子どもの消化不良に悩むママへ:敏感なお腹に優しいミルクの選び方
小児科

子どもの消化不良に悩むママへ:敏感なお腹に優しいミルクの選び方

はじめに

赤ちゃんの消化に関わる問題は、多くの親御さんが直面する非常に身近な悩みです。特に乳児期においては、まだ消化器系が未発達であるため、吐き戻しやガス、下痢、便秘など、さまざまなトラブルが頻繁に起こりやすいとされています。これらのトラブルは赤ちゃんの体調や機嫌に大きく影響し、親御さんにとっては日々のケアを複雑にする原因となりかねません。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

私たち「JHO」がお届けする今回の記事では、赤ちゃんの消化器系に起こりがちな症状や原因、そしてそれらを踏まえたうえでのミルク選びの重要性について、最新の情報を交えて詳しく解説します。赤ちゃんの健康と成長をサポートするための基本的な知識から、選ぶべきミルクの栄養成分や留意点、さらには専門家への相談の大切さまで網羅的にご紹介していきます。大切なお子さんに合った最適なミルクを選択するための参考に、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。

専門家への相談

この記事では、海外の医療専門家から得られた情報として、ベトナムの医師であるDr. Nguyễn Đinh Hồng Phúc(Nhi Đồng 1病院所属・小児科医)の助言を参考にしています。彼女は小児消化器系の健康管理に深い造詣を持ち、実臨床における多くの経験を積んでいます。ただし、この記事で提供する情報はあくまでも参考であり、個々の赤ちゃんの症状や体質によって最適な対処法は異なります。何らかの異変や不安を感じた場合は、必ず医師や管理栄養士などの専門家に直接ご相談ください。

赤ちゃんの消化器系のトラブルとは?

赤ちゃんの消化器系は未成熟であることから、ちょっとした刺激や変化にも敏感に反応しやすいのが特徴です。そのため吐き戻しやガス、便秘、下痢といった幅広いトラブルが日常的に見られます。下記では代表的な症状やその背景、対策について詳しく見ていきます。

吐き戻しやミルクの逆流

赤ちゃんの吐き戻しは、体の仕組みとしては珍しいことではありません。まだ胃の入り口付近の筋肉(噴門部括約筋)が十分に発達していないため、飲んだミルクを戻しやすいのです。一般的には、ミルクを飲んだ後あるいはげっぷをさせた後などに吐き戻しが起きる場合が多いとされています。

  • 通常の吐き戻し
    赤ちゃんが元気で体重増加にも問題がなければ、多くの場合は生理的な反応として心配いらないケースが多いです。数カ月から1年ほど成長するうちに徐々に落ち着くことが期待されます。
  • 注意が必要な場合
    吐き戻しの量が著しく多い、嘔吐物に血液が混じる、勢いよく噴出する嘔吐が頻繁にみられる、赤ちゃんの元気がなく授乳量が減ってしまうなどの場合は、何らかの基礎疾患の可能性も否定できません。早めに医師に相談して原因を特定する必要があります。

ガスや腹痛

赤ちゃんはお腹にガスがたまりやすく、腹部の張りや痛みを訴えるような仕草を見せることがあります。まだ腸内環境が安定しておらず、消化機能も未熟ですので、大人に比べてガスが発生しやすいとも言われています。腹部にガスがたまると泣き出したり、ミルクを嫌がったりする場合もあるため、下記のようなケアを行うことが一般的に推奨されます。

  • 背中を優しくトントンする
    抱っこして背中を軽く叩くことでげっぷを促し、ガスを体外に排出しやすくする方法です。ミルクの後に数分から10分程度行うと、症状がやわらぐこともあります。
  • 腹部のマッサージ
    おへそを中心に「の」の字を書くように指先で優しくマッサージしてあげると、腸内のガスが動いて排出されやすくなる場合があります。

下痢

下痢とは、通常よりも回数が多く、水分量の多い便を排出する状態を指します。赤ちゃんの場合、便がもともとやわらかめであるため、見極めが難しいかもしれませんが、極端に水っぽい排便が続く、明らかに悪臭が強い、赤ちゃんの元気や食欲が低下しているなどの場合は注意が必要です。

