【医師監修】赤ちゃんのコリック(黄昏泣き)完全ガイド:科学的根拠に基づく原因の解明と包括的対策
小児科

【医師監修】赤ちゃんのコリック(黄昏泣き)完全ガイド:科学的根拠に基づく原因の解明と包括的対策

乳児コリック(Infant Colic)、日本では一般的に「黄昏(たそがれ)泣き」として知られるこの現象は、新生児を持つ多くの親が直面する最も困難な課題の一つです。原因不明の激しい泣きが何時間も続く時、親は疲弊し、不安に苛まれ、「自分の育て方が悪いのではないか」「子どもに何か深刻な病気があるのではないか」と自問自答してしまいます。この記事は、JAPANESEHEALTH.ORG編集委員会が、最新の科学的知見と信頼できる医学的エビデンスに基づき、コリックに関するあらゆる疑問に答えるために作成した包括的なガイドです。コリックの正確な定義から、その根本原因に関する多角的な仮説、そして具体的な対処法、さらには何よりも大切な「親自身のケア」に至るまで、深く掘り下げて解説します。この記事を読み終える頃には、あなたはコリックに対する正しい理解と、この困難な時期を乗り越えるための具体的な戦略を手にしていることでしょう。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的エビデンスのみに基づいています。以下に示すリストには、実際に参照された情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性のみが含まれています。

  • 米国家庭医学会(AAFP)の複数の臨床レビュー2322: コリックの定義、鑑別診断、治療介入の有効性に関する包括的なガイダンスは、これらのレビューに基づいています。特に、効果が証明されている治療法と、効果がない、あるいは有害である可能性のある治療法を区別する上で中心的な役割を果たしました。
  • カナダ家庭医協会(CFPC)の論文4: プライマリケアにおけるコリックへのアプローチ、特に危険な兆候(レッドフラッグ)の特定と、親への心理的サポートの重要性に関する指針は、この論文に基づいています。
  • プロバイオティクス(特にL. reuteri DSM 17938株)に関する複数のメタアナリシスと臨床試験52829: コリック治療におけるプロバイオティクスの有効性に関する記述は、これらの質の高い科学的研究に基づいています。
  • 理化学研究所(RIKEN)の研究32: 日本の研究機関による「輸送反応」に関する科学的発見は、具体的で実践的なあやし方のテクニックの根拠となっています。

要点まとめ

  • コリック(黄昏泣き)は、健康な赤ちゃんに見られる原因不明の激しい泣きで、通常生後2~3週で始まり、6~8週でピークを迎え、3~4ヶ月で自然に治まります。病気ではなく、長期的な悪影響もありません14
  • 原因は一つではなく、神経系の未熟さ、消化器系の問題(特に牛乳アレルギー)、腸内細菌叢の乱れなど、複数の要因が絡み合っていると考えられています5
  • 激しい泣きが他の病気のサインである可能性もあるため、発熱、嘔吐、体重減少などの「危険な兆候(レッドフラッグ)」がないか確認することが非常に重要です34
  • 科学的に効果が証明されている対策には、親への心理的サポート、規則正しい生活習慣の確立、プロバイオティクス(L. reuteri DSM 17938株)の投与、そして牛乳アレルギーが疑われる場合の食事療法などがあります521
  • 最も重要な介入は「親自身のケア」です。親が心身ともに健康であることが、この困難な時期を乗り越えるための鍵となります。決して一人で抱え込まず、助けを求めることが不可欠です11

第1部:コリック(黄昏泣き)を正しく理解する – 誤解を乗り越えて

1.1. コリックの正確な医学的定義

コリック、または乳児疝痛(せんつう)は、新生児のどんな泣きでもありません。これは非常に特徴的な行動症候群です。他の健康問題との混同を避け、正しいアプローチをとるために、現代医学は具体的な診断基準を設けています。これらの定義を理解することは、親が自分の子供が直面している問題を正確に把握するための最初の、そして最も重要なステップです。

ウェッセル基準(「3のルール」)

1954年、小児科医のモリス・ウェッセル博士は、「3のルール(Rule of Threes)」として広く知られる古典的な定義を提唱しました。それによると、完全に健康で正常に発育している新生児が、以下の条件を満たす場合にコリックと見なされます:原因不明の泣きが1日に3時間以上続き、それが週に3日以上発生し、3週間以上持続する1。このルールは、その単純さと適用のしやすさから、何十年にもわたって親と医師が子どもの泣きが「過剰」であるかどうかを判断するための共通の基準となってきました。

Rome IV基準(最新の更新)

しかし、「3のルール」には、診断までに3週間待たなければならないといった特定の制約があり、家族に長期的な不安を引き起こしていました。そのため、診断基準は更新され、より洗練されてきました。2016年に発表されたRome IV基準は、コリックを含む機能性消化管疾患の最新の診断基準です。
Rome IV基準によると、コリックは生後5ヶ月未満の乳児に見られる状態で、再発性で長時間にわたる、原因不明の泣き、ぐずり、または興奮の発作があり、保護者がそれを防いだりなだめたりすることができない状態と定義されています1。この基準で最も重要なのは、診断が、子どもの発達遅延、発熱、またはその他のいかなる疾患の証拠も除外した後にのみ確立されるという点です5
ウェッセル基準からRome IV基準への移行は、医学的思考における大きな進歩を反映しています。焦点はもはや泣いている時間の長さだけでなく、泣きの性質(なだめられない、原因不明)と、身体的疾患を除外するという必須要件にも置かれています。これは、コリックが単なる「よく泣く子」ではなく、複雑な行動・生物学的症候群であり、除外診断であることを示しています。このアプローチは、医師がコリックと結論付ける前に、危険な兆候を探すための包括的な検査を行うことを義務付け、子どもの安全を最大限に確保します。

