SpO2（血中酸素飽和度）とは？正常値、低い場合の症状、原因、および対処法を専門家が徹底解説

はじめに：なぜ今、SpO2が重要なのか？

SpO2（経皮的動脈血酸素飽和度）は、体内にどれだけ効率的に酸素が運ばれているかを示す、生命維持に不可欠な指標です。かつては医療機関で専門家が使用する指標でしたが、COVID-19の流行により、自覚症状が乏しくても重篤な低酸素状態に陥る「サイレント・ハイポキシア（静かなる低酸素血症）」¹³が注目されたことで、家庭用のパルスオキシメータが広く普及しました。さらに、スマートウォッチに血中酸素ウェルネス機能が搭載されるようになり¹, ¹⁴、SpO2は私たちの健康管理において、より身近で重要な役割を担うようになりました。この数値を正しく理解し活用することは、自身の健康状態を客観的に把握し、適切なタイミングで医療機関に相談するための強力なツールとなります。

SpO2（血中酸素飽和度）の基本を理解する

SpO2の数値を正しく解釈するためには、まずその背景にある体の仕組み、つまり酸素がどのように運ばれるのかを理解することが不可欠です。ここでは、その科学的基礎を分かりやすく解説します。

SpO2とは？ヘモグロビンと酸素の重要な関係

私たちの体内で酸素を運搬する主役は、赤血球に含まれる「ヘモグロビン（Hb）」というタンパク質です¹⁵。肺で取り込まれた酸素は、このヘモグロビンと結合して全身の組織や細胞に届けられます。SpO2とは、このヘモグロビンのうち、何パーセントが酸素と結合しているか（飽和しているか）を皮膚を通して測定した数値です²。例えば、SpO2が98%であれば、血液中のヘモグロビンの98%が酸素を運んでいる状態を意味します。

この測定の根底には、ヘモグロビンの色の変化という物理的な原理があります。酸素と結合したヘモグロビン（オキシヘモグロビン）は鮮やかな赤色をしていますが、酸素を放出したヘモグロビン（デオキシヘモグロビン）は暗い赤色をしています¹⁶。パルスオキシメータは、この色の違いを利用して酸素飽和度を測定しているのです。

SpO2とSaO2の違い：非侵襲的測定と「真の値」

医療現場では、SpO2と似た言葉で「SaO2」という指標も使われます。この二つは密接に関連していますが、測定方法に決定的な違いがあります。

• SpO2 (経皮的動脈血酸素飽和度): パルスオキシメータを用いて、皮膚を通して（経皮的に）非侵襲的に測定される酸素飽和度の「推定値」です⁵。
• SaO2 (動脈血酸素飽和度): 動脈から直接血液を採取し、血液ガス分析装置（COオキシメータ）で測定される酸素飽和度の「実測値」です¹⁷。

SaO2は「ゴールドスタンダード（最も信頼性の高い基準）」とされますが、採血が必要な侵襲的な検査です。一方、SpO2は指先を挟むだけで手軽に測定できるため、臨床現場や在宅でのモニタリングに広く用いられています。健康な状態であれば、SpO2とSaO2の値はほぼ同等と考えて差し支えありません¹⁸。

測定の仕組み：パルスオキシメータはどのように機能するのか？

パルスオキシメータは、プローブ（指先を挟む部分）から「赤色光」と「赤外光」という2種類の光を照射し、指を透過してきた光の量を測定することでSpO2を算出します³。前述の通り、酸素と結合したヘモグロビン（オキシヘモグロビン）と、結合していないヘモグロビン（デオキシヘモグロビン）は、これら2種類の光を吸収する割合が異なります¹⁷。この吸光度の差を分析することで、酸素飽和度を推定するのです。

特筆すべきは、この装置が血液の「拍動成分（pulsatile component）」のみを分析している点です¹⁹。心臓のポンプ作用により、動脈の血液量は周期的に変動（拍動）しますが、静脈や周囲の組織の血液量はほとんど変動しません。パルスオキシメータはこの拍動する血流、つまり動脈血の信号だけを拾い出して分析するため、「パルス」オキシメトリ（Pulse Oximetry）と呼ばれます。これにより、静脈血などの影響を受けずに、動脈血の酸素飽和度を正確に推定できるのです²⁰。装置にはSpO2（%）と脈拍数（bpm）の2つの主要な指標が表示されます。

