寝姿勢の深層心理のすべて:あなたの眠りが語る性格と健康の真実
睡眠ケア

寝姿勢の深層心理のすべて:あなたの眠りが語る性格と健康の真実

私たちは日々、意識的な行動や選択を通じて自分自身を表現していますが、意識の及ばない領域、特に睡眠中の無意識の振る舞いには、古くから人々の強い関心が寄せられてきました。その中でも、「寝相」(寝姿勢)は、その人の深層心理や性格を映し出す鏡であるという考えは、雑誌の特集やインターネットの記事で頻繁に取り上げられ、多くの人々の興味を惹きつけています1。横向きに丸まって眠る人は内気で、大の字で眠る人は自信家—こうした「寝相診断」は、手軽で面白い自己分析ツールとして広く受け入れられています。しかし、ここで一つの根源的な問いが浮かび上がります。巷で語られるこれらの「寝相診断」は、果たして科学的根拠に基づいているのでしょうか?それとも、私たちの寝姿勢は、固定的な「性格」よりももっと深く、重要な何か—すなわち、私たちの心身の健康状態—を物語っているのでしょうか?本稿は、JapaneseHealth.org編集部が、睡眠医学、臨床心理学、生理学の専門家の知見を統合し、この問いに包括的かつ科学的根拠に基づいて答えることを目的としています。一般に流布している寝相と性格に関する通説を批判的に検証し、神話と医学的現実を明確に切り分け、日本睡眠学会333536をはじめとする国内外の信頼できる研究機関からの知見を基に、寝姿勢が私たちの身体と心から発せられる「真のメッセージ」を解読します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性を示したリストです。

  • クリス・イジコフスキー教授の研究: この記事における一般的な「寝相性格診断」の類型に関する記述は、英国の睡眠評価・助言サービスの元所長である同教授によって発表された調査に基づいています35
  • 厚生労働省の調査・ガイドライン: 日本人の睡眠時間、不眠の有病率、睡眠不足の原因に関するデータ2630、および健康な睡眠に関する公的指針3537は、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」および「健康づくりのための睡眠ガイド」に基づいています。
  • 学術研究論文: 睡眠中の姿勢が脊椎の健康23、睡眠時無呼吸症候群(SAS)7、胃食道逆流症(GERD)37、さらには脳の老廃物除去システム7に与える影響に関する記述は、査読済みの医学・科学論文に基づいています。
  • 日本睡眠学会: レム睡眠行動障害(RBD)のような特定の睡眠障害に関する警告や、専門医への相談を推奨する基準は、日本睡眠学会3336などの専門機関の見解を反映しています。

要点まとめ

  • 巷で語られる「寝相性格診断」には、説得力のある科学的根拠は存在せず、性格と寝姿勢の直接的な関連性は証明されていません。
  • 寝姿勢は「性格」よりも、むしろ脊椎の健康、呼吸機能、消化器系の状態、さらには脳の健康といった心身の状態を反映する重要な「健康シグナル」です。
  • 仰向けは脊椎に良い一方、いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)を悪化させる可能性があり、左向き寝は胃食道逆流症(GERD)の症状を和らげる効果が期待できます。
  • うつ伏せ寝は、気道確保の点では利点があるものの、首や腰に大きな負担をかけるため、一般的には推奨されません。
  • 夢の内容に合わせた激しい行動(レム睡眠行動障害)など、特定の寝相は重大な疾患の前兆である可能性があり、速やかに専門医に相談することが不可欠です。
  • 「理想の寝姿勢」は万人共通ではなく、個々の健康状態(腰痛、SAS、GERDの有無など)に応じて最適な姿勢を選択する個別化アプローチが重要です。

巷で語られる「寝相性格診断」—その魅力と類型

寝相で性格がわかるという考えは、私たちの自己理解への欲求を満たすシンプルで魅力的な物語を提供します。ここではまず、一般的に知られている主要な寝姿勢の類型と、それぞれに関連付けられている「性格」について整理します。これらの類型の多くは、英国の睡眠評価・助言サービスの元所長であるクリス・イジコフスキー教授らによる調査研究に端を発するとされています3

