この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性のみが含まれています。
- 日本糖尿病学会(JDS): 本記事における糖尿病の診断基準、分類、治療目標に関する主要な指針は、日本糖尿病学会が発行した「糖尿病治療ガイド」および関連刊行物に基づいています379。
- 米国糖尿病協会(ADA)および世界保健機関(WHO): 日本の基準を国際的な視点と比較するため、ADAの「Standards of Care in Diabetes」およびWHOの勧告を引用し、診断基準の相違点と類似点を分析しています20。
- 厚生労働省: 日本国内における糖尿病患者数に関する最新の統計データは、厚生労働省が実施した公的調査に基づいています4。
- 日本産科婦人科学会: 妊娠糖尿病(GDM)に関する診断基準は、日本産科婦人科学会の指針に準拠しています11。
要点まとめ
- 診断はプロセスである: 日本における糖尿病の診断は、単一の検査結果に頼るのではなく、正確性を期すための慎重な確認を要する多段階のプロセスです。
- 重要な診断閾値: ヘモグロビンA1c(HbA1c)が6.5%以上、または空腹時血糖値(FPG)が126 mg/dL以上であることが「糖尿病型」を判断する上での中核的な基準ですが、総合的な臨床状況の中で解釈される必要があります。
- 糖尿病予備群は介入の好機: 「境界型」とも呼ばれる糖尿病予備群の段階で発見し、早期に生活習慣の改善に着手することが、本格的な糖尿病への進行を予防または遅延させるための鍵となります。
- 診断は治療の始まり: 診断を受けることは終わりではなく、血糖、血圧、脂質、体重などの健康指標を包括的に管理し、合併症を防ぐための長期的な健康管理の出発点です。
第1章:糖尿病および糖尿病予備群の理解
糖尿病とその前段階である予備群について正しく理解することは、適切な診断と管理の第一歩です。
1.1. 糖尿病とは?
根本的に、糖尿病は血液中の糖(グルコース)濃度が恒常的に正常よりも高い状態を特徴とする慢性的な代謝性疾患です。この状態は、体がインスリンを十分に産生できないか、産生されたインスリンが効果的に機能しない(インスリン抵抗性)、あるいはその両方が原因で起こります5。インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のグルコースが細胞内に入り、エネルギーに変換されるのを助ける「鍵」の役割を果たします。インスリンが不足したり、その働きが悪くなったりすると、グルコースが血中に蓄積し、多くの健康問題を引き起こします。
糖尿病の典型的な症状には以下のものがあります:
- 口渇(こうかつ):のどが異常に渇く
- 多飲(たいん):水分を多く摂る
- 多尿(たにょう):尿の回数や量が増える
- 原因不明の体重減少
しかし、特に2型糖尿病の初期段階では、多くの人が全く症状を感じないか、症状が非常に軽微であることが重要な注意点です5。
1.2. 糖尿病の主な分類
糖尿病は、その原因と病態生理に基づき、主に以下の種類に分類されます3。
- 1型糖尿病: これは自己免疫疾患であり、体の免疫系が膵臓内でインスリンを産生するβ細胞を誤って攻撃し、破壊してしまいます。その結果、体はインスリンをほとんど、あるいは全く産生できなくなります。通常、小児や若年成人に発症し、生涯にわたるインスリン治療が必要となります3。
- 2型糖尿病: 最も一般的な型で、全症例の大部分を占めます。体がインスリンを効果的に利用できない状態(インスリン抵抗性)から始まり、時間とともに膵臓が代償するのに十分なインスリンを産生できなくなります。肥満や運動不足といった生活習慣、そして遺伝的要因と密接に関連しています3。
- 妊娠糖尿病(GDM): 妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常です。通常は出産後に解消しますが、GDMを経験した女性は将来的に2型糖尿病を発症する危険性が高くなります10。
- その他の特定の機序による糖尿病: この群には、膵臓の疾患、他の内分泌疾患、薬剤、あるいは遺伝的欠損など、特定の原因による糖尿病が含まれます。この中で重要なものに、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)としても知られる緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)があり、初期には2型糖尿病と誤診されることがあります9。
1.3. 糖尿病予備群(境界型)とは?