あなたのSpO2は正常？数値の正しい見方と解釈

SpO2の数値をただ見るだけでなく、その数値が個々の状況において何を意味するのかを理解することが、健康管理の鍵となります。一つの数値だけで判断するのではなく、個人の健康状態や時間的な推移といった「文脈」の中で解釈することが極めて重要です。

健康な成人の正常値：96%～99%が目安

複数の信頼できる情報源によると、安静時の健康な成人のSpO2正常値は、一般的に96%から99%の範囲とされています³, ⁴, ²¹。一部の資料では95%～98%⁷と記載されることもありますが、日本呼吸器学会などの権威ある機関は96%以上を一つの基準としています。ちなみに、100%という数値が出ることもありますが、98%や99%と比較して特に「優れている」というわけではありません⁷。

注意・危険ゾーン：SpO2が95%以下、90%以下になったら

SpO2の数値が平常時よりも低下した場合は、体の異常を示すサインである可能性があります。以下の閾値は重要な判断基準となります。

• 要注意ゾーン (93%～95%): SpO2が95%以下になった場合は注意が必要です²²。まずは深呼吸をして安静にし、測定方法が正しいか確認した上で再測定してください¹³。それでも数値が低い状態が続く場合は、医療機関への相談を検討すべきです。特にCOVID-19の診療ガイドラインでは、この範囲は「中等症Ⅰ」に分類されることがあります¹²。
• 危険ゾーン (90%以下): SpO2が90%以下になることは、医学的に「呼吸不全」と定義される危険な状態です⁵, ⁶, ²³。これは体内の酸素が著しく不足していることを示し、緊急の医療介入を必要とします。この状態は、動脈血酸素分圧（PaO2）が約60mmHg以下に低下したことに相当し⁹, ²⁴、速やかに医療機関を受診するか、状況によっては救急車（119番）を要請する必要があります¹¹。

文脈が重要：COPD、高齢者、睡眠時で異なる「正常値」

「正常値」はすべての人に一律に当てはまるわけではありません。個人の健康状態や特定の状況によって、目標とされるSpO2の範囲は異なります。この点を理解することは、不要な不安を避け、適切な対応をとるために非常に重要です。

慢性閉塞性肺疾患（COPD）患者の目標値

COPD、特に体内に二酸化炭素が溜まりやすいⅡ型呼吸不全を合併している慢性呼吸不全の患者様の場合、酸素療法の目標SpO2はあえて低めの88%～92%に設定されることがあります⁸, ²⁵。これは、高濃度の酸素を投与しすぎると、かえって呼吸が抑制されてしまう「CO2ナルコーシス」という危険な状態を避けるためです。主治医の指示した目標範囲を正しく理解し、自己判断で酸素流量を調整しないことが極めて重要です。

高齢者の平常値に関する注意点

加齢に伴い肺の機能は徐々に低下するため、高齢者の方では平常時のSpO2が健康な成人と比べてやや低い傾向があります。個人差はありますが、95%あるいは93%～94%程度がその方の「平常値」である可能性も考えられます⁷。日頃から体調の良い時に自身の平常値を測定・記録しておくことで、いざという時に体調変化を客観的に判断する助けになります。

睡眠時無呼吸症候群（SAS）と夜間のSpO2低下

睡眠時無呼吸症候群（SAS）は、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。この呼吸停止に伴い、夜間のSpO2は断続的に低下します。特に、睡眠中にSpO2が90%未満になる状態が頻繁に発生することは、中等症から重症のSASの重要な指標であり、CPAP療法などの治療開始を判断する基準の一つとなります¹, ²⁶。日本国内には治療を受けていない潜在的なSAS患者が300万人から900万人も存在すると推定されており²⁷, ²⁸、いびきや日中の眠気を自覚する方は注意が必要です。

