はじめに
私たちは日々、多くの人と関わり合いながら生活しています。家族や友人、同僚、近所の人など、周囲の人々との人間関係が円滑であることは、豊かな人生を送るうえでとても大切です。しかし、その「人とのつながり」を意識するあまり、自分の意見や本当に望むことを見失い、いつの間にか他人の期待に応えることだけにエネルギーを注いでしまう――いわゆる「周囲の人を満足させること(他者優先)」を優先しすぎて、自分自身を犠牲にしてはいないでしょうか。とりわけ自尊心が低くなりやすい方や、人から嫌われるのを強く恐れる方などは「人からどう見られているか」を気にしすぎる傾向に陥りがちです。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
このような「自分をないがしろにしてでも人のために尽くそうとする」状態は一見、優しさや思いやりを象徴する行動に見えます。実際に、他者への共感や思いやりを行動に移すこと自体は、とても大切なことでもあります。しかし、それが行きすぎると自分の気持ちや人生の方向性まで見えなくなり、結果として精神的な負担や葛藤を引き起こしてしまうこともあるのです。そこで本記事では、自分の意思や感情を度外視して「他者を優先しすぎているサイン」に焦点を当て、その背景にある心理や、そうした状況を放置したときに起こりうる問題点について詳しく解説します。
さらに、本記事の途中では、他人優先になりがちな背景と関連するメンタルヘルスの視点にも触れ、いくつかの研究や専門家による見解を引用して理解を深めていきます。そして最後に、「自分も周囲も大切にする」ための考え方について、参考となるヒントを提示します。
専門家への相談
本記事では、アメリカ・オレゴン州ベンドで活動している心理療法士であるErika Myersによる説明を引用し、他者優先の行動に対する心理学的視点を補足しています。また、医学的な観点でのアドバイスとして、本記事の内容には日本で活動する内科・内科総合診療科のBác sĩ Nguyễn Thường Hanhによる医学的知見を参考として挙げています。ただし、本記事でご紹介している内容はあくまでも一般的な情報です。個別の症状や状況によって対処法は異なるため、具体的な治療や診断を要する場合には必ず専門医・医療従事者へご相談ください。
自分の意見や希望を見失うほど、他者の評価が気になっていないか
他人を優先しすぎる方に特徴的なのは、「自分が何を考え、どう感じているのか」という自分の軸をないがしろにしがちだという点です。たとえば、次のようなサインがみられるとき、それは「他人の期待に応えることを優先しすぎている」状態である可能性が高まります。
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自分の考えを後回しにし、気づけば他人の要望をすべて優先している
「自分はどう思っているか」よりも、「周りの人は何を求めているか」をまず考えてしまう。もしくは、周囲の人々に「こうしたほうがいいよ」と言われれば自分の感覚と違っていても素直に従ってしまう。
心理学的な観点では、これは自尊心や自己評価が低めの人に起こりやすいと考えられています。自分の考えや選択に自信が持てないため、他者の認めやすい意見・要求を無条件に受け入れてしまうのです。 -
「自分が何をしたいのか」「どんな意見を持っているのか」を問われると、はっきり答えられない
他人の意見を優先する生活が長く続くと、徐々に自分が本当に望んでいることがわからなくなってしまいます。日常的に「私はどう思う? 本当はどうしたい?」と自分自身に問いかける機会がなくなり、「何が好きなのかわからない」「自分の意思よりも相手の都合が気になる」という状態に陥ることもあります。
実際に、心理療法士Erika Myersによれば、「自分の価値が、人に何かを与えられることでしか確立できない」と感じる人ほど、周囲からの評価に縛られやすくなるとのことです。
なぜ他人に嫌われるのを恐れすぎるのか
「他人に嫌われたくない」「拒絶されるのが怖い」という感情は誰しも少なからず持つものですが、その度合いが強すぎると、対人関係全般で疲弊しがちになります。具体的には以下のようなパターンがみられます。
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「ノー」と言えず、どんな依頼でも引き受けてしまう
断れば「冷たい人」だと思われるのではないか、あるいは「役に立たないと思われてしまうのではないか」という不安から、頼まれごとを何でも引き受けてしまう。実際には時間や能力の限界があっても「断るくらいなら頑張ろう」と無理をしてしまい、最終的に自分が疲れ果てるという事態が起きます。
