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消化器疾患 40分で読める 28回

熱中症と高体温症:重症度Ⅰ~Ⅳ度の見分け方と119番のサイン・応急処置

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熱中症は「意識がはっきりしていて自分で水分が飲めるか」で対応が分かれます。Ⅰ度(めまい・こむら返り)なら涼しい場所へ移動し水分・塩分補給、Ⅱ度(頭痛・吐き気・だるさ)は口から飲めない・改善しないなら受診、Ⅲ度(意識障害・けいれん・まっすぐ歩けない)は迷わず119番と積極的な冷却が必要です[1]。

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令和7年(2025年)の熱中症による救急搬送は5~9月の累計で100,510人と、調査開始(平成20年)以降で最多を記録しました[4]。高齢者が半数以上を占め、発生場所は「住居」が最多です[4]。解熱剤は熱中症には効果がなく、意識障害がある人に無理に水を飲ませてはいけません[1]。本記事では、環境省・総務省消防庁・日本救急医学会などの公的資料に基づき、重症度の見分け方から応急処置、予防までを整理します。

要点まとめ

  • 熱中症は体の冷却システムが破綻した医療緊急事態で、発熱(体温設定値が意図的に上がる反応)とは根本的に異なり、解熱剤は効きません[17]。
  • 令和7年5~9月の熱中症による救急搬送は全国で100,510人。調査開始以降で最多。全体の3割以上が入院(重症・中等症)を要しました[4]。
  • 日本救急医学会は熱中症をⅠ度(軽症・現場対応)、Ⅱ度(中等症・要受診)、Ⅲ度(重症・要入院)に分類し、意識がなければ全てⅢ度として扱います。2024年版ではⅢ度のうち深部体温40.0℃以上かつ意識障害が高度な最重症群を「Ⅳ度」として新たに区分しました[1][6]。
  • 意識障害・けいれん・まっすぐ歩けない、のいずれかがあれば直ちに119番。到着を待つ間も、首・脇の下・足の付け根を冷やし続けます[1]。
  • 「呼びかけへの反応がおかしい」「意識がない」状態では、誤って気道に水分が流れ込む危険があるため、口から水分を与えてはいけません[1]。

編集方針:この記事はJHO編集部がAIツールの支援を受けながら作成し、環境省・厚生労働省・総務省消防庁・日本救急医学会など公的機関のガイドライン原文と照合したうえで公開しています。医師による個別の診断・治療の代わりにはなりません。分類基準や数値はガイドラインの改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。内容に誤りをお気づきの際は、お問い合わせよりご連絡ください。更新日:2026年7月19日。旧版で「第I部 高体温の生理学:二つの危険の物語」「第II部 国家的な健康危機としての熱中症」「第III部 熱中症対策のための包括的行動計画」「第IV部 緊急対応と臨床管理:応急手当から最善の治療まで」「第V部 結論と今後の展望」として構成していた内容は、今回の改訂で最新データと重症度分類(Ⅳ度の新設を含む)を反映しつつ、読者が知りたい順に再編成しています。

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状態 重症度 今すぐすべきこと
意識ははっきりしている/めまい・こむら返り・立ちくらみ Ⅰ度(軽症) 涼しい場所へ移動→衣服を緩める→水分・塩分補給→安静に見守る
頭痛・吐き気・だるさ・自力で水分がとれる Ⅱ度(中等症) Ⅰ度の処置に加え、症状が改善しない・自力で飲めないなら医療機関を受診
呼びかけへの反応がおかしい・けいれん・まっすぐ歩けない・意識がない Ⅲ度/Ⅳ度(重症) 直ちに119番。到着まで首・脇の下・足の付け根を冷やし続ける。口から飲ませない

出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」[1]

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熱中症とは?発熱との違いが起きる仕組み

米国StatPearlsの医学文献報告によれば、人体は非常に狭い範囲の深部体温で最も効率的に機能する生物学的な機械です。この安定性の維持は、脳の視床下部によって制御されています[17]。視床下部はサーモスタットのように働き、体温を通常約37℃に保ちます。同報告によれば、体は主に代謝と筋肉の活動によって熱を産生する一方、余分な熱を放出するために、皮膚表面近くの血管を拡張させて温かい血流を末梢へ増やす方法と、汗をかいてその蒸発により熱を奪う方法という、主に二つのメカニズムを利用します[17]。通常、周囲の温度がある程度変化しても、体の深部体温はわずかな変動にとどまるほど、この体温調節システムは効率的です。しかし同報告は、この仕組みには汗の蒸発に大きく依存しているという弱点があり、空気中の湿度が高いと汗の蒸発による冷却が妨げられ、体の主要な冷却メカニズムがほぼ無効になると指摘しています[17]。日本特有の高温多湿な夏が特に危険なのはこのためで、東京消防庁の報告でも、気温がそれほど高くない日であっても高い湿度が救急搬送の増加と関連することが示されています[7]。つまり危険は「気温」だけでなく、「気温と湿度の組み合わせ」から生じるのです。

StatPearlsの報告によれば、発熱は、細菌やウイルスへの感染に対し、免疫系が視床下部の設定温度を意図的に高く再設定することで起こる制御された防御反応です[17]。体はその新しい設定温度に到達しようとするため、発熱の初期には悪寒や震えが生じ、末梢血管が収縮して熱を保持し、筋肉の震えで熱を産生します。同報告によれば、免疫系が病原体を制御すると、視床下部は設定温度を通常レベルに戻し、体は血管を拡張させ汗をかいて余分な熱を放出します[17]。これに対し熱中症は、国際的な医学研究の報告によれば、視床下部の設定温度は正常なまま、体が環境や運動から生じる熱に対抗して十分に放熱できず、深部体温が制御不能に急上昇する状態です[11]。解熱剤は視床下部の「設定温度」を下げることで効くため、集中治療専門誌の報告によれば、設定温度自体は正常な熱中症には効果がなく、すでにストレスを受けている肝臓・腎臓への負担を増やす恐れがあります[16]。

