この記事の科学的根拠
この記事は、引用元として明示された最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下に示すのは、実際に参照された情報源と、提示された医学的指導との直接的な関連性です。
- 国立精神・神経医療研究センター(NCNP): 本稿におけるPTSDの定義、症状、そして呼吸法などのセルフケアに関する指導は、日本の精神医療を主導する同センターが提供する情報に基づいています13。
- 厚生労働省(MHLW): 日本の公衆衛生を司る同省の公式見解や、PTSD治療マニュアル、専門家養成事業に関する情報は、国内の標準的な治療アプローチの基盤となっています431。
- 日本トラウマティック・ストレス学会(JSTSS): 日本のトラウマ専門家による学会のガイドラインは、特に薬物療法に関する推奨事項(ベンゾジアゼピン系薬剤の回避など)の重要な根拠となっています5。
- 米国精神医学会(APA): 世界的な診断基準であるDSMを作成しているAPAの定義や患者向け情報は、PTSDの国際的な理解と、患者を支えるための具体的なアドバイスの基盤です7。
- 世界保健機関(WHO): 複雑性PTSD(C-PTSD)の定義や、世界的な有病率に関するデータは、同機関の国際疾病分類(ICD-11)や世界精神保健調査に基づいています1220。
要点まとめ
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、個人の弱さではなく、圧倒的な出来事に対する脳の生物学的な「傷害」であり、誰にでも起こりうる治療可能な医学的状態です。
- 症状は「侵入(再体験)」「回避」「認知と気分の陰性の変化」「覚醒度と反応性の変化」の4つが中核ですが、長期・反復性のトラウマでは、より複雑な「複雑性PTSD(C-PTSD)」を発症することがあります。
- 治療の第一選択は、科学的根拠に基づく心理療法です。特に「持続エクスポージャー療法(PE)」や「認知処理療法(CPT)」、「EMDR」などが高い効果を証明されています。
- 薬物療法は補助的な役割を担い、SSRI(パロキセチン、セルトラリン)が日本で承認されています。一方で、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の使用は回復を妨げるため、厳に避けるべきです。
- 日本国内には、国立精神・神経医療研究センター、精神保健福祉センターなど、信頼できる相談先や支援機関が数多く存在します。助けを求めることは、回復への重要な第一歩です。
第1章 PTSDの定義:見えない傷の本質
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の理解は、日本国内の権威ある機関と国際的な基準との間に強固な一致が見られます。この事実は、日本で提供される情報や治療が世界標準の科学的根拠に基づいていることを示しており、読者にとって大きな安心材料となります。
1.1. 公式な定義:世界的な共通認識
日本の定義
日本の国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、PTSDを「死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態」と定義しています1。厚生労働省(MHLW)も同様に、災害、事故、犯罪などの強烈な精神的衝撃の後に長期にわたる恐怖感や睡眠障害などが続く障害であると説明しています4。日本トラウマティック・ストレス学会(JSTSS)のガイドラインも、この定義を支持しており、事故や犯罪、災害などの体験によって生じることを明記しています5。
国際的な定義
この日本の定義は、国際的な診断基準と完全に一致しています。米国精神医学会(APA)は、PTSDを「心的外傷となる出来事を経験または目撃した後に発症する可能性のある精神医学的疾患」と定義し7、メイヨー・クリニックも「極度の緊張または恐怖を感じる出来事を経験または目撃したことによって引き起こされる精神衛生上の状態」としています8。これらの定義はすべて、特定の強烈な出来事を引き金とする、特有の症状群から成る医学的な疾患であるという点で共通しています。
1.2. 決定的な違い:PTSDと正常なストレス反応
トラウマ体験後の苦痛は、人間としてごく自然な反応です。しかし、その反応がPTSDという診断に至るかどうかには、明確な境界線が存在します。この違いを理解することは、不必要な自己非難を減らし、専門的な助けを求めるべきタイミングを見極める上で極めて重要です。
トラウマとなる出来事を経験したほとんどの人は、短期間、PTSDに似た症状(例えば、出来事を思い出す、不安を感じるなど)を経験します8。これは「急性ストレス反応」と呼ばれ、多くの場合、時間と自己管理、周囲の支援によって回復していきます2。
一方、PTSDと診断されるのは、これらの症状が1ヶ月以上持続し、社会生活や職業生活、人間関係といった日常生活の重要な領域において、著しい苦痛や機能の障害を引き起こしている場合です2。精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-IV-TR)の基準でも、症状の持続期間が1ヶ月以上であることが明確に要求されています11。つまり、鍵となるのは症状の「持続性」と「重篤度」です。苦痛が時間と共に薄れるのではなく、生活を蝕み続ける状態、それがPTSDなのです。
表1:それはPTSDですか、それともトラウマに対する正常な反応ですか?
