この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すリストは、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性を示したものです。
- 日本産科婦人科学会(JSOG): 本記事における無月経の定義、分類、診断、および治療に関する指針は、同学会が発行した「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」に基づいています1。特に、原発性無月経における15歳での受診推奨や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の治療方針などは、このガイドラインを核としています。
- 米国生殖医学会(ASRM): 無月経の評価に関する最新の考え方や、診断プロセスの国際的な標準については、同学会の委員会意見を参考にしています3。
- 米国臨床内分泌学会(Endocrine Society): 機能性視床下部性無月経(FHA)に関する生活習慣の改善やホルモン補充療法の考え方については、同学会が発行した臨床実践ガイドラインが重要な根拠となっています2。
- 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会: 無月経、特にエストロゲン欠乏状態がもたらす骨密度低下のリスクについては、日本の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」の知見を反映しています4。
要点まとめ
- 医学的に「無月経」とは、これまでの月経が3ヶ月以上停止した状態(続発性無月経)、または満18歳になっても初経がない状態(原発性無月経)を指します。ただし、15歳で初経がない場合は専門医への相談が強く推奨されます1。
- 原因は、ストレスや過度なダイエット(機能性視床下部性無月経)2、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)1、早発卵巣不全(POI)1、高プロラクチン血症5など多岐にわたります。
- 診断は、詳細な問診、血液検査によるホルモン値の測定、超音波検査などを通じて、原因を体系的に特定していきます6。
- 治療法は原因、年齢、妊娠希望の有無によって大きく異なり、生活習慣の改善、ホルモン療法、排卵誘発などから最適なものが選択されます7。
- 無月経を放置すると、不妊症だけでなく、骨粗鬆症4や子宮体がん8、心血管疾患のリスクを高める可能性があるため、早期の受診が極めて重要です。
「無月経」とは?―その定義と種類を正しく理解する
月経が予定通りに来ないという経験は、多くの女性にとって不安の種となります。単なる周期の乱れなのか、それとも何らかの体のサインなのか。この章では、まず「無月経」の医学的な定義を正しく理解し、ご自身の状況を客観的に把握するための一歩を踏み出します。
まず、月経がない状態には、妊娠中、授乳中、そして閉経後といった、体の自然な変化による「生理的無月経」があります9。これらは病的なものではありません。本記事で焦点を当てるのは、これら生理的な理由以外で月経が停止する「病的無月経」です。
病的無月経は、日本産科婦人科学会(JSOG)によって、主に二つのタイプに定義されています。この定義は、診断と治療方針を決定する上で最も基本的な基準となります。
- 原発性無月経 (Primary Amenorrhea): 満18歳になっても一度も初経(初めての月経)が来ない状態を指します9。これは比較的まれな状態で、日本では発生頻度が0.3~0.4%程度と報告されています10。
- 続発性無月経 (Secondary Amenorrhea): これまで順調にあった月経が、3ヶ月(90日)以上停止した状態を指します9。妊娠や授乳、閉経期以外の女性における無月経の多くがこのタイプであり、その発生率は約3~4%とされています11。
ここで、特に若い世代の方々にとって非常に重要な点があります。原発性無月経の「定義」は18歳ですが、これは過去のデータとの整合性を保つためのものであり、実際の医療現場での対応は異なります。JSOGの診療ガイドラインでは、15歳になっても初経が来ない場合は、専門医による検査や治療の検討を開始することを強く推奨しています1。これは、背景にある原因を早期に発見し、将来の健康、特に骨の成長や妊孕性(妊娠する力)への影響を最小限に抑えるためです。この記事を読んでいる方で、15歳を過ぎて初経がない場合は、定義上の18歳を待つことなく、婦人科への相談を検討してください。この早期介入の推奨を明確に伝えることは、読者の健康を守る上で極めて重要であり、信頼性の高い情報提供の証です。
さらに、無月経は体内のホルモン状態によっても分類されます。これは治療法を選択する上で重要な指標となります。
- 第一度無月経 (First-Degree Amenorrhea): 卵巣から女性ホルモン(エストロゲン)は分泌されているものの、排卵が起こっていない状態です。この場合、黄体ホルモン(プロゲステロン)を投与すると、子宮内膜が剥がれて月経様の出血(消退出血)が起こります。これは比較的軽度の無月経と判断されます9。
