脂質異常症|原因・診断基準と治療・生活でできる対策
この記事でわかること
目次
- 要点まとめ
- 自分の数値をすぐ確認:脂質異常症セルフチェック早見表
- 脂質異常症とは?血管の中で起きていること
- 日本の診断基準とリスク管理:JAS 2023年版ガイドライン解説
- 日本における脂質異常症の疫学:全体像
- 根本原因を探る:遺伝的要因(原発性)と生活習慣(続発性)
- 治療の土台:包括的な生活習慣改善プロトコル
- 高度な治療:薬物療法の選択肢の概要
- 日本と欧米のガイドライン比較
- 他の生活習慣病との重なり — 複合リスクという考え方
- 妊娠中・高齢者など特別な配慮が必要な場合
- 子ども・若年者の脂質異常症について
- 職場・地域の健康診断とどう付き合うか
- 治療を続けるモチベーションを保つコツ
- 治療方針を医師と話し合うときのポイント
- この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
- 相談先の探し方
- 日本の患者のための実用情報:保険適用と費用
- 反証と不確実性
- 自己監査:潜在的な誤りと対策
- よくある質問
- 本記事で扱わなかったこと
- スタチンとフィブラート系薬剤の併用に関する注意
- 主要数値
- この記事の情報源についての注記
- 関連情報へのリンク集
- 参考文献
- 更新履歴
- 免責事項
- 利益相反の開示
- 結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
結論から言うと
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
脂質異常症は、LDLコレステロール140mg/dL以上・HDLコレステロール40mg/dL未満・中性脂肪150mg/dL以上(非空腹時175mg/dL以上)のいずれかに当てはまると診断される、動脈硬化を静かに進める状態です(日本動脈硬化学会の指針)[1]。
自覚症状はほとんどなく、放置すると心筋梗塞や脳梗塞につながります。厚生労働省の集計では治療を受けている人だけで約401万人にのぼり[3]、健康診断で指摘されたら症状がなくても医療機関を受診し、日本動脈硬化学会のガイドラインに沿った生活習慣改善・必要に応じた薬物療法を始めることが重要です[1]。
要点まとめ
- 診断基準はLDL-C 140mg/dL以上・HDL-C 40mg/dL未満・中性脂肪150mg/dL以上(非空腹時175mg/dL以上)のいずれか1つでも該当すること[1]。
- 2007年に日本動脈硬化学会が病名を「高脂血症」から「脂質異常症」へ変更した理由は、HDLコレステロールが低い状態もリスクだと分かったため[2]。
- 厚生労働省の患者調査(令和2年)では治療中の患者数は約401万人と報告されている[3]。
- 治療の土台は生活習慣改善(食事・運動)であり、薬物療法が始まっても並行して続けるべきとされている[2]。
- 自覚症状がほぼないため、健康診断で「要再検査」「要治療」と言われたら、症状がなくても受診が必要[4]。
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、厚生労働省・日本動脈硬化学会などの公的機関・学会情報およびCochraneレビュー等の査読文献と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っていますが、医師による個別診断の代わりにはなりません。診断基準・数値は今後のガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報です)。
自分の数値をすぐ確認:脂質異常症セルフチェック早見表
| 検査項目 | 基準値(mg/dL) | 該当した場合 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140以上(120〜139は境界域) | 高LDLコレステロール血症 [1] |
| HDLコレステロール | 40未満 | 低HDLコレステロール血症 [1] |
| 中性脂肪(トリグリセリド) | 150以上(空腹時)/175以上(非空腹時) | 高トリグリセリド血症 [1] |
| Non-HDLコレステロール | 170以上(150〜169は境界域) | 高non-HDLコレステロール血症 [1] |
1つでも該当したら、症状がなくても内科・循環器内科の受診を検討してください。実際の治療方針(薬を始めるかどうか)は、この数値だけでなく年齢・喫煙・血圧・糖尿病の有無などを合わせた総合的なリスク評価で決まります(日本動脈硬化学会の指針)[1]。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
脂質異常症とは?血管の中で起きていること
脂質異常症とは、血液中のコレステロールや中性脂肪の値が基準値から外れた状態です(日本動脈硬化学会の指針)[2]。日本動脈硬化学会は2007年に、それまでの「高脂血症」という病名を「脂質異常症」へ改めました。「高脂血症」は脂質が高い状態しか表せませんが、研究が進み、HDL(善玉)コレステロールが低いこと自体も動脈硬化のリスクになると分かったためです[2]。
脂質異常症は主に3タイプに分かれます。LDLコレステロールが多すぎる「高LDLコレステロール血症」、HDLコレステロールが少なすぎる「低HDLコレステロール血症」、中性脂肪が多すぎる「高トリグリセリド血症」です(日本動脈硬化学会の解説)[4]。血中のLDLコレステロールが過剰になると、血管の一番内側にある内皮細胞の隙間から血管壁の中へ入り込み、酸化されて「酸化LDL」に変化します。体はこれを異物とみなし、マクロファージという免疫細胞を送り込んで処理させますが、酸化LDLを大量に取り込んだマクロファージは「泡沫細胞」となり、血管壁に蓄積していきます。この泡沫細胞の死骸やコレステロールの塊が、おかゆのようなドロドロした物質「プラーク(粥腫)」を形成し、これが動脈硬化の始まりです(日本動脈硬化学会の解説)[4]。プラークが大きくなるにつれて血管の内腔は狭くなり、同時に血管の壁は弾力性を失って硬くもろくなっていきます。プラークが破れると血栓ができて血流を塞ぎ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします(日本動脈硬化学会の解説)[4]。中性脂肪が高い場合は、LDLコレステロールが小型化して血管壁に入り込みやすくなり、HDLコレステロールが減りやすくなるため、間接的に動脈硬化を進めます。一方、HDLコレステロールは血管壁にたまった余分なコレステロールを回収して肝臓へ戻す「掃除役」の働きを持ち、これが低下すると動脈硬化が進みやすくなります(日本動脈硬化学会の解説)[4]。
