生後3ヶ月からの赤ちゃんの風邪 完全ガイド:受診の目安、鼻水・咳のホームケア、薬の安全な使い方
小児科

生後3ヶ月からの赤ちゃんの風邪 完全ガイド:受診の目安、鼻水・咳のホームケア、薬の安全な使い方

初めてのお子さんが鼻を詰まらせ、苦しそうに咳き込む姿を目の当たりにするとき、保護者の方が抱く不安は計り知れないものです。インターネットには情報が溢れていますが、何が正しく、何が安全なのかを見極めるのは容易ではありません。この記事の目的は、そのような保護者の皆様に、現在利用可能な最も信頼性が高く、科学的根拠に基づいた実践的な情報を提供することです。これにより、自信を持って安全にお子様のケアにあたれるよう支援することを目指します。本稿で提供する情報は、単一の医師の見解や個別の体験談に基づくものではありません。日本の厚生労働省1、日本小児科学会2、米国の疾病対策センター(CDC)3、そして米国小児科学会(AAP)4といった、国内外の最も権威ある公的機関および専門家組織が公表している診療ガイドラインや指針を統合・分析したものです。このアプローチにより、最高レベルの信頼性と権威性を確保し、保護者の皆様が安心して頼れる情報源となることをお約束します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下のリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性のみが含まれています。

  • 厚生労働省: この記事における「抗菌薬の適正使用」に関するガイダンスは、厚生労働省が発行した「抗微生物薬適正使用の手引き」に基づいています1
  • 日本小児科学会: 「小児呼吸器感染症」の診療に関する指針は、日本小児科学会発行のガイドラインを参考にしています2
  • 米国疾病対策センター(CDC): 「普通感冒」および「RSウイルス感染症」に関する情報、特に乳幼児への具体的なケアや予防策に関する推奨事項は、CDCの公開情報を基にしています3
  • 米国小児科学会(AAP): 市販の風邪薬の危険性や乳児の風邪に対する基本的な考え方に関する記述は、AAPの患者向け教育資料およびガイドラインに基づいています4

要点まとめ

  • 生後3ヶ月未満の赤ちゃんが38.0℃以上の熱を出した場合は、命に関わる可能性があるため、夜間・休日でも直ちに救急受診が必要です。
  • 赤ちゃんの風邪の原因はウイルスなので、抗菌薬(抗生物質)は効果がありません。
  • 医師の処方なく市販の咳止めや風邪薬を乳幼児に与えることは、重篤な副作用のリスクがあるため絶対に避けてください。
  • ホームケアの基本は「十分な水分補給」「穏やかな休息」「適切な湿度管理(50~60%)」です。
  • 1歳未満の乳児に「はちみつ」を与えると致死的な「乳児ボツリヌス症」のリスクがあるため、絶対に与えてはいけません。
  • 判断に迷った際は、全国共通の「子ども医療電話相談事業(#8000)」を活用しましょう。

1. 赤ちゃんの「風邪(普通感冒)」とは?- 基本的な知識

一般的に「風邪」と呼ばれる状態は、正式には「普通感冒」といい、鼻や喉といった上気道にウイルスが感染することで引き起こされる病気です5

1.1. 風邪の正体:原因は200種類以上のウイルス

風邪の原因となるウイルスは200種類以上存在し、中でもライノウイルスが最も一般的です3。ここで最も重要な点は、風邪の原因が「ウイルス」であるということです。そのため、細菌を殺すための薬である抗菌薬(抗生物質)は、ウイルスの感染症である風邪には全く効果がありません6。この事実は、後述する薬との付き合い方で詳しく解説しますが、安全なケアを行う上での大原則となります。

1.2. なぜ赤ちゃんは風邪をひきやすいのか?