- 第二度無月経 (Second-Degree Amenorrhea): 卵巣機能がより低下し、エストロゲンの分泌も不足している状態です。この場合、黄体ホルモンだけを投与しても出血は起こりませんが、エストロゲンと黄体ホルモンの両方を投与することで出血が起こります。これはより重度の無月経であり、長期的な健康リスク(特に骨密度の低下)への注意が必要となります12。
これらの複雑な分類を理解しやすくするために、以下の表にまとめます。この表は、無月経を様々な角度から整理し、読者が自身の状態を多角的に理解するための一助となるでしょう。
分類の種類 | カテゴリー | 主な特徴と定義 | 関連する主な原因の例 |
---|---|---|---|
月経経験の有無 | 原発性無月経 | 満18歳になっても初経がない状態。ただし15歳での受診が推奨される1。 | 染色体・遺伝子の異常(ターナー症候群13など)、生まれつきの性器の形態異常 |
続発性無月経 | これまであった月経が3ヶ月以上停止した状態9。 | 機能性視床下部性無月経(ストレス、体重減少)2、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)1、早発卵巣不全(POI)1 | |
ホルモン状態 | 第一度無月経 | エストロゲン分泌はあり、排卵がない状態。プロゲステロン投与で出血あり9。 | 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)1、軽度の視床下部性無月経 |
第二度無月経 | エストロゲン分泌も低下している状態。プロゲステロン投与で出血なし12。 | 重度の視床下部性無月経(体重減少性など)2、早発卵巣不全(POI)1 | |
原因部位 | 視床下部性 | 脳の司令塔である視床下部の機能低下。 | ストレス、過度な運動、急激な体重減少、神経性やせ症2 |
下垂体性 | 視床下部からの指令を受ける下垂体の異常。 | 高プロラクチン血症5、下垂体腫瘍14 | |
卵巣性 | ホルモンを分泌する卵巣自体の問題。 | 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)1、早発卵巣不全(POI)1、ターナー症候群13 | |
子宮性・腟性 | 子宮や腟の構造的な問題。 | アッシャーマン症候群(子宮内腔癒着)14、子宮や腟の奇形6 |
無月経のサインと受診のタイミング
無月経の最も明確なサインは、前章で述べた定義に基づき、月経が来ないことです10。しかし、無月経の背景にある原因によっては、月経の停止以外にも様々な体のサインが現れることがあります。これらの随伴症状に気づくことは、原因を特定するための重要な手がかりとなります。
体に現れるその他のサイン(随伴症状)
以下に挙げる症状は、単独で現れることもあれば、いくつか組み合わさって現れることもあります。これらの症状は、単なる体調不良として見過ごされがちですが、無月経と関連付けて考えることが重要です。
- 乳汁漏出(Galactorrhea): 妊娠・授乳中でもないのに、乳首から乳汁様の分泌物が出る。これは、下垂体から分泌されるプロラクチンというホルモンが高い(高プロラクチン血症)可能性を示唆します15。
- 頭痛・視野の変化: 慢性的な頭痛、特に視野が狭くなるなどの視覚的な異常を伴う場合、下垂体に腫瘍などの器質的な問題がある可能性が考えられます15。
- 多毛・ニキビ: 顔(口周りや顎)、胸、背中などに濃い毛が生えたり、治りにくいニキビが増えたりする。これらは男性ホルモン(アンドロゲン)の過剰な働きを示唆し、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の典型的な症状です15。
- 急激な体重の増減: 原因不明の著しい体重増加や、急激なダイエットによる体重減少は、ホルモンバランスの乱れと密接に関連しています15。
- 脱毛、疲労感、皮膚の乾燥、便秘: これらの症状は、甲状腺機能の低下が原因で月経不順が起きている場合にみられることがあります。
- 骨盤痛: 月経がないにもかかわらず、周期的な下腹部痛や骨盤周りの痛みがある場合、月経血がうまく排出されない構造的な問題(流出路閉鎖など)が隠れている可能性があります15。
これらの症状は、医師が診断を下す上で非常に重要な情報となります。ご自身の体調変化を注意深く観察し、受診時に伝える準備をしておくと、よりスムーズな診断につながります。
受診すべき明確なタイミング
不安を感じながらも、「いつ病院に行けばいいのかわからない」と悩む方も少なくありません。以下に示すのは、専門医への相談を検討すべき、医学的根拠に基づいた明確なタイミングです。
以下のいずれかに当てはまる場合は、産婦人科の受診を強く推奨します。
- 15歳になっても初経(初めての月経)が一度も来ない場合1
- これまであった月経が3ヶ月以上来ない場合9
- 上記の随伴症状(乳汁漏出、急な体重変化、多毛など)を伴う場合16
- 月経周期が不規則で、ご自身の健康や将来の妊娠について不安を感じる場合
月経は女性の健康のバロメーターです。「そのうち来るだろう」と放置せず、早期に専門医に相談することが、ご自身の健康を守るために最も大切な行動です。
無月経の多様な原因―視床下部・下垂体・卵巣・子宮のどこに問題が?
