物に関する指針は、厚生労働省および日本糖尿病学会が公表したガイドラインに基づいています513。
- 米国糖尿病協会(ADA): ゼロカロリー飲料の推奨に関する記述は、ADAの指針を参考にしています6。
- JPHC研究および関連コホート研究: 乳製品の摂取が2型糖尿病や心血管疾患のリスク低下と関連するという記述は、日本人を対象とした大規模なJPHC研究などの複数の調査結果に基づいています4。
- システマティックレビューおよびメタアナリシス: 低脂肪乳製品と2型糖尿病リスク低下の関連性、および乳製品摂取が空腹時血糖値とヘモグロビンA1cに与える影響に関する分析は、複数の研究を統合した複数のメタアナリシスの結果を引用しています1822。
- 大豆に関する研究: 豆乳に含まれる大豆イソフラボンやたんぱく質がインスリン抵抗性を改善する可能性については、関連する科学的研究に基づいています33。
- 特定保健用食品(トクホ)に関する情報: トクホ製品の作用機序や注意点に関する記述は、消費者庁および関連機関の公表情報に基づいています4244。
要点まとめ
- 基本は「ゼロカロリー」: 日常の水分補給は、水、無糖のお茶、ブラックコーヒーを最優先します。
- 牛乳は「低脂肪」か「無脂肪」を選択: 科学的根拠がより明確で、飽和脂肪酸を抑えられる低脂肪・無脂肪タイプが推奨されます。1日の摂取目安は食事と共にコップ1杯(約200ml)です2。
- 豆乳は「無調整」一択: 砂糖や油が添加された調製豆乳や豆乳飲料は避け、原材料が大豆のみの「無調整豆乳」を選びましょう32。
- 栄養成分表示の確認を習慣に: 「加工乳」や「豆乳飲料」などの表示に惑わされず、原材料と炭水化物(糖質)量を確認し、隠れた砂糖を避けることが重要です。
- 合併症がある場合は医師に相談: 特に腎機能に問題がある方は、自己判断で牛乳や豆乳を摂取せず、必ず主治医や管理栄養士の指導を受けてください24。
基本の理解:日本の糖尿病食事療法における公式な飲み物ガイドライン
牛乳や豆乳といった個別の食品について議論する前に、まず糖尿病の食事療法における飲み物の「基本原則」を理解することが極めて重要です。この土台となる知識は、厚生労働省や日本糖尿病学会(JDS)といった日本の最も権威ある機関の指針に基づいています。
厚生労働省が示す2型糖尿病の食事療法の基本目標は、総エネルギー摂取量を適正化し、肥満を解消することです。これにより、インスリンの需要と供給の均衡を改善し、高血糖をはじめとする様々な病態を是正することが目指されます5。この大原則の中で、飲み物の選択は血糖管理に直接的な影響を与えるため、慎重に行う必要があります。
推奨される飲み物:基本は「ゼロカロリー」
米国糖尿病協会(ADA)をはじめとする世界の専門機関、そして日本の専門家が共通して推奨するのは、血糖値に影響を与えない、あるいは影響が非常に少ない飲み物です6。これらは日常的な水分補給の基本と位置づけられています。
- 水・炭酸水: カロリー、糖質、糖分がゼロの最も安全な選択肢です。水分補給は血液を希釈し、血糖値を下げる助けにもなります7。
- 無糖のお茶(緑茶、麦茶、ハーブティーなど): 日本で最も一般的な選択肢の一つです。特に緑茶に含まれるカテキンは、食後の血糖値上昇を穏やかにする効果が報告されています3。
- 無糖のコーヒー: ブラックコーヒーも推奨される飲み物です。ただし、カフェインの感受性には個人差があるため、自身の血糖値の変動を確認することが望ましいです8。
避けるべき飲み物:糖質を含む飲料
最も厳しく注意喚起されているのは、砂糖や果糖ぶどう糖液糖などが添加された「清涼飲料水」です。これらは急激な血糖値の上昇を引き起こすため、原則として避けるべきです6。
- 加糖のジュース、炭酸飲料、スポーツドリンク
- 加糖の紅茶、コーヒー飲料
このように、糖尿病の飲み物選びには明確な「階層」が存在します。水やお茶が最も安全な「第一選択」であり、これから解説する牛乳や豆乳は、糖質や熱量(カロリー)を含むため「第二選択」として、その特性を理解した上で、賢く選ぶ必要があります。これらの食品は「飲み物」というよりは、食事の一部として栄養計算に含めるべき「液体状の食品」と考えるのが適切です。この基本原則を念頭に置くことで、なぜ牛乳や豆乳の「選び方」が重要になるのかが明確になります。なお、本稿で参照する情報は、最新の「日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン2024」など、専門家委員会(統括委員会、策定委員会など)によって慎重に策定された信頼性の高い情報源に基づいています13。
牛乳の詳細な分析:利点、危険性、そして専門家の推奨
牛乳は、多くの人にとって馴染み深い飲み物ですが、糖尿病との関係については賛否両論があり、科学的根拠も複雑です。ここでは、その利点と危険性を多角的に分析し、日本の消費者が実践できる明確な選択基準を提示します。
科学的根拠:なぜ牛乳が選択肢となるのか?
