【女性ホルモンのバランスを整える】気分の落ち込み・イライラを軽くする7つの生活習慣と受診の目安
女性の健康

【女性ホルモンのバランスを整える】気分の落ち込み・イライラを軽くする7つの生活習慣と受診の目安

「理由もなくイライラしてしまう」「気分が落ち込みやすい」「なんとなく体がだるくてやる気が出ない」「生理周期が乱れがち」――そんな不調が続くと、「ホルモンバランスが乱れているのでは?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。

女性の体は、卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンの影響を強く受けています。これらのホルモンは月経や妊娠だけでなく、骨や血管、コレステロール、脳の働き、肌の状態、気分など、全身に関わっています。4

ただし、ホルモンの変動は加齢や体質だけでなく、睡眠不足、ストレス、食事内容、極端なダイエットなど、日々の生活習慣にも左右されます。生活を少しずつ整えるだけで、ホルモンの揺らぎによる不調が和らぐケースも少なくありません。35

一方で、月経が何カ月も止まっている、出血量が極端に多い、突然体重が増減した、気分の落ち込みが強く「消えてしまいたい」と感じるほどつらい――といった場合には、婦人科や心療内科・精神科などの医療機関での評価が必要になることもあります。

本記事では、厚生労働省の睡眠ガイドラインや日本の公的機関・医療機関の情報、査読付き論文などの信頼できる資料に基づきながら、女性ホルモンの基礎知識と、今日から実践できる7つの生活習慣(睡眠・ストレス・糖質・脂質・食物繊維・食べ方・緑茶)をわかりやすく解説します。あわせて、「どんなサインがあれば受診を考えたほうがよいか」も具体的に整理していきます。

Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について

Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。厚生労働省や日本の専門学会、医療機関、国際的な公的機関などが公開している一次情報を整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。

本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針」や睡眠関連情報12、日本の公的な女性の健康情報34、更年期・女性ホルモンに関する解説5、婦人科クリニックによるホルモンバランスの説明6、そして緑茶と血糖コントロールに関するメタアナリシス論文7など、信頼できる情報源に基づいて作成しました。

文献の要点整理や構成の検討にはAIツールも活用していますが、最終的な内容の確認・編集・掲載判断はすべてJHO編集部が行い、原著資料と照合しながら数値や表現の妥当性を一つひとつ確認しています。

私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。

要点まとめ

  • 女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)は、月経や妊娠だけでなく、気分・睡眠・骨・血管・肌など全身の健康に関わります。4
  • ホルモンバランスは加齢や体質だけでなく、睡眠不足・ストレス・過度なダイエット・糖質や脂質の偏り・運動不足など、日々の生活習慣によっても大きく揺らぎます。23
  • 「よく眠る」「ストレスを溜め込みすぎない」「砂糖や甘い飲料をとりすぎない」「良質な脂質と食物繊維を意識してとる」「食べ過ぎ・早食いを避ける」「緑茶を上手に取り入れる」といった7つの習慣は、ホルモンのリズムや血糖の安定に役立つ可能性があります。1237
  • 月経が3カ月以上来ない、出血が極端に多い・長く続く、強い痛みや急な体重変化、日常生活に支障が出るほどの気分の落ち込みや不安などがある場合は、生活習慣の見直しだけでなく婦人科や心療内科・精神科などの受診が重要です。
  • この記事は一般的な情報提供を目的としており、自己判断で薬を中止・変更したり、受診を先延ばしにすることはおすすめできません。心配な症状があれば、早めに医療機関に相談しましょう。

第1部:女性ホルモンの基本と日常生活の見直し

まずは、「女性ホルモンとは何か」「どんな生活習慣がホルモンバランスを乱しやすいのか」を押さえておきましょう。専門的な病気を心配する前に、多くの人が当てはまりやすい日常のポイントを整理することで、自分で変えられる部分が見えやすくなります。

1.1. 女性ホルモンの基本的なメカニズム

一般的に「女性ホルモン」と呼ばれるのは、卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンの2種類です。4

  • エストロゲン:子宮内膜を厚くして妊娠の準備をする、骨量を保つ、コレステロールのバランスを整える、自律神経を安定させる、肌のハリを保つなど、多くの働きを持つホルモンです。4
  • プロゲステロン:妊娠に備えて子宮内膜を整える、体温を上げる、乳腺の発達を促すなど、主に妊娠の成立と維持に関わるホルモンです。4

