COVID-19の新たな症状:血痰が出る
感染症

COVID-19の新たな症状:血痰が出る

はじめに

近年、世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、発熱や咳、呼吸困難といった特徴的な症状を中心に知られています。しかし、一部の医療機関や研究者からは、まれに血痰(血液を伴う咳)が認められるケースが報告されています。本記事では、この新たに注目されている症状「血を伴う咳(喀血)」について、これまでの症状との違いや医学的背景、国内外の研究動向を含めて詳しく解説します。感染拡大防止のための情報や、万一症状が疑われる場合の連絡先についても整理し、読者の皆様が状況に応じた判断をしやすくなるようまとめました。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

専門家への相談

本記事の内容は、国内外の医療情報をもとにしたものであり、通常のCOVID-19症状に加えて血を含む咳が一部の患者にみられる可能性を取り上げています。なお、感染症学や肺疾患に関する海外文献としては、たとえばThe Lancetや米国立衛生研究所(NIH)のデータベースが信頼されています。また、国内外の臨床報告を扱う研究を参照し、多角的に情報を整理しています。ただし、本記事はあくまで参考情報であり、医療機関の公式見解や担当医の指示に優先するものではありません。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な症状

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が引き起こすCOVID-19では、発熱・咳・呼吸困難・胸の圧迫感などが代表的な症状として知られています。加えて、頭痛、下痢、嘔気など、多岐にわたる症状が報告されてきました。これはウイルスが多様な部位に影響を与えうるからであり、特に下気道(肺など)に炎症を起こすことで肺炎に進行する可能性も指摘されています。

  • 主な症状の例
    • 発熱(多くは38℃前後)
    • 持続的な咳(乾いた咳が多いが、痰が出る例もある)
    • 呼吸困難、息苦しさ
    • 胸の圧迫感
    • 倦怠感(強い疲労感)
    • 頭痛、筋肉痛
    • 吐き気、下痢などの消化器症状

こうした症状は、国内でも多くの事例が確認されています。現在ではワクチン接種が進み重症化率や死亡率が一定程度抑制されている一方、感染力の高い変異株が新たに出現するなど、状況は依然として油断できません。早期発見と適切な対応が重要です。

新たに注目される症状:血の混じった咳

海外での報告事例

アメリカ合衆国の上院議員であるAmy Klobuchar氏の夫John Klobuchar氏は、COVID-19に感染後、初期は通常の風邪のような症状が中心だったものの、後に血の混じった咳が出始め、X線撮影などで肺炎を伴うCOVID-19が確認されたと報告されています。さらに、Tarek Solimanという29歳の患者も、発熱や倦怠感が落ち着いた後に肺炎が悪化し、血痰を吐いたという体験談を米国のメディアに述べています。これらはどちらもごく少数例ではあるものの、COVID-19の病状が進行して肺が大きく損傷を受けると、血痰という形で症状が現れる場合があることを示唆しています。

実際に、国際的な医学誌The Lancetに2020年2月に掲載された研究では、COVID-19患者のうち約5%(研究対象39例のうち2例)に血痰が認められたことが報告されました。割合としては少数ですが、症例としては存在します。

国内での認識

日本国内でも、呼吸器内科や感染症専門医が複数のCOVID-19症例を追跡調査しており、その中には進行した肺炎に伴い少量の出血が認められるケースがあるとしています。ただし、現段階で血を伴う咳はCOVID-19の「典型的な症状」とは位置づけられていません。あくまでも重症化や二次感染、肺の損傷などが絡んだ結果のひとつとして考えるのが妥当です。

なぜCOVID-19で血の混じった咳が起こるのか

肺のダメージと炎症反応

COVID-19による肺炎が重度になると、肺胞や気道が大きく損傷し、炎症が進行しやすくなります。炎症により血管の透過性が高まると、血液が気道内に漏れ出して痰や分泌物と混ざり、血痰として排出される可能性があります。この機序はウイルス性肺炎細菌性肺炎など他の呼吸器疾患でも同様にみられますが、SARS-CoV-2による肺炎の特徴として急激に症状が悪化するケースでは、ときに血痰が生じるリスクが高まると考えられます。