牛乳が糖尿病の食事療法で選択肢として検討される背景には、いくつかの肯定的な研究結果があります。日本人を対象とした大規模なコホート研究(JPHC研究)を含む複数の調査で、1日にコップ1〜2杯程度の乳製品の摂取が、2型糖尿病や心血管疾患、脳卒中の危険性の低下と関連していることが示唆されています4。
これらの効果は、牛乳に含まれる栄養素に起因すると考えられています。
- 良質なタンパク質: 牛乳に含まれるタンパク質(ホエイとカゼイン)は、食事と一緒に摂取することで食後の血糖値の急激な上昇を緩和する働きがあります3。
- カルシウム: 骨の健康維持に不可欠であり、糖尿病患者で危険性が高まる骨折の予防に寄与します16。
- 血糖上昇抑制作用: 一部の研究では、牛乳が糖の吸収を遅らせる作用を持つ特定の糖尿病治療薬(α-グルコシダーゼ阻害薬)と同様の働きをすることが確認されています。ただし、これはあくまで補助的な効果であり、牛乳が薬の代わりになることは決してありません17。
脂肪含有量を巡る議論の真相(極めて重要な視点)
一方で、牛乳と糖尿病に関する研究結果は一様ではなく、特に脂肪分の種類が重要な論点となります。この点を理解することが、牛乳を賢く選ぶ鍵となります。
研究間の矛盾:低脂肪乳と全乳
多くの系統的総説やメタアナリシス(複数の研究を統合して分析する手法)を検証すると、一貫して2型糖尿病の危険性低下と関連が見られるのは「低脂肪乳製品」です18。1日に200gの低脂肪乳製品を摂取することで、危険性が4〜12%低下するという報告もあります18。
対照的に、脂肪分を調整していない牛乳(全乳、普通牛乳)については、関連が見られない、あるいは一部の研究では逆に危険性を高める可能性も指摘されています18。これは、全乳に含まれる飽和脂肪酸の摂取量との関連が懸念されるためです4。
空腹時血糖値とヘモグロビンA1cの逆説
さらに複雑なことに、ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスでは、乳製品の摂取が「空腹時血糖値」をわずかに上昇させる一方で、長期的な血糖管理の指標である「グリコヘモグロビン(HbA1c)」を低下させるという、一見矛盾した結果が報告されています22。これは、乳製品が長期的な血糖管理には有益である可能性を示唆しており、牛乳に含まれるホエイプロテインがインスリン分泌を刺激し、食後の血糖上昇を効果的に抑制するためではないかと考えられています22。
専門家の選択:日本における牛乳選びの実践的ガイド
これらの科学的知見を総合すると、糖尿病の方が牛乳を選ぶ際の推奨事項は以下のようになります。
- 推奨1:低脂肪乳(低脂肪牛乳)または無脂肪乳(無脂肪牛乳)を優先する
科学的根拠の重みを考慮すると、飽和脂肪酸の摂取を抑えつつ、タンパク質やカルシウムの恩恵を受けるためには、低脂肪または無脂肪の製品が最も安全で有益な選択です2。 - 推奨2:栄養成分表示を必ず確認する
「加工乳」や「乳飲料」と表示されている製品の中には、砂糖やコーヒー、果汁などで味付けされているものがあります。これらは避けるべきです。必ず原材料名と栄養成分表示を確認し、「砂糖不使用」であることを確かめましょう2。 - 推奨3:摂取量を守る
多くの研究で推奨されている摂取量は、1日あたりコップ1杯(約200ml)程度です。食事と一緒に摂ることで、血糖値の急上昇を抑える効果が期待できます4。
注意:合併症がある場合
糖尿病性腎症など、腎機能に問題がある方は、牛乳に含まれるカリウムやリンの摂取制限が必要な場合があります。必ず主治医や管理栄養士に相談し、摂取が許可されているか、安全な量はどのくらいかを確認してください24。
表1:日本の主要な低脂肪乳の栄養成分比較(200mlあたり)
具体的な製品選びの参考として、日本のスーパーでよく見かける低脂肪乳の栄養成分を比較します。
製品名 | エネルギー (kcal) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | カルシウム (mg) | 出典 |
---|---|---|---|---|---|---|
明治おいしい低脂肪乳 | 107 | 7.4 | 3.8 | 10.8 | 254 | 28 |
