【足のしもやけ】冬に悪化する原因と自分でできる対策・受診の目安

第1部：しもやけの基本と日常生活の見直し

まずは、しもやけ（凍瘡）がどのようなメカニズムで起こるのか、そして日常生活のどんな習慣が悪化要因になりやすいのかを整理します。「もともと冷え性だから」とあきらめてしまう前に、簡単に見直せるポイントがないか一緒にチェックしてみましょう。

1.1. しもやけ（凍瘡）とは？基本的なメカニズム

しもやけ（凍瘡）は、いわゆる「霜焼け」のことで、冬の寒さや湿気・寒暖差が引き金となり、手足の指先や耳たぶ、頬など、体の末梢部分の小さな血管に炎症が起こる状態です。日本臨床皮膚科医会の解説では、気温が4〜5℃で、1日の気温差が10℃以上になるとしもやけを起こしやすいとされています。¹²

冷たい空気や水にさらされると、指先や足先の小動脈・静脈、毛細血管がキュッと縮み、血流が一時的に悪くなります。その後、暖かい室内に入るなどして急に温まると、今度は血管が一気に開き、冷えてダメージを受けた皮膚に温かい血液がどっと流れ込みます。その結果、血液がうっ滞して周囲に染み出し、赤紫色の腫れやかゆみ、痛みが生じる――これがしもやけのイメージです。²⁵

症状は数時間〜数日遅れて出ることもあり、赤紫色のむくんだような腫れ、ジンジンする痛かゆさ、触るとやや硬く感じるしこり、水ぶくれやただれなどが典型的です。多くの場合、気温が上がってくる春先とともに自然に改善しますが、寒さが続くと同じ場所に繰り返し出たり、別の指にも広がることがあります。³⁴

なお、似た症状を起こすものとして「凍傷（とうしょう）」「レイノー現象」があります。凍傷はもっと強い寒さで起こり、皮膚が白〜灰色になって感覚がなくなったり、黒く壊死することもある重い状態です。一方レイノー現象は、寒さやストレスで指先が「白→紫→赤」と変色する発作を繰り返すもので、膠原病など全身の病気に伴うことがあります。しもやけと似て見えても、原因や対処法が異なるため、自己判断で放置しないことが大切です。⁴⁶

1.2. 悪化させてしまうNG習慣と生活シーンの例

しもやけは「ただ寒いだけ」で起こるのではなく、寒さとともに日常のちょっとした習慣が重なって悪化することが多いと考えられています。次のような行動は、できるだけ避けたいNG習慣です。

• 冷えた足を一気に熱で温める：ストーブやファンヒーターの吹き出し口、電気ストーブの直前、熱いお湯に足を入れるなどは、血管の急激な拡張を招き、しもやけを悪化させる要因になります。²⁸
• 濡れた靴・靴下をそのまま履き続ける：雨や雪で靴の中が湿った状態で長時間過ごすと、「冷え」と「湿気」が重なり、しもやけが起こりやすくなります。
• きつい靴・靴下で足先を締め付ける：サイズの合わない靴や、ゴム口がきつい靴下・タイツは、血流を妨げて悪化要因になります。³
• 同じ姿勢でじっとしている時間が長い：デスクワークや立ち仕事で長時間動かないと、足先の血行が低下し、しもやけが出やすくなります。
• かゆくて強くかきむしる・こする：皮膚を傷つけると、潰瘍や感染のリスクが高まり、治りも悪くなります。特に足先は靴でこすれやすく、傷が深くなりやすい部位です。⁷⁸
• 喫煙・過度のカフェイン摂取：喫煙やカフェインは末梢血管を収縮させる作用があり、血流を悪くすることでしもやけを悪化させる可能性があります。⁹¹⁰

思い当たる習慣がある場合は、まずそこから少しずつ変えていくだけでも、症状の軽減や再発予防につながることがあります。

第2部：身体の内部要因 — 血行不良・体質・隠れた不調

生活習慣を見直してもなかなか改善しない、毎年同じ場所に強いしもやけができる場合は、体質や基礎疾患など「身体の内側の要因」が影響していることもあります。ここでは、しもやけになりやすい人の特徴や、隠れた病気のサインについて整理します。