低酸素血症：なぜ血液中の酸素が不足するのか？

SpO2の低下は、「低酸素血症」という医学的な状態の現れです。低酸素血症とは、動脈血中の酸素が不足した状態を指し、具体的には室内気吸入下でPaO2が60mmHg未満、またはSpO2が90%以下の場合と定義されます⁹, ³⁰。この状態がなぜ起こるのか、その根本的なメカニズムを理解することは、病態の理解を深める上で非常に重要です。

低酸素血症の4つの主要なメカニズム

低酸素血症を引き起こす原因は、主に以下の4つの生理学的なメカニズムに分類されます¹⁰, ³¹。

1. 換気血流比不均衡 (V/Q Mismatch): 低酸素血症の最も一般的な原因です¹⁰。これは、肺の中での「換気（空気の流れ）」と「血流」のバランスが崩れる状態を指します。例えば、肺炎で肺の一部に炎症が起きると、その部分には血流はあっても、空気が十分に入ってこないため酸素の受け渡しができません。逆に、血栓で血管が詰まると、換気はされていても血流がないため、やはり酸素交換ができません。喘息発作やCOPDでもこの状態が起こります⁹。
2. シャント (Shunt): 酸素化されるべき血液が、ガス交換の場である肺胞を通過せずに、心臓の右側から左側へとバイパスしてしまう状態です¹⁰。生まれつきの心臓の奇形や、肺胞が完全につぶれてしまった無気肺などで見られます。シャントを流れる血液は酸素を受け取れないため、全体の酸素飽和度が低下します。
3. 肺胞低換気 (Alveolar Hypoventilation): 肺に出入りする空気の量そのものが減少する状態です¹⁰。気道が痰で塞がれる、呼吸筋が麻痺する、あるいは脳の呼吸中枢が抑制されるといった原因で起こります。喘息やCOPDの増悪時にも見られます⁹。
4. 拡散障害 (Diffusion Limitation): 酸素が通過するべき肺胞と毛細血管の間の膜（肺胞毛細血管膜）が厚くなったり硬くなったりして、酸素が血液中に溶け込みにくくなる状態です¹⁰。間質性肺炎や肺線維症、肺水腫などが代表的な原因疾患です。

低酸素血症のサインと症状：体からの警告を見逃さない

低酸素血症は、体の様々なサインを通じて警告を発します。これらの症状に早期に気づくことが重要です。症状は、進行度によって急性・早期のものと、重症・慢性のものに分けられます。

初期・急性の症状（息切れ、頻脈、混乱など）

体が酸素不足に陥ると、代償作用として呼吸や心拍を速めてより多くの酸素を取り込もうとします。そのため、初期には以下のような症状が現れます¹⁷。

• 息切れ、息苦しさ（特に労作時）
• 呼吸が速くなる（頻呼吸）
• 脈が速くなる（頻脈）
• 頭痛、めまい
• 集中力の低下、判断力の鈍化、混乱
• 倦怠感

慢性の症状と合併症（ばち状指、心不全など）

低酸素血症が長期間続くと、体は慢性的な酸素不足に適応しようとし、特徴的な身体的変化や合併症を引き起こすことがあります。

• チアノーゼ: 血液中の酸素が著しく欠乏すると、唇や爪が青紫色になるチアノーゼが現れます。これは非常に危険なサインです¹⁷。
• ばち状指: 長期にわたる低酸素血症の典型的な兆候で、指の先端が太鼓のばちのように丸く膨らみます³²。
• 心不全: 慢性的な低酸素状態は、心臓に大きな負担をかけ続け、最終的には心不全を引き起こす可能性があります⁹。

特別解説：「サイレント・ハイポキシア（幸せな低酸素症）」の謎

COVID-19のパンデミックで広く知られるようになった「サイレント・ハイポキシア」または「ハッピー・ハイポキシア」は、SpO2が危険なレベルまで低下しているにもかかわらず、患者が強い息苦しさを感じないという現象です¹³。これは医学的に新しい現象ではなく、「Silent Hypoxemia（静かなる低酸素血症）」³³として知られています。