赤ちゃんが頻繁に風邪をひくのは、決して特別なことではありません。その背景には、乳児特有の生理的な理由があります。

  • 未熟な免疫システム: 赤ちゃんは、風邪の原因となる多くのウイルスにまだ出会ったことがありません。そのため、ウイルスに対する抵抗力(免疫)が未発達であり、感染しやすい状態にあります4
  • 正常な罹患回数: 米国小児科学会(AAP)によると、乳幼児は1年間に6回から10回ほど風邪をひくことがあり、これは成長過程においてごく自然なことです4。特に保育園などの集団生活を送っている場合は、さらに回数が増える傾向があります7

1.3. 風邪の典型的な経過

米国の疾病対策センター(CDC)によれば、風邪の症状は通常、感染後2〜3日でピークを迎え、多くは10日から14日以内に自然に回復します3。風邪の経過で多くの保護者が心配するのが鼻水の色です。最初は透明で水っぽかった鼻水が、数日経つと白、黄色、あるいは緑色に変化することがあります3。この色の変化は、ウイルスと戦うために集まってきた白血球などの免疫細胞の残骸によるものであり、免疫システムが正常に機能している証拠です。鼻水の色が変わったからといって、必ずしも細菌感染を意味するわけではなく、抗菌薬が必要になるというサインではありません3。この点は、多くの保護者が誤解しやすいポイントであり、不必要な抗菌薬の使用を避けるためにも正しく理解しておくことが重要です。厚生労働省の「抗微生物薬適正使用の手引き」でも、膿性の鼻汁があることだけを理由に直ちに抗菌薬を投与することは推奨されていません8

2. 【最重要】病院へ行くべき?受診のタイミングと緊急サイン

このセクションは、お子様の安全を守るために最も重要な情報です。症状に応じて「至急救急受診すべき場合」と「診療時間内に受診を検討すべき場合」に分けて解説します。

2.1. 【至急!夜間・休日でも救急受診】命に関わる緊急サイン

以下の症状が一つでも見られる場合は、命に関わる重篤な病気の可能性があります。ためらわずに夜間や休日であっても救急医療機関を受診してください。

  • 生後3ヶ月未満で38.0℃以上の発熱: これは絶対的なルールです。生後3ヶ月未満の赤ちゃんは免疫機能が極めて未熟なため、発熱が敗血症や細菌性髄膜炎といった重篤な細菌感染症の唯一のサインである可能性があります9。これらの病気は急速に進行し、命に関わるため、一刻も早い診断と治療が必要です。この基準は、日本の厚生労働省10や日本小児科学会、そして米国のCDC3やAAPなど、国内外の全ての主要なガイドラインで一致して強調されています。
  • 呼吸の異常:
    • 呼吸が速い、または肩で息をするなど苦しそうに見える11
    • 鼻の穴をヒクヒクさせて呼吸している(鼻翼呼吸)10
    • 息を吸うたびに、胸や肋骨の下がペコペコとへこむ(陥没呼吸)12
    • 唇や顔色、肌の色が青白い、または土色になっている(チアノーゼ)13
    • 息を吐くときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音が聞こえる(喘鳴)14
  • けいれん: 白目をむいて手足が突っ張る、ガクガクと震えるなどのけいれんを起こした場合。特に5分以上続く場合や、短いけいれんでも繰り返す場合は極めて危険なサインです9
  • 脱水のサイン:
    • 半日(8時間)以上おしっこが出ていない、おむつが濡れない7
    • 大声で泣いているのに涙が出ていない12
    • 口の中や舌が乾いている12
    • 目が落ちくぼんで見える15
  • 意識の異常:
    • ぐったりして元気がなく、あやしても笑わない、普段興味を示すものに無関心9
    • 呼びかけへの反応が鈍い、またはほとんど眠ってばかりで起きない10