国際的な医学研究の報告によれば、熱中症は主に二つのタイプに分類されます[11]:

  • 非労作性熱中症(古典的熱中症):高齢者や乳幼児、慢性疾患を持つ人など、脆弱な人々が高温多湿の環境に長時間さらされることで発症します。
  • 労作性熱中症:アスリートや建設作業員など、健康で活動的な人が激しい身体活動で体の冷却能力を超える熱を産生することで発症します。

重症化すると、熱中症は単なる高体温にとどまらず、全身の細胞やたんぱく質が熱によって損傷を受け、複数の臓器に影響が及ぶ状態へ進行することがあります。集中治療専門誌の報告によれば、具体的には、筋肉の細胞が壊れる横紋筋融解症、肝機能・腎機能の低下、血液が固まりやすくなる播種性血管内凝固症候群(DIC)などの合併症が知られており、これらは病院での集中的な管理・治療の対象となります[16]。だからこそ、現場での早期の冷却と、必要なタイミングでの医療機関への搬送が、重症化を防ぐ鍵になります。

熱中症の重症度分類と応急処置 — 日本救急医学会の基準

日本救急医学会は2000年以降、「具体的な治療の必要性」の観点から熱中症をⅠ度(現場での応急処置で対応できる軽症)、Ⅱ度(病院への搬送を必要とする中等症)、Ⅲ度(入院して集中治療が必要な重症)に分類してきました。重症度判定で最も重要なのは意識の状態で、「意識がない」場合はすべてⅢ度(重症)に分類し、絶対に見逃してはいけません[1]。

2024年版ガイドラインでは、Ⅲ度のうち特に注意を要する最重症群として、深部体温40.0℃以上かつ意識障害が高度(グラスゴー・コーマ・スケールGCS≦8)な状態を新たに「Ⅳ度」として区分しています[6]。この見直しの背景には、従来のⅢ度(2015年分類)が、軽度の意識障害のみが該当する場合から、昏睡やDIC(播種性血管内凝固症候群)などの多臓器不全を呈する致死的な状況までを同じ範疇に扱う幅広い定義になっていたことがあります。2023年の全国の熱中症搬送者数が91,467人に上り、死亡者数も毎年1,000人を超える状況が続く中、重症例の中でもさらに注意を要する最重症群を早期に識別し、Active Cooling(積極的な冷却)を含めた集学的治療をより早く開始できるようにする狙いがあります[6]。軽症例(Ⅰ~Ⅱ度)については、涼しい部屋での休憩と水分・電解質補給(Passive Cooling)で症状が軽快することが多い一方、改善に乏しい場合は深部体温を測定したうえで、より積極的な冷却を行うべきとされています[6]。

出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」[1]・総務省消防庁 熱中症予防リーフレット[4]をもとにJHO編集部が作図

表1:熱中症の重症度分類と対応(環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」・日本救急医学会2024年版に基づく)[1][6]
重症度 主な症状 応急処置 受診・搬送の目安
Ⅰ度(軽症) 意識ははっきりしている/手足のしびれ/めまい・立ちくらみ/こむら返り(筋肉痛) 涼しい場所へ移動→安静→衣服を緩める→冷やした水分・塩分を自分で飲んでもらう 現場で対応し経過観察。症状が改善すれば受診の必要なし
Ⅱ度(中等症) 頭痛/吐き気・嘔吐/だるさ(倦怠感)/意識が何となくおかしい Ⅰ度と同じ処置に加え、皮膚を濡らして扇ぐ・氷で冷やす 口から飲めない場合、または症状の改善が見られない場合はすみやかに医療機関を受診
Ⅲ度・Ⅳ度(重症) 意識障害(呼びかけへの返事がおかしい/意識がない)/けいれん/まっすぐ歩けない・走れない/体が熱い。Ⅳ度は深部体温40.0℃以上かつ高度の意識障害 直ちに119番通報。到着までの間、積極的に首・脇の下・足の付け根を冷やす 救急車を要請し、できる限り早く医療機関へ搬送。意識障害がある場合、口から水分を飲ませない

出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」[1]/日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」[6]

すぐに119番が必要なサイン(環境省・日本救急医学会の基準)

  • 環境省の指針が示す重症サイン:呼びかけや刺激に対する反応がおかしい、または意識がない[1]
  • 同マニュアルが示すサイン:けいれんしている(体がひきつる)[1]
  • 同マニュアルが示すサイン:まっすぐ歩けない・走れない(運動障害)[1]
  • 日本救急医学会のⅣ度基準:体が熱い、または深部体温が40℃前後まで上がっている[6]
  • 環境省の指針が示すサイン:吐き気を訴える・吐く、または自力で水分が摂れない(Ⅱ度でも点滴のための搬送が必要)[1]

これらのサインがあるときは、涼しい場所へ移動・衣服を緩める応急処置と並行して119番通報を行い、救急隊の到着を待つ間も冷却をやめないことが重要です[1]。「まず冷やせ、しかる後運べ」という考え方のとおり、搬送を急ぐことと同じくらい、その場での冷却開始が命を守るカギになります。意識障害があるときに口から水分を飲ませると、誤って気道に入る危険があるため禁物です[1]。

