ロンゴ手術とは?手術の流れ、利点と欠点、費用について解説
消化器疾患

ロンゴ手術とは?手術の流れ、利点と欠点、費用について解説

はじめに

こんにちは、JHO編集部です。本記事では、多くの方が悩んでいるという症状について、より詳細かつ包括的に解説します。痔は日常生活や仕事への支障も大きく、人によっては長期にわたる慢性的な問題となるケースも少なくありません。痔の治療法はさまざまですが、座薬や軟膏、生活習慣の改善による保存的治療から、進行度によっては手術的治療まで幅広く検討することが可能です。その中でも近年特に注目を集めているのが、「ロング手術」と呼ばれる新しい手術法です。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

ロング手術は、従来の痔核手術よりも痛みが軽減され、回復が早いとされ、患者の日常生活復帰をサポートする有望な選択肢として注目されています。この記事では、ロング手術の特徴やメリット・デメリット、費用、具体的な手術の流れから術後ケアまで、あらゆる面を深く掘り下げて解説します。さらに、信頼性の高い専門家の意見や研究データを参照しつつ、読者の皆様が安心して治療法を選択できるよう、最新の知見を加えた形で情報を提供します。痔でお悩みの方や手術を検討されている方が正確で信頼性のある知識を得られるよう、ぜひ最後までお読みください。

専門家への相談

本記事は、国内外の医療機関、専門家、学術論文など、複数の情報源を参照して作成されています。たとえば記事中で挙げられているホーチミン市の人民病院Gia Dinh Hospitalといった実地医療機関からの助言に加え、University of Medicine and Pharmacy Hospital、その他の医科大学附属病院や研究機関など、信頼性が高い施設・論文情報も参考にしています。

これらの情報は、医療現場での治療成績や合併症、再発率などに関する科学的根拠(エビデンス)に基づいており、一般読者から専門家まで幅広く利用されています。読者の皆様が本記事の内容を高い信頼性をもって参照できるように、透明性と正確性を最重視しています。実際に各医療機関や学術論文が提供するデータは、ただの推測や噂話ではなく、明確な医学的根拠に裏打ちされたものである点を強調します。

ロング手術に関する主要な情報

ロング手術とは?

ロング手術は、痔の症状を軽減するために比較的近年開発された外科的治療法で、イタリアの外科医Antonio Longoによって考案されました。最大の特徴は、痔核を直接切除せず、直腸内で縫合・固定して血流を遮断することで、痔核を自然に縮小させる独特の手法にあります。

従来の痔核手術(いわゆる外科的切除)は出血や痛みが大きく、回復まで長期間を要することが多いという課題がありました。一方、ロング手術では約20〜30分程度の短時間で施行可能なうえに痛みが少なく、回復も早いとされ、患者の身体的・精神的負担を大幅に軽減します。術後の早期社会復帰も見込めるため、近年は世界的に採用例が増加しています。

具体例での理解

痔核は肛門周囲の血管が圧迫や鬱血により拡張・炎症を起こす状態を指します。ロング手術では、専用デバイスを使って痔核組織を引き上げ、歯状線上方で輪状縫合することで血液が過剰に溜まる状態を改善します。その結果、痔核が次第に萎縮し、痛みや出血も緩和されます。さらに、再発率が低い点も大きなメリットであり、根本治療につながることが期待されます。