特徴 | 正常なストレス反応 | 心的外傷後ストレス障害(PTSD) |
---|---|---|
症状の持続期間 | 通常、数日から数週間で徐々に薄れていく8。 | 症状が1ヶ月以上持続する7。 |
症状の重篤度 | 苦痛はあるが、時間と共に管理可能になる。 | 症状が非常に強く、圧倒されるように感じられる8。 |
日常生活への影響 | 一時的に影響はあるが、徐々に通常の生活に戻れる。 | 仕事、学業、人間関係など、生活の重要な領域で著しい機能障害を引き起こす2。 |
感情の状態 | 悲しみ、怒り、不安は一時的である。 | 恐怖、罪悪感、恥、無力感が持続し、肯定的な感情を感じることが困難になる7。 |
改善への道筋 | 時間の経過、自己管理、家族や友人の支援で自然に回復することが多い7。 | 専門的な治療(心理療法や薬物療法)がなければ、症状が悪化または慢性化することが多い8。 |
1.3. 日本におけるPTSD:統計的概観
PTSDが日本でどれほど身近な問題であるかをデータで示すことは、この疾患に対する社会的な認識を高める上で不可欠です。そして、そのデータは、日本における「治療ギャップ」という深刻な課題を浮き彫りにします。
有病率
世界保健機関(WHO)の世界精神保健調査によると、日本におけるPTSDの生涯有病率(一生のうちに一度はPTSDを経験する人の割合)は1.1~1.6%と報告されています12。厚生労働省の助成を受けた研究でも、同様に生涯有病率は1.3%という結果が示されています14。日本の人口を約1億2500万人とすると、これは生涯に130万人以上がPTSDを経験することを示唆しています。
治療を受けている患者数
しかし、政府の公式統計によると、日本でPTSDのために継続的な医療を受けている患者数は約7,000人です15。この数字は、有病率から推計される潜在的な患者数と比べて、驚くほど小さいものです。この100万人以上の推計患者数と、実際に治療を受けている約7,000人との間には、99%以上もの巨大な隔たり、すなわち「治療ギャップ」が存在します。このギャップの背景には、精神疾患に対する根強い社会的偏見、自身の症状が治療可能な病気であるという認識の欠如、専門家を見つけることの難しさ、そして「自分の心が弱いからだ」という自己責任論などが考えられます。この記事の重要な目的の一つは、この沈黙の苦しみに光を当て、治療への橋渡しをすることです。
年齢層
特筆すべきは、20代から30代前半の若年層において、有病率が3.0~4.1%と、全年齢層の平均に比べて著しく高くなるという点です12。これは、この世代が特定のトラウマ(事故、対人暴力など)に遭遇しやすい可能性や、職業経歴や人間関係といった人生の大きな転換期におけるストレス、あるいは上の世代に比べて精神的な不調を報告することへの抵抗が少ないことなど、複合的な要因が絡んでいる可能性があります。
1.4. 疾患の発症と経過
PTSDの症状がいつ現れるかは、人によって異なります。多くの場合、症状はトラウマとなる出来事から3ヶ月以内に始まります8。しかし、数週間から数ヶ月、時には数年経ってから症状が現れることもあり、これは「遅発性」と呼ばれます2。DSM-IV-TRでは、ストレス要因から少なくとも6ヶ月以上経ってから症状が出現する場合、「発症遅延」という特定用語を用いて区別しています11。この時間的なずれは、本人が自身の症状と過去の出来事を結びつけることを困難にし、診断を遅らせる一因となることがあります。
第2章 PTSDの四つの顔:症状への深い探求
PTSDの症状は、単なる「悲しい記憶」ではありません。それは、個人の内面世界と外部世界との関わり方を根本から変えてしまう、複雑で多面的な四つの症状群から構成されています。これらの症状は、一見すると無関係に見えるかもしれませんが、実はトラウマから心を守ろうとする脳の懸命な、しかし不適切な適応努力の結果として理解することができます2。この視点は、症状を病理としてだけではなく、その背後にある意味を理解し、自己への非難を和らげる助けとなります。
2.1. 侵入症状(再体験症状):トラウマを再体験する
これはPTSDの中核的な症状であり、過去の出来事が現在の意識に насильственно 侵入してくる体験です。
- 望まない記憶の想起:トラウマ体験の記憶が、本人の意志とは無関係に、繰り返し鮮明に思い出されます1。
- フラッシュバック:最も強烈な再体験症状で、まるでトラウマ体験が「今、ここで」再び起きているかのように感じられます。五感(視覚、聴覚、嗅覚など)を伴うこともあり、強烈な恐怖とパニックを引き起こします1。
- 苦痛な悪夢:睡眠中、トラウマ体験に関連する内容の悪夢を繰り返し見ます1。
- 誘因への強い反応:トラウマを思い出させる人、場所、物、音などに遭遇すると、激しい心理的苦痛や、動悸、発汗、震えといった身体的反応が引き起こされます8。
これらの侵入症状は、脳がトラウマ体験を「過去の出来事」として適切に処理できず、未解決の脅威として認識し続けているために生じます。
2.2. 回避症状:痛みからの逃避
侵入症状がもたらす耐え難い苦痛から逃れるため、患者は無意識的あるいは意識的に、トラウマに関連するあらゆるものを避けようとします。この「回避」は、短期的には苦痛を和らげますが、長期的には回復を妨げる最大の要因となります。
- 内的な回避:トラウマに関する辛い記憶、思考、感情について考えたり、感じたりすることを意図的に避けようとします2。
- 外的な回避:トラウマを思い出させるきっかけとなる場所、活動、人物、会話、状況などを避けます2。例えば、交通事故の被害者が車の運転や事故現場に近づくことを避ける、暴行被害者が特定の場所や時間帯を避けるなどです。この回避行動は、患者の行動範囲を著しく狭め、社会的な孤立を深める原因となります。
2.3. 認知と気分の陰性の変化:感情的な重荷
トラウマは、世界や自分自身に対する見方を根本的に歪めてしまいます。
- 持続的な否定的な感情:恐怖、怒り、罪悪感、恥といった感情が、慢性的に心に居座ります8。特に、性暴力の被害者などは「自分が悪かったのではないか」という強い罪悪感に苛まれることがあります5。
- 記憶障害:トラウマ体験の重要な部分を思い出すことができなくなります。これは単純な物忘れとは異なり、あまりの衝撃から心を守るための解離的な健忘です7。
- 歪んだ認知:「私は悪い人間だ」「誰も信用できない」「世界は危険な場所だ」といった、自分、他者、世界に対する否定的で歪んだ信念を持ち続けます7。
- 興味の喪失と孤立感:以前は楽しめていた活動への関心を著しく失い、他者から切り離されている、疎遠になっていると感じます7。
