カックルド(NTR)とは?その関係に踏み込むべきか、心理学と人間関係の専門家が徹底解説
性的健康

カックルド(NTR)とは?その関係に踏み込むべきか、心理学と人間関係の専門家が徹底解説

「カックルディング」(パートナーが他者と性的関係を持つことを、合意の上で見聞きし、そこから性的興奮を得る行為)というテーマは、多くの場合、羞恥心、誤解、そして強い感情に包まれています。本稿の目的は、このテーマを扇情的に扱うことではなく、この道を歩むことを検討している個人やカップルに対し、冷静かつ根拠に基づいた、心理学的に確かな探求を提供することにあります。このテーマは、インターネットによって情報が普及し、同じ関心を持つ人々が繋がることが可能になったことで、より顕著なサブカルチャーとして浮上しました1。これにより、かつては隠された「性的嗜好」であったものが、依然として物議を醸すものではありますが、より公然と議論される関係性力学へと変化したのです。本稿では、歴史的かつ否定的な意味合いを持つ「カックルド」(不貞な妻によって欺かれ、辱められた男性)と、現代における合意に基づく実践とを明確に区別することから始めます。この区別こそが、本稿全体の基盤です。日本の読者の皆様へ向け、定義、心理的動機、関係への影響、そして安全な探求のための具体的な手順を包括的に解説します。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書に明示的に引用されている最高品質の医学的・心理学的根拠にのみ基づいています。以下は、実際に参照された情報源と、提示された医学的指針との直接的な関連性を示したリストです。

  • InsideHook及びDavid Ley博士、Justin Lehmiller氏の研究: この記事における性的空想の統計、心理的動機(羞恥心の快感への転化など)、そして合意に基づく非モノガミーにおけるコミュニケーションの重要性に関する指針は、出典資料で引用されている同ウェブサイトの報告及び各専門家の研究に基づいています。
  • 研究論文「Cuckolding and Troilism」 (Perrotta氏): 「トロイリズム」の定義や、カックルディングの動機としてのサディズム的欲求に関する記述は、ResearchGateで公開されている同論文に基づいています。
  • Wikipedia、Weblio、はてなブログ: 日本特有の概念である「NTR(寝取られ、寝取り、寝取らせ)」の定義、文化的背景、そしてフィクションと現実を区別する必要性に関する解説は、これらの情報源に基づいています。
  • Psychology Today: カックルディングが女性の性的主体性やエンパワーメントとして捉え直されているという視点は、同誌の記事に基づいています。
  • PubMed掲載の研究 (consensual nonmonogamy): 合意に基づく非モノガミー(CNM)関係にある人々の関係の質や心理的健康が、単一配偶者関係にある人々と同程度であるという科学的知見は、同データベースに掲載された研究に基づいています。

要点まとめ

  • 定義の区別が重要: 歴史的に屈辱的な意味を持つ「カックルド」と、現代の合意に基づく性的実践、さらには日本特有のフィクション概念「NTR」は明確に区別する必要があります。
  • 心理的動機は多様: この種の空想への魅力は、屈辱感の快感への転化、男らしさからの解放、パートナーの性的エンパワーメントなど、個人によって大きく異なります。
  • 関係性の健全性が試される: 合意に基づく非モノガミー(CNM)の一形態であり、成功には高度なコミュニケーション、信頼、嫉妬の建設的な管理が不可欠です。既存の問題を解決する手段にはなりません。
  • 安全な探求には準備が必要: 関係に踏み込む前に、自己分析、パートナーとの誠実な対話、そして明確なルール設定が極めて重要です。専門家のカウンセリングも有効な選択肢です。

第1部:「カックルド」から「NTR」まで:用語の海を航海する

この複雑なテーマを理解するためには、まず西欧と日本における用語の定義とその背景を正確に把握することが不可欠です。それぞれの言葉が持つニュアンスの違いは、その実践の心理的力学を解き明かす鍵となります。

