BHAとレチノールの効果的な併用ガイド|皮膚科学的根拠と安全な使い方、注意点を専門家が解説
皮膚科疾患

BHAとレチノールの効果的な併用ガイド|皮膚科学的根拠と安全な使い方、注意点を専門家が解説

JAPANESEHEALTH.ORG(JHO)の読者の皆様、こんにちは。近年、スキンケア成分への関心が高まる中、「BHA」と「レチノール」という二つの強力な成分の組み合わせについて、多くのご質問やご相談が寄せられています。これらはそれぞれが素晴らしい効果を持つ一方で、その組み合わせには正しい知識と慎重さが不可欠です。皆様の関心と懸念を深く理解し、本記事では、JHO編集部が国内外の科学的根拠を徹底的に調査・分析し、BHAとレチノールの併用に関する最も包括的で信頼できる情報源となることを目指します。皆様が情報に基づいた賢明な判断を下せるよう、決定版となる証拠に基づいたガイドを提供いたします。この記事は情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。特に持続的または重度の皮膚状態については、皮膚科専門医への相談を強く推奨します。

要点まとめ

  • BHA(サリチル酸など)とレチノールは、それぞれ角質ケア、ニキビ、毛穴、エイジングサインに対して高い効果を持つ強力な成分です。
  • 両者の同時塗布は、刺激が強く出すぎる可能性があるため、一般的に推奨されません。重要なのは刺激の相乗効果を避けることであり、酸性環境でレチノールが失活するという説は誤解です1
  • 安全かつ効果的な併用の鍵は「時間差」です。朝にBHA、夜にレチノール、または日替わりで使用する方法が推奨されます23
  • 使用を開始する際は、必ず低濃度・低頻度から始め、肌の忍容性を確認しながら徐々に慣らしていくことが不可欠です。特に敏感肌の方は注意が必要です2
  • BHAやレチノールの使用中は、肌のバリア機能が低下しやすくなるため、徹底した保湿と、SPF30 PA+++以上の日焼け止めによる紫外線対策が必須となります4

1. BHA(ベータヒドロキシ酸)とは?

BHA(Beta Hydroxy Acid)は、脂溶性(油に溶けやすい性質)を持つ酸の一種です。この特性により、皮膚表面の古い角質だけでなく、皮脂で満たされた毛穴の奥深くまで浸透し、内側から角質ケアを行うことができます3。日本では、化粧品に配合される代表的なBHAとして「サリチル酸」が知られています。

BHAの作用機序

BHAの主な働きは以下の通りです。

  • 角質剥離作用: 脂溶性の性質を活かして毛穴の内部に詰まった皮脂や古い角質にアプローチし、角質細胞間の結合を緩めることで、滑らかな肌へと導きます。
  • 皮脂溶解と毛穴ケア: 毛穴に詰まった角栓(皮脂と古い角質が混ざったもの)を溶解し、除去するのを助けます。これにより、毛穴の黒ずみや詰まりの改善が期待できます5
  • 抗炎症・抗菌作用: 特にサリチル酸には、炎症を抑え、アクネ菌の増殖を抑制する作用があることが知られており、ニキビケアに広く用いられます3

BHAに期待される効果

BHAの継続的な使用により、以下のような効果が期待できます。

  • ニキビ・吹き出物の予防と改善(面皰、炎症性ニキビ)6
  • 毛穴の黒ずみ、開き、詰まりの改善
  • 肌のごわつきやくすみを改善し、肌の透明感を高める
  • 過剰な皮脂分泌のコントロール

なお、日本の化粧品基準では、洗い流さない製品におけるサリチル酸の配合濃度は0.2%以下に制限されています7。これは、安全性を確保しつつ、日々のスキンケアで穏やかな角質ケア効果を得るための規制です。

2. レチノール(ビタミンA誘導体)とは?