これら2つのホルモンは、月経周期の中で波を描くように増減しており、脳と卵巣の連携によって分泌量がコントロールされています。そのため、睡眠不足や過度なストレス、体重の急激な増減などで脳や卵巣に負担がかかると、ホルモンのリズムが乱れやすくなります。3

また、女性ホルモンはライフステージによっても大きく変化します。思春期に急増し、20〜30代でピークを迎え、その後40代以降にかけて徐々に、そして更年期には急激に減少していきます。3 こうした変化に加えて生活習慣も重なることで、「なんとなく調子が悪い」「生理前後だけメンタルが不安定になる」といった不調が現れることがあります。

1.2. ホルモンバランスを乱しやすいNG習慣

多忙な現代生活では、ホルモンバランスを乱しやすい習慣が積み重なりがちです。次のような行動に心当たりがないか、一度振り返ってみましょう。256

  • 慢性的な睡眠不足・夜更かし:睡眠が不足すると、食欲を抑えるレプチンが減り、食欲を高めるグレリンが増えるなど、食欲や体重に関わるホルモンだけでなく、自律神経やストレスホルモンにも影響します。2
  • 強いストレスを放置:仕事や家庭のストレスが続くと、ストレスホルモン(コルチゾールなど)が増え、脳から卵巣へのホルモン指令が乱れ、月経不順や肌荒れ、早期閉経のリスクが高まることがあります。5
  • 砂糖・甘い飲料・お菓子のとり過ぎ:血糖値の急激な上昇と下降は、インスリンや食欲関連ホルモンのバランスを崩し、気分の浮き沈みや疲れやすさに繋がることがあります。
  • 極端なダイエット・欠食:エネルギーや栄養素が不足すると、体は「妊娠に適さない状態」と判断し、排卵や月経を止めてしまうことがあります。3
  • 脂質の偏り:脂質を極端に控えたり、揚げ物・トランス脂肪酸に偏った食事は、ホルモン合成や血管・脂質代謝に悪影響を及ぼします。
  • 喫煙・多量の飲酒:血管やホルモン分泌に悪影響を与え、更年期症状の悪化や生活習慣病リスクの上昇にも繋がります。1
表1:ホルモンバランスの乱れセルフチェックリスト(例)
こんな症状・状況はありませんか? 考えられる主な背景・原因カテゴリ
平日と休日で就寝・起床時間が2時間以上違う/寝不足が続いている 体内時計の乱れ、睡眠の質の低下、自律神経の乱れ
理由もなくイライラしたり、涙もろくなったりする時期が周期的にある 月経周期に伴うホルモン変動(PMSなど)、ストレスの蓄積
生理周期が25日未満または38日以上でばらばら、3カ月以上生理が来ない 卵巣機能の低下、体重変動、過度なダイエット、甲状腺など他の疾患
甘いものやパン、麺類をとらないと落ち着かない/食後の眠気が強い 血糖値の乱高下、インスリン抵抗性の進行、睡眠不足の影響
肩こり・冷え・肌荒れ・抜け毛など、全身の「なんとなく不調」が続く ホルモンバランスの乱れ、栄養不足、運動不足、ストレスの影響

いくつも当てはまるからといって、必ずしも「重大な病気」というわけではありませんが、生活習慣の見直しとあわせて婦人科などに相談しておくと安心です。

第2部:身体の内部要因 — 栄養・ホルモン・隠れた不調

生活習慣を整えても不調が続く場合、背景には栄養状態やホルモン分泌の変化、慢性的な疾患など、身体の内側の要因が隠れていることがあります。この章では、とくに女性に多いライフステージごとの変化と、栄養・血糖コントロールの視点からホルモンバランスを見ていきます。

2.1. 【特に女性】ライフステージとホルモンバランス

女性ホルモンの分泌量は、思春期・妊娠・出産・授乳・更年期など、ライフステージごとに大きく変化します。さらに、日頃の生活習慣(睡眠・食事・運動・ストレス)によっても容易に変動します。3

