【授乳中の薬】母乳への影響と安全な飲み方・受診の目安をわかりやすく解説
この記事でわかること
目次
- Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
- 要点まとめ
- 第1部:授乳中の薬の基本と日常生活の見直し
- 1.1. 薬はどのように母乳へ移行するのか — 仕組みをやさしく解説
- 1.2. 悪化させてしまうNG習慣と、まず見直したいポイント
- 第2部:授乳中でも使いやすい薬と注意が必要な薬
- 2.1. 解熱鎮痛薬・風邪薬・アレルギー薬
- 2.2. 抗生物質・慢性疾患の薬
- 2.3. 便秘薬・下痢止め・胃腸薬
- 2.4. 乗り物酔い止め・避妊薬・その他
- 第3部:授乳中は特に注意が必要な薬・避けたい薬
- 3.1. 抗がん剤・放射性医薬品・薬物乱用に分類される物質
- 3.2. 一部の向精神薬・リチウム・エルゴタミンなど
- 3.3. 授乳中断が必要と判断されたときの考え方
- 第4部:今日からできる「授乳中の薬」とのつき合い方
- 第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
- 5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- 5.2. 症状と薬に応じた診療科の選び方
- 5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- よくある質問
- 結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
- この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
- 参考文献
「授乳中なのに風邪をひいてしまった」「抗生物質を処方されたけれど、母乳に影響しないか心配」「市販薬や漢方は飲んでも大丈夫?」——赤ちゃんに母乳をあげている時期に薬を飲む必要が出てくると、多くの方がこうした不安を抱きます。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
一方で、必要な薬を我慢し続けてお母さんの体調が悪化すると、授乳を続ける体力が落ちたり、育児そのものがつらくなってしまうこともあります。厚生労働省は、妊婦や授乳中の人に対して「薬のリスクを過度に心配して治療を控えることも、母体と子どもに悪影響を及ぼし得る」と注意を呼びかけています3。
国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」では、「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」と「授乳中の使用には適さないと考えられる薬」の一覧を公開し、最新の研究に基づいて評価を行っています1。多くの薬は、適切に選び、使い方を工夫すれば授乳を続けながら服用することが可能です2。
この記事では、日本の公的機関や国際的なガイドラインの情報をもとに、「授乳中に薬を飲んでも大丈夫なのか」「どのような薬は注意が必要なのか」「いつ受診して相談すべきか」を、できるだけ具体的に整理して解説します。自己判断で授乳をやめてしまう前に、まずは一緒に整理していきましょう。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」による「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」の一覧1や、厚生労働省の妊婦・授乳婦の薬物使用に関する事業3、米国疾病予防管理センター(CDC)や世界保健機関(WHO)の資料57など、信頼性の高い一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・公的研究機関:妊婦・授乳婦の薬の適正使用推進事業や、授乳・離乳の支援ガイド、各種統計資料など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
- 国立成育医療研究センター・医療機関:授乳中に安全と考えられる薬・避けるべき薬のリストや、相談窓口に蓄積された事例に基づく情報を参照しています12。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:WHOの「Breastfeeding and maternal medication」7、LactMed®データベース8、日本小児科学会関連文献などをもとに、科学的なエビデンスの範囲内で要点を整理しています。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、運営者情報(JapaneseHealth.org)をご覧ください。
要点まとめ
