子供の中耳炎 急性・滲出性の症状と違いは?ガイドラインに基づく治療法
この記事でわかること
目次
- 子供の中耳炎 急性・滲出性の症状と違いは?ガイドラインに基づく治療法
- 中耳炎の基本:中耳とは?なぜ子供は中耳炎になりやすいのか?
- 子供の中耳炎はどれくらい多いのか
- 急性中耳炎とは — ガイドラインの定義
- 滲出性中耳炎とは — ガイドラインの定義
- 重症度別の治療アルゴリズム — 抗菌薬はいつ必要か
- 軽症(スコア5点以下)
- 中等症(スコア6〜11点)
- 重症(スコア12点以上)
- 乳児と幼児で異なるサイン
- 滲出性中耳炎の治療 — 鼓膜チューブ留置はいつ必要か
- 受診前に知っておきたい検査の流れ
- 抗菌薬適正使用の考え方 — なぜ「様子見」が第一選択になるのか
- 家庭でできるケアと予防
- 中耳炎の合併症:放置するリスクとは?
- 医師に相談すべきタイミング
- 結論
- 関連する読み物
- よくある質問
- 参考文献
子供の中耳炎 急性・滲出性の症状と違いは?ガイドラインに基づく治療法
子供の中耳炎には大きく分けて「急性中耳炎」と「滲出性中耳炎」があります。急性中耳炎は耳痛・発熱・耳漏など急な炎症症状を伴うのに対し、滲出性中耳炎は急性炎症症状を伴わず、鼓膜の奥に貯留液がたまって聞こえが悪くなる状態です[2][3]。日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会の診療ガイドラインでは、急性中耳炎は耳痛・発熱・啼泣不機嫌・鼓膜の発赤や膨隆・耳漏の程度をスコア化し、軽症・中等症・重症に分類したうえで抗菌薬の要否を判断します[2]。軽症では抗菌薬を使わずに3日間経過観察するのが第一選択とされており、抗菌薬は自動的に処方されるものではありません[2]。以下では、急性中耳炎と滲出性中耳炎の違い、重症度の判定方法、ガイドラインが示す治療アルゴリズム、鼓膜チューブ留置の考え方を、学会ガイドラインと厚生労働省の統計に基づいて解説します。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
耳を痛がる・発熱する・耳だれが出るといった急な症状は急性中耳炎を、逆に急な症状はないのに呼びかけへの反応が鈍い・テレビの音を大きくするといった様子は滲出性中耳炎を疑うサインです。いずれも自己判断で様子を見続けず、耳鼻咽喉科(難しい場合は小児科)を受診してください。
要点まとめ
- ✓ 日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会は、急性中耳炎を「急性に発症した中耳の感染症で、耳痛、発熱、耳漏を伴うことがある」と定義しています[2]。
- ✓ 同学会は、滲出性中耳炎を「急性炎症を伴わず中耳に貯留液を認める状態であり、鼓膜に穿孔がなく、中耳腔に貯留液をもたらし難聴の原因となるが、急性炎症症状すなわち耳痛や発熱のない中耳炎」と定義しています[3]。
- ✓ 急性中耳炎診療ガイドライン2024年版は、耳痛・発熱・啼泣不機嫌・発赤・膨隆・耳漏をスコア化し、5点以下を軽症、6〜11点を中等症、12点以上を重症と分類しています[2]。
- ✓ ガイドラインでは軽症は抗菌薬非投与での3日間経過観察が第一選択とされ、改善しない場合に高用量アモキシシリン(AMPC)へ進むアルゴリズムが示されています[2]。
- ✓ 滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版は、3カ月を超えて遷延する両側性で良聴耳の聴力レベルが30dBを超える場合などに、鼓膜チューブ留置を速やかに行うことを推奨しています[4]。
編集方針・科学的根拠