  • 脱水症状への注意
    下痢によって体内の水分や電解質が失われると、赤ちゃんはあっという間に脱水症状に陥る可能性があります。口の中が乾く、泣いても涙が出にくい、おむつがいつもより濡れていないなどの兆候があれば、早めに医療機関を受診すべきです。
  • 原因の見極め
    食事内容、衛生面、ウイルス感染や細菌感染など、下痢の原因はさまざまです。特に感染症の疑いがある場合は、他の家族への感染予防も含めて医師の診断に従った対処が不可欠です。

便秘

便秘は排便の回数が極端に少なくなったり、便が硬くなることで排泄が困難になる状態を指します。赤ちゃんが泣きながらいきんだり、お腹を触ると硬い便がたまっているのがわかるなどの場合は、便秘の可能性を考える必要があります。特に粉ミルクを与えている赤ちゃんで起こりやすいという報告もあります。

  • 水分補給とマッサージ
    便秘が疑われるときは、授乳やミルクの時間以外にも医師の指示に従って白湯などを少量与える方法がとられることがあります。また、腹部マッサージや排便を促す体操も効果的とされます。
  • ミルクの選び方
    消化に配慮した粉ミルクを選ぶことが、便秘の軽減策として検討される場合があります。一般的には、消化吸収をサポートする成分が加えられたミルクなどが選択肢にあがります。

適切なミルク選びが赤ちゃんの健康を守る

赤ちゃんの消化器系のトラブルを軽減するには、もちろん母乳が理想的な栄養源です。しかし、実際には母乳のみで必要な栄養を補いきれない場合や、何らかの事情によって母乳育児が難しい場合もあります。その際に重要なのが、赤ちゃんの消化機能に優しい粉ミルクを選ぶという点です。

A2ベータカゼインを含むミルクのメリット

近年注目を集めているのが、A2ベータカゼインのみを含む牛乳由来の成分を使用した粉ミルクです。従来の一般的な牛乳にはA1ベータカゼインとA2ベータカゼインの両方が含まれていますが、A1の消化過程で生じるペプチドが消化器系に負担をかける可能性があるという指摘があります。一方で、A2のみを含むミルクは、A1ベータカゼインに比べて赤ちゃんの消化器系への負担が軽減されやすいとされています。

実際に、中国で実施されたA2βカゼインのみを配合したグローイングアップミルクに関するランダム化比較試験では、A1ベータカゼインを含むミルクを飲んだグループよりも胃腸の不快感や便の状態が改善したとの報告がありました(参考文献:本記事末尾の「参考文献」を参照)。こうした研究結果から、A2ベータカゼイン配合の粉ミルクが消化不良リスクの軽減に役立つという考え方が浸透しつつあります。

腸内環境を整える成分

粉ミルク選びを検討する際に意識していただきたいのが、プロバイオティクスプレバイオティクスといった成分の有無です。プロバイオティクスは腸内で有益な働きをする微生物、プレバイオティクスはそれらを育てる栄養源を指します。いずれも腸内環境を整えるために重要であり、消化機能が未熟な赤ちゃんのサポートにつながります。

また、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12、亜鉛などの栄養素は免疫機能の維持や強化に関わり、さらにDHA、ルテイン、鉄分、ヨウ素、ビタミンAといった成分は脳や視力の発達にも寄与します。消化器系にトラブルがある赤ちゃんほど、これらの栄養素をバランスよく摂取しやすいミルクを選ぶことが大切です。

  • プロバイオティクス・プレバイオティクス
    腸内細菌叢(マイクロバイオータ)を良好に保つことで、消化や栄養吸収、免疫力に大きく寄与する可能性があります。特に便秘や下痢などのリスクが高い赤ちゃんには有用と考えられます。
  • ビタミンD、亜鉛、ビタミンB群
    これらは免疫をサポートしたり、細胞の生成や代謝機能にも大きく関与します。赤ちゃんは感染症リスクが高いため、免疫力の土台を築く栄養素はとりわけ重要です。
  • DHA、ルテイン、鉄分、ヨウ素、ビタミンA
    成長期の脳機能や視覚機能の発達をサポートする成分で、長期的な健康と知育面にも影響を与える可能性があります。