コリックによる泣きの特徴

時間の基準に加えて、コリックによる泣きには、親が認識するのに役立つ非常に典型的な特徴があります:

  • 時間帯:泣きは通常、前触れなく突然始まり、一日の特定の時間帯、最も一般的には午後遅くや夕方に集中します2
  • 性質:泣き声は通常、非常に大きく、激しく、甲高く、空腹や不快感による通常の泣き声とは明らかに異なり、苦痛の叫びのように聞こえます2
  • なだめられない:これは親にとって最も落胆させる特徴です。授乳、おむつ交換、抱っこ、揺するなど、あらゆる方法を試しても、子どもは慰められることなく泣き続けます1
  • 身体的兆候:泣いている間、子どもはしばしば明確な身体的緊張の兆候を示します:顔が真っ赤になり、額にしわが寄り、お腹が硬くなり、両手を固く握りしめ、両足をお腹に引き寄せるか、硬直してまっすぐに伸ばし、背中を反らせることがあります1

1.2. 自然な経過:「いつ終わるのか?」

コリックを持つ親が抱く最大かつ最も切迫した疑問の一つは、「この状態はいつまで続くのか?」ということです。幸いなことに、コリックはかなり明確な自然経過をたどり、自己限定的な傾向があります。

典型的な期間

世界中の研究は、コリックの経過について一貫した全体像を描いています。この状態は通常、生後2週目か3週目に早くも始まり、症状の強度と頻度は徐々に増加し、生後6〜8週頃にピークに達します。これは通常、赤ちゃんと家族の両方にとって最も困難な時期です。このピークの後、泣きは自然に減少し始めます。ほとんどのコリックのケースは、子どもが生後3〜4ヶ月になる頃には大幅に軽減または完全に消失します1。ごく一部のケースではもう少し長く続くことがありますが、通常は生後6ヶ月になるまでには終わります3。この期間を理解することは、大きな希望と慰めをもたらし、親がこの困難な時期を乗り越えるための力を与えてくれます。

有病率と一般性

もしあなたがコリックの赤ちゃんと格闘しているなら、あなたは決して一人ではないことを知ることが重要です。コリックは新生児で最も一般的な問題の一つです。統計によると、この状態は定義や使用される研究方法によって異なりますが、世界中の子どものかなりの割合、10%から40%に影響を与えるとされています3。日本でのいくつかの報告では、この割合は約20%であり、これは5人に1人の子どもがこの時期を経験することを意味します9。コリックは男の子と女の子で同等の割合で発生し、母乳育児か粉ミルク育児か、正期産か早産かによる差はありません3

コリックは自己限定的なプロセスです

医学が親に伝えたい最も核心的で安心させるメッセージは、コリックは非常に困難な発達段階ではあるものの、完全に良性であり、子どもの身体的または精神的健康に長期的な後遺症を残すことなく自然に終わるということです4。コリックの子どもは、成長し続け、体重を増やし、正常な発達のマイルストーンを達成します。これを理解することは、親が自分の子どもに何か「深刻な問題」があるのではないかという恐怖を和らげ、パニックに陥るのではなく、対処戦略に集中するのに役立ちます。
親が迅速に識別するためのツールとして、以下の比較表は、コリックによる泣きと通常の生理的な泣きとの違いを明確にします。

表1:コリック(黄昏泣き)と通常の生理的な泣きの比較
比較項目 通常の生理的な泣き コリック(黄昏泣き)
原因 通常は明確:空腹、おむつが汚れている、疲労、暑い、寒い、抱っこしてほしいなど10 明確な原因がなく、基本的なニーズがすべて満たされていても起こる1
時間帯 一日中いつでも起こりうる。 通常は規則性があり、午後遅くや夕方に集中し、ほぼ毎日同じ時間帯に起こる2
持続時間 通常は短く、断続的で、原因が解決されると止まる。 長く、連続的で、古典的な定義によれば通常1日に3時間以上続く1
音量と性質 すすり泣き、ぐずり、または大きな泣き声であるが、音量が変わることがある。 大きく、甲高く、激しい泣き声で、苦痛や怒りの叫びのように聞こえ、音量は高く一定2
なだめる能力 通常の手段(授乳、おむつ交換、なだめる、抱っこ)でなだめることができる。 なだめるのが非常に難しいか、不可能。慰める努力はすべて無駄に見える1
身体的兆候 なだめられ、ニーズが満たされると体はリラックスする傾向がある。 体が硬直する:手を固く握りしめる、足をお腹に引き寄せる、体を硬直させる、背中を反らせる、お腹が張る4
顔の表情 しかめ面をすることがあるが、慰められると和らぐ。 顔が真っ赤になり、額にしわが寄り、明確な苦痛の表情1
泣き止む時 満足すると徐々に落ち着き、泣き止む。 泣きは始まったときのように突然終わることがあり、通常は疲れ果てて眠りに落ちた後、またはおならや排便の後に終わる4

