【2025年最新版】境界型糖尿病、放置後の進行期間は?日本の研究データに基づく予防・改善策
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【2025年最新版】境界型糖尿病、放置後の進行期間は?日本の研究データに基づく予防・改善策

健康診断で「境界型糖尿病」あるいは「糖尿病予備群」という言葉を目にし、大きな不安を抱えている方は少なくないでしょう。「このままでは、いつか本当の糖尿病になってしまうのだろうか?」「本格的な発症まで、一体どのくらいの時間が残されているのだろうか?」こうした切実な疑問は、多くの方が共通して持つものです。厚生労働省の2023年国民健康・栄養調査によると、日本国内で糖尿病が強く疑われる成人は男性の16.8%、女性の8.9%にのぼり、その「予備群」を含めると、この問題は決して他人事ではありません1。本稿は、単なる一般的なアドバイスを提供するものではありません。2025年時点での最新の臨床ガイドライン、そして「久山町研究」2や「JPHC研究」3といった、日本人を対象とした大規模な疫学研究から得られた科学的データに基づき、あなたの未来を変えるための具体的なロードマップを提示します。漠然とした不安を、科学的根拠に基づいた具体的な行動へと変えること。それがこの記事の目的です。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性を示したものです。

  • 日本糖尿病学会 (JDS): この記事における境界型糖尿病の診断基準や治療目標(例:HbA1c値)に関する指針は、日本糖尿病学会が発行する「糖尿病治療ガイド」4に基づいています。
  • 米国糖尿病協会 (ADA): 国際的な診断基準との比較や、世界レベルでの強力なエビデンスに基づく推奨事項(例:生活習慣改善の効果)は、米国糖尿病協会の「Standards of Care in Diabetes」5を引用しています。
  • 厚生労働省 (MHLW): 日本国内における糖尿病およびその予備群の有病率に関する最新の統計データは、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」1から引用し、問題の規模を明確にしています。
  • 国立国際医療研究センター (NCGM): 一般の方向けの分かりやすい解説や、糖尿病に関する公的情報、そして「糖尿病リスク予測ツール」6といった実践的なリソースは、国立国際医療研究センターの糖尿病情報センター7の情報を基にしています。
  • 久山町研究 (The Hisayama Study): なぜ日本人が痩せていても糖尿病になりやすいのか、という根本的な問いに対する答え(インスリン分泌能の低下)は、九州大学が長年行っている世界的に有名なコホート研究「久山町研究」2の成果に基づいています。
  • 日本の大規模コホート研究 (JPHC, J-ECOH等): 食生活(白米の摂取リスクなど)3や、HbA1c値ごとの具体的な進行リスク8といった日本人特有のデータは、これらの大規模追跡研究から得られた重要な知見を統合しています。

要点まとめ

  • 境界型糖尿病は「病気ではない」という考えは大きな誤解です。放置すれば血管へのダメージが静かに進行し、心血管疾患やがんによる死亡危険性も高まることが日本の研究で示されています9
  • 本当の糖尿病への進行期間は、HbA1c値によって具体的に予測できます。日本のデータでは、HbA1cが6.2-6.3%の人のうち51.6%(半数以上)が5年以内に糖尿病を発症しています8
  • 日本人は欧米人と比較して、肥満でなくてもインスリンを分泌する能力が低下しやすい体質的特徴があります。そのため、痩せているからと安心はできません2
  • 進行を防ぐ鍵は、血糖値の急上昇(血糖値スパイク)を避けることです。「野菜を先に食べる」「食後の運動」といった科学的根拠のある生活習慣の改善が極めて重要です。
  • 生活習慣の抜本的な見直しにより、血糖値を正常範囲に戻すことは十分に可能です。この記事は、そのための具体的な科学的戦略を提供します。

第1章:境界型糖尿病とは?健康診断の結果を正しく理解する

健康診断の結果票に記された「境界型糖尿病」や「糖尿病予備群」という言葉。これらは、現時点では糖尿病の診断基準を満たさないものの、血糖値が正常よりも高い状態を示しており、将来的に糖尿病へ移行する危険性が非常に高い「黄信号」の状態を意味します。

