妊娠中の帯状疱疹は胎児に影響する?症状・薬と受診の目安
この記事でわかること
目次
妊娠中の帯状疱疹は胎児に影響する?薬と受診の目安
妊娠中に帯状疱疹(帯状疱疹)を発症しても、胎児への影響は基本的に低いと考えられています。帯状疱疹は体内に潜伏していたウイルスが再活性化する病気であり、母体が初めて感染する「水痘(水ぼうそう)」とはリスクの大きさが根本的に異なります[1]。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
PMDAに登録されている添付文書上「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」という扱いで、妊娠中でも産婦人科医の判断のもとで使用が検討されます[2][3]。PMDA登録の添付文書上、痛み止めはアセトアミノフェンが基本で、NSAIDs(ロキソプロフェンなど)は妊娠後期には使用しないこととされています[5]。自己判断で薬を中止したり市販薬を追加したりせず、まず産婦人科・皮膚科に相談することが大切です。
要点まとめ(20秒で把握)
- 帯状疱疹は「再活性化」、水痘は「初感染」——胎児への影響の大きさが大きく違う[1]
- 先天性水痘症候群(皮膚瘢痕・四肢の低形成など)は水痘の初感染で起こりうる病態とされます[7]。帯状疱疹は再活性化であり初感染である水痘とは異なるため[1]、胎児への大きな影響は考えにくいと整理されます(本記事編集部整理)。帯状疱疹での発生報告は今のところ確認されていない
- 抗ウイルス薬は「有益性投与」の扱いで、妊娠中でも医師の判断で使用が検討される[2][3]
- 痛み止めはアセトアミノフェンが基本。NSAIDs(ロキソプロフェンなど)は妊娠後期は使用しないこと(添付文書上の記載)[5]
- 目や顔面に発疹が出た場合、38℃以上の発熱が続く場合、広範囲に水疱が広がる場合は速やかに受診する
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会が公表しているガイドラインおよび医薬品添付文書と照合して作成しました。最終確認は人の目によって行っています。本記事は医師による個別の診断・治療方針の代わりにはなりません。数値・分類はガイドラインの改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報です)。
最終更新日:2026年7月17日。記載内容に誤りや古い情報にお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご指摘いただけますと幸いです。
まず確認したいこと——帯状疱疹? それとも水痘?
妊娠中の帯状疱疹かどうかを見分けるうえで、最初に確認すべきは「体の片側だけに、帯状に発疹が出ているか」です。片側性・帯状であれば帯状疱疹の可能性が高く、全身にランダムに水疱が散らばっている場合は水痘の可能性を考える必要があります。過去に水痘(水ぼうそう)にかかったことがあるか、水痘ワクチンを接種したことがあるかも重要な手がかりです。判断に迷う場合は自己判断せず、早めに医療機関(産婦人科または皮膚科)を受診してください(日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されています)[1]。
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帯状疱疹とは?妊娠中に起こる仕組み
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:varicella zoster virus)というウイルスによって起こる病気です。日本皮膚科学会の「帯状疱疹診療ガイドライン2025」では、帯状疱疹は「水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされる疾患」と説明されています[1]。
多くの人は子どもの頃に水痘(水ぼうそう)にかかるか、水痘ワクチンを接種することでVZVに一度感染しています。その後ウイルスは体外に排除されるわけではなく、脊髄の近くにある神経節(神経の集まる場所)に静かに潜み続けます。この「潜伏感染」の状態は、基本的に生涯続くとされています[1]。
妊娠は、つわりによる体力消耗、睡眠不足、出産準備のストレス、免疫状態の変化などが重なりやすい時期です。過労やストレス、加齢などによって免疫の働きが一時的に低下すると、神経節に潜んでいたVZVが再び活動を始め(再活性化)、その神経が通っている皮膚の領域に沿って帯状に水疱を伴う発疹が現れます[1]。これが帯状疱疹です。妊娠中だから帯状疱疹になりやすいと断定できる大規模な日本のデータは、今回参照した資料の中には見当たりませんでしたが、免疫状態が変化しやすい時期であることは一般的に知られています。
