日本の肺がん治療のすべて:診断、治療法から未来の展望までを徹底解説
この記事でわかること
目次
- 要点まとめ
- 🔧 セルフチェック:低線量CT(LDCT)検診の対象になりますか?
- 肺がんとは?がんが発生する仕組み
- 他のがん種と比べた肺がんの位置づけ
- 日本における肺がんの現状:罹患数・死亡数・生存率
- 危険因子:何が肺がんのリスクを高めるのか
- 予防のためにできること
- 診断への道:検診とステージ分類
- TNM分類とは:病期はどう決まるのか
- 主な検査の種類
- 非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)の比較
- 非小細胞肺がん(NSCLC)の治療の考え方
- 小細胞肺がん(SCLC)の治療の考え方
- 治療に伴う副作用とセルフケアの考え方
- 入院・通院のスケジュールと生活の準備
- 治療費と高額療養費制度
- 🖨️ 診察に持っていくメモ(印刷推奨)
- 治療後の経過観察と再発への不安との向き合い方
- 治療の進歩と生活の質、緩和ケア
- 治療中の生活習慣とセルフケア
- 肺がんと共に生きる:患者会・情報源
- 標準治療以外の選択肢:臨床試験・治験について
- ご家族が肺がんと診断されたときに知っておきたいこと
- 治療と仕事・生活の両立
- 治療を支える多職種チーム
- 日本のガイドラインの考え方:意思決定の3つの層
- よくある質問
- 参考文献
結論から言うと、国立がん研究センターの統計によれば、肺がんは日本人のがん死亡原因の第1位(男性)であり、5年相対生存率は全体で34.9%ですが、これは病期によって大きく異なります。1
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
早期のステージIで見つかれば治癒を目指せる可能性が高くなりますが、進行したステージIVで見つかった場合は治療の中心が「治す」から「がんと共存しながら生活の質を保つ」ことに移ります。日本には検診制度・標準治療・高額療養費制度という3つの支えがあり、まずは自分がどの段階にいるかを主治医と確認することが最初の一歩です。本記事は、国立がん研究センター・厚生労働省・日本肺癌学会の一次資料にもとづき、罹患・生存率の統計、検診制度、非小細胞肺がん(NSCLC)/小細胞肺がん(SCLC)それぞれの治療の考え方、治療費の支援制度、そして生活・仕事との両立までを、順を追って整理しています。
要点まとめ
- 肺がんは日本において、男性のがん死亡原因の第1位、女性では第2位です。2023年の新規罹患数は約123,989人、2024年の死亡数は約75,569人と報告されています。1
- 5年相対生存率は全体で34.9%(男性29.5%、女性46.8%)です(2009〜2011年診断例)。1
- 最大の危険因子は喫煙ですが、非喫煙者、特に女性の腺がんも増加傾向にあると報告されています。2
- 2025年度版の検診ガイドラインでは、50〜74歳の重度喫煙者に対して低線量CT(LDCT)検診が推奨グレードAとして位置づけられました。6
- 日本肺癌学会のガイドラインでは、非小細胞肺がん(NSCLC)はドライバー遺伝子検査とPD-L1発現の結果に応じて、小細胞肺がん(SCLC)は病期(限局型・進展型)に応じて治療方針が決まるとされています。7
- 治療は高額になりやすい一方、高額療養費制度により月々の自己負担には所得に応じた上限があります。
編集方針:この記事はJapaneseHealth.org編集部が、国立がん研究センター(NCC)・厚生労働省・日本肺癌学会(JLCS)など公的機関・学会の一次資料と照合して作成しました。個々の治療薬の選択や適応は主治医の判断によるため、本記事は特定の治療法を推奨するものではなく、「主治医と何を相談すべきか」を整理するための情報提供を目的としています。数値やガイドラインの内容は改定される可能性があるため、必ず最新版を確認してください(2026年7月確認)。
🔧 セルフチェック:低線量CT(LDCT)検診の対象になりますか?