レチノールはビタミンAの一種であり、アンチエイジングスキンケアの中核をなす成分として、皮膚科学の世界で長年研究されてきました。その効果は多岐にわたり、肌の根本的な機能に働きかけることで、様々な肌悩みに対応します。

レチノールの作用機序

レチノールは肌に塗布されると、細胞内の特定の受容体と結合し、遺伝子発現を調節することで以下のような多様な働きを発揮します。

  • ターンオーバーの促進: 肌の生まれ変わりのサイクルを正常化し、古くなった角質が自然に剥がれ落ちるのを助けます。これにより、肌表面が滑らかになります1
  • コラーゲン・エラスチン産生の促進: 肌のハリと弾力を支える真皮層に働きかけ、コラーゲンやエラスチンの生成を促進します。これにより、シワの改善やハリ感のアップが期待できます8
  • 皮脂分泌の抑制: 過剰な皮脂の分泌をコントロールする作用があり、ニキビのできにくい肌環境へと導きます9
  • 抗酸化作用: フリーラジカルによるダメージから肌を守る働きも持っています1

レチノールの主な種類と特徴

「レチノール」と一括りにされがちですが、実際には様々な種類(誘導体)が存在し、それぞれ効果と刺激の強さが異なります。肌は最終的にレチノイン酸の形でビタミンAを利用しますが、その変換ステップが多いほど効果は穏やかで、刺激も少なくなります。

  • レチノール誘導体(守りのレチノール): パルミチン酸レチノールや酢酸レチノールなど。非常に安定しており、刺激が少ないため、レチノール初心者や敏感肌の方に適しています。皮膚科医の友利新先生によると、パルミチン酸レチノールは朝でも使用可能とされていますが、日中の紫外線対策は必須です10
  • 純粋レチノール(攻めのレチノール): 効果が高い一方で、光や酸素に対して不安定で、刺激(A反応)が出やすい特徴があります。日本では、資生堂が開発した「純粋レチノール」が、シワ改善効果のある有効成分として医薬部外品に承認されていることは特筆すべき点です1112。一般的に、化粧品では0.1%以上が高濃度と見なされることが多いです11
  • レチナール(レチナールデヒド): レチノールより一段階レチノイン酸に近い形態で、より速い効果が期待されますが、その分刺激の可能性も高まります。
  • トレチノイン(レチノイン酸): 医療用医薬品であり、非常に強力な効果を持ちますが、医師の処方が必要です。本記事で主に取り扱う化粧品・医薬部外品とは明確に区別されます11

レチノールに期待される効果

レチノールの使用により、以下のような効果が科学的に示されています。

  • シワの改善(特に光老化による小じわ)13
  • 肌のハリ・弾力の向上
  • シミ・色素沈着の改善(ターンオーバー促進によるメラニン排出のサポート)8
  • ニキビ・ニキビ跡の改善146
  • 毛穴の目立ち改善(ターンオーバー正常化とハリ改善による)13

3. BHAとレチノールを組み合わせる理由と期待される相乗効果

BHAとレチノールは、それぞれ異なるアプローチで肌に働きかけるため、理論的には両者を組み合わせることで、より包括的なスキンケアが実現できると考えられます。しかし、これは専門的な知識と最大限の注意を払って行う必要があります。

理論的な根拠

BHAとレチノールを組み合わせる主な目的は、異なる作用機序による多角的なアプローチです。

  • 浸透のサポート: BHAが肌表面の古い角質や毛穴の詰まりを取り除くことで、その後に使用するレチノールの肌への浸透を助ける可能性があります。ただし、これは同時に刺激が増大するリスクも伴います3
  • 包括的な肌悩みへの対応: BHAが角質層と毛穴に、レチノールが表皮のターンオーバーと真皮層に働きかけることで、ニキビ、毛穴の詰まり、シワ、ハリ不足といった複数の悩みに同時にアプローチできる可能性があります。

研究データはあるか?