- 感情の麻痺:喜びや愛情といった肯定的な感情を感じることができなくなります。これは、辛い感情を避けるために、感情全体に蓋をしてしまうような状態です2。
2.4. 覚醒度と反応性の著しい変化:常に警戒態勢にある身体
トラウマを体験した身体は、常に危険が迫っているかのような「闘争・逃走モード」に固定されてしまいます。これは、別の危機が起きた際に素早く反応できるようにという、心の防御反応が過剰に働いた結果と解釈できますが、心身を極度に疲弊させます2。
- 過覚醒:常に危険を警戒し、周囲に過敏になります2。
- 過剰な驚愕反応:些細な物音などにも、過度に驚いて飛び上がったりします8。
- いらだたしさや怒りの爆発:些細なことで激しい怒りを示したり、攻撃的になったりします8。
- 集中困難:一つのことに注意を向け続けることが難しくなります8。
- 睡眠障害:寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、ぐっすり眠れないといった問題が生じます8。
- 無謀・自己破壊的行動:飲酒運転や過剰な飲酒、危険な行為に及ぶことがあります8。
2.5. 中核症状を超えて:解離症状と身体症状
上記の四つの主要な症状群に加えて、一部の患者は特有の症状を経験します。
- 解離症状:米国精神医学会(APA)によると、PTSD患者の中には解離症状を伴う人々がいます7。
- 離人症:自分が自分の身体から離れて、まるで外から自分を観察しているかのように感じる状態。
- 現実感喪失:周囲の世界が現実ではない、まるで映画や夢の中にいるかのように感じる状態。
- 身体症状:PTSDは精神だけでなく、身体にも深刻な影響を及ぼします。急性の身体症状として、動悸、発汗、吐き気、震え、頭痛などが挙げられます。また、慢性的な問題として、高血圧、心疾患、慢性的な痛み、疲労感などとの関連も指摘されています10。これらの身体的な不調が、トラウマを思い出させるきっかけとなり、PTSD症状をさらに悪化させる悪循環に陥ることもあります。
第3章 トラウマの根源:原因と脆弱性
PTSDは、個人の「弱さ」ではなく、圧倒的な出来事に対する脳の生物学的な反応です。この章では、どのような出来事がPTSDを引き起こし、どのような要因が発症の危険性を高めるのか、そしてトラウマが脳にどのような物理的な変化をもたらすのかを科学的に解説します。この知識は、自己非難から解放され、PTSDを医学的な「傷害」として捉え直すための力となります。
3.1. トラウマとなる出来事の種類(PTSDの原因)
PTSDを引き起こす可能性のある出来事は多岐にわたります。重要なのは出来事の種類そのものよりも、その人が「生命の危機」や「深刻な傷害」、「性的暴力」を経験したか、あるいはそれを目撃したかという点です8。トラウマへの曝露には、以下の形態が含まれます16。
- 直接的体験:本人が直接、出来事を経験する。
- 目撃:他者に起こった出来事を直接目撃する。
- 伝聞:近親者や親しい友人に、暴力的または偶発的な出来事が起こったことを知る。
- 反復的曝露:職務上、トラウマとなる出来事の不快な詳細に繰り返し曝露される(例:救急隊員、警察官など)。
具体的な原因としては、以下のようなものが挙げられます4。
- 人為的災害:戦争・戦闘体験、テロ、暴力的襲撃(強盗、レイプ、拷問、誘拐)、児童虐待、家庭内暴力(DV)。
- 事故:深刻な交通事故、航空機事故、労働災害。
- 自然災害:地震、津波、洪水、火災。
- その他の出来事:生命を脅かすような重篤な病気の診断や治療。
特に、その出来事が予期せぬものであったり、長時間続いたり、逃げ場のない状況であったり、人為的なものであったり、多くの死者を出したり、子供が関わっていたりする場合に、PTSDを発症する可能性が高まります16。
3.2. 危険因子と保護因子
同じトラウマを経験しても、PTSDを発症する人としない人がいます。この違いには、個人の持つ様々な要因が関わっています。
危険因子(脆弱性を高めるもの)
- 過去のトラウマ体験:以前にトラウマ体験があったり、幼少期に虐待などの逆境体験があったりすると、新たなトラウマに対する脆弱性が増します7。
- 性別:女性は男性よりもPTSDを発症しやすいと報告されています7。
- 社会的支援の欠如:トラウマ体験後に家族や友人からの十分な支援が得られないことは、大きな危険因子です19。
- 精神疾患の家族歴:家族にうつ病や不安障害などの精神疾患を持つ人がいる場合、危険性が高まる可能性があります19。
- 社会的要因:疎外された集団(例:人種的少数派、LGBTQ+など)に属していることも危険因子として挙げられています7。
保護因子(回復を助けるもの)
危険因子の裏返しとして、十分な社会的支援を得られることや、ストレスに対する対処能力(レジリエンス)を持っていることなどが、発症を防ぐ保護因子となると考えられます8。重要なのは、トラウマを経験した誰もがPTSDになるわけではない、ということです7。
3.3. 傷ついた脳:アクセスしやすい概説
PTSDの症状は、脳の特定の領域における生物学的な変化によって引き起こされます。これは、PTSDが「気の持ちよう」の問題ではなく、脳のストレス反応システムが物理的に「傷害」を受けた状態であることを意味します。
- アドレナリン:危険に直面した際に分泌される「闘争・逃走」ホルモンです。通常、脅威が去ればそのレベルは正常に戻ります。しかし、PTSD患者の脳では、トラウマの鮮明な記憶がアドレナリンを常に高いレベルに保ち続けます。この高アドレナリン状態が、持続的な緊張感、いらだち、不眠といった過覚醒症状を引き起こすのです16。
- 海馬:脳の記憶処理を司る重要な部分です。アドレナリンのような高レベルのストレスホルモンは、海馬の正常な働きを阻害します。その結果、トラウマの記憶が「過去の出来事」として適切に整理・保管されず、まるで今も続いている脅威であるかのように感じられ、フラッシュバックや侵入的思考の原因となります16。研究によっては、PTSDによって海馬が最大で8%萎縮し、記憶障害を引き起こす可能性も示唆されています19。
- 扁桃体:脳の「恐怖中枢」や「警報装置」として機能する部分です。PTSDではこの扁桃体が過活動状態になり、些細な刺激に対しても過剰な恐怖反応や警戒反応を引き起こします。
このように、PTSDは脳の警報システム(扁桃体)が鳴り止まず、記憶の整理係(海馬)が機能不全に陥り、身体が常に緊張状態(高アドレナリン)にある、という生物学的な機能障害なのです。この理解は、回復への道を歩む上で、自らを責めるのではなく、適切な治療を求める動機付けとなります。