第2部:根本原因を探る – 多因子性の問題

何十年もの間、科学者や医師は「なぜ赤ちゃんはコリックで泣くのか?」という問いに対する単一の答えを探し求めてきました。しかし、証拠はますます、単一の「犯人」はいないことを示しています。その代わりに、コリックは、生理学、神経学、消化器、そして環境に関連するさまざまな要因間の相互作用の結果である複雑な症候群と見なされています。この多因子アプローチは、ある治療法がこの子には効果があっても、別の子には全く効果がない理由を説明します。これらの仮説を理解することは、親がより包括的な視点を持ち、自分の子に合った解決策を見つける上でより忍耐強くなるのに役立ちます。

2.1. 生理学および神経発達に関する仮説(身体の未熟さ)

これは最も広く受け入れられている仮説の一つであり、コリックは新生児の未熟な発達過程の現れであると主張しています。

  • 未熟な神経系:生後数ヶ月間、赤ちゃんの脳と神経系は驚異的な速さで発達します。しかし、自己調整能力(self-regulation)や外部からの刺激を処理する能力はまだ非常に未熟です5。赤ちゃんはまだ音、光、社会的相互作用を「フィルタリング」することができません。コリックは、赤ちゃんが膨大な感覚情報に対処できなくなり、このストレスを絶え間ない泣きによって「解放」する際の神経系の過負荷の現れである可能性があります。
  • 未熟な概日リズム:成人には、日中に起き、夜に眠るのを助ける、よく調整された体内時計(circadian rhythm)があります。新生児では、この時計はまだ設定中です10。赤ちゃんはまだ昼と夜を明確に区別できず、睡眠-覚醒サイクルが乱れています。夕方の激しい泣きは、メラトニンやコルチゾールなどの睡眠調節ホルモンの産生の乱れに関連している可能性があります。これが、毎朝同じ時間に起きる、日中は自然光に当てる、夜は静かで暗い環境を作るなど、規則正しい生活リズムを確立することが最も重要な基本的な介入の一つである理由です11
  • 感覚の過負荷:新生児にとって毎日は、新しい人々との出会い、見知らぬ場所への訪問、騒々しい音を聞くこと、強い光を見ることなど、新しくて刺激的な経験の連続です。これらは発達の一部ですが、赤ちゃんの未熟な神経系を過負荷にさせる可能性があります10。一日の終わりに起こるコリックの泣きは、その日に蓄積されたすべてのストレスと刺激を解放するメカニズムと見なすことができます。

2.2. 消化器およびアレルギーに関する仮説

長い間、消化器系の問題はコリックの主な原因と考えられてきました。これは、赤ちゃんの症状(足を縮める、お腹が張る)が腹部の痛みを示唆するためです。

  • 牛乳たんぱく質アレルギー(Cow’s Milk Protein Allergy – CMPA):これは、強力な科学的証拠によって証明された、コリックの数少ない身体的原因の一つです。コリックの赤ちゃんの一部のグループでは、免疫系が牛乳に含まれるタンパク質に異常に反応します21。症状は激しい泣きだけにとどまらず、頻繁な嘔吐、下痢(便に血や粘液が混じることがある)、発疹(湿疹)、そして最も重要なことに、体重増加不良が含まれることがあります4
    • 母乳育児の赤ちゃんの場合:母親が摂取した牛乳や乳製品からのタンパク質が母乳に入り、赤ちゃんに反応を引き起こす可能性があります7。この場合、効果的な解決策は、母親が少なくとも2週間、牛乳、チーズ、ヨーグルト、バターなどの牛乳タンパク質を含む食品を完全に除去する厳格な食事療法を行い、効果を評価することです2
    • 粉ミルクを飲む赤ちゃんの場合:解決策は、完全に加水分解された粉ミルク(extensively hydrolyzed formula)に切り替えることです。これらのミルクでは、牛乳タンパク質がアレルギー反応を引き起こさない非常に小さな断片(ペプチド)に分解されています21
  • 乳糖不耐症(Lactose Intolerance):この仮説は、一部の新生児が、乳糖を消化するために必要な酵素であるラクターゼが一時的に不足している可能性があると主張しています。これにより、お腹の張り、膨満感、下痢が引き起こされます。しかし、コリックの原因としてのこの仮説を支持する科学的証拠はまだ弱く、矛盾しています。いくつかの小規模な研究では、ラクターゼの補充が役立つ可能性が示されていますが、最近のランダム化比較臨床試験のメタアナリシスでは、ラクターゼ群とプラセボ群の間で泣いている時間に有意な差はないと結論付けられています24
  • 消化器系の未熟さ:新生児の腸の動き(蠕動運動)はまだうまく協調しておらず、痙攣やガスの蓄積を引き起こす可能性があります8。しかし、現代医学の見解は、ガスが溜まる状態は、泣きの最初の原因ではなく、長時間泣くことによって大量の空気を飲み込むことの 結果であることが多いという仮説に傾いています8

2.3. 腸内細菌叢(Gut Microbiome)と脳腸相関の役割

これは、コリックの謎を解明する上で最も先進的で有望な研究分野です。この仮説は、コリックが脳だけの問題でも、消化器系だけの問題でもなく、それらの間の複雑な相互作用であると提唱しています。