応急処置の具体的な手順 — 体を冷やす3か所と水分・塩分の与え方を確認する

現場での応急処置は、①涼しい場所への避難、②脱衣と冷却、③水分・塩分補給の3ステップです[1]。

  1. 涼しい場所へ移動:環境省の指針が示すとおり、日陰やエアコンの効いた室内など、涼しい場所へ移動させ、衣服を緩めて安静に寝かせます[1]。
  2. 体を冷やす:エアコンをつける、扇風機やうちわで風を当てる、皮膚を濡らして扇ぐなどで体を冷やします。同指針が示すとおり、前頸部(首の両側)、腋窩部(脇の下)、鼠径部(足の付け根)など太い血管が皮膚の近くを通る場所を、冷えたペットボトルや氷のうで集中的に冷やすと効果的です[1]。労作性の重症(意識障害を伴う熱射病)が疑われる場合、全身を冷水に浸ける「冷水浴法」が体温低下率が最も高いとされますが、医療有資格者による直腸温の継続モニタリング体制がない場合は、ホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」が推奨されます[1]。
  3. 水分・塩分の補給:応答が明瞭で意識がはっきりしていれば、冷たい水分を自分で飲んでもらいます。同指針によれば、大量に汗をかいた場合は、経口補水液やスポーツドリンク、または水1リットルに食塩1〜2g(小さじ1/3程度)と砂糖20〜40gを溶かした自家製の経口補水液も有効です[1]。環境省の指針が警告するとおり、「呼びかけへの反応がおかしい」「意識障害がある」「吐き気を訴える・吐く」場合は、口から水分を飲ませるのは禁物で、すぐに病院での点滴が必要です[1]。

同指針によれば、自力で水分の摂取ができないときは、塩分を含めて点滴で補う必要があるため、緊急で医療機関に搬送することが最優先です[1]。同指針によれば、医療機関を受診する熱中症の約1割弱がⅡ度・Ⅲ度に相当し、輸液や血圧・尿量のモニタリング、肝機能・腎機能の検査が必要になります[1]。


国家的な健康課題としての熱中症 — 最新の救急搬送統計データを見る

熱中症による救急搬送は日本で予測可能かつ増加傾向にある公衆衛生上の課題です。総務省消防庁の集計によると、令和7年(2025年)5~9月の熱中症による救急搬送人員の累計は100,510人で、調査を開始した平成20年以降で最も多い数字でした。特に6月は過去最多の搬送人員でした[4]。年齢区分別では高齢者が半数以上を占め、初診時の傷病程度別では全体の3割以上が入院(重症・中等症)を要しました。発生場所別では、住居(敷地内すべての場所を含む)での発生が約4割を占めています[4]。

表2:東京における熱中症による救急搬送統計(令和7年6~9月)[7]
項目 詳細な数値
総救急搬送件数 9,125人。過去最多を記録[7]。
年齢別分布 65歳以上の高齢者が4,803人(全体の52%以上)。うち75歳以上の後期高齢者が3,663人(高齢者の70%以上)を占める[7]。
重症度 中等症以上が3,596人(約40%)。うち重症以上251人、重篤51人、死亡1人[7]。
発生場所 「住宅等居住場所」が最も多く3,288人(36.0%)。「道路・交通施設等」が3,185人(34.9%)で続く。高齢者の約半数(2,229人)が自宅で発症[7]。

出典:東京消防庁「熱中症に注意」[7]

これらの数字は単なる統計ではありません。特に高齢者において、住居内での発症割合が高いという事実は、熱中症が主に屋外の危険であるという一般的な認識を覆すものです。全体の3割以上が入院を要する中等症以上と診断されている点も、熱中症が「様子を見ていれば治る」軽い体調不良ではなく、医療資源を要する救急疾患であることを示しています[4][7]。年齢層別・発生場所別のデータを継続して確認することは、地域や家庭ごとに、どこに注意を集中すべきかを判断するうえでも役立ちます。

危険にさらされやすい人と環境

データは、誰もが熱中症になる可能性がある一方で、危険が均等に分布しているわけではないことを示しています。年齢や持病、住まいの環境、活動内容によって危険度は大きく異なるため、自分や家族がどのグループに当てはまるかを知っておくことが、効果的な予防につながります。

高危険群の人々

データは、誰もが熱中症になる可能性がある一方で、危険が特定の人々に集中していることも示しています。以下のグループは、生理学的な理由や生活環境の理由から、特に注意が必要です。

  • 高齢者:StatPearlsの報告によれば、発症数・死亡率ともに最も危険が高いグループです。喉の渇きを感じにくくなること、発汗能力の低下、熱ストレスへの心血管系反応の遅れ、周囲の温度変化を感知する能力の低下などが理由に挙げられ、手遅れになるまで危険な暑さに気づかないことがあります[17]。
  • 乳幼児・小児:国際的な研究報告によれば、体重に対する体表面積の比率が大きく環境からの熱を速く吸収するうえ、体温調節システムが未発達で、水分補給を養育者に依存しています[11]。こども家庭庁の報告でも、身長が低いため、周囲の空気より高温になるアスファルトなどの熱い地面に近いことが危険を高めると指摘されています[9]。
  • 慢性疾患を持つ人々:国際的な研究報告によれば、心血管疾患、糖尿病、腎臓病、精神疾患などの病状は熱中症の危険を高めます。利尿薬やベータ遮断薬、抗コリン薬などの一部の薬剤は、体の体温調節能力を妨げる可能性があります[11]。
  • 屋外労働者・アスリート:スポーツ医学誌の報告によれば、労作性熱中症の主な当事者です。建設業や持久力が求められるスポーツなど、高強度の身体活動が体の冷却能力をはるかに超える大量の内因性熱を産生します[13]。