実際にレチノイドとヒドロキシ酸(AHA/BHA)を組み合わせた製剤の有効性を示す研究は存在します。例えば、2022年に発表された臨床研究では、レチノイド、乳酸(AHA)、サリチル酸(BHA)を組み合わせたクリームが、肌の色が濃い、ざ瘡ができやすい肌において、肌の透明度、毛穴の大きさ、肌の色調を大幅に改善したことが報告されています15。また、2023年のプレプリント(査読前論文)では、アゼライン酸、サリチル酸、段階的レチノールを組み合わせた療法が、一般的なニキビ治療薬である過酸化ベンゾイル(BPO)ベースの療法と同等のニキビ病変減少効果を示し、かつ忍容性(使用感の良さ)はより高かったとされています16

健康に関する注意事項

  • これらの研究は、専門家によって設計された特定の製剤とプロトコルに基づくものです。市販の異なる製品を自己判断で組み合わせる場合とは、安全性や効果が異なる可能性があることを強く認識する必要があります。
  • 研究結果は有望ですが、安易な組み合わせが誰にでも安全で効果的であると保証するものではありません。

4. 【最重要】BHAとレチノールの安全な併用方法:皮膚科医の視点と科学的推奨

BHAとレチノールの併用を成功させる鍵は、肌への刺激をいかにコントロールするかにかかっています。ここでは、科学的根拠と専門家の見解に基づいた、最も安全で効果的な併用方法を解説します。

大原則:同時塗布は避ける

最も重要な原則は、同じタイミングでBHAとレチノールを重ねて塗布しないことです。その主な理由は、刺激の相加・相乗効果により、過度の乾燥、赤み、皮むけ、ヒリヒリ感といった炎症反応を引き起こし、肌のバリア機能を著しく低下させてしまうリスクがあるためです2。かつて、酸性のBHAがレチノールの効果を失活させるという説がありましたが、近年の研究ではこの説は否定されており、問題の核心は刺激の蓄積にあると考えられています1

推奨される併用パターン

肌への負担を最小限に抑えつつ、両成分のメリットを享受するためには、以下のような「時間差」をつける方法が推奨されます。

1. 朝BHA・夜レチノール

これは多くの専門家が推奨する一般的な方法です。朝のスキンケアでBHAを使用し、夜にレチノールを取り入れます。

  • 根拠とメリット: 朝にBHAを使用することで、日中の過剰な皮脂をコントロールし、メイクのりを良くする効果が期待できます。一方、夜は肌の修復と再生が行われる時間帯であり、レチノールがその働きをサポートします。また、レチノールは製品によっては光に不安定な場合があるため、夜の使用が基本とされています4
  • 具体的な製品例: 朝はBHA配合の洗顔料や化粧水でさっぱりとケアし、夜は保湿を十分に行った上でレチノール配合の美容液やクリームを使用します。
  • 絶対的な注意点: この方法を実践する場合、日中の徹底した紫外線対策が不可欠です。BHAもレチノールも、肌を紫外線に対してより敏感にする可能性があるため、季節を問わずSPF30 PA+++以上の日焼け止めを毎日必ず使用してください。

2. 交互使用(日替わり)

特に敏感肌の方や、BHAとレチノールの両方を初めて使用する方におすすめの方法です。

  • 根拠とメリット: 肌が一度に両方の強力な成分に晒されるのを防ぎ、十分な休息期間を与えることで、刺激のリスクを大幅に軽減できます2
  • 具体的なスケジュール例: 「月曜・水曜・金曜はBHAの日」「火曜・木曜・土曜はレチノールの日」「日曜は保湿と保護に徹する休息日」といったサイクルを組むことで、肌の状態を観察しながら安全に進めることができます。