胎児型 (Fetal Position)

母親の胎内にいる胎児のように、体を横向きにして膝を胸に引き寄せ、背中を丸める姿勢です。これは最も一般的な寝姿勢であり、特に女性に多く見られると報告されています3。通説では、外見はタフに見えても内面は繊細で傷つきやすく、不安を感じやすい性格とされます23。この姿勢は、無意識に自分を慰め、守ろうとする自己防衛的な行動と解釈されます8

丸太型 (Log Position)

丸太のように、体の側面を下にして、両腕と両脚をまっすぐに伸ばして眠る姿勢です。この姿勢を好む人は、非常に社交的で気さくであり、他人を信じやすい純粋さを持つと言われています59

渇望型 (Yearner Position)

丸太型と同様に横向きですが、両腕を前方に伸ばし、何かを追い求めるかのような姿勢です。オープンな性格である一方、物事に対して懐疑的で皮肉屋な一面を持つとされます3

兵隊型 (Soldier Position)

仰向けになり、両腕を体の側面にまっすぐ沿わせる、気をつけの姿勢に似た寝方です。この姿勢の人は、物静かで控えめ、規律を重んじ、自分にも他人にも高い基準を求める真面目なタイプと言われます110

うつ伏せ型 (Freefall/Prone Position)

うつ伏せになり、頭を左右どちらかに向け、両手で枕を抱え込むような姿勢です。表面上は社交的で大胆に見えますが、内面では不安を抱え、批判に敏感であるとされます5。また、支配欲が強く几帳面という解釈もあります9

大の字型 or ヒトデ型 (Starfish Position)

仰向けで両腕両脚を広げる姿勢です。「王様型」とも呼ばれ、自信に満ち溢れオープンな性格とされる一方12、「ヒトデ型」としては、友情を大切にする優れた聞き手であり、自分が注目の的になるのは好まない、という異なる側面も指摘されています5

科学的視点による批判的評価 — 神話と現実の境界線

前章で概説した「寝相性格診断」は、直感的で分かりやすい反面、その科学的妥当性については深刻な疑問が投げかけられています。睡眠科学の観点からこれらの通説を批判的に評価し、なぜ性格と寝姿勢の直接的な結びつきが科学的に支持されないのかを明らかにします。

証拠の脆弱性:通説の根拠となる研究の限界

寝相性格診断の多くが依拠しているイジコフスキー教授の研究は、査読を経て学術誌に掲載されたものではなく、メディア向けに発表された調査結果に近いものです。その手法には、科学的結論を導くにはいくつかの重大な限界が存在します。

  • 限定的な標本: 調査対象は約1,000人の英国人に限られており、この結果を多様な人々に一般化することは困難です3
  • 自己申告による偏り: 参加者は自身の寝姿勢と性格を自己申告で回答していますが、多くの人は一晩に何度も寝返りを打つため、本人の認識と実際の姿勢が大きく異なることが報告されています8
  • 再現性の欠如: この寝相と性格の関連性について、追試によって結果が確認されたという報告は見当たりません3
  • 専門家による審査の不在: これらの主張は専門家による厳格な審査(査読)を経ておらず、その信憑性は学術的に保証されていません6。心理学の専門家の中には、これを「科学的根拠に乏しい」と明確に批判する声もあります17

現代の睡眠科学者の間では、特定の寝姿勢と固定的な性格特性との間に、直接的な因果関係があるという説得力のある科学的証拠は存在しない、というのが一般的な合意です3。睡眠中の行動は、遺伝21、年齢、健康状態、ストレスレベルといった、より複雑で動的な要因の相互作用によって決定されるのです7

「特性」と「状態」の混同という根本的な誤り

通俗心理学が陥りがちな誤りは、永続的な「性格特性(Trait)」と、一時的な心身の「状態(State)」を混同する点です。例えば、不安症な「性格」だから胎児型で寝るのではなく、一時的な強いストレスや不安という「状態」にあるために、無意識に身を守り、自己を慰める姿勢をとると考える方が合理的です8。この視点の転換は、寝姿勢を「変えられない性格のラベル」ではなく、「変化しうる心身の状態を示す動的なシグナル」として捉え直すことを可能にします。