2.2. 【診療時間内に受診】医師に相談した方が良い症状

緊急性はないものの、医師の診察を受けた方が良い状態です。慌てずに、かかりつけ医の診療時間内に受診を検討してください。

  • 38.0℃以上の発熱が4日以上続く11
  • 一度は熱が下がったり咳が減ったりしたのに、再び症状が悪化してきた11
  • 咳がひどくて眠れない、または咳き込んで水分が摂れない10
  • しきりに耳を触る、耳を気にして泣くなど、耳の痛みを疑わせる仕草がある(中耳炎の可能性があります)4
  • 風邪の症状が10日以上経っても改善する気配がない11
  • 医学的な根拠はなくても、保護者が「何かいつもと違う」「様子がおかしい」と強く感じる場合16。保護者の直感は、重要な診断の手がかりになることがあります。

3. 風邪?それとも他の病気? – 症状の見分け方

赤ちゃんの風邪の症状は、他のより注意が必要な感染症と似ていることがあります。ここでは、特に鑑別が重要な病気の特徴を解説します。

3.1. RSウイルス感染症 (RSV)

  • 特徴: 初期は鼻水や咳など普通の風邪と区別がつきませんが、感染から数日経つと「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)が悪化し、呼吸困難に陥ることが特徴です17
  • 重症化リスク: 特に生後6ヶ月未満の乳児や、早産で生まれた赤ちゃん、心臓や肺に基礎疾患を持つ赤ちゃんは、細気管支炎や肺炎を起こして重症化しやすく、入院が必要になることがあります17
  • 予防: 近年、ニルセビマブ(商品名:ベイフォータス)という予防薬(長時間作用型モノクローナル抗体製剤)が全ての乳児を対象に使用可能になりました。また、特定のハイリスク児にはパリビズマブ(商品名:シナジス)も使用されます18

3.2. インフルエンザ (Influenza)

  • 特徴: 38℃以上の突然の高熱で発症し、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身の倦怠感といった全身症状が、鼻水や咳などの局所症状よりも強く現れる傾向があります5
  • 予防: 生後6ヶ月からインフルエンザワクチンの接種が可能です。また、妊娠中に母親がワクチンを接種することで、生まれてくる赤ちゃんに抗体が移行し、生後数ヶ月間の感染リスクを減らす効果が期待できます12

3.3. クループ症候群 (Croup)

  • 特徴: 「ケンケン」「コンコン」という犬が吠えるような、またはオットセイの鳴き声のような、特徴的な乾いた咳(犬吠様咳嗽)と、息を吸うときに聞こえる「ヒュー」という音(吸気性喘鳴)が典型的な症状です8
  • 原因: 主にウイルス感染によって喉頭(のど仏のあたり)が腫れることで空気の通り道が狭くなるために起こります8

3.4. その他の夏風邪(ヘルパンギーナ、手足口病)

  • ヘルパンギーナ: 突然の39℃前後の高熱と、喉の奥(口蓋垂の周辺)にできる小さな水疱や口内炎が特徴です。強い喉の痛みのため、哺乳や水分摂取を嫌がり、脱水症を起こしやすいので注意が必要です6
  • 手足口病: その名の通り、口の中、手のひら、足の裏や甲に水疱性の発疹が現れるのが特徴です。発熱を伴うこともありますが、比較的軽度なことが多いです19
主な呼吸器感染症の症状比較
疾患名 主な症状 熱の特徴 咳の特徴 特記事項
普通感冒 鼻水、鼻づまり、咳、喉の痛みなど多彩 ない場合もあるし、38℃程度の発熱も。 湿った咳、乾いた咳など様々。 全体的に症状は比較的軽度で、全身状態は良好なことが多い5
RSウイルス感染症 激しい咳、多呼吸、喘鳴(ゼーゼー) 38〜39℃の発熱が多い。 湿ったしつこい咳。次第に悪化する。 生後6ヶ月未満は重症化リスクが高い。細気管支炎や肺炎に注意17
インフルエンザ 全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛 38℃以上の突然の高熱。 後から咳や鼻水が出てくることが多い。 全身症状が局所症状より強く、ぐったりしやすい5
クループ症候群 犬が吠えるような咳(犬吠様咳嗽)、嗄声、吸気性喘鳴 発熱を伴うことが多い。 特徴的な「ケンケン」という乾いた咳。 夜間に症状が悪化する傾向がある。呼吸困難が強い場合は緊急受診8
ヘルパンギーナ 喉の奥の水疱、強い喉の痛み、よだれ 突然の39℃以上の高熱。 咳はあまり目立たない。 喉の痛みで哺乳不良になり、脱水に注意が必要6