糖尿病予備群、日本の用語では「境界型」とも呼ばれるこの状態は、血糖値が正常範囲を超えているものの、糖尿病と診断されるほどには高くない状態を指します3。これは病気ではなく、高い危険性を示す警告サインです。
この段階は「黄金の機会」と見なされています。なぜなら、食事の改善、運動の強化、減量といった積極的な生活習慣の介入によって、2型糖尿病への進行を大幅に防いだり、遅らせたりすることが可能であり、血糖値を正常範囲に戻すことさえできるからです3。この段階で認識し行動することが、個人の健康の未来を完全に変える可能性があります。
第2章:日本における公式診断基準(JDSガイドライン)
日本糖尿病学会(JDS)のガイドラインに基づく日本の診断プロセスは、非常に慎重かつ体系的です。一度の検査結果である「糖尿病型」と、十分な証拠に基づいた正式な医学的診断である「糖尿病」という二つの概念を明確に区別する必要があります。
2.1. 「糖尿病型」の判定 — 最初のステップ
ある人が「糖尿病型」に分類されるのは、その検査結果が以下の4つの基準のうち少なくとも1つを満たした場合です3:
- 空腹時血糖値(FPG): 126 mg/dL 以上
- 75g経口ブドウ糖負荷試験(75g OGTT): 2時間値が 200 mg/dL 以上
- 随時血糖値: 200 mg/dL 以上(典型的な高血糖症状が存在する場合に適用)
- ヘモグロビンA1c(HbA1c – NGSP値): 6.5% 以上
一度の結果が「糖尿病型」の範囲内にあることは重要な警告サインであり、後述する特別な場合を除き、さらなる検査と確定診断が必要です。
2.2. 糖代謝の包括的分類
JDSは、糖代謝の状態を個別の箱に入れるのではなく、連続的なスペクトラムとして分類します。このアプローチは、人がまだ「正常」の範囲内にいる段階からでも、早期の警告と予防を強調します。特にJDSは、空腹時血糖値が100〜109 mg/dLの人々を「正常高値」という概念で定義しており、これは国際的なガイドラインではすでに予備群に分類される範囲です16。
以下の表は、空腹時血糖値(FPG)とブドウ糖負荷試験(OGTT)の結果に基づく詳細な分類をまとめたものです3。
区分 | 空腹時血糖値(FPG) | 75g OGTT(2時間値) | 注記 |
---|---|---|---|
糖尿病型 | ≥126 mg/dL | または ≥200 mg/dL | いずれか一方の条件を満たせば該当。 |
境界型 | 110–125 mg/dL | または 140–199 mg/dL | 正常型にも糖尿病型にも属さない。これが糖尿病予備群に相当。 |
正常型 | <110 mg/dL | かつ <140 mg/dL | 両方の条件を満たす必要がある。 |
正常高値 | 100–109 mg/dL | – | 技術的には「正常型」に属するが注意が必要。肥満や高血圧など他の危険因子がある場合、OGTTの実施が推奨される16。 |
第3章:診断検査の解読
上記の基準を深く理解するためには、各検査の意味と実施方法を把握することが不可欠です。
3.1. 空腹時血糖値(FPG – Fasting Plasma Glucose)
- 内容: 患者が少なくとも10時間以上絶食(カロリー摂取なし、水のみ可)した後に採血し、血漿中のグルコース濃度を測定する検査です3。通常、朝一番の食事前に実施されます。
- 目的: FPGは、食物からの即時的な影響がない状態で、体が血糖値を調節する基本的な能力を反映します。定期的健康診断で広く用いられる簡便な検査です。
3.2. 75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT – Oral Glucose Tolerance Test)