西洋における定義の変遷と細分化

歴史的「カックルド」: この言葉の本来の意味は、合意のない不貞行為、それに伴う夫の社会的羞恥と男らしさの喪失に根差しています。シェイクスピアの作品などに見られるように、これは嘲笑と屈辱の対象でした。この歴史的背景は、現代的な用法との違いを際立たせる上で重要です。

現代の合意に基づく「カックルディング」: これは、パートナーが第三者と性的関係を持つことから性的快感を得る、合意に基づく実践と定義されます。多くの場合、これには観察するパートナーに対する屈辱や服従の要素が含まれます1。著名なコラムニストであるダン・サヴェージ氏は、この屈辱こそが核心的な要素であると指摘しています。

ホットワイフィング(Hotwifing): 関連しつつも区別される実践として、「ホットワイフィング」が挙げられます。ここでは、屈辱的な要素はなく、妻の性的な喜びそのものに焦点が当てられます。夫の喜びは、魅力的な妻を他者と「共有する」ことから生まれ、夫自身もその経験における対等なパートナーと見なされます1

トロイリズム(三人婚): ペロッタ氏の研究によれば、これはより平等な三人関係の一形態です2。意識的、自発的、そして共有された「カップルのゲーム」として実践され、関係を強化する可能性がある点で、非合意のカックルディングが持つ侵害や秘密主義とは全く対照的です。多くの研究者がこれらの用語を同義語として誤用している現状も指摘されています。

日本における特有の文脈:「NTR(寝取られ)」とその多様な視点

文化的用語としてのNTR: 「NTR」は、「寝取られ」のローマ字表記に由来し、日本で広く理解されている言葉です3。これは主に漫画、アニメ、ゲームといったフィクションのメディアで確立されたジャンルです。

NTRのフィクション世界: この空想のニュアンスを理解するためには、そのサブジャンルを詳細に分析することが不可欠です。

  • 寝取られ (Netorare): パートナーを奪われた被害者の視点。衝撃と屈辱を経験します4
  • 寝取り (Netori): 他者のパートナーを奪う侵略者の視点です4
  • 寝取らせ (Netorase): パートナーが第三者と一緒にいる状況を自ら能動的に設定し、その状況を演出することから快感を得る視点です4。これが、合意に基づくカックルディングに最も近いフィクション上の類似概念と言えるでしょう。

空想と現実の区別: 極めて重要な点として、「NTR」ジャンルはあくまで娯楽であり、空想の世界であると強調しなければなりません。多くの場合、非合意的であったり、同意が疑わしいシナリオを含みます。これを現実世界での合意に基づく非単一配偶者関係の実践ガイドと混同してはなりません5。これは、JAPANESEHEALTH.ORGが発信するべき公衆衛生上の核心的なメッセージです。

より深い分析をすると、西洋の性的嗜好コミュニティ(カックルディング対ホットワイフィング対トロイリズム)と日本のフィクション文学(寝取られ対寝取り対寝取らせ)の双方に見られる詳細かつ多岐にわたる語彙は、物理的な行為そのものよりも、心理的な視点と権力力学がいかに重要であるかを明らかにしています。核心的な経験は、誰が主体性を持ち、喜びがどこに集中するかによって定義されるのです。したがって、これを検討するカップルにとって最も重要な最初の対話は、「これをやるべきか?」ではなく、「私たちはどの視点からこれを空想しているのか?この欲望の感情的な核は何なのか?」ということです。ここでの不一致(例:一方は「ホットワイフィング」を、もう一方は屈辱を空想している)は、対立と感情的な傷へと直結する道筋となります。

用語別・心理的力学の比較
用語 主な動機 権力力学 快感の焦点 典型的な感情体験
カックルディング 多くは屈辱、服従、または恐怖を快感に転化させる興奮。 夫/パートナーは無力感を覚えるか、意図的に状況を支配する場合もある1 観察する夫/パートナーの心理的興奮に焦点が当たりがち。 屈辱、意図的に引き起こされた嫉妬、無力感または支配感。
ホットワイフィング 共有の喜び、魅力的なパートナーを「分かち合う」誇り、妻の快感への集中。 夫/パートナーは対等な立場で、選択と享受に積極的に関与する1 妻の快感と性的自由が中心。 誇り、共有された興奮、女性のエンパワーメント感。
NTR(寝取らせ) フィクションの文脈では、自己処罰や絶対的な支配を含む複雑な欲望の充足4 仕掛人(主人公)が全権力を握り、パートナーと第三者を道具化する。 出来事を演出し目撃することから得られる、仕掛人の心理的快感5 権力感、禁断の欲望の充足、感情的な分離。

