はじめに
こんにちは、皆さん。JHO編集部が今回は、血中酸素濃度測定器についてお話しします。最近のパンデミックにより、多くの方がこのデバイスの重要性を再認識されていることでしょう。特にCOVID-19で自宅療養をしている患者さんには、非常に役立つと言われています。しかし、果たしてすべての家庭に必要なものなのでしょうか? また、正しく使いこなせているでしょうか? 今回は、こうした疑問にお答えしつつ、知っておきたい情報を共有いたします。JHO編集部として、読者の皆様が安心してこのデバイスを活用できるようになることを願っていますので、ぜひ最後までお付き合いください。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
この記事についての専門家の助言は、Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh氏が担当しています。病院での内科総合診療を専門とされている彼女の洞察は非常に貴重です。彼女のアドバイスをもとに記事内容を構成しておりますので、ぜひご参考にしてください。
血中酸素濃度測定器の重要性
血中酸素濃度測定器、またはパルスオキシメーターは、その名の通り血液中の酸素飽和度(SpO2)を計測できる装置です。特にこのデバイスは、心疾患や肺疾患を持つ方、あるいはCOVID-19の感染者が自宅療養を行う際に医師から推奨されることが多いのですが、その理由をもう少し詳しく掘り下げてみましょう。
1. 血中酸素濃度測定器の目的
この装置の主な役割は、血液中の酸素飽和度を示す指標であるSpO2を迅速かつ比較的正確に把握することです。測定自体は、指先や耳たぶに小型のクリップをはさんで光学センサーを使用し、血液中のヘモグロビンが酸素と結合している割合を推定します。これにより、身体に十分な酸素が取り込まれているかどうかを簡易的に判断できるのです。
とりわけ重要なのは、低酸素症を早期に発見できる点です。例えばCOVID-19などの呼吸器症状では、まだ顕著な症状が出ていなくても、SpO2が下がり始めるケースがあります。呼吸苦や倦怠感が出る前にSpO2の低下に気づけば、早めに医療介入を受けることができ、重症化リスクを抑えることにつながります。
また、心肺疾患や呼吸不全の既往がある方にとっては、自宅で日々の状態をモニタリングできるメリットがあります。慢性閉塞性肺疾患(COPD)など酸素供給に注意が必要な病態では、SpO2をこまめに測定することで、日常生活の中での身体活動量をコントロールしやすくなるのです。
2. 正常なSpO2値とは?
パルスオキシメーターは0%から100%の範囲でSpO2を表示しますが、一般には97%以上が「正常範囲」とされています。多くの医療現場では、97%から92%を「容認範囲」として扱うケースが多く、症状が軽度であれば自宅での安静や観察が推奨されることもあります。
しかし、SpO2が92%を下回る場合には注意が必要です。この値を大きく下回るほど、身体が十分な酸素を受け取れていない可能性が高まり、以下のような影響が懸念されます。
- 呼吸困難、胸の圧迫感
- 全身疲労、強い倦怠感
- 意識レベルの低下
特に急激に90%以下へ低下するようであれば、緊急の医療処置が必要となる場合があります。自宅療養中の患者さんにとっては、日々のSpO2値を把握しておくことで、「今どの段階で医療機関に連絡すべきか」を判断しやすくなるのが大きな利点と言えるでしょう。
3. COVID-19患者への利用法
COVID-19感染者が自宅療養をする際に、血中酸素濃度測定器を活用することは多くの医療専門家から推奨されています。症状がない状態でも、新型コロナウイルス感染症の場合は呼吸機能が静かに低下している可能性があるため、SpO2値を毎日確認しておくと安心です。
- 症状の発現前に異変を察知
COVID-19は無症状または軽度症状の段階でも、肺にダメージが広がっているケースがあります。SpO2が基準値を大きく下回るようであれば、早めの受診が重症化を防ぐカギとなります。 - コンパクトで使いやすい
多くのパルスオキシメーターは電池駆動で、小型かつクリップ式の簡易な構造です。手元で手軽に測定できるため、自宅療養中でも継続したモニタリングが可能です。 - 限界もある
ネイルアートや低体温、手指の震え、デバイス自体の電池切れなど、さまざまな要因で測定が不正確になることがあります。過度に絶対的な数値を信用せず、体調の変化や呼吸状態に注意を払いながら測定結果を判断する姿勢が大切です。
このように、血中酸素濃度測定器はCOVID-19の重症化リスクを把握する上で非常に有用ですが、あくまでも補助的なツールであることを理解する必要があります。
家庭でのSpO2測定器使用の必要性
パンデミックの拡大を受けて、血中酸素濃度測定器に対する需要は急増しました。一時は品薄状態になり、医療機関や慢性疾患のある方々の手元に十分に行き届かない事態も懸念されました。では、感染症の既往歴がない方や慢性疾患を抱えていない方々も、備えとして購入すべきなのでしょうか。
多くの医師や公的機関は、「慢性疾患のある方」「COVID-19に感染している(あるいは感染の疑いがある)方」など、医療専門家が必要と判断したケースを除けば、必ずしも一般家庭が購入を急ぐ必要はないとしています。過剰に備蓄されることで、本当に必要な方々への供給が滞る可能性があるからです。