2.1. どんな人がしもやけになりやすい？

日本の皮膚科関連サイトや海外の専門機関の報告では、しもやけになりやすい傾向がある人として、次のような特徴が挙げられています。³⁴⁶⁹

• 子ども・若年者：外遊びが多く、寒さに長時間さらされることが多いため、しもやけが起こりやすいとされています。
• 女性：男性と比べて末梢循環が弱い傾向があり、やせ型の女性では特にしもやけが多いと報告されています。⁶
• やせ型・とても細い体型の人：皮下脂肪が少ないため、体温を保持しにくく、寒さの影響を受けやすくなります。
• もともと手足が冷えやすい人（冷え性）：末梢の血管が収縮しやすく、しもやけを繰り返すことがあります。
• 喫煙者：ニコチンが血管を収縮させることで、しもやけの悪化因子になると考えられています。⁹¹⁰
• 糖尿病・脂質異常症など、血管障害のリスクがある人：血流が悪くなりやすく、傷が治りにくいことから、しもやけが重症化しやすいとされています。³
• レイノー現象や膠原病（全身性エリテマトーデスなど）を持つ人：いわゆる「凍瘡様紅斑」と呼ばれる、しもやけに似た皮疹が出ることがあり、寒さがきっかけとなる場合もあります。⁴

自分がこれらのリスクに当てはまる場合、しもやけが出たときには「ただの寒さだけではなく、体質や基礎疾患も関係しているかもしれない」と意識しておくとよいでしょう。

2.2. 血行不良・貧血・栄養バランスの影響

末梢の血流が悪くなる背景には、単なる冷えだけでなく、貧血や低血圧、栄養バランスの乱れ、慢性的な運動不足などが関わっていることもあります。特に、鉄欠乏性貧血やビタミン・ミネラル不足があると、酸素や栄養が末梢組織まで十分届かず、冷えやしもやけを自覚しやすくなる場合があります。

しもやけそのものは皮膚の病変ですが、その背景に「疲れやすい」「息切れがする」「立ちくらみが多い」など全身的な症状がある場合は、一般内科やかかりつけ医で血液検査を含めたチェックを受けることも大切です。

2.3. しもやけに似た症状を起こす病気

ロート製薬などの解説によると、しもやけとよく似た「赤く腫れた発疹」が出る病気として、全身性エリテマトーデス（SLE）やシェーグレン症候群などの自己免疫疾患が挙げられています。これらでは、寒さをきっかけに手足の指に「凍瘡様紅斑」と呼ばれるしもやけ様の発疹が出ることがあり、顔の蝶形紅斑や脱毛、臓器障害など全身の症状を伴うこともあります。⁴

「しもやけだと思っていたら、実は別の病気だった」というケースもないわけではありません。特に、

• 毎年強いしもやけを繰り返す
• 暖かい季節にも似た症状が続く
• 倦怠感・関節痛・発熱・体重減少など全身症状を伴う
• 顔や体のほかの場所にも赤い発疹が出る

といった場合は、「ただのしもやけ」と自己判断せず、皮膚科や膠原病内科・リウマチ科などで精査してもらうことをおすすめします。⁴⁶

第3部：専門的な診断が必要な疾患

セルフケアや生活習慣の調整だけでは改善しない場合や、しもやけに見えて実は別の病気が隠れている場合には、専門的な検査や治療が必要になります。ここでは、代表的な疾患と、どのような特徴があるのかを簡単に整理します。

3.1. 全身性エリテマトーデス（SLE）などの自己免疫疾患

全身性エリテマトーデス（SLE）は、若い女性に多い自己免疫疾患で、免疫が自分の体を攻撃してしまうことで、皮膚だけでなく腎臓・肺・消化管・脳など多くの臓器に症状が出る病気です。手足の指にしもやけに似た赤い腫れ（凍瘡様紅斑）が出ることがあり、寒さが引き金になる場合もあります。⁴

SLE を疑うサインとしては、

• 顔に蝶の羽のような形の赤い発疹（蝶形紅斑）が出る
• 髪が抜けやすい、全身の倦怠感が強い
• 関節が痛む、熱が続く
• しもやけ様の症状が繰り返し全身に出る

などがあります。こうした症状がある場合は、皮膚科や膠原病内科で血液検査を含めた精査を受けることが重要です。早期に診断することで、臓器障害の進行を抑えることが期待できます。

3.2. レイノー現象・血管障害・その他の疾患

レイノー現象は、寒さやストレスで指先の血管が急激に収縮し、「白→紫→赤」と色が変化する発作を繰り返す状態です。指先がしびれたり、冷感・痛みを伴うことも多く、しもやけと混同されることがあります。単独で起こる場合もあれば、膠原病などほかの病気に伴う二次性レイノー現象として現れることもあります。⁶