ここで最も大切なのは、帯状疱疹は「すでに体の中にいたウイルスが暴れ出した状態」であり、外部から新しくウイルスをもらった「初感染」ではないという点です。この違いが、次の章で説明する胎児への影響の大きさを分けるポイントになります。
妊娠中の帯状疱疹——症状と帯状疱疹後神経痛(PHN)のリスク
妊娠中に帯状疱疹を発症した場合の症状そのものは、妊娠していない人の帯状疱疹と大きく変わりません。皮疹が出る数日前からピリピリ・チクチクとした痛みや違和感が先行することが多く、その後、体の片側の神経の走行に沿って赤み、水疱、膿疱が帯状に現れます。日本皮膚科学会のガイドラインでは、帯状疱疹の合併症としてPHN(帯状疱疹後神経痛:postherpetic neuralgia)が最も多いと位置づけられています[1]。
同ガイドラインは、50歳以上になると帯状疱疹の発症率が高くなり、PHNの発症率も高くなる傾向があると述べています[1]。妊娠・出産の年代(多くは20〜40歳代)は、この「50歳以上」の高リスク層からは外れます。そのため、妊娠中に帯状疱疹にかかったことだけを理由に、PHNのリスクが特別に高くなると断定できる記載は、今回参照した資料には見当たりませんでした。ただし、年齢以外にも痛みの強さや免疫状態によってPHNへ移行しやすいケースがあるとされており[1]、妊娠中だからPHNを心配しなくてよいと言い切ることもできません。急性期の痛みが強い場合や、皮疹が治まった後も痛みが続く場合は、産婦人科と連携できる医療機関で早めに相談することが望ましいと考えられます。
妊娠中は使用できる鎮痛薬の種類が限られるため、痛みのコントロールについても医師とよく相談しておく必要があります(鎮痛薬については後述します)。
具体的な経過としては、まず皮疹が出る2〜3日前から、その部位にピリピリ・チクチクとした違和感や軽いかゆみが先行することが多く、その後、赤み(紅斑)の上に小さな水疱が集まって帯状に広がっていきます。水疱はやがて膿疱になり、かさぶた(痂皮)を形成して、発症から2〜4週間程度で治まっていくのが一般的な経過です。妊娠中だからといって、この皮疹の経過自体が大きく変わるという記載は、今回参照した資料の中には見当たりませんでした。むしろ注意すべきは、妊娠中は体調不良を「つわりのせい」「疲れのせい」と自己判断してしまい、皮膚の違和感や痛みを見過ごしやすいという点です。体の片側だけに違和感が続く場合は、早めに皮膚科・産婦人科に相談することをおすすめします。
また、出産後についても油断はできません。出産直後は育児による睡眠不足や体力の消耗が続きやすく、免疫の状態が変化しやすい時期でもあります。産後に帯状疱疹の症状が出た場合も、この記事で紹介した受診の目安や薬の考え方は基本的に参考にできますが、授乳中であることを必ず医師に伝えたうえで、薬の選択について相談してください。
なお、帯状疱疹は一度かかれば二度とかからない病気ではありません。免疫の状態によっては再発することもあるとされており、以前に帯状疱疹にかかったことがあるからといって、次の妊娠・出産期に発症しないとは言い切れない点にも留意が必要です。
胎児への影響——帯状疱疹と水痘はまったく別物と考える
妊娠中の感染症で最も注意すべき点は、「帯状疱疹」と「水痘(水ぼうそう)」を混同しないことです。どちらも同じVZVというウイルスが原因ですが、母体にとっての意味がまったく違います。
日本皮膚科学会のガイドラインの記載をもとに整理すると、帯状疱疹は体内にすでに存在していたウイルスの再活性化であり、母体が新たにウイルスに感染した状態(初感染)ではありません[1]。一方、水痘は母体がVZVに初めて感染した状態です。この違いが、胎児への影響の大きさに直結します。
| 項目 | 帯状疱疹(本記事のテーマ) | 水痘(水ぼうそう) |
|---|---|---|
| 母体のウイルスの状態 | 再活性化(すでに体内にいたウイルスが再び活動)[1] | 初感染(初めてウイルスに感染) |
| ウイルス血症(血液中への広がり) | 基本的に軽度、または生じにくいと考えられている | 全身に広がるウイルス血症を伴うことがある |
| 先天性水痘症候群(皮膚瘢痕・四肢低形成など) | 再活性化であり初感染ではないため発生するとは考えにくいとされ(本記事編集部整理)、発生したという報告は今のところ確認されていない | 妊娠初期(おおむね20週まで)の感染で報告あり。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の資料では、妊娠第1三半期の初感染のうち約3%が流産または先天性水痘症候群に至るとされ、うち症候群の発症自体は1%以下とされている[7] |