1.1. 「境界型」と「予備群」:言葉の定義と診断基準

「境界型糖尿病」と「糖尿病予備群」はほぼ同義で使われますが、厳密には国際的な診断基準に基づいた医学用語です。血糖値を評価するには、主に3つの指標が用いられます。日本糖尿病学会(JDS)、米国糖尿病協会(ADA)、世界保健機関(WHO)の基準には若干の違いがあり、それを理解することが自身の状態を正確に把握する第一歩となります。以下の表で、主要な診断基準を比較します。

表1:境界型糖尿病の主要な診断基準の比較
指標 日本糖尿病学会 (JDS) 4 米国糖尿病協会 (ADA) 5 世界保健機関 (WHO) 10 説明
HbA1c (ヘモグロビンA1c) 5.6% – 6.4% 5.7% – 6.4% 6.0% – 6.4% 過去1~2ヶ月の平均血糖値を反映する指標。
FPG (空腹時血糖値) 110 – 125 mg/dL 100 – 125 mg/dL 110 – 125 mg/dL (IFG*) 8時間以上絶食した後の血糖値。
OGTT 2時間値 140 – 199 mg/dL 140 – 199 mg/dL 140 – 199 mg/dL (IGT**) 75gのブドウ糖を飲んだ2時間後の血糖値。

*IFG: Impaired Fasting Glycaemia (空腹時血糖異常)
**IGT: Impaired Glucose Tolerance (耐糖能異常)

この表からわかるように、特に空腹時血糖値の基準値が日米で異なるなど、微妙な差異が存在します。日本の基準は、米国に比べてやや高い値で設定されていますが、いずれにせよこれらの範囲にある場合は、体が血糖値を正常に処理できなくなってきているサインと捉えるべきです。

1.2. なぜ症状がないのに危険なのか?体内で静かに進む変化

境界型糖尿病の最も恐ろしい点は、自覚症状がほとんどないことです。そのため、「まだ大丈夫」と軽視しがちですが、体内ではすでに静かな変化が始まっています。多くの方が勘違いしていますが、境界型糖尿病は単なる「待機状態」ではなく、それ自体が活発な病理学的プロセスなのです11。この段階から、血管へのダメージはすでに始まっています。

主なメカニズムは2つです。

  • インスリン抵抗性:食事で摂取した糖を細胞に取り込むためのホルモン「インスリン」が効きにくくなる状態。すい臓はより多くのインスリンを分泌しようとしますが、やがて疲弊していきます。
  • インスリン分泌能の低下:すい臓のβ細胞が疲弊し、インスリンを分泌する能力自体が低下してくる状態。これは特に日本人に顕著な特徴とされています2

重要なのは、本格的な糖尿病と診断される前から、高血糖状態が細い血管(網膜、腎臓、神経)や太い血管(心臓、脳、足の動脈)を少しずつ傷つけ始めているという事実です。ある系統的レビューでは、境界型糖尿病の状態が糖尿病に進行していなくても、心血管疾患や慢性腎臓病の危険性がすでに高まっていることが指摘されています。つまり、境界型糖尿病と診断された時点から、合併症予防の戦いは始まっているのです。


第2章:【日本のデータ】境界型糖尿病から本当の糖尿病まで、どのくらいの時間があるのか?

診断を受けて最も気になるのが「進行までの時間」です。この問いに対して、世界の研究と日本の研究は、具体的な数値をもって警鐘を鳴らしています。

2.1. 世界的な平均:年間5~10%が糖尿病に進行

世界的なデータを見ると、境界型糖尿病の人が1年間に本当の2型糖尿病に進行する割合は、およそ5%から10%であると報告されています11。これは、もし100人の境界型糖尿病の人がいれば、1年後にはそのうち5人から10人が糖尿病と診断される計算になります。これは決して低い数字ではありません。

2.2. HbA1c値で見る、日本人の具体的な進行リスク

この問いに、より個人に合わせた答えを与えてくれるのが、日本人を対象とした大規模な追跡研究です。特に、約53,000人の日本人を対象としたある画期的なコホート研究は、診断時のHbA1c値が将来の糖尿病発症にどれほど強く関連するかを明らかにしました8

この研究結果は衝撃的です。HbA1cが5.5%未満のグループと比較して、5年以内に糖尿病を発症する危険性は

  • HbA1cが5.5-5.9%のグループで4.4倍
  • HbA1cが6.0-6.1%のグループで12.9倍
  • HbA1cが6.2-6.3%のグループでは、実に26.3倍にも跳ね上がりました。