  • 思春期〜20代:ホルモン量が急増し、月経周期が安定していく時期です。不規則な生活や無理なダイエットは、月経不順や無月経の原因になることがあります。
  • 妊娠・出産・授乳期:妊娠中は女性ホルモンが高値を保ち、出産後に急激に低下します。この急激な変化と育児のストレス・睡眠不足が重なると、産後うつなどのメンタル不調が起こることがあります。3
  • 30〜40代:仕事や家庭での負担が増え、ストレス過多になりやすい時期です。ストレスや生活習慣の乱れが積み重なると、ホルモンバランスの乱れから生理不順や肌荒れ、冷えなどが出やすくなります。5
  • 更年期(おおよそ45〜55歳):卵巣機能の低下により、エストロゲンが急激に減少します。ほてり・発汗・動悸・不眠・気分の落ち込みなど、多様な症状が現れることがあります。3

「年齢のせいだから仕方ない」と我慢しすぎると、生活の質が大きく下がってしまいます。ライフステージに応じた変化を理解しつつ、必要に応じて婦人科で相談し、ホルモン補充療法(HRT)の適応や他の治療法について説明を受けることも選択肢の一つです。

2.2. 栄養不足・隠れた欠乏状態とホルモン

女性ホルモンは、十分なエネルギーと脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルがあってこそ、スムーズに合成・分泌されます。「サラダだけ」「炭水化物だけ」のような偏った食事や、1日1食ダイエットのような極端な方法は、ホルモンバランスを大きく崩す原因になります。3

  • エネルギー不足:体脂肪率が低すぎたり、急激に体重が減ったりすると、脳が「今は妊娠に適さない」と判断し、排卵を止めてしまうことがあります。
  • 鉄欠乏・隠れ貧血:月経による出血が多い人は、慢性的な鉄不足になりやすく、疲れやすさや集中力低下、動悸・息切れなどの原因になります。
  • ビタミンD・カルシウム不足:骨量の維持にはエストロゲンだけでなく、カルシウムやビタミンDも重要です。更年期以降は骨粗しょう症の予防が大切になります。3

毎食、「主食(ごはん・パンなど)+主菜(肉・魚・卵・大豆製品などのたんぱく質)+副菜(野菜・きのこ・海藻など)」を意識し、必要に応じて管理栄養士や医師に相談しながら、自分に合った食事バランスを探っていきましょう。

2.3. 血糖コントロールと女性ホルモン・気分の関係

甘いものや精製された炭水化物(白いパン・麺・菓子パンなど)を多くとると、血糖値が急上昇し、その後急降下する「血糖値スパイク」が起きやすくなります。これに伴い、血糖を下げるホルモンであるインスリンの分泌が増え、長期的にはインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」に繋がることがあります。7

血糖値の乱高下は、だるさや眠気、イライラ、甘いものへの強い欲求など、メンタル面にも影響します。女性ホルモンの変動が大きい時期(月経前・更年期など)には、血糖コントロールが乱れることで不調がさらに増幅されてしまうこともあります。

一方で、緑茶に含まれるカテキンなどの成分が、糖代謝やインスリン感受性に良い影響を与える可能性を示したメタアナリシス(複数の臨床試験を統合した研究)も報告されています。2013年に報告された17件のランダム化比較試験の解析では、緑茶や緑茶エキスの摂取によって、空腹時血糖やHbA1cがわずかに低下したとされています。7

ただし、緑茶だけで糖尿病やホルモンバランスの問題が「治る」わけではありません。あくまで、バランスのよい食事や適度な運動と組み合わせたうえで、「血糖を乱れにくくするサポート」として取り入れるのが現実的です。

第3部:専門的な診断が必要な疾患

生活習慣を整えても不調が強い場合や、月経や体重、気分の変化が大きい場合には、「ホルモンバランスの乱れ」という言葉だけでは説明できない病気が隠れていることがあります。この章では、代表的な疾患の例を挙げますが、自己判断で決めつけず、気になる症状があれば必ず医療機関で相談してください。

3.1. 卵巣機能低下・無月経などの婦人科疾患

月経が3カ月以上来ない、周期が極端に乱れている、出血が非常に多い・長く続くなどの場合は、以下のような婦人科疾患が隠れていることがあります。

  • 機能性無月経・視床下部性無月経:体重減少や過度な運動、強いストレスなどで、脳から卵巣への指令が弱まり、排卵が止まってしまう状態。
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):卵巣に多数の卵胞がたまり、排卵がしにくくなる病気。月経不順・体重増加・ニキビ・多毛などを伴うことがあります。
  • 早発卵巣不全:40歳未満で卵巣機能が低下し、更年期のような症状が現れる状態。