| 出産前後の感染(周産期) | 該当する概念自体が基本的に想定されていない | 分娩前後の母体初感染では、児に「周産期水痘」が生じるリスクがあり、特に危険とされるのは分娩5日前〜分娩後2日目までの母体初感染で、抗体が児に移行する前のタイミングにあたる[7] |
| 母体自身への重症化リスク | まれに眼や神経への合併症があるが、母体の肺炎など重篤な合併症は水痘に比べ一般的ではない | 妊娠後期の母体感染では水痘肺炎などの重篤な合併症を起こしやすいとされる[7] |
出典:日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」(2025年)[1]、国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報「妊娠中の水痘」関連資料[7]
つまり、「妊娠中に帯状疱疹=胎児が危ない」と過度に不安になる必要はないというのが、現時点で確認できる資料からの結論です。ただし、これは「帯状疱疹だから大丈夫」という話であって、水痘(水ぼうそう)にまだ一度もかかったことがなく、ワクチンも打っていない妊婦が水痘患者と接触した場合は、まったく別の対応(水痘に対する注意)が必要になります。この記事は帯状疱疹についての解説であり、水痘の初感染が疑われる場合は、本記事の内容をそのまま当てはめず、早めに産婦人科に相談してください。
なお、帯状疱疹は水疱の中に生きたウイルスを含むため、水痘にかかったことがない人・ワクチンを未接種の人(特に子ども)に対しては、接触によって水痘としてうつる可能性があるとされています。妊娠中の本人以外の家族に水痘未罹患者がいる場合は、皮疹を覆うなど接触への配慮も合わせて医師に相談するとよいでしょう。
抗ウイルス薬は妊娠中でも使える?——添付文書とガイドラインの投与基準
帯状疱疹の治療の基本は、発症後できるだけ早く(日本皮膚科学会のガイドラインでは発症後72時間以内が目安とされています[1])抗ウイルス薬の全身投与を開始することです。妊娠中であっても、この基本方針自体は大きくは変わりません。ただし、使用する薬剤の選び方や、投与するかどうかの最終判断は、通常の患者以上に慎重に行われます。
| 薬剤(一般名) | 添付文書における妊婦への記載 | 備考 |
|---|---|---|
| アシクロビル | 「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」[3] | 動物実験(ラット)で母動物に腎障害が出るほどの大量投与時に胎児異常の報告があるが、これはヒトでの通常投与量とは異なる条件下の報告[3] |
| バラシクロビル | 「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」[2] | 体内でアシクロビルに変わる薬(プロドラッグ)のため、妊婦への記載はアシクロビルとほぼ同じ枠組み[2] |
| アメナメビル | 「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」。動物実験(マウス)で胎盤への移行が報告されている[4] | 比較的新しい薬で、妊婦を対象とした臨床試験は実施されていない[4]。患者向け資材では、妊婦・妊娠している可能性のある女性・授乳中の女性は服用せず医療機関を受診するよう案内されている[4] |
出典:各医薬品の添付文書(医薬品医療機器総合機構PMDA登録情報)[2][3][4]。2026年7月時点で確認した記載内容です。
この「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与する」という表現は、医薬品の添付文書に共通する慎重投与の枠組みで、「絶対に使ってはいけない」という意味ではありません。実際に、日本皮膚科学会のガイドラインでは、妊婦・授乳婦への抗ウイルス薬投与について、CQ(クリニカルクエスチョン)という形で明確な見解を示しています[1]。
同ガイドラインのCQ10「妊婦,授乳婦への抗ウイルス薬投与は可能か?」に対する推奨文は「妊婦,授乳婦への抗ウイルス薬投与に大きな問題はなく,安全に使用可能である」であり、推奨度はAとされています[1]。この根拠として、デンマークで行われた大規模なコホート研究が紹介されており、妊娠初期にアシクロビル・バラシクロビル・ファムシクロビルのいずれかを使用した妊婦から生まれた児と、使用していない妊婦から生まれた児とで、主要な出生異常の割合に統計学的な有意差は見られなかったと報告されています(抗ウイルス薬曝露群2.2%、非曝露群2.4%、調整有病オッズ比0.89)[1]。
