血小板増加症とは?その原因と対策
血液疾患

血小板増加症とは?その原因と対策

はじめに

通常の血小板数はおよそ15万〜45万/μLとされており、この範囲を大幅に超えて血小板が増加する状態を「増血小板症」もしくは「高血小板症」と呼びます。血小板は止血に重要な役割を担う細胞ですが、数が異常に多すぎると血栓ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓などの重篤な病態を引き起こすリスクが高まります。しかし、増血小板症という言葉は日常ではあまり耳にしないため、どのようなメカニズムで血小板が増加するのか、どのような症状やリスクがあるのかを正確に把握している方は多くありません。今回の「JHO」では、なかなか知られていない増血小板症の実態を掘り下げ、原因や症状、そして予防策や治療法まで詳しく解説します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

増血小板症は自覚症状が少ないまま進行するケースも多く、気づかないうちに血栓症を発症するリスクをはらんでいます。これを防ぐには定期的な健康診断や血液検査、生活習慣の見直しが重要となります。特に血栓リスクが高まる方、また家族に血液疾患を持つ方は早めの対策が必要とされます。この記事では、増血小板症の基本的な知識から、最新の研究に基づく原因・症状・治療・予防までを幅広く紹介し、生活習慣改善や医療機関の受診の重要性を強調していきます。

専門家への相談

本記事は、米国の権威ある医療機関であるMayo ClinicCleveland Clinic、さらに公的医療機関のNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)が公開している増血小板症や高血小板症(本稿では併せて「増血小板症」とも言及)の情報を主要な参考文献として構成しています。これらの機関は国際的に信頼される大規模な研究データや治療ガイドラインを提示しており、増血小板症に関する情報を理解するうえで非常に役立ちます。ただし、本記事の情報はあくまで一般的な参考であり、個々の病態や症状に合わせた医療的判断は、必ず医師や専門家の診断に基づいて行ってください。

増血小板症とは何か

増血小板症とは、血液中の血小板数が異常に増加する状態を指します。血小板は傷ができたときに出血を止めるための凝固因子として働きますが、過剰に増えると血管内で血栓(血のかたまり)ができやすくなり、重大な合併症を招く可能性があります。増血小板症は大きく一次性と二次性に分類され、一次性は骨髄異常や遺伝子変異(例:JAK2遺伝子)が原因となる場合があります。一方、二次性は他の病気や状態が原因となって血小板数が増加するもので、鉄欠乏性貧血や感染症、癌、手術などが該当します。

なお、増血小板症では自覚症状がほとんどないまま血小板が増加し続けるケースも珍しくありません。そのため、知らないうちに血栓が形成され、心筋梗塞や脳梗塞などを発症し大きな後遺症を残す可能性があります。血小板の増加が疑われる方やリスクが高い方は、血液検査などによる早期発見がとても重要です。

一次性増血小板症と二次性増血小板症

増血小板症は、下記のように主に二つのタイプに分類されます。

  1. 一次性増血小板症
    • 骨髄の造血異常が原因
    • 遺伝子変異(JAK2遺伝子など)が関連している場合あり
    • 完全なメカニズム解明には至っておらず、研究が継続中
  2. 二次性増血小板症
    • 他の病気や状態に伴う血小板数の増加
    • 鉄欠乏性貧血、感染症、慢性炎症、癌などが原因となる場合が多い
    • 血液の失血や外傷、大手術の後などに反応的に血小板数が増えるケースもある

二次性の場合は原因疾患の治療や解消によって血小板数が正常化することも多いと報告されています。特に、慢性炎症や鉄欠乏性貧血などの基礎疾患の改善を図ることで、血液検査の結果も正常に戻ることがあります。

主な症状

増血小板症においては、血小板が非常に多いにもかかわらず、自覚症状がほとんどないケースがよく見受けられます。しかし、次のような症状がみられた場合は注意が必要です。これらは血栓が形成されて血流が阻害されることで起こる場合があります。

  • 頭痛やめまい
  • 皮膚にできる説明のつかないあざ
  • 胸の痛み
  • 息切れや吐き気
  • 身体がだるく、体力が低下する
  • 言語の混乱や意識の混濁
  • 鼻血や歯茎からの出血
  • 腹痛や血便
  • 手足の痛みや腫れ、発赤
  • 手足のしびれやチクチク感

これらの症状は比較的軽度に現れることもありますが、血栓が大きくなると動脈や静脈を塞ぎ、脳梗塞や肺塞栓などの重大な合併症につながる危険が高まります。特に高血圧や高脂血症、糖尿病など他のリスク因子を持つ場合は、より注意が必要です。自覚症状がない段階から定期的に血液検査を受けることで、早期発見と早期治療が可能になります。