以下は2025年度版ガイドライン6の推奨対象の目安です(最終判断は自治体・医療機関にご確認ください)。
両方に該当する場合、国立がん研究センターのガイドラインでは低線量CT(LDCT)検診が「推奨グレードA」として位置づけられています。該当しない場合でも、40歳以上であれば同ガイドラインにより胸部X線検査が対象となります。6 症状がある場合はチェックの結果にかかわらず受診してください。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
肺がんとは?がんが発生する仕組み
肺がんは、肺の気管支や肺胞の細胞が異常に増殖することで発生します。国立がん研究センターがん情報サービスによると、大きく分けて、非小細胞肺がん(NSCLC、全体の約85%)と小細胞肺がん(SCLC、約15%)の2種類があり、これらは細胞の見た目(組織型)や増殖の速さ、治療への反応性が異なるため、区別して治療方針を立てる必要があるとされています。2 同センターの情報によれば、NSCLCはさらに、最も頻度が高い腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分類されます。2 また、SCLCは進行が速く、診断時にはすでに転移していることが多い一方、化学療法や放射線治療への初期の反応性が高いという特徴があるとされています。2
JHO編集部が作図。国立がん研究センター・日本肺癌学会の統計・ガイドラインをもとに本記事のために作成。
肺がんは、日本の主要ながん種の中で早期発見が特に重要とされる疾患のひとつです。がん全体の症状・検診・ステージ分類・治療の考え方を横断的に押さえたい場合は、がん・腫瘍疾患の総合ガイドもあわせてご覧ください。
他のがん種と比べた肺がんの位置づけ
国立がん研究センターがん情報サービスの統計では、日本におけるがんの死亡数は部位によって大きく異なり、肺がんは男女計でも上位に位置づけられるがん種のひとつとされています。1 罹患数(新たに診断される数)で見ると、肺がんは胃がん・大腸がんなどと並んで多いがん種の一つですが、死亡数で見ると特に上位に位置づけられる点が特徴です。1 これは、他のがん種と比べて、症状が出にくく発見が遅れやすいこと、進行してから見つかるケースが多いことなどが背景にあると考えられています。3 胃がんや大腸がんなど、内視鏡検査によって前がん病変やごく早期の段階で発見しやすいがん種と比較すると、肺がんは検診で発見できる病変の性質や検査の感度に違いがあり、これも生存率の差に影響していると考えられています。6 ただし、がん種ごとに罹患のしやすさ・進行の速さ・治療への反応性は大きく異なるため、単純に「肺がんは他のがんより怖い」と結論づけるのではなく、それぞれのがん種に応じた検診・早期受診の重要性を理解することが大切です。 がん全体の中での肺がんの位置づけをより詳しく知りたい方は、記事冒頭でも紹介したがん・腫瘍疾患の総合ガイドもあわせてご参照ください。
日本における肺がんの現状:罹患数・死亡数・生存率
国立がん研究センター(NCC)のがん統計によると、2023年に新たに肺がんと診断された人は123,989人(男性81,381人、女性42,607人)、2024年に肺がんで亡くなった人は75,569人(男性52,333人、女性23,236人)と報告されています。1 肺がんは、1998年以降、日本人男性のがん死亡原因の第1位であり続けています。3
表1: 日本における肺がんの主要統計
| 指標 | 総数 | 男性 | 女性 | 年 |
|---|---|---|---|---|
| 新規罹患数 | 123,989 | 81,381 | 42,607 | 2023年1 |
| 死亡数 | 75,569 | 52,333 | 23,236 | 2024年1 |
| 5年相対生存率 | 34.9% | 29.5% | 46.8% | 2009〜2011年診断例1 |
国立がん研究センターがん情報サービスによれば、この生存率の低さの背景には、診断時点での病期(ステージ)が遅いことが関係していると考えられています。3 同センターの資料では、咳や痰といった初期症状は風邪などと区別がつきにくく、見過ごされやすい傾向があると指摘されています。3