脂質異常症が「サイレントキラー」と呼ばれる最大の理由は、病気がかなり進行するまでほとんど自覚症状を示さない点にあります[4]。血圧が高いと頭痛がすることがありますが、コレステロールや中性脂肪が高いからといって、体に痛みや不調を感じることはまずありません。血管が狭くなるだけならゆっくり症状が現れることもありますが(歩くと胸が痛む狭心症など)、最も恐ろしいのはプラークが突然破れ、血栓が血管を完全にふさいでしまうケースです。心臓の冠動脈で起これば心筋梗塞、脳の動脈で起これば脳梗塞となり、昨日まで元気だった人が突然倒れる事態につながります(日本動脈硬化学会の解説)[4]。非常に稀ですが、家族性高コレステロール血症のように極端にLDLコレステロール値が高い場合は、まぶたや肘・膝にできる黄色いしこり(黄色腫)やアキレス腱が太くなる(アキレス腱黄色腫)などの身体的サインが現れることがあります(日本動脈硬化学会のガイドライン)[5]。しかし、ほとんどの脂質異常症ではこのようなサインは見られず、唯一の確実な発見方法は定期的な血液検査です。
日本の診断基準とリスク管理:JAS 2023年版ガイドライン解説
日本における脂質異常症の診断は、日本動脈硬化学会(JAS)が発行する動脈硬化性疾患予防ガイドラインの基準に基づきます[1]。同学会は2023年に「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」を公開し、従来の空腹時採血に加えて、食事の影響を受ける非空腹時採血における中性脂肪の基準値(175mg/dL以上)を明確化しました[2]。
| 脂質指標 | 基準値(mg/dL) | 分類 |
|---|---|---|
| LDLコレステロール | 140以上 | 高LDLコレステロール血症 |
| 120〜139 | 境界域高LDLコレステロール血症 | |
| HDLコレステロール | 40未満 | 低HDLコレステロール血症 |
| トリグリセリド(中性脂肪) | 150以上(空腹時) | 高トリグリセリド血症 |
| 175以上(非空腹時) | ||
| Non-HDLコレステロール | 170以上 | 高non-HDLコレステロール血症 |
| 150〜169 | 境界域高non-HDLコレステロール血症 |
出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」[1]
基準に当てはまったからといって、全員がすぐ薬物治療を始めるわけではありません。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、年齢・喫煙・血圧・糖尿病の有無など他の危険因子を合わせて将来の心血管疾患リスクを評価し、リスクの高さに応じて生活習慣改善を優先するか薬物療法を検討するかを判断する枠組みが示されています[1]。具体的な管理目標値は個々の危険因子によって異なるため、健診結果を持って医師に相談することが推奨されます。
従来、脂質検査は10時間以上の絶食を伴う空腹時採血が基本とされてきましたが、日本動脈硬化学会の2023年版ガイドでは、食事の影響を受ける非空腹時(随時)採血における中性脂肪の基準値(175mg/dL以上)が明確化され、健康診断などで偶然発見される機会が広がりました[2]。とはいえ、より正確な評価のために医師から空腹時採血を指示されることもあります。健診の案内に「絶食」「空腹時」の指示がある場合は、指示に従って受診することが推奨されます。また、直前の激しい運動や大量の飲酒は数値に影響することがあるため、検査前日の生活にも注意が必要です。数値は日によって変動することもあるため、1回の結果だけで一喜一憂せず、複数回の結果や医師の総合判断を踏まえることが大切です。
日本における脂質異常症の疫学:全体像
日本の公的統計データは、脂質異常症が国民的な健康課題であることを示しています。厚生労働省の令和2年(2020年)患者調査によると、脂質異常症の治療を継続的に受けている患者の総数は約401万人と報告されています[3]。これは医療機関で診断され、定期的に通院している人の数であり、健康診断で基準値を超えているのに未受診の「隠れ患者」を含めると、実際にリスクを抱える人はさらに多いと考えられています[2]。
脂質異常症の傾向は年齢や性別によって特徴があります。厚生労働省の国民健康・栄養調査では、加齢に伴い有病率が上昇する傾向が示されています[2]。また、50歳前後を境に男女の傾向が変わりやすいことが知られています。閉経に伴い女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ることが、女性の脂質プロファイルが変化しやすい一因と考えられています[4]。閉経後の女性は脂質異常症のリスクが上がりやすいことを念頭に、定期的な血液検査と生活習慣の見直しが重要です。
根本原因を探る:遺伝的要因(原発性)と生活習慣(続発性)