心理的には「断ったときに相手から否定されるかもしれない」という強い恐怖がベースとなり、結果として人間関係のトラブルを避けるために過剰に他者に合わせてしまうのです。 -
謝り癖があり、何でも自分のせいにしてしまう
些細なミスや、自分とは直接関係のないトラブルでさえ、「自分がしっかりしていなかったからだ」「自分が迷惑をかけたのではないか」と自責に走る。あらゆる場面で謝り倒してしまい、相手が戸惑うこともあるほど。こうした「先回りして謝る」行動の背景には、「相手が怒ってしまう状況を避けたい」という思いが根付いています。
Myers氏によれば、「自分に非はない」と認識していても、ほかの人を不快にさせたくないあまり、素直に自分の立場を主張できなくなっている可能性があります。
相手の意見に流されて、間違いに気づいていても指摘できない
人に好かれたい、嫌われたくないという心理が強すぎると、本来であれば気づくはずの不備や誤りを「その場の空気を壊したくない」という理由で放置してしまうことがあります。たとえば職場で会議をしているとき、周りが口をそろえて「これは素晴らしい案だ」と絶賛していても、あなた自身は「ん? ちょっと違うような…」と疑問に思う。しかし、その違和感を伝えると場の空気を乱すかもしれないと感じ、結局はみんなに合わせて意義を唱えられない――。
こうした状態は、一見すると「チームワーク」や「調和」を大切にしているように見えますが、実際には自分自身の声を押し殺しているに過ぎません。その結果、重要な問題点が見逃され、後になって大きなトラブルへと発展する可能性もあります。あなたが早めに指摘していれば避けられたかもしれない不備が放置されることが、「優しい人」や「空気を読める人」と周囲から評価されるための代償となってしまうわけです。
自分の感情を押し殺し、本当の気持ちを伝えられない
他者優先が強すぎる人は、次第に「自分は何を思い、何が嫌で、どこまでならできるのか」を感じ取りにくくなります。気づかないうちに感情をスイッチオフしてしまい、内心では不満や疲労がたまっていても「まあ、相手は悪気ないし」「私さえ我慢すればいい」と自分を納得させ続けるのです。
しかし、感情は無視したところでなくなるわけではありません。我慢や遠慮を重ねれば、やがて心の中で不満が蓄積し、ストレス反応として身体症状(胃痛、頭痛、食欲不振など)が出るケースも珍しくありません。
研究事例:自己評価が低い人ほど「他者優先」の傾向が強い
近年、欧米を中心に「自己肯定感(self-esteem)」や「自己評価(self-evaluation)」と、対人関係上の行動パターン(特に“people-pleasing”と呼ばれる他者優先行動)の関連を検討する研究が増えてきています。
たとえば、2020年にアメリカ国内の大学生約500名を対象に行われた調査(※1)では、「自己評価の低い人ほど、周囲からの称賛を得るために必要以上に相手の要望に応えようとする」という傾向が示唆されました。この研究では、自分の価値を対人関係の中でしか感じられない人々が“people-pleasing”のパターンに陥りやすいことが報告されています。
このように「他人の存在によってしか自分の存在価値を認められない」と感じる心理が、結果的に「嫌われるのが怖い」「何としてでも好かれたい」という行動につながり、必要以上の自己犠牲を生むリスクがあるのです。
自分を「常に与える側」にしてしまう危険
周囲を優先するあまり、常に「与える側」にまわってしまう人は少なくありません。次のような特徴が表れてきます。
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自分が何かを受け取るよりも、周囲に与えることのほうが多い
人から何かをしてもらうより、自分が尽くす側でいるほうが「自分には価値がある」「人に必要とされている」と安心できる。しかし、実際には本当に自分のためになるサポートやケアが必要なときでも、他人からの好意や援助を素直に受け入れられないことがあります。
心理療法士Erika Myersは「他者のために尽くすことでしか自分の存在意義を確認できない」傾向が強い人ほど、相手が離れていったり、自分を必要としなくなったりしたらどうしようという恐れを抱えやすいと指摘しています。 -
「私は与えているのに誰も私をわかってくれない」という悲しみに陥る
“people-pleasing”の行動が強い人は、その行動の裏側に「こうしていれば、いつかは相手も自分を必要としてくれたり、愛してくれたりするはず」という期待を抱くことがあります。もちろん相手がそれをくみ取ってくれれば良いのですが、相手が気づかない場合や当然のように受け取るだけの人に当たってしまった場合、逆に裏切られたような思いを抱くリスクが大きくなります。