雪印メグミルク 低脂肪牛乳 | 85 | 6.6 | 1.9 | 10.3 | 207 | 30 |
森永乳業 まきばの空 | データなし | データなし | データなし | データなし | データなし | 31 |
注:製品情報は改定される可能性があるため、購入時に必ずパッケージをご確認ください。「森永乳業 まきばの空」は人気商品ですが、公表されている統一された栄養データが限定的でした。
この表からわかるように、同じ「低脂肪乳」でも製品によって脂質や炭水化物の量に差があります。自身の食事計画に合わせて、より最適な製品を選択することが重要です。
豆乳:優れた植物性の代替選択肢
豆乳は、牛乳に代わる優れた植物性の選択肢として、特に糖尿病管理において多くの利点を持っています。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、牛乳以上に「種類」の選択が重要になります。
糖尿病に対する豆乳特有の利点
豆乳が糖尿病の方に推奨される理由は、その独特な栄養組成にあります。
- 低糖質・高たんぱく・食物繊維: 砂糖が添加されていない「無調整豆乳」は、牛乳に比べて糖質が少なく、良質な植物性たんぱく質と食物繊維を豊富に含みます32。
- インスリン抵抗性の改善: 豆乳に含まれる大豆イソフラボンや大豆たんぱく質は、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」を改善し、血糖管理を助ける可能性が研究で示されています33。
- 満腹感の持続と脂質改善: 消化吸収が緩やかなため、満腹感が持続しやすく、間食の抑制や体重管理に役立ちます。また、コレステロールを含まず、悪玉コレステロールを低下させる効果も期待できるため、糖尿病の合併症である動脈硬化の予防にも繋がります32。
最も重要な唯一のルール:「無調整豆乳」を選ぶ
豆乳を選ぶ上で、最も重要かつ絶対的なルールは「無調整豆乳」を選ぶことです。日本の市場には主に3種類の豆乳製品が存在し、その違いを理解することが不可欠です。
- 無調整豆乳 (推奨): 原材料は「大豆(と水)」のみ。砂糖や油、塩分などが一切添加されていないため、糖質が非常に低く、大豆本来の栄養を摂取できます。糖尿病の方にはこの種類が唯一の推奨品です32。
- 調製豆乳 (回避): 飲みやすくするために、砂糖、食塩、植物油脂などが添加されています。無調整豆乳に比べて糖質が高く、余分な熱量摂取に繋がるため、避けるべきです32。
- 豆乳飲料 (回避): 果汁やコーヒー、抹茶などで風味付けされ、多量の砂糖が加えられています。これらはジュースなどの糖分の多い飲み物と同等であり、血糖値を急上昇させるため、厳禁です32。
購入時には、必ずパッケージの表示を確認し、「無調整」という文字を見つけることが、正しい選択への第一歩です。
表2:日本の主要な無調整豆乳の栄養成分比較(200mlあたり)
正しい選択を支援するため、代表的な無調整豆乳の栄養成分を比較します。
製品名 | エネルギー (kcal) | たんぱく質 (g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | イソフラボン (mg) | 出典 |
---|---|---|---|---|---|---|
キッコーマン おいしい無調整豆乳 | 105 | 8.3 | 6.5 | 3.5 | 58 | 36 |
マルサンアイ 毎日おいしい無調整豆乳 | 104 | 8.6 | 6.2 | 3.6 | データなし | 38 |
ふくれん 国産大豆無調整豆乳 | データなし | データなし | データなし | データなし | データなし | 40 |
注:製品情報は改定される可能性があるため、購入時に必ずパッケージをご確認ください。マルサンアイ製品のイソフラボン量は100mlあたり51mgと記載されているものもありますが、200ml換算の統一データが限定的でした。
この表が示す通り、無調整豆乳は低脂肪乳と比較しても炭水化物(糖質)量が著しく低いことが大きな特徴です。これは、厳格な糖質管理を目指す方にとって非常に大きな利点となります。