第2部:なぜ惹かれるのか?性的空想と欲望の深層心理

人々がこの一見逆説的なシナリオに惹かれる理由を理解するためには、進化の過程で刻まれた生物学的なルーツと、現代心理学が解き明かす複雑な心のメカニズムの両方に目を向ける必要があります。

進化心理学の視点:嫉妬と所有欲の生物学的ルーツ

男性にとって、父性が100%確実ではないという進化上の根本的な課題が存在します。これが、「カックルドライ(妻の不貞)への対抗戦略」を進化させてきました。「配偶者防衛」(パートナーの時間を独占する行動)や、カックルドライの危険性が高い場合に精液の量を増やしたり、刺激を高めたりするといった生物学的反応がその例です。これは、非合意のカックルドライがなぜ男性にとってこれほど大きな心理的脅威となるのかを説明する生物学的基盤を提供します。

興味深い逆説は、カックルドライを防ぐために設計されたこれらのメカニズム自体が、時に興奮を生み出すために利用されうるという点です。警戒心や競争心が高まった状態は、たとえ現実世界では強く避けたい結果であっても、それ自体が性的な刺激となり得るのです。これは、進化上の脅威から現代の「性的嗜好」へと繋がる重要な架け橋です。

現代心理学の分析:空想は「普通」か?

レミラー氏のような研究者による驚くべき統計によれば、男性の大多数(58%)と女性のかなりの少数(約3分の1)が、カックルディングに関する空想を抱いていることが示されています1。これは、空想そのものを正常なものとして捉え、読者の羞恥心を和らげる助けとなります。しかし、デイビッド・レイ博士が指摘した、空想とそれを実行することの間にある重要な区別を改めて強調する必要があります。空想は刺激的であっても、現実は不快なものになりうるのです1

臨床心理学において、空想は内的な状態、欲望、そして欲求不満を処理する一つの方法と見なされます。空想は文字通りのシナリオではなく、無意識の感情の象徴的な表現なのです。パートナーが他者と一緒にいるのを見たいという願望は、文字通りの欲望ではなく、他の感情の複雑な現れである可能性があります。

欲望の多様なメカニズム:屈辱、解放、エンパワーメント

現代の心理学理論は、この空想の魅力について多様な説明を提供しています。

  • 否定的感情の興奮化: カックルディングは、不貞、嫉妬、不全感といった根深い恐怖を管理し、興奮に転化させる方法となり得ます。管理され、合意に基づいた方法で「最悪のシナリオ」に直面することにより、個人は羞恥心や無力感を快感と支配感に変えることができるのです1
  • 男らしさの転覆: 一部の男性、特に保守的または「男性的」な社会に生きる人々にとって、カックルディングは「アルファ男性」であることのプレッシャーからの解放を提供します。それは、責任を放棄し、服従を受け入れる一つの方法です。
  • 女性のエンパワーメントとセクシュアリティ: カックルディングを、女性の性的快感と自己決定権に焦点を当てたフェミニスト的な行為として再定義する見方も広まっています6。これは、女性の性的な能力を最大限に満たすことに関するものかもしれません。
  • その他の動機: 提案されている他の動機には、遠隔からの両性愛の探求、魅力的な妻を「共有する」スリル、あるいは苦痛を求めるマゾヒズム的な欲望などが含まれます2