- 多くの薬は、授乳を続けながらでも安全に使用できると考えられており、授乳中だからといって必ずしもすべての薬を避ける必要はありません15。
- 国立成育医療研究センターは「授乳中に安全に使用できる薬」と「授乳中には適さない薬」の一覧を公開しており、抗生物質・解熱鎮痛薬・アレルギー薬など多くの薬が「授乳中でも使用可能」と評価されています12。
- 一方で、抗がん剤、放射性医薬品、一部の向精神薬、薬物乱用に分類される物質などは、授乳中には原則として避ける、または一時的に授乳を中断する必要があります79。
- 自己判断で授乳を中止したり、処方薬を急にやめたりすると、お母さんの病状悪化や母乳育児の中断につながるおそれがあるため、必ず医師・薬剤師と相談してから判断しましょう34。
- この記事では、授乳中のよくある薬(風邪薬、解熱鎮痛薬、アレルギー薬、胃腸薬、便秘薬、ピル、ダイエット薬、漢方など)の考え方と、受診の目安・相談先を具体的に紹介します。
「少しの頭痛や鼻かぜなら我慢すべき?」「どうしても抗生物質が必要と言われたけれど、母乳はあげていい?」——授乳中の薬については、誰にも相談できずインターネットで検索を繰り返してしまう方も少なくありません。
本記事では、まず授乳中の薬がどのように母乳へ移行するのか、そもそもの仕組みを整理します。そのうえで、日常生活の中で避けたい自己判断(添付文書だけを見て授乳をやめてしまう、ネット情報だけで薬を中止する など)を確認し、代表的な薬のグループごとに「比較的安心して使えるもの」「注意が必要なもの」「原則避けたいもの」を段階的に解説します。
さらに、どのタイミングでどの診療科に相談すべきか、赤ちゃんの様子で気をつけたいサイン、国立成育医療研究センターやPMDA(医薬品医療機器総合機構)が提供している公的な情報源の使い方も紹介します14。
この記事を読み進めることで、「どの程度なら様子を見てよいか」「どんな場合はすぐに受診したほうがよいか」「授乳を続けながら治療を受けるにはどう相談すればよいか」が具体的にイメージできるようになることを目指します。
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数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
第1部:授乳中の薬の基本と日常生活の見直し
まずは、「薬を飲むとすぐに母乳に大量に移行してしまうのでは?」という漠然とした不安を整理し、どのような仕組みで薬が母乳に移るのか、一般的な考え方を確認します。そのうえで、日常生活の中で避けたいNG行動や、セルフチェックのポイントを見ていきましょう。
1.1. 薬はどのように母乳へ移行するのか — 仕組みをやさしく解説
お母さんが薬を飲むと、まず消化管から血液中に吸収され、全身を循環します。このとき、母乳をつくっている乳腺にも血液が流れているため、一部の薬は血液から母乳へ移行します。どのくらい移行するかは、薬の種類や量、分子の大きさ、脂溶性(脂に溶けやすいかどうか)、タンパク質との結合のしやすさなど、さまざまな性質によって変わります79。
WHOや各種レビューでは、ほとんどの薬は母乳に移行してもその量はごくわずかであり、赤ちゃんに臨床的な影響を与えない場合が多いとされています710。ただし、体重の小さい新生児や早産児、持病のある赤ちゃんは、少ない量でも影響を受けやすいため、慎重な評価が必要です。
国立成育医療研究センターは、様々な研究結果をもとに「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」と「授乳中の使用には適さないと考えられる薬」の2種類の一覧表を作成し、一般にも公開しています12。この一覧に載っていない薬であっても、類似の薬のデータから「授乳中でも使用可能」と判断される場合もあり、個別に専門家が検討する仕組みが整えられています。
1.2. 悪化させてしまうNG習慣と、まず見直したいポイント
授乳中の薬に関する不安から、つい次のような行動をとってしまうことがあります。
- 薬の添付文書に「授乳を中止すること」と書かれていたので、医師に相談せずに授乳をやめてしまった。
- 体調が悪くても「授乳中だから薬は飲めない」と決めつけ、治療を先延ばしにしている。
- インターネットの体験談だけを信じて薬を自己判断で中止したり、逆に市販薬を自己判断で追加してしまう。
日本の医薬品添付文書では、「授乳中は投与を避ける」「授乳を中止させる」といった記載が多く見られますが、これは安全側に倒した表現であり、必ずしも最新のエビデンスに基づく授乳中止の必要性を意味しないケースもあります9。WHOや米国小児科学会のリストでは、授乳禁忌となる薬剤は全体のごく一部に限られると報告されています7。