  • 腸内細菌叢の不均衡(Dysbiosis):研究により、コリックの赤ちゃんの腸内細菌叢は、そうでない赤ちゃんと比べて明らかな違いがあることがわかっています。具体的には、コリックの赤ちゃんは、善玉菌(ラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属など)が少なく、炎症を引き起こす可能性のある細菌(一部の大腸菌株など)が多い傾向があります5。この不均衡はディスバイオシスと呼ばれます。
  • 脳腸相関(Gut-Brain Axis):腸と脳は、脳腸相関と呼ばれる非常に密接な双方向のつながりを持っています。腸内細菌叢は、脳の機能や行動に直接影響を与える物質を産生することができます。腸内細菌叢が不均衡になると、腸内で低レベルの炎症が起こり、痛みや不快感を引き起こす可能性があります。この痛みと炎症の信号は、脳腸相関を通じて脳に伝達され、すでに未熟で敏感な赤ちゃんの脳はこれらの信号を痛みとして解釈し、激しい泣きの反応を引き起こします21
  • プロバイオティクス療法の根拠:この仮説は、なぜプロバイオティクス(善玉菌)がコリックの治療に効果的であるかについて、強固な科学的根拠を提供します。善玉菌、特にラクトバチルス・ロイテリ DSM 17938株を補給することで、腸内細菌叢のバランスを回復させ、炎症を軽減し、腸のバリア機能を改善し、それによって脳に送られる痛みの信号を減らすことができます。これはもはや民間療法ではなく、コリックの潜在的な生物学的メカニズムの一つを標的とした、意図的な医学的介入です5

これらの仮説の収束は、コリックに関する思考モデルを完全に変えました。私たちは、「赤ちゃんがお腹が痛い」という単純な概念から、これが複雑な「システム障害」であるというより深い理解へと移行しました。コリックは特定の臓器の問題ではなく、成長中の神経系、未熟な消化器系、そして確立過程にある腸内細菌叢との間の相互作用です。このモデルは、なぜすべてのケースに「特効薬」がなく、なぜ個別化されたアプローチ(時には複数の戦略を組み合わせる)が最も効果的なのかを説得力を持って説明します。

第3部:いつ心配すべきか?危険な兆候「レッドフラッグ」を認識する

この部分は、赤ちゃんの安全にとって極めて重要です。コリックは良性の状態ですが、激しく長引く泣きは深刻な病気の兆候である可能性もあります。医学における黄金律は、他のすべての身体的原因が除外された後にのみコリックと診断されるということです。言い換えれば、コリックは「非常によく泣くが、他のすべての面で健康な」赤ちゃんのための診断です。「レッドフラッグ」は、「他のすべての面で健康」という前提がもはや正しくない可能性があり、赤ちゃんを直ちに医師の診察に連れて行く必要があることを警告する信号です。

3.1. 鑑別診断

新生児が過度の泣きで受診した場合、医師は潜在的な病気のリストを除外するために慎重な検査を行います。このプロセスは鑑別診断と呼ばれます。コリックと同様の泣きの症状を引き起こす可能性のある状態には、以下のようなものがあります:

  • 消化器系の問題:重度の胃食道逆流症(GERD)、牛乳たんぱく質アレルギー(CMPA)、腸重積(腸の一部が別の部分にはまり込む)、嵌頓(かんとん)鼠径ヘルニア(腸の一部がヘルニア嚢に詰まる)、腸閉塞2
  • 感染症:中耳炎、尿路感染症、髄膜炎、または赤ちゃんを不快にさせ、痛みを引き起こす可能性のあるその他の全身性感染症4
  • 外傷:骨折(特に鎖骨)、または親が気づかない可能性のあるその他の意図しない(または意図的な)損傷3
  • その他の問題:指や足指に髪の毛や糸が固く巻き付く(ヘアターニケット症候群)、角膜擦過傷、または心血管系の問題3

「レッドフラッグ」を認識することは、親が単に家庭でのなだめ策を適用するのではなく、いつ緊急の医療ケアを求めるべきかを決定するのに役立ちます。

表2:「レッドフラッグ」チェックリスト – いつすぐに医師に相談すべきか
カテゴリー 注意すべき「レッドフラッグ」の兆候 参照
全身状態と行動 発熱:直腸で測定した体温が38°C(100.4°F)以上2
傾眠、無気力:異常に多く眠り、授乳のために起こすのが非常に難しく、無反応で、笑わず、疲れているように見える、またはぐったりしている4
突然の行動変化:泣きが以前の泣きとは全く異なり、突然かつ激しく始まる。または、静かな瞬間がなく絶えず泣き続ける7
 
消化器系 異常な嘔吐:噴水状の嘔吐、緑色、黄色、または血の混じった嘔吐物。1日に5回以上の嘔吐4
便の変化:重度の下痢または便秘、特に便に新鮮な血や粘液が混じっている場合4
腹部膨満:赤ちゃんの腹部が通常より大きく硬く見え、特に嘔吐を伴う場合4
 
成長 体重増加不良または体重減少:これは非常に重要な兆候で、赤ちゃんが十分な栄養を吸収していないか、潜在的な病気があることを示している可能性があります3
哺乳不良または哺乳拒否:通常より哺乳力が弱い、哺乳を拒否する、または哺乳中に痛みがあるように見える4
 