この記事はJHO編集部がAIツールの支援を受け、日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会が公表する「小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版」「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版」、厚生労働省の患者調査、国立健康危機管理研究機構(JIHS、旧国立感染症研究所)の情報と照合して作成しています。特定の医師・医療機関による監修ではありません。抗菌薬の用量・適応などガイドラインの記述をそのまま要約している箇所は、原文の表現・数値を優先し、断定できない点は「〜とされています」と明記しています(2026年7月時点の情報)。誤りや古い情報にお気づきの際は、記事末尾からお知らせください。事実を確認のうえ訂正します。
🔧 急性中耳炎と滲出性中耳炎の違い早見表
| 項目 | 急性中耳炎 | 滲出性中耳炎 |
|---|---|---|
| 急性炎症症状 | あり(耳痛・発熱・耳漏など)[2] | なし[3] |
| 主な自覚症状 | 耳の痛み、発熱、機嫌が悪い、耳だれ | 聞こえにくさ(難聴)が中心、痛みは通常ない[3] |
| 鼓膜所見 | 発赤・膨隆・耳漏など急性炎症所見[2] | 穿孔はなく中耳腔に貯留液[3] |
| 治療の基本 | 重症度スコアに応じ経過観察〜抗菌薬[2] | 多くは経過観察、遷延例で鼓膜チューブを検討[4] |
| 見逃しリスク | 症状が目立つため気づかれやすい | 痛みがなく、言葉の発達の遅れとして気づかれることがある |
急性中耳炎から治りきらずに滲出液だけが残り、そのまま滲出性中耳炎に移行するケースも少なくありません。急性期の症状が治まったあとも、しばらくは耳鼻咽喉科で鼓膜の状態を確認してもらうことが大切です。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
中耳炎の基本:中耳とは?なぜ子供は中耳炎になりやすいのか?
私たちの耳は、外側から「外耳」「中耳」「内耳」の3つの部分に分かれています。中耳は鼓膜とその奥にある小さな空間(鼓室)を指し、この中にはツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨という「耳小骨」と呼ばれる3つの骨があります。鼓膜が受け取った音の振動は、この耳小骨によって増幅され、内耳へと伝えられます。中耳は「耳管」という管で鼻の奥とつながっており、中耳の圧力を調整する重要な役割を担っています。
子供、特に乳幼児が中耳炎に頻繁にかかりやすいのには、解剖学的な理由があります。子供の耳管は大人に比べて太く、短く、そして角度が水平に近いため、鼻や喉の細菌・ウイルスが中耳に侵入しやすくなっています。また、アデノイド(鼻の奥にある扁桃腺の一種)は幼児期に最も大きくなる傾向があり、炎症を起こしたり大きくなりすぎたりすると耳管の入り口を塞ぎ、中耳炎の原因となることがあります。鼻づまりやいびきが強く、中耳炎を繰り返す場合は、アデノイド肥大の関与についても耳鼻咽喉科で相談してみるとよいでしょう。
子供の中耳炎はどれくらい多いのか
厚生労働省の患者調査によれば、「耳及び乳様突起の疾患」で医療機関を受診する患者は多く、中耳炎は子どもがかかりやすい身近な病気です[1]。乳幼児は耳管(耳と鼻の奥をつなぐ管)が大人より水平で太く短いため、鼻や喉の感染が中耳に波及しやすく、中耳炎は乳幼児期に非常にありふれた病気です。特に2歳未満での罹患は珍しくなく、ガイドラインの重症度判定でも「24カ月未満」であること自体が重症化リスクの一因として加点対象になっています[2]。
急性中耳炎とは — ガイドラインの定義