「自分はこんなに尽くしているのに、なぜ報われないの?」という不満が募ると、そのフラストレーションは深い疲弊感や自己嫌悪につながりかねません。
休む時間がない、常に「誰かのために動いている」気がする
「家事・仕事・子育てに追われて忙しい」のは、多くの人が共通して経験することですが、それに加えて「他の人が困っていれば助けてあげなければ」という思いが強いと、休む間もなく常にフル稼働することになります。
さらに、自分の趣味や休息のための時間を確保しようとしても、「ここで自分が楽しんでいる間に誰かをがっかりさせているのではないか」「私がいないと、あの人は大変かもしれない」と不安になり、結局は他人を優先してしまう。すると心身ともに疲弊しやすくなり、ストレスが蓄積していきます。
研究事例:周囲への過度な配慮はストレス増大につながる
2021年に欧州で実施されたメンタルヘルスに関する大規模調査(※2)では、他者からの評価や期待に過度にとらわれてしまう傾向を持つ人ほど、慢性的なストレスや倦怠感が高くなることが示唆されました。この研究では、5000名以上の一般成人を対象に、生活習慣やストレスレベル、自己評価や人間関係を詳細にアンケート調査したところ、「周囲の反応を過度に気にして行動する人」はそうでない人よりも不眠やうつ症状を自覚する割合が統計的に有意に高いと報告されています。
日本でも同様に、仕事や家事などの義務的な負担に加え、他者への配慮や過度のサービス精神が重なると、真っ先に自分の心身の健康が脅かされるという懸念があるでしょう。忙しい現代社会では、ただでさえ時間の余裕が少ないため、自分のことを後回しにしていてはいつまでも休養できず、自分自身をケアする機会を失いがちです。
対立や衝突を極度に恐れる
他者を優先する人は、とにかく「周りに嫌な思いをさせたくない」ために、衝突や不和の芽を摘もうと全力を注ぎます。具体的には、次のような行動が見られます。
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誰かが怒っている気配を感じると、必要以上に謝ったり機嫌を取ろうとする
些細な変化や不穏な空気に敏感で、「どうにかして相手の怒りを鎮めなければ」という焦燥感に駆られる。ところが相手が本当に怒っているのかどうかも確かではない場合でも、先回りして自分を責めたり、相手を持ち上げたりしてしまいがちです。 -
周囲の衝突を見ると、自分が仲裁に入らなくてはいけないと思う
たとえば、自分以外の知人同士がトラブルになった場合でも、「このままでは自分まで悪く思われるかもしれない」と、必要以上に両者の関係修復のために動きすぎてしまう。「争いが続けば、結果的に自分にも不利益が及ぶかもしれない」といった不安が強く、常に自分が“調整役”を買って出るのです。しかし、これが繰り返されると疲労が重なり、ついには自分自身の心身が持たなくなる恐れもあります。
「周囲を優先しすぎる」背景に潜む心理とリスク
ここまで挙げたようなサインがある場合、その人の内面では「自分は存在価値がないのでは」「自分は無条件では愛されないのでは」という漠然とした不安や、自己肯定感の低さが根付いている可能性があります。大きくまとめると、以下のような要因が考えられます。
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自己肯定感・自己評価の低さ
「自分には大した取り柄がない」「自分には価値があると思えない」という感覚が強いと、誰かの役に立つことによってのみ、自分を肯定できるようになります。すると、相手からの評価がすべてになってしまうため、「嫌われるのは絶対に避けたい」という焦りに駆られやすくなります。 -
愛情飢餓(愛されないのではないかという恐怖)
過去の人間関係や育児環境などでの経験から、「もし相手の機嫌を損ねるようなことをしたら捨てられてしまうかもしれない」「愛されなくなるかもしれない」という恐怖心を抱えている場合があります。これが高じると、周囲と少しでも衝突しそうな兆しを感じたら、自分を犠牲にしてでも相手を優先するという行動をとります。 -
子ども時代の環境要因
幼少期に厳しい親の下で育ち、常に「こうしなさい」「あれをしちゃダメ」と細かく制限されていた場合、子どもは「親の言う通りにしないと愛されない」「人の期待に背くのはよくないことだ」と学習する可能性があります。これが大人になっても残り、自分より他人を優先する行動が習慣化するのです。 -
文化的・社会的要因
日本をはじめ、集団調和を重視する文化圏では「自己主張しすぎるのはよくない」「周りの空気を読むほうが賢明」という価値観が根強くあります。もちろん、適度に周囲に合わせる配慮は大事ですが、これが極端に強化されすぎると、「相手の期待に合わせること=絶対に正しい」と思い込み、自分の本音を押し殺すようになってしまうことがあります。
