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JHO 病気ペディア

コレステロール・脂質異常症これすてろーる・ししついじょうしょう / Dyslipidemia

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

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✦ 結論から言うと

コレステロールや中性脂肪の異常(脂質異常症)とは、日本動脈硬化学会の基準でLDLコレステロール140mg/dL以上・HDLコレステロール40mg/dL未満・空腹時トリグリセライド150mg/dL以上のいずれかに当てはまる状態を指す[1]。自覚症状がほとんどないまま動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める[5]。診断基準に当てはまってもすぐに薬物療法が必要とは限らず、まず自分がどのリスク区分に入るかを知ることが対策の第一歩になる[1]。

原因 遺伝的要因に加え、飽和脂肪酸の摂りすぎ・運動不足・肥満・喫煙・過度の飲酒などの生活習慣が関わる[6]。LDLコレステロール高値の第一の原因は食事中の飽和脂肪酸のとりすぎである[3]。
主な症状 ほとんどが無症状。まれに手の甲・肘・膝・アキレス腱にコレステロールの沈着による黄色腫が見られることがあり、家族性高コレステロール血症(FH)を疑うきっかけになる[2][5]。
受診の目安 健診でLDL-C140mg/dL以上・HDL-C40mg/dL未満・空腹時TG150mg/dL以上のいずれかを指摘された場合、または血のつながった家族に55歳未満(男性)・65歳未満(女性)で心筋梗塞を起こした人がいる場合[1]。

コレステロールとは?原因と動脈硬化が出る仕組み

血液中の脂質にはコレステロール・中性脂肪(トリグリセライド)・リン脂質・遊離脂肪酸の4種類がある[5]。コレステロールは細胞膜やホルモン、消化を助ける胆汁酸の材料になる、体に不可欠な物質である[6]。問題になるのは量そのものより運ばれ方で、LDLコレステロールは余分なコレステロールを血管の壁に沈着させる働きがあり、血液中に多すぎると動脈硬化を進めてしまう[5]。逆にHDLコレステロールは血管壁にたまったコレステロールを回収して肝臓へ戻す働きをするため、それぞれ「悪玉」「善玉」と呼ばれる[5]。中性脂肪はエネルギーの貯蔵や保温、内臓の保護に使われる脂質だが[6]、過剰になるとHDLコレステロールを下げる方向に働きやすい[3]。

血管壁に余分な脂が沈着すると、「プラーク(粥腫)」と呼ばれる盛り上がりができる。この脂は比較的短期間でたまるため柔らかくて壊れやすく、プラークが破れると血液を固める血小板が集まって血栓ができる[5]。血栓が血管をふさぐと、その先の組織に血液が届かなくなり、脳の血管が詰まれば脳梗塞、心臓の冠動脈が詰まれば心筋梗塞、足の血管が詰まれば急性動脈閉塞症を起こす[5]。脂質異常症そのものには自覚症状がほとんどなく、この過程が何年もかけて静かに進行する。

脂質異常症の発症には、過食・運動不足・肥満・喫煙・過度の飲酒・ストレスなどが関わっているとされる[6]。とりわけお腹の中に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」の場合は、LDLコレステロールや中性脂肪が多くなり、HDLコレステロールが少なくなりやすい傾向がある[6]。生活習慣に起因する場合は、適切な食事や運動を心がけることで改善が期待できる一方[4]、遺伝的な要因が強く関わるタイプ(家族性高コレステロール血症など)もあり、これは第4章で扱う[6]。

出典:国立循環器病研究センター病院「脂質異常症」[5]/国立循環器病研究センター冠疾患科「脂質異常症」[6]

診断の目安となる数値・基準

脂質異常症の数値には性質が異なる2種類の基準がある。ひとつは脂質異常症に該当するかどうかを判定するための診断基準、もうひとつは治療を始めたあとに目指す管理目標値で、後者は年齢・危険因子・既往歴によって人ごとに異なる[1]。健診結果に書かれた数値が、そのまま自分が目指すべき治療後の数値というわけではない点に注意したい。