脂質異常症の原因は「原発性」と「続発性」に分けられます。原発性は生まれ持った遺伝子の変異が原因で脂質代謝そのものに問題があるタイプで、代表例が家族性高コレステロール血症(FH)です(日本動脈硬化学会のガイドライン)[5]。日本動脈硬化学会のFHガイドラインでは、日本人におけるヘテロ接合体FHの頻度は約200〜500人に1人と推定されており、決して稀な病気ではないとされています[5]。FHはLDL受容体などの遺伝子変異によりLDLコレステロールが生まれつき高く、食事や運動に関係なく発症し、未治療のまま放置すると若年(目安として男性55歳未満・女性65歳未満)で心筋梗塞を起こすリスクが高いとされています(日本動脈硬化学会のガイドライン)[5]。FHが疑われる場合、生活習慣の改善だけでLDLコレステロール値を目標まで下げることは難しいことが多く、早期からの積極的な薬物治療と専門医への相談が重要とされています[5]。
続発性脂質異常症は脂質異常症の大部分を占め、後天的な要因で起こります(日本動脈硬化学会の解説)[4]。動物性脂肪(肉の脂身・バターなど)やトランス脂肪酸の多い食事はLDLコレステロールを上げ、糖質やアルコールの摂りすぎは中性脂肪を上げます。運動不足はHDLコレステロールを下げ、内臓脂肪型の肥満は中性脂肪を増やしHDLコレステロールを減らす典型的なパターンと関連します。喫煙はHDLコレステロールを減少させ、血管内皮を傷つけて動脈硬化を直接進めます(日本動脈硬化学会の解説)[4]。また、甲状腺機能低下症や腎臓病(ネフローゼ症候群)、糖尿病、ステロイドなど一部の薬剤も、二次的に脂質異常症を引き起こすことがあります(日本動脈硬化学会の解説)[4]。この場合は、脂質そのものへの対処だけでなく、原因となっている病気の治療を並行して進めることが脂質代謝の改善につながります。健康診断で脂質異常を指摘された際に、他の持病がある場合は、その治療歴もあわせて医師に伝えることが大切です。
治療の土台:包括的な生活習慣改善プロトコル
脂質異常症の治療は生活習慣の改善が基本であり、薬物治療が必要になった場合でも並行して続ける必要があります(日本動脈硬化学会の指針)[2]。日本動脈硬化学会のガイドラインでは、飽和脂肪酸を減らし食物繊維の多い食品を増やすことがLDLコレステロール低下に有効だとされています[2]。
| 栄養素 | 方向性 | 主な食品源・対策 |
|---|---|---|
| 飽和脂肪酸(肉の脂身・バターなど) | 減らす | 赤身肉を選び、加工肉(ソーセージ・ベーコン)を控える[2] |
| トランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング) | できる限り控える | 成分表示を確認する習慣をつける[2] |
| 糖質・アルコールの過剰摂取 | 控える | 中性脂肪を上げやすいため量を見直す[2] |
| 青魚(サバ・イワシ・サンマ) | 増やす | 中性脂肪を下げやすいn-3系脂肪酸を含む[2] |
| 食物繊維(野菜・海藻・未精製穀物) | 増やす | コレステロールの吸収を抑えると考えられている[2] |
出典:日本動脈硬化学会「脂質異常症診療ガイド2023年版」の食事療法に関する記載を基に編集部作成[2]
食事療法では「減らすもの」だけでなく「増やすもの」を意識することも重要です。サバ・イワシ・サンマなどの青魚に含まれるn-3系脂肪酸は、中性脂肪を低下させる働きがあるとされています(日本動脈硬化学会の指針)[2]。オリーブオイルやキャノーラ油に含まれる一価不飽和脂肪酸、大豆油やコーン油に含まれるn-6系脂肪酸も、動物性脂肪の代わりに使うことでLDLコレステロールの改善に役立つと考えられています。野菜・きのこ・海藻・玄米や全粒粉パンなどの未精製穀物に多い水溶性食物繊維は、腸内でコレステロールの吸収を抑える働きがあるとされ、日本動脈硬化学会のガイドラインでも食物繊維の摂取が推奨されています[2]。大豆製品や野菜、海藻に含まれる植物ステロールも、腸でのコレステロール吸収を競合的に阻害すると考えられています。これらは薬物療法の代わりになるものではありませんが、生活習慣改善の柱として、無理のない範囲で日々の食事に取り入れることが勧められます。
運動については、厚生労働省 e-ヘルスネットの生活習慣病予防に関する情報でも、中強度以上の有酸素運動を定期的に行うことが推奨されています[2]。ウォーキングや軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動はHDLコレステロールを増やし、中性脂肪を減らす効果が期待できるとされ、週150分程度を目安に、無理のない範囲で継続することが大切です(日本動脈硬化学会の指針)[2]。禁煙も、それ自体が動脈硬化の危険因子であるため必須とされています(日本動脈硬化学会の解説)[4]。禁煙が難しい場合は、自己流でやめようとするより、禁煙外来などの専門的なサポートを利用する方法もあります。喫煙・飲酒・体重といった生活習慣は、薬物療法の効果を左右する要因でもあるため、通院時に医師へ現状を正直に伝えることが治療計画の精度を高めます。アルコールについては、過剰な摂取が肝臓での中性脂肪合成を促進するため、飲みすぎには注意が必要です(日本動脈硬化学会の解説)[4]。体重管理については、特に内臓脂肪型の肥満が中性脂肪の増加とHDLコレステロールの低下に関連が深いとされており、極端な食事制限よりも、無理なく続けられる食事と運動の組み合わせで、時間をかけて内臓脂肪を減らしていくことが現実的とされています(日本動脈硬化学会の解説)[4]。これらはどれも一朝一夕には変わりませんが、薬物療法の効果を後押しし、将来の心血管疾患リスクを下げるうえで欠かせない土台です。
高度な治療:薬物療法の選択肢の概要
生活習慣の改善を一定期間続けても脂質管理目標を達成できない場合や、心血管疾患のリスクが高い場合には薬物療法が検討されます。第一選択薬は主にスタチン系薬剤です(日本動脈硬化学会の指針)[1]。
| 薬剤群 | 主な作用 | 位置づけ |
|---|---|---|
| スタチン系薬剤 | 肝臓でのコレステロール合成を抑え、LDLコレステロールを低下させる | 第一選択薬[1] |
| エゼチミブ | 小腸でのコレステロール吸収を阻害 | スタチン効果不十分・不耐容時の併用・代替薬[7] |
| PCSK9阻害薬 | LDL受容体の分解を防ぎLDLコレステロールを強力に低下 | 家族性高コレステロール血症やスタチン最大量でも効果不十分な高リスク例[5] |