呼吸器系 呼吸困難:速い呼吸、努力呼吸(胸の陥凹、鼻翼呼吸)、喘鳴、または短い無呼吸発作2  
神経系の兆候 泉門の膨隆:頭のてっぺんの柔らかい部分(大泉門)が膨らんで張っている。頭蓋内圧亢進の兆候である可能性があります4
けいれん:体の任何の異常なけいれん様の動き22
 
局所的な痛みの兆候 触れると痛がる:体の特定の部分(例:片足、手、男の子の陰嚢)に触れると金切り声を上げて泣く3
腫れや皮膚の変色:体の任何の部位に腫れ、熱感、発赤、またはあざが見られる。指、足指、男の子の陰茎を注意深くチェックし、髪の毛や糸が巻き付いていないか確認する3
 

親の最大の恐怖は、「うちの子は重い病気なのか、それともただのコリックなのか?」ということです。赤ちゃんの緊迫した泣き声の中で、明晰に考えることは非常に困難です。上記のような視覚的で具体的なチェックリストは、曖昧な不安を観察可能な一連の兆候に変えます。それは親に力を与え、即座に医療の助けを求めるか、あるいはこれらの兆候がなければコリックに直面している可能性が高いと安心し、なだめる戦略を続けることができるという、決断力のある行動を促します。これは本当に役立つ家庭でのトリアージおよびスクリーニングツールです。

第4部:包括的な介入戦略 – 基本から応用まで

「レッドフラッグ」が除外され、コリックの可能性が高いと診断された後、次の問題は「私たちは何ができるのか?」ということです。家族、友人、インターネット上には無数のアドバイスが飛び交い、親を混乱させています。このセクションでは、介入方法を科学的根拠のレベルに基づいて体系化し、安全な基礎的措置から効果が証明された専門的治療法までを説明し、同時に効果がない、または注意が必要な方法を指摘します。
親が全体像を把握し、戦略を立てるのに役立つように、以下の要約表は介入方法を証拠のレベル別に分類しています。

表3:介入方法と科学的根拠のレベルの要約
介入方法 証拠のレベル 簡単な説明と注記
基盤となるサポート
親への心理的サポートと安心の提供 最も重要な介入。親のストレスを軽減し、産後うつ病を予防する。コリックは良性で自然に治る3
生活リズムの確立(ルーチン) 赤ちゃんの未熟な体内時計を調整するのに役立つ。睡眠、覚醒、遊びの時間、日中の光への暴露を含む11
睡眠環境とあやし方の最適化 おくるみ、ホワイトノイズ、穏やかな揺れ、部屋を暗く涼しく保つ。これらは安全で基本的な対策18
専門的な介入
プロバイオティクス(L. reuteri DSM 17938株) 特に母乳育児の乳児に効果的。多くの質の高い臨床試験で、泣く時間が大幅に減少することが示されている5
栄養介入(CMPAが疑われる場合) 母親の牛乳タンパク除去食、または乳児の加水分解乳への切り替え。アレルギーのあるグループには非常に効果的だが、アレルギーがなければ効果はない21
「輸送反応」法(5分+8分) 中~高 本能的な反応に関する科学的研究に基づく。明確で実行しやすいプロセスを提供する32
補完療法と注意が必要なもの
手技療法(マッサージ、カイロプラクティック) 低~中 一部の研究では泣く時間が減少する可能性が示唆されているが、証拠の質はまだ高くなく、さらなる研究が必要12
ハーブティー(フェンネル、カモミール) 証拠は弱く、新生児への製品の用量と純度には注意が必要22
効果がない/推奨されない
シメチコン(ガス除去薬) なし/反証あり 多くの質の高い研究で、プラセボよりも効果がないことが証明されている。払拭すべき一般的な誤解3
プロトンポンプ阻害薬(PPIs) 反証あり/有害 コリックには効果がなく、重大な副作用(感染症リスクの増加)を引き起こす可能性がある3
ジサイクロミン(鎮痙薬) 反証あり/危険 効果はあるが、重篤な副作用(無呼吸、けいれん)のリスクのため、生後6ヶ月未満の乳児には禁忌3

4.1. 確固たる基盤:第一選択の介入(First-Line Interventions)

これらは、すべての家庭が実施すべき、最初で最も安全かつ重要なステップです。これらは、赤ちゃんと親の両方にとって安定した支援的な環境を作り出すことに焦点を当てています。