① 診断基準:脂質異常症と判定される値

脂質異常症診断基準
項目 基準値 判定
LDLコレステロール 140 mg/dL以上 高LDLコレステロール血症
120〜139 mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール 40 mg/dL未満 低HDLコレステロール血症
トリグリセライド(中性脂肪) 150 mg/dL以上(空腹時採血) 高トリグリセライド血症
175 mg/dL以上(随時採血)
Non-HDLコレステロール 170 mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症
150〜169 mg/dL 境界域高non-HDLコレステロール血症

出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」表2-1[1]/厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」[3]

空腹時とは基本的に10時間以上絶食した状態を指し、水やお茶などカロリーのない水分の摂取は差し支えないとされる[1]。境界域に当てはまった場合は、それだけで治療が決まるわけではなく、ほかに高リスクな病態がないかをあわせて検討する[1]。

検査を受けるときの注意点として、採血前日の夜の飲酒はトリグリセライドの上昇を長引かせることがあるため控えるのが望ましい[1]。総コレステロール・LDLコレステロール・HDLコレステロールは日中わずかに低下するものの、その変動幅は平均5%前後と小さく、採血の時間帯による影響はほとんどない[1]。トリグリセライドが1,000mg/dL以上と非常に高い検体では、直接法によるLDLコレステロール・HDLコレステロールの測定値に影響が出ることがある点も知っておきたい[1]。

LDLコレステロールそのものの基準値や下げ方をより詳しく知りたい場合は、【LDLコレステロール】基準値・危険性・下げ方と受診の目安をわかりやすく解説も参考になる。

② 管理目標値:治療でどこまで下げるか(リスク区分別)

治療目標は、診断基準とは別に、10年間で動脈硬化性疾患を起こす確率(絶対リスク)に応じて決まる。日本動脈硬化学会は性別・収縮期血圧・糖代謝異常・LDLコレステロール・HDLコレステロール・喫煙の点数を合計し、年齢階級別の表にあてはめて10年間の発症リスクを算出する「久山町スコア」を用いて、リスクが2%未満を低リスク、2〜10%未満を中リスク、10%以上を高リスクに分類する[1]。すでに冠動脈疾患やアテローム血栓性脳梗塞を起こしたことがある場合は「二次予防」として、一次予防よりも厳しい目標値が設定される[1]。

リスク区分別脂質管理目標値(mg/dL)
治療方針 管理区分 LDL-C Non-HDL-C TG/HDL-C
一次予防 低リスク 160未満 190未満 TG150未満(空腹時)/175未満(随時)
HDL-C40以上
中リスク 140未満 170未満
高リスク 120未満(糖尿病でPAD・細小血管症の合併や喫煙がある場合は100未満) 150未満(同130未満)
二次予防 冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞の既往 100未満 130未満 同上
急性冠症候群・FH合併・糖尿病合併など特にリスクが高い場合 70未満 100未満

出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」表3-2・表3-3[1]

診断基準のLDL-C140と治療目標のLDL-C140は別物である。健診でLDL-C140mg/dL以上のため高LDLコレステロール血症に該当すると指摘されても、それは診断基準に当てはまるという意味であり、治療を始めたあとの目標がLDL-C140という意味ではない。二次予防(すでに心筋梗塞や脳梗塞を経験した人)ではLDL-C100mg/dL未満、条件によっては70mg/dL未満までの管理が必要になる[1]。この2つを混同すると、自分に必要な治療の厳しさを見誤ることになる。なお、いずれの管理区分でもLDL-Cが180mg/dL以上の場合は、生活習慣の改善とあわせて薬物療法が検討される[1]。

メタボリックシンドローム・FH・続発性との見分け方

項目 一般的な脂質異常症 家族性高コレステロール血症(FH) 続発性(二次性)脂質異常症
主な原因 生活習慣+多因子的な体質[6] LDL受容体等の遺伝子変異による単一遺伝子疾患(常染色体優性遺伝)[2] 甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・糖尿病、ステロイドなど他の病気や薬剤が原因[1]
LDL-Cの目安 診断基準どおり140以上で疑う[1] 未治療で180以上、250以上は特に強く疑う[2] 原疾患の治療で改善することが多い[1]
特徴的な所見 通常はなし 腱黄色腫(手背・肘・膝等)、アキレス腱肥厚、早発性冠動脈疾患の家族歴[2] 原疾患の症状が先行することが多い
頻度 ― 一般人口の約300人に1人[2] ―