二次感染・合併症

呼吸器がウイルスで弱っているときに、細菌性肺炎やその他の呼吸器感染症が重複して起こることがあります。このような二次感染によって肺組織がさらに損傷を受けると、血管損傷が増幅され、血痰が出ることが考えられます。特に入院治療中の患者の場合、体力や免疫力が低下しているため二次感染が起きやすくなるとも指摘されています。

研究の見解

Pulmonary Fibrosis Foundationの医学ディレクターであるGregory Cosgrove氏は、「血の混じった咳は、肺に何らかの炎症や損傷が生じているサインの一つであり、一概に重大な病気だとは限らないものの、医療評価が必要」と述べています。また、呼吸器内科の研究者であるCharles S. Dela Cruz氏(Associate Professor of Medicine)は、「COVID-19で血痰が見られるのは非常に稀なケースだが、もし認められた場合、肺炎が重症化している、またはほかの病原体に感染している可能性が高い」とコメントしています。

さらに2021年以降の複数の国際的研究では、変異株の出現に伴う重症度の変化やワクチン普及の影響などが議論されており、ウイルスの病原性や患者の免疫状態によってはごく少数例として血痰が引き起こされる可能性が示唆され続けています。

  • 例として、Zhou F. ら (2020)「Clinical course and risk factors for mortality of adult inpatients with COVID-19 in Wuhan, China: a retrospective cohort study」(The Lancet 395巻10229号:1054-1062, doi:10.1016/S0140-6736(20)30566-3)では、重症肺炎と合併症の広がりが血痰の原因になりうることが示唆されています。
  • また、Huang C. ら (2020)「Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China」(The Lancet 395巻10223号:497-506, doi:10.1016/S0140-6736(20)30183-5)でも、ごく少数ながら血の混じった痰が確認された事例があったと報告されています。

こうした文献は、COVID-19重症例における肺炎病態の詳細を示し、血痰が生じる背景を医学的に裏づける研究として知られています。海外の報告中心ではありますが、日本でもその可能性は否定されていません。

血の混じった咳の危険度と目安

血痰とは何か

血痰とは、肺や気管支など下気道からの分泌物に血液が混ざる状態を指します。しばしば血の混じった痰は泡立っていることがあり、色も鮮紅色から褐色がかった赤色など、さまざまなパターンがあります。粘液自体が赤い筋状の血を含む場合もあれば、明らかに血液量が多い場合もあります。

危険度の判断

アメリカ国立医学図書館(National Library of Medicine)が運営するMedlinePlusでは、血を伴う咳が必ずしも重篤な病状を意味するわけではないとしながらも、以下のような状況では早急な医療機関の受診が必要とされています。

  • 血の量が多い(大さじ1杯以上)
  • 激しい胸痛、呼吸困難(酸素飽和度の低下)を伴う
  • めまいを伴う、あるいは血圧が下がるなどショック様症状がある
  • 尿や便などにも血が混じる

こうした症状が伴う場合、肺や気道の重度損傷を疑う必要があります。COVID-19の場合も例外ではなく、特に呼吸状態の悪化や重度の肺炎が疑われる場合には即座に医療の介入が不可欠です。

COVID-19における血痰のメカニズムと重症化リスク

肺炎の重症化

COVID-19患者のうち、高齢者や基礎疾患を持つ方などは重症化のリスクが高いとされています。肺炎が深刻化し、人工呼吸器や集中治療が必要になるケースも少なくありません。こうした深刻な肺炎状態では、肺の粘膜や気管支壁が強い炎症を起こし、血管の破綻や血液の滲出が生じやすくなります。これが血痰の直接的な原因になると考えられます。

長期的影響と合併症

世界的に見れば、COVID-19の感染後も長期間にわたって後遺症が続く「ロングCOVID」への関心が高まっており、息切れや長引く咳が確認されています。血痰が慢性化する症例はまだ多く報告されていませんが、感染後の慢性的な肺組織ダメージが残る場合、何らかの形で血管損傷のリスクが引き上げられる可能性は否定できません。

なお、日本国内で公表されているデータでは、ワクチン接種を完了している人の多くは、未接種者に比べて重症化や死亡率のリスクが大幅に下がると報告されています。しかし、基礎疾患を持つ方や高齢者など免疫状態の弱い人が感染すると、稀に肺が大きく損傷を受け血痰が出る可能性があるため、引き続き注意が必要です。