これらは、血液検査(ホルモン測定)や超音波検査などで評価されます。将来の妊娠を希望するかどうかによって治療方針が変わることも多いため、気になる場合は早めに婦人科で相談しましょう。

3.2. 甲状腺疾患・うつ病など、他の病気が背景にあるケース

「だるい」「太りやすくなった」「寒がりになった」「動悸・息切れがする」「気分の落ち込みが強い」といった症状は、女性ホルモンだけでなく、甲状腺ホルモンの異常やうつ病など、別の病気によって起こることもあります。

  • 甲状腺機能低下症・亢進症:甲状腺ホルモンの分泌が少なすぎる/多すぎることで、全身の代謝が乱れます。月経異常や不妊の原因になることもあります。
  • うつ病・不安症:睡眠障害や食欲の変化、意欲低下、涙もろさなどは、女性ホルモンの変動だけでなく、脳内の神経伝達物質の変化も関係しています。3

「なんとなくホルモンバランスのせいだと思っていたら、実は甲状腺の病気だった」ということも珍しくありません。自己判断せず、必要に応じて内科や心療内科・精神科とも連携しながら、原因を一緒に探してもらいましょう。

第4部:今日から始める「女性ホルモンを整える」7つの生活習慣

ここからは、今日から実践できる具体的なアクションプランを、「今すぐ」「今週から」「長期的に」の3つのレベルに分けて整理します。完璧を目指す必要はありません。できるところから1つずつ試し、少しずつ習慣化していくことが大切です。

表2:女性ホルモンバランス改善アクションプラン(7つの習慣)
ステップ アクション(7つの柱) 具体例
Level 1:今夜からできること ①睡眠の質を高める
②ストレスを一時的にリセットする
・就寝1〜2時間前からスマホを控え、照明を少し暗くする
・湯船にゆっくりつかる、深呼吸・ストレッチをする
・布団の中で「今日頑張ったこと」を3つ思い出す
Level 2:今週から始めること ③砂糖・甘い飲料を減らす
④良質な脂質をとる
⑤食物繊維を意識して増やす
・甘いカフェオレを無糖のカフェオレ+少量のミルクに変える
・おやつを毎日→週2〜3回に減らす
・魚(特に青魚)を週2回以上、オリーブオイルを料理に使う
・玄米・雑穀ごはん、根菜、海藻、きのこ類を意識してとる
Level 3:長期的に続けたいこと ⑥「食べ方」のクセを整える
⑦緑茶を上手に取り入れる
・「ながら食べ」をやめて、よく噛んで食事に集中する
・腹八分目を目安に、早食いを避ける
・1日1〜3杯を目安に、カフェイン量に気をつけながら緑茶を楽しむ7

4.1. ① 睡眠の質を高めてホルモンのリズムを整える

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針」では、成人ではおおむね6時間以上の睡眠時間を目安に、自分にとって十分な睡眠を確保することが推奨されています。1 睡眠不足が続くと、レプチンとグレリン、インスリンなど、食欲や代謝に関わるホルモンのバランスが崩れるだけでなく、自律神経やストレスホルモンにも影響し、生活習慣病のリスクが高まることが報告されています。2

女性の場合、月経周期や更年期の変化によっても睡眠が浅くなりやすいため、睡眠環境を整えることは、ホルモンバランスを整えるうえでも重要な「土台」といえます。3

  • 就寝・起床時間をできるだけ毎日同じにする(休日の寝だめをしすぎない)
  • 寝室を暗く静かに保ち、スマホ・PCは就寝1〜2時間前から控える
  • 就寝前の飲酒・喫煙を控え、カフェインは夕方以降とりすぎない1
  • 朝の光を浴びて、体内時計をリセットする

4.2. ② ストレスケアで「ホルモンの司令塔」を守る

強いストレスが続くと、ストレスホルモン(コルチゾールなど)が高い状態が続き、脳の視床下部や下垂体から卵巣へのホルモン指令が乱れやすくなります。その結果、月経不順や排卵障害、肌荒れ、早期閉経などに繋がることがあります。5