第4章 トラウマが慢性化するとき:複雑性PTSD(C-PTSD)の理解
PTSDの概念は、もともと戦争帰還兵など、比較的限定された期間のトラウマ体験から生まれました。しかし、幼少期の長期にわたる虐待や家庭内暴力など、慢性的・反復的なトラウマは、より深刻で広範な影響を人格形成そのものに及ぼします。この現実に応えるため、新たに「複雑性PTSD(Complex PTSD; C-PTSD)」という診断概念が確立されました。この章では、C-PTSDの定義、その中核的な特徴、そして日本の社会的文脈との関連について掘り下げます。
4.1. C-PTSDの定義:長期・反復性トラウマの影響
複雑性PTSDは、2019年に世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11版(ICD-11)に正式に導入された新しい診断名です20。これは、特に長期間にわたる虐待や暴力など、逃れることが困難な「捕囚状態」での反復的なトラウマ体験によって引き起こされる、より複雑な症状群を捉えるために作られました17。C-PTSDは、従来のPTSDの全症状に加えて、人格の中核部分にまで及ぶ深刻な変容を特徴とします。
4.2. C-PTSDの中核:自己組織化の障害(DSO)
C-PTSDをPTSDと区別する決定的な要素は、「自己組織化の障害(Disturbances in Self-Organization; DSO)」と呼ばれる三つの症状クラスターの存在です。これらは、自己の感覚、感情、そして他者との関係性における持続的かつ広範な困難を指します20。
- 感情調節の障害:感情の制御が極めて困難になります。些細なことで激しい怒りを感じたり、一度乱れた感情を落ち着かせることができなかったり、感情が麻痺したように感じたりします20。
- 否定的な自己概念:「自分は価値がない、汚れている、失敗者だ」といった、深く根差した否定的な自己認識を持ち続けます。持続的な恥や罪悪感に苛まれることも特徴です20。
- 対人関係の障害:他者との間に親密な関係を築き、維持することが困難になります。人を信頼できず、関係性を避けたり、逆に不安定な関係に巻き込まれたりします。深い孤独感や他者からの孤立感を常に感じています20。
4.3. C-PTSD、PTSD、境界性パーソナリティ障害(BPD)の比較
C-PTSDの症状は、PTSDや境界性パーソナリティ障害(BPD)と重なる部分があるため、診断上の混乱が生じることがあります。しかし、これらは明確に区別されるべき異なる状態です。
- C-PTSD 対 PTSD:C-PTSDは、PTSDの再体験、回避、脅威感の症状をすべて含んだ上で、さらに上記のDSO症状(感情調節、自己概念、対人関係の障害)が加わった状態です21。
- C-PTSD 対 BPD:両者ともに感情の不安定さや対人関係の問題を抱えますが、重要な違いがあります20。
- 自己概念:C-PTSDでは「持続的で安定して低い」自己評価が特徴ですが、BPDでは自己評価が理想化とこき下ろしの間を激しく揺れ動く「不安定さ」が特徴です。
- 対人関係:C-PTSDでは関係を「回避」する傾向が強いのに対し、BPDでは「激しく不安定」で、急速に親密になったかと思うと激しく対立するパターンが見られます。
- 自傷行為:自殺企図や自傷行為はBPDでより一般的に見られ、C-PTSDでは比較的少ないとされています。
表2:PTSD、複雑性PTSD(C-PTSD)、境界性パーソナリティ障害(BPD)の比較
特徴 | 心的外傷後ストレス障害(PTSD) | 複雑性PTSD(C-PTSD) | 境界性パーソナリティ障害(BPD) |
---|---|---|---|
中核となるトラウマ | 単一または限定的な期間のトラウマ体験(例:事故、災害、一度の暴行)が多い20。 | 長期的・反復的なトラウマ体験(例:児童虐待、DV、捕囚状態)17。 | 慢性的なトラウマが背景にあることが多いが、必須ではない。 |
主要な症状 | 再体験、回避、脅威感の3つの症状群21。 | PTSDの全症状に加え、自己組織化の障害(DSO)の3症状群(感情調節、自己概念、対人関係の障害)を伴う21。 | 感情の不安定さ、衝動性、不安定な自己像、空虚感、激しい対人関係が中核20。 |
自己概念 | トラウマに関連した否定的な信念を持つことがあるが、人格の中核は比較的保たれる。 | 「自分は価値がない、汚れている」といった、持続的で安定して否定的な自己概念20。 | 「理想化」と「こき下ろし」の間を揺れ動く、不安定で断片的な自己像20。 |
対人関係のパターン | 他者からの孤立感や疎外感を感じることがあるが、パターンは多様。 | 他者を信頼できず、親密な関係を築くことを一貫して「回避」する傾向が強い20。 | 見捨てられることへの強い恐怖から、他者との関係が「激しく不安定」になる20。 |
主な恐怖 | トラウマの再発や、トラウマを思い出させるものへの恐怖。 | 他者や世界そのものへの根源的な不信感と、自己の無価値感。 | 見捨てられることへの耐え難い恐怖(見捨てられ不安)。 |
4.4. 日本の文脈:発達性トラウマと「ひきこもり」
C-PTSDの概念は、日本の特定の社会問題を理解するための重要な臨床的視点を提供します。特に、「ひきこもり」という現象との関連性は注目に値します。
「ひきこもり」は、長期にわたる社会的撤退を特徴としますが、その背景には、機能不全の家庭環境、失敗を許さない社会の圧力、そして「出る杭は打たれる」という同調圧力といった、慢性的なストレス要因が存在することが指摘されています22。これらの環境は、発達期の子供にとって慢性的なトラウマとなり得ます。ひきこもりに見られる社会的孤立、深い羞恥心、自己否定といった特徴は、C-PTSDのDSO症状(対人関係の障害、否定的な自己概念)と著しく重なります。このことから、一部のひきこもりのケースは、単なる社会現象としてではなく、C-PTSDという医学的状態の表出として捉えることができるかもしれません。この視点は、ひきこもりに苦しむ人々を非難するのではなく、彼らの深い苦痛に共感し、適切な支援につなげるための新しい道を開く可能性があります。
さらに、日本とリトアニアの青年を対象とした画期的な文化横断研究では、日本の青年におけるC-PTSDの有病率が4.1%であることが示されました。そして、その発症には、累積的なトラウマ体験に加えて、「孤独感」と「家族の経済的困難」が特に強い予測因子であることが明らかになりました21。この結果は、日本の文化社会的文脈において、トラウマがもたらす対人関係の断絶や社会的孤立が、いかにC-PTSDというより深刻な病態の形成に深く関わっているかを物語っています。したがって、日本におけるC-PTSDへの取り組みは、個人の内面への治療だけでなく、孤独感を和らげ、社会的なつながりを再構築する支援が不可欠であることを示唆しています。