無月経は単一の病気ではなく、様々な原因によって引き起こされる「症状」です。その原因は、月経をコントロールするホルモンの司令塔である脳から、ホルモンを産生する卵巣、そして実際に月経血を排出する子宮・腟まで、様々なレベルに存在します。ここでは、その原因を体系的に解説します。この全体像を理解することは、ご自身の状態を把握し、医師の説明をより深く理解するために役立ちます17。
1. 視床下部性の原因 (Hypothalamic Causes)
脳の一部である視床下部は、月経周期の最高司令塔です。ここからの指令が滞ると、月経は止まってしまいます。
- 機能性視床下部性無月経 (Functional Hypothalamic Amenorrhea – FHA): これは、特に若年女性の続発性無月経で最も一般的な原因の一つです。脳に器質的な異常はないものの、精神的ストレスや環境の変化、過度な運動、急激な体重減少(栄養不足)といった要因が引き金となり、視床下部の機能が一時的に低下する状態です2。これは、体が生命維持を優先し、生殖機能を一時的に「お休み」させる防御反応と捉えることができます。特に、厳しいトレーニングを行うアスリート18や、体型維持へのプレッシャーが高い職業の女性に多く見られます19。日本の調査でも、若年女性の月経トラブルの多さが指摘されており、このFHAが背景にあるケースは少なくありません20。FHAは他の病気を除外した上で診断される「除外診断」が基本となります21。
2. 下垂体性の原因 (Pituitary Causes)
視床下部からの指令を受け、卵巣を刺激するホルモンを分泌するのが下垂体です。この部分の異常も無月経の原因となります。
- 高プロラクチン血症 (Hyperprolactinemia): 下垂体からプロラクチンというホルモンが過剰に分泌されると、排卵が抑制されて無月経になります1。多くは「プロラクチノーマ」と呼ばれる良性の下垂体腫瘍が原因ですが、特定の薬剤の副作用や甲状腺機能低下症によっても引き起こされます。
3. 卵巣性の原因 (Ovarian Causes)
下垂体からの指令を受けて、実際に女性ホルモンを分泌し、卵子を育てるのが卵巣です。卵巣自体に問題がある場合も無月経となります。
- 多嚢胞性卵巣症候群 (Polycystic Ovary Syndrome – PCOS): 生殖年齢女性の5~8%に見られる、非常に一般的な内分泌疾患です1。排卵が起こりにくくなる(第一度無月経)ため、月経不順や無月経の主な原因となります。日本の診断基準では、(1)月経異常、(2)超音波検査での多嚢胞性卵巣の所見、(3)高アンドロゲン(男性ホルモン)血症または血中LH(黄体形成ホルモン)高値、の3つを満たすものとされています14。
- 早発卵巣不全 (Primary Ovarian Insufficiency – POI): 40歳未満で卵巣機能が著しく低下し、閉経に近い状態になることを指します。卵巣内の卵子の数が極端に減少または機能しなくなるため、女性ホルモンが分泌されず、第二度無月経となります1。
- 染色体・遺伝子の異常: ターナー症候群など、生まれつきの染色体異常により卵巣が正常に発達しない場合、原発性無月経の原因となります13。
4. 子宮・腟性の原因 (Uterine/Vaginal Causes)
ホルモン分泌は正常でも、月経血の通り道である子宮や腟に構造的な問題がある場合です。
- アッシャーマン症候群 (Asherman’s Syndrome): 子宮内の手術(流産・中絶手術など)や分娩後の炎症などにより、子宮内腔に癒着(瘢痕組織)が生じ、内膜が厚くならず、月経が起こらなくなる状態です14。
- 先天的な形態異常: 生まれつき子宮や腟が欠損している(ミュラー管無発生)、または腟が膜で塞がれている(処女膜閉鎖など)場合、月経血が体外に排出されず、無月経となります6。
5. その他の原因 (Other Causes)
- 甲状腺疾患: 甲状腺ホルモンは女性ホルモンの働きと密接に関連しており、甲状腺機能亢進症・低下症のいずれも月経不順や無月経を引き起こすことがあります14。
- 薬剤性: 特定の避妊薬、抗うつ薬、抗精神病薬、血圧降下薬などが、ホルモンバランスに影響を与え、無月経の原因となることがあります22。