日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会の「小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版」は、急性中耳炎を「急性に発症した中耳の感染症で、耳痛、発熱、耳漏を伴うことがある」と定義しています[2]。「急性に発症」とは、本人や保護者が急性症状に気づき、その症状が続いている間に受診した場合を指し、ガイドラインによれば急性炎症の持続期間は3週を超えないことが一般的な定義とされています[2]。同ガイドラインは、慢性中耳炎が急に悪化した場合は病態が異なるため急性中耳炎には含めないとしています[2]。
診断には鼓膜所見の確認が必須です。ガイドラインは、急性中耳炎の診断・重症度判定の項目として、耳痛、発熱、啼泣・不機嫌(言葉で症状を訴えられない乳幼児のための指標)、鼓膜の発赤、鼓膜の膨隆、耳漏(耳だれ)を挙げています[2]。
滲出性中耳炎とは — ガイドラインの定義
「小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版」は、滲出性中耳炎を「急性炎症を伴わず中耳に貯留液を認める状態であり、鼓膜に穿孔がなく、中耳腔に貯留液をもたらし難聴の原因となるが、急性炎症症状すなわち耳痛や発熱のない中耳炎」と定義しています[3]。同ガイドラインによれば英語ではotitis media with effusion(OME)と呼ばれます[3]。
同ガイドラインは、抗菌薬治療を行った急性中耳炎のあとでも4〜6週で45%、3カ月で21%の小児に中耳貯留液が残るとする報告を紹介しています[3]。つまり、急性中耳炎の治療がうまくいっても、しばらくは滲出液が残って聞こえにくさが続くことがあり、これ自体は珍しいことではありません。耳の痛みや発熱がなくても、テレビの音が大きい、呼びかけへの反応が鈍いといった様子が続く場合は、滲出性中耳炎の可能性を考えて耳鼻咽喉科を受診してください。
🔧 急性中耳炎の重症度スコア(診療ガイドライン2024年版)
| 項目 | 0点 | 加点 |
|---|---|---|
| 耳痛 | なし | 1点/2点 |
| 発熱 | なし | 1点/2点 |
| 啼泣・不機嫌 | なし | 1点 |
| 鼓膜の発赤 | なし | 2点/4点 |
| 鼓膜の膨隆 | なし | 4点/8点 |
| 耳漏(耳だれ) | なし | 4点/8点 |
| 年齢24カ月未満 | 該当なしなら0点 | 該当すれば3点加算 |
ガイドラインは、合計点数が5点以下を軽症、6〜11点を中等症、12点以上を重症と分類しています[2]。このスコアは保護者が自己判定するためのものではなく、耳鼻咽喉科医が鼓膜所見を実際に観察したうえで用いる基準です。ご家庭では「痛みの強さ・発熱の有無・耳だれの有無」だけでもメモしておくと、受診時に医師へ正確に伝えられます。
重症度別の治療アルゴリズム — 抗菌薬はいつ必要か
診療ガイドライン2024年版は、重症度スコアに応じて3段階の治療アルゴリズムを示しています[2]。いずれの重症度でも、抗菌薬を使う前に上咽頭または中耳貯留液・耳漏の細菌検査を行い、原因菌と感受性を考慮して薬剤を選ぶことが前提とされています[2]。
軽症(スコア5点以下)
第一選択は抗菌薬を使わない3日間の経過観察です。改善がなければ高用量アモキシシリン(AMPC)を3〜5日間投与し、それでも改善しない場合、ガイドラインは原因菌と感受性を考慮してクラブラン酸/アモキシシリン配合剤(CVA/AMPC 1:14製剤)またはセフテラム ピボキシル高用量(CDTR-PI高用量)のいずれかを3〜5日間投与するとしています[2]。
中等症(スコア6〜11点)
高用量AMPCを3〜5日間投与(鼓膜切開の適用を検討)し、改善しなければCVA/AMPC 1:14製剤またはCDTR-PI高用量のいずれかを投与、ガイドラインではそれでも改善しなければCVA/AMPC・CDTR-PI高用量に加えてTBPM-PI常用量・TFLX常用量も選択肢に入るとされています(いずれも鼓膜切開の適用を検討)[2]。