大切なのは、「薬の必要性」と「授乳への影響」を一緒に考えることです。治療を控えることでお母さんの病状が悪化し、結果的に赤ちゃんへのケアが十分にできなくなるような場合は、むしろ適切に薬を使ったほうが母子にとってプラスになることも少なくありません35。
| こんな不安・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| 風邪や頭痛がつらいが、「授乳中だから」と市販薬も処方薬も我慢している。 | 薬のリスクを過大評価している可能性/生活の質の低下、育児負担の増大 |
| 抗生物質を処方され、「添付文書に授乳中止と書いてある」と不安になっている。 | 添付文書と実際のエビデンスの違いへの戸惑い/医師・薬剤師とのコミュニケーション不足 |
| サプリや漢方は安全だと思い、授乳中でも特に確認せずに飲んでいる。 | 「天然=安全」という誤解/成分や相互作用に関する情報不足 |
| 持病の薬(高血圧・糖尿病・うつ病など)を自己判断で減らしたり止めたりしている。 | 慢性疾患のコントロール悪化/お母さん自身の健康リスク増大 |
第2部:授乳中でも使いやすい薬と注意が必要な薬
ここからは、授乳中によく問題になる具体的な薬の種類について見ていきます。個々の薬については国立成育医療研究センターやLactMed®データベースなどで確認する必要がありますが18、代表的な考え方を知っておくと医師・薬剤師との相談がスムーズになります。
2.1. 解熱鎮痛薬・風邪薬・アレルギー薬
授乳中にもっともよく使用されるのが、頭痛や発熱、生理痛などに使う解熱鎮痛薬、風邪薬、花粉症などに使うアレルギー薬です。
- 解熱鎮痛薬(パラセタモール/アセトアミノフェン)
適切な用量であれば授乳中でも使用可能とされ、国立成育医療研究センターの一覧でも「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」に分類されています1。CDCや各国のガイドラインでも第一選択薬として推奨されています510。 - NSAIDs(イブプロフェンなど)
短期間・通常量であれば授乳中の使用が許容されるとされる薬も多く、いくつかは「授乳中でも安全」と評価されていますが、赤ちゃんの持病(心疾患、腎機能障害など)によっては注意が必要です110。 - 風邪薬の成分
去痰薬のグアイフェネシンや咳止めのデキストロメトルファンなど、一部の成分は授乳中でも使用可能とされています2。一方、血管収縮作用のあるプソイドエフェドリンなどは母乳量を一時的に減らす可能性があるとされ、注意が必要です10。 - アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)
セチリジン、ロラタジンなどの第二世代抗ヒスタミン薬は、母乳への移行が少なく授乳中でも使用できる薬として挙げられています110。一方、第一世代抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミンなど)は母子ともに眠気を起こしやすいため、慎重な使用が推奨されます。
いずれの薬も、「必要なときに、できるだけ短期間、最小限の量を使う」という原則は共通です。特に乳児が新生児期・早産児の場合や、持病を抱えている場合には、必ず小児科医と相談したうえで使用しましょう。
2.2. 抗生物質・慢性疾患の薬
「抗生物質を点滴すると授乳はできないのでは?」という相談もよくありますが、実際には授乳中でも使用可能な抗生物質が多数あります。国立成育医療研究センターの一覧でも、多くのペニシリン系・セフェム系抗生物質などは「授乳中に安全」とされています1。一部の薬では赤ちゃんの便がゆるくなったり、お腹が張りやすくなるケースがありますが、多くは一過性で経過観察のみで済むとされています2。
持病の治療薬(高血圧、糖尿病、てんかん、うつ病など)については、妊娠前から飲み続けている薬を授乳期にどうするかが問題になります。糖尿病治療薬では、インスリンやメトホルミンなどが授乳中でも第一選択になり得るとする報告があります10。抗うつ薬では、SSRIの一部は比較的安全に使用できるとされる一方で、フルオキセチンなど一部の薬は他の選択肢を優先するよう推奨されています10。
いずれにせよ、持病の薬を自己判断で中止すると、血圧の急上昇や血糖コントロール悪化、うつ症状の再燃など、お母さん自身の健康に重大な影響が出るおそれがあります。授乳を続けたい旨を必ず主治医に伝えたうえで、「授乳中でも使える薬に変更できないか」「服用のタイミングを工夫できないか」を一緒に検討してもらうことが重要です34。
2.3. 便秘薬・下痢止め・胃腸薬
出産後はホルモンの変化や生活リズムの乱れから、便秘や下痢、胃の不調に悩まされる方も多くなります。授乳中でも使用可能とされる薬と、注意が必要な薬を、ざっくりと整理しておきましょう。
- 便秘薬(下剤)
