【2025年最新版】子供のアセトアミノフェン|体重別用量から安全な使い方まで小児科医が徹底解説
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【2025年最新版】子供のアセトアミノフェン|体重別用量から安全な使い方まで小児科医が徹底解説

お子様が突然熱を出すと、多くの保護者様は心配になることでしょう。どの薬を、どれくらいの量で使えばいいのか、不安に感じるのは当然のことです。特にアセトアミノフェンは、日本において子供の解熱・鎮痛に最も広く使われる成分の一つですが、その使用法を正確に理解することが、お子様の安全にとって極めて重要です。この記事は、2025年時点の最新情報に基づき、日本の厚生労働省や日本小児科学会の公式な指針、そして国内外の信頼できる科学的研究を統合し、子供へのアセトアミノフェンの安全な使用法を包括的に解説します。JAPANESEHEALTH.ORG編集部が専門家の監修のもと、保護者の皆様が抱えるあらゆる疑問や不安を解消することを目指します。


この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性のみが含まれています。

  • 厚生労働省 (2006年報告書): この記事における「アセトアミノフェンの標準的な1回あたりの投与量は体重1kgあたり10~15mgであり、日本の小児に対する解熱の第一選択薬である」という指針は、厚生労働省が発表した報告書に基づいています1
  • 日本小児科学会 (2021年注意喚起): 「mgとmLの単位誤認による過量投与の危険性」に関する警告は、日本小児科学会の公式な注意喚起に基づいています2
  • JAMA Network Open (2020年メタアナリシス): 「アセトアミノフェンとイブプロフェンの効果比較」に関する記述は、JAMA Network Openに掲載されたシステマティックレビューおよびメタアナリシス研究に基づいています3
  • StatPearls (2024年レビュー): 「アセトアミノフェンの薬物動態と毒性閾値」に関する医学的情報は、StatPearlsに掲載された最新の学術レビューに基づいています4

要点まとめ

  • 用量の基本原則: 子供のアセトアミノフェンの1回量は、年齢ではなく体重1kgあたり10~15mgで計算するのが鉄則です。
  • 安全な投与間隔: 薬の投与は最低4~6時間の間隔をあけ、1日の最大投与量(体重1kgあたり60mg)を絶対に超えないようにしてください。
  • 日本の第一選択薬: 厚生労働省や日本小児科学会は、インフルエンザや水痘(みずぼうそう)の際にも安全に使用できることから、子供の解熱・鎮痛にはアセトアミノフェンを第一に推奨しています。
  • 市販薬の注意点: 他の成分を含む総合感冒薬との併用は、アセトアミノフェンの過剰投与につながる危険性があるため、原則として避けるべきです。
  • 専門家への相談: 判断に迷う場合や、子供の状態に不安がある場合は、自己判断せず、必ず医師または薬剤師に相談してください。

アセトアミノフェンとは?なぜ子供の解熱・鎮痛の第一選択薬なのか

アセトアミノフェンは、解熱作用と鎮痛作用を持つ医薬品成分です。世界中で広く使用されており、日本においても、子供の発熱や痛みに対して最も安全で効果的な選択肢の一つとして位置づけられています1。その主な理由は、脳の体温調節中枢に作用して熱を下げ、痛みの信号が伝わるのを抑制する一方で、他の多くの解熱鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDs)と比較して胃腸への負担が少なく、特定のウイルス感染症との関連で重篤な副作用(ライ症候群など)を引き起こす危険性が極めて低いことにあります。厚生労働省は、特にインフルエンザや水痘(みずぼうそう)が疑われる子供には、アセトアミノフェン単独の製剤を使用することを強く推奨しています5

【最重要】アセトアミノフェンの正しい用量:体重にもとづく計算が基本

子供へのアセトアミノフェン投与で最も重要なことは、用量を年齢ではなく、正確な体重に基づいて計算することです。子供の体格や代謝能力は個人差が大きく、体重を基準にすることで、過少投与による効果不十分や、過剰投与による副作用の危険性を最小限に抑えることができます。