さらに具体的な発症率を見ると、5年間の追跡期間中に糖尿病と診断された人の割合は、

  • HbA1cが6.0-6.1%のグループで27.5%
  • HbA1cが6.2-6.3%のグループでは51.6%、つまり半数以上の人がわずか5年で糖尿病に進行していたのです8

このデータは、健康診断で示されたHbA1cのわずかな上昇が、決して軽視できない極めて重要な警告であることを物語っています。「基準値を少し超えただけ」ではなく、「数年後の未来を左右する分岐点に立っている」と認識することが不可欠です。

2.3. あなたのリスクは?進行を早める主要な危険因子

HbA1c値に加えて、糖尿病への進行を加速させるいくつかの主要な危険因子が特定されています。2025年に発表された最新のメタ分析(複数の研究を統合して分析した信頼性の高い研究)では、以下の要因が進行リスクと強く関連していることが示されました12

表2:糖尿病への進行を早める主要な危険因子とその影響度
危険因子 リスク上昇の目安 (オッズ比) 説明
家族歴 (第一度近親者) 1.48倍 両親や兄弟姉妹に糖尿病患者がいる場合、遺伝的な要因が影響します。
肥満 (BMI高値) 1.21倍 体脂肪、特に内臓脂肪の増加はインスリン抵抗性を引き起こします。
高血圧 1.15倍 高血圧と高血糖は相互に悪影響を及ぼし、血管への負担を増大させます。
脂質異常症 (特に高中性脂肪) 1.12倍 血中の脂質バランスの乱れも、インスリンの働きを妨げる一因です。
喫煙習慣 喫煙はインスリン抵抗性を悪化させ、血管の炎症を引き起こします。
不健康な食生活・運動不足 朝食の欠食、夜遅くの食事、運動不足などは直接的に血糖管理を困難にします13

これらの危険因子を複数持つ人は、相乗効果で進行リスクがさらに高まります。国立国際医療研究センターが提供する「糖尿病リスク予測ツール」6などを活用し、自身の現在の危険度を客観的に把握することも有効です。


第3章:なぜ日本人は痩せ型でも安心できないのか?インスリン分泌能の秘密

欧米では「糖尿病は肥満の病気」というイメージが強いですが、日本では痩せている、あるいは標準体型でも糖尿病を発症する人が少なくありません。この現象の裏には、日本人特有の体質的な秘密が隠されています。その鍵を握るのが「インスリン分泌能」です。

世界的に権威のある福岡県の地域コホート研究「久山町研究」2や、高名な門脇孝名誉教授(東京大学)らの研究14により、日本人を含む東アジア人は、欧米人と比較して、すい臓のβ細胞からインスリンを分泌する能力が遺伝的に低い傾向にあることが明らかになっています。

これは、たとえインスリン抵抗性がそれほど高くなくても(つまり、それほど太っていなくても)、血糖値が上昇した際にそれを処理するためのインスリンを十分に追加分泌できず、高血糖状態に陥りやすいことを意味します。欧米人がインスリン抵抗性の増大(肥満)を主因として発症するのに対し、日本人はインスリン分泌能の早期低下が発症の大きな引き金となるのです2。このため、日本人にとっては、体重管理はもちろんのこと、すい臓に過度な負担をかけない、つまり血糖値の急激な上昇(血糖値スパイク)を避ける食生活が、欧米人以上に重要になると言えます。


第4章:【最重要】糖尿病への進行を食い止める科学的アプローチ

境界型糖尿病は、未来への警告であると同時に、生活を根本から見直す絶好の機会でもあります。幸いなことに、科学的根拠に基づいたアプローチを実践することで、糖尿病への進行を大幅に遅らせる、あるいは正常な状態にまで改善することが可能です。アメリカで行われた大規模臨床研究「糖尿病予防プログラム(DPP)」では、集中的な生活習慣の改善によって、糖尿病への進行リスクが3年間で58%も減少したことが示されています。これは、薬物療法(メトホルミン)の31%減少を大きく上回る成果でした。鍵となるのは「食事」と「運動」です。