この現象の正確なメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、体内の酸素・二酸化炭素濃度を感知する化学受容体の反応が鈍くなる、あるいはウイルス感染によって脳が息苦しさを感じる機能自体が変化するなど、複数の要因が考えられています³⁴。重要な教訓は、「息苦しさ」という自覚症状は、必ずしも体内の酸素レベルを正確に反映するとは限らないということです。だからこそ、特にCOVID-19のような疾患においては、パルスオキシメータによる客観的な測定が極めて重要になるのです¹³。

SpO2が低い場合の具体的なアクションプラン

SpO2の数値が低いと表示された場合、パニックにならずに、まずは落ち着いて状況を確認し、適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、具体的な行動計画を段階的に解説します。

まず確認すべきこと：正しい測定方法

不正確な測定は不要な不安を引き起こします。数値が低いと感じたら、まず以下の点を確認してください¹¹, ³⁵。

• 指先が冷たくないか: 指先が冷えていると血流が悪くなり、正確に測定できないことがあります。手をこすったり、温めたりしてから再測定してください²⁰。
• 安静な状態か: 測定中は体を動かさず、リラックスした状態で測定します。運動直後や会話中の測定は避けましょう²⁰。
• マニキュアや付け爪: 特に色の濃いマニキュアやジェルネイル、付け爪は光の透過を妨げ、不正確な値の原因となります。必ず外してから測定してください¹²。
• 正しく装着されているか: プローブが指の奥までしっかりと挿入され、正しくフィットしているか確認します。

いつ医療機関を受診すべきか？緊急性の判断基準

正しい方法で再測定してもSpO2が低い場合、医療機関への相談や受診を検討する必要があります。その判断基準は以下の通りです¹¹。

• SpO2が93-95%の場合: 安静にしても改善しない、あるいは息苦しさや倦怠感などの症状を伴う場合は、かかりつけ医や最寄りの医療機関に電話で相談してください。
• SpO2が90%以下の場合: これは呼吸不全の状態を示しており、緊急性が高い状況です。直ちに医療機関を受診するか、状況に応じて救急車（119番）を要請してください。
• 急激な低下が見られる場合: これまで正常だったSpO2が、急に数パーセント低下し、それが持続する場合も注意が必要です。
• 強い自覚症状がある場合: SpO2の数値にかかわらず、強い息苦しさ、胸の痛み、意識が朦朧とするといった症状がある場合は、直ちに救急要請をしてください。

医療機関での治療法：在宅酸素療法（HOT）とは

慢性的な低酸素血症が続く場合、医師の判断により在宅酸素療法（Home Oxygen Therapy, HOT）が導入されることがあります²⁹。これは、自宅に設置した酸素濃縮器や液体酸素タンクから、カニューラ（鼻につけるチューブ）などを通じて酸素を吸入する治療法です。HOTは、息切れを和らげ、生活の質（QOL）を向上させ、生命予後を改善する効果が証明されています²⁵。日本では、安静時のPaO2が55mmHg以下、またはSpO2が88%以下などの特定の基準を満たす場合に、健康保険が適用されます²⁹。国内のHOT利用者は年々増加傾向にあり、2015年には16万5千人を超え³⁶、その後も増え続けていると推定されています³⁷。

患者様の声から学ぶ：在宅酸素療法（HOT）の現実と課題

在宅酸素療法は多くの患者様の生活を支える重要な治療法ですが、その一方で、日常生活における様々な課題や不安も存在します。日本呼吸器学会などが共同で発行した「呼吸不全に関する在宅ケア白書2024」³⁸には、患者様の貴重な声が多数寄せられています。ここでは、その一部をご紹介し、治療の現実について理解を深めます。

日常生活と外出時の課題

「HOT利用者の多くが、外出時に大きな不安を抱えています。息苦しさだけでなく、携帯用の酸素ボンベや濃縮器を持ち運ぶ身体的な負担、そして周囲の目が気になるという心理的な負担も大きいのです³⁸。」白書からは、社会的な理解の促進と、より軽量で長時間使用可能な携帯型機器への強い要望が浮かび上がります。