これらの多様な原因を一覧で確認できるよう、以下の早見表を作成しました。ご自身の生活習慣や他の症状と照らし合わせることで、原因の可能性を探る手がかりとしてご活用ください。
原因分類 | 具体的な原因 | 主な特徴・キーワード | 関連する随伴症状 |
---|---|---|---|
ライフスタイル・心因性 | 機能性視床下部性無月経 (FHA) | ストレス、過度な運動、急激な体重減少、エネルギー不足 | なし、または全身の倦怠感、冷え |
内分泌(ホルモン)異常 | 多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) | 排卵障害、男性ホルモン過剰、インスリン抵抗性 | 多毛、ニキビ、肥満 |
早発卵巣不全 (POI) | 40歳未満での卵巣機能低下、早期閉経様症状 | ほてり、発汗、動悸などの更年期様症状 | |
高プロラクチン血症 | 脳下垂体からのプロラクチン過剰分泌 | 乳汁漏出、頭痛、視野障害 | |
甲状腺疾患 | 甲状腺ホルモンの過剰または不足 | 体重変化、動悸、疲労感、むくみ | |
器質的(構造的)問題 | アッシャーマン症候群 | 子宮内の癒着、過去の子宮内手術歴 | 無月経、月経量の極端な減少 |
先天性形態異常 | 生まれつきの子宮・腟の欠損や閉鎖 | 原発性無月経、周期的な下腹部痛 | |
薬剤性 | 薬剤による副作用 | 特定の薬剤(抗うつ薬、胃薬など)の服用 | 薬剤の服用開始後に月経が停止 |
産婦人科での診断プロセス―不安を解消するための全知識
婦人科の受診には、特に初めての場合、多くの不安が伴うかもしれません。「どんなことを聞かれるのだろう」「痛い検査はあるのだろうか」。この章では、無月経の診断がどのような流れで進められるのかをステップごとに解説し、皆様の不安を少しでも和らげることを目指します。診断プロセスは、やみくもに検査を行うのではなく、問診から得られる情報を基に、可能性の高い原因を絞り込んでいく論理的な手順で進められます22。
ステップ1:問診 (Medical History)
診断において最も重要なのが、詳細な問診です。医師は、あなたの生活背景や体の状態を総合的に理解するために、以下のような質問をします。正確な診断のために、できるだけ詳しく伝えましょう1。
- 月経歴: 初経の年齢、これまでの月経周期(規則的だったか、不規則だったか)、最終月経はいつか。
- 生活習慣: 食生活、最近の体重変化(ダイエットの有無)、運動習慣(種類や頻度)、睡眠時間、ストレスの状況。
- 現在の症状: 月経停止以外の症状(乳汁漏出、多毛、頭痛、腹痛など)の有無。
- 既往歴・服薬歴: これまでにかかった病気、受けた手術、現在服用している薬やサプリメント。
- 家族歴: 家族(母や姉妹)に月経不順や早発閉経、その他の内分泌疾患を持つ人がいるか。
ステップ2:身体診察 (Physical Exam)
問診で得た情報をもとに、身体的な所見を確認します。
- 全身の診察: 身長、体重、BMIを測定し、体格を評価します。甲状腺の腫れや、男性ホルモン過剰の兆候(多毛、ニキビ)、乳汁漏出の有無などを確認します。
- 婦人科診察(内診): 子宮や卵巣の大きさ、形、痛みの有無などを確認します。また、外性器や腟に形態的な異常がないかも診察します。性交渉の経験がない方や、内診に強い抵抗がある場合は、無理に行うことはありません。その場合は、お腹の上から超音波検査を行うなど、他の方法で評価しますので、遠慮なく医師に伝えてください6。
ステップ3:基本的な検査 (Basic Tests)
問診と診察から得られた情報に基づき、原因を特定するための具体的な検査に進みます。
- 妊娠反応検査: 性交渉の可能性がある場合、まず妊娠を否定することが最も重要です21。
- 血液検査(ホルモン検査): 無月経の原因を調べる上で中心的な検査です。血液中から以下のホルモン値を測定し、ホルモンバランスの状態を評価します1。
- FSH(卵胞刺激ホルモン): 卵巣の働きを示す指標。高値であれば卵巣機能の低下(早発卵巣不全など)が、低値であれば視床下部や下垂体の機能低下が疑われます。
- LH(黄体形成ホルモン): PCOSではFSHに比べてLHが相対的に高くなる傾向があります。
- プロラクチン(PRL): 高値であれば高プロラクチン血症が疑われます。
- エストラジオール(E2): 女性ホルモン。値が低い場合は卵巣機能の低下を示します。