ストレスそのものをゼロにするのは難しいため、「仕事」「家事」「育児」など義務の時間とは別に、「自分のための時間」を少しでも確保することが大切です。

  • 通勤や家事の合間に、好きな音楽やポッドキャストを聴く
  • 週に1度は、意識的に「何もしない時間」を10〜15分とる
  • 疲れた日は無理に頑張らず、「今日はここまで」と区切りをつける練習をする
  • つらさが続くときは、家族や友人、職場の相談窓口、カウンセラーなどに話を聞いてもらう

4.3. ③ 砂糖・甘い飲料を減らして血糖のジェットコースターを避ける

気分が落ち込んでいるときほど、甘いお菓子やジュースに手が伸びてしまうかもしれません。しかし、砂糖や果糖ブドウ糖液糖を多く含む飲料・お菓子を頻繁にとると、血糖値の急上昇・急降下が繰り返され、インスリンの負担が増え、疲れやすさや眠気、イライラに繋がります。

いきなり「一切やめる」のではなく、次のような工夫から始めてみましょう。

  • 甘い清涼飲料水を、水や無糖のお茶に置き換える日を増やす
  • 「毎日必ずスイーツ」から「週2〜3回の楽しみ」にしてみる
  • どうしても甘いものが欲しいときは、果物や少量の和菓子にする

4.4. ④ 良質な脂質をとり、⑤ 食物繊維を意識して増やす

ホルモンの多くは、コレステロールなどの脂質を材料にして作られます。脂質を極端に控えると、ホルモン合成に必要な材料が足りなくなる一方で、脂質のとりすぎや偏りは生活習慣病リスクを高めてしまいます。

  • 魚(特に青魚)やナッツ類、オリーブオイルなどの「良質な脂質」を積極的にとる
  • 揚げ物や加工食品(スナック菓子など)の頻度を見直す
  • サラダ油ばかりでなく、オリーブオイルや菜種油なども取り入れる

また、食物繊維は、腸内環境を整えるだけでなく、血糖値の急上昇をゆるやかにし、満腹感を持続させるのに役立ちます。

  • 主食を白米だけでなく、雑穀米や玄米に少しずつ切り替える
  • 野菜・きのこ・海藻類を「毎食どこかに一品」入れる
  • おやつにヨーグルト+オートミールや果物を組み合わせる

4.5. ⑥ 食べ方のクセを整える

同じ内容の食事でも、「どう食べるか」によって血糖値の上がり方が変わるといわれています。早食い・ながら食い・ドカ食いは、血糖値スパイクや胃腸への負担を増やし、ホルモンバランスにも間接的に影響し得ます。

  • 仕事やスマホをしながらではなく、「食事だけに集中する時間」をつくる
  • 一口ごとによく噛み、箸を一度置いてから次を口に運ぶ
  • 「お腹8分目」を合図に、少し余裕を残して食事を終える

4.6. ⑦ 緑茶を上手に取り入れる

緑茶は、日本人になじみの深い飲み物です。カテキンやテアニンなどの成分が含まれ、抗酸化作用やリラックス効果、血糖コントロールや脂質代謝への影響が研究されています。7

先ほど紹介したメタアナリシスでは、緑茶や緑茶エキスの摂取により、空腹時血糖やHbA1cがわずかに低下したことが報告されています。7 こうした血糖コントロールの改善は、インスリンや食欲関連ホルモンの働きを整える一助になると考えられます。

ただし、カフェインが含まれるため、妊娠中・授乳中の方や不眠が気になる方は、医師・助産師に相談しながら、飲む量や時間帯を調整しましょう。一般的には、1日1〜3杯程度を目安に、夕方以降は控えめにしておくと安心です。

第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?

「どこまでが生活習慣の問題で、どこからが病気なのか」「婦人科に行くべきか迷う」と感じている方も多いと思います。この章では、受診を考える目安と、診療科の選び方、受診時に役立つポイントをまとめます。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

  • 妊娠していないのに、月経が3カ月以上来ていない
  • ナプキンを1〜2時間ごとに替えないと間に合わないほどの大量出血が続く
  • 突然の激しい下腹部痛や発熱、意識がもうろうとするなどの症状がある
  • 急激な体重増加・減少(数カ月で5kg以上など)がある
  • 眠れない日が続き、仕事や家事が手につかないほどの気分の落ち込み・不安がある
  • 「消えてしまいたい」「死んだほうが楽だ」といった考えが頭から離れない