見分けるカギ:血のつながった家族に55歳未満(男性)・65歳未満(女性)で心筋梗塞などを起こした人がいるか、そしてLDL-Cが180mg/dL以上あるかどうかが、FHを疑う分かれ目になる[2]。甲状腺・腎臓・糖尿病などの治療歴や服薬歴があれば、続発性(二次性)脂質異常症の可能性を考える[1]。なお、メタボリックシンドロームの診断基準に使われる脂質の指標はHDLコレステロールとトリグリセライドで、LDLコレステロールは含まれていない。しかしLDLコレステロールは単独でも動脈硬化を強く進行させるため、メタボリックシンドロームに当てはまるかどうかに関係なく注意が必要である[3]。

FHは治療をしないまま放置すると、若いうちから心筋梗塞などを発症しやすいことが知られている。男性は20歳代から発症がみられ40歳代でピークを迎え、女性は30歳代から始まり50歳代でピークを迎えるというように、非FHの人に比べて非常に若い年齢で動脈硬化性疾患を起こしやすいのが特徴で、重症例では幼児期に心筋梗塞を発症することもある[5]。両親双方からFHの遺伝子を受け継いだホモ接合体はヘテロ接合体よりもさらにLDLコレステロールが高く、より早期に治療を開始する必要があるため、専門医による精査が特に重要になる[2]。FHと診断された場合は、本人だけでなく血のつながった家族についても調べることが強く勧められている[2]。

経過と治療:段階別のケア

脂質異常症の治療は、診断された時点でいきなり薬から始まるわけではない。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、一次予防は原則として3〜6か月間、生活習慣の改善を行ってその効果を評価したうえで、薬物療法の適用を検討するとされている[1]。ただし、いずれの管理区分でもLDL-Cが180mg/dL以上の場合は、生活習慣の改善と並行して薬物療法を考慮してもよいとされる[1]。

第1段階:生活習慣の改善。動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版が示す食事の要点は次のとおりである[4]。

  • 目標体重(身長m×身長m×目標BMI)に見合うよう、総エネルギー摂取量を調整し適正体重を維持する
  • 肉の脂身・動物脂・加工肉・鶏卵の大量摂取を控え、高LDLコレステロール血症の場合はコレステロール摂取量を1日200mg未満に抑える
  • 青魚などn-3系多価不飽和脂肪酸を含む魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を選ぶ
  • 未精製穀類・緑黄色野菜を含む野菜・海藻・大豆製品・ナッツ類の摂取を増やす
  • 糖質含有量の少ない果物を適度にとり、果糖を含む加工食品・ジュースの大量摂取を控える
  • アルコールはできるだけ控え、食塩は1日6g未満を目標にする

目標体重の目安は「身長(m)×身長(m)×BMI(kg/m²)」で計算する[4]。例えば身長165cm・70kgの60歳男性の場合、目標体重は1.65×1.65×20.0〜24.9=54.5〜67.8kgとなり、望ましい総エネルギー摂取量は「目標とする体重(kg)×身体活動量(軽い労作で25〜30、普通の労作で30〜35、重い労作で35〜)」で計算すると、約1,675〜2,010kcal、おおよそ1日1,800kcal程度が目安になる[4]。運動については、中強度以上の有酸素運動を毎日合計30分以上を目標に定期的に行うことが推奨されている[1]。

生活習慣の改善全体の進め方は、【脂質異常症】原因・診断基準と治療・生活でできる対策でも詳しく解説している。

第2段階:薬物療法の開始。生活習慣の改善だけで目標値に届かない場合、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が第一選択薬として使われる。すでに冠動脈疾患がある二次予防では、治療開始前のLDLコレステロールの値にかかわらず、発症早期から最大耐用量の強力なスタチンを第一選択にした薬物療法が推奨されており、個々のリスクに応じて目標値達成のための薬物療法の強化も検討される[1]。トリグリセライドが高いタイプでは、ペマフィブラート・ベザフィブラートなどのフィブラート系薬剤やエゼチミブ、EPA製剤の有効性が日本の臨床試験で示されている[1]。なお、他の病気や薬剤が原因の続発性(二次性)脂質異常症では、脂質を下げる薬より先に、原因となっている病気(甲状腺機能低下症など)の治療が優先される[1]。

