楽しみにしていた旅行なのに、「到着してからずっとお腹の調子が悪い」「飛行機に乗ると毎回便秘になる」「現地の食事を楽しみたいのに、下痢が怖くて不安…」という悩みを抱えている方は少なくありません。
旅行中は、時差や環境の変化、慣れない食事、長時間移動などが重なり、胃腸にとってはかなりのストレスになります。その結果、旅行者下痢症と呼ばれる感染性の下痢や、便秘、胃もたれ、吐き気など、さまざまな消化器症状が起こりやすくなります。
本記事では、Japanese Health(JHO)編集部が、公的機関や専門学会、海外の信頼できるガイドラインなどの情報をもとに、「旅行中に起こりやすい胃腸トラブルの仕組み」と「今日からできる具体的な予防・対策」をわかりやすく解説します。下痢や便秘を繰り返しやすい方や、これから海外旅行を予定している方は、ぜひ事前のチェックリストとしてご活用ください。
なお、ここで紹介する内容はあくまで一般的な情報です。強い腹痛や血便、ぐったりするほどの脱水などがある場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診してください。
Japanese Health(JHO)編集部とこの記事の根拠について
Japanese Health(JHO)は、健康と美容に関する情報を提供するオンラインプラットフォームです。膨大な医学文献や公的ガイドラインを整理し、日常生活で活用しやすい形でお届けすることを目指しています。
本記事の内容は、日本の検疫所が提供する「旅行者下痢症」に関する解説や厚生労働省の情報、海外渡航者向けガイドライン(CDC『Yellow Book』など)、消化器専門施設による解説記事など、信頼できる一次情報源に基づいて、JHO編集部がAIツールのサポートを受けつつ、最終的には人の目で一つひとつ確認しながら作成しています。
- 厚生労働省・検疫所・公的研究機関:FORTH(厚生労働省検疫所)の旅行者下痢症の解説や、eJIM(厚生労働省:統合医療情報発信サイト)など、日本人向けの公式情報を優先して参照しています。
- 国内外の医学会ガイドライン・査読付き論文:旅行医学の国際学会がまとめた旅行者下痢症ガイドラインや、CDC、大学附属病院の解説ページ、査読付き論文など、科学的に検証されたエビデンスをもとに要点を整理しています。
- 教育機関・医療機関・NPOによる一次資料:便秘や下痢の一般的な対処法、脱水時の注意点、受診の目安などについて、消化器専門施設や公的な医療サイトの情報を参考にしています。
AIツールは、文献の要約や構成案作成の「アシスタント」として活用していますが、公開前には必ずJHO編集部が原著資料と照合し、重要な記述を一つひとつ確認しながら、事実関係・数値・URLの妥当性を検証しています。
私たちの運営ポリシーや編集プロセスの詳細は、 運営者情報(JapaneseHealth.org)</a >をご覧ください。
要点まとめ
- 旅行中の胃腸トラブルは、感染性の「旅行者下痢症」だけでなく、食事の変化、脱水、時差や睡眠リズムの乱れ、長時間移動、ストレスなど、複数の要因が重なって起こります。
- 感染性の下痢を防ぐには、「よく加熱された料理」「皮付きで自分でむける果物」「密閉されたボトル飲料」など、安全な飲食物を選び、手洗いやアルコール消毒を徹底することが重要です1,3。
- 便秘や胃もたれを予防するには、こまめな水分補給、食物繊維を含むメニュー選び、適度な歩行・ストレッチ、トイレを我慢しないといった、日常的な生活習慣の工夫が効果的です4。
- プロバイオティクス(乳酸菌サプリなど)は「腸内環境サポート」の期待はあるものの、旅行者下痢症の予防や治療の効果については、現時点でエビデンス不十分とする国際ガイドラインもあります。持病や免疫が低下している方は、自己判断ではなく医師と相談しましょう2。
- 高熱、血便、強い腹痛、ぐったりするほどの脱水、小さなお子さんや高齢者・妊娠中の方の症状などは、救急受診や早期の医療機関受診が必要なサインです。海外でも現地の医療機関を積極的に利用しましょう。
- 記事の後半では、「出発前に準備しておきたい持ち物リスト」「今日からできる6つのセルフケア」「受診の目安と診療科の選び方」を具体的に紹介します。