使用頻度と濃度の段階的導入

どのような併用パターンを選ぶにせよ、以下の「段階的導入」の原則は必ず守ってください。

  • 低濃度・低頻度から開始: 最初は、BHAもレチノールも最も低い濃度の製品を選び、週に1〜2回の使用から始めます2
  • 忍容性の確認: 2〜4週間ほど使用して、肌に強い刺激や問題が起きないことを確認してから、少しずつ使用頻度を増やしていきます。濃度を上げるのは、その頻度で肌が完全に慣れてからです。
  • 「A反応(レチノイド反応)」の理解: レチノール使用初期には、赤み、皮むけ、乾燥、ヒリヒリ感といった「A反応」が起こることがあります。これは多くの場合、ビタミンAが不足していた肌に急に供給されたことによる正常な反応で、アレルギーではありません17。通常は数週間で治まりますが、症状が辛い場合は使用頻度を落とす、保湿を徹底するなどの対処が必要です。無理に使い続けることは絶対に避けてください。
使用頻度レベル 備考
初心者/敏感肌 BHA (朝) または休息 休息 レチノール (夜) または休息 休息 BHA (朝) または休息 休息 レチノール (夜) または休息 週に1~2回、1つの有効成分から開始。休息日を優先。低濃度。
中級者 BHA (朝) レチノール (夜) BHA (朝) レチノール (夜) BHA (朝) レチノール (夜) 休息 または:BHAの日/レチノールの日。肌を監視。
上級者 (耐性のある肌) BHA (朝), レチノール (夜) BHA (朝), レチノール (夜) BHA (朝), レチノール (夜) BHA (朝), レチノール (夜) BHA (朝), レチノール (夜) BHA (朝), レチノール (夜) BHA (朝) または レチノール (夜) または休息 肌が十分に慣れている場合のみ。すべての人に適しているわけではない。常に刺激を監視。

5. 肌質別・肌悩み別:BHAとレチノールの賢い取り入れ方

BHAとレチノールの最適な使い方は、個々の肌質や悩みによって異なります。ここでは、それぞれのタイプに合わせた賢い取り入れ方のポイントを解説します。

敏感肌

最も慎重なアプローチが必要です。刺激のリスクが他の肌質よりも高いため、低濃度・低頻度からの開始が絶対条件です2。1989年の少し古い研究ですが、日本人は他国の人に比べて角層水分量が低く、肌のキメが細かいという特性が指摘されており、これが敏感に反応しやすい一因である可能性も考慮に入れるべきです18

  • BHAの選択: 0.2%以下の低濃度サリチル酸配合製品や、よりマイルドとされるベタインサリチル酸などを検討します。肌への接触時間が短い、洗い流すタイプの洗顔料やマスクから試すのも良い方法です。
  • レチノールの選択: まずは刺激の少ないパルミチン酸レチノールなどの誘導体から始めましょう11。純粋レチノールを試す場合は、ごく低濃度のものから慎重に。
  • バリア機能のサポート: セラミドやナイアシンアミドなど、肌のバリア機能をサポートする成分が配合された保湿剤を併用することが非常に重要です1

脂性肌・ニキビ肌

BHAとレチノールの組み合わせが特に効果を発揮しやすい肌質です。

  • BHAの活用: BHAの皮脂コントロール効果と毛穴詰まり改善効果は、脂性肌やニキビ肌にとって大きなメリットです。朝のケアに取り入れることで、日中のテカリを抑える助けにもなります5
  • レチノールの役割: レチノールはターンオーバーを促進し、皮脂分泌を正常化することで、ニキビのできにくい肌へと導き、ニキビ跡のケアにも貢献します。
  • 推奨される組み合わせ: 「朝BHA、夜レチノール」のパターンが適していることが多いですが、日本皮膚科学会の尋常性痤瘡(ニキビ)治療ガイドラインでは、アダパレン(医療用レチノイド)と過酸化ベンゾイル(BPO)の併用が強く推奨されている点には留意が必要です19。本記事で扱う化粧品レベルのBHAとレチノールの併用は、あくまで一般的な皮脂・毛穴対策の一環として捉えるのが適切です。