国立がん研究センターが公開する院内がん登録生存率集計システムでは、病期別の5年生存率も確認できます。一般に、ステージIで発見された場合はステージIVで発見された場合よりも生存率が大きく高いことが示されていますが、集計対象年やデータベースの版によって数値は変動するため、本記事では特定の病期別パーセンテージの断定的な記載は避け、「ステージが進むほど生存率は大きく低下する」という傾向のみをお伝えします。正確な最新の病期別数値は、国立がん研究センターの院内がん登録生存率集計結果閲覧システムで直接ご確認ください(下記参考文献)。1
国立がん研究センターがん情報サービスによれば、病期による生存率の差が大きい背景には、症状が出にくい、あるいは咳や息切れといった症状があっても「年齢のせい」「風邪」と考えて受診が遅れやすいという事情があると考えられています。3 同センターの報告では、肺がんは診断時点ですでに遠隔転移のあるステージIVで見つかる患者の割合が他のがん種と比べて高い傾向があるとされ3、これが肺がん全体の生存率を押し下げる大きな要因のひとつと考えられています。逆に言えば、国立がん研究センターの検診ガイドラインが示すように、検診や早期受診によって病期の早い段階で発見できれば、治療の選択肢が広がり、治癒を目指せる可能性が高まるとされています。6 このため、次のセクションで説明する検診制度の活用が重要視されています。
危険因子:何が肺がんのリスクを高めるのか
肺がんの最大の危険因子は喫煙です。国立がん研究センターの情報によれば、喫煙者は非喫煙者と比較して肺がんのリスクが有意に高まるとされています。2 同センターの情報では、喫煙以外の危険因子として、受動喫煙、アスベストなどの職業性曝露、大気汚染、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の既往、家族歴などが挙げられています。2 近年は、特に女性において非喫煙者の腺がんが増加していることが指摘されており、喫煙歴がないことが肺がんを否定する理由にはならないと考えられています。2
国立がん研究センターの情報によれば、職業性曝露については、アスベスト(石綿)を扱う建設業・造船業・断熱工事などの従事歴が長い場合、曝露から発症までに数十年の期間を経て肺がんや中皮腫のリスクが高まることが知られています。2 過去にこうした職歴がある方は、症状の有無にかかわらず、健診の際に職歴を医師に伝えておくことが勧められます。同センターによれば、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の既往がある方も、喫煙歴と関係なく肺がんのリスク因子のひとつとされているため2、呼吸器内科での定期的なフォローが望ましいと考えられています。
国立がん研究センターの情報では、大気汚染(微小粒子状物質PM2.5など)や家族歴についても、肺がんリスクに関連する可能性が報告されていますが2、喫煙のように単独で大きくリスクを引き上げる因子ではなく、複数の要因が積み重なって発症に関与すると考えられています。したがって「非喫煙者だから安心」「家族に肺がん患者がいないから大丈夫」と単純に判断することはできず、咳・血痰・息切れなど気になる症状があれば、危険因子の有無にかかわらず受診することが勧められます。ご自身や同居家族の喫煙状況、過去の職歴、居住環境などを一度整理しておくと、検診や受診の際に医師へ正確に伝えやすくなります。
予防のためにできること
国立がん研究センターがん情報サービスによれば、肺がんの予防において最も重要とされているのは禁煙です。2 すでに長年喫煙している方でも、禁煙することでその後の健康リスクを下げる効果が期待できるとされており、「今さら禁煙しても意味がない」と考える必要はないとされています。禁煙が難しい場合は、禁煙外来など医療機関のサポートを利用することも選択肢のひとつです。受動喫煙を避けること、家庭内や職場での分煙・禁煙を進めることも、本人だけでなく周囲の人の健康を守るうえで重要とされています。2
