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脂質異常症 高脂血症|LDL・HDL・中性脂肪の基準値と治療

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📍 このテーマ: コレステロール・脂質異常症ペディア →
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脂質異常症 高脂血症(正式には脂質異常症)とは、血液中のLDLコレステロール・HDLコレステロール・中性脂肪(トリグリセリド)のいずれかが基準値から外れた状態で、日本動脈硬化学会の基準ではLDL-C 140 mg/dL以上、HDL-C 40 mg/dL未満、空腹時中性脂肪150 mg/dL以上のいずれかに該当すると脂質異常症と判定されます。[1]

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自覚症状はほとんどなく、健康診断の採血で偶然見つかることがほとんどです。しかし放置すると動脈硬化がゆっくり進行し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが年単位で高まります(同ガイドライン)[1]。治療の中心は生活習慣の改善と、必要に応じたスタチンなどの薬物療法で、目標値は年齢やほかの危険因子(糖尿病・喫煙・血圧など)によって個別に決まります(同チャート)[2]。

要点まとめ

  • 脂質異常症 高脂血症の診断の目安はLDL-C 140 mg/dL以上・HDL-C 40 mg/dL未満・空腹時中性脂肪150 mg/dL以上のいずれか(境界域はLDL-C 120〜139 mg/dL)(同チャート)[2]
  • 使用ガイドラインは日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」(最新の全面改訂版)で、実地診療向けの要約版として「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2023年版」も公表されており(同診療ガイド)[3]、2026年8月時点でガイドライン2022年版を更新する全面改訂版は発行されていない(同ガイドライン)[1]
  • 管理目標値はリスク区分(低・中・高リスク)ごとに異なり、糖尿病・末梢動脈疾患・慢性腎臓病がある人は自動的に「高リスク」に区分される(同チャート)[2]
  • スタチンは心筋梗塞・脳卒中・血行再建術のリスクを確かに下げるが、心血管疾患の既往がない人(一次予防)では全死亡率を統計的に有意には下げないという2026年のメタ解析がある(同研究)[4]
  • LDL-C 200 mg/dL以上・中性脂肪1,000 mg/dL以上・アキレス腱肥厚などは専門医(動脈硬化専門医)への紹介が推奨される目安(同チャート)[2]

編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本動脈硬化学会・日本医学会連合・Cochrane・PubMedなどの一次資料と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別診断・治療方針の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年8月10日時点の情報)。

🔧 あなたのリスク区分を確認する目安
以下のいずれかに当てはまる場合、日本動脈硬化学会の基準で自動的に「高リスク」に分類されます(LDL-C目標120 mg/dL未満)(同チャート)[2]。

  • 糖尿病と診断されている
  • 末梢動脈疾患(PAD)がある
  • 慢性腎臓病(CKD)と診断されている(eGFR 60 mL/min/1.73m²未満、または3か月以上続く蛋白尿)
  • すでに心筋梗塞・狭心症など冠動脈疾患の既往がある

当てはまらない場合は、年齢・性別・収縮期血圧・LDL-C・HDL-C・喫煙・糖代謝異常の有無をポイント化して低リスク/中リスク/高リスクを判定する「久山町スコア」に準じた方式が用いられます(本文の表を参照)(同チャート)[2]。

脂質異常症とは?動脈硬化が進む仕組み

脂質異常症は、血液中を流れるコレステロールや中性脂肪(脂質)の量が基準から外れた状態を指す用語で、以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLコレステロールが低すぎる状態も含むため、現在は「脂質異常症」という名称が正式に使われています(同ガイドライン)[1]。血液中のLDLコレステロールが多すぎると、余分なLDLが動脈の内側の壁(内膜)に入り込み、そこで酸化されて「泡沫細胞」という変性した細胞になります。これが積み重なって「プラーク(粥腫)」という盛り上がりを作り、血管の内腔(血液の通り道)を狭くしていきます(同ガイドライン)[1]。これが動脈硬化の始まりです。

出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」の解説をもとにJHO編集部が作図(同ガイドライン)[1]