授乳中の使用についても、同ガイドラインは、母乳中に移行するアシクロビルの量は乳児にとって無視できる程度と考えられるとし、国立成育医療研究センターが公表している「授乳中に安全に使用できると思われる薬」のリストにアシクロビルが掲載されていること、米国NIHのデータベース(LactMed)でもアシクロビル・バラシクロビルの授乳中使用の安全性についての記載があることを紹介しています[1]。
ここで注意したいのは、この「安全に使用可能」という推奨は、あくまでアシクロビル・バラシクロビル・ファムシクロビルという、長年にわたって使用実績が積み重ねられてきた薬剤についての評価だということです。PMDA登録の添付文書によれば、アメナメビルのように比較的新しい薬剤については、妊婦を対象とした臨床試験のデータそのものが乏しく[4]、上記のコホート研究の対象にも含まれていません。そのため、妊娠中の抗ウイルス薬の選択については、どの薬を使うか・使わないかを含めて、必ず産婦人科医・処方医の判断に委ねる必要があります。この記事の情報だけを根拠に、自分で薬を選んだり、服用を中止したりしないでください。
痛み止めはどうする?——アセトアミノフェンとNSAIDsの違い
帯状疱疹の急性期は、皮疹そのものの痛みに加えて、神経の痛み(神経障害性疼痛)を伴うことが多く、適切な痛みのコントロールがPHNの残存を減らすためにも重要とされています[1]。妊娠中に使える解熱鎮痛薬は限られており、ここを正しく理解しておくことは、帯状疱疹に限らず妊娠中の体調管理全般に役立ちます。
| 薬剤 | 妊娠初期・中期 | 妊娠後期 |
|---|---|---|
| アセトアミノフェン | 治療上の有益性と危険性を考慮したうえで、有益性が上回ると判断される場合に投与するとされている[6] | 添付文書では、妊娠後期の女性への投与により胎児に動脈管収縮を起こすことがあるとされ、このリスクを考慮したうえで有益性が危険性を上回る場合にのみ投与するとされている(禁忌ではない)[6] |
| NSAIDs(ロキソプロフェンなど) | 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、必要最小限の投与にとどめるとされている[5] | 添付文書の「禁忌(次の患者には投与しないこと)」の項目に「妊娠後期の女性」が明記されている。動物実験(ラット)で分娩遅延および胎児の動脈管収縮が報告されている[5] |
出典:カロナール錠(アセトアミノフェン)PMDA登録添付文書[6]、ロキソプロフェンナトリウム錠添付文書(日本医薬情報センター登録情報)[5]
表からわかるとおり、アセトアミノフェンとNSAIDsは「妊娠後期に注意が必要」という点では共通していますが、扱いの強さが異なります。ロキソプロフェンをはじめとするNSAIDsは、添付文書の「禁忌」の項目そのものに「妊娠後期の女性」が明記されており[5]、原則として使用しないこととされています。PMDA登録の添付文書によれば、一方でアセトアミノフェンは、妊娠後期についても禁忌ではなく、有益性・危険性を考慮したうえでの投与という位置づけです[6]。この違いから、妊娠中の解熱鎮痛にはアセトアミノフェンが基本的な選択肢として扱われることが多いとされています。ただし、これも「アセトアミノフェンなら何も気にせず使ってよい」という意味ではなく、用法・用量を守り、長期・大量の使用を避けたうえで、医師・薬剤師に相談しながら使うことが前提です。
帯状疱疹の痛みが強い場合、市販の解熱鎮痛薬を自己判断で組み合わせたり、いつもより多い量を服用したりすることは避け、産婦人科・皮膚科・処方薬局のいずれかに必ず相談してください。
すぐに受診が必要なサイン(妊娠中の帯状疱疹)
- 🔴 目の周り・鼻筋・額など顔面、特に目に近い部分に発疹が出た(視力に関わる合併症のリスクがあるため、皮膚科・眼科の緊急受診が必要とされる部位です)
- 🔴 38℃以上の発熱が続く、または全身状態が悪化している
- 🔴 発疹が体の片側にとどまらず、全身に広範囲に広がっている(水痘との鑑別が必要になる可能性があります)
- 🔴 お腹の張りが強くなる、赤ちゃんの動きがいつもと違うなど、妊娠経過そのものに違和感がある
- 🟡 発疹が出てからまだ72時間以内で、抗ウイルス薬による治療を受けていない(早期治療が望ましいとされる時間の目安です[1])
- 🟡 皮疹は治まってきたが、痛みだけが続いている、または悪化している
- 🟢 軽い違和感程度で、すでに産婦人科・皮膚科を受診し治療方針が決まっている場合は、指示どおりの通院・服薬を継続する
何科を受診すべきか迷う場合は、まずかかりつけの産婦人科に電話で相談し、必要に応じて皮膚科と連携してもらう形が現実的です。日本では公的医療保険が適用される診療であれば、自己負担は原則3割です。