高危険群の環境

人だけでなく、過ごす環境そのものが熱中症のリスクを大きく左右します。次のような環境では、特に注意が必要です。

  • エアコンがない、または使用しない住宅:東京都熱中症対策ポータルの調査報告では、高齢者の熱中症による死亡の多くが自宅で発生しており、その相当割合がエアコンを所有していながら使用していなかったケースでした。電気代への懸念や「我慢できる」という思い込みが背景にあると考えられ、最も安全であるはずの家が危険な場所になり得ることを同報告は示しています[10]。
  • 自動車内:こども家庭庁の報告によれば、日光の下に駐車された車内の温度はわずか数分で危険なレベルまで上昇することがあります。短時間でも子供を車内に放置してはいけません[9]。
  • ピーク時間帯の屋外:環境省の指針によれば、気温・WBGTが上がりやすい日中の時間帯は救急搬送件数が増える傾向があり、この時間帯の不要不急の屋外活動は避けるべきです[1]。

予防策は、最も脆弱なグループの特定のニーズに合わせて調整する必要があります。慢性疾患(心血管疾患、糖尿病、腎臓病など)を持つ人は、かかりつけの医師と「暑熱対策行動計画」を立て、服用中の薬(利尿薬・ベータ遮断薬・抗コリン薬など体温調節に影響しうる薬)の見直しについて相談しておくことが国際的な研究報告でも勧められています[11]。特に糖尿病がある方は、発汗による脱水と血糖コントロールが互いに影響し合うため、糖尿病と脱水・入浴の注意点もあわせて確認しておくと安心です。

気候変動と将来の熱中症搬送数の予測

地球温暖化の進行により、日本の年平均気温は1981~2000年と比べ、21世紀半ば(2031~2050年)には気温上昇の小さいシナリオで1.9℃、大きいシナリオで2.1℃、21世紀末(2081~2100年)には小さいシナリオで1.9℃、大きいシナリオで4.8℃上昇すると予測されています。この気温上昇に伴い、21世紀半ばには1.7~1.9倍、21世紀末には1.8~4.6倍に、日本全体の熱中症搬送数が増加すると予測されており、西日本と比べて東日本以北(特に北海道・東北)で増加率が大きくなる見込みです[1]。令和7年(2025年)の搬送実績がすでに調査開始以降で最多を更新していることも踏まえると、予防知識の普及は今後さらに重要性を増すといえます[4]。

暑さ指数(WBGT)と熱中症警戒アラート

熱ストレスの危険を評価するには、気温だけでなく、気温・湿度(湿球温度)・日射や輻射熱(黒球温度)を組み合わせた「暑さ指数(WBGT)」を用いることが環境省の指針で推奨されています[1]。環境省の指針によれば、全国約840地点のWBGT実況値・予測値を提供する「熱中症予防情報サイト」を運用し、気象庁の観測データに基づいて算出しています[1]。日本生気象学会の「日常生活における熱中症予防指針」は、WBGTの基準域を4段階に分けて注意事項を示しています[1]。

表3:暑さ指数(WBGT)に応じた注意事項(日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針 Ver.3.1」より)[1]
WBGT基準域 注意すべき生活活動の目安 日常生活における注意事項
危険(31以上) すべての生活活動でおこる危険性 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内へ移動する。
厳重警戒(28以上31未満) すべての生活活動でおこる危険性 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。
警戒(25以上28未満) 中等度以上の生活活動でおこる危険性 運動や激しい作業をする際は定期的に十分な休息を取り入れる。
注意(25未満) 強い生活活動でおこる危険性 一般に危険性は少ないが、激しい運動や重労働時には発生する危険がある。

出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」所収・日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針 Ver.3.1」(2021)[1]

環境省は日最高暑さ指数が33以上と予測された対象地域に「熱中症警戒アラート」を発表しています(前日17時頃・当日5時頃発表、毎年4月第4水曜~10月第4水曜の期間、全国を58の府県予報区等に分けて発表)[2]。アラートが発表された地域では、高齢者・子ども・持病のある方への声かけ、不要不急の外出を控える、エアコンを適切に使うなどの行動が呼びかけられます[2]。地域や家庭ごとに暑さ指数を日々チェックする習慣をつけておくと、気温だけでは見えない「隠れた危険日」にも気づきやすくなります。

予防のための行動計画 — 暑熱順化と水分・塩分補給

予防は熱中症との戦いにおいて最も効果的な手段の一つであり、体づくり・水分と塩分の管理・生活環境の3つの柱で考えると実践しやすくなります。

暑熱順化(体を暑さに慣らす)

暑い日が続くと体が徐々に暑さに慣れ、暑熱環境での体温上昇や心拍数増加といった生理的ストレスが軽減されます(暑熱順化)。順化すると循環血液量が増え、発汗開始が早まり、同じ体温に対する発汗量も増え、さらに汗に含まれる塩分の濃度が低下して重要な電解質を体内に保持しやすくなるため、より効果的に体温調節ができるようになると環境省の指針は説明しています[1]。「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度のウォーキングなどを毎日30分程度続けることで暑熱順化を獲得でき、効果は運動開始数日後から現れ、2週間程度で完成するとされています。同指針によれば、日頃から汗をかく習慣を身につけて順化しておけば、本格的な夏の暑さに対しても体がより早く準備できることになり、生活習慣病の予防にもつながるとされています[1]。