また、糖尿病や動脈硬化などで末梢血管の状態が悪くなっている場合、しもやけから潰瘍・壊疽に進行するリスクが高まります。特に足の裏やかかとなど、普段見えにくい場所の変化に気づきにくいため、「靴下を脱いで毎日チェックする」習慣が重要です。³⁹

このほか、クリオグロブリン血症や血管炎など、血管そのものに炎症が起こる病気でも、しもやけ様の皮疹が現れることがあります。上記のようなレイノー現象や全身症状を伴う場合は、血管内科・膠原病内科での精査が検討されます。

第4部：今日から始める改善アクションプラン

ここからは、「今夜からできること」「今週から見直したいこと」「長期的に続けたいこと」に分けて、足のしもやけ対策を具体的な行動レベルで整理します。原因が何であれ、冷えを減らし血行をよくする生活は、しもやけの改善だけでなく、全身の健康にもプラスに働きます。

第5部：専門家への相談 — いつ・どこで・どのように？

「どのタイミングで病院に行けばいいのか分からない」「皮膚科と内科、どちらに行くべき？」と迷う方も多いのではないでしょうか。ここでは、受診を考えるべき危険なサインと、診療科の選び方、受診時に役立つ準備について解説します。

5.1. 受診を検討すべき危険なサイン

• 2〜3週間たっても症状がほとんど良くならない（通常のしもやけは1〜3週間で改善することが多いとされています）。³⁸
• 水ぶくれが破れて傷になっている、膿が出ているなど、感染を疑うサインがある。⁷⁸
• 強い痛みや歩行困難がある、触れるだけで激痛が走る。
• 皮膚が黒ずんできた、感覚がほとんどないなど、凍傷や壊疽を疑う所見がある。
• 発熱・悪寒・だるさなど全身症状を伴う。
• 毎年同じ場所に重いしもやけを繰り返す、あるいは季節に関係なく似た症状が出る。
• 糖尿病・膠原病・血液の病気など、もともと血流や免疫に関わる持病がある。
• 足の変化に気づきにくい高齢者・一人暮らしの方：小さな傷でも悪化しやすいため、早めの受診が望まれます。³⁹

これらに当てはまる場合は、市販薬や民間療法だけで様子を見るのではなく、早めに皮膚科などで診察を受けてください。急激な悪化や強い痛み、黒ずみなどがある場合は、救急外来や救急相談窓口に相談することも検討しましょう。

5.2. 症状に応じた診療科の選び方

• しもやけと思われる皮膚症状が中心の場合：まずは皮膚科がおすすめです。しもやけかどうかの鑑別と、外用薬・内服薬などの治療方針を相談できます。²⁵
• 強い痛み・潰瘍・壊死が疑われる場合：皮膚科に加え、血管外科や形成外科との連携が必要になることがあります。救急外来での評価が優先されるケースもあります。
• レイノー現象や全身症状（倦怠感・関節痛・発熱など）を伴う場合：膠原病内科・リウマチ科・総合内科への紹介を受け、自己免疫疾患や血液疾患の有無を確認します。⁴⁶
• 糖尿病や動脈硬化などの持病がある場合：かかりつけの内科医と皮膚科が連携して治療を行うことで、合併症リスクを抑えやすくなります。

5.3. 診察時に持参すると役立つものと費用の目安

• 症状のメモ・写真：いつから・どの部位に・どんなきっかけ（雪の日、長時間の外出など）で症状が出たか、スマートフォンの写真やメモに残しておくと診断の助けになります。⁷
• お薬手帳・現在服用している薬のリスト：血圧の薬や血流改善薬など、しもやけの治療に影響する薬もあるため、必ず持参しましょう。
• 基礎疾患に関する検査結果：糖尿病や脂質異常症、膠原病などの既往がある場合は、最近の検査結果や紹介状があるとスムーズです。
• 費用のイメージ：日本の公的医療保険（3割負担の場合）では、初診料・再診料に加え、必要に応じて血液検査・画像検査・処方箋料などがかかります。具体的な金額は医療機関や検査内容によって異なるため、心配な場合は事前に問い合わせておくと安心です。

受診は「症状がひどくなってから」ではなく、「少し不安だけれど念のため確認したい」というタイミングでも構いません。一人で抱え込まず、専門家の意見を取り入れることで、将来の不安を減らすことにもつながります。