- 内容: これは、標準量の糖に対する体の反応を評価する動的な検査です。まず空腹時の血糖値を測定し、その後、患者は正確に75gのグルコースを含む液体を飲みます。飲用後30分、60分、120分の時点で再度採血を行います3。
- 目的: OGTTは糖代謝能力を評価するための「ゴールドスタンダード(最も信頼性の高い基準)」と見なされています。特に、FPG検査では見逃される可能性のある「境界型」(糖尿病予備群)を検出するのに非常に感度が高い検査です14。
- 重要な注意点: 正確な結果を得るため、患者は検査前の3日間、十分な炭水化物(少なくとも1日150g)を含む通常の食事を摂る必要があります。事前の炭水化物制限は、偽陽性の結果を招く可能性があります3。
3.3. ヘモグロビンA1c(HbA1c)
- 内容: HbA1cは、赤血球中の酸素運搬タンパク質であるヘモグロビンがどのくらいの割合で「糖化」されたかを測定する血液検査です。赤血球の寿命は約2〜3ヶ月であるため、HbA1c値は過去その期間の平均血糖値を反映します3。
- 目的: HbA1cの大きな利点は、直近の食事やその日の身体活動といった一時的な要因に左右されず、血糖コントロール状態に関する長期的かつ安定した視点を提供することです。
- 技術的な要点(NGSP対JDS): かつて日本はJDS値という独自の測定システムを使用していましたが、国際的な標準化のため、現在はNGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値が標準として用いられています。両者の関係は、HbA1c(NGSP) ≒ HbA1c(JDS) + 0.4% という式で近似できます9。例えば、診断基準であるHbA1c ≥ 6.5% (NGSP)は、旧JDS値の約6.1%に相当します。この違いを理解することは、特に新旧のデータを比較する際に、検査結果を正確に解釈するために不可欠です。
第4章:実際の診断プロセス — 「疑い」から「確定」へ
日本における糖尿病の診断は、ストレス、急性疾患、その他血糖値に影響を与えうる医学的状態による誤診を避けるための慎重なプロセスです。そのため、一回の異常な結果(「糖尿病型」)と、正式な医学的診断(「糖尿病」)とを区別することが極めて重要です。
4.1. 一度の検査で診断が確定する場合
「糖尿病」の診断が最初の検査で確定されるのは、慢性的な高血糖状態を示す確固たる証拠がある、非常に明確な場合に限られます3。
- 血糖検査(FPG、OGTT、または随時血糖)とHbA1cの両方が、同一の採血機会で「糖尿病型」の域値内にある場合。例:ある人が同じ採血でFPG 140 mg/dLかつHbA1c 7.0%であった場合。
- 血糖検査が「糖尿病型」の域値内にあり、かつ患者に典型的な高血糖症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)がある場合。
- 血糖検査が「糖尿病型」の域値内にあり、かつ眼科診察で明らかな糖尿病網膜症(特異的な合併症)の証拠がすでにある場合。
4.2. 再検査が必要な場合
その他のほとんどの場合、つまり血糖値かHbA1cのいずれか一方のみが「糖尿病型」の域値にあり、明確な症状がない場合、患者は「糖尿病の疑い」とされ、確定診断のために再検査が必要となります9。
- 再検査は別の日に行うべきであり、できれば1ヶ月以内が望ましいとされています9。
- JDSの極めて重要な注意点: 異常なHbA1c検査を2回行っただけでは、糖尿病と診断することはできません。確定診断に用いる検査の少なくとも一つは、血糖検査(FPG、OGTT、または随時血糖)でなければなりません。これは、貧血や腎臓病など、HbA1c値に影響を与える可能性のある他の病状を排除するためです9。
4.3. 日本における糖尿病診断フローチャート(JDSに基づく)