4. おうちでできる!赤ちゃんを楽にするためのホームケア完全ガイド

赤ちゃんの風邪は、ほとんどがウイルス性であるため、特効薬はありません。回復を助ける鍵は、赤ちゃんの体力を消耗させず、体がウイルスと戦うのをサポートする丁寧なホームケアです。

4.1. 基本の3原則:水分補給・休息・湿度管理

  • 水分補給: 脱水は乳児にとって最も警戒すべき状態です。母乳やミルクを欲しがるだけ与えてください。一度にたくさん飲めない場合は、スプーンやスポイトを使い、少量ずつ頻回に与える工夫をしましょう10
  • 休息: 無理に寝かしつける必要はありませんが、おもちゃで激しく遊ばせるなどは避け、静かな環境で穏やかに過ごさせることが大切です。体がウイルスと戦うためにエネルギーを温存できるよう手助けします20
  • 湿度管理: 乾燥した空気は、鼻や喉の粘膜を刺激し、咳や鼻づまりを悪化させます。加湿器を使用したり、濡れたタオルを室内に干したりして、湿度を50〜60%に保つように心がけましょう21

4.2. 【症状別ケア】鼻水・鼻づまり

  • 鼻を温める: 蒸しタオル(熱すぎないように注意)で鼻の付け根あたりを優しく温めると、血行が良くなり鼻の通りが一時的に改善されることがあります22
  • 鼻水の吸引: 赤ちゃんは自分で鼻をかむことができないため、鼻吸い器による鼻水の除去は非常に効果的です。
    • 安全な使い方: 吸引前に、市販の赤ちゃん用生理食塩水点鼻薬を1〜2滴鼻に垂らし、固くなった鼻水を柔らかくしておくと、粘膜を傷つけずにスムーズに吸引できます4。鼻吸い器の先端を鼻の粘膜に強く押し付けず、優しく角度を変えながら吸い取ります。無理に奥まで挿入したり、強く吸引しすぎたりすると、粘膜を傷つけたり、耳への圧力を高めて中耳炎のリスクを上げたりする可能性があるので注意が必要です21
  • 寝るときの姿勢: 鼻づまりで眠りにくそうなときは、バスタオルなどを背中の下に敷き、上半身を少し高くしてあげると、鼻呼吸が楽になることがあります21

4.3. 【症状別ケア】咳・喉の痛み

  • 水分と湿度: 咳や喉の痛みのケアの基本は、喉を潤すことです。こまめな水分補給と部屋の加湿を徹底しましょう23
  • 【超重要・禁忌】1歳未満の乳児にはちみつは絶対NG: 1歳未満の乳児には、はちみつ(蜂蜜)やはちみつを含む食品・飲料を絶対に与えないでください。はちみつにはボツリヌス菌の芽胞が含まれている可能性があり、腸内環境が未熟な乳児が摂取すると、致死的な「乳児ボツリヌス症」を発症する危険があります。これは米国CDC、米国小児科学会(AAP)をはじめ、世界中の医療機関が一致して警告している極めて重要な安全情報です3
  • 寝るときの姿勢: 咳がひどい場合も、上半身を少し高くして寝かせると、気道への刺激が和らぎ、咳が楽になることがあります22