体重1kgあたり「10~15mg」が鉄則

日本の公式な医療ガイドラインでは、子供のアセトアミノフェンの1回あたりの標準投与量は、体重1kgあたり10mgから15mgと定められています167。これは、有効性と安全性のバランスが最も良いとされる量です。例えば、体重10kgのお子様であれば、1回の投与量は100mgから150mgとなります。この「10-15mg/kg」という数値を必ず覚えておきましょう。

投与間隔と1日の最大量

薬の効果を持続させ、かつ安全性を保つためには、投与間隔を守ることが極めて重要です。アセトアミノフェンは、1回の投与後、次に使用するまで最低でも4時間から6時間の間隔をあける必要があります1。また、24時間以内(1日)の総投与量が、体重1kgあたり60mgを超えないように厳密に管理しなければなりません14。これを上回ると、重篤な肝機能障害を引き起こす危険性が高まります。

体重別・年齢別の投与量早見表

保護者の皆様がご家庭で容易に計算できるよう、代表的な処方薬「カロナール」と市販薬「小児用バファリンCII」を例にした投与量の目安を以下の表にまとめました。ただし、これはあくまで目安であり、実際の投与量は必ず医師の指示や製品の説明書に従ってください。

体重 (kg) 1回あたりのアセトアミノフェン量 (mg) [10-15mg/kg] カロナール細粒20%の場合 (1回量 g) 小児用バファリンCII (33mg/錠) の場合 (1回量)
5 kg 50 – 75 mg 0.25 – 0.38 g – (3歳未満は非推奨)
10 kg 100 – 150 mg 0.5 – 0.75 g 3 – 4錠 (3-4歳)
15 kg 150 – 225 mg 0.75 – 1.13 g 4 – 6錠 (5-6歳)
20 kg 200 – 300 mg 1.0 – 1.5 g 6 – 9錠 (7-10歳)
30 kg 300 – 450 mg 1.5 – 2.25 g 9 – 13錠 (11-14歳)

注: 上記の表は、カロナール細粒20%(1g中にアセトアミノフェン200mg含有)6と小児用バファリンCII(1錠中にアセトアミノフェン33mg含有)8を基準に作成しています。製品によって含有量が異なるため、必ずお手元の薬の添付文書をご確認ください。

安全な使用のための10の重要注意点

アセトアミノフェンは安全性の高い薬ですが、誤った使い方をすると危険を伴う可能性があります。以下の点を必ず守ってください。

  1. 過剰投与は深刻な肝障害を引き起こす: 1日の最大量を超えたり、短時間で繰り返し投与したりすると、肝臓に深刻なダメージを与える可能性があります19。特に、推奨される1回量が150mg/kgを超えると毒性が現れ始めるとされています4。用量と間隔の厳守が最も重要です。
  2. 他の風邪薬との併用は避ける: 市販の総合感冒薬(風邪薬)の多くには、アセトアミノフェンが含まれています。これらと解熱剤としてのアセトアミノフェンを同時に服用すると、意図せず過剰投与(重複投与)となる危険性が非常に高いです。厚生労働省もこの点について注意を呼びかけています5
  3. 3ヶ月未満の乳児には医師の指示なしで使用しない: 生後3ヶ月未満の乳児に対するアセトアミノフェンの安全性は、確立されていません。この月齢の乳児の発熱は、重篤な感染症の兆候である可能性もあるため、自己判断での投薬は絶対に避け、必ず医療機関を受診してください62
  4. 坐剤(ざざい)と飲み薬を同時に使わない: 飲み薬と坐剤は、吸収経路が異なりますが、体内で同じように作用します。両方を同時に使うと過剰投与になります。わかばだい こどもとアレルギーのクリニックなどの専門機関も、この点について警告しています10
  5. 空腹時でも服用可能: アセトアミノフェンは胃腸への負担が少ないため、多くのNSAIDsと異なり、空腹時でも服用できるのが利点です。
  6. アレルギー歴を確認する: 過去にアセトアミノフェンや他の薬でアレルギー反応(発疹、かゆみなど)を起こしたことがある場合は、使用前に必ず医師または薬剤師に伝えてください。
  7. 持病がある場合は相談を: 肝臓や腎臓の病気、心臓の病気、喘息などの持病があるお子様は、アセトアミノフェンの使用に注意が必要です。必ずかかりつけ医に相談してください。
  8. 脱水症状に注意する: 発熱時は汗などで水分が失われがちです。薬を使うかどうかにかかわらず、こまめな水分補給を心がけてください。
  9. 兄弟姉妹の薬を使い回さない: 体重が違う兄弟姉妹の間で薬を使い回すのは非常に危険です。必ずその子自身の体重に合った薬を、処方された通りに使用してください10
  10. mgとmLの単位誤認に注意: 特にシロップ剤や静脈注射(医療機関での使用)において、mg(ミリグラム)とmL(ミリリットル)を間違えることによる10倍の過量投与事故が報告されています2。処方された量を確認する際は、単位までしっかり確認しましょう。