「自分は胃腸が弱いから、旅行はいつも不安」「同じものを食べているのに、なぜ自分だけお腹を壊すのか」と感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、まず日常生活・旅行計画の段階で見直せるポイントから整理し、それでも繰り返す場合に考えられる体の不調や病気、医療機関を受診すべきサインまで、段階的に理解できるように構成しています。
旅行先での食事選びのコツや、長時間フライト・新幹線での過ごし方、宿泊先での水分・睡眠のとり方など、すぐに実践できる対策も具体的に紹介します。あわせて、普段から腸のコンディションを整えるための生活習慣も解説し、「旅行前だけ頑張る」のではなく、長期的に負担を減らす視点もお伝えします。
この記事を読み進めることで、「自分の症状はどのレベルなのか」「いつ・どこで・どの診療科に相談すべきか」「今日から何を変えていけばよいか」が、具体的にイメージできるようになることを目指します。
第1部:旅行中の胃腸トラブルの基本と日常生活の見直し
旅行中の胃腸トラブルは、「特別な病気」だけが原因ではありません。多くの場合、いつもと違うリズムで生活することそのものが、腸にとって大きなストレスになります。このセクションでは、まず最初に見直したい生活習慣や環境要因を整理し、自分のパターンを客観的に確認していきます。
1.1. 旅行と腸の関係 — 基本的なメカニズム
私たちの腸は、体内時計や自律神経のリズムに合わせて、ある程度「決まった時間」に動きやすい特徴があります。普段、朝食後に自然とトイレに行きたくなる方が多いのも、腸のぜん動運動が生活リズムと連動しているためです。
ところが、旅行になると次のような変化が一度に起こります。
- 出発前の準備で睡眠不足・食事時間の乱れが続く
- フライトや長距離移動で、同じ姿勢のまま何時間も座りっぱなしになる
- 水分を控えたり、機内や車内でトイレを我慢したりしがちになる
- 現地の料理や香辛料、油の種類が一気に変わる
- 時差がある場合は、体内時計と現地時間が合わない
これらの変化により、腸の動きが一時的に鈍くなったり、逆に活発になりすぎたりして、便秘や下痢、ガスの張り、胃もたれなどを引き起こします。特に「もともと便秘がち」「過敏性腸症候群(IBS)がある」など、腸がデリケートな方は、環境変化の影響を受けやすい傾向があります。
1.2. 胃腸を疲れさせるNG習慣と、旅行中にありがちな場面
旅行中は気分が高まり、「つい」やってしまう行動が胃腸の負担になることがあります。以下のような習慣が重なると、便秘や下痢を招きやすくなります。
- 水分不足になる:機内や車内でトイレに行きたくないために水分を控える、アルコールやカフェイン飲料が中心になると、腸の中の水分が減り、便が硬くなりやすくなります。
- 高脂肪・高カロリー食が続く:揚げ物やファストフード、チーズやクリームたっぷりの料理ばかり食べていると、消化に時間がかかり、胃もたれや便秘を助長します。
- 食物繊維が不足する:生野菜や果物に不安を感じ、パンや肉中心のメニューに偏ると、便の「かさ」を作る食物繊維が足りず、腸のぜん動運動が弱くなります。
- 食事時間がバラバラになる:ツアー日程の都合で昼食が遅くなったり、朝食を抜いたりすると、腸のリズムが乱れやすくなります。
- トイレを我慢する:機内や観光地のトイレを避けて我慢していると、便意のサインに鈍感になり、便秘が悪化します。
「思い当たることが多い」と感じた方は、病気を疑う前に、まずこれらの習慣を小さく修正していくことが、胃腸トラブル予防の第一歩になります。
| こんな症状・状況はありませんか? | 考えられる主な背景・原因カテゴリ |
|---|---|
| フライト後から数日、便が出にくくお腹が張る | 水分不足、食物繊維不足、長時間の座位、トイレの我慢 |
| 到着翌日から水のような下痢が続く | 飲食物を介した感染(旅行者下痢症)、強い香辛料や油に体が慣れていない |
| 吐き気・胃もたれが強く、食事が進まない | 食べ過ぎ・飲み過ぎ、脂っこい食事、時差・睡眠不足による自律神経の乱れ |
| お腹がゴロゴロ鳴り、緊張するとすぐトイレに行きたくなる | 過敏性腸症候群、旅行や仕事によるストレス・不安 |