第5章 診断への道筋:日本で助けを求める
PTSDの症状に苦しんでいても、助けを求めることには多くの障壁が伴います。この章では、そうした障壁を乗り越え、日本の医療システムの中でどのようにして適切な診断と支援にたどり着くことができるか、具体的な道筋を示します。正しい情報を知ることは、恐怖を和らげ、回復への第一歩を踏み出す勇気を与えてくれます。
5.1. 助けを求める必要性の認識:障壁を乗り越える
多くの患者は、自身の症状を「性格の弱さ」や「気合が足りない」せいだと考え、一人で抱え込んでしまいます5。しかし、PTSDは意志の問題ではなく、異常な出来事に対する正常で理解可能な反応です。この認識の転換が、回復の出発点となります。
特に重要なメッセージは、「あなたが悪いのではない」ということです5。暴力や虐待の被害者は、しばしば「自分に原因があったのではないか」という罪悪感に苛まれます。しかし、トラウマの原因は加害者にあり、被害者が自らを責める必要は一切ありません。このことを理解し、受け入れることが、回復プロセスにおいて不可欠です。
また、治療者との対話においても、患者は自分のペースを守る権利があります。日本の専門家向け指針では、治療者が患者から無理にトラウマ体験を聞き出すことを固く禁じています5。これは、準備ができていない状態で無理に話すことが、さらなる心の傷(二次被害)になりかねないからです。信頼できる治療者は、患者が自ら話せるようになるまで、共感的に待ち、安全な環境を提供します。このことを知っておくことで、「すべてを話さなければならない」という恐怖心なく、安心して専門家の扉を叩くことができます。
5.2. どこへ行けばよいか:日本の制度を理解する
PTSDかもしれないと思ったら、どこに相談すればよいのでしょうか。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などの専門機関は、状況に応じた相談先を明確に示しています3。
- 犯罪被害の場合:
- 警察の犯罪被害相談窓口
- 各都道府県にある犯罪被害者支援センター
- 地方自治体の相談窓口
- 災害被害の場合:
- 被災地に派遣される災害派遣精神医療チーム(DPAT)など、救援チーム内の精神科医や公認心理師
- 一般的な相談:
- 各都道府県・政令指定都市に設置されている精神保健福祉センター
- 精神科または心療内科の医療機関
特に、性的被害や家庭内虐待など、他人に話しにくいトラウマの場合は、一人で抱え込まず、信頼できる専門家につながることが重要です3。近年、厚生労働省はPTSDに関する専門家を養成するための研修事業(PTSD対策専門研修)を積極的に行っており、専門知識を持つ医療従事者の数は増えつつあります23。
5.3. 診断プロセス:何が行われるのか
PTSDの診断は、専門家による慎重な評価に基づいて行われます。診断は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)などの国際的な診断基準に沿って進められます26。
プロセスは通常、以下の段階で構成されます。
- トラウマ体験の確認:まず、診断基準を満たすようなトラウマとなる出来事が存在したかを確認します。ただし、前述の通り、詳細を無理に聞き出すことはありません5。
- 症状の評価:次に、侵入症状、回避症状、認知と気分の陰性の変化、覚醒度と反応性の変化という4つの症状群が存在するかを、面接や質問票を通して評価します。
- 持続期間と機能障害の確認:症状が1ヶ月以上続いており、それによって日常生活に著しい支障が出ているかを確認します11。
この評価を補助するために、日本でも保険適用されている専門的な心理検査が用いられることがあります。
- CAPS(PTSD臨床診断面接尺度):専門家が面接形式で行う、PTSD診断の「ゴールドスタンダード」とされる評価尺度です。症状の有無や重症度を詳細に評価します27。
- IES-R(改訂出来事インパクト尺度):患者自身が記入する質問票形式の評価尺度で、PTSD症状のスクリーニングや重症度の測定に広く用いられます27。
これらのプロセスを経て、専門家は総合的にPTSDの診断を下します。
第6章 傷を癒す:科学的根拠に基づく心理療法
PTSDの治療において、最も効果的で、回復の根幹をなすのが心理療法です。薬物療法が症状を和らげる「対症療法」であるのに対し、心理療法はトラウマ記憶そのものに働きかけ、認知や感情の歪みを修正する「根本治療」を目指します。この章では、科学的に有効性が証明されている主要な心理療法について、その原理と実践を深く掘り下げます。
6.1. ゴールドスタンダード:なぜ心理療法が第一選択なのか
PTSD治療に関する世界の主要な指針は、一貫して心理療法を第一選択として推奨しています。例えば、米国の退役軍人省(VA)と国防総省(DoD)が共同で作成した最新の2023年版臨床実践指針では、薬物療法よりも個人心理療法を優先すべきであると明確に述べられています。その理由は、心理療法の方がより大きく、持続的な改善効果をもたらすためです28。また、家庭医向けの指針でも、心理療法が初期治療として推奨されています18。
国際的な研究評価機関であるコクラン共同計画の系統的レビューでも、トラウマに焦点を当てた心理療法の有効性が強力に支持されています30。これらの科学的根拠が、心理療法をPTSD治療の「ゴールドスタンダード」たらしめているのです。
6.2. トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)
最も有効性が確立されている心理療法は、「トラウマ焦点化認知行動療法(Trauma-Focused Cognitive Behavioral Therapy; TF-CBT)」と呼ばれるアプローチ群です。これは、トラウマ体験そのものに安全な形で向き合い、それによって引き起こされた不適切な思考パターンや行動を変化させることを目的とします18。TF-CBTには、以下に詳述する持続エクスポージャー療法(PE)や認知処理療法(CPT)などが含まれます。
6.3. 詳細解説:持続エクスポージャー療法(PE)
持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure; PE)は、PTSD治療において極めて高い効果が実証されている代表的なTF-CBTです。日本では、厚生労働省が詳細な治療マニュアルを公開しており31、その内容を知ることは、治療への不安を和らげ、主体的に取り組む助けとなります。