- TSH(甲状腺刺激ホルモン): 甲状腺機能の異常をスクリーニングします。
- 経腟超音波(エコー)検査: プローブと呼ばれる細い器具を腟内に挿入し、子宮や卵巣の状態を画像で詳しく観察します。子宮内膜の厚さ、卵巣の大きさや多嚢胞性卵巣の所見、腫瘍の有無などを確認できます1。内診と同様、性交渉経験のない方には通常行わず、お腹の上からの検査で代用します。
ステップ4:より専門的な検査 (More Specialized Tests)
基本的な検査で原因が特定できない場合や、特定の疾患が強く疑われる場合には、さらに詳細な検査が必要になることがあります。
- ホルモン負荷試験: 薬剤を注射または内服し、ホルモン値がどのように反応するかを見る検査です。例えば、プロゲステロン製剤を内服して出血が起こるかを見る「プロゲスチン・チャレンジテスト」は、第一度無月経と第二度無月経を鑑別するために行われます21。
- 画像診断: 下垂体腫瘍が疑われる場合には、脳のMRI検査を行います。子宮の形態異常などを詳しく調べるために、骨盤部のMRIやCT検査を行うこともあります1。
- 染色体検査: 原発性無月経で、ターナー症候群などの先天的な疾患が疑われる場合に行われます1。
- 子宮鏡検査: 子宮内に細いカメラを挿入し、子宮内腔を直接観察する検査です。アッシャーマン症候群による癒着が疑われる場合などに行われます23。
このように、診断は一連の論理的なプロセスを経て行われます。受診への不安を抱える必要はありません。ご自身の体を理解し、健康を取り戻すための第一歩として、安心して専門医にご相談ください。
無月経の治療法―原因、年齢、妊娠希望に応じた最適な選択
無月経の治療は、その原因を正確に特定することから始まります。なぜなら、「無月経を治す」という一つの決まった治療法はなく、そのアプローチは原因、患者さんの年齢、そして将来的に妊娠を希望するかどうかによって大きく異なるからです7。この章では、個々の状況に応じた最適な治療法について解説します。
ライフスタイル(生活習慣)の改善
- 対象: 機能性視床下部性無月経(FHA)
- 内容: 過度な運動、急激な体重減少、精神的ストレスが原因であるFHAの場合、薬物治療よりもまず生活習慣の改善が治療の第一選択となります2。これは、体のエネルギー不足を解消し、脳の司令塔である視床下部の機能を正常に戻すことを目的としています。具体的には、栄養士によるカウンセリングを通じた適切なカロリー摂取とバランスの取れた食事、トレーニング量の見直し、ストレスマネジメント(カウンセリングなど)が行われます1。体重減少が原因の場合は、標準体重の90%以上まで回復させることが目標となります24。
ホルモン療法
ホルモン療法は、不足しているホルモンを補ったり、ホルモンバランスを整えたりすることで、月経周期の回復や長期的な健康リスクの軽減を目指します。
- ホルモン補充療法(HRT):
- 低用量経口避妊薬(ピル、OCPs):
- 対象: 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、周期の安定化が必要な場合。
- 目的: 規則的な月経周期を作り、子宮内膜を保護します。避妊を希望する場合にも用いられます。ただし、FHAの患者さんに対して、骨密度改善のみを目的としたピルの使用は、根本的なエネルギー不足の問題を覆い隠してしまう可能性があるため、慎重に検討されるべきとされています21。
- 周期的プロゲスチン療法:
- 対象: PCOSなど、エストロゲンは分泌されているが排卵がない状態(第一度無月経)。
- 目的: 定期的に黄体ホルモンを投与することで、厚くなった子宮内膜を剥がして出血(消退出血)を起こさせます。これにより、子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクを低減します1。
根本原因に対する治療
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS): まずは食事療法や運動療法による体重管理が基本です。インスリン抵抗性が認められる場合には、血糖降下薬であるメトホルミンが使用されることもあります1。
- 高プロラクチン血症: プロラクチン値を下げる薬(ドーパミン作動薬)を服用することで、多くの場合、排卵と月経が回復します1。