プラークは何年もかけてゆっくり大きくなることもあれば、表面が破れて血の塊(血栓)が急にでき、血管を完全にふさいでしまうこともあります。これが心臓の血管で起きれば心筋梗塞、脳の血管で起きれば脳梗塞です(同ガイドライン)[1]。脂質異常症そのものには自覚症状がほとんどなく、動脈硬化が進んで血管が狭くなっても、初期段階では痛みも息苦しさも感じないことが多いため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれます。健康診断のLDL-C・HDL-C・中性脂肪の数値だけが、体の中で進んでいる変化を教えてくれる唯一の手がかりになることが少なくありません(同チャート)[2]。

HDLコレステロールは逆に、血管壁にたまった余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きがあるため「善玉コレステロール」と呼ばれ、これが少なすぎる状態(40 mg/dL未満)も動脈硬化のリスクを高めることが分かっています(同ガイドライン)[1]。中性脂肪(トリグリセリド)が非常に高い場合(1,000 mg/dL以上)は、動脈硬化のリスクに加えて急性膵炎という別の緊急性の高い病気のリスクも高まるため、専門医への速やかな紹介が推奨されています(同チャート)[2]。

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

脂質異常症 高脂血症の診断基準値 — 日本動脈硬化学会のガイドライン

日本での脂質異常症の診断基準は、日本動脈硬化学会が定めたものが標準として使われています。この基準は空腹時(10〜12時間以上絶食後)の採血値を基本としており、随時(食後)採血の場合は中性脂肪の基準が異なります[2]。

脂質異常症の診断基準(スクリーニングのための診断基準)
項目 基準値 判定
LDLコレステロール 140 mg/dL以上 高LDLコレステロール血症[2]
LDLコレステロール(境界域) 120〜139 mg/dL 境界域高LDLコレステロール血症[1]
HDLコレステロール 40 mg/dL未満 低HDLコレステロール血症[2]
中性脂肪(空腹時) 150 mg/dL以上 高トリグリセライド血症[2]
中性脂肪(随時=食後) 175 mg/dL以上 高トリグリセライド血症[2]
Non-HDLコレステロール 170 mg/dL以上 高non-HDLコレステロール血症[2]

出典:日本医学会連合・日本動脈硬化学会ほか17学会編「脳心血管病発症予防のための包括的リスク管理チャート2025年版」(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版の基準を反映)(同チャート)[2]

LDLコレステロールは「直接法」で測定するか、空腹時かつ中性脂肪400 mg/dL未満の場合はFriedewaldの式(総コレステロール−HDL-C−中性脂肪÷5)で計算して求めます(同チャート)[2]。Non-HDLコレステロールは総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値で、中性脂肪が高くLDL-Cの計算式が不正確になりやすい人(食後採血や中性脂肪400 mg/dL以上)でも安定して評価できる指標として、近年重視されるようになっています(同チャート)[2]。

なお、次のいずれかに該当する場合は、動脈硬化の専門医へのすみやかな紹介が推奨される目安とされています:LDL-C 200 mg/dL以上、LDL-C 15 mg/dL以下、non-HDL-C 230 mg/dL以上、中性脂肪1,000 mg/dL以上、HDL-C 25 mg/dL以下、アキレス腱肥厚や皮膚の黄色腫(家族性高コレステロール血症を疑うサイン)(同チャート)[2]。

🚦 受診の目安 — すぐに医療機関を受診したほうがよいサイン

  • 健康診断でLDLコレステロールが200 mg/dLを超えていた(同チャート)[2]
  • 中性脂肪が1,000 mg/dLを超えていた(急性膵炎のリスクがあるため)(同チャート)[2]
  • アキレス腱が厚く盛り上がっている、まぶたやひじ・ひざの皮膚に黄色い盛り上がり(黄色腫)がある(家族性高コレステロール血症の可能性)(同チャート)[2]
  • 親や兄弟姉妹が早発性冠動脈疾患(日本動脈硬化学会の定義で男性55歳未満・女性65歳未満で発症した冠動脈疾患)になったことがある[7]
  • 突然の激しい胸の痛み、片側の手足の脱力やろれつが回らないなど、心筋梗塞・脳卒中を疑う症状が出た場合は、検査値にかかわらず119番通報を含めた緊急受診が必要です(同ガイドライン)[1]