Cochraneレビュー(Taylor F, et al. 2013)は、心血管疾患の既往がない集団(一次予防)を対象にした複数の無作為化比較試験を統合し、スタチンが総死亡・心血管イベントを減少させたと報告しています[6]。効果の大きさは対象集団のベースラインリスクによって変わるため、同レビューは絶対リスクが低い集団ではイベント予防による利益と、筋肉症状や肝機能への影響などの不利益とのバランスを個別に検討する必要があるとしています[6]。日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)は、スタチン服用中に原因不明の筋肉痛・脱力感・褐色尿が出た場合は横紋筋融解症の可能性があるため速やかに医師へ相談するよう注意喚起しています[8]。エゼチミブとスタチンの併用については、システマティックレビューのプロトコルで有効性・安全性の統合解析が進められています[7]。
スタチンなどの薬物治療を始めた後は、定期的な検査で効果と安全性を確認します。一般的な目安として、脂質パネル(LDL-C・HDL-C・TG)は治療開始後1〜3か月、その後は安定すれば半年〜1年ごとに測定されます。肝機能(AST・ALT)も治療開始後1〜3か月を目安に確認されることが多く、CK(クレアチンキナーゼ)は筋肉に関連する症状(痛み・脱力感)が出た場合に測定されます(PMDAの情報)[8]。具体的な検査間隔は、使用する薬剤や個々の状態によって医師が判断します。効果の現れ方には個人差がありますが、一般にLDLコレステロールの低下は治療開始後数週間で見られ始め、その後の経過で効果が安定していくとされています。3か月以上治療を継続しても脂質管理目標を達成できない場合や、説明のつかない筋肉の痛み・倦怠感・褐色尿などが出現した場合は、速やかに医師に相談することが重要です(PMDAの情報)[8]。
薬物治療をいつまで続けるべきか、あるいは減量・中止できるタイミングの個別具体的な判断については、今回参照した公的資料には一般化した記載が見当たりませんでした。生活習慣の改善状況や検査値の推移を踏まえ、主治医と相談のうえ判断することが必要です。
日本と欧米のガイドライン比較
| 項目 | 日本(日本動脈硬化学会 2022/2023年版) | 米国(ACC/AHA系レビュー・Cochrane 2013) |
|---|---|---|
| 診断の切り口 | LDL-C・HDL-C・TG・non-HDL-Cの4指標+危険因子によるリスク層別化[1] | 心血管リスクスコアを用いて治療開始を判断する考え方が主流[6] |
| 非空腹時TG基準 | 175mg/dL以上を明確に基準化(2023年版)[2] | 研究により採血条件の扱いが異なる[6] |
| 第一選択薬 | スタチン系薬剤[1] | スタチン系薬剤(Cochraneレビューが一次予防での有効性を支持)[6] |
両者とも「まずスタチンで治療」という大枠は共通していますが、日本のガイドラインは日本人の疫学データに基づく独自のリスク評価法を採用している点が異なります[1]。海外の大規模試験の対象者は欧米人が中心であるため、体格や遺伝的背景が異なる日本人にそのまま数値を当てはめられるとは限らない点に注意が必要です。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
他の生活習慣病との重なり — 複合リスクという考え方
脂質異常症は単独で存在するよりも、高血圧・糖尿病・喫煙・肥満など他の危険因子と重なって存在することが多く、それぞれの危険因子が組み合わさることで心血管疾患のリスクは相乗的に高まるとされています(日本動脈硬化学会の指針)[1]。そのため日本動脈硬化学会のガイドラインでは、LDLコレステロールなど個々の数値だけでなく、年齢・性別・喫煙・血圧・糖尿病の有無といった因子を総合したリスク評価に基づいて、生活習慣改善を優先するか薬物療法を検討するかを判断する考え方が採用されています[1]。健康診断で脂質異常症を指摘された際には、血圧や血糖値など他の項目もあわせて確認し、複数の項目に異常がある場合は特に早めに医療機関へ相談することが勧められます。糖尿病や高血圧をあわせ持つ人は、脂質の数値が軽度の異常であっても、医師が薬物療法をより積極的に検討することがあります(日本動脈硬化学会の指針)[1]。
妊娠中・高齢者など特別な配慮が必要な場合
妊娠中・授乳中の方は、胎児・乳児への影響が懸念されるため、スタチンなど一部の脂質異常症治療薬は原則として使用できないとされています(日本動脈硬化学会の指針)[1]。妊娠を希望する場合や妊娠が分かった場合は、自己判断で薬を中止・変更せず、必ず主治医に相談してください。高齢者では、複数の持病や薬剤を併用していることが多く、薬物相互作用や副作用のリスクを踏まえて、より慎重な用量調整とモニタリングが行われる傾向があります。腎機能や肝機能の状態によっても薬剤の選択が変わるため、お薬手帳を活用し、服用中の薬をすべて医師・薬剤師に伝えることが安全な治療につながります。市販薬やサプリメントも自己判断で追加せず、必ず申告してください。
子ども・若年者の脂質異常症について
脂質異常症は中高年の病気というイメージが強いですが、家族性高コレステロール血症のような遺伝性の脂質異常症は、子どもや若年者にも見られます(日本動脈硬化学会のガイドライン)[5]。日本動脈硬化学会は、小児期のFHについても診療ガイドラインを整備しており、家族に若くして心筋梗塞になった人がいる場合や、健診で著しい脂質異常が見つかった場合は、子どもであっても専門医への相談が検討されます[5]。子どもの生活習慣(食事・運動・スクリーンタイムなど)が将来の脂質プロファイルに影響することも指摘されており、家族全体で食習慣を見直すことが、本人だけでなく将来世代の予防にもつながると考えられています。学校健診などで指摘があった場合は、自己判断せず、まず小児科またはかかりつけ医に相談することが勧められます。子どもの場合は成長段階に応じた評価が必要なため、成人向けの基準値をそのまま当てはめず、必ず専門医の判断を仰ぐことが大切です。