| 便秘と下痢を繰り返し、腹痛も強い | 大腸の炎症性疾患など、より専門的な検査が必要な病気の可能性 |
第2部:身体の内部要因 — 栄養・腸内環境・持病との関係
生活習慣を整えても胃腸トラブルが起こりやすい場合、背景には腸内環境や栄養状態、持病、服用中の薬など、身体の内側の要因が関係していることがあります。このセクションでは、旅行前に知っておきたい内的要因を整理します。
2.1. 食物繊維とマグネシウム — 腸を動かす栄養素
便秘対策としてよく挙げられるのが、食物繊維とマグネシウムです。食物繊維は便の量を増やし、腸の動きを促す役割があります。特に、果物・野菜・全粒穀物・豆類などが代表的な食品です4。
一方、マグネシウムは筋肉の緊張を和らげ、腸の動きをサポートするとされており、全粒小麦、オートミール、ナッツ、種子類、海藻などに多く含まれます。食事からバランスよく摂る分には、旅行中の便秘予防にも役立ちます。
ただし、サプリメントとして高用量のマグネシウムを摂ると、逆に下痢を起こすこともあるため、自己判断で大量に摂取するのは避けましょう。持病がある方や腎機能に不安がある方は、サプリを使う前に主治医と相談することが大切です。
2.2. 腸内環境とプロバイオティクスの考え方
腸には数多くの細菌が住んでおり、食べ物の消化やビタミンの生成、病原菌から体を守る働きを支えています。ヨーグルトや納豆、味噌などの発酵食品、プロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌などを含むサプリメント)は、この腸内環境を整える目的で利用されることがあります2。
しかし、「プロバイオティクスを飲めば旅行者下痢症を確実に予防できる」といった強い効果は、現時点では証明されていません。旅行者下痢症に対する研究は、菌種や投与量、タイミング、原因となる病原体がさまざまで、一貫した結論を出すのが難しいとされています。国際的な旅行医学会のガイドラインでも、「予防や治療にプロバイオティクスを積極的に推奨するだけのエビデンスは不十分」と結論づけています2。
そのため、プロバイオティクスは「腸内環境へのサポートとして試してみる選択肢」の一つではありますが、「これさえ飲めば安心」と考えるのは避けましょう。特に免疫力が低下している方や重い基礎疾患がある方では、ごくまれに感染症などの合併症が報告されており、使用には注意が必要とされています2。
2.3. 過敏性腸症候群(IBS)・持病がある方は事前相談を
過敏性腸症候群(IBS)は、検査をしても明らかな炎症や潰瘍が見つからないにもかかわらず、腹痛や便秘・下痢を繰り返す病気です。ストレスや緊張、環境の変化が症状悪化のきっかけになることが多く、「旅行に行くと必ずお腹の調子が崩れる」という方の中には、IBSが背景にあるケースもあります。
また、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)や糖尿病、甲状腺機能の異常、婦人科疾患なども、便通や腹痛に影響することがあります。こうした持病がある方、また強い便秘や下痢を普段から繰り返す方は、旅行前の診察の際に「旅行先でもし悪化したらどうするか」「どの薬をどれくらい持って行くか」を主治医と相談しておくと安心です。
第3部:専門的な診断が必要な胃腸の病気
ここまで見てきた生活習慣や内的要因を整えても、症状が強い場合や長引く場合には、専門的な検査・治療が必要な病気が隠れている可能性があります。このセクションでは、旅行中によく問題になる代表的な病気と、その特徴的なサインを紹介します。
3.1. 旅行者下痢症(Travelers’ Diarrhea)
旅行者下痢症は、主に衛生環境が十分でない地域へ渡航した人に起こりやすい、感染性の下痢症です。旅行中または帰国後に、24時間あたり3回以上の下痢と、吐き気・嘔吐・腹痛・発熱などの症状がみられる場合に「旅行者下痢症」とみなすのが一般的です1。
原因となる病原体はさまざまで、細菌(病原性大腸菌、サルモネラ菌、カンピロバクター、赤痢菌など)、ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)、寄生虫(ジアルジアなど)が知られています1,5。多くは、汚染された水や氷、加熱が不十分な肉・魚介類、生野菜やカットフルーツ、屋台料理などを通じて感染します。