薬をいつから始めるべきかの目安は、【コレステロールの薬はいつから?】脂質異常症で「薬が必要な数値」と生活習慣で様子を見る目安を解説でも扱っている。

第3段階:重症例・FHの管理。家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体では、一次予防でもLDL-Cの管理目標値を100mg/dL未満とすることが望ましいとされ、二次予防ではさらに厳格な管理が必要になる[2]。薬物療法でも目標値に届かない重症例では、体外循環装置で血液中からLDLコレステロールを選択的に吸着除去するLDLアフェレーシスが行われることもある[5]。

出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」[1]/同「成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022」[2]/厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症の食事」[4]

受診の目安:今すぐ救急受診か、専門医への紹介か、自宅で様子見か

脂質異常症そのものは自覚症状に乏しいが、動脈硬化が進んで血管が詰まると突然の発作を起こす。胸の強い痛みや締め付け感、突然の片側脱力やろれつが回らないといった症状は、心筋梗塞や脳梗塞の可能性がある救急受診の対象である[5]。

そこまで緊急ではないが、専門医への紹介が望ましい目安として、日本動脈硬化学会はLDLコレステロール180mg/dL以上、HDLコレステロール30mg/dL未満、空腹時トリグリセライド500mg/dL以上、原発性高脂血症疑い、続発性(二次性)脂質異常症疑いを挙げている[1]。腱黄色腫や、血のつながった家族に若くして心筋梗塞を起こした人がいる場合も、家族性高コレステロール血症(FH)を疑って早めの受診が望ましい[2]。

上記のいずれにも当てはまらず、診断基準に該当した段階であれば、まず3〜6か月間、生活習慣の改善に取り組みながら経過をみるのが基本的な流れになる[1]。治療を始めたあとも、動脈硬化が進んでいないかを定期的な血液検査に加えて、心臓・血管の超音波検査や運動負荷検査などで確認しながら治療を継続することが必要とされる[6]。健診で指摘されたまま様子を見てよいか迷う場合は、【高コレステロール】放置して大丈夫?原因・検査・治療と今日からできる対策をわかりやすく解説も参照してほしい。



日本と米国・欧州のガイドライン比較

項目 日本(日本動脈硬化学会 2022年版) 米国(ACC/AHA 2018年版)
目標設定の考え方 絶対リスク(久山町スコア)に応じたLDL-C・non-HDL-Cの絶対値目標[1] 10年ASCVDリスクに応じてスタチンの強度(LDL-Cを何%下げるか)を選ぶ方式が基本。ただしLDL-C190mg/dL以上はリスクスコアにかかわらず高強度スタチンを推奨[7]
二次予防・超高リスクのLDL-C目標 基本100mg/dL未満(急性冠症候群・FH合併・糖尿病合併など特にリスクが高い場合は70mg/dL未満)[1] ASCVD高リスクは50%以上低下、既往のある超高リスクは70mg/dL超でエゼチミブ・PCSK9阻害薬の追加を検討[7]
項目 日本(日本動脈硬化学会 2022年版) 欧州(ESC/EAS 2019年版)
超高リスクのLDL-C目標 二次予防の基本目標は100mg/dL未満[1] 超高リスク(一次予防・二次予防とも)はベースラインから50%以上低下かつLDL-C55mg/dL未満[8]
高リスクのLDL-C目標 一次予防高リスクは120mg/dL未満(糖尿病合併等では100mg/dL未満)[1] 高リスクは50%以上低下かつ70mg/dL未満[8]

出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」[1]/National Lipid Association「2018 Guideline on the Treatment of High Blood Cholesterol — Education for Clinicians」臨床医向け資料[7]/ESC/EAS「2019 Guidelines for the management of dyslipidaemias」[8]