表1:「寝相性格診断」の通説と科学的見解の比較
寝姿勢 通説の性格 科学的見解・示唆される状態
胎児型 内気で繊細、心配性 性格との直接的な関連性は証明されていません。不安やストレスといった一時的な心理状態の表れである可能性が指摘されています。自己防衛・自己鎮静の姿勢です。
うつ伏せ型 社交的だが打たれ弱い、または支配的 性格との関連性は不明確です。身体的には、気道を確保しようとする無意識の試み(睡眠時無呼吸症候群の可能性)や、消化器系の不調を示唆することがあります。
仰向け型(兵隊型・大の字型) 自信家、オープン、または規律正しい 性格との関連性は証明されていません。身体的には、脊椎の自然なアライメントを保ちやすいですが、いびきや睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性があります。
横向き型(丸太型・渇望型) 社交的、または懐疑的 性格との関連性は証明されていません。身体的には、多くの人にとってバランスの取れた姿勢です。消化器系(特に胃食道逆流症)や脳の老廃物除去に良い影響を与える可能性が示唆されています。

身体の無意識言語 — 寝姿勢が「本当に」示す健康シグナル

私たちの寝姿勢は、性格のラベルではなく、身体からの重要な健康シグナルです。この章では、寝姿勢が脊椎、呼吸、消化、さらには脳の健康にまで及ぼす影響を、臨床医学的な視点から詳細に解説します。

1. 脊椎と筋骨格系の健康

  • 仰向け (Supine): 脊椎の自然なアライメントを最も保ちやすい姿勢ですが、適切な高さの枕が不可欠です23
  • 横向き (Side): 肩と腰に体重が集中しますが、頭から背骨までが一直線になるよう枕で調整し、膝の間にクッションを挟むことで腰への負担を軽減できます14
  • うつ伏せ (Prone): 腰椎の自然なカーブを平坦にし、首を大きくねじるため、首や背中の痛みの直接的な原因となり得、最も推奨されない姿勢です7

2. 呼吸機能

  • 仰向け (Supine): 重力で舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道を狭めるため、いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状を悪化させる最大の要因となります7
  • うつ伏せ (Prone): 脊椎には悪いですが、気道を開く効果があります。重度のSAS患者が、無意識に呼吸を楽にするためにこの姿勢を選ぶことがあります23
  • 横向き (Side): 気道の閉塞を防ぐのに最も効果的な姿勢とされ、いびきやSASに悩む人にまず推奨されます。

3. 消化器系の健康

  • 右向き (Right Side): 胃酸が食道へ逆流しやすくなるため、胃食道逆流症(GERD)の症状がある人は胸やけが悪化することがあります3
  • 左向き (Left Side): 胃が食道より低い位置に来るため、胃酸の逆流が起こりにくく、GERDの症状を持つ人に医学的に推奨されています7

4. 神経系と循環器系の健康

近年の研究では、横向き寝が、脳内の老廃物を除去する「グリンパティックシステム」の働きを最も効率化する可能性が示唆されています7。また、心不全の患者が心臓への圧迫を避けるために無意識に左向き寝を避ける傾向があるという報告もあります7。これらは、身体が直面している生理学的な課題を解決しようとする適応戦略なのです。