旅行者下痢症の予防には、次のようなポイントが重要です1,3。
- 水道水や氷、生のサラダ、生の果物(自分で皮をむけないもの)は避ける
- 「Boil it, cook it, peel it, or forget it(煮る・焼く・自分で皮をむく、それ以外は避ける)」を意識する
- 信頼できるレストランやホテルでの食事を心がける
- こまめな手洗いとアルコール消毒を徹底する
- 使い捨てのペーパータオルやウェットティッシュを携帯する
軽症であれば、十分な水分と電解質補給、安静、消化にやさしい食事で自然に回復することも多いですが、高熱や血便、激しい腹痛、嘔吐で水分が取れない場合、小さなお子さんや高齢者の症状などは、早めに医療機関を受診することが推奨されています1,3。
3.2. 食中毒・ウイルス性胃腸炎など
旅行者下痢症と重なる部分もありますが、特定の細菌やウイルスによる食中毒・急性胃腸炎では、突然の激しい嘔吐や水のような下痢、強い腹痛、発熱などがみられることがあります。同行者が同じものを食べて同様の症状を起こしている場合は、同じ原因による食中毒の可能性も考えられます。
こうした場合も、脱水を防ぐことが何より大切です。口から水分がとれないほど嘔吐が続く、血便が出る、40℃近い高熱がある、意識がもうろうとする、といった症状は緊急性が高く、国内であれば救急外来、海外でも躊躇せず現地の医療機関を受診しましょう。
3.3. 背景に別の病気が隠れている可能性
便秘と下痢を長期間繰り返す、血便が続く、体重が大きく減る、夜間も腹痛や下痢で何度も目が覚めるといった症状は、炎症性腸疾患や腫瘍、その他の消化器疾患が隠れている可能性もあります。旅行をきっかけに「いつもよりひどい」と感じた場合は、帰国後に消化器内科などで詳しい検査を受けることを検討してください。
第4部:今日から始める6つの改善アクションプラン
ここからは、旅行中の胃腸トラブルをできるだけ防ぐために、今日から実践できる具体的な対策を6つのステップに分けて紹介します。出発前の準備、移動中の過ごし方、現地での食事・水分のとり方など、状況に合わせて無理のない範囲で取り入れてみてください。
| ステップ | アクション | 具体例 |
|---|---|---|
| Step 1:水分補給を最優先にする | こまめな水分摂取で脱水と便秘・下痢を防ぐ | 機内や移動中は小さめのペットボトルを常に持ち歩く/カフェイン飲料・アルコールは「楽しみ」として量を決め、それ以外は水やノンカフェインのお茶を選ぶ |
| Step 2:食物繊維を少しずつキープ | 現地でも「少しは野菜・果物・全粒穀物」を意識 | 朝食でフルーツやオートミールを選ぶ/サンドイッチなら全粒粉パンを選ぶ/生野菜が不安な地域では、よく加熱された野菜料理や皮を自分でむける果物を選ぶ |
| Step 3:高脂肪・暴飲暴食を控えめに | 「少しずつ、いろいろなものを味わう」スタイルに | ビュッフェで山盛りにするのではなく、少量ずつ取り分ける/揚げ物やこってり料理は1日の中で回数を決める/夜遅い時間の大食いは避ける |
| Step 4:トイレを我慢しない環境づくり | 「いつでも行ける」安心感で腸のリズムを守る | 空港や観光地でトイレの位置を事前に確認しておく/機内では通路側の席を選ぶ/恥ずかしさより体調優先と割り切る |
| Step 5:体をこまめに動かす | 長時間同じ姿勢を避けて腸の動きを促す | フライト中に1〜2時間おきに立ち上がって歩く/座ったまま足首やふくらはぎを動かすストレッチを行う/観光中もエレベーターだけでなく階段を使うなど、自然な運動をとり入れる |
| Step 6:出発前に「お腹の救急セット」を準備 | いざという時の不安を減らし、ストレス軽減にも | 経口補水液(粉タイプ)、整腸薬や下痢止め・便秘薬(医師や薬剤師に相談)、いつも飲み慣れている漢方薬などを旅行用ポーチにまとめておく |
これらの対策は、すべてを完璧に行う必要はありません。自分のパターン(便秘になりやすいのか、下痢になりやすいのか、胃もたれが多いのか)を意識し、「特に自分にとって効果がありそうなもの」から取り入れていくことが大切です。
第5部:専門家への相談 — いつ・どこで・どのように?