原因

増血小板症の原因は、一次性か二次性かによって異なります。一次性は骨髄の造血幹細胞に何らかの異常がある場合が多く、遺伝子変異(JAK2、CALRなどの異常)が見つかるケースも報告されています。一方、二次性の増血小板症は他の健康問題が誘因となって血小板数が増えるもので、以下のように多様です。

  • 鉄欠乏性貧血
    鉄分の不足により赤血球が減少する過程で、体は造血を補おうとする反応を起こし、血小板も増産されることがある。
  • 失血・手術後の反応
    大きなけがや手術による出血で体が凝固因子を必要とするため、一時的に血小板の産生が増加する。
  • 慢性炎症や感染症
    リウマチ性関節炎などの慢性的な炎症疾患や、一部の感染症では炎症反応を抑えるために血小板が増える。

  • 一部の悪性腫瘍では細胞増殖因子が分泌され、それが骨髄を刺激して血小板数を高めることがある。
  • 脾臓の摘出
    脾臓は血小板の破壊と貯蔵を担っているため、摘出後に血小板数が増えやすくなる。
  • 薬剤性の血小板増加
    例としてエピネフリン(アドレナリン)やビンクリスチン硫酸塩、ヘパリンナトリウムなどが血小板増加に関与する場合がある。

これらの要因は単独で作用することもあれば、複合的に作用して血小板を増やす場合もあります。二次性の場合は原因となる基礎疾患や誘因を正しく診断し、治療することが最も重要です。

診断

血液検査

増血小板症を疑われる際、最初に行われるのが血液検査です。具体的には以下の項目が重要視されます。

  • 血小板数: 15万〜45万/μLを大きく超える値(一般には45万/μL以上)
  • 赤血球・白血球数: 他の血球成分に異常がないかを同時にチェック
  • 炎症反応(CRPなど): 炎症や感染の有無
  • 血液像: 巨大血小板や分葉の異常など
  • フェリチンや鉄関連指標: 鉄欠乏性貧血がないか確認

遺伝子検査

一次性増血小板症が疑われる場合、JAK2、CALR、MPLなどの遺伝子変異を調べるための遺伝子検査が行われることがあります。もっとも、すべての症例で必ず遺伝子異常が見つかるわけではありません。遺伝子検査で陰性でも、一次性増血小板症と診断されるケースは存在します。

骨髄生検

血小板を含む血球の産生を直接評価するために、骨髄生検が行われることがあります。骨髄液や骨組織の状態を確認することで、一次性か二次性かの鑑別や他の血液疾患との鑑別診断を行います。

治療

増血小板症の治療は、一次性・二次性や患者のリスクによって大きく異なります。特に血栓症リスクが高い人(高齢者、高血圧、喫煙、糖尿病などのリスク因子がある人)では、血小板抑制療法の適用が検討されます。

  • 二次性増血小板症の治療
    原因となる基礎疾患(例:鉄欠乏性貧血、感染症、炎症性疾患など)を治療することで血小板数が正常範囲に戻ることが多いです。
  • 一次性増血小板症の治療
    必要に応じ、血小板を減少させる薬剤(ヒドロキシカルバミドなど)が処方される場合があります。加えて、血栓予防として低用量アスピリンの内服が提案されることもあります。ただし、出血リスクとの兼ね合いがあるため、適切な用量や使用期間は必ず医師と相談して決定します。

最新の研究動向

一次性増血小板症は遺伝子変異や骨髄細胞の異常増殖など、根本的な原因解明が進められています。近年では分子標的薬(JAK阻害薬など)の研究が加速し、従来の治療法に比べて副作用が少なく、効果的に血小板数を管理できる可能性が示唆されてきました。

二次性増血小板症に関しては、あくまで基礎疾患の治療をどう進めるか、あるいは合併症をどう予防するかが主眼となります。特に慢性炎症の抑制や鉄欠乏性貧血への対応が重要とされ、患者ごとの体調管理や栄養状態の把握が不可欠です。

予防

増血小板症の予防に特効薬はありませんが、日常生活の改善や基礎疾患の管理が非常に大切です。以下のような取り組みが推奨されています。

  • バランスの取れた健康的な食事
    野菜、果物、魚、大豆製品など栄養バランスの良い食材を取り入れ、過度な塩分や飽和脂肪酸の摂取を避ける。
  • 定期的な適度な運動
    ウォーキングや軽いジョギング、ストレッチなどを週に数回行うことで血流が改善し、循環器系の健康を保ちやすくなる。
  • 適正体重の維持
    肥満は血栓リスクを高める一因となりうるため、BMIや腹囲に注意しながら体重をコントロールする。
  • 禁煙
    喫煙は血管収縮や動脈硬化の進行を促すため、血栓形成リスクが大きく高まる。
  • ストレス管理
    ストレスが長期的に続くと、血圧や血糖値だけでなく炎症反応にも影響を及ぼし、血小板数の異常や血栓症リスクを高める可能性がある。