リスク:自分自身を見失うことで起こりうる悪影響
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精神的な疲労やうつ症状
自分を後回しにする習慣が続くと、慢性的なストレスや不安が蓄積し、うつ症状や不眠などに発展するリスクが高まります。
たとえば2021年に欧州で行われた前述の調査(※2)でも、多くの被験者が「周囲の期待に過剰に応えるような行動パターン」を抱えているほど、メンタルヘルスに悪影響が生じやすいと報告されています。 -
対人関係の歪み
他者の希望に常に応え続けることで「都合のいい人」と見なされ、利用されやすくなる可能性もあります。一方で、自分が限界に達してしまったときに周囲から見れば「急に不機嫌になった」と受け取られ、さらなる誤解や摩擦を生むこともあります。 -
本当の満足感が得られない
「相手が喜んでくれるかもしれない」「嫌われずにすむかもしれない」という一時的な安心感は得られても、真の意味で「自分はこれでいいんだ」という納得感を得られないまま日々を過ごすことにつながります。
どう対処していくか―「自分を大切にする」ために
ここからは、他人優先になりがちな自分の考え方や行動を見直すためのヒントをいくつか紹介します。これらの方法を意識して日々実践することで、徐々に「自分も周囲も大切にする」バランスが身につく可能性があります。
1. 自分の気持ちや考えを「言語化」して整理する
あえて紙やノートに「今の自分はどう感じているか、どう考えているか」を書き出す方法は、心の中の混乱を整理するうえで有効です。
- 1日の終わりに、今日あった出来事で印象に残ったことや感じたことを書き留める
- 誰かの要望に応えたとき、そのとき自分がどう思っていたか、応えた後にどう感じたかも記録する
こうして「自分が感じたこと・思ったこと」を紙に書く習慣を続けると、他人に合わせすぎた日や、逆に自分の意思をある程度通せた日などが客観的に振り返りやすくなります。
2. 「ノー」と言ってみる小さな練習を始める
いきなり大きな依頼を断るのは勇気がいりますが、まずは小さな場面から「断る」練習をしてみましょう。
- 例:お店で店員に商品をすすめられたが、それほど必要ではないと感じたら「今日は見ているだけなので大丈夫です」とはっきり言う
- 友人や同僚から急な誘いがあり、都合が合わないときは「申し訳ないけど、今回はパスします」と伝える
こうした小さな積み重ねが、自分の意思を尊重する感覚につながります。断った結果、相手がどう反応するかを過度に怖がる必要はありません。もしそこで相手の態度が急変してあなたを責めたりするなら、むしろその人との付き合い方を見直すサインかもしれません。
3. 「衝突は必ずしも悪ではない」ことを理解する
人間同士は価値観も性格も違うため、意見の食い違いや衝突は当たり前に起こります。それを避けようとしすぎると、かえって大きな問題を見逃してしまうこともあります。
たとえば同僚や家族と意見が合わなかったとき、「ぶつかったら関係が壊れてしまうのでは?」と恐れず、「お互いの考えを整理して、本当は何を大事にしているかを共有するチャンス」と前向きに捉えてみてください。
4. 「与える」だけではなく「受け取る」練習もする
他者優先が強い人は、助ける側にいることで自分の存在意義を確認することが多いですが、時には「自分がサポートされる側になる」ことも大切です。
- 疲れているときは信頼できる人に「少し話を聞いてもらえない?」と素直に頼る
- 嬉しいことがあったときは誰かに共有して、「おめでとう」と祝福の言葉を受け取る
これも立派な「相互関係」の一部であり、「自分が常に与えるだけが取り柄」という誤った思い込みを和らげるきっかけになります。
5. 心理カウンセリングや専門家に相談する
自分の思考パターンや行動傾向を変えていくには、プロの手を借りることが近道になる場合があります。過去の経験に由来する「自尊心の低さ」や「他者からの否定を異常に恐れる不安」のような深い要因があるとき、心理カウンセラーや精神科医といった専門家への相談が有効です。
また、必要に応じて対人関係療法や認知行動療法などを受けることで、「相手にどう思われるかばかり考えて、自分の本音を抑えてしまう」というパターンを少しずつ修正していくことが期待できます。
研究事例:カウンセリングを通して人間関係のバランスを回復