胃腸トラブルの多くは、セルフケアで改善することもありますが、中には命に関わる病気が隠れている場合もあります。「どのような症状が出たら、どのタイミングで受診すべきか」を知っておくことは、旅行中・旅行後の安心につながります。
5.1. すぐに医療機関を受診すべき危険なサイン
- 38〜39℃以上の高熱が続く、または悪寒を伴う
- 水のような下痢が頻回に出て、ほとんど水分をとれない
- 血便(赤い血・黒いタール状の便)が出る
- 強い腹痛で立っていられない、体を丸めないと我慢できない
- 嘔吐が止まらず、数時間以上水分がとれない
- 口の中がカラカラ、尿がほとんど出ない・色が濃い、めまいや意識のもうろうがある
- 小さなお子さんや高齢者、妊娠中の方、持病のある方で、症状が急速に悪化している
これらの症状は、重い脱水症や感染症、その他の重大な病気のサインである可能性があります。国内であれば救急外来や夜間・休日診療、海外であれば、宿泊施設や現地ツアー会社、保険の緊急連絡先などを通じて、早めに医療機関を受診してください。命にかかわる状況では、迷わず救急サービス(日本では119)を利用することが大切です。
5.2. 症状に応じた診療科の選び方
- 主に下痢・便秘・腹痛が続く場合:消化器内科または一般内科(総合内科)を受診するのが一般的です。
- 子どもの症状が心配な場合:小児科が第一選択になります。特に乳幼児は脱水になりやすいため、早めの受診が推奨されます。
- 下腹部痛とともに月経不順や性交痛などがある場合:婦人科の受診も検討しましょう。
- 不安やストレスが強く、お腹の症状と連動していると感じる場合:まずは内科で身体的な原因を確認したうえで、必要に応じて心療内科や精神科への相談が選択肢になります。
5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安
- 症状のメモ・旅行日程表:いつから、どのような症状がどのくらい続いているのか、どの国・地域を訪れたか、どのようなものを食べたかなどをメモしておくと診断の助けになります。
- お薬手帳や服用中の薬のリスト:持病の薬やサプリメントも含めて、医師に正確に伝えられるようにしておきましょう。
- 保険証・海外旅行保険の書類:国内では健康保険証、海外では保険の加入証や緊急連絡先のカードを携帯しておくと、受診がスムーズになります。
- 費用の目安:日本国内での一般的な外来受診は、保険3割負担の場合、数千円〜1万円前後になることが多いですが、検査内容や処方薬によって変動します。海外では国や医療機関により大きく異なるため、事前に加入する海外旅行保険の補償内容を確認しておきましょう。
よくある質問
Q1: 海外旅行中に軽い下痢になった場合、市販薬だけで様子を見てもいいですか?
A1: 軽い水様便が1〜2日続く程度で、発熱や血便がなく、水分や食事もある程度とれている場合は、経口補水液などでこまめに水分と電解質を補給しながら、市販の整腸薬や一時的な下痢止めで様子を見ることがあります。ただし、38℃以上の発熱、血便、激しい腹痛、嘔吐で水分がとれない、小さなお子さんや高齢者・妊娠中の方の症状などがある場合は、自己判断で薬を飲み続けず、早めに医療機関を受診してください。
Q2: フライトのたびに便秘になります。出発前にできる対策はありますか?
A2: 長時間フライトでは、座ったまま水分を控えたり、トイレを我慢したりすることで便秘になりやすくなります。出発前から数日間は、食物繊維と水分を意識してとり、就寝・起床時間をできるだけ整えておきましょう。機内では、カフェイン飲料やアルコールをとり過ぎず、水やノンカフェインのお茶をこまめに飲むことが大切です。必要に応じて、医師・薬剤師と相談のうえ、普段から飲み慣れている便秘薬を少量用意しておくと安心です。
Q3: 屋台やストリートフードは、すべて避けたほうがよいのでしょうか?
A3: 屋台料理の安全性は、国や地域、店ごとに大きく異なります。衛生状態が十分でない地域では、しっかり加熱されていない肉や魚、生野菜、カットフルーツなどは旅行者下痢症のリスクを高めるとされています1,3。どうしても楽しみたい場合は、目の前でしっかり火を通しているものを選ぶ、人の出入りが多く回転の早い店を選ぶ、氷入りの飲み物や生ものは控えるなど、リスクを下げる工夫をしましょう。
Q4: プロバイオティクス(乳酸菌サプリ)は旅行前から飲んでおくと良いですか?
A4: プロバイオティクスは腸内環境のサポート目的で利用されることがありますが、旅行者下痢症の予防や治療に対する効果は、研究結果が一定せず、国際的なガイドラインでも「推奨するにはエビデンスが不十分」とされています2。そのため、「飲めば下痢を確実に防げる」と考えるのではなく、「普段から腸を整える一つの習慣」として、医師や薬剤師と相談しながら利用するのがよいでしょう。免疫力が低下している方や重い持病がある方は、自己判断での使用は避けてください。
Q5: 旅行先で便秘と下痢を繰り返すとき、どのタイミングで病院に行くべきですか?