さらに、正しい使用方法を十分に理解しないまま使用すると、誤った数値で不安を煽られるケースも否定できません。「すぐに入院が必要なのでは」と心配して医療機関に駆け込んだものの、実は測定値が誤差範囲内だったという事例も散見されます。
そのため、必要以上に心配するのではなく、公的機関や医療専門家が提示しているガイドラインに従うことが推奨されます。家庭で使用する場合は、信頼できるメーカーや医療機関から提供されている装置を選び、使用方法やメンテナンスをきちんと把握することが大切です。
より深い活用と注意点
日常的な健康モニタリングへの応用
心疾患や呼吸器疾患を抱えている方はもちろん、運動習慣を取り入れている方が日々の健康管理の一環としてSpO2をチェックするケースも増えています。とりわけ、有酸素運動をするときや登山など標高が高い場所に行くとき、SpO2がどの程度変化するかを観察するのは興味深い方法です。
ただし、「数字だけを追いかける」のではなく、全身状態や自覚症状をあわせて評価することが重要です。万が一、SpO2が高めであっても呼吸苦や意識障害などの症状が出現した場合は、急いで医療機関に連絡する必要があります。
パルスオキシメーターの技術的な背景
パルスオキシメーターは、赤色光と赤外光を指や耳たぶに通して、ヘモグロビンが酸素と結合しているかどうかによって吸収される光の量を計測する技術を利用しています。この技術は非侵襲的な手法であるため、簡単かつ安全に測定できるという大きな利点があります。一方で、以下のような要因で測定精度にばらつきが出ることがあります。
- 末梢循環不全:極端な末梢血流障害がある場合、センサーで測定する血液量が不十分になる
- マニキュアやネイルアート:光の透過を妨げ、測定値を低く・高く誤差を生じさせることがある
- 寒冷環境:指先が冷えて血流が悪くなると数値の安定性が損なわれる
- 機器の品質:製品の精度や老朽化によって誤差範囲が拡大
こうした要因を理解していれば、測定値だけに一喜一憂せず、より冷静に健康状態を把握できるでしょう。
パンデミック時のデバイス不足と倫理面
パンデミック初期には、パルスオキシメーターが一気に市場から消え、医療機関に優先的に配備すべき数量を確保するのが困難になる懸念が世界各地で話題となりました。日本国内でも、酸素療法や在宅モニタリングが必要な方へ十分な数が行き渡らないリスクが取り沙汰された時期があります。医療従事者はもちろん、慢性的な呼吸器疾患を持つ方、感染症に罹患して在宅療養を余儀なくされている方など、デバイスが「本当に必要な人」への安定供給を阻害しないためにも、購入の是非を冷静に考えることが社会全体で求められました。
海外および国内の最新の研究動向
近年(ここ4年ほど)の研究では、リモートで患者のバイタルサインを管理する「遠隔患者モニタリング」の一環として、パルスオキシメーターの活用が注目されています。特にCOVID-19患者の在宅管理システムで、病院への再入院率や重症化リスクを減らせる可能性があると示唆されています。
例えば、2021年にAnnals of Internal Medicineで発表されたChopraらの研究(DOI:10.7326/M20-6367)は、米国でCOVID-19患者を在宅でフォローアップするプログラムを導入した際、パルスオキシメーターを用いたリモートモニタリングが早期発見と早期治療につながる可能性を示したと報告しています。この研究では、複数の病院から退院した患者を対象に、看護師がリモートでSpO2や体温などをチェックし、異常があれば迅速に対処するという体制を整えた結果、重症化や再入院が抑制されたという見解が示されました。
また、2020年のTelemedicine and e-Health誌に掲載されたShahらの研究(doi:10.1089/tmj.2020.0322)でも、新型コロナウイルス感染症で緊急部門から退院した患者に対する在宅モニタリングプログラムでパルスオキシメーターを活用したところ、オンライン報告や電話相談を組み合わせた結果、症状の急変を早期に発見し医療リソースを効果的に配分できたとされています。このように、パルスオキシメーターは単なる一時的なブームではなく、遠隔医療の要として大きな役割を果たす可能性が高いのです。
日本国内でも、厚生労働省は在宅療養者向けにパルスオキシメーターの使用ガイドラインを示す文書を公開しています(公的ウェブサイトにて2021年発表)。これらのガイドラインでは、医師が必要と判断した場合に貸与・提供する仕組みが推奨されるなど、患者の状態に応じて柔軟な運用が求められています。また、呼吸器学会などの専門学会も、COVID-19関連の在宅ケア体制においてパルスオキシメーターの意義を重視する立場を表明しています。
結論と提言
結論
血中酸素濃度測定器(パルスオキシメーター)は、心肺疾患を持つ方やCOVID-19の自宅療養患者にとって、状態変化を早期に捉え、重症化を防ぐ上で非常に役立つ機器です。一方で、すべての家庭に必須のものではないという見解が、多くの医療専門家や公的機関から示されています。過度な買い占めは、本当に必要としている人たちへの供給不足を招きかねません。
また、機器の特性上、計測数値にはさまざまな要因による誤差が生じることがあります。そのため、数値の一時的な低下に極端に動揺するのではなく、全身状態やその他の症状を総合的に判断することが求められます。
提言
- COVID-19感染時の活用
感染が確認された場合、または感染の疑いが強い場合などは、医師の指示のもとで血中酸素濃度測定器を用いてこまめにSpO2をモニタリングし、異変を早期に発見して必要な医療を受けることが目標です。 - 必要性に応じた購入