明らかに、カックルディングの心理的動機は単一ではありません。「権力を取り戻す」(屈辱を興奮に変え、物語を支配する)ものから、「権力を明け渡す」(男らしさを転覆させ、女性の快感に焦点を当てる)ものまで、その範囲は多岐にわたります。同じ行為が、異なる人々にとって正反対の心理的機能を果たすことがあるのです。したがって、一つの万能な説明は無意味です。読者は、自分自身の特定の心理的動機を理解するために、深い自己省察(第4部で詳述)に取り組む必要があります。自身の空想は、支配に関するものなのか、服従に関するものなのか、パートナーの幸福に関するものなのか、それとも全く別の何かに関するものなのか。この問いへの答えが、この実践が満足をもたらす可能性があるか、それとも破滅的になるかを決定します。


第3部:究極の信頼か、破滅への道か:人間関係への影響

合意の上で関係性を開くという決断は、カップルにとって究極の信頼の証となり得る一方で、既存の脆弱性を露呈させ、関係を破綻に導く可能性も秘めています。その成否を分けるのは、行為そのものではなく、カップルの関係性の健全性です。

合意に基づく非モノガミー(CNM)という枠組み

「合意に基づく非モノガミー(Consensual Non-Monogamy, CNM)」は、パートナー同士が合意の上で他の性的または恋愛的なパートナーを持つ関係の総称です(例:スワッピング、オープンリレーションシップ、ポリアモリー)。合意に基づくカックルディングも、このCNMの一形態として位置づけられます1

この概念は、「モノノーマティビティ」―すなわち、単一配偶者関係が唯一正当かつ優れた関係形態であるという社会的な思い込み―に挑戦するものです。日本においては、この規範は特に強く、明治時代以降の西洋的な家族モデルや法制度の導入によって強化されてきました。

複数の研究から得られた重要な知見として、平均的に、CNM関係にある人々は、単一配偶者関係にある人々と同程度の関係の質、満足度、そして心理的健康を報告しています7。これは、偏見に対する強力な、根拠に基づいた反証です。しかし同時に、CNM関係にある人々が社会的な偏見ゆえに直面しうる「マイノリティ・ストレス」や「内面化された否定性」も強調されるべきであり、これらは管理されなければ関係の質に悪影響を及ぼす可能性があります。

成功の必須条件:コミュニケーション、信頼、そして「嫉妬」の管理

信頼の基盤: 関係性における信頼とは、パートナーの一貫性と誠実さへの信念と定義されます。CNMにおいて、信頼は性的な独占権に関するものではなく、取り決めを尊重し、感情的に正直であり、そして主たる関係の健全性を優先することに関するものです。

コミュニケーションという必須技能: CNMの成功には、「驚くべき量の交渉とコミュニケーション」が、事前にも事後にも求められます1。これには、積極的傾聴、「私」を主語にしたメッセージ(アイメッセージ)の使用、そして困難な会話のための安全な空間の創出が含まれます。

嫉妬(Jealousy)の管理:
嫉妬は、価値ある関係を第三者に失うことへの恐怖と定義されます。嫉妬は失敗の兆候ではなく、正常な人間の感情として認識することが重要です。日本の嫉妬に関する心理学研究では、「相手の反応確認」のような間接的な表現という文化的傾向が記録されています。しかし、この間接的なスタイルはCNMの文脈では不十分かつ危険であると助言することが不可欠です。くすぶる誤解を防ぐためには、嫉妬に関する直接的で開かれた議論が必要です。目標は嫉妬をなくすことではなく、その根源(例:不安、見捨てられる恐怖)を理解し、建設的に対処することです。

警鐘:関係が崩壊する時

関係を開くことは、コミュニケーション不足、信頼の欠如、頻繁な対立といった既存の問題に対する解決策にはならない、という点を強調する必要があります。それどころか、ほぼ確実に問題を悪化させるでしょう。法的に日本では、合意の有無に関わらず、婚姻関係外の性的関係は「不貞行為」と定義され、離婚や損害賠償請求の原因となり得ます。合意があったという事実は抗弁になる可能性はありますが、法的なグレーゾーンであり、社会的な偏見から保護するものではありません。

この実践が関係に害を及ぼしている明確な兆候には、一方のパートナーが強制されていると感じる、ルールが破られる、感情的な距離が広がる、あるいは親密さを深めるためではなく、それから逃避するために空想が利用される、といったものがあります。これは「婚姻関係の破綻」につながりかねません。