乾燥肌

乾燥と刺激のリスクが特に高いため、保湿を最優先に考えます。

  • BHAの使用: 使用頻度は週1回程度からと、控えめに開始します。保湿成分が豊富に配合された製品を選ぶと良いでしょう。
  • レチノールの使用: 低濃度のレチノール誘導体から始め、使用前後に高保湿のクリームやオイルを重ねる「サンドイッチ法」などで、肌をしっかり保護しながら使用します9。日本の乾燥しがちな冬の季節には、加湿器を使用するなど、環境からのアプローチも有効です。

エイジングケア目的

シワやハリ不足といったエイジングサインに対しては、レチノールが主役となります。

  • レチノールの活用: 真皮のコラーゲン産生を促進する働きを持つレチノールは、長期的な使用によって効果を発揮します。特に日本では、シワ改善の有効成分として承認された「純粋レチノール」配合の医薬部外品が、明確な選択肢の一つとなります1112
  • BHAの役割: BHAは補助的な役割として、肌のごわつきを取り除き透明感を高めることや、レチノールの浸透を穏やかにサポートする目的で使用します。あくまで主役はレチノールであることを意識し、BHAの使用は肌の状態に合わせて調整します。

6. BHA・レチノール使用時の注意点と副作用

BHAとレチノールは効果的な成分ですが、その分、潜在的なリスクも伴います。安全に使用するためには、以下の注意点を十分に理解しておく必要があります。

一般的な副作用

特に使用初期には、以下のような症状が現れることがあります。

  • 乾燥、赤み、皮むけ、ヒリヒリ感、かゆみ2
  • 光線過敏症:紫外線に対する感受性が高まり、日焼けしやすくなる可能性があります。

これらの症状は「A反応」として知られ、多くは一時的なものですが、症状が強い場合や長く続く場合は使用を中断し、専門家に相談してください。

併用禁忌・注意が必要な他の成分

BHAやレチノールと他の強力な成分を組み合わせる際は、過度な刺激を避けるために注意が必要です。

  • 高濃度ビタミンC(L-アスコルビン酸): 同時使用は刺激を増大させる可能性があるため、朝にビタミンC、夜にレチノールといったように時間をずらすことが推奨されます。ただし、資生堂のように、自社製品でのビタミンCとレチノールの併用は問題ないとしているケースもあります12
  • 他のピーリング成分(AHA、物理的スクラブ): 過剰な角質除去は肌のバリア機能を著しく損なうため、併用は避けるべきです2
  • 過酸化ベンゾイル(BPO): 一部の報告では、BPOがレチノールの効果を減弱させたり、刺激を増大させたりする可能性が指摘されています20。しかし、前述の通り、日本のニキビ治療ガイドラインでは医療用レチノイドとBPOの配合剤が推奨されており、専門的な判断が必要です19。化粧品レチノールとの自己判断での併用は慎重に行うべきです。
  • ハイドロキノン: 医師の指導下以外での併用は、刺激のリスクが非常に高いため避けるべきです20

妊娠中・授乳中の使用

妊娠中または授乳中の方は、レチノールの使用は避けるべきです。特に経口摂取のビタミンAは胎児への影響が知られており、外用であっても、多くの専門家が化粧品レベルのレチノールの使用を控えるよう推奨しています9。BHA(サリチル酸)についても、高濃度での広範囲の使用は避け、必ず医師に相談してください。

– JHO編集部 安全性に関する重要勧告

健康に関する注意事項

  • この記事で紹介している情報は、一般的な知識を提供するものであり、個々の医学的診断や治療に代わるものではありません。
  • 強い炎症、腫れ、水疱など、重篤なアレルギー反応と思われる症状が現れた場合は、直ちに使用を中止し、速やかに皮膚科専門医を受診してください。

よくある質問

Q1: BHAとレチノール、どちらを先に使えばいいですか?

A: JHOでは、刺激のリスクを最小限にするため、これらの成分を同時に(重ねて)塗布することは推奨していません。最も安全な方法は、「朝にBHA、夜にレチノール」と時間を分けるか、「BHAを使用する日とレチノールを使用する日を分ける(隔日使用)」ことです。これにより、それぞれの成分が肌に作用する時間を確保しつつ、肌への負担を軽減できます45

Q2: 毎日使ってもいいですか?