心疾患や慢性的な呼吸器疾患を抱えている方など、医療専門家から明確に必要と判断された場合以外は、安易に購入を決める必要はないと考えられています。不必要な買い占めや過度の備蓄は、医療現場や在宅療養が必須な患者さんに行き渡る機会を損なう可能性があるため、社会全体の視点でも自制が望まれます。 - 正確な使用方法の把握
信頼できるメーカーや医療機関からの情報をもとに、使用環境(指先の温度や清潔さ)やネイルアートの有無、電池残量など、測定に影響を与える要因に注意しながら使用しましょう。測定結果に疑問があれば、すぐに担当医や看護師に相談するのが安全です。 - 在宅モニタリング体制の活用
近年は在宅医療や遠隔医療が拡充されつつあります。公的機関や医療機関の案内に従い、遠隔モニタリングやオンライン診療などを組み合わせることで、より効率的かつ安全に健康管理を行うことが可能です。 - 専門家の指導を重視
自己判断のみではなく、厚生労働省や学会が公表しているガイドライン、医療機関からの指導を優先することが大切です。COVID-19やその他の感染症では、病状が急激に変化する場合もあるため、何か気になる症状があれば早めに専門家のアドバイスを受けるように心がけましょう。
専門家への相談をさらに推奨する理由
パルスオキシメーターは便利なツールですが、呼吸状態を評価するのに必要な情報はSpO2だけではありません。たとえば、呼吸数や脈拍、血圧、体温、意識レベル、その他の基礎疾患の有無など、総合的に診断する必要があります。特にCOVID-19や重篤な感染症の場合、一見軽症に見えても、急激に悪化するケースが報告されています。
したがって、在宅療養を行う際には、定期的に医療機関と連絡を取り合い、医師が指示するタイミングで通院や入院を検討することが重要です。パルスオキシメーターの数値は、その判断を助ける一要素にすぎないという点を強調しておきたいと思います。
免責事項と医療専門家への相談
本記事で紹介している情報は、医療従事者が監修した文献や最新の研究成果などをもとにまとめていますが、あくまでも一般的な健康情報としてご参照いただく目的です。個々の症状や体質、生活環境などによって最適な医療アプローチは異なります。本記事は正式な医療アドバイスではありませんので、具体的な治療方針や薬剤の使用、在宅療養の詳細については必ず主治医や専門の医療従事者にご相談ください。
また、COVID-19などの感染症は状況が刻々と変化しており、医学的知見も日々アップデートされています。行政機関や医療機関からの最新情報を常に確認するようにしましょう。特に呼吸困難や高熱などの深刻な症状を自覚した場合は、自己判断を避けて速やかに医療機関へ連絡することが肝要です。
大切なポイント
- 本記事はあくまでも情報提供であり、個別症例に対する最終的な診断や指示ではありません。
- 医療や健康に関する意思決定は、ご自身の主治医や信頼できる医療専門家と相談のうえ進めてください。
参考文献
- Using a Pulse Oximeter at Home When You Have COVID-19 アクセス日: 02/08/2021
- Can an Oximeter Help Detect COVID-19 at Home? アクセス日: 02/08/2021
- Interim Guidance for Member States – On the Use of Pulse Oximetry in Monitoring Covid-19 Patients Under Home-Based Isolation and Care アクセス日: 02/08/2021
- Guidance for the Distribution of Pulse Oximeters to Patients at Increased Risk for Severe COVID-19 アクセス日: 02/08/2021
- Máy đo SpO2 tác dụng gì với bệnh nhân Covid-19? アクセス日: 02/08/2021
- Chopra V, Flanders SA, O’Malley M, Malani AN, Prescott HC. Remote Patient Monitoring for Home-based Recovery from COVID-19. Ann Intern Med. 2021;174(6):944-946. doi:10.7326/M20-6367
- Shah S, Majmudar K, Stein A, et al. Novel Use of Home Pulse Oximetry Monitoring in COVID-19 Patients Discharged from the ED. Telemed J E Health. 2020 Oct 30. doi:10.1089/tmj.2020.0322
以上のように、血中酸素濃度測定器はCOVID-19をはじめとする呼吸器疾患の早期発見と重症化予防に活躍する可能性が高い一方、日常生活における不安をむやみに増大させないためにも、正確な知識や適切な指導を得ることが重要です。特に日本では、自宅療養や遠隔モニタリングの整備が進んでおり、厚生労働省などの公的機関が指針を出しています。今後も状況の変化に応じて情報はアップデートされる可能性があるため、最新のガイドラインや専門家の意見を適宜チェックし、安全に健康管理を行うように心がけましょう。