  • 親への心理的サポートと安心の提供:これは最も重要な介入と見なされており、他のすべての戦略の基盤です。医師や医療専門家は、コリックが良性の状態であり、自然に治ること、そして親は何も間違ったことをしていないと安心させる上で重要な役割を果たします3。親の不安やストレスは赤ちゃんに伝わり、悪循環を生み出す可能性があります。したがって、親の心理的負担を軽減することが最初のステップです。
  • 生活リズムの確立(ルーチン):赤ちゃんの体内時計は未熟であるため、一貫した生活スケジュールを作成することで、赤ちゃんの体が徐々に軌道に乗るのを助けることができます。毎日、起床時間、食事時間、遊び時間、就寝時間を比較的一定に保つように努めてください。特に重要なのは、朝と日中に自然光に当てること、そして夕方には刺激的な活動を徐々に減らし、環境を静かで暗くして、体に休息の時間を知らせることです11
  • 睡眠環境の最適化:赤ちゃんの寝室が、暗く、静かで、涼しく快適な温度(約18〜25°Cが適しており、新生児は大人より暑がりな傾向がある)の理想的な睡眠空間であることを確認してください18。明るい常夜灯や電子機器の表示灯など、不要な光源は避けてください。特に、就寝の少なくとも1時間前には、テレビ、電話、タブレットの画面からの青色光に赤ちゃんをさらさないようにすることが重要です。この種の光は睡眠ホルモンであるメラトニンの産生を抑制する可能性があります20
  • 基本的なあやし方のテクニック:
    • おくるみ(Swaddling):薄いタオルやブランケットで赤ちゃんを適度に包むことで、母親の子宮にいたときのような暖かさと安心感を再現します。このテクニックは、赤ちゃんを目覚めさせる可能性のあるモロー反射を抑制するのに役立ちます30
    • ホワイトノイズ(White Noise):掃除機、ヘアドライヤー、雨の音、またはテレビの「砂嵐」の音のような単調で規則的な音は、驚くほど鎮静効果があります。これらの音は、環境からの突然の物音をかき消し、赤ちゃんが子宮内で慣れ親しんだ音環境を模倣すると考えられています10
    • 抱っことリズミカルな動き:赤ちゃんを抱っこして優しく揺らしたり、部屋を歩き回ったり、ベビーカーを使ったりすることは、赤ちゃんを落ち着かせるのに役立ちます。リズミカルな動きは、赤ちゃんの前庭系に良い影響を与え、神経系を調整し、鎮静させるのに役立ちます16

4.2. 科学的根拠に基づく専門的介入

基本的な対策だけでは効果が不十分な場合、親はより専門的で、厳密な科学的研究によって効果が証明されている介入を検討することができます。

「輸送反応」法(Transport Response)- 日本からの研究

これは、日本の理化学研究所(RIKEN)による哺乳類の生得的な反応に関する科学的研究に基づいて開発された、特定のなだめ方です。母親に運ばれているとき、子孫はより落ち着いて静かになる傾向があり、これは「輸送反応」と呼ばれる生存メカニズムです。この方法は、明確で実行しやすく、科学的根拠のある「処方箋」を提供します。

  • ステップ1:抱っこして5分間歩く。赤ちゃんが泣き始めたら、抱き上げて約5分間、部屋を一定のリズムで歩きます。重要なのは、過度に揺らしたりなだめたりしようとせず、安定したリズムを保つことです。目標は輸送反応を活性化させ、赤ちゃんの心拍数を遅くし、落ち着かせることです32
  • ステップ2:座って8分間抱っこする。赤ちゃんが泣き止んだり、眠りそうになったりしたら、すぐに下ろさないでください。赤ちゃんを抱いたまま、約5〜8分間静かに座り続けます。研究によると、この段階は赤ちゃんが浅い眠りから深い眠りの段階に移行するために非常に重要です。眠りが浅いときに早すぎると、赤ちゃんは簡単に目を覚ましてしまいます32
  • ステップ3:優しくベッドに置く。十分な時間を待った後、優しく赤ちゃんをベッドやベビーベッドに置きます。

栄養介入(牛乳たんぱく質アレルギー – CMPAが疑われる場合)

第II部で述べたように、CMPAを疑う兆候(泣きに加えて消化器や皮膚の症状、体重増加不良)がある場合、栄養介入は強力な証拠を持つ選択肢です。親は医師に相談して診断的試験を行うべきです:授乳中の母親は2〜4週間、牛乳タンパク(および場合によっては卵、大豆)を含まない厳格な食事療法を行うか、粉ミルクを飲む赤ちゃんは完全に加水分解されたミルクに切り替えます。この期間中にコリックの症状が著しく改善し、元の食事/ミルクに戻すと再発する場合、CMPAの可能性が高く、この栄養療法を続けるべきです4

プロバイオティクス(善玉菌)- ラクトバチルス・ロイテリ DSM 17938株

これは、近年のコリック治療における最も重要なブレークスルーの一つです。多くのランダム化比較臨床試験(RCTs)およびメタアナリシス(医学的証拠のゴールドスタンダード)は、この特定のプロバイオティクス株が有意に効果的であることを一貫して示しています。

  • 証拠:研究によると、L. reuteri DSM 17938の補給は、コリックの赤ちゃんの1日あたりの泣き時間を大幅に短縮し、この効果は特に完全母乳育児の乳児で顕著です5
  • 効果:あるメタアナリシスによると、治療21日後、1日あたりの平均泣き時間はプラセボ群と比較して55分から72分減少しました28
  • メカニズム:このプロバイオティクスは、腸内細菌叢のバランスを改善し、炎症を軽減し、腸の痛みに対する感受性に影響を与えることで作用すると考えられています5
  • 用法・用量:標準的な用量は通常、1日5滴で、1億コロニー形成単位(1×10⁸ CFU)を含みます。この製品は新生児に安全であり、日本を含む多くの国で栄養補助食品として入手可能です27