A5: 便秘と下痢を繰り返していても、軽度で短期間であれば、食事や水分・生活習慣の見直しで落ち着くこともあります。しかし、1〜2週間以上症状が続く、血便が混じる、体重が減ってきている、夜間も腹痛や下痢で目が覚める、といった場合は、炎症性腸疾患などの病気が隠れている可能性もあります。旅行中に急激に悪化した場合や、帰国後も改善しない場合は、消化器内科などで早めに相談しましょう。
Q6: 子どもを連れて海外旅行に行く予定ですが、下痢が心配です。事前にできることは?
A6: 小さなお子さんは脱水になりやすく、旅行者下痢症は特に注意が必要です1。出発前に小児科で相談し、現地で使える経口補水液の準備や、年齢に応じた整腸薬・解熱剤などを処方してもらうと安心です。現地では、ミネラルウォーターやよく加熱された料理を選び、生ものや氷入りの飲み物は避けましょう。少しでも元気がなく、尿の量が明らかに減っていると感じた場合は、早めに医療機関を受診してください。
Q7: 日本国内の温泉旅行や出張でも、同じような対策は必要ですか?
A7: 日本国内であっても、長時間移動や生活リズムの変化、暴飲暴食などにより、便秘や胃もたれ、下痢が起こることはあります。水道水の衛生状態は国際的にも高い水準ですが、飲み過ぎ・食べ過ぎ・睡眠不足といった要因は、場所に関係なく腸に負担をかけます。国内旅行でも、こまめな水分補給、食べ過ぎに注意する、トイレを我慢しない、移動中に体を動かすなど、本記事で紹介した基本的な対策は役立ちます。
結論:この記事から持ち帰ってほしいこと
旅行中の胃腸トラブルは、「自分の体が弱いから」だけではなく、生活リズムや環境が急に変わることで、誰にでも起こりうるものです。感染性の旅行者下痢症を防ぐための飲食物の選び方や、便秘を防ぐための水分・食物繊維のとり方、トイレを我慢しない工夫など、できることを少しずつ積み重ねることで、リスクを大きく下げることができます。
一方で、高熱や血便、強い腹痛、重い脱水のサインなど、「セルフケアの範囲を超える症状」が出たときには、無理をせず、国内外を問わず医療機関を頼ることが大切です。この記事が、旅行をあきらめるのではなく、「準備と工夫で胃腸トラブルを減らしながら楽しむ」ための一助になれば幸いです。
この記事の編集体制と情報の取り扱いについて
Japanese Health(JHO)は、信頼できる公的情報源と査読付き研究に基づいて、健康・医療・美容に関する情報をわかりやすくお届けすることを目指しています。
本記事の原稿は、最新のAI技術を活用して下調べと構成案を作成したうえで、JHO編集部が一次資料(ガイドライン・論文・公的サイトなど)と照合しながら、内容・表現・数値・URLの妥当性を人の目で一つひとつ確認しています。最終的な掲載判断はすべてJHO編集部が行っています。
ただし、本サイトの情報はあくまで一般的な情報提供を目的としており、個々の症状に対する診断や治療の決定を直接行うものではありません。気になる症状がある場合や、治療の変更を検討される際は、必ず医師などの医療専門家にご相談ください。
記事内容に誤りや古い情報が含まれている可能性にお気づきの場合は、お手数ですが 運営者情報ページ</a >記載の連絡先までお知らせください。事実関係を確認のうえ、必要な訂正・更新を行います。
参考文献
-
厚生労働省検疫所. 旅行者下痢症. FORTH 海外で健康に過ごすために. https://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/dis09_05tra.html</a >(最終アクセス日:2025-11-26)
-
厚生労働省:統合医療情報発信サイト(eJIM). 旅行者のための補完療法/経口プロバイオティクス. https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c01/24.html</a > ならびに https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c02/09.html</a >(最終アクセス日:2025-11-26)
-
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Travelers’ Diarrhea. CDC Yellow Book 2026. https://www.cdc.gov/yellow-book/hcp/preparing-international-travelers/travelers-diarrhea.html</a >(最終アクセス日:2025-11-26)
-
Cleveland Clinic. Why You Get Constipated While Traveling. 2023. https://health.clevelandclinic.org/travel-constipation</a >(最終アクセス日:2025-11-26)
-
福岡市医師会成人病センター. 海外旅行後の下痢が続く?「旅行者下痢症」について知っておきましょう. 2025年. https://www.fzfc.jp/2025/02/04/2108/</a >(最終アクセス日:2025-11-26)