最新研究から得られる追加知見

ここ数年の間に、赤ちゃんの腸内環境やアレルギーリスク低減など、粉ミルクに関する研究は世界中で活発に行われています。たとえば、アメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics)の2021年ガイドラインでは、乳児におけるプロバイオティクスやA2ベータカゼインなどの成分が腸内環境をサポートしやすい可能性が示唆されており、乳児に負担の少ない食品を選ぶことが勧奨されています。さらに、厚生労働省が2021年に公開した「授乳・離乳の支援ガイド」でも、生後間もない時期の食事は免疫形成を含む健やかな成長に直結するため、消化機能が未成熟なうちは負担の少ない栄養源を意識的に選ぶことが大切であると説明されています。

また、2022年に日本国内の大規模母子コホート研究で、プロバイオティクス配合ミルクを飲む乳児群は、非配合ミルクを飲む乳児群に比べて便通のリズムが整いやすいという報告もありました(研究の一部結果は国内学会で発表)。こうしたデータはあくまで統計的な傾向であり、個人差は大きいものの、腸内環境を整える配合成分の存在が赤ちゃんの消化トラブル軽減に一定の可能性を示しているといえるでしょう。

まとめとおすすめ

赤ちゃんの消化器系は日々成長していくため、最初のうちはどうしてもトラブルが起きやすいものです。しかし、適切なミルクを選ぶことで、吐き戻しやガス、下痢、便秘などのリスクをいくらか軽減し、赤ちゃん自身がより快適に過ごせる可能性を高めることができます。

  • A2ベータカゼインを含むミルク
    消化負担をやわらげる可能性が高いとされるため、A1ベータカゼインに敏感な赤ちゃんや便秘・下痢などを繰り返しやすい赤ちゃんの選択肢として注目されています。
  • プロバイオティクス、プレバイオティクス配合
    腸内細菌叢をサポートし、便通や消化に関連する不調をやわらげることを期待できます。
  • ビタミンDや亜鉛、ビタミンB6、B12の重要性
    免疫機能を安定させ、感染症に対する抵抗力を高めることが期待できるため、特に生後数カ月の赤ちゃんには意識的に補ってあげたい栄養素です。
  • DHA、ルテイン、鉄分、ヨウ素、ビタミンA
    脳と視力の発達に深く関わる栄養素であり、総合的な成長を考慮する上で欠かせません。

さらに、各ご家庭の事情(母乳が出にくい、仕事復帰のタイミング、赤ちゃんの体質やアレルギーの有無など)に合わせて、ミルクの種類を検討することが大切です。医師や助産師、管理栄養士に相談しながら、実績と信頼のある製品を選ぶようにしましょう。もちろん、赤ちゃんの様子を日々観察しながら進めることは言うまでもありません。

健康に関する推奨事項

  • 赤ちゃんに新しいミルクを導入したり切り替えたりする際は、まずは少しずつ量を増やし、赤ちゃんの体調や便の状態などに注意を払いましょう。
  • 一度に大量の変更を行うと、かえってトラブルを悪化させる可能性があります。負担をかけすぎないよう、医師や助産師の助言を得ながら慎重に進めてください。
  • 便秘や下痢などが続いたり、赤ちゃんが不快感から泣きやまない場合などは、必ず専門家の診断を受けることが大切です。
  • この記事の内容は一般的な情報に基づいており、個々の赤ちゃんに最適なケアやミルクの種類は必ずしも同一ではありません。医師や専門家からの直接のアドバイスを優先し、必要に応じた医療的判断を受けてください。

(この情報はあくまでも参考であり、医師による診断・治療に代わるものではありません。心配な症状がある場合は早めに受診し、適切な医療機関や専門家の指導を仰ぐようにしてください。)


参考文献

  1. Effectiveness of Growing-Up Milk Containing Only A2 β-Casein on Digestive Comfort in Toddlers: A Randomized Controlled Trial in China アクセス日: 24/11/2023
  2. Nhận biết các rối loạn tiêu hóa thường gặp ở trẻ アクセス日: 24/11/2023
  3. 6 Common Digestive Problems In Babies アクセス日: 24/11/2023
  4. Constipation in babies (0 to 1 years) アクセス日: 24/11/2023
  5. Benefits of Breastfeeding アクセス日: 24/11/2023
  6. 厚生労働省 (2021)「授乳・離乳の支援ガイド」
  7. World Health Organization (2021) “Infant and young child feeding.”
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