職場・地域の健康診断とどう付き合うか
多くの会社員は年に1回の定期健康診断で脂質項目(LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪)を測定しています。40歳以上を対象とした特定健診(いわゆるメタボ健診)でも、これらの項目は基本的な検査項目に含まれています。結果票に「要再検査」「要精密検査」の判定がある場合、多くの人が「忙しいから」「症状がないから」と再受診を後回しにしがちですが、脂質異常症は自覚症状がないまま進行するからこそ、健診で見つかったタイミングを逃さないことが重要です(厚生労働省の調査)[2]。健診結果は使い捨てにせず、数年分をファイルにまとめておくと、数値の変化の傾向(悪化しているのか、改善しているのか)を医師と一緒に確認しやすくなります。特定保健指導の対象になった場合は、保健師や管理栄養士による無料の生活改善サポートを受けられることもあるため、案内が来た際は積極的に活用することが勧められます。
治療を続けるモチベーションを保つコツ
脂質異常症の治療は数か月〜数年単位の長い付き合いになることが多く、症状がない分、途中で通院や服薬が続かなくなってしまう人も少なくありません。継続のコツとしてよく挙げられるのは、数値の変化を記録して「見える化」すること、家族や周囲にも取り組みを共有すること、そして小さな達成(例えば「今月はLDLコレステロールが5下がった」など)を医師と一緒に確認しながら進めることです。完璧な食事や毎日の運動を最初から目指すのではなく、まずは「夕食の揚げ物を週1回に減らす」「エレベーターより階段を使う」といった無理のない一歩から始め、3〜6か月ごとに振り返って調整していく姿勢が、長期的な数値改善につながりやすいとされています(日本動脈硬化学会の指針)[2]。薬を飲み始めた場合も、「一生治らない病気になった」と捉えるのではなく、「将来の心筋梗塞・脳梗塞を防ぐための前向きな管理」として位置づけることが、治療を続けるうえで助けになります。
治療方針を医師と話し合うときのポイント
診察の限られた時間の中で、聞きたいことを聞き逃してしまう患者さんは少なくありません。あらかじめ「今の数値はどのカテゴリに入るのか」「生活習慣改善だけで様子を見る期間はどれくらいか」「薬を始めるとしたらどんな薬か、副作用は何に注意すればよいか」「次回の採血はいつか」といった質問をメモしておくと、限られた診察時間を有効に使えます。数値や専門用語について分からない点があれば、遠慮せずその場で聞き返すことも大切です。理解が曖昧なまま帰宅すると、治療方針を誤解したまま自己判断してしまうリスクがあります。医師とのコミュニケーションを重ねることが、長期的な治療継続の土台になります。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
本記事は、厚生労働省・日本動脈硬化学会などの公的機関・学会が公開する一次資料、およびCochraneレビューなど査読を経た系統的レビューを優先して参照しました。診断基準・数値は日本動脈硬化学会のガイドライン記載を基準とし、日本人データが利用可能な場合はそれを優先しています。個人のブログや商業クリニックサイト、まとめサイトは情報源として使用していません。全ての参考文献のURLは公開時点でアクセス可能であることを確認しています。
相談先の探し方
脂質異常症についてさらに詳しく相談したい場合は、まずかかりつけの内科医に相談するのが基本です。より専門的な評価が必要な場合や、家族性高コレステロール血症が疑われる場合は、日本動脈硬化学会の公式サイトで専門医・認定施設に関する情報を確認できます[1]。薬の副作用が心配な場合は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)が公開している医薬品の安全性情報も参考になります[8]。地域の医療機関を探す際は、厚生労働省の医療機能情報提供制度(ナビイ)が便利です[10]。
日本の患者のための実用情報:保険適用と費用
医師によって脂質異常症と診断され、治療が必要と判断された場合、診療にかかる費用は原則として公的医療保険の対象となります。保険が適用される主な項目は、医師の診察・相談料、診断や経過観察に必要な血液検査費用、処方される治療薬の薬剤費です(厚生労働省の情報)[9]。一方、健康診断そのものや、「異常なし」「経過観察」で治療に至らない場合の再検査費用は保険適用外となることがあるため注意が必要です(厚生労働省の情報)[9]。
専門施設を探す際は、厚生労働省が提供する医療機能情報提供制度(ナビイ)で地域や診療科目から医療機関を検索できます[10]。日本動脈硬化学会の公式サイトでも、脂質異常症の診療に精通した専門医がいる認定施設の情報を確認できます[1]。地域の保健所や自治体の窓口でも、健康相談や特定健診に関する案内を受けられる場合があります。
脂質異常症と診断された場合、新たに民間の生命保険や医療保険に加入する際には告知義務があり、保険会社は告知内容に基づいて加入の可否を判断します。数値が基準値をわずかに超える程度で服薬治療をしておらず他の合併症もない場合は、通常の保険に加入できる可能性が比較的高いとされます。一方、服薬治療中の場合は通常の保険への加入が難しくなることがありますが、引受基準緩和型の医療保険など加入条件が緩やかな商品が選択肢になることもあります。これらは保険会社ごとの商品設計によるため、詳細は各保険会社・代理店に確認することが必要です。また、日本では医師が発行する運動療法処方箋に基づき、厚生労働省が認定した指定運動療法施設を利用した場合、その利用料が医療費控除の対象となる制度があります[9]。全ての施設が対象ではないため、利用を検討する際はかかりつけ医や施設に確認してください。
本記事で紹介した医療費や制度は全国的な原則ですが、詳細な助成制度や利用できる施設は地域によって異なります。以下の方法で、お住まいの地域での最新情報を確認できます。
- 厚生労働省 診療報酬点数表: 診療行為ごとに定められた点数に10円を乗じたものが総医療費です。自己負担額は通常この1〜3割です[9]。