水分・塩分補給

冷たい水を自分で飲んでもらうと、胃の表面から熱を奪うと同時に水分補給もできます。環境省の指針によれば、大量に発汗した場合は、汗で失われた塩分も補える経口補水液やスポーツドリンクが最適で、水1リットルに食塩1~2gを溶かした食塩水も有効です[1]。喉が渇いたと感じてから飲むのではなく、こまめに水分を摂ることが基本です。水だけを大量に飲み、塩分を補わずにいると、血液中のナトリウム濃度が薄まる低ナトリウム血症のような状態を招くおそれもあるため、汗を多くかく時期は水分と塩分をセットで補給する意識が大切だと環境省の指針も説明しています[1]。

日常生活での工夫

  • エアコンの使用:環境省の指針でも最も効果的な対策とされています。高齢者や幼児がいる場合はためらわず使用します。温度を適切に設定し、扇風機やサーキュレーターで涼しい空気を循環させましょう[2]。
  • 日差しを遮る:環境省の指針が勧めるとおり、カーテンやすだれを使い、直射日光が室内に入るのを防いで室温上昇を抑えます[2]。
  • 服装:こども家庭庁の報告が勧めるとおり、ゆったりとした通気性の良い服で、空気の循環と汗の蒸発を促します[9]。
  • スケジュール調整:環境省の指針が勧めるとおり、気温が最も高い時間帯の激しい身体活動を避けます[1]。
  • 飲み物の選び方:環境省の指針によれば、カフェインを含む飲料やアルコールは利尿作用があり、脱水を悪化させる可能性があるため、水分補給の中心には向きません[1]。

職場(労働現場)での対策

屋外・高温多湿の作業場所では、WBGT値を測定して熱中症リスクを把握することが基本です。環境省のマニュアルでは、身体作業強度と暑熱順化の有無に応じたWBGT基準値が示されており、測定値がこの基準値を超える、または超えていると考えられる状況では、作業環境管理・作業管理・健康管理の観点から対策を実行することが環境省の指針で求められています[1]。管理面の対策の一つが、WBGT値に応じた休憩時間の確保です。暑熱順化した作業者でも、WBGTが基準値を1℃程度超過しているときは1時間あたり15分以上、2℃程度超過では30分以上、3℃程度超過では45分以上の休憩が目安とされ、それ以上の超過では作業中止が望まれます。同指針によれば、暑さに十分慣れていない作業者(作業開始からの日が浅い人を含む)は、これよりもさらに多めの休憩を確保する必要があります[1]。

高齢者・子どもの見守りポイント

  • こども家庭庁・環境省の指針が勧めるとおり、一人暮らしの高齢者を定期的に見守り、エアコンが正常に機能し使用されているか確認する。喉の渇きを感じなくても水分を摂るよう勧める[9]。
  • こども家庭庁の報告が警告するとおり、子供を車内に一人で、たとえ1分でも放置しない。帽子と通気性の良い服を着せ、遊んでいるときはこまめに休憩と水分補給をさせる[9]。

今日からできるチェックリスト

大がかりな備えでなくても、日々の小さな習慣の積み重ねが熱中症のリスクを大きく下げます。次の項目を、家族や職場で一つずつ確認してみましょう。

  • □ 環境省の指針どおり、エアコンの設定温度と室温を確認する(我慢せず使う)[2]
  • □ 環境省の指針が勧めるとおり、喉が渇く前に、こまめに水分・塩分を摂る習慣をつける[1]
  • □ こども家庭庁の報告・呼びかけにもあるとおり、一人暮らしの高齢者・持病のある家族に、暑い日は電話や訪問で様子を確認する[9]
  • □ 環境省の指針サイトで、外出前に地域のWBGT・熱中症警戒アラートを確認する[2]
  • □ 環境省の応急処置指針に沿って、首・脇の下・足の付け根を冷やす保冷剤やタオルを常備しておく[1]
  • □ 環境省の指針が示す意識障害・けいれん・体が熱いなどのサインを家族で共有し、迷わず119番できるようにしておく[1]

受診の目安 — 何科を受診し、どんなときに救急要請するか

厚生労働省も、環境省の応急処置フロー(涼しい場所へ移動→対処方法を確認)を熱中症関連情報として案内しています[3][8]。熱中症が疑われるときの受診・搬送の目安は、重症度分類の表1に示したとおりです。目安をまとめると次のとおりです[1]。

  • 受診の必要なし:Ⅰ度の症状(めまい・こむら返りなど)が、涼しい場所での安静と水分・塩分補給で改善した場合。
  • すみやかに医療機関を受診:頭痛・吐き気・だるさが続く、自力で水分が摂れない、応急処置をしても症状が改善しない場合(内科・救急外来)。
  • 直ちに救急車(119番):意識障害・けいれん・運動障害・体が熱いなど、Ⅲ度・Ⅳ度が疑われる場合。迷いがある場合も、症状が急に進行する疾患であるため、早めに救急相談窓口や119番へ相談することが環境省の指針でも推奨されています[1]。