合意に基づくカックルディングの成功は、性的な行為そのものよりも、カップルの「関係能力」に大きく依存します。この実践はストレステストのように機能します。強固で、コミュニケーションが良好で、信頼度が高い関係は、必要とされる強烈な正直さによってさらに強化される可能性がありますが、脆弱な関係はその圧力下で崩壊するでしょう。したがって、最初の正しい問いは「これをやるべきか?」ではなく、「私たちカップルは、これを安全に乗り切るために必要な高度な関係スキルを持っているか?」です。これにより、問題は性的な決断から関係スキルの評価へと再定義され、はるかに効果的で安全な出発点となります。


第4部:この関係に踏み込む前に:自己分析とパートナーとの対話

この領域に足を踏み入れるという決断は、軽々しく下すべきものではありません。それは、深い自己省察と、パートナーとの脆弱かつ誠実なコミュニケーションを必要とします。このセクションは、安全な探求のための具体的な手順を提供します。

自己分析のためのチェックリスト

パートナーと話す前に、まず一人でじっくりと考えるための質問リストです。

  • 動機: 「なぜ私はこれに惹かれるのか?」それは一過性の空想か、根深い欲望か、問題からの逃避か、それとも他の何かか1
  • 感情的な安定性: 「私は自分自身に自信があるか?」自己肯定感の低さ、嫉妬、支配欲の問題に先に取り組む必要があります。
  • 愛着と見捨てられ不安: 「パートナーに見捨てられることへの不安はどの程度あるか?」レミラー氏は、関係における不安レベルが高い、または見捨てられることへの問題を抱える人々は、否定的な経験をする危険性が高いと警告しています。
  • 空想と現実: 「空想のどの部分が興奮するのか?そして、現実になった場合、耐えられない部分は何か?」これは、起こりうる否定的な結果と向き合うことを強います。

パートナーとタブーについて話す技術

安全な空間を作る: 適切な時と場所を選ぶことが推奨されます。静かで、プライベートで、邪魔が入らない環境です。喧嘩の最中や直後にこの話題を持ち出してはいけません。

「私」を主語にしたメッセージ(アイメッセージ)を使う: 「君に他の人とセックスしてほしい」と言うのではなく、「最近、ある種の性的ファンタジーについて考えていて、少し戸惑っている。もし君が聞く気があれば、その気持ちを共有したいのだけど」のように伝えます。これは、要求ではなく、個人的な探求として問題を位置づけます。

要求ではなく、感情に焦点を当てる: 最初の会話は、行動の許可を求めるものではなく、空想や感情を共有することであるべきです。目標は対話を開くことであり、「はい」という返事を得ることではありません。

積極的傾聴と共感: 話を切り出した側は、好奇心、恐怖、怒り、嫌悪など、いかなる反応にも備え、判断せずに耳を傾けなければなりません。パートナーの感情は、それが何であれ正当なものです。

ルール設定と境界線の重要性

もし、そしてその場合に限り、両方のパートナーがさらなる探求に前向きであれば、これが次のステップとなります。

明確で詳細な合意: これには綿密な計画が必要です1。合意すべき質問には以下のようなものがあります:

  • 第三者は誰が選ぶのか?
  • パートナーは現場で見るのか、別の場所にいるのか、後で話を聞くだけか?
  • 具体的にどのような行為が許可され、許可されないのか?
  • 安全な性行為に関するルールは何か?
  • どのくらいの頻度でこれを行うことができるか?
  • 主たるカップルが再接続するための「アフターケア」の約束事は何か?