直接対決:低脂肪乳 vs. 無調整豆乳
低脂肪乳と無調整豆乳、どちらも糖尿病の食事療法において賢明な選択肢となり得ますが、それぞれに長所と短所があります。どちらが自分にとって「最適」かを見極めるために、両者を直接比較してみましょう。最終的な選択は、個人の健康状態、栄養上の優先順位、そして味の好みによって決まります。一つの「正解」があるわけではなく、自分に合った選択肢を見つけることが目標です。
比較概要
項目 | 低脂肪乳 | 無調整豆乳 |
---|---|---|
カルシウム | 非常に豊富。骨の健康維持に優れる29。 | 比較的少ない。製品によっては強化されている場合もあるが、基本的には牛乳に及ばない36。 |
たんぱく質 | 豊富(ホエイ、カゼイン)。食後血糖値の抑制に効果的3。 | 豊富(植物性)。インスリン抵抗性の改善に寄与する可能性33。 |
炭水化物(糖質) | 乳糖を含むため、一定量存在する(約10g/200ml)29。 | 非常に少ない(約3-4g/200ml)。厳格な糖質制限に適している36。 |
特有の栄養素 | ビタミンDが強化されていることが多い。 | 大豆イソフラボン、食物繊維が豊富。コレステロール低下作用も期待できる32。 |
アレルギー・不耐症 | 乳糖不耐症や牛乳アレルギーの方は摂取不可。 | 大豆アレルギーの方は摂取不可。 |
意思決定のための思考法
この比較に基づき、以下のような考え方で選択することができます。
低脂肪乳を選ぶべき場合:
- 骨粗しょう症の危険性があり、カルシウム摂取を最優先したい場合。
- 乳糖不耐症や牛乳アレルギーがない場合。
- ホエイプロテインによる食後血糖値の抑制効果を期待したい場合。
無調整豆乳を選ぶべき場合:
- 可能な限り炭水化物(糖質)の摂取を抑えたい場合。
- 乳糖不耐症である、または植物性の食生活を送っている場合。
- 大豆イソフラボンによるコレステロール低下やインスリン抵抗性改善といった付加的な健康効果を期待したい場合。
もちろん、一つの選択肢に固執する必要はありません。ある日は朝食に低脂肪乳を、別の日は料理に無調整豆乳を使うなど、両方を均衡良く食事に取り入れることも非常に賢明な方法です。これにより、両方の栄養的な利点を享受することができます。重要なのは、どちらを選ぶにしても「低脂肪」または「無調整」というルールを守り、1日の摂取量を守ることです。
基本を超えて:特定保健用食品(トクホ)飲料とその他の代替品
牛乳と豆乳以外にも、糖尿病の方が気になる飲み物はいくつか存在します。ここでは、その他の植物性ミルクと、市場でよく見かける「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」について、専門的な視点から解説します。
その他の植物性ミルク(アーモンドミルク、オーツミルクなど)
近年、アーモンドミルクやオーツミルクの人気が高まっています。これらを選ぶ際の注意点は以下の通りです。
- 「砂糖不使用」を徹底: 牛乳や豆乳と同様に、最も重要なのは「砂糖不使用」または英語で「unsweetened」と表示された製品を選ぶことです。風味付けされた製品には多くの糖分が含まれているため、避けるべきです9。
- たんぱく質量に注意: 多くのアーモンドミルクやオーツミルクは、牛乳や豆乳に比べてたんぱく質の含有量が非常に少ない傾向にあります。食後血糖値の抑制効果を期待する場合、たんぱく質は重要な役割を果たすため、この点は短所となり得ます。必ず栄養成分表示を確認してください。
特定保健用食品(トクホ)と機能性表示食品(FFC)の理解
コンビニエンスストアやスーパーの棚には、「食後の血糖値の上昇をおだやかにする」といった表示を持つお茶や飲料が数多く並んでいます。これらは「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」と呼ばれ、国がその表示を許可または届け出を受理した製品です42。
主要な関与成分:「難消化性デキストリン」
これらの製品の多くに含まれている有効成分が「難消化性デキストリン」です。これはトウモロコシなどから作られる水溶性食物繊維の一種です44。
作用の仕組み