脂質異常症の原因 — なぜLDLコレステロールが上がるのか

脂質異常症の原因は大きく2つに分けられます。1つは食生活の乱れ・運動不足・肥満・喫煙・過度の飲酒といった生活習慣によるもの(原発性脂質異常症のうち多因子性のもの)、もう1つは遺伝的な体質によるもの(家族性高コレステロール血症など)です(同ガイドライン)[1]。飽和脂肪酸(動物性脂肪、バターや脂身の多い肉など)やトランス脂肪酸の摂りすぎは、LDLコレステロールを直接的に上昇させることが分かっています(同ガイドライン)[1]。

また、糖尿病・甲状腺機能低下症・ネフローゼ症候群・慢性腎臓病・閉塞性肝疾患などの病気や、一部の薬剤(副腎皮質ステロイド、一部の利尿薬など)が原因で脂質異常症が起こることもあり、これを「続発性(二次性)脂質異常症」と呼びます(同チャート)[2]。この場合は、元になっている病気の治療が優先されます。遺伝性の家族性高コレステロール血症は、生まれつきLDLコレステロールを肝臓に取り込む受容体の働きが弱く、若いうちから著しく高いLDLコレステロール値を示すのが特徴で、日本動脈硬化学会は成人・小児それぞれについて専用の診療ガイドラインのフォーカスアップデート版(2025年)を設けています(同学会)[6]。

脂質異常症 高脂血症の管理目標値 — リスク区分ごとの目標

脂質異常症の治療目標は、すべての人に一律の数値を当てはめるのではなく、その人が将来どれくらい心筋梗塞・脳梗塞になりやすいか(リスク区分)によって個別に設定されます[2]。

脂質管理目標値(mg/dL)— 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版より
管理区分 LDL-C Non-HDL-C 中性脂肪 HDL-C
低リスク 140未満 170未満 150未満(空腹時)/175未満(随時) 40以上
中リスク 120未満 150未満 150未満(空腹時)/175未満(随時) 40以上
高リスク 100未満(※) 130未満 150未満(空腹時)/175未満(随時) 40以上

出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」より引用改変(日本医学会連合「包括的リスク管理チャート2025年版」掲載)(同チャート)[2]。※糖尿病でPAD・細小血管症合併・喫煙ありの場合はLDL-C 70未満も考慮。糖尿病・末梢動脈疾患(PAD)・慢性腎臓病(CKD)は自動的に高リスクに区分されます(同チャート)[2]。

高血圧の治療目標値も同時に管理されることが多く、75歳未満で糖尿病やCKDのない人は診察室血圧130/80 mmHg未満、75歳以上の高齢者は140/90 mmHg未満が目安とされています(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン」に基づく)(同チャート)[2]。脂質・血圧・血糖を同時に管理することで、動脈硬化の進行を総合的に抑えることが重要とされています(同チャート)[2]。

脂質異常症 高脂血症の治療の第一歩は生活習慣の改善

薬物療法を始める前、あるいは薬物療法と並行して、まず取り組むべきなのが生活習慣の改善です。日本医学会連合の包括的リスク管理チャートでは、禁煙(受動喫煙の防止を含む)、適正体重の維持、減塩(食塩6 g/日未満)、食物繊維・多価不飽和脂肪酸の摂取励行、コレステロール・飽和脂肪酸・単純糖質の摂取制限、そして活動的な生活と運動(1日60分・8,000歩以上、高齢者は40分・6,000歩以上を目安に、週2〜3日の筋力トレーニングを併用)が共通して推奨されています(同チャート)[2]。

飲酒については、エタノール換算で1日25 g以下(日本酒なら1合程度)に制限し、休肝日を設けることが望ましいとされています(同チャート)[2]。食事療法だけでLDLコレステロールが正常化する人もいますが、遺伝的な要因が強い場合や、生活改善だけでは目標値に届かない高リスクの人では、薬物療法の追加が検討されます(同ガイドライン)[1]。

もし外食が多くコレステロールを減らしにくいなら、まず飽和脂肪酸の多い食品(脂身の多い肉、バター、生クリーム)を魚・大豆製品・オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸に置き換えることから始めると、無理なく続けやすいとされています。もし運動習慣がまったくないなら、いきなり8,000歩を目指すのではなく、まず「今より10分多く歩く」目標から始めることが、長続きのコツとして生活指導で用いられる考え方です(同チャート)[2]。