原理:PE療法の根底には、「回避がPTSDを維持させる」という考え方があります。トラウマを思い出させるものを避ければ避けるほど、恐怖は強化され、脳はトラウマ記憶を処理する機会を失います。PEでは、治療者の支援のもと、安全な環境で意図的にトラウマ記憶や回避してきた状況に「直面(エクスポージャー)」します。これにより、恐怖に「慣れ(馴化)」、トラウマ記憶がもはや現在の脅威ではないことを脳が学習し、不適切な信念(例:「私は無力だ」「世界は危険だ」)が修正されていきます31。
主要な構成要素:PEは通常、週1回90分のセッションを10~15回行います。その内容は構造化されており、主に以下の要素で構成されます31。
- 心理教育:PTSDとPE療法のメカニズムについて学び、治療の全体像を理解します。
- 呼吸再調整法:不安やパニックを制御するための呼吸法を習得します。これは治療中の苦痛を乗り越えるための重要な技能となります。
- 現実エクスポージャー:安全であるにもかかわらず避けてきた場所や状況(例:事故現場の近く、人混みなど)のリスト(不安階層表)を作成し、不安の低いものから段階的に、繰り返し直面する練習を宿題として行います。
- 想像エクスポージャー:治療セッションの中で、目を閉じて、トラウマ体験を現在形で、できるだけ詳細に声に出して語ります。これを繰り返し行うことで、トラウマ記憶に対する情動的な反応が徐々に低下し、記憶が整理されていきます。セッションは録音され、毎日聴くことが宿題となります。
- 処理:想像エクスポージャーの後に、その体験で何を感じ、何を考えたか、どのような変化があったかを治療者と話し合います。これにより、認知の再構成が促進されます。
このプロセスを段階的に進めることで、患者は失われていた制御感覚を取り戻し、トラウマに支配された生活から抜け出す力を得ることができます。
6.4. 詳細解説:認知処理療法(CPT)
認知処理療法(Cognitive Processing Therapy; CPT)は、トラウマが引き起こした思考の歪みに焦点を当てるTF-CBTです7。CPTでは、トラウマ体験によって生じた「行き詰まった考え」(例:「あの時もっと抵抗していれば防げたはずだ(罪悪感)」「もう誰も信用できない(不信感)」)を特定します。そして、その考えが本当に事実に基づいているのか、他の考え方はないのかを、治療者と共に検証していきます。書字による曝露(トラウマ体験について書く)も用いられます。このプロセスを通じて、患者はより現実的でバランスの取れた認知を身につけ、トラウマに関連する苦痛な感情(特に、恥や罪悪感)を軽減させていきます7。
6.5. 詳細解説:眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)
眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing; EMDR)は、独特なアプローチを用いる効果的な心理療法です30。
原理:EMDRの理論では、トラウマ記憶は脳内で適切に処理されず、「生々しい」形で凍結されていると考えられています。EMDRは、この凍結された記憶の再処理を促進することを目指します。
プロセス:患者は、治療者の指示に従って、トラウマ記憶の最も辛い部分に意識を向けます。同時に、治療者の指の動きを目で追う、左右交互に聞こえる音を聞く、といった左右交互の刺激(両側性刺激)を受けます17。この両側性刺激が、脳の情報処理システムを活性化させ、トラウマ記憶をより適応的な神経ネットワークに統合するのを助けると考えられています。その結果、記憶そのものが消えるわけではありませんが、それに伴う苦痛な感情や身体感覚が著しく軽減されます32。
6.6. 複雑性PTSD(C-PTSD)の治療:段階的アプローチ
長期的なトラウマによって引き起こされるC-PTSDの治療には、より慎重で段階的なアプローチが求められます。上記のトラウマ焦点化療法を適用する前に、まず安全を確保し、基本的な対処技能を身につける期間が必要です。国際的な指針では、一般的に以下の3段階モデルが推奨されています20。
- 第1段階:安全の確保と安定化:この段階の目標は、現在の生活における安全を確保し、感情の波や衝動性を制御する技能を身につけることです。感情調節技能、対人関係技能、ストレス対処法などを学び、心身の状態を安定させます。
- 第2段階:トラウマ記憶の処理:心身が十分に安定したら、PE、CPT、EMDRなどのトラウマ焦点化療法を、C-PTSDの特性に合わせて慎重に修正しながら適用し、トラウマ記憶の処理に取り組みます。
- 第3段階:統合とリハビリテーション:トラウマの処理が進んだ後、新たな自己像や対人関係のあり方を日常生活に統合し、社会生活への再参加を目指します。治療で得たものを確かなものにし、未来に向けた人生を再構築していく段階です。
この段階的アプローチは、複雑な傷を抱える患者が、圧倒されることなく安全に回復の道を歩むために不可欠です。
第7章 PTSD治療における薬物療法の役割
PTSDの治療において、薬物療法は重要な役割を果たしますが、その位置づけは心理療法とは異なります。薬は、トラウマ記憶を根本的に解決する「治療薬」というよりも、耐え難い症状を和らげ、患者が心理療法に効果的に取り組める状態を作るための「補助的な道具」と理解することが重要です18。この章では、日本で承認されている薬、国際的に推奨される薬、そして使用を避けるべき薬について、科学的根拠に基づいて解説します。
7.1. 薬物の役割:補助的な道具
PTSD患者は、しばしば重度のうつ症状や不安、不眠に悩まされます。これらの症状が強すぎると、心理療法に必要な集中力やエネルギーを維持することが困難になります。薬物療法は、こうした併存する症状を軽減することで、心の状態を安定させ、患者がトラウマと向き合うための土台を整える手助けをします33。しかし、薬物療法だけでPTSDが完治することは稀であり、あくまで心理療法と組み合わせることで最大の効果が期待できます。
7.2. 日本で承認されている第一選択薬:SSRI
PTSDの薬物療法において、国際的に最も広く推奨され、有効性が確立されているのが「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」です33。SSRIは、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの濃度を高めることで、不安や気分の落ち込みを和らげる効果があります17。