帯状疱疹と水痘の見分け方
妊娠中に発疹に気づいたとき、それが帯状疱疹なのか水痘(水ぼうそう)なのかを自分だけで正確に判断するのは簡単ではありません。次の表は、あくまで受診前の目安として整理したものであり、最終的な診断は医師による診察が必要です。
| チェックポイント | 帯状疱疹を疑うサイン | 水痘を疑うサイン |
|---|---|---|
| 発疹の分布 | 体の片側だけ、帯状(神経の走行に沿った線状) | 体の左右両側、全身にランダムに散らばる |
| 既往歴 | 過去に水痘にかかった、またはワクチン接種歴がある | 水痘にかかったことがない、ワクチン未接種 |
| 先行症状 | 発疹の前にピリピリ・チクチクとした神経の痛みが出ることが多い | 発疹に先行して発熱・倦怠感が出ることが多い |
| 接触歴 | 特定の接触がなくても、免疫低下などをきっかけに自然に起こる | 水痘・帯状疱疹の患者との接触歴があることが多い |
出典:日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」の記載内容をもとにJHO編集部が整理[1]
片側性・帯状という特徴だけで自己判断してしまうと、実際には水痘の初期段階であるケースを見逃す可能性もゼロではありません。判断に迷うときは、迷わず医療機関を受診し、医師の診察を受けることが最も確実な方法です。
日本と海外のガイドライン——治療薬の考え方に大きな違いはあるか
日本皮膚科学会のガイドラインは、前述のとおり妊婦・授乳婦への抗ウイルス薬投与について推奨度Aで「安全に使用可能」としています[1]。海外の一次資料(各国のガイドライン本文そのもの)については、今回の調査では自動アクセスが制限され、原文を直接確認できなかった資料もありました。そのため、ここでは複数国のガイドラインを横断的にレビューした二次資料(NCBI Bookshelfに収載された、アシクロビル・バラシクロビルの妊婦への使用に関するガイドラインレビュー)の内容をもとに、傾向を紹介するにとどめます[8]。
| 項目 | 日本(日本皮膚科学会 2025年) | 海外の複数ガイドラインをレビューした資料(NCBI Bookshelf掲載) |
|---|---|---|
| 妊婦への抗ウイルス薬使用の可否 | 推奨度Aで「安全に使用可能」と明記[1] | 複数の国・地域のガイドラインで、アシクロビルの使用を支持する記載が見られると整理されている[8] |
| バラシクロビルの扱い | アシクロビルと同様のコホート研究データの対象に含めて評価[1] | ガイドラインによって、アシクロビルほど確立していないとする立場と、両者を同等に扱う立場が併存していると整理されている[8] |
| 参照している主な研究 | デンマークの大規模コホート研究(出生児83万人超)[1] | 各国・地域の学会ガイドライン(複数)を横断的にレビュー[8] |
出典:日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」[1]、NCBI Bookshelf掲載のガイドラインレビュー資料[8]。※海外側は個々の原ガイドライン本文を直接確認できておらず、レビュー論文経由の情報である点にご留意ください。
全体として、「アシクロビル・バラシクロビルは妊娠中でも医師の判断のもとで使用が検討される薬である」という大きな方向性については、日本のガイドラインと海外のレビュー資料との間で大きく食い違う記載は見当たりませんでした。ただし、細かい用量や、どの段階から予防的に使うかといった運用面では、国や時代によって記載に幅があるとされており、この点はどちらが正しい・間違っているというよりも、それぞれの医療体制や薬事承認の状況を反映したものと考えられます。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
妊娠中の帯状疱疹を防ぐには——予防の考え方
帯状疱疹そのものを完全に防ぐ方法が確立しているわけではありませんが、リスクを下げるために一般的に言われている考え方はいくつかあります。
- 十分な睡眠と休養をとり、過度な疲労をため込まないようにする
- バランスの良い食事を心がけ、体調管理を意識する
- ストレスを一人で抱え込まず、家族やパートナー、医療者に相談する
- すでに水痘にかかったことがない・ワクチン未接種の場合は、妊娠前の接種計画について婦人科と相談しておく(妊娠成立後の生ワクチン接種は基本的に推奨されないため、接種は妊娠前に検討するのが現実的です)
- 家族に水痘未罹患の子どもがいる場合など、水痘の流行状況にも普段から気を配る