重症(スコア12点以上)
AMPC高用量またはCVA/AMPC 1:14製剤を3〜5日間投与(鼓膜切開の適用を検討)し、改善しなければCVA/AMPC・CDTR-PI高用量・TFLX常用量へ、さらに改善しなければテビペネム ピボキシル(TBPM-PI)高用量・TFLX常用量、またはガイドラインが示す点滴静注薬(ABPC 150mg/kg/日 分3、あるいはCTRX 60mg/kg/日 分2または分1〈新生児は50mg/kg/日以下〉)を3日間投与するとされています[2]。
ガイドラインが示す抗菌薬の投与量上限は、AMPCが1回45mg/kg・1日90mg/kgまで、CDTR-PIが1回200mg・1日600mgまで、TBPM-PIが1回300mg・1日600mgまで、TFLXが1回180mg・1日360mgまでとされています[2]。ガイドラインでは耳痛・38.5℃以上の発熱に対して、アセトアミノフェン10〜15mg/kgの頓用が選択肢として挙げられています[2]。同ガイドラインは、経過観察は初診時から3週までを目安とし、抗菌薬投与3〜4日目に再診して効果を確認することが望ましいとしています[2]。これらの薬剤名・用量はあくまでガイドラインの記載であり、実際の処方は必ず診察した医師の判断に従ってください。自己判断で薬の量を調整したり、他の子供の残薬を使い回したりしないでください。
🔧 主な抗菌薬の投与量上限(診療ガイドライン2024年版)
| 薬剤(略号) | 1回あたりの上限 | 1日あたりの上限 |
|---|---|---|
| アモキシシリン(AMPC) | 45mg/kg | 90mg/kg |
| セフテラム ピボキシル(CDTR-PI) | 200mg | 600mg |
| テビペネム ピボキシル(TBPM-PI) | 300mg | 600mg |
| トスフロキサシン(TFLX) | 180mg | 360mg |
診療ガイドライン2024年版が示すこれらの上限値は、あくまで目安であり、実際の処方量は体重・年齢・症状の重さによって担当医が個別に判断します[2]。処方された薬を自己判断で減らしたり、途中でやめたりすると、治りきらずに再燃したり耐性菌のリスクが高まったりすることがあるため、指示された期間・量を守ってください。
乳児と幼児で異なるサイン
言葉で症状を訴えられない乳児では、急性中耳炎診療ガイドライン2024年版が重症度スコアの項目に挙げる「啼泣・不機嫌」が重要な手がかりになります[2]。具体的には、いつもよりぐずる、夜中に急に泣き出す、耳を触ったり引っ張ったりする、哺乳の途中で不機嫌になる、といった様子です。同ガイドラインが重症度判定で「24カ月未満」という年齢そのものを加点項目としているのは[2]、乳幼児は症状を正確に訴えられないうえに耳管の構造上重症化しやすいことを反映していると考えられます。
一方、幼児期以降になると、耳の痛みを自分で訴えられるようになり、「耳が痛い」「耳がぼわぼわする」といった表現で保護者に伝えられることが増えます。滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版が指摘するように、痛みのない滲出性中耳炎は自覚されにくいため[3]、保育園・幼稚園や学校での「呼びかけへの反応が鈍い」「テレビの音量を上げる」といった周囲の気づきが診断のきっかけになることも少なくありません。
🚦 受診の目安 — 鼓膜切開が検討される場面
滲出性中耳炎の治療 — 鼓膜チューブ留置はいつ必要か
滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版は、聴力レベルへの影響が正常から中等度の難聴まで幅広く、自然治癒の可能性もあるため、まずは一定期間の経過観察が望ましいとしています[4]。そのうえで、以下のいずれかに該当する場合には、速やかな鼓膜チューブ留置を推奨しています[4]。