日本でよく使われるアセトアミノフェン製剤(処方薬・市販薬)

日本国内では、様々な形態のアセトアミノフェン製剤が利用可能です。代表的なものを知っておくと、いざという時に役立ちます。

処方薬の例:「カロナール」

「カロナール」は、日本で最も広く処方されているアセトアミノフェン製剤のブランド名です11。子供の状態や年齢に合わせて、様々な剤形が用意されています。

  • 細粒・ドライシロップ(粉薬): 甘い味がつけられており、子供が飲みやすいように工夫されています。水に溶かしたり、少量のゼリーなどに混ぜたりして与えます。
  • シロップ(液体): 乳幼児など、粉薬が飲みにくい子供向けです。正確な量をスポイトや計量カップで測る必要があります。
  • 坐剤(お尻に入れる薬): 嘔吐している時や、薬を飲むのを嫌がる時に便利です。体温で溶けて直腸から吸収されます。

市販薬の例:「小児用バファリン」

市販薬(OTC医薬品)の中にも、アセトアミノフェンを主成分とする子供向けの製品があります。代表的なのが「小児用バファリン」シリーズです8

  • 小児用バファリンCII: 3歳から14歳の子供向けの錠剤タイプです。オレンジ味で、子供が飲みやすいように作られています。
  • 小児用バファリンチュアブル: 3歳から14歳向けで、水なしで噛んで飲めるタイプです。外出先などで便利です。

市販薬を購入する際は、必ず薬剤師に相談し、子供の年齢や体重、症状を正確に伝えて適切な製品を選ぶことが重要です。厚生労働省も、市販薬を選ぶ際のガイドラインを公開しています5

知っておきたい:アセトアミノフェン製剤の供給状況について

近年、日本国内ではアセトアミノフェン製剤、特に子供向けのシロップや粉薬が不足する状況が報告されています1213。これは、需要の増加などが原因とされています。この状況に対応するため、厚生労働省は、シロップなどが不足している場合には、薬剤師が医師の指示のもとで錠剤を粉砕して子供用に調剤することを認めるなどの対策を講じています14。もし処方された薬の形態がいつもと違う場合は、このような背景がある可能性を理解し、薬剤師の説明をよく聞くことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 熱が下がりません。追加で飲ませていいですか?

いいえ、絶対にいけません。必ず定められた投与間隔(4~6時間)を守ってください1。発熱は、体がウイルスや細菌と戦っている正常な免疫反応の一部です15。解熱剤の目的は、高熱によるつらさを和らげ、子供が水分や食事を摂れるように手助けすることであり、熱を無理やり平熱まで下げることではありません。熱が少し下がって楽になった様子が見られれば、薬は効果を発揮していると言えます。

Q2. アセトアミノフェンとイブプロフェン、どちらが良いですか?

日本の医療現場では、子供にはアセトアミノフェンが第一選択とされています。これは安全性を最優先する考え方に基づいています1。一部の国際的な研究、例えば2020年にJAMA Network Openで発表されたメタアナリシスでは、イブプロフェンの方がアセトアミノフェンよりも解熱効果がわずかに高い可能性が示唆されていますが、安全性に大きな差はないと報告されています316。しかし、前述の通り、インフルエンザなどの特定の感染症におけるライ症候群のリスクを避けるため、日本のガイドラインではアセトアミノフェンが推奨されています5

Q3. 熱性けいれんを予防できますか?