脂質異常症 高脂血症の薬物療法 — スタチンは何をしてくれて、何をしてくれないのか

薬物療法の中心はスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)です。スタチンは肝臓でのコレステロール合成を抑えることでLDLコレステロールを下げる薬で、日本を含む世界中で最も広く使われているコレステロール低下薬です(同ガイドライン)[1]。効果が不十分な場合は、エゼチミブ(腸でのコレステロール吸収を抑える薬)やPCSK9阻害薬などを併用することもあります(同ガイドライン)[1]。

スタチンの効果については、2013年のコクラン系統的レビュー(Taylor F, et al., Cochrane Database Syst Rev)が、心血管疾患の既往がない人(一次予防)を対象とした複数のランダム化比較試験を統合し、スタチンが全死亡率や心血管イベントを減少させることを報告しています[4]。一方、2026年に発表されたより新しいメタ解析(真の一次予防、つまり心血管疾患・血管疾患・脳血管疾患の既往がまったくない人だけに限定した10件のランダム化比較試験、参加者85,829人を統合した解析)では、より踏み込んだ結果が示されています(同研究)[4]。

脂質低下薬(主にスタチン)の一次予防における効果 — 2026年メタ解析(RCT 10件・参加者85,829人)
アウトカム 相対リスク(RR) 統計的に有意か
全死亡 0.98(95%信頼区間 0.89〜1.07) 有意差なし
心臓死 0.92(95%信頼区間 0.82〜1.04) 有意差なし
主要心血管イベント(MACE) 0.76(95%信頼区間 0.68〜0.84) 有意に減少
心筋梗塞 0.64(95%信頼区間 0.57〜0.72) 有意に減少
脳卒中・一過性脳虚血発作 0.75(95%信頼区間 0.57〜0.98) 有意に減少

出典:Role of lipid lowering medications in the primary prevention of cardiovascular disease and mortality: a meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Cardiovascular Disorders, 2026. DOI: 10.1186/s12872-026-05659-2(同研究)[4]

つまり、心血管疾患の既往がまったくない人を対象にした最新のデータでは、スタチンは心筋梗塞・脳卒中・血行再建術のリスクを確かに、そしてはっきりと下げますが、「死亡そのもの」を統計的に有意には減らさなかったという結果です(同研究)[4]。この点は、心筋梗塞や脳梗塞をすでに経験した人(二次予防)を対象にした研究とは結果が異なる可能性があり、一次予防と二次予防を混同して語らないことが重要です(同研究)[4]。どの程度のリスクの人にスタチンを開始すべきかは、この「心血管イベントは減るが死亡率は変わらない可能性がある」というデータも踏まえたうえで、個々の患者のリスクと価値観に応じて主治医と相談して決めるべき事柄です(同研究)[4]。

スタチンが心血管イベントを減らす一方で全死亡率を有意に減らさない理由(他の原因による死亡が相殺している可能性、試験期間の長さ、対象集団の違いなど)については、今回参照した資料の範囲では確定的な結論は示されておらず、現時点でも研究者の間で議論が続いています。

日本と米国のガイドライン比較

脂質管理の考え方は、国や学会によって強調点が異なります。日本動脈硬化学会は、久山町スコアなどの日本人のデータに基づいたリスク評価を用い、LDLコレステロールとnon-HDLコレステロールを主要な管理指標として重視しています(同チャート)[2]。

項目 日本(日本動脈硬化学会 2022年版) 国際的なエビデンス(Cochrane等)
リスク評価の基本方針 日本人のコホート研究(久山町研究など)に基づく絶対リスク評価で管理区分を決定[2] 大規模RCTのメタ解析でLDL低下と心血管イベント減少の量的関係を評価[4]
一次予防での薬物療法開始基準 低・中・高リスクの管理区分ごとにLDL-C目標値を設定し、生活改善で届かない場合に薬物療法を検討[2] スタチンはMACE・心筋梗塞・脳卒中を有意に減らすが、真の一次予防集団では全死亡率の有意な減少は示されていない(2026年メタ解析)[4]

日本のガイドラインが管理区分ごとの「目標値」という形で治療方針を示しているのに対し、近年の国際的なメタ解析はより率直に「何が減って、何が減らないか」を数値で示す方向に向かっており、両者を照らし合わせることで、目標値の意味をより正確に理解できます(同研究)[4]。