帯状疱疹ワクチンについては、50歳以上を対象年齢とする位置づけが一般的であり[1]、妊娠・出産年代の妊婦本人への接種を前提とした制度にはなっていません。この点についての最新の運用は、かかりつけの産婦人科・内科に確認することをおすすめします。
受診時に持っていくメモ(コピーして使えます)
- 発疹に気づいたのはいつか(日付)
- 発疹の場所(体の片側か、両側か)、痛みの強さ(0〜10のうち何点くらいか)
- 現在の妊娠週数
- 過去に水痘(水ぼうそう)にかかったことがあるか、水痘ワクチン接種歴
- 現在服用中の薬(サプリメント含む)
- 医師に聞きたいこと:抗ウイルス薬は使えるか/痛み止めは何を使えばよいか/今後どのくらいの頻度で通院が必要か/赤ちゃんへの影響について
妊娠中の帯状疱疹における、抗ウイルス薬の胎児への長期的な影響(生まれた子どものその後の発達など)についての大規模な追跡データは、今回参照した資料の中には十分な記載が見当たりませんでした。デンマークのコホート研究は出生時点での主要な出生異常の有無を評価したものであり、それ以降の長期的な発達について結論づけたものではありません[1]。この点については、現時点で確定的な結論があるとは言えず、今後の研究の蓄積を待つ必要があると考えられます。
また、妊娠中の帯状疱疹の発症頻度そのもの(妊娠していない同年代の女性と比べて発症しやすいかどうか)についての日本国内の統計データも、今回の調査では見当たりませんでした。この記事では、帯状疱疹そのものの一般的な知見と、妊娠に関する添付文書上の記載を組み合わせて整理していますが、妊娠中特有の発症率については、今後データが公表され次第、内容を更新する予定です。
よくある質問
妊娠中に帯状疱疹になったら、必ず薬を飲まないといけませんか?
帯状疱疹は赤ちゃんにうつりますか?
顔に発疹が出た場合、特に注意することはありますか?
発疹が治った後も痛みが続くのですが、これはPHNですか?
市販の解熱鎮痛薬を自己判断で使ってもいいですか?
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参考文献
- 日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン2025」2025年 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/Taijouhoushin2025.pdf ↩
- バラシクロビル錠 添付文書(医薬品医療機器総合機構 登録情報) https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062071.pdf ↩
- アシクロビル錠 添付文書(医薬品医療機器総合機構 登録情報) https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062331.pdf ↩
- アメナリーフ錠200mg(アメナメビル)添付文書(医薬品医療機器総合機構 登録情報) https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00066990.pdf ↩
- ロキソプロフェンナトリウム錠 添付文書(日本医薬情報センター JAPIC登録情報) https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00057032.pdf ↩
- カロナール錠(アセトアミノフェン)添付文書(医薬品医療機器総合機構 登録情報) https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00063312.pdf ↩
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報「妊娠中の水痘:帯状疱疹ウイルス初感染により妊娠第2三半期に子宮内胎児死亡に至った1症例」関連解説 https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/4011-dj4045.html ↩
- NCBI Bookshelf「Acyclovir versus Valacyclovir for Herpes Virus in Children and Pregnant Women: A Review of the Clinical Evidence and Guidelines」 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK253727/ ↩
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