医療機関へ搬送する際は、発症までの経過や発症時の状況をよく知る人が付き添い、症状の推移を伝えられるようにしておくことが、迅速な検査・治療につながります。熱中症は症例によって急速に進行し重症化することがあるため、医療機関到着時に熱中症を疑った検査と治療がすぐ始められるよう、その場に居合わせた最も状況をよく知る人が付き添うことが環境省の指針で推奨されています[1]。特に「暑い環境で、それまで元気だった人が突然倒れた」といった、熱中症を強く疑わせる情報は、医療機関が処置を即座に開始するために重要な手がかりになるため、積極的に伝えることが大切です。この情報が十分伝わらないと、意識障害の患者として診断に手間取るなど、熱中症への対応が遅れる恐れがあります。同指針によれば、あらかじめ伝える内容を整理しておくと、医療機関側も熱中症を疑った検査・治療をより早く始めやすくなります[1]。

救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合のために、総務省消防庁は全国版救急受診アプリ「Q助」を提供しています。症状をチェックすることで緊急度の目安を確認でき、体調に異変を感じた場合は無理せず119番通報することが呼びかけられています[4]。救急車を待つ間も、その場でできる環境省の指針が示す応急処置(涼しい場所への移動、衣服を緩める、首・脇の下・足の付け根の冷却)を続けることが、その後の経過を大きく左右します[1]。

受診時に伝えるメモ(印刷して持参可):①いつ・どこで発症したか(時刻・気温・湿度・屋内外) ②発症前の活動内容(労働・運動の有無) ③症状の経過(意識の変化・けいれんの有無・体温) ④これまでの水分・塩分補給の内容と量 ⑤持病・服用中の薬 ⑥応急処置として行ったこと(冷却の方法・時間) ⑦「暑い環境で急に倒れた」など熱中症を疑わせる状況の有無
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治療の考え方 — 「まず冷やせ、しかる後運べ」の原則を理解する

重度の熱中症では、現場での積極的な冷却をできるだけ早く開始することが、搬送を急ぐことと同じか、それ以上に重要とされています。冷却の開始が早いほど、脳や他の臓器への障害のリスクを抑えられます[13]。米国集中治療医学会(SCCM)の2025年版ガイドラインは、受動的な方法ではなく積極的な冷却法を強く推奨し、冷水または氷水への浸漬が最も速い冷却速度を達成できる方法だとしています[14][15]。環境省の指針も同様に、労作性の重症(意識障害を伴う熱射病)が疑われる場合は全身を冷水に浸ける方法が最も体温低下率が高いとしつつ、直腸温を継続的にモニターできる人的・物的環境が整っていない現場では、ホースで全身に水をかけ続ける方法を推奨しています。同指針によれば、いずれの方法でも、救急車を要請した後もその到着前から冷却を開始し、できるだけ早く体温を下げることが救命につながるとされています[1]。

病院搬送後は、静脈内輸液による電解質補正、直腸温などによる継続的な深部体温モニタリング、横紋筋融解症や播種性血管内凝固症候群(DIC)といった合併症への支持療法が行われます[16]。

病院での治療 — 輸液・体温モニタリング・合併症管理

傷病者が病院に搬送されると、治療は現場での応急処置から次の段階へ引き上げられます。主な介入には次のものが含まれます。

  • 静脈内輸液と電解質補給:国際的な研究報告によれば、飲水不能または重度の脱水状態の患者には、循環血液量を迅速に回復させるための静脈内輸液が行われます[11]。
  • 継続的な深部体温モニタリング:直腸や食道のプローブなどで深部体温を正確に監視し、冷却措置を適時に調整します[17]。
  • 合併症の管理:重度の熱中症は、多臓器不全、横紋筋融解症(筋肉の分解)、播種性血管内凝固症候群(DIC)など危険な合併症を引き起こすことがあり、影響を受けた臓器への支持療法が重要です[16]。

日本国内における冷水浸漬法の普及率や、個々の医療機関での対応可能な冷却設備の整備状況、地域ごとの受け入れ体制の詳細については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。現場での対応可能性は施設によって異なるため、詳しくは搬送先の医療機関や地域の消防本部にご確認ください。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