この複雑なプロセスを視覚化するために、以下に医師が最終診断に至るまでに通常たどる手順を文章で記述します。
- 初回診察と検査: 血糖検査(FPG、OGTT、または随時血糖)とHbA1cを同時に実施します。
- 結果の評価:
- 再検査の結果:
- 再検査で再び血糖検査が「糖尿病型」を示した場合、「糖尿病」と診断されます。
- 再検査で「糖尿病型」でなくなった場合は、特に「境界型」に該当すれば、引き続き経過観察を行います。
- 糖尿病型でない場合: 血糖値とHbA1cの両方が「糖尿病型」でない場合は、表1に基づいて「正常型」「正常高値」「境界型」のいずれかに分類され、特に「境界型」と「正常高値」の群には生活習慣の改善と定期的な経過観察が推奨されます。
第5章:国際基準(ADA & WHO)との比較
日本のガイドラインと、米国糖尿病協会(ADA)や世界保健機関(WHO)といった国際機関のそれとの間の相違点と類似点を理解することは、特に日本に住む外国人やグローバルな視点を持ちたい人々にとって非常に重要です。全体として、糖尿病自体の診断基準は国際的に高い整合性がありますが、最も大きな実践的意義を持つ違いは糖尿病予備群の診断基準にあります3。
ADA/WHOのガイドラインは、FPG=100 mg/dLからを予備群とする、より感度の高い基準を採用しています20。これは、FPGが105 mg/dLの人が、米国の基準では「予備群」と見なされるのに対し、日本の基準では「正常型(具体的には正常高値)」に分類されることを意味します。この違いは、公衆衛生と危険性管理における哲学的なアプローチの違いを反映しています。
基準項目 | JDSガイドライン(日本) | ADA/WHOガイドライン(国際) | 差異の分析 |
---|---|---|---|
糖尿病 | FPG ≥126, OGTT 2h ≥200, HbA1c ≥6.5% | FPG ≥126, OGTT 2h ≥200, HbA1c ≥6.5% | 高い整合性。主要な診断基準は世界的に統一されている3。 |
糖尿病予備群 | 境界型: – FPG: 110–125 mg/dL – OGTT 2h: 140–199 mg/dL |
Prediabetes: – FPG: 100–125 mg/dL (IFG) – OGTT 2h: 140–199 mg/dL (IGT) – HbA1c: 5.7–6.4% |
重要な差異: ADA/WHOのFPG閾値の方が感度が高い(100から)。JDSは早期警告として「正常高値」(100-109)という概念を持つ。また、ADAはHbA1cも予備群の診断に公式に用いる3。 |
正常 | FPG <110 かつ OGTT 2h <140 | FPG <100, OGTT 2h <140, HbA1c <5.7% | JDSの正常FPG閾値はADA/WHOより高い3。 |
診断プロセス | 血糖検査による再確認が必須。HbA1c単独では診断不可。 | 2つの異常な結果(同日または別々の検体)があれば診断可能。 | JDSは正式な診断を下す上でより慎重であり、確認のための血糖検査の不可欠な役割を強調している14。 |
第6章:特殊なケースにおける基準
一般の診断基準がすべての人に適用されるわけではありません。妊婦と、緩徐進行1型糖尿病が疑われる人々は、特別な診断基準を必要とする二つの主要なグループです。
6.1. 妊娠糖尿病(GDM)
妊娠糖尿病は、妊娠前にすでに糖尿病であったケースを除き、妊娠中に初めて発見されたあらゆる程度の糖代謝異常と定義されます22。日本におけるGDMの診断基準は国際的なガイドラインに従い、75g OGTTを用いて、以下の3つの値のうちいずれか1つでも基準値を超えれば診断が確定します11:
- 空腹時血糖値: 92 mg/dL 以上
- 1時間後血糖値: 180 mg/dL 以上
- 2時間後血糖値: 153 mg/dL 以上