A: 肌が十分に成分に慣れ(忍容性ができ)、刺激や乾燥を感じない上級者の場合は、毎日使用することも可能です。しかし、これは全ての人に当てはまるわけではありません。特にレチノールは、その種類や濃度によって毎日使用が推奨されない場合もあります。最も重要なのは、最初は週に数回から始め、ご自身の肌の反応を注意深く観察しながら、頻度を調整することです。製品に記載されている使用方法を必ず確認し、無理のない範囲で継続することが大切です13

Q3: 効果はいつ頃から実感できますか?

A: 効果を実感できるまでの期間は、肌質、使用する製品の成分や濃度、使用頻度によって大きく異なります。一般的に、BHAによる角質ケア効果(肌のなめらかさなど)は比較的早く、数日から数週間で感じられることが多いです。一方で、レチノールによる肌質の根本的な改善(ハリの向上やシワの改善など)は、肌のターンオーバーサイクルと関連するため、効果を実感するまでに数週間から数ヶ月以上の継続的な使用が必要となります。焦らず、根気強くケアを続けることが成功の鍵です。

Q4: 「A反応」がひどい場合はどうすればいいですか?

A: まずは一旦使用を中止し、肌を休ませることが最優先です。セラミドなどの保湿成分をたっぷり使って、肌のバリア機能を回復させることに専念してください。赤みや皮むけが落ち着いたら、以前よりもさらに低い頻度(例:週に1回)や、より濃度の低い製品から再開します。それでも症状が改善しない場合や、悪化するような場合は、自己判断を続けずに必ず皮膚科専門医に相談してください11

Q5: 日本の製品を選ぶ際のポイントは?

A: 日本の消費者は、国内の独自の規制や製品カテゴリーを理解することで、より賢明な製品選択が可能です。ポイントは以下の通りです。

  • BHA(サリチル酸): 一般的な洗い流さない化粧品では、サリチル酸の濃度が0.2%以下に規制されていることを念頭に置きましょう7。これは穏やかなデイリーケアを目的としたものです。
  • レチノール: 「化粧品」「医薬部外品」「医療用医薬品」の区別が重要です。「医薬部外品」として「シワを改善する」効果が認められている純粋レチノール製品は、その効果が国によって検証されているという点で、一つの信頼性の指標となります1112。ご自身の目的(エイジングケアか、穏やかな維持か)に合わせて、成分の種類(純粋レチノールか誘導体か)と濃度を選びましょう。
  • 信頼できるメーカー: 成分情報や使用方法、注意点を明確に開示している、信頼できるメーカーの製品を選ぶことが基本です。

結論

BHAとレチノールは、科学的根拠に裏打ちされた優れた効果を持つ二大巨頭とも言えるスキンケア成分です。しかし、その力強さゆえに、併用には正しい知識とご自身の肌と対話する慎重さが不可欠となります。本記事で繰り返し強調した最も重要な原則は、「同時塗布を避け、時間差をつける」「低濃度・低頻度から開始する」「保湿と紫外線対策を徹底する」という三点です。これらの原則を守ることで、刺激というリスクを最小限に抑えながら、両成分がもたらす素晴らしい恩恵を最大限に引き出すことが可能になります。スキンケアは、時に忍耐を要する旅のようなものです。肌の声に耳を傾け、決して無理をせず、ご自身のペースで進めていくことが何よりも大切です。そして、もし疑問や不安、あるいは肌のトラブルが続くようなことがあれば、決して自己判断で抱え込まず、皮膚科専門医という頼れるガイドに相談してください。それが、あなたの肌にとって最も賢明で安全な選択です。JHOは、皆様が健やかで美しい肌を目指すその旅路において、信頼できる一助となることを心から願っています。

免責事項

この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。

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