よくある質問

熱中症と発熱の最も重要な違いは何ですか?
体の「サーモスタット」である視床下部の状態が異なります。発熱では視床下部が意図的に体温の設定値を高くし、体はそれに合わせて熱を産生します(このため発熱の初期には悪寒や震えが起こります)。熱中症では設定値は正常なままですが、暑さや湿度、運動によって体の冷却システムが機能不全に陥り、制御不能に体温が上昇します。そのため発熱に効く解熱剤は、設定値自体が正常な熱中症には効果がなく、すでに熱でストレスを受けている肝臓・腎臓への負担を増やす恐れもあります[17]。
なぜ高齢者は自宅で熱中症になりやすいのですか?
StatPearlsの報告によれば、高齢者は喉の渇きを感じにくく、汗をかきにくく、熱ストレスに対する心血管系の反応が遅れるなど、生理的に熱中症になりやすい特徴があります。そのため、手遅れになるまで自分が危険な暑さの中にいることに気づかない場合があります[17]。東京都のデータでも、自宅で熱中症になる高齢者の多くがエアコンを所有していても使用していなかったことが報告されており、電気代への懸念や「我慢できる」という思い込みが背景にあると考えられています[10]。
重度の熱中症の人を見つけたら、まず何をすべきですか?
119番通報と体を冷やすことを同時に行います。環境省の指針が示すとおり、涼しい場所へ移動し、首・脇の下・足の付け根を集中的に冷やしながら救急隊の到着を待ちます[1]。意識障害がある場合は、口から水分を飲ませてはいけません[1]。
熱中症予防には、水だけを飲んでいれば十分ですか?
いいえ。大量に汗をかくと水分だけでなくナトリウムなどの塩分も失われます。水だけを大量に飲むと血液中の電解質濃度が薄まることがあるため、環境省の指針によれば、経口補水液やスポーツドリンク、または水1リットルに食塩1~2gを加えた食塩水などで塩分も補うことが重要です[1]。
熱中症警戒アラートはどのような基準で発表されますか?
対象地域内のいずれかの地点で、日最高暑さ指数(WBGT)が33以上と予測された場合に、前日17時頃または当日5時頃発表されます。発表期間は毎年4月第4水曜から10月第4水曜までです[2]。
子どもが車内に取り残されるとどれくらい危険ですか?
日光の下に駐車した車内の温度はわずか数分で危険なレベルまで上昇することがあります。こども家庭庁の報告が警告するとおり、たとえ短時間・エンジンを切った直後でも、子供を車内に一人で残してはいけません[9]。
暑熱順化にはどれくらいの期間がかかりますか?
「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる環境省の指針によれば、強度の運動を毎日30分程度続けることで獲得できます。効果は運動開始数日後から現れ始め、2週間程度で完成するとされています[1]。
Ⅱ度(中等症)とⅢ度(重症)はどう見分ければよいですか?
最も重要な手がかりは意識の状態です。頭痛・吐き気・だるさがあっても受け答えが正常であればⅡ度の可能性が高く、自力で水分が摂れず改善しなければ受診が必要です。環境省の指針によれば、少しでも意識がおかしい、または反応がなければⅢ度以上として扱い、119番通報します[1]。
子どもや高齢者は、どうして熱中症になりやすいのですか?
子どもは体重に対する体表面積の比率が大きく熱を吸収しやすいうえ体温調節が未発達で、高齢者は喉の渇きを感じにくく発汗機能が低下しているためです。厚生労働省・こども家庭庁も、両者を熱中症の重点対象として注意を呼びかけています[8][9]。
スポーツや労働中の熱中症(労作性熱中症)に特有の注意点は何ですか?
アスリートや建設作業員などは、激しい運動・作業で生じる大量の内因性熱が体の冷却能力を超えることで発症します。暑熱順化ができていない時期や休憩不足が重なると危険性が高まるため、事前の体づくりと計画的な休憩が重要です[13]。作業場所ではWBGT値を測定し、基準値を超える場合は休憩時間を増やすなどの対策が求められます[1]。
クーリングシェルターとは何ですか?どこで利用できますか?
熱中症特別警戒アラートなどが発表された際に、暑さを避けるために自治体が開放する冷房の効いた公共施設です。ショッピングセンター、図書館、公民館などが指定されることが多く、具体的な開設場所は各自治体の熱中症対策ポータルサイトなどで確認できます[1]。
意識ははっきりしているのに水分が飲めない場合はどうすればよいですか?
吐き気を訴える・吐く場合は、すでに胃腸の動きが鈍っているサインで、口から水分を飲ませるのは禁物です。環境省の指針によれば、この場合はⅡ度(中等症)以上として扱い、すぐに医療機関を受診し、点滴による水分・塩分補給を受ける必要があります[1]。

研究の最前線と国際的な知見

総務省消防庁の調査報告では、熱中症による救急搬送人員の速報が毎週公表されており、地域・年齢別の傾向把握に活用されています[5]。日本救急医学会が2012年に実施した全国調査「Heatstroke STUDY」は、日本国内における熱中症の重症度別の実態を明らかにし、現在の重症度分類の基礎資料の一つとなりました[18]。環境省の資料は、熱中症の病態生理と救急医療における対応を整理しています[19]。国立保健医療科学院は、2024年版ガイドライン(Ⅳ度の新設を含む)の作成経緯とその特徴を解説しています[20]。学校現場では、千葉県教育委員会など各自治体が独自の熱中症対策ガイドラインを作成し、WBGTに基づく活動中止基準を設けています[21]。

予測研究の分野では、名古屋工業大学のチームが超高解像度の気象データと人体の生理モデルを組み合わせ、様々な都市環境における個々の熱中症リスクを予測するシミュレーションを開発し、都道府県ごとの熱中症搬送者数を1週間先まで予測する取り組みを47都道府県に拡大しています[22]。こうした研究が実用化されれば、地域ごとのリアルタイムのリスクマップや、高リスク者への個別化された注意喚起、猛暑時の救急隊・クーリングシェルターの配置最適化など、より能動的な公衆衛生対応につながる可能性があります。体温調節・発汗・脱水の生理学的メカニズムの研究は、なぜ高齢者などの特定の人々がより脆弱であるのかを解明するうえでも重要で、対象を絞った予防策の科学的基盤づくりに役立てられています[17]。

国際的にも、熱中症の診断・管理に関する系統的レビュー[12][24]や救急外来における根拠に基づく管理法の整理[25]、中国医師会による診療コンセンサス[26]が発表されており、「まず冷やす」という冷却優先の原則は各国のガイドラインでおおむね共通しています。生理学への理解、厳密なデータ分析、科学的根拠に基づく予防戦略を組み合わせることで、ますます暑くなる夏においても被害を最小限に抑える取り組みが各国で進められています。