表2:臨床医の視点:寝姿勢と健康への影響ガイド
寝姿勢 背骨への影響 呼吸への影響 消化への影響
仰向け ◎ 理想的: 脊椎の自然なカーブを維持しやすい。 △ リスクあり: いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)を悪化させる可能性。 ○ 良好: 消化器への圧迫が少ない。
左向き ○ 良好: 適切な枕で背骨を一直線に保てば良い。 ◎ 理想的: 気道が確保されやすく、SASの改善に推奨される。 ◎ 理想的: 胃食道逆流症(GERD)の症状を軽減するのに最も効果的。
右向き ○ 良好: 適切な枕で背骨を一直線に保てば良い。 ◎ 理想的: 気道が確保されやすい。 △ リスクあり: GERDの症状を悪化させる可能性。
うつ伏せ × 非推奨: 頸部と腰部に大きな負担をかける。 △ 条件付きで利点: 気道は開きやすいが、SASの根本解決ではなく、他の健康リスクが高い。 × 非推奨: 腹部を圧迫する。

特定の姿勢と行動の深層分析 — 心理的・身体的シグナル

主要な寝姿勢に加え、より細かな体の使い方にも心身の状態を示すシグナルが隠されています。

腕組み・胸の上で手を組む

胸の上で腕を組む姿勢は、古典的な自己防衛のジェスチャーであり、無意識に外部の脅威を遮断しようとする試みと解釈できます8。強いストレスや不安を感じているサインかもしれません2。身体的には、胸の筋肉の凝りや巻き肩のバランスをとろうとしている可能性も考えられます22

抱き枕・枕を抱える

この行動は、安心感や安らぎ、情緒的な慰めを強く求めているサインです12。抱きしめる行為は愛情ホルモン「オキシトシン」の分泌を促し、ストレスを軽減する効果があります14。身体的にも、横向き寝の際に抱き枕を使うと、肩への負担が軽減され、より良い脊椎のアライメントが維持されます14

頻繁な寝返り

適度な寝返りは不可欠ですが23、過剰な場合は質の良い睡眠がとれていないサインです。心理的苦痛8、寝具が合わないといった身体的不快感23、あるいはむずむず脚症候群などの医学的問題が原因の可能性があります23

レム睡眠行動障害 (REM Sleep Behavior Disorder – RBD)

これは単なる「寝相が悪い」ではなく、明確な睡眠障害です。夢の内容に合わせて叫ぶ、殴る、蹴るといった激しい行動をとるのが特徴です23。RBDは、パーキンソン病やレビー小体型認知症といった神経変性疾患の数年前に現れる「前兆症状」である可能性が高いことが分かっています。特に50歳以降の男性に多く見られ、このような症状がある場合は、決して放置せず、速やかに睡眠専門医を受診することを強く推奨します23

日本の睡眠事情 — 文化的背景とデータ分析

これらの知見を、日本特有の睡眠文化や統計データを踏まえて考察します。

統計で見る日本の睡眠

日本の大学生を対象とした研究では、最も多い寝姿勢は仰向け(40.5%)、次いで横向き(32.4%)でした25。これは横向き寝が主流の欧米とは対照的です。また、日本は世界的に見ても睡眠時間が短く、成人の約20%以上が慢性的な不眠を抱えています26。その原因として、女性は「悩みやストレス」、男性は「仕事」が上位に挙げられ、社会環境が睡眠を蝕んでいる実態が浮き彫りになっています30

文化的背景の考察

日本で仰向け寝が多い理由の一つとして、伝統的な寝具である「布団」の文化が推測されます。比較的硬く平らな布団は、体が沈み込みにくく、仰向け寝を快適に保つのに適している可能性があります。また、社会的なプレッシャーによるストレス31が不眠や質の悪い睡眠につながり、それが身体的不調を引き起こすという負の連鎖は、日本の主要な公衆衛生上の課題の一つです37

表3:日本の睡眠プロファイル:統計データで見る現状
指標 データと出典
主な寝姿勢(日本) 仰向け: 40.5%, 横向き: 32.4%, うつ伏せ: 5.0%25
平均睡眠時間 30-50代の成人の4割以上が6時間未満26
慢性不眠の有病率 成人の約20.6%(約5人に1人)26
睡眠不足の主な理由 男性: 仕事・通勤, 女性: 悩み・ストレス30