もし血の混じった咳が出たら

自宅待機と医療連絡のめやす

COVID-19に感染している、あるいは感染を疑う場合で、軽度の症状(軽い咳や微熱)だけなら自宅待機と保健所・医療機関への連絡が推奨されます。しかし、血の混じった咳が出始めた場合や、呼吸困難が増す、胸の痛みを感じるなどの深刻な症状がある場合は、早急な対応が必要です。

病院に行く前に電話相談を

直接病院に行くと、院内感染や他の患者への感染リスクを高める可能性があります。そこで、厚生労働省や各地方自治体は、事前に電話で保健所や医療機関に相談することを強く呼びかけています。日本国内の例では、発熱外来を設置している医療機関が多く、重症化リスクが疑われる場合には、適切な診察・検査が速やかに行われるよう調整してくれます。

一方、本記事で取り上げている例はベトナム等の医療機関の連絡先が記載されていますが、読者が国内在住であっても、下記のように他国在住の方々が参考にする場合があるため、情報をそのまま掲載しています。帰国や海外旅行中に万が一症状が出たときの連絡手段として考えられます。

  • 電話相談窓口例(ベトナム方面)
    • Bệnh viện E Hà Nội: 091 216 8887
    • Bệnh viện Bạch Mai Hà Nội: 096 985 1616
    • Bệnh viện Vinmec Hà Nội Hà Nội: 093 447 2768
    • Bệnh viện Nhi trung ương Hà Nội: 037 288 4712

日本国内にお住まいの場合は、お住まいの地域の発熱相談センター、保健所、または厚生労働省の公式サイトから最寄りの相談窓口を確認できます。万が一に備え、連絡先や受診可能な医療機関を把握しておきましょう。

感染拡大を防ぐための基本的な対策

COVID-19だけでなく、その他の呼吸器感染症も含め、感染拡大を防ぐ対策は国や自治体、医療機関を中心に呼びかけられています。特に重症化を防ぐ観点でも、以下のポイントを徹底することが推奨されています。

  • マスク着用
    公共の場や人が密集する場所ではマスクを着用し、飛沫による感染リスクを下げる。
  • 手洗いの徹底
    外出先から戻ったときや食事の前後などこまめに石鹸で手を洗い、少なくとも20秒以上かけて十分にすすぐ。
  • 換気の実施
    屋内であっても定期的に窓を開け、空気の循環を良くする。
  • 人との距離の確保(フィジカルディスタンス)
    咳やくしゃみで飛沫が届きにくい距離を保つ(1~2メートル以上)。
  • 密閉・密集・密接の「3密」を避ける
    クラスター発生リスクを抑えるために重要視される基本的ルール。
  • ワクチン接種
    重症化や合併症のリスク低減が期待されるため、可能であれば接種を検討する(医学的適応や持病の有無は要相談)。

血の混じった咳が認められた患者の体験談

前述のように、Amy Klobuchar氏の夫John氏やTarek Soliman氏の体験では、当初は一般的なインフルエンザ様症状として始まり、症状が落ち着くかのように見えた時期もありました。しかし、その後ウイルスによる肺炎が進行し、血痰が出るまでに至ったといいます。こうした波状的な悪化はCOVID-19特有の経過とも関連があると考えられ、感染初期に軽症であっても安心せず、継続的に経過を観察することが重要です。

ほかの病気との鑑別

血痰という症状は、COVID-19以外の疾患でも生じることがあります。たとえば以下のような例があります。

  • 結核(TB)
    長期間にわたる咳や発熱、体重減少が特徴。胸部X線やPCR検査で診断される。
  • 肺がん
    喫煙歴の長い人などでリスクが高く、痰に血が混じることがある。画像検査や気管支鏡で評価。
  • 慢性気管支炎
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一環として喫煙者を中心に見られる。咳と痰が長引き、まれに血が混じる場合も。
  • 肺膿瘍、肺動静脈奇形、肺塞栓症
    いずれも血痰を呈する可能性があり、画像検査が必須。