日本において、PTSDに対して保険適用が承認されているSSRIは、以下の2剤のみです33。
これらの薬による治療は、PTSDの治療経験が豊富な専門医の監督のもとで行われることが望ましく、効果の発現には数週間かかる場合があるため、定期的な診察を通じて効果と副作用を確認しながら、投与量を慎重に調整していく必要があります26。
7.3. 厳重な注意または回避が必要な薬剤
PTSD治療において、特定の薬剤の使用は効果がないばかりか、かえって害になる可能性があるため、専門家の間では使用を避けるべきだという強い共通認識があります。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬に関する極めて重要な警告
PTSDの治療において、ベンゾジアゼピン系の薬剤(一般的に「抗不安薬」や「睡眠薬」として処方されるもの)は使用すべきではありません。これは、日本の専門家向け指針(JSTSS)5、米国のVA/DoD指針29、そしてWHOの指針43など、国内外の権威ある指針で一貫して強調されている極めて重要な点です。
その理由は以下の通りです。
- 中核症状への無効性:ベンゾジアゼピンは、PTSDの中核症状である再体験や回避には効果がありません5。
- 依存性の危険性:心理的な依存を生じやすく、乱用につながる危険性が高いです5。
- 心理療法の妨害:恐怖や不安に直面し、それを乗り越えるという心理療法のプロセスを、薬で感情を麻痺させることによって妨げてしまう可能性があります。
- 症状の悪化:長期的には、抑うつや怒りの制御の問題を悪化させる可能性も指摘されています。
一時的な不安の緩和のために安易に使用することは、長期的な回復を著しく妨げる危険性があるため、厳に慎むべきです。
抗精神病薬
コクランの系統的レビューでは、抗精神病薬をPTSDの主な治療法として使用することに利益があるという科学的根拠は見つかっていません35。
7.4. その他の薬理学的アプローチ
上記の薬剤以外にも、特定の症状に対して使用が検討されることがあります。
- プラゾシン:もともとは高血圧の治療薬ですが、PTSDに伴う悪夢に対して有効である可能性が複数の指針で示唆されており、補助的に使用されることがあります29。
薬物療法は複雑であり、個々の患者の状態に応じて専門家が判断するものです。自己判断で薬を開始したり中断したりせず、必ず主治医と十分に相談することが不可欠です。
第8章 回復への包括的な道筋
専門的な治療と並行して、日常生活の中で自分自身で取り組める自己管理戦略は、回復過程を加速させ、再発を防ぐための重要な基盤となります。トラウマによって失われがちな自己制御感覚を、日々の小さな実践を通じて取り戻していくことは、非常に大きな力となります。この章では、科学的にも支持されている具体的な自己対処法と、健康的な生活様式の重要性について解説します。
8.1. 実践可能なセルフヘルプ戦略
専門家の治療を受けるまでの間や、治療と並行して、日々の苦痛を和らげるために即座に実践できる技術があります。
- 呼吸再調整法:不安やパニックが高まったとき、最も手軽で効果的な対処法の一つが呼吸の制御です。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)や厚生労働省のPE療法マニュアルでも推奨されている方法は、ゆっくりと息を吐くことに集中するものです3。
実践方法:- 楽な姿勢で座るか、横になる。
- 鼻からゆっくりと4秒かけて息を吸い込む。
- 口をすぼめて、ろうそくの火を消すように、6~8秒かけてゆっくりと息を吐き出す。
- これを数分間繰り返す。
この方法は、心拍数を落ち着かせ、過剰に興奮した交感神経系を鎮める効果があります。
- グラウンディング技術:フラッシュバックや解離の感覚に襲われ、現実感が失われそうになったときに、意識を「今、ここ」に戻すための技術です。
実践方法(5-4-3-2-1法):- 5:目に見えるものを5つ、心の中で数える(例:机、窓、ペン、本、壁の色)。
- 4:身体で感じられるものを4つ、意識する(例:椅子がお尻に触れる感覚、足が床についている感覚、服の肌触り、風)。
- 3:聞こえる音を3つ、耳を澄まして聞く(例:空調の音、遠くの車の音、自分の呼吸音)。
- 2:嗅げる匂いを2つ、探してみる(例:コーヒーの香り、空気の匂い)。
- 1:味わえるものを1つ、意識する(例:口の中に残る味、水を一口飲む)。
- マインドフルネス:マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)は、PTSD治療において有効性を示唆する科学的根拠があるアプローチです29。これは、判断を下さずに、現在の瞬間の思考、感情、身体感覚に注意を向ける練習です。瞑想アプリやオンラインのプログラムを利用して始めることができます。
これらの戦略は、圧倒的な感情の波に飲み込まれず、自分自身で対処できるという感覚、すなわち自己効力感を育む上で非常に有効です。
8.2. 生活様式の役割
心と身体は密接につながっており、健康的な生活習慣は精神的な回復力を高める上で不可欠です。
- 食事:PTSDに特化した食事療法はありませんが、バランスの取れた健康的な食事は、ストレス対処能力を高めるのに役立ちます。ストレス下では、高カロリー食や甘いものに走りやすくなりますが、こうした不健康な食生活は気分を不安定にし、他の健康問題を引き起こす可能性があります19。栄養価の高い食事を心がけることは、心身の安定につながります。
- 運動:定期的な運動は、ストレスホルモンを減少させ、気分を改善する効果があることが知られています。散歩、ジョギング、ヨガなど、楽しめる活動を生活に取り入れることが推奨されます10。
- 不健康な対処行動の回避:アルコールや薬物、過度の喫煙に頼ることは、短期的には苦痛を麻痺させるかもしれませんが、長期的にはうつ病や不安を悪化させ、回復を著しく妨げます16。これらの物質への依存は、新たな問題を生み出すだけです。苦しいときこそ、より健康的な対処法(前述の自己対処戦略や、信頼できる人との対話など)に切り替える意識が重要です。
第9章 PTSDに苦しむ大切な人を支える方法
家族や友人など、身近な人がPTSDに苦しんでいるとき、どのように関わればよいのか戸惑うのは当然のことです。支援者の存在は、本人の回復にとって計り知れない力となり得ますが、不適切な関わりはかえって相手を傷つけてしまうこともあります。この章では、米国精神医学会(APA)などの専門機関の助言に基づき、効果的な支援の「すべきこと」と「すべきでないこと」を具体的に解説します。
9.1. 支援の「すべきこと」と「すべきでないこと」