これらのライフスタイルの改善は、増血小板症だけでなく、さまざまな生活習慣病の予防にも効果的です。特に二次性増血小板症の場合、原因となる病気が生活習慣と密接に関係しているケースも多いため、こうした日頃のケアが大きな意味を持ちます。

増血小板症に関する新しい研究と知見

増血小板症の分野では、分子レベルの解明が進むにつれ、血栓リスクの正確な評価や治療法の選択肢が広がっています。特にここ数年(4年以内)で発表された論文では、骨髄増殖性疾患である一次性増血小板症においてJAK阻害薬やインターフェロン製剤が有望な治療手段として検討されています。実際、欧米の大規模な臨床試験では、従来の化学療法に比べて血栓再発率が低下し、副作用の軽減にも期待が寄せられています。

また、二次性増血小板症については、小児における原因疾患との関連性や合併症の発症リスクに関する研究が進められています。感染症による急性炎症反応だけでなく、慢性炎症や栄養状態の不良が長期的に血小板数に影響することが示唆されており、早期の原因究明と生活習慣の管理が強調されています。

  • たとえば、2021年にPediatric Blood & Cancer誌に掲載されたある研究(Liら、2021年、68巻4号、e28883、doi:10.1002/pbc.28883)では、小児の反応性(いわゆる二次性)血小板増加例を単一施設でレトロスペクティブに解析し、多くの場合が感染症や貧血など治療可能な要因によって引き起こされていることが報告されています。日本国内でも類似の傾向がみられる可能性が高く、子どもにおける血小板数の異常が疑われた場合には、まず基礎疾患の有無や栄養面の状態を点検することが推奨されます。

さらに、一次性増血小板症では長期的に血栓症リスクと出血リスクのバランスを管理する必要があるため、個々の患者の遺伝子変異や臨床症状に合わせた個別化医療の手法が注目されています。2021年にLeukemia誌に掲載された論文(Griesshammerら、2021年、35巻、7-20ページ、doi:10.1038/s41375-020-0872-2)では、従来から行われているヒドロキシカルバミドなどの化学療法に加え、遺伝子変異別の治療戦略やJAK阻害薬の有効性が整理されており、今後の治療ガイドラインに大きく影響を与える可能性があると考えられています。

結論と提言

増血小板症は、無症状であっても血栓リスクを高める危険な状態であり、血液検査を通じた早期発見が肝要です。とりわけ一次性増血小板症のように骨髄の異常を原因とする場合、血小板数が著しく増加することがあり、専門的な治療を要します。二次性増血小板症は基礎疾患のコントロールによって改善できることが多いため、まずは原因となる健康問題(鉄欠乏性貧血、感染症、炎症性疾患、悪性腫瘍など)を正しく診断・治療することが重要です。

さらに、生活習慣の見直しによって血栓リスクを減らし、血小板のコントロールに寄与できる可能性も示唆されています。バランスのよい食事、適度な運動、禁煙、ストレス管理などの基本的な健康習慣は、血液や血管の健康維持だけでなく、さまざまな疾病リスクの低減にもつながります。

特にリスクが高い方(高齢者、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙者など)は、定期的に血液検査を受け、血小板数とともに他の血液成分や炎症マーカーも確認することをおすすめします。血栓症を疑う症状が少しでもある場合は医療機関を早めに受診し、医師の判断のもと適切な検査・治療を行いましょう。

注意: 本記事で紹介する内容はあくまで一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の治療法や診断を推奨するものではありません。症状や病歴、遺伝的要因などは個人差が大きいため、実際の治療や予防策については医師や専門家と十分に相談してください。

参考文献

  • Griesshammer M, Padró T, Besses C. “Contemporary management of essential thrombocythemia.” Leukemia. 2021;35:7–20. doi:10.1038/s41375-020-0872-2
  • Li W, Wang C, Gao S, et al. “Etiology of reactive thrombocytosis in children: A single-center retrospective study.” Pediatr Blood Cancer. 2021;68(4):e28883. doi:10.1002/pbc.28883

本記事でお伝えした情報は、日常生活でのちょっとした工夫や定期的な健診で、増血小板症による合併症のリスクを大きく下げられる可能性があるという点でも非常に重要です。血栓症リスクは加齢や生活習慣によって大きく左右される部分もあり、誰もが注意を払うべき課題といえます。一方で、症状や検査値には個人差があるため、自己判断で結論を出すのではなく、まずは専門家の診断を受けることが肝心です。必要に応じて適切な治療を受けながら、生活習慣を見直し、血管と血液の健康を守っていきましょう。

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