4.4. 【症状別ケア】発熱

発熱は、体がウイルスと戦っているサインです。熱の段階に応じてケアを変えることで、赤ちゃんを快適にしてあげられます。

  • 上がり始め(悪寒期): 体温が上昇している時期で、手足が冷たく、顔色が悪くなり、ブルブルと震えることがあります。このときは赤ちゃんが寒さを感じているため、一枚多く着せたり、おくるみや毛布で包んだりして温めてあげましょう10
  • 上がりきった後(熱感期): 体温がピークに達すると、手足も温かくなり、顔が赤く火照ってきます。この段階では熱を体外に逃がす手助けが必要です。衣服を一枚減らすなど薄着にし、赤ちゃんが嫌がらなければ、タオルで包んだ保冷剤などで首の付け根、わきの下、足の付け根といった太い血管が通っている場所を冷やしてあげると、心地よく過ごせることがあります10
  • 入浴: 熱が高くても機嫌が良く元気であれば、汗を流すためにさっとシャワーを浴びるのは問題ありません。ただし、長湯は体力を消耗するため避けましょう。入浴後は湯冷めしないように素早く体を拭き、服を着せてあげてください24

5. 【保護者必読】薬との正しい付き合い方

赤ちゃんの薬の使用には、大人とは異なる特別な注意が必要です。誤った知識は、かえってお子様を危険に晒すことになりかねません。

5.1. なぜ市販の風邪薬(総合感冒薬)は赤ちゃんに危険なのか?

乳幼児に、医師の処方なく市販の咳止めや鼻水止めなどの風邪薬(総合感冒薬)を与えることは絶対に避けてください。これは国際的な医療のコンセンサスです。

  • 国際的な警告: 米国小児科学会(AAP)や米国食品医薬品局(FDA)は、乳幼児への市販の咳・風邪薬の使用を強く非推奨としています3
  • その理由:
    • 効果が証明されていない: 乳幼児に対する有効性が科学的に証明されていません25
    • 深刻な副作用のリスク: 赤ちゃんは体が小さく、薬の成分を分解・排泄する機能が未熟です。そのため、わずかな量の違いで過量投与となりやすく、心拍数の異常、けいれん、意識障害、さらには死亡に至る重篤な副作用のリスクがあります3
    • 原因を治すわけではない: これらの薬は症状を一時的に抑えるだけで、原因であるウイルスを体から排除するわけではありません20

5.2. 抗菌薬(抗生物質)が風邪に効かない理由と薬剤耐性(AMR)の問題

前述の通り、風邪の原因はウイルスであり、抗菌薬は細菌にしか効きません1。風邪に抗菌薬を使用することは、効果がないだけでなく、深刻な問題を引き起こします。それが「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)」の問題です。不必要に抗菌薬を使用すると、体内にいる細菌がその薬に耐える力を持ってしまい、本当に抗菌薬による治療が必要な細菌感染症(肺炎や中耳炎など)にかかった際に、薬が効かなくなってしまうのです。この薬剤耐性菌の増加は、世界的な公衆衛生上の脅威となっており、日本の厚生労働省も「抗微生物薬適正使用の手引き」を策定し、国を挙げて不要な抗菌薬の使用を減らす取り組みを進めています126

5.3. 解熱鎮痛剤の安全な使い方

解熱剤は、病気そのものを治す薬ではありません。高熱による不快感を和らげ、赤ちゃんが水分を摂ったり、眠ったりするのを助けるための「お助けアイテム」と理解しましょう27

  • 使用の目安: 体温が38.5℃以上あり、かつ、ぐったりして水分が摂れない、つらくて眠れないなど、全身状態が明らかに悪い場合に限り、使用を検討します28。熱が高くても機ipherが良く、遊べているようなら、無理に使う必要はありません。
  • 種類と注意点: 赤ちゃんに使用できる解熱剤の成分は限られています。必ず医師や薬剤師の指示に従い、用量・用法を厳守してください。
乳幼児に使用可能な解熱鎮痛剤
薬剤成分名 商品名例 使用可能年齢 主な注意点
アセトアミノフェン カロナール、アンヒバ、アルピニーなど 生後3ヶ月頃から 日本で最も一般的に乳幼児に処方される。比較的安全性が高いとされる。
イブプロフェン ブルフェン、ユニプロンなど 生後6ヶ月以上 脱水状態の時に使用すると腎臓に負担をかけることがあるため、水分が十分摂れていることが使用の前提29
アスピリン (バファリンなど成人用) 小児には禁忌 インフルエンザや水痘などのウイルス感染時に使用すると、重篤な脳症(ライ症候群)を引き起こす危険があるため、絶対に使用しない3