高齢者・糖尿病・慢性腎臓病がある場合の脂質管理

75歳以上の高齢者、またはフレイル(心身の虚弱)や要介護状態にある65〜74歳の人では、脳心血管病の予防だけでなく、生活機能を落とさないことも同時に重視した管理が必要とされています(同チャート)[2]。日本老年医学会の枠組みでは、認知機能やADL(日常生活動作)の状態によって糖尿病の血糖コントロール目標を個別に緩めることがあり、脂質・血圧についても「フレイル・認知症・要介護状態にある人では目標値は個別に判断する」という方針が示されています(同チャート)[2]。エンドオブライフ(終末期)に近い状態にある人については、QOL(生活の質)を優先し、薬物の減量や中止も選択肢として検討されます(同チャート)[2]。

糖尿病がある人は、脂質異常症がなくても動脈硬化のリスクがすでに高いグループとして扱われ、日本動脈硬化学会の管理区分では自動的に「高リスク」に分類されます(同チャート)[2]。特に末梢動脈疾患(PAD)や糖尿病細小血管症(網膜症・腎症・神経障害)を合併している場合、喫煙している場合は、LDLコレステロール70 mg/dL未満というより厳格な目標値も考慮されます(同チャート)[2]。

慢性腎臓病(CKD)も同様に高リスクに分類される病態です。CKDの診断基準は、eGFR(推算糸球体濾過量)が60 mL/min/1.73m²未満であること、または蛋白尿が3か月以上持続することとされています(同チャート)[2]。CKDでは血圧・血糖・脂質・体重を総合的に管理することがCKDの悪化予防そのものにつながるとされ、脂質管理も血圧・血糖管理と切り離さずに考えることが重要です(同チャート)[2]。eGFRが45 mL/min/1.73m²未満の高度な低下や、蛋白尿と血尿の両方を認める場合は、腎臓専門医への紹介が推奨される目安とされています(同チャート)[2]。

メタボリックシンドロームの診断基準(腹囲が男性85 cm以上・女性90 cm以上に加え、①HDL-C 40 mg/dL未満または空腹時中性脂肪150 mg/dL以上、②空腹時血糖110 mg/dL以上、③収縮期血圧130 mmHg以上または拡張期血圧85 mmHg以上、のうち2項目以上に該当)も、脂質異常症としばしば重なる病態として同じチャートの中で扱われています(同チャート)[2]。腹囲やHDLコレステロールが基準を超えている場合は、脂質だけでなく血糖・血圧もあわせて確認することが勧められます(同チャート)[2]。

リスクスコアの仕組み — LDL-Cの数値だけでは決まらない理由

「LDLコレステロールが140を超えたら即・薬物療法」というわけではありません。日本動脈硬化学会が採用しているリスク評価では、LDLコレステロールに加えて性別・年齢・収縮期血圧・糖代謝異常の有無・HDLコレステロール・喫煙の有無をポイント化し、合計点から低リスク・中リスク・高リスクを判定します(同チャート)[2]。

リスクスコアの配点(久山町研究に基づく方式)
項目 区分 ポイント
性別 女性/男性 0/7
収縮期血圧 120未満〜160以上(5段階) 0〜4
糖代謝異常(糖尿病を除く) なし/あり 0/1
LDLコレステロール 120未満〜160以上(4段階) 0〜3
HDLコレステロール 60以上〜40未満(3段階) 0〜2
喫煙 なし/あり 0/2

出典:日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」より引用改変(日本医学会連合「包括的リスク管理チャート2025年版」掲載)(同チャート)[2]

合計ポイントが低いほど「低リスク」、高いほど「高リスク」に区分され、同じチャートには合計点ごとの10年間の冠動脈疾患発症確率(1.0%未満〜41.1%まで)も示されています(同チャート)[2]。つまり、LDLコレステロールが同じ145 mg/dLでも、20代で他の危険因子がない女性と、喫煙歴があり血圧も高い60代男性とでは、リスク区分もLDL-Cの目標値も大きく異なるということです。この「LDL-Cの数値だけを見ない」という考え方こそ、健康診断の結果だけを見て一喜一憂しないために知っておく価値のあるポイントです(同チャート)[2]。