- 3カ月を超えて遷延化する両側性滲出性中耳炎で、良聴耳(聞こえの良いほうの耳)の聴力レベルが30dBを超える場合
- 鼓膜アテレクタシス(鼓膜が内側に強く引き込まれる状態)や癒着など、鼓膜の病的変化が出現した場合
- 滲出性中耳炎の関与が疑われる言語発達遅滞や学業面での遅れなどを認める場合
一方、聴力レベルが25〜30dBの症例や、発症・診断から3カ月未満でも難治化する要因がある症例、言語発達の遅れが疑われる症例について、ガイドラインは「全例に早急にチューブ留置を行う利益があるわけではない」としたうえで、チューブ留置を行ってもよいという位置づけを示しています[4]。理由として、チューブ留置による聴力改善効果が期待される期間はおよそ6〜9カ月間であるとの報告があり、術後の合併症や後遺症のリスクも慎重に考える必要があるためとしています[4]。難聴を長期間放置すると、学習・情緒・コミュニケーション能力の発達に無視できない影響を与える可能性がある一方、チューブ留置にも害があり得るとガイドラインは指摘しており、この判断は耳鼻咽喉科医による定期的な聴力検査と鼓膜所見のフォローが欠かせません[4]。
受診前に知っておきたい検査の流れ
耳鼻咽喉科を受診すると、まず問診で症状の経過(いつから、どんな症状か、発熱の有無)が確認されます。日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会のガイドラインによれば、急性中耳炎の診断には鼓膜所見の確認が必須とされ、耳鏡や内視鏡を使って鼓膜の発赤・膨隆・耳漏の有無を直接観察します[2]。滲出性中耳炎が疑われる場合、同学会のガイドラインは、ティンパノメトリー(鼓膜の動きを調べる検査)で中耳の圧力や貯留液の有無を確認することを紹介しています[3]。
ガイドラインは、抗菌薬を使用する前に上咽頭または中耳貯留液・耳漏の細菌検査を行い、原因菌と感受性を確認したうえで薬剤を選ぶことを推奨しています[2]。特に中等症・重症では、抗菌薬治療を始める前に細菌検査を実施することが治療アルゴリズムの前提として位置づけられています[2]。聴力への影響が疑われる場合は、年齢に応じた聴力検査(乳幼児では遊戯聴力検査など)が追加されることもあります。検査結果がすぐに出ないこともあるため、症状が強い場合は結果を待たずに対症療法が始まり、あとから治療方針が見直されるのが通常の流れです。保護者としては、受診前に「いつから」「どんな症状が」「どの程度続いているか」をメモしておくと、限られた診察時間の中で医師に正確に情報を伝えやすくなります。特に発熱の推移や耳を痛がるタイミング、耳だれの有無・色は、重症度判定の助けになる重要な情報です。
抗菌薬適正使用の考え方 — なぜ「様子見」が第一選択になるのか
軽症の急性中耳炎で抗菌薬非投与の経過観察が第一選択とされているのは、多くの軽症例が自然に改善すること、そして不要な抗菌薬の使用が薬剤耐性菌(AMR)を増やすリスクと関係していることが背景にあります。国立健康危機管理研究機構(JIHS、旧国立感染症研究所)は、抗菌薬の効きにくい「ペニシリン耐性肺炎球菌」について注意を呼びかけています[5]。中耳炎の主な原因菌には肺炎球菌やインフルエンザ菌が含まれ、これらの薬剤耐性化が進むと、本当に抗菌薬が必要な中等症・重症例で薬が効きにくくなるおそれがあります。ガイドラインが重症度に応じて抗菌薬の使用を段階的に判断する仕組みを設けているのは、必要な子供にはしっかり治療を行いながら、不要な抗菌薬使用を減らすためのバランスを取った設計だといえます[2]。「抗菌薬を出してもらえなかった」ことは治療をおろそかにされたわけではなく、ガイドラインに沿った標準的な対応である場合が多いことを知っておくと安心につながります。