ロング手術の主な利点

ロング手術には以下のように、多角的な利点が報告されています。それぞれ日常生活の観点からも解説し、実際の治療後をイメージしやすいように示します。

  • 手術が簡単で実施しやすい
    外科医による手技が比較的シンプルかつ短時間(約20〜30分)で終了するため、患者の術中負担も少なく済みます。手術室での滞在が短いことで、医療スタッフや患者双方にかかる精神的・肉体的ストレスが軽減されます。
  • 痛みが比較的少ない
    従来の痔核手術は肛門周辺を大きく切開するため、術後の痛みが大きな問題でした。ロング手術では直腸内で処置を行い、神経が密集する肛門周囲部位を大きく切開しないため、術後の痛みが軽減されるのが特長です。痛みが少ないために早期から普通の生活動作を行いやすく、患者のQOL(生活の質)の向上に直結します。
  • 出血が少ない
    従来の手術は出血量が多くなることがあり、術後の管理が複雑になるケースもありました。ロング手術では血流を遮断した状態で縫合・固定を行うため、出血量は最小限に抑えられます。これにより、術後の管理がシンプルになり、早期退院が見込める点も利点です。
  • 手術時間が短い(20〜30分)
    手術時間が短いと麻酔によるリスクや手術室の使用料が減少し、患者にとって身体的・経済的負担が少なくなります。医療機関側も多くの患者に対応しやすく、医療資源を効率的に活用できます。
  • 回復が早く、日常生活に早く戻れる
    術後数日で入浴や仕事復帰が可能になる症例も多く、比較的早い段階で普段の生活ペースに戻れる点が患者にとって大きなメリットです。家庭や職場への影響を最小限に抑えられるため、心理面でも安心感が得られます。
  • 合併症が少ない
    外科的操作が精密かつ短時間に集約されるため、感染症や大量出血といった代表的な合併症リスクを低減できるとされています。入院期間が短縮されるだけでなく、周囲のサポート負担も軽くなります。
  • 再発率が低い
    従来の切除手術に比べて、痔核の根本原因となる血流障害を改善するため、再発リスクが相対的に低いことが報告されています。長期的な視点からも、より安定した効果が得られやすいのが特長です。
  • 美容的効果が高く、傷跡が残りにくい
    肛門周囲を大きく切除しないため、外観を損ねる可能性が低く、術後の傷跡を最小限に抑えられます。痛みに加えて見た目も気になるという方にとっては安心材料となります。

ロング手術の適応症例

ロング手術は次のような患者層や症状に特に適しています。なぜ該当する症例に有効なのかを具体的に解説します。

  • 痔核の3度または4度
    痔核が重度に進行して肛門外まで突出している状態になると、保存的治療では限界があります。痛みや出血を繰り返すケースが多いため、ロング手術を行うことで、痛み軽減と再発予防を同時に狙いやすくなります。
  • 円形痔核
    肛門を円周状に取り囲む円形痔核は、伝統的な治療でコントロールが難しい場合があります。ロング手術は輪状縫合によって肛門周囲全体の血流を制御するため、痔核全体を効率的に治療できます。
  • 混合痔核
    内痔核と外痔核が同時に存在する混合型では、複数の病巣に対して総合的なアプローチが必要です。ロング手術では一括して血流を遮断・処理できるので、合併する諸症状を一度に対処しやすい点が評価されています。
  • 薬剤や保存的治療が奏功しなかった2度の痔核で出血を伴う場合
    軟膏や座薬、食事療法などで改善が見られない場合は、より根本的なアプローチとしてロング手術が検討されます。症状が軽度だとしても、出血が止まらずQOLを著しく損ねる場合などには有効と考えられます。

具体的な症例

長期にわたって座薬や軟膏を使い続けても、排便時の出血や痛みが改善しない場合、医師が総合的に判断してロング手術を勧めることがあります。重症の痔核に加え、肛門周囲の血栓やポリープなど複合病態を併発している場合でも、ロング手術は包括的な治療が可能で、再発リスクを含めてトータルに改善をめざせます。

手術の費用

ロング手術には、費用が比較的高額という大きな課題があります。たとえば、ダナンのTam Tri Hospitalでは約18〜25万円、ホーチミン市のUniversity of Medicine and Pharmacy Hospitalでは約20〜22万円程度の手術費用がかかるケースがあると言われています。この費用には使い捨て手術器具費用などが含まれ、保険適用外となる場合が多いことから、患者の経済的負担はかなり大きくなります。

費用に関する具体例

手術費用に加えて、術後のケアで必要になる医療器具や薬剤、追加の検査費用なども考慮しなくてはなりません。保険適用外の部分が多い場合、一時的な大きな出費に備える余裕がないと治療のタイミングを逃すことにもつながりかねません。そのため、治療を決断する際には、手術前のカウンセリングや医療機関との相談をしっかりと行い、費用面の対策を検討しておくことが重要です。

手術前の注意事項

ロング手術はすべての患者に適用可能な万能手術ではありません。手術を検討する際には、患者一人ひとりの全身状態や既往症、合併症リスクを見極めるための事前検査が必須です。たとえば糖尿病や高血圧などを患っている場合は、傷の治癒が遅れたり、手術中・術後の合併症リスクが高まることもあり、慎重な判断が求められます。

また、痔核の進行原因が生活習慣や食習慣、運動不足にある場合も多く、手術で症状自体は軽減できても、原因となる習慣を改善しないままでは再発リスクを下げにくくなります。そのため、手術前から生活指導を受け、身体面だけでなく食事や排便習慣の見直しを行うことが望ましいです。