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スタチンの副作用と「スタチン不耐」への対応

スタチンは広く使われている薬ですが、まれに筋肉痛・脱力感(筋症状)や肝機能検査値の上昇がみられることがあります(同学会)[5]。日本動脈硬化学会は、スタチンによる副作用のためにスタチンを継続できない状態を「スタチン不耐」と定義し、その診療指針を公表しています。スタチン不耐が疑われる場合、自己判断で服薬を中止するのではなく、まず本当にスタチンが原因の症状かどうかを医師が確認し、種類や用量の変更、他の脂質低下薬(エゼチミブなど)への切り替えを検討することが推奨されています(同学会)[5]。

スタチンの筋症状の頻度については、観察研究とランダム化比較試験で報告される数値に差があることが知られており、どの程度が薬理学的な真の副作用でどの程度が「ノセボ効果(副作用を予期すること自体で症状が出る現象)」によるものかについては、今回参照した資料の範囲では確定的な結論は示されていません。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

🖨️ 受診時に医師に伝えるためのメモ

  • 最新の健康診断でのLDL-C・HDL-C・中性脂肪の数値(わかれば過去数年分の推移も)
  • 現在服用中の薬(サプリメントを含む)
  • 家族(親・兄弟姉妹)に若くして心筋梗塞・脳卒中になった人がいるか
  • 喫煙の有無、飲酒量、運動習慣
  • 医師に聞きたいこと(例:「私は低・中・高リスクのどれですか」「今すぐ薬を始めるべきですか、まず生活改善で様子を見てよいですか」)

治療開始後の経過観察 — どのくらいの頻度で採血するか

生活習慣の改善を始めた場合も、薬物療法を始めた場合も、脂質異常症は自覚症状で効果を実感しにくいため、定期的な採血による経過確認が欠かせません。日本医学会連合の包括的リスク管理チャートは、専門医への紹介が不要と判断された後も、リスク因子(脂質・血糖・血圧・体重)を並行して継続的に評価・管理することを、健診で異常を指摘された人だけでなく、すでに治療中の人の管理状態を確認するツールとしても活用するよう位置づけています(同チャート)[2]。

スタチンなど薬物療法を開始した場合は、効果と副作用(筋症状・肝機能への影響など)の両方を確認するため、開始後しばらくしてから採血を行い、その後は主治医が定めた間隔で経過を見ていくのが一般的な流れです(同学会)[5]。目標値に達した後も、生活習慣が乱れたり加齢とともに危険因子が増えたりすることでリスク区分自体が変わることがあるため、一度目標を達成したら終わりではなく、年に一度程度は総合的にリスクを見直すことが望ましいとされています(同チャート)[2]。