災害時や停電への備えと不安

「患者様が特に大きな懸念として挙げているのが、災害への備えです。地震による停電で酸素濃縮器が使えなくなったらどうするのか？台風で避難が必要になった時、酸素ボンベはどう確保するのか？多くの患者様が、酸素供給業者からのより明確なガイドラインや、自治体との連携強化を望んでいます³⁸。」生命維持に直結する機器だからこそ、緊急時のセーフティネットの構築が急務となっています。

機器の使いやすさと改善への要望

「医療的な側面だけでなく、機器そのものの使い勝手も日々の課題です。患者様からは、より柔らかく肌に優しいカニューラ、静音性の高い濃縮器、そして長時間の外出を可能にするバッテリー性能の向上など、具体的な改善要望が寄せられています³⁸。」これらの声は、患者様のQOLをさらに向上させるための重要なヒントとなります。

測定デバイスの選び方と注意点：信頼できる測定のために

現在、市場には様々な種類のSpO2測定デバイスが存在します。しかし、その目的や精度には大きな違いがあり、正しく理解して選択することが非常に重要です。

医療機器 vs. ウェルネスデバイス：その決定的な違い

SpO2を測定するデバイスは、大きく「医療機器」と「ウェルネスデバイス」に分類されます¹。

病状の管理や診断の補助としてSpO2を測定する場合は、必ず日本の医薬品医療機器総合機構（PMDA）によって「医療機器」として認証されたパルスオキシメータを使用してください。一方、スマートウォッチなどの「血中酸素ウェルネス」機能は、あくまで一般的な健康状態の傾向を知るための参考情報と位置づけ、その数値を自己診断に用いるべきではありません¹。

測定精度に影響を与える要因：肌の色、喫煙、マニキュアなど

パルスオキシメータは非常に便利な機器ですが、その測定値が様々な要因によって影響を受ける可能性があることを理解しておく必要があります。これは信頼できる情報を得る上で極めて重要です。

• 末梢循環不全: 指先が冷たい、血圧が低い、血管の病気があるなど、指先への血流が乏しい状態（低灌流）では、脈波を正確に検出できず、測定不能になったり、信頼性の低い値が表示されたりします¹⁷。
• 体動: 測定中に指や体が動くと、ノイズ（体動アーチファクト）が発生し、正確な測定を妨げる最も一般的な原因の一つです¹⁷。
• 喫煙: これは特に重要な安全上の注意点です。タバコの煙に含まれる一酸化炭素（CO）は、酸素よりもはるかに強くヘモグロビンと結合し、カルボキシヘモグロビンを形成します⁴²。一般的なパルスオキシメータは、このカルボキシヘモグロビンを酸素化されたヘモグロビン（オキシヘモグロビン）と区別できません⁴³。その結果、実際には体内は酸素不足であるにもかかわらず、SpO2が偽って高く表示されてしまう危険性があります¹²。
• 皮膚の色素によるバイアス: 近年の複数の大規模な研究により、肌の色が濃い人々において、パルスオキシメータが実際の動脈血酸素飽和度（SaO2）を過大評価する傾向があることが指摘されています⁴⁴, ⁴⁵。これは「人種的バイアス」として非常に深刻な問題です。肌の色が濃い患者が危険な低酸素状態にあっても、モニター上は安心できる数値が表示され、酸素投与などの重要な治療の開始が遅れる可能性があるためです⁴⁶。この誤差は、実際の酸素飽和度が低いほど大きくなる傾向があります⁴⁴。

よくある質問 (FAQ)

結論

SpO2は、私たちの体がいかに効率よく機能しているかを教えてくれる、シンプルでありながら非常に奥深い指標です。本記事で解説したように、その数値を正しく測定し、個人の健康状態という文脈の中で解釈することで、SpO2は日々の健康管理における強力な味方となります。正常値を知り、異常値に気づき、適切な行動をとること。そして、デバイスの限界を理解し、その特性に応じて賢く使い分けること。これらの知識が、あなた自身と大切なご家族の健康を守る一助となることを、JAPANESEHEALTH.ORG編集部一同、心より願っております。健康に関する疑問や不安があれば、決して一人で抱え込まず、かかりつけの医師や専門家にご相談ください。