効果的な支援の鍵は、「問題を解決しようとする」のではなく、「安全な避難場所になる」ことです。APAの助言を基に、具体的な行動指針を以下にまとめます7。
すべきこと
- ただ、そばにいる:最も強力な支援は、ただ存在し、関心を示し、受容的な態度でそばにいることです。
- 判断せずに聴く:相手が話したいときには、助言をしたり、自分の意見を言ったりせず、ただ共感的に耳を傾けます。「聴く」という行為そのものが、相手に大きな安心感を与えます。
- 相手のペースを尊重する:トラウマについて話すことを強要してはいけません。「話したくなったら、いつでも聴く準備ができている」という姿勢を伝え、相手が準備できるのを待ちます5。
- PTSDについて学ぶ:本人や家族がPTSDについて学ぶことは、何が起きているのかを理解し、より効果的な支援につながります。信頼できる情報源(本稿で紹介する機関など)から知識を得ることが重要です。
- 健康的な生活を励ます:一緒に散歩に行く、健康的な食事を作るなど、さりげなく健康的な生活様式を促します。
- 専門家の助けを優しく勧める:非難するのではなく、「専門家の助けを借りることは、あなたの強さの証だ」というメッセージと共に、受診を優しく、しかし継続的に勧めます。
すべきでないこと
- 「問題を解決」しようとしない:良かれと思って助言をしたり、解決策を提示したりすることは、相手に「自分の苦しみを理解されていない」と感じさせることがあります。
- 経験を軽視する:「そんなこと、たいしたことないよ」「いつまでも引きずらないで」といった言葉は、相手の苦痛を否定し、深く傷つけます5。
- 無理に話させようとする:トラウマについて話すことは、本人にとって非常に苦痛な作業です。無理強いは二次被害につながります。
- 驚いたり、動揺したりする:相手が怒りを爆発させたり、過敏な反応を示したりしても、それは病気の症状であることを理解し、冷静に対応するよう努めます。
9.2. 自殺について話すこと
大切な人が自殺を考えているのではないかと恐れるのは、非常につらいことです。「自殺について尋ねたら、かえってその考えを植え付けてしまうのではないか」と心配する人がいますが、研究はその逆を示しています。自殺について尋ね、話し合うことは、危険性を減少させます10。
もし相手が自殺念慮を打ち明けてくれたら、まずは慌てず、判断せずにその苦しい気持ちを聴き続けてください。そして、一人で抱え込まず、すぐに専門の相談窓口に助けを求めてください。日本の「いのちの電話」や、厚生労働省が支援するSNS相談窓口など、24時間対応の危機介入ホットラインがあります。相手と一緒に電話をかけ、スピーカーフォンにして専門家のアドバイスを共に聞くことも有効です。
9.3. 支援者のためのケア
PTSD患者を支えることは、支援者自身の心身にも大きな負担をかけます。支援者が燃え尽きてしまっては、長期的な支援は不可能です。支援者自身が自分の健康を守ることを、決して怠ってはいけません10。
- 自分の時間を持つ。
- 信頼できる友人に自分の気持ちを話す。
- 必要であれば、支援者自身もカウンセリングを受ける。
- 支援には限界があることを受け入れ、すべてを一人で背負わない。
支援者自身の健康が、結果的に大切な人の回復を支える最も重要な基盤となるのです。
表3:日本におけるPTSD支援のための主要なリソース
機関名 | 説明 | 提供内容 | 連絡先/リンク |
---|---|---|---|
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)こころの情報サイト | 日本の精神医療をリードする国立研究機関が運営する、信頼性の高い情報サイト。 | PTSDの定義、症状、治療法に関する詳細で分かりやすい解説。呼吸法の実技動画など。 | kokoro.ncnp.go.jp |
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス | 厚生労働省が運営する、国民向けのメンタルヘルス総合情報サイト。 | こころの病気に関する基本的な情報、相談窓口の案内、支援サービスの紹介。 | mhlw.go.jp/kokoro |
日本トラウマティック・ストレス学会(JSTSS) | 日本におけるトラウマ研究・臨床の専門家団体。 | 専門家向けガイドラインの発行、研修会の案内、一般向けの啓発活動。 | jstss.org |
精神保健福祉センター | 各都道府県・政令指定都市に設置されている、地域の精神保健福祉の中核機関。 | 専門家による電話・面接相談、医療機関の紹介、デイケアなど。 | 各自治体のウェブサイトで検索。 |
犯罪被害者支援センター | 犯罪被害に遭われた方とその家族を支援する民間の非営利団体。 | 電話・面接相談、警察や病院への付き添い、自助グループの運営など。 | 全国被害者支援ネットワーク |
よくある質問
PTSDの治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
薬だけの治療でPTSDは治りますか?
子どももPTSDになりますか?
トラウマ体験を話すのが怖いのですが、治療は可能ですか?
結論
本稿は、PTSDという「心の傷」が、個人の弱さではなく、治療可能な医学的状態であることを、国内外の膨大な科学的根拠に基づいて示してきました。
最も重要な要点を再確認します。
- PTSDは、圧倒的な出来事に対する脳の生物学的な傷害であり、誰にでも起こりうるものです。決してあなたのせいではありません。
- 回復への道は存在し、その中心には、持続エクスポージャー療法(PE)、認知処理療法(CPT)、EMDRといった、有効性が証明された心理療法があります。
- 日本国内には、国立精神・神経医療研究センターや精神保健福祉センターをはじめとする、信頼できる専門機関や支援リソースが数多く存在します。
トラウマからの回復は、一直線の道のりではないかもしれません。しかし、それは間違いなく歩む価値のある旅です。正しい知識を武器に、勇気を持って専門家の扉を叩くことで、心の傷に支配された過去から解放され、自分らしい未来を取り戻すことは十分に可能です。この記事が、その長くとも希望に満ちた旅路の、信頼できる第一歩となることを切に願います。
この記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。健康上の懸念がある場合や、ご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。
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