さらに、妊婦の検査結果が非常に高い場合(例:FPG≥126 mg/dLまたはHbA1c≥6.5%)、より積極的な管理が必要な「妊娠中の明らかな糖尿病」と診断されます22。
6.2. 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM/LADA)
これは自己免疫性の糖尿病ですが、典型的な1型とは異なり、β細胞の破壊がゆっくりと進行します。そのため、初期段階では患者はインスリンを必要とせず、2型糖尿病と誤診されることがあります26。SPIDDMを正確に診断することは、適切な治療戦略のために非常に重要です。2023年のJDSガイドラインによる診断基準は以下の通りです12:
- 必須項目:
- 経過中のいずれかの時点で膵島関連自己抗体(抗GAD抗体、IA-2抗体など)が陽性である。
- 診断当初、ケトアシドーシスはなく、血糖管理のためにただちにインスリン治療を必要としない。
- 診断分類:
- SPIDDM(definite – 確定): 上記の必須項目2つを満たし、かつ、経過とともにインスリン分泌能が徐々に低下し、インスリン治療の開始が必要となり(通常は診断後3ヶ月以降)、最終的に内因性インスリン欠乏状態(空腹時血清C-ペプチド < 0.6 ng/mLで判定)に陥る。
- SPIDDM(probable – 可能性が高い): 最初の必須項目2つのみを満たし、評価時点ではまだインスリン分泌能が保たれている(空腹時C-ペプチド ≥ 0.6 ng/mL)。これらの症例は綿密な経過観察が必要です。
第7章:「診断を受けたら」— 次のステップは?
糖尿病の診断は終着点ではなく、長期的な健康管理の旅の始まりです。治療目標と実行すべきステップを理解することは、あなたが主体的に病気を管理し、健康な生活を送る助けとなります。
7.1. 包括的な治療目標
診断後、医師はあなたと共に個別化された治療目標を設定します。しかし、日本の「糖尿病標準診療マニュアル2025」や「糖尿病治療ガイド2022-2023」からの一般的な指針は、重要な参照枠組みを提供します6。
指標 | 一般的な目標 | 注記(個別化) |
---|---|---|
HbA1c | <7.0% | 年齢、罹病期間、合併症の有無、低血糖の危険性に応じて、より厳格(<6.0%)または緩やか(<8.0%)に設定されることがある15。 |
空腹時血糖値 | <130 mg/dL | HbA1c <7.0% に対応する目標15。 |
食後2時間血糖値 | <180 mg/dL | HbA1c <7.0% に対応する目標15。 |
血圧 | <130/80 mmHg | 6 |
LDLコレステロール | <120 mg/dL | 心血管疾患があれば <100 mg/dL、複数の危険因子が重なる場合は <70 mg/dL を考慮6。 |
トリグリセリド | <150 mg/dL | 6 |
HDLコレステロール | >40 mg/dL | 6 |
体重(BMI ≥25の場合) | ≥5%の減量 | 6 |
7.2. 治療の土台:生活習慣の改善
ほとんどの2型糖尿病患者にとって、生活習慣の改善はあらゆる治療計画の基盤です。
- 食事療法: 厳しい食事制限を意味するわけではありません。バランスの取れた多様な食事を、規則正しい時間に、適切な量と総エネルギー摂取量で摂ることが目標です。野菜や全粒穀物からの食物繊維を増やし、飽和脂肪酸や単純糖質を制限することが重要です6。
- 運動療法: 定期的な身体活動はインスリン感受性を改善します。ガイドラインでは、以下の2種類の運動を組み合わせることが推奨されています。
- その他の習慣: 禁煙、十分な睡眠、ストレス管理、そして早期の損傷を発見するための毎日の足のケアは、糖尿病の包括的な管理に不可欠な要素です6。
7.3. いつ糖尿病専門医に相談すべきか?