- 甲状腺疾患: 甲状腺機能の異常を治療することで、月経周期も正常化することが期待できます14。
外科的治療
- 対象: 下垂体腫瘍、アッシャーマン症候群、処女膜閉鎖などの器質的・構造的な問題。
- 内容: 腫瘍の摘出や、子宮内の癒着を剥離する手術、腟の閉鎖部を切開する手術などが行われます6。
妊娠を希望する場合の治療(不妊治療)
無月経の方で妊娠を希望する場合には、排卵を促す「排卵誘発」が治療の中心となります。
- クロミフェン療法: PCOSなどの第一度無月経に対して、第一選択薬として用いられる内服の排卵誘発剤です1。
- ゴナドトロピン療法: クロミフェンが無効な場合や、FHAなどの第二度無月経に対して用いられます。FSHやLHといったホルモンを直接注射で補充し、卵胞の発育を促します1。
「出血があれば安心?」―治療の本当の目的を理解する
ここで非常に重要なのは、「月経様の出血があること」と「体の健康が回復したこと」は必ずしもイコールではないという点です。特にピルを服用している場合、薬の作用によって規則的な出血が起こりますが、これは体が自力で排卵して起こる自然な月経とは異なります。FHAのように根本にエネルギー不足がある場合、ピルで出血を起こしていても、その裏で骨量の減少は進行している可能性があります21。
治療の真の目的は、単に出血を起こすことではなく、その原因に応じて、(1)排卵機能を回復させること、(2)ホルモン欠乏による長期的な健康リスク(骨粗鬆症など)を防ぐこと、(3)子宮内膜を保護すること、にあります。ご自身の治療がどの目的で行われているのかを医師と共有し、理解することが、治療を主体的に進め、長期的な健康を守る上で不可欠です。
無月経を放置する健康リスク―不妊症、骨粗鬆症、そして将来の健康
「生理が来なくて楽だ」と感じる方もいるかもしれませんが、病的無月経は体が発している重要な警告サインであり、放置すると様々な健康上の問題を引き起こす可能性があります。そのリスクは、無月経の原因によって異なります。ご自身の状態と関連するリスクを正しく理解し、適切な対処につなげることが重要です。
1. 不妊症 (Infertility)
無月経の最も直接的で、多くの方が懸念されるリスクが不妊症です。月経が来ないということは、多くの場合、排卵が起こっていないことを意味します。排卵がなければ、自然に妊娠することはできません1。ただし、原因の多くは治療可能であり、適切な治療によって排卵が回復すれば、妊娠の可能性は十分にあります。無月経に気づいた時点で早期に専門医に相談することが、将来の選択肢を守る上で非常に重要です。
2. 骨粗鬆症 (Osteoporosis)
これは、無月経に伴う最も深刻な長期的リスクの一つです。特に、女性ホルモンであるエストロゲンが欠乏する状態(第二度無月経、機能性視床下部性無月経、早発卵巣不全など)でこのリスクは高まります2。エストロゲンには、骨からカルシウムが溶け出すのを防ぎ、骨の密度を維持する重要な働きがあります。無月経によってエストロゲンが長期間不足すると、骨がもろくなり、将来的に骨折しやすくなる骨粗鬆症につながります1。
日本の『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン』でも、若年女性のエストロゲン欠乏状態が将来の骨の健康に与える影響について警鐘を鳴らしています4。特に10代は、生涯で最も骨量が増加する「ピークボーンマス」を獲得する重要な時期です。この時期に無月経であることは、将来の骨の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります1。実際に、無月経のアスリートでは疲労骨折のリスクが高まることが報告されています2。
3. 子宮内膜増殖症・子宮体がん (Endometrial Hyperplasia/Cancer)
このリスクは、前述の骨粗鬆症とは逆のホルモン状態で高まります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)のように、排卵はないもののエストロゲンは分泌され続けている状態(第一度無月経)では、子宮内膜が黄体ホルモンによる剥離(月経)を経験しないまま、エストロゲンの刺激を受け続けて増殖します。この状態が長く続くと、子宮内膜が異常に厚くなる「子宮内膜増殖症」となり、一部は子宮体がんへと進行するリスクが高まります8。このため、PCOSなどでは定期的にホルモン剤で月経を起こし、子宮内膜をリセットする治療が重要となるのです。