よくある質問

脂質異常症 高脂血症は同じものですか?違いは何ですか?
はい、基本的に同じ状態を指す言葉です。以前は「高脂血症」という名称が使われていましたが、LDLコレステロールや中性脂肪が「高い」場合だけでなく、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が「低い」場合も動脈硬化のリスクになることが分かり、現在は両方を含む「脂質異常症」という名称が正式に使われています(同ガイドライン)[1]。
脂質異常症の症状は何ですか?
脂質異常症そのものには、通常ほとんど自覚症状がありません(同チャート)[2]。健康診断の採血で偶然指摘されることがほとんどです。ただし、家族性高コレステロール血症でLDLコレステロールが著しく高い場合は、アキレス腱の肥厚やまぶた・肘・膝の皮膚に黄色い盛り上がり(黄色腫)が現れることがあります(同チャート)[2]。
脂質異常症の診断基準を教えてください
日本動脈硬化学会の基準では、LDLコレステロール140 mg/dL以上、HDLコレステロール40 mg/dL未満、空腹時中性脂肪150 mg/dL以上(随時採血では175 mg/dL以上)のいずれかに当てはまると脂質異常症と判定されます(同チャート)[2]。
脂質異常症は治療しないとどうなりますか?
自覚症状がないまま動脈硬化がゆっくり進行し、何年もかけて血管の内腔が狭くなっていきます。プラークが破れると血栓ができて血管が急にふさがれ、心筋梗塞や脳梗塞を起こすことがあります(同ガイドライン)[1]。中性脂肪が1,000 mg/dLを超える場合は、動脈硬化とは別に急性膵炎のリスクも高まります(同チャート)[2]。
脂質異常症の治療薬(スタチン)は本当に効果がありますか?
スタチンは心筋梗塞・脳卒中・血行再建術のリスクを確かに、はっきりと減らすことが複数の研究で示されています(同研究)[4]。ただし、心血管疾患の既往がまったくない人を対象にした2026年のメタ解析では、心血管イベントは減っても、全死亡率そのものは統計的に有意には減らなかったと報告されています(同研究)[4]。この点も踏まえて、開始するかどうかは医師と相談することが大切です。
脂質異常症の予防にはどんな食事・運動がよいですか?
飽和脂肪酸(脂身の多い肉、バターなど)やコレステロール・単純糖質の摂りすぎを控え、食物繊維や不飽和脂肪酸(魚、大豆製品、オリーブオイルなど)を積極的に摂ることが推奨されています。運動は1日60分・8,000歩以上(高齢者は40分・6,000歩以上)を目安に、活動的な生活と週2〜3日の筋力トレーニングを組み合わせることが勧められています(同チャート)[2]。
脂質異常症は何科を受診すればよいですか?
まずは内科(一般内科・循環器内科)で相談するのが一般的です。LDL-C 200 mg/dL以上や、アキレス腱肥厚・黄色腫など家族性高コレステロール血症を疑うサインがある場合は、動脈硬化を専門とする医師への紹介が推奨される目安とされています(同チャート)[2]。
境界域(LDL-C 120〜139 mg/dL)の場合はどうすればよいですか?
境界域高LDLコレステロール血症とされ、ただちに薬物療法が必要というわけではありませんが、他の危険因子(糖尿病・高血圧・喫煙・家族歴など)がないか確認し、生活習慣の改善を優先しつつ定期的に採血して経過を見ることが一般的です(同ガイドライン)[1]。危険因子が重なる場合は、低リスクではなく中・高リスクに区分されることがあるため、自己判断せず医師に相談することが推奨されます(同チャート)[2]。
家族性高コレステロール血症とは何ですか?
生まれつきLDLコレステロールを肝臓に取り込む働きが弱く、若いうちから著しく高いLDLコレステロール値を示す遺伝性の病気です。親や兄弟姉妹に早発性冠動脈疾患(男性55歳未満・女性65歳未満で発症)の家族歴がある場合や[7]、アキレス腱肥厚がある場合に疑われます。日本動脈硬化学会は成人・小児それぞれについて専用の診療ガイドラインのフォーカスアップデート版(2025年)を公表しています(同学会)[6]。

更新日:2026年8月10日。誤りや古い情報にお気づきの際はお知らせください。事実を確認のうえ訂正します。

参考文献

  1. 日本動脈硬化学会(編)「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」日本動脈硬化学会, 2022(初版2022年7月4日発行・第2版2022年9月26日発行、2026年8月時点で本ガイドラインを更新する全面改訂版は未発行)https://www.j-athero.org/jp/publications/guideline/
  2. 日本医学会連合 領域横断的連携活動事業(TEAM事業)/日本動脈硬化学会ほか17学会編集・日本医師会編集協力「脳心血管病発症予防のための包括的リスク管理チャート2025年版」(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版・高血圧治療ガイドライン2019・糖尿病治療ガイド2022-2023の基準を反映)https://www.j-athero.org/chart2025/houkatsu_chart2025.pdf
  3. 日本動脈硬化学会(編)「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2023年版」日本動脈硬化学会, 2023https://www.j-athero.org/jp/publications/guideline/
  4. Taylor F, Huffman MD, Macedo AF, et al. Statins for the primary prevention of cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(1):CD004816/The role of lipid lowering medications in the primary prevention of cardiovascular disease and mortality: a meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Cardiovascular Disorders, 2026. https://doi.org/10.1186/s12872-026-05659-2
  5. 日本動脈硬化学会(編)「スタチン不耐に関する診療指針2018」日本動脈硬化学会, 2018(2022年12月改訂)https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/statin_intolerance_2018.pdf
  6. 日本動脈硬化学会(編)「成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン フォーカスアップデート2025」日本動脈硬化学会, 2025https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/FH_GL2025_db.pdf
  7. 日本動脈硬化学会(編)「成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022」日本動脈硬化学会, 2022https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/JAS_FH_GL2022.pdf
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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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