回復的な睡眠のための行動計画 — 専門家が教える実践ガイド

これまでの知識を実生活に活かすための具体的な行動計画を提示します。

1. 自己評価:あなたの睡眠の質をチェックする

まず現状を把握しましょう。「朝、首や肩、背中に痛みはないか?」「日中に耐えがたい眠気はないか?」などを自問してみてください。パートナーから「いびきや呼吸の停止」を指摘された場合は、特に注意が必要です。

2. あなたの健康状態に合わせた最適な寝姿勢の選択

  • 首・肩・腰に痛みがある場合: 仰向けで膝の下に枕を入れるか、横向きで膝の間に枕を挟むことを試みてください14
  • いびきや軽度のSASがある場合: 積極的に横向き寝を心がけましょう7
  • GERDで胸やけがある場合: 左向きで寝ることを優先してください7
  • 妊娠中の場合: 胎児への血流を最適に保つため、左向き寝が推奨されます7

3. 睡眠環境の最適化:枕とマットレスの科学

健康的な寝姿勢を維持するには、体に合った寝具が不可欠です。枕はマットレスと頭・首の間にできる隙間を適切に埋め、脊椎の自然なカーブを支えるものを選びます23。マットレスは、背骨のラインをまっすぐに保てるだけの支持性と、体のカーブにフィットして圧力を分散させる体圧分散性のバランスが重要です。

4. 危険信号を認識する:専門医に相談すべき時

セルフケアで改善しない、あるいは以下の「危険信号」が見られる場合は、決して自己判断で放置せず、睡眠専門医や関連する診療科を受診してください。

  • 3ヶ月以上続く慢性的な不眠。
  • 呼吸が止まっているのを指摘される激しいいびき(SASの強い疑い)23
  • 夢の内容に合わせた激しい行動(RBDの疑い)23
  • 脚を動かしたいという抑えがたい衝動(むずむず脚症候群の疑い)。
  • 寝具を工夫しても改善しない、慢性的な身体の痛み13
  • 睡眠に影響を及ぼすほどの、持続的な不安や抑うつ気分39

よくある質問

結局、万人にとって一番良い寝姿勢は何ですか?

万人にとって唯一絶対の「一番良い寝姿勢」というものはありません。個人の健康状態によって最適解は異なります。例えば、脊椎の健康を最優先するなら仰向けが良い選択ですが、いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)に悩む人にとっては最も避けるべき姿勢です。胃食道逆流症(GERD)の症状がある人には、胃酸の逆流を防ぐ左向き寝が推奨されます。本稿で解説したように、ご自身の健康プロファイル(腰痛の有無、呼吸や消化の問題など)と照らし合わせて、最も利益が大きく、リスクが少ない姿勢を見つけることが重要です。

毎晩同じ姿勢で寝続けるべきですか?寝返りは悪いことですか?

いいえ、一晩中まったく同じ姿勢でいるのは不健康です。適度な寝返り(一晩に20回程度)は、体の一部分に圧力がかかり続けるのを防ぎ(褥瘡予防)、血行を促進し、体温を調節するために不可欠な生理現象です23。問題となるのは、寝返りが「過剰」な場合です。絶え間なく動き回っている場合は、寝具が合っていなかったり、心身に何らかの不快感があったりして、質の良い睡眠がとれていないサインかもしれません。

パートナーから「寝相が悪い」と言われます。これは病気でしょうか?

単に「寝相が悪い」というだけでは、必ずしも病気とは言えません。しかし、その「悪さ」の内容が重要です。もし、夢の内容に合わせて叫んだり、殴る、蹴るといった暴力的で激しい行動をとる場合は、「レム睡眠行動障害(RBD)」という睡眠障害の可能性があります23。RBDはパーキンソン病などの神経変性疾患の前兆である可能性も指摘されており、極めて重要な警告サインです。このような症状がある場合は、決して放置せず、速やかに睡眠専門医にご相談ください。

寝姿勢を意識的に変えようとしても、朝になると元の姿勢に戻ってしまいます。どうすれば良いですか?