手術中の可能な合併症

ロング手術は安全性が高いといわれますが、それでも合併症のリスクが完全にゼロになるわけではありません。たとえば、術後最初の排便時にわずかな出血がみられることがあり、これは多くの場合、圧迫止血や経過観察で対応できます。しかし、出血量が多かったり、長引くような場合は早急に医療機関へ相談が必要です。

さらに、脊髄麻酔や強い痛みの影響で、一時的に尿が出にくくなる(尿閉)・失禁などの症状がみられることもありますが、カテーテルを用いることで対処が可能です。いずれにせよ、異常を感じたら早めに医療従事者へ報告することが大切です。

合併症の例

術後初回の排便時に少量の鮮血が混ざること自体は比較的よくある現象です。ただし、出血が大量に続いたり、激しい痛みを伴う場合は合併症の兆候である可能性がありますので、適切な診察と処置が必要になります。尿閉に関しても同様で、長時間排尿できない状態や強い不快感がある場合は、医師の指示で速やかにカテーテルを挿入して尿を排出し、症状を緩和します。

手術の手順

手術前夜には腸内洗浄を行い、手術当日は飲食が禁止されるほか、尿意を抑えるための対応なども行われます。合併症リスクの低減と手術をスムーズに進めるために重要なプロセスです。以下にロング手術の一般的な流れを整理します。

  1. 患者の体勢準備
    仰向けで両膝を曲げた姿勢、またはうつ伏せで腹部に枕を置く姿勢をとります。いずれも肛門部が明瞭な視野に入るようにし、手術操作の正確性を高めるためです。
  2. 麻酔の実施
    局所麻酔もしくは全身麻酔を施し、手術中の痛みや不安を最小化します。患者がリラックスした状態で手術を受けることで、術者も精密な作業に集中でき、手術時間の短縮に寄与します。
  3. 肛門の拡張とバルブの配備
    肛門鏡や専用器具を使い肛門部を拡張しながら、手術用バルブを適切な位置に挿入します。こうすることで、手術部位を直接かつクリアに確認できるようになります。
  4. 輪状縫合の実施
    プロレン2.0糸を使用し、歯状線から約2.5cm上方の直腸粘膜を輪状に縫合します。これにより、痔核への血流が遮断され、痔核が徐々に萎縮していくメカニズムを誘導します。
  5. デバイスの使用と圧迫
    縫合環状部に専用デバイスを配置し、糸を引き締めて結ぶことで血流遮断を確実に行います。これがロング手術特有のアプローチで、従来の切除法とは大きく異なる点です。
  6. デバイスの固定と確認
    デバイスを所定の位置まで閉じ、圧迫状態を確認します。女性患者の場合、膣壁がカットラインに掛かっていないかを特に注意深くチェックし、安全を担保します。
  7. 切断部位の確認と縫合
    必要に応じてX字縫合を行い、切断面からの出血を最小限に抑えます。ここで止血や感染リスク低減のための処置を丁寧に行い、術後の回復をスムーズにします。
  8. 追加の処置
    痔核以外にも過剰な皮膚やポリープ、血栓などがある場合は、この段階でまとめて除去します。一度の手術で包括的に処置できるため、再手術リスクや追加入院の負担を減らすことができます。

術後の対応と回復

術後は抗生物質鎮痛剤(パラセタモール)、さらには排便をスムーズにする緩下剤などが処方されることが一般的です。これらは術後の感染予防や痛みの管理、便秘防止に不可欠であり、回復過程を大きくサポートします。

手術後約12時間ほど経過すると、消化に優しい流動食や軟らかい食品から徐々に食事を再開できます。適切な栄養と水分を補給することで、体力の回復が促進されるだけでなく、排便時の負担も軽減されます。

術後のケアと注意点

術後は、排便のたびに肛門周囲を清潔かつ乾燥した状態に保つことが重要です。患部の細菌感染を防ぐため、温かい湯での座浴を行うことで清潔保持と血行促進が期待できます。また、術後は無理せず適度に休息し、歩行などの軽い運動で血流を改善するのがおすすめです。

一方、激しい運動や長時間の座りっぱなし・立ちっぱなしは、肛門周囲に負担をかけ、術後の回復を遅らせる可能性があります。医師の指示に従って段階的に運動量を増やしていくとよいでしょう。

回復のプロセス

研究によれば、平均入院日数は約1.7 ± 0.91日、社会・職場への完全復帰には平均で約6.3 ± 2.7日が必要と報告されています。これは痔核手術の中でも比較的短い回復期間といえますが、個人差が大きいため、あくまでも目安として捉えることが大切です。