まとめ

熱中症は、もはや単なる夏の風物詩ではなく、令和7年に救急搬送が過去最多を記録した公衆衛生上の課題です[4]。本記事の内容を、次の5つのポイントに集約します。

  1. 熱中症は医療緊急事態であり、単に「暑いと感じること」ではありません。発熱とは全く異なる病態で、解熱剤では治療できません[17]。
  2. 最大の危険地帯は屋外ではなく屋内です。高齢者は、エアコンを所有していても使わずに自宅で発症する例が多く報告されています。ためらわずエアコンを使用してください[10]。
  3. まず冷やし、しかる後運べ。重症の場合、現場での即時かつ積極的な冷却が搬送を急ぐことと同じくらい重要な救命措置です[1]。
  4. 賢く水分補給を。喉が渇く前に飲み、水だけでなく塩分(電解質)も補給してください[1]。
  5. 暑さ指数(WBGT)と熱中症警戒アラートを確認してください。気温だけでなく湿度・日射を含む指標に基づいて行動することが、身を守るうえで重要です[2]。

発熱との根本的な違いを理解して解熱剤の誤用を避けること、最大の危険地帯が屋外ではなく屋内・特に高齢者の住居であることを認識してエアコンの使用をためらわないこと、そして緊急時には「まず冷やす」という原則を実行すること。これらの知識が、回避可能な悲劇から命を守る一助になります。意識障害・けいれん・40℃前後の高体温など危険なサインがあれば、迷わず119番と冷却を同時に始めてください。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康上の懸念がある場合、または治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 環境省. 熱中症環境保健マニュアル2022 [インターネット]. 2022. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
  2. 環境省. 熱中症予防情報サイト:熱中症環境保健マニュアル~総論~(2025年7月版) [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual_ov.php
  3. 環境省. 熱中症予防情報サイト:熱中症の対処方法(応急処置) [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_checksheet.php
  4. 総務省消防庁. 熱中症予防リーフレット(令和7年度版) [インターネット]. 2026. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke003_leaflet.pdf
  5. 総務省消防庁. 熱中症情報(救急搬送人員速報) [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post3.html
  6. 日本救急医学会. 熱中症診療ガイドライン2024 [インターネット]. 2024. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.jaam.jp/info/2024/files/20240725_2024.pdf
  7. 東京消防庁. 熱中症に注意 [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/heat/toukei.html
  8. 厚生労働省. 熱中症関連情報 [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/index.html
  9. こども家庭庁. みんなで見守り「こどもの熱中症」を防ぎましょう! [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety-actions/cases/netchusho
  10. 東京都熱中症対策ポータル. 熱中症による救急搬送・死亡者の状況 [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://wbgt.metro.tokyo.lg.jp/heatstroke/transport/
  11. Bouchama A, Dehbi M, Mohamed G, Matthies F, Shoukri M, Menne B. Practical strategies for prevention and treatment of heat-induced illness. PLoS One. 2014;9(8):e105342. PMID: 25119634. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4131963/
  12. Hifumi T, Kondo Y, Shimizu K, Miyake Y. Diagnosis and Management of Heatstroke. J Intensive Care. 2020;8:30. PMID: 32291378. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32291378/
  13. Casa DJ, DeMartini JK, Bergeron MF, et al. Exertional heat stroke: an evidence based approach to clinical assessment and management. Br J Sports Med. 2022;56(13):725-734. PMID: 35771080. Available from: https://europepmc.org/article/MED/35771080
  14. Pease S, Morris A, Tainter C, et al. Society of Critical Care Medicine Guidelines for the Treatment of Heat Stroke. Crit Care Med. 2025;53(2):e58-e73. PMID: 39982186. Available from: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39982186/
  15. Society of Critical Care Medicine. Guideline for the Treatment of Heat Stroke [インターネット]. 2025. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.sccm.org/clinical-resources/guidelines/guidelines/guideline-for-the-treatment-of-heat-stroke
  16. Chaudhry R, Kucera K, Darocha J, Kumar G. Management of Heat-Related Illness and Injury in the ICU: A Concise Definitive Review. Crit Care Explor. 2024;6(1):e1028. PMID: 38240487. Available from: https://europepmc.org/article/MED/38240487
  17. Gauer R, Meyers BK. Heat Stroke. In: StatPearls [インターネット]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2024. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK537135/
  18. 日本救急医学会. 熱中症の実態調査−日本救急医学会Heatstroke STUDY2012最終報告−. 日本救急医学会雑誌. 2014;25(11):846-861. Available from: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/25/11/25_846/_article/-char/ja
  19. 環境省. 熱中症の病態と救急医療 [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/library/library_10.pdf
  20. 国立保健医療科学院. 熱中症診療ガイドライン2024の作成経緯とその特徴. 保健医療科学. 2025;74(2). Available from: https://www.niph.go.jp/journal/data/74-2/202574020004.pdf
  21. 千葉県教育委員会. 学校における熱中症対策ガイドライン [インターネット]. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/anzen/gakkouhoken/documents/r6necchusho-guideline.pdf
  22. 名古屋工業大学. 熱中症搬送者数予測の対象地域を47都道府県に拡大 [インターネット]. 2025. [2026年7月19日引用]. Available from: https://www.nitech.ac.jp/news/press/2025/12908.html
  23. Al-Hameed F, Al-Dorzi HM, Al-Bishi M, et al. A Systematic Review on Outcomes of Patients with Heatstroke and Heat Exhaustion. Cureus. 2023;15(9):e45842. PMCID: PMC10522494. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10522494/
  24. Liu C, Guntupalli K. Evidence-Based Heatstroke Management in the Emergency Department. Medicina (Kaunas). 2021;57(3):253. PMCID: PMC7972371. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7972371/
  25. Chinese Medical Association. Expert consensus on the diagnosis and treatment of heat stroke in China. Mil Med Res. 2020;7(1):1. PMCID: PMC6956553. Available from: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6956553/
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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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