もっとも数値の差が目立つのは、心筋梗塞や脳梗塞をすでに経験した、もっともリスクが高い人への目標値である。日本は二次予防の基本目標をLDL-C100mg/dL未満とし、急性冠症候群やFH合併など特にリスクが高い病態に限って70mg/dL未満とする2段構えだが[1]、米国は既往のある超高リスクでLDL-Cが70mg/dLを超える場合にエゼチミブ・PCSK9阻害薬の追加を検討する閾値として70mg/dLを用いており、これは目標値としての設定ではない[7]。欧州は超高リスク全体に55mg/dL未満という目標値を求める[8]。同じ二次予防・超高リスクの患者でも、数値として設定された目標値の厳しさは日本がもっとも緩やかで、欧州がもっとも厳しい。

この差は、日本が遅れているという単純な話ではない。日本動脈硬化学会のガイドライン自体が、脳卒中のうち脳梗塞は欧米と同様にLDLコレステロール高値と関連する一方、出血性脳卒中(主に脳内出血)についてはLDLコレステロールや総コレステロールが低いレベルの方がむしろ発症率・死亡率が高くなるという、日本人のデータを踏まえた懸念に触れている[1]。ただし同ガイドラインは、薬物療法でLDLコレステロールを低下させた臨床試験では脳内出血リスクの上昇は認められていないとも述べており、コレステロール値が低いこと自体と薬で下げることは分けて考える必要がある[1]。米国のプールドコホート式や欧州のSCOREリスクチャートのようなリスク評価ツールも、それぞれの国・地域の疫学データから作られたものであり、日本人にそのまま当てはめると絶対リスクを見誤る可能性がある[1]。ガイドラインの数値の違いは集団ごとの疾患構造の違いを反映したものであり、どちらが正しいかではなく、自分がどの集団のデータに基づく目標値で治療されているかを知ることが重要になる。

リスクの測り方そのものも国・地域ごとに異なる。日本動脈硬化学会は福岡県久山町の地域住民を長期追跡した久山町研究のデータから作られたスコアを使い、性別・収縮期血圧・糖代謝異常・LDLコレステロール・HDLコレステロール・喫煙の点数を合計し、年齢階級別の表にあてはめて10年間の絶対リスクを算出する[1]。米国ACC/AHAは性別や人種による動脈硬化性疾患の頻度の違いを考慮したプールドコホート式(Pooled Cohort Equation)で10年ASCVDリスクを算出し、190mg/dL以上の高LDLコレステロール血症についてはこのリスク計算を経ずに一律で高強度スタチンを推奨する点が特徴的である[1]。欧州ESC/EASは国・地域ごとの心血管死亡率で調整したSCOREリスクチャートを用いる[1]。同じ10年リスク◯%という表現でも、算出のもとになった集団が異なるため、単純に数字だけを比較することはできない。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

よくある質問(FAQ)