職業性曝露(アスベストなど)のリスクがある業種で働いている、または過去に働いていた方は、事業者による健康診断や、必要に応じた特殊健診の受診が重要とされています。大気汚染への曝露を完全に避けることは難しいものの、換気の悪い環境を避ける、屋内の空気環境に配慮するといった一般的な対策が考えられます。ただし、これらの生活習慣の工夫はリスクを下げる可能性がある一方で、肺がんの発症を完全に防げるわけではないため、危険因子の有無にかかわらず、気になる症状があれば早めに受診するという基本姿勢が重要であることに変わりはありません。予防と検診はどちらか一方で十分というものではなく、両方を組み合わせて取り組むことが、肺がんによる死亡を減らすための現実的なアプローチとされています。
診断への道:検診とステージ分類
国立がん研究センターの資料によれば、日本では1987年以降、40歳以上を対象とした胸部X線検査による国の検診プログラムが行われてきました。6 同センターが公表した2025年度版の有効性評価に基づく肺がん検診ガイドラインでは、50〜74歳の重度喫煙者に対する低線量CT(LDCT)検診が、死亡率減少効果の証拠があるとして「推奨グレードA」に位置づけられました。6 一方、重度喫煙歴のない人に対するLDCT検診は、死亡率減少効果の証拠が現時点で不十分であり、過剰診断などの不利益が利益を上回る可能性があるとして「推奨グレードI」(実施を勧めない)とされています。6
胸部X線検査とLDCTの違いについて疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。国立がん研究センターのガイドラインによれば、胸部X線検査は広く長年使われてきた検診方法で、被ばく量が少なく費用も比較的抑えられるという特徴がある一方、LDCTと比較すると小さな病変の検出感度は劣るとされています。6 LDCTは、より小さな病変を検出しやすい一方、放射線被ばくや、良性の病変を「疑わしい影」として拾い上げてしまう過剰診断・偽陽性のリスクが相対的に高くなるとされ、これが重度喫煙歴のない人への一律実施が推奨されていない理由のひとつになっています。6 どちらの検査が適しているかは、年齢・喫煙歴・他の危険因子の有無によって異なるため、迷う場合は自治体の検診担当窓口やかかりつけ医に相談することが勧められます。「毎年X線を受けているから安心」と考えるのではなく、自分の喫煙歴や年齢に照らして、より適した検診方法があるかどうかを一度確認してみることが勧められます。検診はあくまで「病気の可能性を早期に見つけるための手段」であり、検診結果が正常だったからといって、その後に症状が出た場合の受診を後回しにしてよいわけではない、という点も押さえておく必要があります。検診と、症状が出たときの受診は、目的も役割も異なる別のものだと理解しておくことが大切です。
表2: 肺がん検診の推奨グレード(2025年度版ガイドライン基準)
| 検診方法 | 対象 | 推奨グレード |
|---|---|---|
| 胸部X線検査 | 40歳以上 | A6 |
| 低線量CT(LDCT) | 50〜74歳の重度喫煙者 | A6 |
| 低線量CT(LDCT) | 非重度喫煙者 | I(実施を勧めない)6 |
国立がん研究センターがん情報サービスによれば、肺がんの疑いがある場合は、CTなどの画像検査と、組織を採取して調べる病理検査によって確定診断が行われます。2 同センターの情報では、病期(ステージI〜IV)は、腫瘍の大きさ・リンパ節転移の有無・遠隔転移の有無を組み合わせたTNM分類にもとづいて決定され、これが治療方針を決める最も重要な要素となります。2
TNM分類とは:病期はどう決まるのか
国立がん研究センターがん情報サービスによれば、TNM分類は、がんの進行度を「T(腫瘍の大きさ・広がり)」「N(リンパ節転移の有無・範囲)」「M(遠隔転移の有無)」の3つの要素で表す国際的な分類方法です。2 この3つの組み合わせによって、最終的にステージI〜IVの病期(臨床病期)が決定されます。
表:TNM分類の3つの要素
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| T(Tumor) | 原発腫瘍の大きさ・周囲組織への広がり2 |
| N(Node) | リンパ節への転移の有無・範囲2 |
| M(Metastasis) | 肺以外の臓器(脳・骨・肝臓・副腎など)への遠隔転移の有無2 |