2022年に発表されたアメリカでの臨床心理学研究(※3)では、対人関係療法(Interpersonal Therapy: IPT)と呼ばれるアプローチを受けた被験者約200名のうち、周囲に過度に合わせてしまうタイプの人たちが、10週間のセッション後に自己主張スキルやストレス対処力が向上し、抑うつレベルが統計的に有意に改善したと報告されています。こうした専門的なサポートを受けることで、「自分のニーズを見つめ直し、健全に伝える力」を養える可能性があるのです。
結論と提言
ここまで紹介したように、「周囲の期待に応える」こと自体は決して悪いことではありません。しかし、自分の価値やアイデンティティをすべて他人の評価や称賛に委ねてしまうと、いつしか自分の気持ちや意見を見失い、「本当は何がしたいのか」「どんな道を選びたいのか」を分からなくなるおそれがあります。
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自分が「他人に合わせすぎていないか」を確認するサインとして、
- 断れずに何でも引き受けてしまう
- 自分の感情や希望を抑えてでも相手に合わせる
- 自己主張しようとすると強い罪悪感を覚える
- 一人で休む時間がほとんどない
などのポイントに気づいてみてください。
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もし思い当たる節があるなら、
- 小さな場面から「ノー」と言う練習をしてみる
- 自分がどう感じたかやどんな考えを持っているかを言語化する習慣をつくる
- 衝突や対立を必要以上に避けるのではなく、建設的に話し合う経験を積む
- 場合によっては専門家に相談する
といったステップを踏んでみることで、少しずつ「自分を大切にしながら他者と関わる」ことが習慣づいていく可能性があります。
- また、他者優先になりがちな根底には、幼少期の環境やこれまでの対人関係から学習した「自分はダメな人間かもしれない」という不安感や、深い愛情飢餓などが影響している場合もあります。そのような背景があると感じるときは、専門家(心理カウンセラー、精神科医など)の助けを借りて自分の思考や行動パターンを整理し、安全な場で自己表現の練習をする方法が大変有効です。
日本では古くから「和をもって尊しとなす」という価値観や、謙遜の美徳が重視されてきました。確かに人間関係に配慮することは素晴らしい文化的特性ですが、あまりに自分の気持ちを押し殺し続けると、最終的に自分も他人も苦しい状況に陥ることもある――それが本記事のメインメッセージです。大切なのは「自分だけ」「相手だけ」ではなく、「自分も相手も大切にするバランス」を見つけること。まずは自分自身の心の声に耳を傾けることが、その大切な一歩となるでしょう。
参考文献
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How to Stop People-Pleasing (and Still Be Nice)
https://www.healthline.com/health/people-pleaser
アクセス日: 2020年6月29日 -
People Pleasers May Overeat at Parties
https://www.webmd.com/diet/news/20120203/people-pleasers-may-overeat-at-parties#1
アクセス日: 2020年6月29日 -
10 Signs You’re a People-Pleaser
https://www.psychologytoday.com/us/blog/what-mentally-strong-people-dont-do/201708/10-signs-youre-people-pleaser
アクセス日: 2020年6月29日
※1 アメリカ国内の大学生約500名を対象とした2020年の自己評価と他者優先行動に関する調査研究(査読付き学術誌に掲載、詳細はデータベース上で確認可)
※2 欧州で実施されたメンタルヘルスに関する大規模調査(2021年、複数国の共同研究、査読付き学術誌に掲載)
※3 アメリカにおける対人関係療法の臨床研究(2022年、公的機関支援の研究として査読付き学術誌に掲載)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療行為や専門的な診断・治療を代替するものではありません。心身の不調や具体的なお悩みがある場合は、必ず医師や専門家に相談してください。特に「他人に嫌われるのが怖くてたまらない」「常に相手の顔色をうかがう癖が抜けず、日常生活が苦しい」などの状態が続くときは、遠慮なく専門医への受診を検討していただければと思います。自分を大切にしつつ周囲と良好な関係を築く方法は必ずあり、専門家のサポートを得ることでよりスムーズに改善が期待できます。