- PMDA(医薬品医療機器総合機構): 処方された薬の公定価格(薬価)や安全性情報を確認できます[8]。
- 医療機能情報提供制度(ナビイ): 厚生労働省が提供する公式サイトで、地域や診療科目から医療機関を検索できます[10]。
- 自治体・保健所への問い合わせ: 「[お住まいの市区町村名] 国民健康保険 特定健診」などのキーワードで自治体サイトを検索するか、地域の保健所に問い合わせると、健康相談や利用できる制度の情報が得られます。
反証と不確実性
- 日本人データと欧米データの違い: 主要な大規模臨床試験の多くは欧米人を中心に行われています。日本人は欧米人に比べて体格や遺伝的背景、食生活が異なるため、薬の効果や副作用の現れ方が異なる可能性があります。日本動脈硬化学会が独自の基準や評価法を用いているのはこのためですが、すべての治療法で日本人固有の十分なデータがあるわけではありません[1]。
- 一次予防における利益と不利益のバランス: 心血管疾患の既往がない人(一次予防)に対するスタチン治療の利益については、対象集団のベースラインリスクによって評価が分かれます。Cochraneレビューは、絶対リスクが低い集団ではイベント予防の利益と副作用の不利益のバランスを個別に検討する必要があると指摘しています[6]。
- HDLコレステロールを標的とした治療の限界: HDLコレステロールが低いことがリスクであることは知られていますが、薬物によってHDLコレステロール値を上げても心血管イベントが減るという確立したエビデンスは示されていません。そのため現在の治療戦略は、主にLDLコレステロールを下げることに重点が置かれています。
- 食事由来コレステロールの影響: かつては食事からのコレステロール摂取を厳しく制限することが重視されていましたが、近年は血中コレステロール値への影響は飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の摂取量に比べて小さいと考えられるようになっています。ただし感受性には個人差があります(日本動脈硬化学会の指針)[2]。
- 薬物療法をいつまで続けるかの個別判断: 薬物治療をいつまで続けるべきか、あるいは減量・中止できるタイミングについて、一般化した基準を示す公的資料は限られています。生活習慣の改善状況や検査値の推移を踏まえ、主治医と相談のうえで個別に判断する必要があります。
自己監査:潜在的な誤りと対策
- 数値・基準の改定リスク: 診断基準や治療の考え方は日本動脈硬化学会のガイドライン改定により変わることがあります。本記事は2026年7月時点の公開情報に基づいています[1]。
- 保険・費用情報の変動: 診療報酬は改定されるため、費用の目安は将来的に変わる可能性があります。具体的な自己負担額は必ず医療機関・保険者に確認してください[9]。民間保険の加入条件も保険会社ごとの商品設計により変わるため、詳細は各社・代理店に確認が必要です。
- 個別リスク評価の限界: 本記事の数値・目安は一般的な情報であり、個々の治療方針(薬を始めるか、目標値をどこに置くか)は年齢・危険因子・既往歴によって異なります。必ず主治医と相談してください。
- 情報源の範囲: 本記事は厚生労働省・日本動脈硬化学会などの公的機関・学会情報およびCochraneレビュー等の査読文献を優先して参照していますが、日本人を対象とした大規模な長期追跡データが限られる領域もあり、今後の研究で見解が更新される可能性があります。
受診の目安(すぐに受診・相談が必要なサイン)
- 健康診断でLDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪のいずれかが基準値を超えていた場合(症状がなくても)(日本動脈硬化学会の指針)[1]
- 「要再検査」「要精密検査」「要治療」の判定が出た場合
- 血縁の近い家族が若年(目安:男性55歳未満・女性65歳未満)で心筋梗塞や狭心症になった場合(家族性高コレステロール血症の可能性)(日本動脈硬化学会のガイドライン)[5]
- まぶたやアキレス腱に黄色いしこり(黄色腫)がある場合(日本動脈硬化学会のガイドライン)[5]
下記は動脈硬化が進行した結果としての緊急事態のサインです。ためらわず119番、または救急外来を受診してください。
- 突然の激しい胸痛や締め付けられるような圧迫感が続く(心筋梗塞の疑い)
- 片方の手足に力が入らない、ろれつが回らない、顔の半分が歪む(脳梗塞の疑い)
- 突然の意識障害、呼びかけに反応しない
本記事は脂質異常症に関する一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスや診断・治療の推奨を行うものではありません。妊娠中・授乳中の方、肝臓や腎臓の病気で治療中の方、複数の薬(特に血圧や糖尿病の薬)を服用中の方は、自己判断でサプリメントを摂取したりせず、必ず事前に医師に相談してください。
本記事を読んで「自分にも当てはまるかもしれない」と感じた方は、まず直近の健康診断結果を手元に用意し、LDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪の3つの数値を確認してください。基準値を超えている項目があれば、症状の有無にかかわらず内科または循環器内科を受診し、生活習慣の見直しと必要に応じた検査計画について相談することをお勧めします。健診結果が手元にない場合は、勤務先や自治体の担当窓口に再発行を依頼することもできます。数値の推移が分かるよう、可能であれば過去数年分の結果もあわせて持参すると、診察がスムーズに進みます。
受診に持っていくメモ(コピーしてお使いください)
- 直近の健康診断結果(LDL・HDL・中性脂肪の数値と日付)
- いつから指摘されているか(初めて/何年目か)
- 現在服用中の薬・サプリメント(名前が分かるもの)
- 血縁者に若くして心筋梗塞・狭心症になった人がいるか
- 医師に聞きたいこと(薬は必要か、いつまで生活改善だけで様子を見てよいか等)
よくある質問
スタチンなどの薬は一度飲み始めたら一生やめられないのですか?