6. 赤ちゃんの風邪を予防するためにできること

完全に風邪を防ぐことは困難ですが、感染のリスクを減らすために家庭でできる対策はたくさんあります。

  • 手洗い: 保護者、兄弟、そして赤ちゃん自身の手をこまめに石鹸と流水で洗うことが、最も基本的で効果的な予防策です3
  • 人混みを避ける: 風邪が流行している時期は、不必要な人混みや閉鎖された空間への外出を控えることが賢明です7
  • 環境の清潔: 赤ちゃんが口に入れやすいおもちゃや、家族が頻繁に触れるドアノブなどをこまめに清掃・消毒しましょう7
  • 予防接種: インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンなどは、風邪そのものを防ぐわけではありませんが、風邪をきっかけに起こりやすい重篤な合併症(細菌性肺炎や髄膜炎など)を予防する上で極めて重要です。スケジュール通りに接種を進めましょう11
  • 咳エチケット: 家族に咳などの症状がある場合は、マスクを着用するなど、赤ちゃんにうつさないための配慮が不可欠です8

よくある質問

鼻水の色が黄色や緑色になりました。抗菌薬(抗生物質)は必要ですか?
いいえ、必ずしも必要ではありません。CDCによると、鼻水の色が変化するのは、ウイルスと戦った免疫細胞の残骸によるもので、体が正常に機能している証拠です3。色が変わったことだけを理由に細菌感染と判断し、抗菌薬を使用することは推奨されていません。ただし、他の症状(高熱が続く、症状が悪化するなど)と合わせて医師が総合的に判断します。
1歳未満の赤ちゃんにはちみつを与えてはいけないのはなぜですか?
はちみつには、ボツリヌス菌の芽胞(がほう)が含まれている可能性があります。腸内環境が未熟な1歳未満の乳児がこれを摂取すると、腸内で菌が増殖して毒素を出し、「乳児ボツリヌス症」という命に関わる重篤な病気を引き起こす危険があるためです。これは米国CDC3や日本の厚生労働省も警告している非常に重要な点です。
市販の子ども用風邪薬を、量を減らして与えるのはダメですか?
絶対にやめてください。米国小児科学会(AAP)は、乳幼児への市販の風邪薬の使用を強く非推奨としています4。その理由は、乳幼児に対する有効性が証明されていないだけでなく、赤ちゃんは薬を分解・排泄する機能が未熟なため、深刻な副作用(けいれん、心拍数の異常など)を引き起こすリスクが非常に高いからです3。必ず医師が処方した薬を、指示された用法・用量で与えてください。

結論

赤ちゃんの初めての風邪は、保護者にとって大きな試練です。しかし、正しい知識があれば、冷静に、そして安全に対処することができます。最も重要なことは、風邪は多くがウイルス性で自然に治ること、市販薬には頼らずホームケアが中心であること、そして何よりも危険なサインを見逃さないことです。呼吸の異常やぐったりして反応が鈍いといった緊急サインが見られた場合は、ためらわずに救急受診してください。判断に迷ったとき、不安なときは、一人で抱え込まないでください。かかりつけの小児科医や、夜間・休日に利用できる「子ども医療電話相談事業(#8000)」は、保護者の皆様の強い味方です。これらの公的な相談窓口を積極的に活用し、日頃から信頼できるかかりつけ医を見つけておくことが、いざという時の最大の安心につながります。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康上の懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

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