家庭でできるケアと予防
耳の痛みや発熱に対しては、医師の指示のもとアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を頓用で使うことが選択肢になります[2]。ガイドラインは鼻水や鼻づまりがある場合、耳鼻咽喉科での鼻処置の併用が選択肢になるとしており、家庭でも鼻をこまめにかむ・吸引するなどのケアが補助になります[2]。授乳中の赤ちゃんでは、仰向けで哺乳瓶を使うと耳管を通じて中耳に液体が入りやすくなるとされるため、上体を起こした姿勢での授乳を心がけるとよいでしょう。入浴時に耳に水が入ること自体が中耳炎の直接の原因になるという明確な根拠は乏しいとされていますが、耳だれが出ている急性期は、患部を清潔に保つ意味でも耳鼻咽喉科の指示に従って入浴方法を相談すると安心です。
予防としては、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザ菌b型(Hib)ワクチンの定期接種が、中耳炎の主要な原因菌である肺炎球菌・インフルエンザ菌への感染・重症化を防ぐ手段として位置づけられています。厚生労働省の統計が示すとおり耳の疾患で受診する子供は多く[1]、受動喫煙を避けること、集団保育での感染症流行期に体調変化をこまめに観察することも、発症・再発のリスクを下げるうえで一般的に勧められています。ワクチンの接種スケジュールや個別の適応については、かかりつけの小児科医に確認するとよいでしょう。
治療が終わったあとの再診も大切です。ガイドラインが示す治療アルゴリズムでは、抗菌薬投与後の効果判定や、鼓膜所見が改善したかどうかの確認が組み込まれており[2]、症状が治まったからといって自己判断で通院をやめず、医師から指示された時期に再診することが推奨されます。特に中耳炎を繰り返すお子さんの場合、耳鼻咽喉科での定期的なフォローが、聞こえの状態や鼓膜の変化を早期に見つける手がかりになります。保護者の方は、発熱や耳の痛みが治まった後も、テレビの音量や呼びかけへの反応など、日常のちょっとした変化に注意を払っておくと安心です。
中耳炎の合併症:放置するリスクとは?
ほとんどの中耳炎は適切な対応により後遺症なく治癒しますが、放置したり治療が不十分だったりすると、まれに次のような合併症を引き起こすことがあります。
- 鼓膜穿孔の遷延化:急性中耳炎で自然に開いた鼓膜の穴がふさがらず残る状態。
- 伝音難聴・言語発達への影響:特に滲出性中耳炎が長期化した場合に、聞こえにくさが続くことで言葉の発達に影響する可能性があります。
- 乳突炎:中耳の奥にある骨(乳様突起)に感染が広がる状態で、耳の後ろが赤く腫れて痛むことがあります。急性中耳炎の治療が不十分な場合の重篤な合併症として知られています。
- 慢性化膿性中耳炎・真珠腫性中耳炎:急性中耳炎や滲出性中耳炎が適切に管理されないまま長期間経過すると、鼓膜に穴が開いたまま耳だれを繰り返したり、鼓膜の一部が内側に凹んで骨を破壊する真珠腫性中耳炎に移行したりすることがあります。
こうした合併症の多くは、重症度に応じた適切な治療とガイドラインに沿った経過観察を続けることで防げると考えられています。自己判断で通院を中断せず、医師の指示通りに再診を受けることが大切です。特に乳突炎や顔面神経麻痺の兆候は進行が早いことがあるため、耳の後ろの腫れや顔の動かしにくさに気づいたら、通常の外来受診時間を待たず、時間外診療や救急外来の利用も検討してください。ガイドラインが重症度スコアと治療アルゴリズムを細かく定めている背景には、こうした重い合併症を未然に防ぐという目的もあると考えられます[2]。
医師に相談すべきタイミング
以下のような様子がみられたら、様子見を続けず速やかに耳鼻咽喉科(時間帯によっては小児科・救急)を受診してください。