コレステロールの薬はいつから飲む必要がありますか?
診断基準に当てはまってもすぐに薬が必要になるわけではなく、一次予防では原則3〜6か月間、生活習慣の改善を行ったうえで薬物療法を検討する[1]。ただしLDLコレステロールが180mg/dL以上の場合は、生活改善と並行して薬物療法が考慮されることがある[1]。
コレステロールの薬は一生飲み続ける必要がありますか?
動脈硬化はいったん進んだ血管が自然に元通りになるわけではなく、治療の目的はそれ以上進めないことにあるため、多くの場合は継続した管理が必要になる。自己判断での中止は避け、必要性は主治医と相談して決めることになる[1]。
LDLコレステロールを下げる食べ物・下げ方はありますか?
LDLコレステロール高値の第一の原因は食事中の飽和脂肪酸のとりすぎで、肉の脂身・バター・生クリームなどを控えることが効果的とされる[3]。食物繊維を含む野菜・海藻・大豆製品を増やすことも血中脂質の改善につながる[4]。
Non-HDLコレステロールとは何ですか?LDLと何が違いますか?
Non-HDLコレステロールは総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値で、LDLだけでなく動脈硬化を進める他のリポたんぱくも含む。空腹時でなくても測定でき、トリグリセライドが400mg/dL以上の場合や随時採血ではLDL-Cの代わりに用いられる[1]。診断基準は170mg/dL以上が高値とされる[1]。
健康診断でコレステロールが高いと言われたら、放置して大丈夫ですか?
脂質異常症は自覚症状がほとんどないまま動脈硬化を進めるため、症状がないことは安全の証拠にはならない[5]。診断基準に当てはまった場合は、まず自分がどのリスク区分に入るかを確認し、生活習慣の改善から始めることが推奨される[1]。
家族性高コレステロール血症(FH)かもしれないと思ったら、どうすればいいですか?
未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上あり、腱黄色腫や、血のつながった家族に55歳未満(男性)・65歳未満(女性)で心筋梗塞を起こした人がいる場合はFHが疑われる[2]。FHは専門医への紹介が勧められる病態である[1]。
中性脂肪(トリグリセライド)が高いとどうなりますか?
中性脂肪の高値はHDLコレステロールの低下と連動しやすく、動脈硬化を進める方向に働く[3]。原因はエネルギーの摂りすぎ、特に甘いもの・酒・油もの・糖質の摂りすぎで、運動や減量によって改善が期待できる[3]。
HDLコレステロール(善玉)が低い場合はどうすればいいですか?
HDLコレステロールの低値は肥満・喫煙・運動不足と関連することが多く、運動や減量、禁煙によって上昇が見込める[3]。なおHDLコレステロールは単独では薬物介入の対象とはならない[1]。
コレステロール値の検査は空腹時でないと測れませんか?
LDLコレステロールをFriedewald式(総コレステロール−HDLコレステロール−トリグリセライド/5)で算出する場合は空腹時採血が必要だが、直接法やnon-HDLコレステロールを用いれば随時採血でも評価できる[1]。ただしトリグリセライドの基準値は空腹時と随時で異なる[1]。
脂質異常症は遺伝しますか?
生活習慣に由来する一般的な脂質異常症は、生活習慣と体質が組み合わさって起こることが多いが、家族性高コレステロール血症のようにLDL受容体遺伝子の変異が原因で、親から子へ高い確率で受け継がれるタイプもある[2]。血のつながった家族に脂質異常症や若年での心筋梗塞が多い場合は、体質だけでなく遺伝的要因を疑って検査を受けることが勧められる[6]。
続発性(二次性)脂質異常症とはどんな場合に疑いますか?
甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・糖尿病、ステロイドなどの薬剤が原因で脂質値が上がっている状態を続発性(二次性)脂質異常症という[1]。この場合は脂質を下げる薬より先に原因となっている病気の治療が優先され、原疾患が改善すると脂質値も改善することが多い[1]。
妊娠中にコレステロールが高いと言われたら、どうすればいいですか?
妊娠中は生理的にコレステロール値が上昇しやすい時期であり、非妊娠時の基準値をそのまま当てはめられるかどうかを含め、今回参照した資料には妊娠時特有の診断基準についての詳しい記載は見当たりませんでした。気になる場合は産科・内科の主治医に相談してください。

コレステロール・脂質異常症に関する記事一覧

記事一覧 37件

検査・数値 5

食事・生活 7

治療・薬 16

合併症・リスク 1

その他 8

本記事は日本動脈硬化学会・厚生労働省・国立循環器病研究センター・米国ACC/AHA・欧州ESC/EASの資料をもとに構成していますが、続発性脂質異常症の原疾患ごとの薬剤選択や、家族性複合型高脂血症以外のまれな原発性脂質異常症の詳しい管理方針、妊娠中に特有の基準値については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。気になる場合は主治医または脂質代謝の専門医に相談してください。

参考文献

  1. 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」2022 j-athero.org(第3章PDF)
  2. 日本動脈硬化学会「成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022」2022 j-athero.org(FHガイドラインPDF)
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」(最終更新2022年12月23日) kennet.mhlw.go.jp
  4. 厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症の食事」(最終更新2025年5月1日) kennet.mhlw.go.jp
  5. 国立循環器病研究センター病院「脂質異常症」(患者の皆様へ) ncvc.go.jp
  6. 国立循環器病研究センター冠疾患科「脂質異常症」 ncvc.go.jp/coronary2
  7. National Lipid Association「2018 Guideline on the Treatment of High Blood Cholesterol — Education for Clinicians from the National Lipid Association」(原典:Grundy SM, et al. Circulation. 2019;139:e1082-e1143) lipid.org
  8. ESC/EAS「2019 Guidelines for the management of dyslipidaemias」European Heart Journal 2019 eas-society.org