こうした病気を除外したうえで、COVID-19が原因で血痰が出ているかどうかを判断するには、医師による問診や検査が欠かせません。したがって、血痰が続く場合やほかの症状(発熱や胸の痛みなど)が悪化する場合は、早めに医療機関へ相談してください。

総合的なリスク管理

ワクチン接種の役割

国内外の大規模研究で、ワクチンが重症化や死亡率を大幅に下げる効果があると示されています。血痰が出るほどの肺損傷を引き起こすリスクは、ワクチン接種により軽減できる可能性が高いと考えられます。日本国内でも政府や自治体がワクチン接種を進める理由のひとつが、この重症化予防にあります。

変異株への注意

近年の変異株(オミクロン株など)は、従来株よりも感染力が高い一方で重症化率がやや低いとされる傾向があります。しかし、既往症をもつ方や高齢者が感染した場合、やはり従来株同様に重篤化する可能性はあり、血痰なども含め合併症を引き起こすリスクがゼロではありません。油断せず、基本的な感染対策を継続することが重要です。

予防と早期発見が鍵

COVID-19を含む呼吸器感染症は、発症初期の段階で治療や対策を行うことで、症状の進行や重症化を抑えることが期待されます。特に血痰のように肺がダメージを受けているサインが見られた場合、重症化リスクが高まっている可能性を念頭に置きながら、医療機関の受診や専門家の指示を仰ぐべきです。

  • 発症初期に検査を受ける
  • 自宅での安静・隔離を徹底する
  • 適切な水分補給と休養をとる
  • 酸素飽和度を自宅で測定し、異常があればすぐに報告する

こうした対応により、病状の見落としを減らし、早期治療につなげることが期待できます。

結論と提言

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、典型的な症状として発熱や咳、呼吸困難などが知られていますが、ごく一部の重症患者や複雑な合併症を抱えた患者において、血痰を伴う咳が認められる事例があります。血痰そのものは、必ずしも重大な病気を意味するわけではありませんが、肺の損傷や炎症が進んでいる兆候である可能性があり、特に新型コロナウイルスの二次感染や合併症が疑われるケースでは速やかな医療評価が必要です。

血の混じった咳を自覚した場合は、自己判断で外出や通院をする前に、あらかじめ保健所や医療機関に電話相談を行い、適切な受診方法について指示を仰ぐことが望ましいでしょう。ワクチン接種が進みつつある今も、感染力の高い変異株が存在し続ける以上、従来通りのマスク着用や手洗いなど、基本の感染防止策を徹底することが大切です。

また、COVID-19以外にも結核や肺がんなど、血痰を伴う重篤な疾患が存在します。長期にわたる咳や血痰が続くときは、新型コロナウイルスだけでなく、呼吸器系のさまざまな病気を念頭に置き、専門家による精密検査を受けることが安心です。

最後に、ここ数年の研究動向からは、COVID-19の重症化を予防する手段としてのワクチン接種が有効とみられる一方、進行例では肺炎が進んで血痰がみられることも否定できないと分かっています。したがって、日頃から基礎疾患のケアや健康管理に努め、早期受診・早期治療の重要性を認識していくことが、個人と社会全体の感染拡大防止と重症化リスク低減につながります。


参考文献


重要な注意事項

本記事で提供している内容は、国内外の研究・文献・報道をもとにした一般的な医学情報および体験談の紹介です。確定診断や治療方針の決定は、必ず医療機関や専門家に相談してください。 個人の病状には差があり、同じ症状でも原因や重症度は人によって異なります。特に血痰などの重い症状がある場合や、感染リスクが高い環境にいた場合は、早急に専門家の判断を仰ぐことが重要です。また、本記事は公的機関からの最新のガイドラインや研究結果に基づき随時更新される場合がありますが、実際の医療判断は最新情報と各個人の状況を踏まえて行われるべきです。自宅での療養や予防措置の実施にあたっては、厚生労働省や自治体などの公的機関からの公式情報も併せてご参照ください。

本記事はあくまで参考情報であり、自己判断で治療や投薬を行うことは危険を伴います。必ず医療機関の受診を優先し、医師や薬剤師などの専門家と相談の上で最適なケアを受けるようにしてください。

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