4.3. 補完療法と注意が必要な介入

絶望的な親は、何でも試してみたいと思うかもしれません。しかし、これらの療法にアプローチする際には、証拠のレベルと潜在的なリスクを明確に理解することが重要です。

  • 手技療法(Manual Therapies):これには、マッサージ、カイロプラクティック、理学療法が含まれます。いくつかの研究やメタアナリシスでは、これらの療法が泣く時間を短縮するのに役立つ可能性が示されています12。親は、不快感を和らげるために、赤ちゃんの腹部を時計回りに優しくマッサージしてみることができます。ただし、これらの証拠の質は低から中程度であり、確固たる結論を出すには、より大規模な研究が必要です。
  • ハーブティー:カモミールやフェンネルなどの一部のハーブは、伝統的に消化器系の問題を和らげるために使用されてきました。いくつかの小規模な研究では、フェンネルを含む製剤がコリックの症状を軽減する可能性が示されています22。しかし、全体的な証拠はまだ弱いです。親は、新生児向けのハーブティー製品の用量、純度、その他の成分について細心の注意を払う必要があります。

効果がない、または推奨されない介入:

  • シメチコン(ガス除去薬):これは最も一般的で根強い誤解の一つです。ガスを減らすために広く宣伝されていますが、多くのランダム化比較臨床試験とメタアナリシスは、シメチコンがコリックの治療においてプラセボよりも効果がないことを明確に結論付けています3。この製品を使い続けることは、より効果的な解決策を探すのを遅らせる可能性があります。
  • プロトンポンプ阻害薬(PPIs – 逆流症治療薬):これらの薬は、胃食道逆流症(GERD)において胃酸を減らすために使用されます。コリックの治療には適応されておらず、研究では効果がないことが示されています。さらに、新生児へのPPIsの使用は、呼吸器および消化器感染症のリスク増加を含む重大な副作用と関連しています3
  • ジサイクロミン(鎮痙薬):一部の古い研究では、この薬が腸の痙攣を減らすのに効果的であることが示されていましたが、無呼吸、けいれん、昏睡などの重篤で生命を脅かす副作用のリスクがあるため、生後6ヶ月未満の乳児には絶対禁忌となっています3

科学的証拠に基づいて介入を階層化することは、親が賢明な決定を下すための鍵です。無作為に疲れる試行錯誤をするのではなく、親は合理的な道筋に従うべきです:安全な基本的な対策から始め、次に強力な証拠を持つ専門的な介入(プロバイオティクスや、適応があれば食事変更など)に移り、最後に、効果がないか危険であることが証明されている方法を避けながら、補完療法には慎重に取り組むべきです。

第5部:ケアする人をケアする – 親の健康が最も重要

コリックとの戦いは、赤ちゃんだけの戦いではありません。それは家族全体、特に主たる介護者に深刻な影響を与えます。現代のコリック管理における最も重要な認識の一つは、親の身体的および精神的健康のケアが副次的な要素ではなく、解決策の不可分な一部であるということです。疲れ果て、ストレスを感じている親は、子どもをなだめる際に忍耐強く効果的であることが難しくなります。したがって、「ケアする人をケアする」ことは、真の医療介入なのです。

5.1. コリックの深刻な心理的影響

なだめることのできない我が子の泣き声に毎日直面することは、深刻な心理的ダメージを引き起こす可能性があります。

  • ストレス、疲労、睡眠不足:これらはほぼ普遍的な経験です。特に体が休息を必要とする夜間に、何時間も絶え間なく泣き続ける赤ちゃんを世話することは、親としての道のりにおいて最も心身を消耗させる試練の一つです11
  • 産後うつ病との関連:多くの研究が、子どものコリックと母親の産後うつ病のリスクとの間に強い関連性があることを示しています7。絶え間ない泣き声は、出産後にすでに潜在している可能性のある不安、悲しみ、絶望感を悪化させることがあります。
  • 罪悪感、無力感、怒り:親はしばしば自分を責め、自分の子どもを泣き止ませることができないために、自分が悪い親である、能力がないと感じます。彼らは無力感を感じ、さらには自分の子どもに対して怒りを感じることさえあります。これは認めるのが非常に難しい感情ですが、この過酷な状況下では完全に正常な反応です8。これらの感情を正常なものとして受け入れ、それが極度のストレス状況に対する自然な反応であることを理解することが重要です。
  • 揺さぶられっ子症候群のリスク:これはデリケートな話題ですが、子どもの安全のために言及しなければなりません。絶望と極度の疲労の瞬間に、一部の親は自制心を失い、赤ちゃんを泣き止ませたいという思いから激しく揺さぶってしまうことがあります。この行為は非常に危険で、重篤な脳損傷を引き起こし、永続的な障害や死に至る可能性さえあります。警告は常に心に留めておかなければなりません:絶対に、決して、赤ちゃんを激しく揺さぶらないでください3