食事と一緒に摂取すると、難消化性デキストリンが消化管内で糖質や脂質の周りを覆うように働き、これらの吸収速度を遅らせます。その結果、食後の血糖値や血中中性脂肪の急激な上昇が緩和されるという仕組みです44。
代表的な製品
極めて重要な注意点
これらの製品は、あくまで食事の補助として「血糖値が気になり始めた方」などを対象としています。これらは医薬品ではなく、糖尿病の「治療薬」ではありません42。これらの飲料を飲んでいるからといって、不健康な食事をして良いわけではありません。食事療法や運動療法、そして医師から処方された薬物療法が治療の基本であるということを決して忘れてはいけません。
よくある質問(FAQ)への専門家の回答
Q1: 普通牛乳(全乳)は絶対に飲んではいけないのですか?
Q2: ヨーグルトやチーズはどうですか?牛乳よりも良い、あるいは悪いのでしょうか?
Q3: 糖尿病性腎症を患っています。牛乳や豆乳を飲む際の特別な注意点はありますか?
A: これは非常に重要な点です。腎機能が低下している場合、体内のカリウムやリンを適切に排出できなくなることがあります。牛乳と豆乳はどちらもカリウムとリンを比較的多く含むため、摂取が制限される場合があります24。自己判断で摂取を続けることは危険です。必ず主治医または管理栄養士に相談し、ご自身の病状に合わせた安全な摂取量について具体的な指導を受けてください。
Q4: これらの飲み物を糖尿病の治療薬の代わりに使えますか?
Q5: 牛乳や豆乳を飲むのに最適な時間帯はいつですか?
A: 最適なのは食事と一緒に、特に朝食時などに摂ることです16。食事に含まれる炭水化物と同時に、牛乳や豆乳のたんぱく質・脂質を摂取することで、食事全体の消化吸収が緩やかになり、食後の血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。空腹時に単独で飲むよりも、食事の一部として取り入れる方が血糖管理上有利です。
結論:賢く安全な飲み物選びのための行動計画
糖尿病の食事管理において、牛乳や豆乳は敵ではありません。むしろ、正しい知識を持って賢く選べば、血糖管理と全体的な健康に貢献する強力な味方となり得ます。この記事で解説した内容を、日々の行動計画としてまとめます。
スマートな選択のための最終チェックリスト
- ルール1:基本は水・無糖茶・無糖コーヒー
日常的な水分補給は、熱量も糖質も含まないこれらの飲み物を最優先します。 - ルール2:牛乳を選ぶなら「低脂肪」または「無脂肪」
飽和脂肪酸を抑え、科学的根拠がより強固な低脂肪・無脂肪の種類を選びましょう。摂取量は1日コップ1杯(200ml)程度を目安に、食事と一緒に摂るのが効果的です2。 - ルール3:豆乳を選ぶなら「無調整」のみ
砂糖や油が添加された「調製豆乳」や「豆乳飲料」は避け、原材料が大豆のみの「無調整豆乳」を必ず選びましょう。摂取量は同様に1日コップ1杯程度が目安です32。 - ルール4:必ず栄養成分表示を確認する
「加工乳」「乳飲料」「調製豆乳」といった言葉に惑わされず、原材料名と炭水化物(糖質)の量を見て、隠れた砂糖がないかを確認する習慣をつけましょう2。 - ルール5:腎臓の合併症がある場合は、まず医師に相談
自己判断は禁物です。腎機能に不安がある場合は、牛乳や豆乳を飲む前に必ず専門家の指導を仰いでください24。
最終的に、低脂肪乳と無調整豆乳は、どちらも均衡の取れた糖尿病の食事において有益な役割を果たすことができます2。この記事が提供するのは、一般的な科学的根拠に基づく指針です。ご自身の特定の健康状態、服用中の薬、栄養ニーズに合わせた最適な食事計画については、必ずかかりつけの医師や管理栄養士にご相談ください。専門家との連携こそが、安全で効果的な糖尿病管理への最も確実な道です。
参考文献
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- 毎日おいしい無調整豆乳 1000ml|マルサンアイ株式会社. 2025年7月3日参照. https://www.marusanai.co.jp/lineup/detail-64452/