いいえ、できません。これは非常によくある誤解ですが、解熱剤を使用しても熱性けいれんの発生を予防する効果はないことが、多くの研究で明らかになっています15。熱性けいれんは、熱が急激に上がる過程で起こりやすく、解熱剤の有無とは直接関係ありません。もしお子様がけいれんを起こした場合は、慌てずに安全な場所に寝かせ、様子を観察し、医師に相談してください。

医師に相談すべきタイミング

アセトアミノフェンは家庭で安全に使える薬ですが、以下のような状況では、自己判断で様子を見るのではなく、速やかに医療機関を受診すべきです1718

  • 生後3ヶ月未満の乳児が発熱した場合
  • 呼びかけに反応が鈍い、ぐったりしている、意識がはっきりしない場合
  • 呼吸が速い、苦しそうにしている場合
  • 水分を全く受け付けず、脱水症状(おしっこが半日以上出ないなど)が見られる場合
  • けいれんを起こした場合
  • 原因不明の発疹が全身に出た場合
  • 解熱剤を使用しても3日以上熱が続く場合

保護者の直感は非常に重要です。「いつもと様子が違う」と感じたら、ためらわずに専門家に相談してください。

結論

子供の健やかな成長を見守る上で、発熱は避けて通れない出来事です。アセトアミノフェンは、正しく使用すれば非常に安全で有効な薬であり、お子様のつらさを和らげる強い味方となります。この記事で解説した「体重1kgあたり10~15mg」という用量の鉄則、そして「4~6時間以上の投与間隔」という二つの重要なルールを常に念頭に置いてください。そして何よりも、お子様の状態に少しでも不安を感じたときには、一人で悩まず、かかりつけの医師や地域の薬剤師といった専門家に相談することが、お子様の安全を守るための最善の策です。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言を構成するものではありません。健康上の懸念がある場合、または健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 厚生労働省. 資料 4-3 小児薬物療法検討会議 報告書 : アセトアミノフェン. 2006. Available from: https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/12/dl/s1212-7g.pdf
  2. 日本小児科学会. 解熱鎮痛剤アセトアミノフェン静注液の過量投与に関する注意喚起. 2021. Available from: https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=138
  3. Tan E, et al. Comparison of Acetaminophen (Paracetamol) With Ibuprofen for Treatment of Fever or Pain in Children Younger Than 2 Years: A Systematic Review and Meta-analysis. JAMA Netw Open. 2020;3(10):e2022398. doi:10.1001/jamanetworkopen.2020.22398. Available from: https://www.researchgate.net/publication/345127856_Comparison_of_Acetaminophen_Paracetamol_With_Ibuprofen_for_Treatment_of_Fever_or_Pain_in_Children_Younger_Than_2_Years_A_Systematic_Review_and_Meta-analysis
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  7. 医薬品医療機器総合機構. 医療用医薬品 : カロナール. KEGG; Available from: https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00050262
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  9. Agrawal S, Khazaeni B. Pain Management Medications. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK560692/
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  11. こころみクリニック. カロナール(一般名:アセトアミノフェン)の効果と副作用. Available from: https://cocoromi-cl.jp/knowledge/pediatric-medicine/calonal/
  12. メディカルノート. 「コロナの発熱対策」 アセトアミノフェンは小児へ―小児科学会、在庫ひっ迫で配慮依頼. 2022. Available from: https://medicalnote.jp/nj_articles/221222-001-TW
  13. m3.com. 小児解熱薬不足で錠剤の粉砕処方などを改めて周知、厚労省. 2023. Available from: https://www.m3.com/clinical/news/1110725
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  18. キッズドクター. 子どもに熱があるときは解熱剤を使ってもいいの? Available from: https://kids-doctor.jp/magazine/8j4iw9_ix
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