「拒否権」ルール: 両パートナーに「安全な言葉」または拒否権を持たせることの重要性を議論します。これにより、どちらか一方がいつでも、理由を問われることなくプロセスを停止できます。

ルールの見直し: ルールは不変ではないことを強調します。定期的にチェックインし、ルールが機能しているか、調整が必要かを確認する必要があります。

認識すべき重要な点は、合意に基づく非単一配偶者関係の取り決めを成功裏に交渉するプロセス自体が、深い親密さと関係構築の行為であるということです。結果(性的な行為)は、その過程で示されるコミュニケーションと信頼に次ぐものです。このレベルのコミュニケーション―自身の最も深い恐怖、欲望、不安をさらし、それが共感をもって受け止められること―は、深く安全な愛着の定義そのものです。これを成功裏に乗り越えられる少数のカップルにとって、カックルディングの枠組みを構築する実践は、行為そのものよりも関係を強化することができます。逆に、これらの会話を適切に行えないことは、悲惨な結果を招く最大の予測因子となります。


第5部:専門家によるサポート:カウンセリングという選択肢

感情的に複雑でリスクの高いテーマを探求する際、専門家のサポートは羅針盤のような役割を果たします。カウンセリングは、関係が破綻した後の「最後の手段」ではなく、安全な航海のための「事前の準備ツール」として捉えるべきです。

日本における夫婦・カップルカウンセリングの現状

カップルカウンセリングは、西洋ほど一般的ではありませんが、日本でも成長している分野です。カウンセリングを求める一般的な理由には、コミュニケーションの問題、セックスレス、不貞行為などが含まれ、このテーマはセラピストにとって非常に馴染み深いものです。最初は一方のパートナー(多くは女性)が一人で参加することも珍しくありません。

カウンセリングで何ができるか?

  • 安全なコミュニケーションの促進: セラピストは中立的な第三者として機能し、禁断のテーマが口論にエスカレートすることなく議論できる安全な環境を作り出します。
  • 「共感の架け橋」を築く: カウンセラーは、ミラーリング(相手の言動を鏡のように返す)、ペーシング(相手のペースに合わせる)、積極的傾聴といった技法を用い、パートナー同士の間に信頼関係(ラポール)を築く手助けをします。
  • より深い問題の分析: カウンセラーは、カップルが欲望の根底にある心理的動機(例:それは性欲についてか、それとも親密さ、権力、過去のトラウマについてか?)を探るのを助けることができます。
  • スキルの教授: セラピストは、このようなハイリスクな関係力学に必要なコミュニケーションスキルや交渉術を積極的に教えることができます。

カウンセリングが適さないケースと、一人で相談する意味

カウンセリング失敗の危険信号: 一方のパートナーが参加に全く乗り気でない、相手を「治す」ためだけに来ている、あるいは現在進行形の虐待(家庭内暴力やモラルハラスメント)があるといった状況では、カウンセリングが成功する可能性は低いとされます。

個人カウンセリングの価値: パートナーが参加を拒否した場合でも、個人カウンセリングは非常に有益です。自分自身の感情を明確にし、対処戦略を立て、関係力学における自分の役割を理解し、そして関係に留まるべきか否かについて、情報に基づいた決断を下すことができます。

合意に基づくカックルディングのような複雑で感情的なテーマに対して、専門家のカウンセリングは、失敗した関係のための「最後の手段」から、ハイリスク・ハイリターンの試みのための「必須のツール」へと再定義されるべきです。責任ある、健康に焦点を当てたアプローチは、これを真剣に検討しているカップルが、事態が悪化してからではなく、始める前にセラピストを訪れることを推奨します。これにより、カウンセリングは、JAPANESEHEALTH.ORGの使命と完全に一致する、安全性、準備、そしてスキル構築のためのツールとして位置づけられます。

よくある質問

パートナーにこの話を切り出すのが怖いのですが、どうすればいいですか?

恐怖を感じるのは自然な反応です。重要なのは、要求ではなく、ご自身の「感情」や「空想」を共有することから始めることです。「最近、こんなことを考えて少し戸惑っているんだけど、もしよかったら聞いてもらえないかな?」といった、「私」を主語にしたメッセージ(アイメッセージ)を使い、相手を尊重する姿勢で、静かでプライベートな時間に話を切り出すのが良いでしょう。目標は対話を開くことであり、即座に同意を得ることではありません。

嫉妬心は完全になくさなければいけませんか?