4.1. 食事療法:単なる「カロリー制限」を超えて

現代の食事療法は、単にカロリーを制限するだけの古い考え方から進化しています。重要なのは、「何を」「どのくらい」食べるかだけでなく、「どのように」食べるかです。

4.1.1. 食べる順番革命:「ベジ・ファースト」と「カーボ・ラスト」

最も手軽で効果的な方法の一つが、「食べる順番」を変えることです。具体的には、食事の最初に野菜やきのこ、海藻類などの食物繊維が豊富なもの(ベジ・ファースト)を食べ、次に肉や魚などのタンパク質、最後に米やパンなどの炭水化物(カーボ・ラスト)を食べるという方法です。食物繊維が先回りして消化管の壁を覆うことで、後から入ってくる糖の吸収を緩やかにし、食後の血糖値スパイクを効果的に抑制することが多くの研究で示されています15。これは、薬に頼らずにできる強力な血糖管理術です。

4.1.2. 白米との賢い付き合い方

白米は日本の食文化の根幹ですが、残念ながら血糖値を上げやすい高GI食品でもあります。国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)では、白米の摂取量が多い女性で2型糖尿病のリスクが上昇する関連が報告されました316。だからといって、完全に断つ必要はありません。賢く付き合う方法があります。

  • 量を調整する:まずは普段の量を少し減らすことから始めましょう。
  • 玄米や雑穀米に置き換える:食物繊維やミネラルが豊富な玄米や麦飯、雑穀米は、白米に比べて血糖値の上昇が緩やかです。
  • 「カーボ・ラスト」を徹底する:白米を食べる際は、必ず食事の最後に回すことを習慣にしましょう。

4.1.3. 日本人のための食事パターン:何を増やすべきか?

制限するだけでなく、積極的に摂るべき食品もあります。伝統的な和食の要素には、血糖管理に有益なものが多く含まれています。

  • 青魚:サバやイワシなどに含まれるEPA・DHAは、インスリンの働きを改善する効果が期待されます。
  • 大豆製品:豆腐、納豆、味噌などは、良質なタンパク質と食物繊維の宝庫です。
  • きのこ・海藻類:低カロリーで食物繊維が豊富なため、満腹感を得やすく、糖の吸収を穏やかにします。
  • 緑茶:緑茶に含まれるカテキン(特にEGCg)には、糖の吸収を抑制する作用が報告されています。

近年、「ロカボ®」(緩やかな糖質制限食)を提唱する山田悟医師17のように、専門家による科学的根拠に基づいた糖質管理法も注目されています。自身のライフスタイルに合った方法を専門家と相談することが重要です。

4.2. 運動療法:いつ、何を、どのくらい?

運動は、インスリンの効き目を直接的に改善する最も効果的な手段の一つです。筋肉が血液中の糖をエネルギーとして利用するため、血糖値が下がりやすくなります。

4.2.1. 最適なタイミングは「食後30分~1時間」

運動の「ゴールデンタイム」は、食後30分から1時間後です。この時間帯は、食事によって血糖値が最も上昇するタイミングであり、ここで運動を行うことで、血糖値スパイクを効率的に抑えることができます。たとえ10分程度の早歩きでも、食後に行うことは非常に有効です。

4.2.2. 有酸素運動と筋力トレーニングの組み合わせ

日本糖尿病学会や米国糖尿病協会は、有酸素運動と筋力トレーニングの両方を組み合わせることを推奨しています45

  • 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳など。目標は、週に合計150分以上(例:1回30分を週5日)。
  • 筋力トレーニング:スクワットや腕立て伏せなど、大きな筋肉を鍛える運動。週に2~3回行うことが推奨されます。筋肉量が増えると、基礎代謝が上がり、糖を消費しやすい体になります。

運動は継続することが最も重要です。いきなり高い目標を立てるのではなく、「駅まで一駅分歩く」「テレビを見ながらスクワットをする」など、日常生活に組み込めることから始めましょう。


第5章:放置した場合の末路:これは脅しではない、医学的な現実

境界型糖尿病を「まだ病気ではない」と軽視し、何の対策も取らずに放置した場合、その先には深刻な医学的現実が待っています。これは人々を怖がらせるための脅しではありません。日本国内の統計データが示す、紛れもない事実です。