寝姿勢は無意識の行動なので、意識だけで変えるのは難しいです。物理的な環境を整えることで、望ましい姿勢を維持しやすくする方法が効果的です。例えば、横向き寝を維持したい場合は、背中側に大きな枕やクッションを置いて仰向けになるのを防いだり、抱き枕を使って横向きの姿勢を安定させたりします。また、テニスボールをパジャマの背中に縫い付けるといった古典的な方法もあります。最も重要なのは、なぜその姿勢を変えたいのか(例:いびき改善のため)を理解し、寝具を最適化するなど、多角的なアプローチを試みることです。

結論

本稿を通じて、私たちは「寝相性格診断」という広く信じられている神話が、科学的根拠に乏しいことを明らかにしてきました。しかし、その一方で、私たちの寝姿勢が、それ以上に遥かに深く、有意義なメッセージを発していることも見てきました。それは、固定的な性格のラベルではなく、私たちの身体からの、生きた対話なのです。寝姿勢は、私たちの心身の状態を映し出す、動的な鏡です。それは、脊椎のアライメント、呼吸のしやすさ、消化器系の快適さといった現在の身体的健康を反映し、同時に日々のストレスや不安といった心理的状態のバロメーターでもあります。重要なのは、この身体からのシグナルが「運命」ではないということです。それは、改善の余地がある「現状報告」です。今、私たちが問うべきは、**「私の身体は、私の健康について何を伝えようとしているのだろう?」**という、より本質的な問いです。この問いに応え、情報に基づいた変化を起こし、必要な時には専門家の助けを求めること。それこそが、より良い睡眠と、より健康な人生への道を切り拓く、最も確実な一歩となるのです。

免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言を構成するものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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  4. 睡眠姿勢と性格の関係 | Joongang Ilbo – 中央日報. 入手先: https://japanese.joins.com/JArticle/43945?sectcode=400&servcode=400
  5. 【寝相で性格診断】人は寝ているときにこそ本性が表れる! – TABI LABO. 入手先: https://tabi-labo.com/158964/sleeprevelssecrets
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  7. Your Sleep Position Affects Much More Than You Think …. 入手先: https://www.psychologytoday.com/us/blog/sleep-newzzz/201903/your-sleep-position-affects-much-more-than-you-think
  8. “寝る姿勢”から分かるあなたの性格、あなたのいまの心理状況 …. 入手先: https://www.harpersbazaar.com/jp/beauty/health-food/a31090934/sleep-positions-meaning-190617r-lift1/
  9. 寝相で分かる性格診断 あなたの寝相はどれ? | 株式会社ホワイトホーム. 入手先: https://reblo.net/whitehome/diary-detail-513815/
  10. 【寝相で性格診断】寝ているときに現れるあなたの本当の性格 – タウンワーク. 入手先: https://townwork.net/magazine/life/66782/
  11. 寝相で分かる?!性格診断 – 快眠グッズ通販サイト ネルチャー | メディア – Nelture. 入手先: https://nelture.com/media/?p=13108
  12. 寝相からわかるあなたの性格と心理。寝るときの姿勢で本当のアナタがわかるかも. 入手先: https://www.my-muse.jp/article/562/
  13. 寝方や寝る姿勢に性格は出るのか、心理学的な見方は?. 入手先: https://hidamari.hamazo.tv/e9872631.html
  14. What do our sleeping positions says about us. 入手先: https://janonline.com/lifestyle/sleeping-positions/
  15. “寝る姿勢”から分かるあなたの性格、あなたのいまの心理状況. 入手先: https://icse2014.acm.org/dbcbbaashop/jp/beauty/health-food/a31090934/sleep-positions-meaning-190617r-lift1/
  16. What Does Your Sleeping Position Say About You? – Cornish Bed Company. 入手先: https://cornishbeds.co.uk/blogs/news/what-does-your-sleeping-position-say-about-you
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  32. ~日本人の半数は睡眠不足?~ 睡眠に関する意識・行動調査 | アンケート調査・マーケティングリサーチなら日本インフォメーション. 入手先: https://www.n-info.co.jp/report/0034
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  35. 日本睡眠学会. 入手先: https://jssr.jp/
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