ラクツロース、マクロゴール、グリセリン坐薬などの浸透圧性下剤は、母乳への移行が少なく授乳中でも使用しやすいとされています1。一方、センナやビサコジルなど刺激性下剤は、母乳を通じて赤ちゃんに作用し下痢を起こす可能性があるため、長期連用や高用量は避けるのが一般的です1。 - 下痢止め
多くの急性の下痢は水分補給と安静で自然に改善しますが、ロペラミドなど一部の下痢止めは授乳中でも使用が許容されるとされています2。高熱や血便を伴う下痢、48時間以上続く下痢では、自己判断で薬を飲む前に受診しましょう。 - 胃薬・胃酸を抑える薬
制酸薬やH2ブロッカーの一部、プロトンポンプ阻害薬の一部は授乳中でも使用可能とされるものがありますが、個々の薬で母乳への移行量が異なります。持病で長期服用している場合は、必ず主治医と相談してください8。
2.4. 乗り物酔い止め・避妊薬・その他
旅行や復職のタイミングなど、ライフイベントに伴って必要になる薬もあります。
- 乗り物酔い止め
スコポラミン(ヒヨスチン)やシクリジンなどの酔い止め薬は、短期間の使用であれば授乳中でも使用可能とする資料が多く、欧米の母乳育児と薬の情報サイトでも条件付きで使用が認められています78。ただし眠気が出やすいため、赤ちゃんの様子に注意しましょう。 - 経口避妊薬(ピル)
WHOなどのガイドラインでは、エストロゲンを含む「低用量ピル」は産後すぐには推奨されず、特に産後3週間以内は血栓症リスクの観点から避けるべきとされています7。授乳中の避妊では、プロゲスチン単剤のピル(ミニピル)やIUDなど、母乳量への影響が少ない方法が選択されることが多く、日本でも同様の考え方が採用されています。 - ダイエット薬・サプリメント
減量目的の医薬品や、海外製のダイエットサプリには、授乳中の安全性が十分に確認されていない成分が含まれていることが多く、基本的に授乳中の使用は推奨されません710。体重を戻したい場合は、食事内容の見直しや軽い運動など、生活習慣の調整が基本となります。 - 漢方薬・ハーブ
「自然のものだから安心」と思われがちですが、漢方薬やハーブにもホルモン作用や子宮収縮作用を持つもの、肝機能に影響を与えるものなどさまざまです。授乳中の安全性に関するデータが乏しいものも多いため、自己判断での長期使用は避け、必ず医師や薬剤師に相談しましょう27。
第3部:授乳中は特に注意が必要な薬・避けたい薬
ここでは、「授乳中は原則として避けるべき」とされる薬や、「授乳の一時中断が必要になり得る」薬について整理します。これらに該当する薬がどうしても必要な場合は、主治医とよく相談しながら、母乳育児と治療のバランスを慎重に検討することが重要です。
3.1. 抗がん剤・放射性医薬品・薬物乱用に分類される物質
WHOや各国のガイドラインでは、多くの抗悪性腫瘍薬(抗がん剤)、放射性医薬品、コカインなどの違法薬物は、授乳中には使用すべきでない薬として位置付けられています7。国立成育医療研究センターの一覧でも、抗がん剤は安全性評価が難しく「授乳中の使用には適さない」とされ、個別判断が必要とされています2。
放射性医薬品を用いた検査・治療を受ける場合は、薬の半減期や放射能の性質によって、授乳を中断すべき期間が異なります。米国や日本の資料では「事前に母乳を搾乳して冷凍保存しておき、一定期間はその母乳やミルクで対応する」といった方法も紹介されています79。
3.2. 一部の向精神薬・リチウム・エルゴタミンなど
抗うつ薬や抗てんかん薬などの向精神薬の多くは、薬によって授乳中の扱いが大きく異なります。SSRIの一部など「比較的安全」とされるものもあれば、赤ちゃんへの影響が問題となり授乳中は避けることが推奨されるものもあります10。特にリチウムや一部の抗不整脈薬、エルゴタミンなどは、国際的なガイドラインで授乳中の使用に強い注意が促されています7。
精神科・心療内科領域の薬については、母親の精神状態が授乳や育児に大きく影響することも考慮しなければなりません。薬をすべて中止するのではなく、「比較的母乳への移行が少なく、安全性が高いとされる薬へ切り替える」「授乳のタイミングを工夫して母乳の薬物濃度が低くなる時間帯に授乳する」などの方法が検討されます99。
3.3. 授乳中断が必要と判断されたときの考え方
PMDA(医薬品医療機器総合機構)は、患者向けQ&Aで「お母さんの病気の状態によっては、授乳中にどうしても薬を服用しなければならない場合があり、その際には母乳に移行しにくい薬を選ぶなど工夫しつつ、それでも必要なら一時的に授乳を中止することもある」と説明しています4。
授乳中断が必要と判断された場合のポイントは次の通りです。
- 医師から「この薬を使う間は授乳を中止したほうがよい」と説明された場合は、その理由(赤ちゃんへの影響、母乳への移行量、代替薬の有無など)を詳しく聞きましょう。
- 母乳育児を再開する予定であれば、中止の間も搾乳を続けて乳房トラブルや母乳量の低下を防ぎます(搾った母乳は薬の種類によっては破棄が必要な場合があります)。