- 耳を痛がって激しく泣き続ける、夜間も眠れないほどの痛みがある
- 38.5℃以上の発熱が続く、あるいはぐったりして元気がない
- 耳から膿や血の混じった分泌物(耳だれ)が出ている
- 耳の後ろが赤く腫れて押すと痛がる(乳突炎が疑われるサイン)
- 顔の片側が動かしにくい、まぶたが閉じにくいといった顔面神経麻痺を疑う症状がある
- 痛みや発熱はないのに、呼びかけへの反応が鈍い状態が続いている(滲出性中耳炎が疑われるサイン)
特に乳突炎を疑うサインや顔面神経麻痺の症状は緊急性が高いため、時間外であっても速やかに医療機関を受診してください。
結論
子供の中耳炎は、急な炎症症状を伴う「急性中耳炎」と、症状は目立たないが聞こえに影響する「滲出性中耳炎」に大きく分けられ、それぞれ診断基準も治療の考え方も異なります。日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会の診療ガイドライン2024年版は、重症度スコアに応じて抗菌薬の要否を段階的に判断する仕組みを示しており、軽症では抗菌薬を使わない経過観察が第一選択とされています[2]。同学会の滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版によれば、滲出性中耳炎の多くは経過観察で自然に軽快しますが、聴力低下が長引く場合は鼓膜チューブ留置が検討されます[4]。いずれの場合も、自己判断で様子を見続けず、気になる症状があれば耳鼻咽喉科を受診し、医師の指示に従って治療を進めることがお子さんの耳の健康を守る一番の近道です。今回紹介したガイドラインの内容は今後も改訂される可能性があるため、この記事も最新版の公表状況に合わせて随時見直していきます。お子さんの体質・既往症・アレルギーの有無によって最適な対応は変わりますので、この記事はあくまで一般的な理解を深めるための参考情報として、日々のケアや受診の判断にお役立てください。
関連する読み物
中耳炎全般の症状・原因・治療の基礎知識は中耳炎と乳突炎の総合ガイドでまとめて確認できます。抗菌薬を使わないケアの具体的な工夫については小児急性中耳炎の非抗生物質ケア完全ガイド、鼓膜が破れる「水疱性鼓膜炎」との違いは『水疱性鼓膜炎』かも?小児急性中耳炎ガイドラインに基づく親の対応、耳の痛みと聴力への影響については中耳炎と乳突炎のすべてもあわせてご覧ください。
この記事で扱いきれなかった点について、正直にお伝えします。抗菌薬の具体的な処方内容や鼓膜切開・鼓膜チューブ留置の実施可否は、鼓膜の所見を直接確認した担当医でなければ判断できません。この記事の重症度スコアや投与量はガイドラインの記載を要約したものであり、個々の子供の体重・既往症・アレルギーなどにより実際の処方は変わります。記事の内容を自己判断での投薬量調整の根拠にはしないでください。
よくある質問
急性中耳炎と滲出性中耳炎はどう違いますか?
ガイドラインによれば急性中耳炎は耳痛・発熱・耳漏など急な炎症症状を伴う感染症です[2]。同ガイドラインによれば滲出性中耳炎は急性炎症症状を伴わず、中耳に貯留液がたまって聞こえにくくなる状態で、痛みや発熱は通常ありません[3]。
子供が中耳炎になったら必ず抗菌薬が必要ですか?
いいえ。診療ガイドライン2024年版では、軽症(スコア5点以下)は抗菌薬を使わない3日間の経過観察が第一選択とされています[2]。改善がない場合や中等症・重症の場合に、段階的に抗菌薬が検討されます。
重症度スコアは家庭でつけられますか?
ガイドラインが定める重症度スコアは鼓膜の発赤・膨隆・耳漏の程度など、耳鼻咽喉科医が実際に鼓膜を観察して初めて判定できる項目を含みます[2]。保護者が自己判定する目的のものではなく、必ず受診して医師に確認してもらってください。
滲出性中耳炎はどれくらいで治りますか?