糖尿病が恐ろしいのは、高血糖が全身の血管を蝕み、様々な合併症を引き起こすためです。特に「三大合併症」と呼ばれるものは、生活の質を著しく損ないます。

  1. 糖尿病網膜症:目の網膜の血管が傷つき、進行すると失明に至ります。日本における成人の失明原因の上位を占めており、年間3,500人以上がこの合併症により視力を失っています。
  2. 糖尿病腎症:腎臓のフィルター機能を持つ毛細血管が破壊され、機能しなくなります。進行すると人工透析が必要となり、日本では年間14,000人以上が新たに透析を導入しています。これは生活に大きな制約をもたらします。
  3. 糖尿病神経障害:手足のしびれや痛み、感覚の麻痺などを引き起こします。足の感覚がなくなると、傷に気づかずに壊疽(えそ)を起こし、最悪の場合は足を切断することにもなりかねません。

さらに、J-ECOH研究という日本の大規模な職場コホート研究では、境界型糖尿病の段階であっても、がんによる死亡リスクや、心疾患や脳卒中を含む全ての原因による死亡リスクが上昇することが示されました9。境界型糖尿病は、決して「見て見ぬふり」ができる状態ではないのです。


よくある質問

Q1: 境界型糖尿病は、薬を使わずに治せますか?

はい、多くの人にとってそれは可能です。前述の通り、米国の「糖尿病予防プログラム(DPP)」という大規模研究では、食事や運動などの徹底した生活習慣の改善が、薬物療法以上に糖尿病への進行を防ぐ効果があることを証明しました。境界型糖尿病は、生活習慣を見直すことで血糖値を正常範囲に戻せる最後のチャンスとも言えます。ただし、個々の状態によりますので、必ず医師と相談しながら進めることが重要です。

Q2: 血糖値スパイクを防ぐのに役立つ飲み物はありますか?

いくつかの研究で、特定の飲み物が血糖管理に有益である可能性が示唆されています。代表的なものは、緑茶コーヒー(無糖)、そして牛乳です。緑茶に含まれるカテキンや、コーヒーに含まれるクロロゲン酸は、糖の吸収を穏やかにする働きがあるとされています。牛乳や乳製品も、食後の血糖値上昇を抑制する効果が報告されています。もちろん、これらは補助的なものであり、基本となる食事や運動の代わりにはなりませんが、日常の飲み物として賢く選ぶことは有益です。

Q3: 家族に糖尿病の人がいます。私のリスクはどのくらい高いのでしょうか?

家族歴は、糖尿病の強力な危険因子の一つです。両親や兄弟姉妹に2型糖尿病の人がいる場合、いない人と比較して、あなたの糖尿病発症リスクは約1.48倍高くなると報告されています12。これは、遺伝的な体質(特にインスリン分泌能の低さ)が受け継がれている可能性があるためです。しかし、遺伝は運命ではありません。家族歴がある人ほど、早期からの健康診断によるチェックと、本稿で紹介したような健康的な生活習慣を実践することが、発症予防のために極めて重要になります。

結論

境界型糖尿病という診断は、絶望の宣告ではなく、未来を変えるための「分岐点」に立っているという重要なサインです。日本の詳細な研究データが示す通り、HbA1c値の上昇は、数年という短い期間で半数以上の人々を本格的な糖尿病へと導く強力な予測因子です8。しかし、同時に科学は、食事の順番を変える、食後に歩くといった具体的な行動が、その進行を食い止める力を持つことも証明しています。

特に、インスリン分泌能が低いという体質的特徴を持つ私たち日本人にとって、血糖値スパイクを避ける生活は、単なる健康法ではなく、すい臓を守り、長期的な健康を維持するための必須戦略です2。境界型糖尿病は放置すれば深刻な合併症につながる医学的な現実ですが、正しく向き合えば、コントロールし、さらには正常な状態へと改善することも可能なのです。

あなたの健康診断の結果報告書は、決して「判決書」ではありません。それは、行動を促すための「招待状」です。本稿で得た科学的根拠のある情報を羅針盤とし、かかりつけの医師や医療専門家と相談しながら、あなた自身に最適化された予防プランを今日から始めてください。あなたの今日の行動が、5年後、10年後の健康を決定づけるのです。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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