卵などコレステロールの多い食品は避けるべきですか?
中性脂肪が高いと言われました。コレステロールと何が違うのですか?
脂質異常症の治療は健康保険の対象になりますか?
家族に若くして心筋梗塞になった人がいます。関係はありますか?
健康診断で「要精密検査」と言われました。どの診療科に行けばいいですか?
運動はどのくらい・どんな種類をすればよいですか?
(医療者・研究者向け)スタチンとフィブラート系薬剤の併用時の横紋筋融解症リスクはどう考えればよいですか?
脂質異常症は薬をやめれば元通りになりますか?
健康診断の結果、LDLコレステロールが境界域(120〜139)でした。まだ様子見でよいですか?
本記事で扱わなかったこと
本記事は成人の一般的な脂質異常症を中心に解説しており、妊娠糖尿病に伴う一時的な脂質変化や、特殊な遺伝性疾患(家族性高コレステロール血症以外のまれな脂質代謝異常症)の詳細な鑑別診断には踏み込んでいません。これらについては、専門医療機関での個別評価が必要です。
スタチンとフィブラート系薬剤の併用に関する注意
高LDLコレステロール血症と高トリグリセリド血症が合併し、スタチン単剤で目標を達成できない場合、フィブラート系薬剤の併用が検討されることがあります。ただし、スタチンとフィブラートの併用は単剤使用時に比べて横紋筋融解症のリスクを高める可能性があり、特に腎機能が低下している患者、高齢者、多剤併用中の患者では注意が必要です(PMDAの情報)[8]。治療開始前にCK値や腎機能(eGFR)を確認し、低用量から開始したうえで、原因不明の筋肉痛・脱力感・褐色尿が現れた場合はただちに薬剤を中止して医師に連絡するよう患者に説明することが、安全な併用療法の基本とされています(PMDAの情報)[8]。併用療法の適応や薬剤の組み合わせは、必ず処方医の判断によります。
主要数値
- LDL-C診断基準: 140mg/dL以上(日本動脈硬化学会の指針)[1]
- HDL-C診断基準: 40mg/dL未満(日本動脈硬化学会の指針)[1]
- 中性脂肪の診断基準: 150mg/dL以上(空腹時)/175mg/dL以上(非空腹時)(日本動脈硬化学会の指針)[1]
- 日本での治療患者数: 約401万人(厚生労働省「患者調査」令和2年)[3]
- 家族性高コレステロール血症の頻度: ヘテロ接合体で約200〜500人に1人と推定[5]
- 運動療法の目安: 中強度以上の有酸素運動を定期的に行うことが推奨されている[2]
これらの数値はいずれも日本動脈硬化学会や厚生労働省など公的機関の一次資料に基づくものであり、個々の治療方針(薬を始めるか、目標値をどこに置くか)を決めるものではありません。あくまで医療機関を受診するかどうかを判断するための目安としてご活用ください。
この記事の情報源についての注記
本記事で提示した診断基準・数値は、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」および「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」の記載を基準としています[1][2]。患者数・有病率に関する統計は厚生労働省の患者調査・国民健康・栄養調査に基づいています[3][2]。薬物療法のエビデンスはCochraneレビューおよび査読を経た系統的レビューのプロトコル論文を参照しました[6][7]。個人のブログ・商業目的の医療機関サイトによる宣伝記事・まとめサイトは情報源として使用していません。参考文献は各項目末尾のリストに、機関名・資料名・年・URLを明記しています。
関連情報へのリンク集
脂質異常症についてさらに詳しく知りたい方は、本記事内でご紹介した心血管疾患の総合ガイド、食事療法ガイド、薬物療法ガイド、家族性高コレステロール血症の解説、LDLコレステロール高値のための実践ガイドもあわせてご覧ください。それぞれ本記事より踏み込んだ内容を扱っています。健康診断の数値がどのカテゴリに該当するかを自分だけで判断せず、気になる項目があれば関連記事も参考にしながら、最終的には医療機関での相談につなげることをお勧めします。本記事の内容は2026年7月19日時点の情報に基づいており、その後のガイドライン改訂や新たな研究結果により変更される可能性があります。本記事の利用によって生じたいかなる結果についても、当サイトは責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
最後に3点を振り返ります。第一に、脂質異常症はLDL-C140以上・HDL-C40未満・TG150以上(非空腹時175以上)のいずれか1つでも該当すれば診断される、自覚症状のほぼない状態だということです(日本動脈硬化学会の指針)[1]。第二に、治療の基本は生活習慣改善であり、薬物療法が始まっても並行して続ける必要があることです(日本動脈硬化学会の指針)[2]。第三に、症状がないからこそ、健康診断の結果を放置せず、基準値超えの指摘があれば早めに医療機関へ相談することが、将来の心筋梗塞・脳梗塞を防ぐ最も確実な一歩だということです。
本記事の内容について、事実誤認や古くなった情報にお気づきの場合も、JHOのお問い合わせフォームよりご連絡ください。読者の皆様からのご指摘は、記事の質を維持するうえで欠かせない情報として重視しています。
本記事は、次のいずれかが発生した場合に見直しを行います:日本動脈硬化学会によるガイドラインの改訂(通常3〜5年ごと)、診療報酬改定(薬価・診療費に関する情報の更新)、脂質異常症治療に関する大規模な臨床試験・メタ解析が主要医学誌で発表された場合です。トリガーがない場合でも、半年〜1年に一度を目安に、参考文献のリンク切れ確認と統計データの更新を行う方針としています。
健康診断で「コレステロール値が少し高めですね」と言われても、体調は悪くないため、本当に治療が必要なのか迷う方は少なくありません。心臓や脳の病気全体との関係も含めて理解したい場合は、心血管疾患の総合ガイドをあわせて読むと、自分のリスクを立体的に捉えやすくなります。
リスクの広がりや、心筋梗塞・認知症・肝臓病などへの影響をもう少し深く知りたい場合は、脂質異常症の全体像と合併症リスクも参考になります。食事・運動の具体的な実践プランは脂質異常症の食事療法ガイドで確認できます。
薬物療法の位置付けや副作用への向き合い方は脂質異常症の薬物療法ガイドが詳しく整理しています。遺伝性の問題や家族歴との関わりは家族性高コレステロール血症(FH)の解説、検査値ごとの改善方針はLDLコレステロール高値のための実践ガイドも役立ちます。
参考文献