これらの症状がある場合は、生活習慣の改善を待たずに、できるだけ早く医療機関に相談してください。突然の激しい痛みや大出血、意識障害などがある場合は、ためらわずに救急車(119)を利用することも検討しましょう。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

  • 月経不順・過多月経・更年期症状が主な場合:婦人科・女性外来
  • だるさ・体重変化・動悸・寒がりなどが目立つ場合:内科・内分泌代謝内科・甲状腺外来
  • 不眠・意欲低下・涙もろさ・不安・パニックなどが強い場合:心療内科・精神科
  • どこに行けばよいか分からない場合:かかりつけの内科や総合診療科で相談し、必要に応じて専門科を紹介してもらう

日本では健康保険制度により、保険診療であれば原則として医療費の一部負担で受診できます(自己負担割合は年齢や所得、保険の種類によって異なります)。費用面が不安な場合は、受診前に医療機関へ直接問い合わせてみると安心です。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと受診の準備

  • 月経周期のメモ:直近数カ月分の月経開始日・終了日・出血量・痛みの程度など
  • 症状の日記:いつ・どんな場面で・どの程度つらくなるのかを簡単にメモしておく
  • 服用中の薬・サプリメントの一覧:市販薬や健康食品も含めてまとめておく
  • 健康保険証・各種受給者証:医療費の自己負担割合に関わるため忘れずに持参する

「うまく症状を説明できるか不安」という場合は、事前にメモを作っておき、診察室ではそれを見ながら話しても問題ありません。医師にとっても情報が整理されているほうが、原因の見当をつけやすくなります。

よくある質問

Q1: 気分の落ち込みやイライラは、すべて女性ホルモンのせいですか?

A1: 女性ホルモンの変動は、気分の揺れに影響する一因ですが、それだけが原因とは限りません。睡眠不足やストレス、仕事や家庭の状況、性格傾向、うつ病や不安症などの精神疾患、甲状腺の病気など、多くの要因が関係します。3

「月経前や更年期の時期にだけ不調が強くなる」のか、「時期を問わず、一日中つらい状態が続いているのか」を見分けることが大切です。日常生活や仕事に大きな支障が出ている場合は、「ホルモンのせい」と決めつけず、婦人科や心療内科・精神科で相談しましょう。

Q2: 月経不順は、生活習慣を整えれば必ず良くなりますか?

A2: 睡眠不足やストレス、極端なダイエットなどが原因で月経が乱れている場合、生活習慣を整えることで改善することがあります。しかし、卵巣機能低下や多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、甲状腺疾患などが背景にある場合は、生活習慣の改善だけでは十分でないことも多く、適切な診断と治療が必要です。

月経が3カ月以上来ない、出血量が極端に多い・少ない、以前と比べて明らかに周期が変化したなどの場合は、生活習慣を整えると同時に婦人科を受診し、原因を確認しておくことをおすすめします。

Q3: 「女性ホルモンに良い」と宣伝されているサプリメントは飲んでも大丈夫ですか?

A3: 大豆イソフラボンやエクオールなど、女性ホルモンに似た働きをするとされる成分を含むサプリメントは、市販されています。ただし、サプリメントは薬ではなく、「不足しがちな栄養を補う」位置づけです。5

更年期症状の緩和に役立つ可能性が指摘されている一方で、過剰摂取や既往歴(乳がんなど)によっては望ましくない場合もあるため、婦人科やかかりつけ医に相談したうえで利用するのが安心です。自己判断で多量に摂取することは避けましょう。

Q4: 緑茶はどのくらい飲むとホルモンバランスに良いですか?

A4: 緑茶のメタアナリシスでは、血糖コントロールやインスリン感受性へのわずかな改善効果が報告されていますが、「何杯飲めばホルモンバランスが整う」といった明確な基準があるわけではありません。7

一般的には、カフェインの摂りすぎを避ける意味も含めて、1日1〜3杯程度を目安に、無糖でゆっくり味わう飲み方がおすすめです。妊娠中・授乳中や持病がある方は、主治医や助産師に相談しながら量や飲む時間帯を調整してください。

Q5: 女性ホルモンの検査は、どんなタイミングで受けるべきですか?