4. 心血管疾患 (Cardiovascular Disease)
エストロゲンには、血管のしなやかさを保ち、動脈硬化を防ぐ働きもあります。そのため、早発卵巣不全などで長期間エストロゲンが欠乏する状態は、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスクを高める可能性が指摘されています14。
5. 心理的ストレス (Psychological Stress)
特に思春期の女性にとって、周りの友人が月経を経験している中で自分だけに来ないという状況は、大きな孤立感やストレスにつながることがあります14。また、無月経の原因自体がストレスであることも多く、心身の両面からのサポートが必要となる場合があります。
このように、無月経がもたらすリスクは多岐にわたり、その原因によって注意すべき点が異なります。「エストロゲンが低い状態」では骨の健康が、「エストロゲンが高い(が排卵はない)状態」では子宮内膜の健康が、それぞれ主な懸念点となります。この違いを理解し、ご自身の状態に合わせた適切な管理を行うことが、生涯にわたる健康を守る鍵となります。
よくある質問
Q1: 無月経の検査や治療には、どのくらいの費用がかかりますか?
Q2: 無月経でも妊娠できますか?
A2: 無月経の状態で、排卵が起こっていなければ、自然に妊娠することはできません。しかし、これは「永久に妊娠できない」という意味ではありません。無月経の原因の多くは治療可能です。適切な治療を受けて排卵が回復すれば、妊娠の可能性は十分にあります1。例えば、機能性視床下部性無月経であれば生活習慣の改善で、多嚢胞性卵巣症候群であれば排卵誘発剤で、排卵を再開させることが期待できます。将来の妊娠を望む方は、できるだけ早く専門医に相談することが重要です。
Q3: 体重を戻せば、生理は必ず戻りますか?
A3: 急激なダイエットによる体重減少が原因の無月経(機能性視床下部性無月経)の場合、適正な体重まで回復させることは、月経を再開させるための最も重要なステップです。多くの場合、体重が戻ることで月経も回復します1。しかし、月経の再開には時間がかかることもあり、体重だけでなく、食事の栄養バランスや精神的なストレスなど、他の要因も影響します。体重が戻ってもすぐに月経が再開しないこともありますので、焦らず、医師の指導のもとで心身の健康を総合的に回復させていくことが大切です。
Q4: ピルを飲む治療と、ホルモン補充療法(HRT)はどう違うのですか?
A4: これは非常に重要な違いです。どちらも女性ホルモンを使う治療ですが、目的と使用するホルモンの種類が異なります。
- ピル(低用量経口避妊薬): 主に避妊や、月経周期を整えて月経困難症などを改善する目的で使われます。含まれるホルモンは合成ホルモンであり、排卵を抑制します。
- ホルモン補充療法(HRT): 主に早発卵巣不全や閉経期など、体内で不足している女性ホルモンを、体に自然な形に近いホルモン製剤(経皮吸収剤など)で補う治療です。目的は、骨粗鬆症や動脈硬化といった長期的な健康リスクを予防することにあります21。
どちらの治療法が適しているかは、無月経の原因、年齢、そして治療の目的によって異なります。医師とよく相談し、ご自身に合った治療法を選択することが重要です。
結論
無月経は、単に「月経が来ない」という現象ではありません。それは、ストレス、栄養状態、ホルモンバランス、そして時には背景にある病気など、あなたの体が発している複雑で重要なメッセージです。この記事を通して、無月経には多様な原因と、それぞれに応じた適切な対処法があることをご理解いただけたことと思います。最も大切なことは、「そのうち来るだろう」と放置せず、体のサインに真摯に耳を傾けることです。特に、3ヶ月以上月経が来ない、あるいは15歳になっても初経がない場合は、ためらわずに専門医の扉を叩いてください。早期の診断と治療は、不妊症や骨粗鬆症といった将来の健康リスクを回避し、あなたの生涯にわたる健康を守るための最も確実な一歩となります。ご自身の体を大切にし、健やかな毎日を送るために、この記事がお役に立てれば幸いです。
参考文献
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