いいえ、その必要はありません。嫉妬は人間としてごく自然な感情であり、失敗のしるしではありません。重要なのは、嫉妬を無視したり抑圧したりするのではなく、その感情を認め、なぜそう感じるのか(不安、見捨てられる恐怖など)をパートナーと正直に話し合うことです。目標は嫉妬をなくすことではなく、それを建設的に管理し、関係を深めるための情報として活用することです。

これは既存の関係の問題を解決する方法になりますか?

いいえ、なりません。これは極めて重要な点です。コミュニケーション不足や信頼の欠如といった既存の問題がある場合、関係を開くことはほぼ間違いなくそれらの問題を悪化させます。この実践は、すでに強固で、信頼と優れたコミュニケーションに基づいた関係性を持つカップルが、さらなる親密さを探求するためのものであり、問題を抱えた関係の「治療薬」ではありません。

法的には問題ないのでしょうか?

これは法的なグレーゾーンです。日本の法律では、婚姻関係にある場合、たとえ当事者間の合意があったとしても、第三者との性的関係は「不貞行為」と見なされ、離婚事由や慰謝料請求の原因となる可能性があります。合意の事実は法廷で考慮されるかもしれませんが、法的に完全に保護されるわけではなく、社会的な偏見も存在することを理解しておく必要があります。

結論

本稿では、合意に基づくカックルディングの複雑さを探求し、空想と現実の区別、多様な心理的動機、そして強固な関係基盤の絶対的な必要性を強調してきました。「正しい」道は、特定の個人、その心理的構造、そして関係の健全性に完全に依存するため、万人に当てはまる「はい」か「いいえ」の答えは存在しません。

最終的なメッセージは、自己決定権と責任に関するものです。究極の目標は、両方のパートナーの感情的および心理的な健康です。カップルがこの空想を探求することを選択するにせよ、しないと決定するにせよ、その過程で求められる誠実な自己省察と深いコミュニケーションは、それ自体がより強く、より本物の関係へと導く可能性があります。ご自身の直感を信じ、境界線を尊重し、何よりも自分自身とパートナーへの思いやりと敬意を最優先してください。

        免責事項この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的・心理学的助言に代わるものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. Psychology of Cuckolding: Exploring a Male Fantasy. InsideHook [インターネット]. [引用日: 2025年7月28日]. Available from: https://www.insidehook.com/sex-and-dating/psychology-cuckolding-male-fantasy
  2. Perrotta G. Cuckolding and Troilism: definitions, relational and clinical contexts, emotional and sexual aspects, and neurobiological profiles. A complete review and investigation into the borderline forms of the rela [インターネット]. ResearchGate; 2020. [引用日: 2025年7月28日]. Available from: https://www.researchgate.net/publication/344428876_Cuckolding_and_Troilism_definitions_relational_and_clinical_contexts_emotional_and_sexual_aspects_and_neurobiological_profiles_A_complete_review_and_investigation_into_the_borderline_forms_of_the_rela
  3. 「NTR(ねとられ・ねとり・エヌティーアール)」の意味や使い方 Weblio辞書 [インターネット]. [引用日: 2025年7月28日]. Available from: https://www.weblio.jp/content/NTR
  4. 寝取られ. Wikipedia [インターネット]. [引用日: 2025年7月28日]. Available from: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%9D%E5%8F%96%E3%82%89%E3%82%8C
  5. NTRって何が良いの? 4つの視点から考える. (個)性的に考える [インターネット]. 2022. [引用日: 2025年7月28日]. Available from: https://ko-seiteki.hatenablog.com/entry/2022/07/10/002439
  6. Stray T. How Cuckolding Became More Mainstream. Psychology Today [インターネット]. 2022. [引用日: 2025年7月28日]. Available from: https://www.psychologytoday.com/us/blog/women-who-stray/202201/how-cuckolding-became-more-mainstream
  7. Rubel AN, Bogaert AF. Consensual nonmonogamy: Psychological well-being and relationship quality correlates. J Sex Res. 2015;52(9):961-82. doi: 10.1080/00224499.2014.942722. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25189189/
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