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第2章 動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク評価」 https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/02_230210.pdf
- 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第3章 動脈硬化性疾患予防のための包括的リスク管理(食事療法・運動療法)」 https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_3_230210.pdf
- 日本生活習慣病予防協会「脂質異常症で治療を受けている総患者数は、401万人 令和2年(2020)『患者調査の概況』より」2024年 https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010781.php
- 日本動脈硬化学会「一般の方へ」 https://www.j-athero.org/jp/general/
- 日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2025」 https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/JAS_FH_GL2025.pdf
- Taylor F, Huffman MD, Macedo AF, et al. “Statins for the primary prevention of cardiovascular disease.” Cochrane Database of Systematic Reviews. 2013. PMID: https://europepmc.org/article/MED/23440795
- Yang T, Li W, Chen W, Zhu D, Ren Y, Huang X. “Protocol for a systematic review and meta-analysis of the combination of ezetimibe and statins for hyperlipidemia.” PLoS One. 2024;19(12):e0312588. PMID: 39715179
- PMDA(医薬品医療機器総合機構)「患者向医薬品ガイド アトルバスタチン錠5mg「Me」・10mg「Me」」2023年11月更新 https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/guide/ph/171950_2189015F1236_1_00G.pdf
- 厚生労働省「診療報酬点数表」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
- 厚生労働省「医療機能情報提供制度(ナビイ)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html
更新履歴
更新日:2026年7月19日(Asia/Tokyo)。本記事は公的機関・学会情報をもとにJHO編集部が作成・改訂しました。内容に誤りや古い情報がございましたら、お問い合わせフォームよりご指摘・ご報告をお知らせいただけますと幸いです。速やかに確認のうえ修正いたします。
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本記事は脂質異常症に関する一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別の患者様に対する医学的アドバイス、診断、治療の推奨を行うものではありません。健康上の懸念がある場合は、自己判断せず、必ず医療機関を受診し、医師による診断と指導を受けてください。記事の内容は2026年7月19日時点の情報に基づきます。
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本記事の作成に関して、開示すべき金銭的な利害関係はありません。特定の製薬会社・医療機器メーカー・食品会社などからの資金提供を受けずに、JHO編集部の独立した予算で制作しました。記事中で薬剤名(スタチンなど)に言及している箇所がありますが、これは科学的エビデンスに基づき一般名で解説することを目的としており、特定の製品の使用を推奨するものではありません。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
脂質異常症は自覚症状がないまま動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気につながる危険な状態です。しかし、正しい知識を持ち、早期に対策を講じることで、そのリスクは大きく管理できます。診断基準・治療方針は日本動脈硬化学会のガイドライン改定により今後も変わり得るため、本記事の内容は2026年7月時点の公開情報に基づくものであることをご理解のうえ、最新の情報は主治医や公的機関の発表で確認してください。
- 健康診断の結果を無視せず、基準値を超えていたら症状がなくても医療機関を受診してください。
- 治療の基本は、飽和脂肪酸を減らし青魚や野菜を増やす食事と、中強度の有酸素運動を継続することです(日本動脈硬化学会の指針)[2]。
- 薬物治療が必要と診断された場合は、自己判断で中断せず、医師の指示通りに服用を続けることが重要です(Cochraneレビューの報告)[6]。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個人の状態は異なるため、具体的な診断や治療方針は必ず主治医と相談のうえ決定してください。
本記事の内容は、公開時点で入手可能な最も信頼できる公的情報に基づいていますが、医療情報は日々更新されるため、最終的な判断は必ず主治医と相談のうえ行ってください。ご不明な点や、記事内容に関するご質問がある場合も、まずはかかりつけの医療機関にご相談いただくことをお勧めします。本記事の内容について、事実誤認や古くなった情報にお気づきの場合は、JHOのお問い合わせフォームよりご連絡ください。編集部で内容を確認し、必要に応じて速やかに修正いたします。
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