糖尿病専門医は、複雑な症例を扱うための深い知識と豊富な経験を持つ専門家です1。以下のような場合には、専門医の受診を検討すべきです:
- 診断が明確でない場合、特にSPIDDMの疑いがあるとき。
- 治療を遵守しているにもかかわらず、血糖コントロールが困難な場合。
- すでに糖尿病の合併症を発症している場合。
- 1型糖尿病または妊娠糖尿病のケース。
結論とよくある質問
要点のまとめ
糖尿病の診断は、一度の検査で完結するものではなく、正確性を期すための多段階のプロセスです。HbA1c≥6.5%やFPG≥126 mg/dLといった中核的な基準値を理解するとともに、それらが総合的な臨床状況の中でどのように解釈されるかを知ることが重要です。特に糖尿病予備群(境界型)の段階での発見と介入は、病気の進行を防ぐための「黄金の機会」となります。診断を受けることは終点ではなく、血糖、血圧、脂質、体重といった指標を包括的に管理し、合併症を予防するための新たなスタート地点なのです。
よくある質問
Q1: 自宅の血糖測定器で自己診断できますか?
A1: いいえ、できません。自己血糖測定器(SMBG)は、すでに診断された人が日々の血糖値を追跡するための有用なツールですが、診断目的で使用するには精度が不十分です。正式な診断は、医療機関で静脈血漿を用いた検査によって行われ、医師によって解釈されなければなりません。
Q2: 私のHbA1cは6.2%でした。心配すべきでしょうか?
A2: HbA1cが6.2%という結果は、日本のガイドライン(HbA1c 6.0-6.4%は境界型の可能性が高い)および国際的なガイドライン(ADAはHbA1c 5.7-6.4%を予備群と定義)の両方で、糖尿病予備群に分類されます3。これは重要な警告サインです。医師と相談し、追加の検査(OGTTなど)の実施や、糖尿病への進行リスクを減らすための積極的な生活習慣の改善を開始すべきです。
Q3: 空腹時血糖値(FPG)の結果があるのに、なぜOGTTが必要なのですか?
A3: FPGは空腹時の血糖コントロール能力しか示しません。一方、OGTTは大量の糖を摂取した後の体の反応を評価し、食後の状態を模倣します。多くの人はFPGが正常でも食後の耐糖能に異常がある場合があります。そのため、OGTTはFPGが見逃す可能性のある予備群や初期の糖尿病を発見するために特に重要です14。
Q4: 1型糖尿病と2型糖尿病の主な違いは何ですか?
A4: 根本的な違いは原因にあります。1型は自己免疫疾患で、体はインスリンをほとんど産生しません。2型は主にインスリン抵抗性と相対的なインスリン分泌低下が原因で、生活習慣や遺伝と深く関連しています。そのため、1型の治療には常にインスリンが必要ですが、2型は初期には生活習慣の改善や経口薬で管理できる場合があります。
Q5: 糖尿病は完治しますか?
A5: 現在、特に1型糖尿病を「完治」させる方法はありません。しかし、2型糖尿病については、一部の人々が「寛解(remission)」状態を達成することがあります。これは、薬を使用せずに血糖値が正常範囲に戻ることを意味します。これは通常、大幅な体重減少と徹底的な生活習慣の改善によって達成されます。ただし、病気が再発する可能性があるため、この寛解状態は継続的な監視が必要です。
結論
糖尿病とその予備群の診断基準を正しく理解することは、あなた自身やあなたの愛する人の健康を守るための第一歩です。日本の診断プロセスは慎重を期すものですが、それは正確な評価を保証し、不必要な不安を避けるためです。もしあなたの検査結果が正常範囲を超えていたとしても、それは悲観すべき終わりではなく、より健康的な未来への道を歩み始めるための重要なきっかけです。特に糖尿病予備群の段階では、積極的な生活習慣の改善により、病気の進行を食い止め、さらには正常な状態に戻すことも可能です。本記事で提供された情報を基に、ぜひかかりつけの医師と相談し、あなたにとって最適な健康管理計画を立ててください。
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