術後の回復期には以下の点を意識すると、よりスムーズに社会復帰ができます。

  • 軽い運動を心がける
    血流を促進するために、1日に数回の短い散歩やストレッチなど、無理のない範囲で身体を動かすことが推奨されます。
  • 十分な休息
    手術直後は体力が低下しやすいため、質の良い睡眠と安静が回復の速度を高めます。疲労を感じる前に適度に休むことも大切です。
  • 便秘予防の食生活
    食物繊維や水分を適切に摂取し、排便時のいきみを最小限に抑えることが痔核部位への負担軽減に直結します。ヨーグルトなど腸内環境を整える食品も良いとされています。
  • 定期的な再診
    術後数週間から数か月間は、医師の指示に従い経過観察のために通院します。万一の合併症や再発兆候を見逃さず、必要に応じた処置を早期に行うためにも欠かせないステップです。

ロング手術に関するよくある質問

1. ロング手術の成功率はどのくらいですか?

回答: 一般的にロング手術の成功率は非常に高く、多くの文献で75%以上と報告されています。

説明とアドバイス:
成功率の高さは、患者選択の適切さや外科医の熟練度、術後ケアの質など複数の要因による相乗効果とされています。とくに術後に食習慣や排便習慣、運動習慣を整えることで、さらに良好な治療成績が得られる傾向が報告されています。

2. ロング手術後の痛みはどのくらい続きますか?

回答: 術後の痛みは比較的軽度で、数日〜1週間ほどで大きく軽減するケースが多いです。

説明とアドバイス:
従来の痔核手術に比べて肛門周囲の神経への侵襲が少ないため、痛みのピークもそれほど高くありません。鎮痛剤を適切に使用すればほとんどの患者は日常生活に支障が出にくいとされていますが、痛みが長期化する場合は医師への再相談が必要です。

3. ロング手術は再発を防ぎますか?

回答: ロング手術は再発率が低いと多くの研究で示されており、長期的な効果が期待できます。

説明とアドバイス:
痔核の根本原因(直腸への過剰な血流や圧力)を軽減する仕組みにより、再発リスクが低く抑えられると考えられています。実際にChang, Y.T.ら(2023)による報告(BMC Surgery, 23, 111, doi:10.1186/s12893-023-02067-3)では、ロング手術(Stapled hemorrhoidopexy)と従来手術を比較したメタアナリシスの結果、術後の痛みや合併症、再発率に関してロング手術のほうが優位性を示す傾向があるとされています。ただし、生活習慣や個人差も大きいため、患者自身が術後のセルフケアを徹底することで再発防止につなげる必要があります。

結論と提言

結論

ロング手術は痔の治療において痛みや出血の軽減、早期回復、高い成功率、低い再発率といった多くの利点があり、有力な選択肢として認識されています。その一方で、費用が高額になりやすいという問題や、すべての患者に適応できるわけではない点も見逃せません。患者自身が事前に十分な情報を得て、自分の症状と経済的状況に照らし合わせたうえで手術を受けるかどうかを決定することが大切です。

提言

  • 医師との連携と情報収集
    ロング手術のメリットとデメリットをよく理解し、術前・術後のリスクや費用面を含めて医師に相談することが第一歩です。医療機関によって費用や手術手技、入院期間などが異なるため、複数の情報源を比較検討するのも有効です。
  • 生活習慣の改善
    術後の再発予防においては、食事や運動、排便習慣の見直しが大きな鍵となります。繊維質の多い食事や適度な水分補給、軽い運動を継続することで痔核の原因となる鬱血や便秘を防ぎやすくなります。
  • 定期的な経過観察
    術後しばらくは医師の指示に従って定期検診を受け、問題がないかどうかを確認しましょう。万が一、合併症の兆候や再発の兆候がある場合でも、早期に処置すれば重症化を防げます。

最終的には、患者一人ひとりの症状やライフスタイル、経済状況、そして医師の専門的判断を総合して治療法を決定することが重要です。痔の治療は放置するとQOLを大きく損なう恐れがありますが、ロング手術のような新しい選択肢が増えていることで、より多様なアプローチが可能になってきました。

本記事で示された情報はあくまでも一般的な医学的知識に基づくものであり、個々の患者の病状や体質、既往症などを総合的に評価したうえでの最終的な診断・治療方針は医師にご相談ください。

参考文献

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