- カロリーオフ豆乳|マルサンアイ株式会社. 2025年7月3日参照. https://www.marusanai.co.jp/brand/calorie-off/comparison/
- 無調整豆乳のおすすめ10選!目的別の選び方もご紹介 – クラシル比較. 2025年7月3日参照. https://hikaku.kurashiru.com/articles/01HE73VYAG9BK4T60B36QD6Q78
- 豆乳×国産・日本製の人気おすすめランキング – ベストオイシー. 2025年7月3日参照. https://food.biglobe.ne.jp/cate_drink_softdrink_soymilk/feature_domestic/
- 近ごろよく、「特定保健用食品」と記載されている食品を見かけます。私は血糖値が高く、「血糖値が高めの方に適する食品」などといった表示はとても気になります。効果はあるのでしょうか? – オムロン ヘルスケア – OMRON. 2025年7月3日参照. https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/qa/22.html
- トクホの緑茶には糖尿病の予防効果があるって本当? | Oasis Medical(オアシスメディカル). 2025年7月3日参照. https://oasismedical.or.jp/column/tokuho
- 特定保健用食品 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会. 2025年7月3日参照. https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3757.html
- 特定保健用食品 – 消費者庁. 2025年7月3日参照. https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_for_specified_health_uses/assets/food_labeling_cms206_221110_03.pdf
- からだすこやか茶W+|製品情報|日本コカ・コーラ株式会社 – Coca-Cola.com. 2025年7月3日参照. https://www.coca-cola.com/jp/ja/brands/sukoyakacha
- 糖分と脂肪に。賢者の食卓 ダブルサポート |【大塚製薬の公式通販】オオツカ・プラスワン. 2025年7月3日参照. https://www.otsuka-plus1.com/shop/pages/kn_site_top.aspx
- 食事と一緒に十六茶粉末a – アサヒグループ食品. 2025年7月3日参照. https://www.asahi-gf.co.jp/products/health/care-food/sonota/4946842639090.html
- からだすこやか茶W 350mL – 糖サポ市場. 2025年7月3日参照. https://tou-sapo.com/shopping/3072/
- 特定保健用食品(トクホ)とは?健康維持に役立つトクホの基礎知識|お知らせ | FOOD TOWN. 2025年7月3日参照. https://food-town.jp/customer/news/detail/366
- 【トクホ・特保】アサヒ飲料 食事と一緒に十六茶W(ダブル) 500ml 1箱(24本入) – アスクル. 2025年7月3日参照. https://www.askul.co.jp/p/9607462/
- Dairy product intake in relation to glucose regulation indices and risk of type 2 diabetes – PubMed. 2025年7月3日参照. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22831954/
- イライラしやすい人は必見!豆乳でイライラ予防 | 豆乳生活. 2025年7月3日参照. https://www.tounyu.jp/tounyu-life/archives/4607