- 一時的にミルクなどに切り替える場合、赤ちゃんの消化状態や便の変化に注意しつつ、必要であれば小児科でフォローしてもらいましょう。
- いつから授乳を再開できるか(最後の服用から何日後など)は、薬の種類ごとに異なるため、必ず医師・薬剤師に確認してください。
第4部:今日からできる「授乳中の薬」とのつき合い方
ここまで見てきたように、「授乳中だから薬は一切飲めない」というわけではなく、多くの薬は工夫しながら安全に使うことができます。この部では、今日から実践できる「授乳中の薬との上手なつき合い方」をステップごとに整理します。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Level 1:今すぐできること | 自分の薬・サプリの「リスト化」 | 処方薬・市販薬・サプリ・漢方をすべてメモし、診察時にまとめて見せられるようにしておく。 |
| Level 2:受診・相談時に行うこと | 「授乳中であること」を必ず伝える | 受診の際に「今○か月の赤ちゃんに母乳をあげています。授乳を続けたいので、その前提で薬を選んでいただけますか?」と具体的に伝える。 |
| Level 3:服薬タイミングの工夫 | 授乳直後または赤ちゃんが長く寝る前に飲む | 日本小児科学会などでも紹介されているように、授乳直後や赤ちゃんの最長睡眠前に服薬することで、次の授乳までの間に母乳中の薬物濃度を下げる工夫ができます9。 |
| Level 4:赤ちゃんの様子を観察 | いつもと違う様子がないかチェック | 母乳を急に飲まなくなる、ぐったりしている、異常に眠り続ける、けいれん様の動きがある、下痢・発疹が出るなどがないか観察し、気になる変化があれば受診する4。 |
| Level 5:信頼できる情報源を活用 | 公的サイトやデータベースをチェック | 国立成育医療研究センター「授乳と薬」のページや、LactMed®などの公的情報を参考にしつつ、最終判断は必ず医師・薬剤師に委ねる18。 |
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
最後に、「どのタイミングで受診すべきか」「どの診療科に相談したらよいか」「診察時に何を伝えればよいか」について整理します。授乳中の薬の問題は、お母さん一人で抱え込む必要はありません。
5.1. 受診を検討すべき危険なサイン
- お母さん自身の症状が強く、日常生活や育児が続けられない(高熱が続く、強い痛み、息苦しさ、意識がぼんやりする など)。
- 赤ちゃんに次のような変化がある:母乳を急に飲まなくなった、いつもより極端に眠り続ける・反応が鈍い、ぐったりしている、ピクピクとしたけいれん様の動きがある、原因不明の発疹や下痢が続く など4。
- 医師から「この薬は授乳中断が必要」と説明されたが、どう対応してよいか分からない。
- 持病の薬を自己判断で中止した結果、血圧・血糖・気分などが明らかに悪化している。
上記のような状況では、早めに医療機関を受診し、授乳と薬の両方について相談しましょう。夜間や休日で赤ちゃんの状態が急に悪化した場合は、迷わず救急外来や#7119、119番通報の利用も検討してください。
5.2. 症状と薬に応じた診療科の選び方
- 風邪・インフルエンザ・胃腸炎・尿路感染症など:まずは内科・総合診療科へ。妊娠・授乳の経験が多いクリニックを選ぶと相談しやすいでしょう。
- 産後うつ・不安・睡眠障害など精神面の不調:心療内科・精神科に加え、産婦人科や母子外来で授乳と薬を一体的に相談できる地域資源もあります。
- 慢性疾患(高血圧・糖尿病・てんかんなど):もともとの主治医に「授乳中であること」「母乳を続けたいこと」を必ず伝えたうえで、薬の調整を相談します。
- 赤ちゃんの様子に不安がある場合:小児科で「母親がどんな薬を何日間飲んでいるか」を詳しく伝え、必要な検査や経過観察をしてもらいましょう。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 現在飲んでいる薬・サプリ・漢方の一覧(お薬手帳・パッケージ・写真など)。
- 赤ちゃんの母子手帳、最近の体重・予防接種歴。
- 症状のメモ:いつから・どのような症状が・1日のうちどの時間帯に出やすいか、授乳の頻度や回数など。
- 保険証・医療証。日本では多くの検査・治療が公的医療保険の対象となるため、3割負担で受診できる場合がほとんどです。
「授乳中だから迷惑ではないか」「こんなことで相談していいのか」と遠慮する必要はありません。医療者の立場からすると、「授乳中であることを最初から伝えてもらえるほうが、薬を選びやすく安全」です。気になることがあれば、遠慮せずに相談してみてください。
よくある質問
Q1: 授乳中に市販の風邪薬を飲んでも大丈夫ですか?