5.2. 自己ケア戦略と助けを求めること

上記の心理的影響を認識することが第一歩です。次のステップは、自分自身の健康を守るための戦略を積極的に実行することです。

  • すべてを「修理」することはできないと受け入れる:最も重要な考え方の一つは、たとえあなたがすべてを正しく行っても、赤ちゃんは泣くことがあると受け入れることです。あなたの役割は、そばにいて慰めと安心感を与えることであり、必ずしも泣き声をすぐに止めさせることではありません。あなたの存在自体が大きな慰めであると自分に言い聞かせてください11
  • 休憩を取る(Take a Break):我慢の限界に近づいている、怒りや過負荷を感じているとき、あなたができる最も安全なことは、赤ちゃんを安全な場所(ベビーベッドやベビーサークルなど)に置き、数分間部屋を出ることです。別の部屋に行き、深呼吸をし、コップ一杯の水を飲むか、音楽を聴いてください。この数分間の休憩は、あなたが落ち着きを取り戻すのに役立ち、イライラした状態でなだめ続けようとするよりもはるかに安全です11
  • 責任を分担する:コリックの子どもの世話は、一人の負担であってはなりません。親はチームである必要があります。交代で子どもの世話をし、もう一方が本当の休息時間を取れるようにしてください。たとえ1時間でも、睡眠、入浴、または外を散歩する時間があれば十分です。この時期、パートナーのサポートは非常に貴重です11
  • サポートネットワークを構築する:祖父母、親戚、親しい友人に声をかけ、助けを求めることをためらわないでください。時には、他の誰かが1時間赤ちゃんを抱っこしてくれるだけで、エネルギーを再充電し、大きな違いを生むことがあります11
  • 専門家の支援を求める:もしあなたが限界を感じているなら、小児科医、心理学者、またはカウンセラーに相談してください。小さな子どもを持つ親のためのサポートグループに参加することも、経験を共有し、この戦いで一人ではないことを認識する素晴らしい方法です。話を聞いてもらい、理解してもらうことは、強力な精神的な薬です3

要約すると、コリックの管理を成功させるには、アプローチのモデルを変える必要があります:「赤ちゃんを治療する」ことだけに焦点を当てるのではなく、「家族全員を支援する」ことに移行することです。親の精神的健康は副次的な要素ではなく、結果を左右する中心的な変数です。十分に休息し、支援を受け、精神的に安定している親は、なだめる戦略を効果的に適用するための忍耐力と明晰さを持ち、ストレスと泣き声の悪循環を断ち切ることができます。したがって、親のためのセルフケア策を奨励し、指導することは、赤ちゃんのための任何の治療法を提案することと同じくらい重要なのです。

よくある質問

うちの子がコリックなのは、私の育て方が悪いからですか?
全く違います。これは最も重要なメッセージです。コリックは、親の育児技術や愛情とは一切関係ありません3。これは赤ちゃんの未熟な神経系や消化器系に起因する生理的な現象であり、世界中のどんなに優れた親でも経験する可能性があります。罪悪感を感じる必要は全くありません。
コリックは赤ちゃんの将来に何か悪い影響を与えますか?
いいえ、与えません。多数の研究が、コリックは自己限定的で良性の状態であり、子どもの長期的な身体的健康、精神的発達、または気質に何ら悪影響を及ぼさないことを確認しています4。この困難な時期が終われば、赤ちゃんは他の子と何ら変わりなく成長していきます。
ガス除去薬(シメチコン)は試す価値がありますか?
科学的な答えは「いいえ」です。多くの高品質な研究により、シメチコンはプラセボ(偽薬)と比較してコリックの症状を改善する効果がないことが証明されています3。ガスはコリックの原因ではなく、むしろ長時間泣くことによる結果であることが多いため、ガスを標的とする治療は効果的ではありません。
プロバイオティクスは本当に安全で効果的なのですか?
はい、特に「ラクトバチルス・ロイテリ DSM 17938」という特定の菌株については、多くの質の高い研究がその有効性と安全性を示しています。特に母乳育児の赤ちゃんにおいて、1日の泣く時間を大幅に短縮することが証明されています528。ただし、どのプロバイオティクスでも良いわけではないため、この特定の菌株を含む製品を選ぶことが重要です。使用する前にかかりつけの小児科医に相談することをお勧めします。
あまりにもつらくて、赤ちゃんに対して怒りを感じてしまいます。私はひどい親でしょうか?
あなたはひどい親ではありません。これは、極度のストレスと睡眠不足に直面した際の、完全に正常で人間的な反応です811。重要なのは、その感情を認識し、危険な行動に移さないことです。怒りや限界を感じたら、ためらわずに赤ちゃんをベビーベッドのような安全な場所に置き、数分間その場を離れて冷静になってください。助けを求めることは弱さではなく、あなたとあなたの赤ちゃんを守るための賢明な行動です。

結論

乳児コリック(黄昏泣き)は、親にとって計り知れないほどのストレスと不安をもたらす試練です。しかし、この包括的なガイドが明らかにしたように、あなたは決して無力でも孤独でもありません。コリックは病気ではなく、赤ちゃんの成長過程における一時的な段階であり、必ず終わりが来ます。その原因は複雑で多岐にわたりますが、科学は私たちに有効な対処法を示してくれています。規則正しい生活、おくるみやホワイトノイズといった基本的なあやし方から、L. reuteri DSM 17938株のような特定のプロバイオティクス、そして牛乳アレルギーが疑われる場合の食事療法まで、試せる戦略は数多く存在します。
しかし、何よりも忘れてはならないのは、この困難な旅の中心にいる「あなた自身」をケアすることです。親の心身の健康こそが、コリックを乗り越えるための最も強力な基盤となります。パートナーと協力し、周囲に助けを求め、そして何よりも自分を責めないでください。あなたの存在そのものが、赤ちゃんにとって最大の慰めなのです。この知識と戦略を武器に、あなたは自信を持ってこの時期を乗り越え、やがて訪れる静かな夜明けを迎えることができるでしょう。

免責事項
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

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