滲出性中耳炎診療ガイドラインによれば、抗菌薬治療後の急性中耳炎でも4〜6週で45%、3カ月で21%の子供に中耳貯留液が残るとされ[3]、多くは自然に軽快するとされています。ただしガイドラインでは、3カ月を超えて両側性で聴力低下が続く場合などに鼓膜チューブ留置が検討されるとしています[4]。
鼓膜チューブ留置はどんな時に必要ですか?
ガイドラインでは、3カ月を超えて遷延する両側性滲出性中耳炎で良聴耳の聴力レベルが30dBを超える場合、鼓膜の病的変化がある場合、言語発達の遅れが疑われる場合に、速やかな留置が推奨されています[4]。ガイドラインによれば、それ以外でも状況により留置を検討することがあるとされています[4]。
耳鼻科ではなく小児科でも中耳炎は診てもらえますか?
初期対応は小児科でも可能ですが、鼓膜の詳しい観察や重症度スコアの正確な判定、鼓膜切開・鼓膜チューブ留置などは耳鼻咽喉科での対応が基本になります。症状が長引く場合や判断に迷う場合は、耳鼻咽喉科の受診を検討してください。
抗菌薬を使う場合、量はどれくらいですか?
ガイドラインでは、例えばアモキシシリン(AMPC)は1回45mg/kg・1日90mg/kgを超えない用量が示されています[2]。ただしこれは目安であり、実際の処方量は体重や症状に応じて担当医が決定するため、自己判断で量を調整しないでください。
参考文献
- 厚生労働省. 令和5年(2023)患者調査の概況 [インターネット]. 厚生労働省; 2024 [引用日: 2026年7月19日]. 以下より入手可能: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/23/dl/kanjya.pdf
- 日本耳科学会, 日本小児耳鼻咽喉科学会. 小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版 [インターネット]. 2024 [引用日: 2026年7月19日]. 以下より入手可能: https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2024.pdf
- 日本耳科学会, 日本小児耳鼻咽喉科学会. 小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版 [インターネット]. 2022 [引用日: 2026年7月19日]. 以下より入手可能: https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2022.pdf
- 日本耳科学会, 日本小児耳鼻咽喉科学会. 小児滲出性中耳炎診療ガイドライン2022年版(鼓膜チューブ留置の適応に関するCQ)[インターネット]. 2022 [引用日: 2026年7月19日]. 以下より入手可能: https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2022.pdf
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS). ペニシリン耐性肺炎球菌感染症とは [インターネット]. [引用日: 2026年7月19日]. 以下より入手可能: https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/penicillin-resistant-pneumococcal-infection/detail/index.html
更新日:2026年7月19日。本記事は最新のガイドライン・研究に基づき随時見直しています。誤りや古い情報にお気づきの際はお知らせください。事実を確認のうえ訂正します。
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本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
目次
- 子供の中耳炎 急性・滲出性の症状と違いは?ガイドラインに基づく治療法
- 中耳炎の基本:中耳とは?なぜ子供は中耳炎になりやすいのか?
- 子供の中耳炎はどれくらい多いのか
- 急性中耳炎とは — ガイドラインの定義
- 滲出性中耳炎とは — ガイドラインの定義
- 重症度別の治療アルゴリズム — 抗菌薬はいつ必要か
- 軽症(スコア5点以下)
- 中等症(スコア6〜11点)
- 重症(スコア12点以上)
- 乳児と幼児で異なるサイン
- 滲出性中耳炎の治療 — 鼓膜チューブ留置はいつ必要か
- 受診前に知っておきたい検査の流れ
- 抗菌薬適正使用の考え方 — なぜ「様子見」が第一選択になるのか
- 家庭でできるケアと予防
- 中耳炎の合併症:放置するリスクとは?
- 医師に相談すべきタイミング
- 結論
- 関連する読み物
- よくある質問
- 参考文献