A5: 月経不順、不妊、更年期症状などが気になる場合、婦人科でホルモン検査を行うことがあります。検査のタイミングは、目的や測定するホルモンによって異なり、月経周期の何日目に採血するかが決められていることもあります。

「検査が必要か」「いつ受けるか」は自己判断せず、まず診察で症状や生活状況を伝えたうえで、医師と相談しながら決めるのが安心です。

Q6: 更年期の症状は、生活習慣だけで乗り切るべきでしょうか?

A6: 更年期のほてり・発汗・不眠・気分の落ち込みなどは、生活習慣の工夫によって軽くなる場合もありますが、症状が強く日常生活に支障がある場合は、ホルモン補充療法(HRT)や漢方薬などの治療を検討する価値があります。35

「薬に頼るのはよくない」と我慢しすぎると、仕事や家庭生活の質が大きく損なわれてしまうこともあります。我慢比べをするのではなく、婦人科で治療のメリット・デメリットを十分に聞いたうえで、自分にとって納得できる選択をしていきましょう。

Q7: 男性にもホルモンバランスの乱れはありますか?

A7: 男性にもテストステロンという男性ホルモンがあり、加齢とともに徐々に減少していきます。女性ホルモンのような急激な変動ではありませんが、ストレスや生活習慣の影響を受け、意欲低下や疲れやすさなどの症状が現れることがあります。4

本記事は主に女性ホルモンをテーマとしていますが、睡眠やストレスケア、食事バランスといった基本的な生活習慣の整え方は、男性にも共通するポイントが多くあります。

結論:この記事から持ち帰ってほしいこと

女性ホルモンのバランスは、生まれ持った体質や年齢だけでなく、睡眠、ストレス、食事、運動など、日々の生活習慣の影響を大きく受けます。完璧な生活にしようと頑張りすぎる必要はありませんが、「睡眠の質を上げる」「ストレスを少しずつ外に出す」「砂糖や甘い飲み物を減らす」「良質な脂質と食物繊維を意識する」「食べ方を整える」「緑茶を上手に取り入れる」といった小さな工夫の積み重ねが、ホルモンの揺らぎによる不調を和らげる助けになるかもしれません。

一方で、月経が長期間止まっている、出血が極端に多い・長い、激しい痛みや急な体重変化、日常生活に支障が出るほどの気分の落ち込みや不安がある場合は、生活習慣の見直しだけに頼らず、婦人科や内科、心療内科・精神科などの医療機関で原因を確認してもらうことが重要です。

自分を責めたり、「頑張りが足りないからだ」と考える必要はありません。この記事が、ご自身の体と向き合い、必要に応じて専門家の力も借りながら、「自分らしく過ごせる毎日」を取り戻すための一歩になれば幸いです。

この記事の編集体制と情報の取り扱いについて

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本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集委員会が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。

ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。

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免責事項 本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言や診断、治療に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、治療内容の変更・中止等を検討される際には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠指針2014. 2014年. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf (最終アクセス日:2025-11-26)

  2. 厚生労働省 健やか生活習慣国民運動. 睡眠と生活習慣病との深い関係. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-008.html (最終アクセス日:2025-11-26)

  3. T-PEC つながる. ライフステージから見る女性の健康と病気. 2023年. https://tsunagaru-tpec.t-pec.co.jp/articles/life-stage/018/ (最終アクセス日:2025-11-26)

  4. 全国健康保険協会 神奈川支部. 働く世代が知っておきたい 年齢による身体の変化. https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kanagawa/yokohama0925.pdf (最終アクセス日:2025-11-26)

  5. 更年期ラボ. 美と健康は女性ホルモンが支えています。生活習慣を整え…. https://ko-nenkilab.jp/letter/bijyoi_article02.html (最終アクセス日:2025-11-26)

  6. 池袋アイリス婦人科クリニック. ホルモンバランスの乱れチェックリストと整える方法. https://ikebukuroiris-fujinka.jp/menstrual/female-hormones/ (最終アクセス日:2025-11-26)

  7. Liu K, Zhou R, Wang B, Chen K, Shi LY, Zhu JD, Mi MT. Effect of green tea on glucose control and insulin sensitivity: a meta-analysis of 17 randomized controlled trials. American Journal of Clinical Nutrition. 2013;98(2):340–348. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23803878/ (最終アクセス日:2025-11-26)

  8. 全国健康保険協会 ほか. 男性・女性ホルモンの推移. https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/kanagawa/yokohama0925.pdf (最終アクセス日:2025-11-26)

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