Q2: 抗生物質を処方されました。授乳は中止したほうがいいですか?
Q3: 授乳中に頭痛や生理痛で鎮痛薬を飲むのは問題ありませんか?
Q4: 花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)は赤ちゃんを眠くさせませんか?
Q5: 授乳中にピル(経口避妊薬)を飲んでもいいですか?
A5: エストロゲンを含む低用量ピルは、産後早期に服用すると血栓症リスクの観点から推奨されておらず、WHOなどのガイドラインでは産後3週間〜6週間までは原則避けるべきとされています7。また、一部の資料ではエストロゲンが母乳量を減らす可能性が指摘されています。
授乳中の避妊では、プロゲスチン単剤ピル(ミニピル)や子宮内避妊具(IUD)、コンドームなど、母乳への影響が少ない方法が選ばれることが多いです。避妊の方法を検討する際は、産婦人科で「授乳を続けたい」「何か月ぐらいまで母乳育児を続ける予定か」を含めて相談してみてください。
Q6: 授乳中の便秘や下痢で、下剤や下痢止めを飲んでもいいですか?
A6: ラクツロースやマクロゴール、グリセリン坐薬などの浸透圧性下剤は、授乳中でも使用しやすい下剤として挙げられています1。一方、センナやビサコジルなどの刺激性下剤は、赤ちゃんに下痢を起こす可能性があるため、短期間・必要最小限にとどめるのが一般的です。
ロペラミドなどの下痢止めは、短期間であれば授乳中の使用が許容される場合もありますが、血便や高熱を伴う下痢では感染症の可能性もあり、自己判断で下痢止めを使用するのは危険です。水分補給を十分に行いながら、症状が強い場合は早めに受診しましょう。
Q7: 授乳中ですが、早く体重を戻したいのでダイエット薬を使ってもいいですか?
Q8: 漢方薬やハーブティーなら、授乳中でも安心して飲めますか?
Q9: 授乳中にどうしても「授乳には適さない」と言われた薬が必要になった場合、どうすればいいですか?
Q10: 授乳中の薬の情報はどこで調べるのが安全ですか?
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
授乳中の薬について調べていると、不安をあおるような情報や、反対に「この薬なら絶対に安心」と断言する情報が入り混じっていて、かえって混乱してしまうこともあるかもしれません。しかし、国立成育医療研究センターやWHO、CDCなどの資料を総合すると、「ほとんどの薬は、適切に選び、飲み方を工夫すれば、授乳を続けながら安全に使用できる」ことが分かっています157。
大切なのは、ひとりで抱え込まず、次の3つを意識することです。
- 「授乳中であること」「母乳を続けたいこと」を、受診のたびに必ず医師・薬剤師に伝える。
- 自己判断で薬を中止したり、授乳をやめたりせず、公的な情報源と専門家の意見を組み合わせて判断する。
- お母さん自身の健康を守ることも、赤ちゃんにとって大切な「ケア」の一部だと考える。
もし今、授乳と薬のことで悩んでいるなら、「こんなことで相談していいのかな」と遠慮する必要はありません。この記事が、医療者に一歩相談してみるきっかけになれば幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。本記事では、国立成育医療研究センター、厚生労働省、PMDA、世界保健機関(WHO)、米国疾病予防管理センター(CDC)などの一次情報を中心に参照し、日本で生活する方が実際の診療現場で直面しやすい疑問に焦点を当てて構成しました13457。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが運営者情報ページ記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。
参考文献
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国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター. 授乳と薬について知りたい方へ. https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/(最終アクセス日:2025-11-30)
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国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター. 授乳中に安全に使用できると考えられる薬・授乳中の使用には適さないと考えられる薬. https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_aiu.html(最終アクセス日:2025-11-30)
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厚生労働省. 妊婦・授乳婦を対象とした薬の適正使用推進事業について. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/ninshin_00002.html(最終アクセス日:2025-11-30)
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医療情報に関する重要なお知らせ
本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