国立がん研究センターの解説によれば、実際の診断の流れとしては、まず胸部X線やCTで異常な影が見つかった場合、PET検査でがんの広がりを調べたうえで、気管支鏡や針生検などで組織や細胞を採取する病理検査を行い、組織型(腺がん・扁平上皮がんなど)を確定します。2 日本肺癌学会のガイドラインでは、ステージIVなどドライバー遺伝子検査が必要な場合は、採取した組織を用いて追加の遺伝子検査(コンパニオン診断)が行われるのが標準的な流れとされています。7 検査から結果が出るまで数日から数週間かかることもあり、待機期間に不安を感じる方は、その間に何を準備しておくとよいか(後述の「診察に持っていくメモ」参照)を主治医や看護師に相談すると安心材料になります。また、遺伝子パネル検査の結果によっては、複数の治療候補が同時に示されることがあり、その場合はどの薬を最初に使うか、体力や副作用の見込みを踏まえて主治医と相談しながら決めていくことになります。診断が確定するまでの期間は精神的な負担が大きいと感じる方も多く、この段階から、がん相談支援センターや心理士によるサポートを利用できる医療機関もあります。
主な検査の種類
国立がん研究センターがん情報サービスによれば、肺がんの診断・病期決定にあたっては、複数の検査を組み合わせて行うのが一般的です。2
表:肺がんの診断でよく行われる検査
| 検査 | 主にわかること |
|---|---|
| 胸部X線検査・CT検査 | 肺の異常な影の有無・大きさ・位置2 |
| PET検査 | がん細胞の活動性、全身への広がり(転移)の有無2 |
| 気管支鏡検査・針生検 | 組織や細胞を採取し、がんの組織型を確定する病理診断2 |
| 遺伝子パネル検査 | EGFR・ALKなどドライバー遺伝子変異の有無(ステージIVなどで実施)7 |
これらの検査は、症状の有無や病期の疑いに応じて必要なものが選ばれるため、すべての方が同じ検査をすべて受けるわけではありません。どの検査がなぜ必要かは、担当医から説明を受け、疑問があればその場で質問することが勧められます。検査には、体への負担や合併症のリスクが伴うものもあるため(例えば針生検後の出血や気胸など)、事前に検査の目的・方法・想定されるリスクについて説明を受け、同意したうえで受けることになります(インフォームド・コンセント)。説明を聞いてもわかりにくい点があれば、遠慮せずその場で質問し、必要であれば説明を書面や録音で残してもらうことも可能です。
受診の目安:こんな症状があれば早めに医療機関へ
- 2週間以上続く咳、あるいは今までと様子が変わった咳
- 血の混じった痰(血痰)
- 説明のつかない体重減少、続く胸の痛みや息切れ
- 声のかすれが続く
国立がん研究センターの情報によれば、これらの症状は肺がん以外の病気でも起こりますが、自己判断で様子を見続けず、呼吸器内科など医療機関を受診することが勧められます。2 「咳や血痰が続いているが受診すべきか迷っている」という方は、初期症状の見分け方を専門的に整理した肺がんの初期症状と検診ガイドラインの解説記事もあわせてご確認ください。
非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)の比較
国立がん研究センターがん情報サービスと日本肺癌学会のガイドラインの情報をもとに、両者の主な違いを整理すると以下のようになります。27
表:非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)の主な違い
| 項目 | 非小細胞肺がん(NSCLC) | 小細胞肺がん(SCLC) |
|---|---|---|
| 全体に占める割合 | 約85%2 | 約15%2 |
| 進行の速さ | 比較的緩やかな例が多いとされる2 | 進行が速い例が多いとされる2 |
| 治療の中心 | 手術・放射線治療・薬物療法(病期による)7 | 化学療法・放射線治療が中心7 |
| 喫煙との関連 | 関連するが非喫煙者の例もある2 | 関連が強いとされる2 |
この違いがあるため、まず組織型(NSCLCかSCLCか)を確定させることが、その後の治療方針を決めるうえでの最初のステップになります。
非小細胞肺がん(NSCLC)の治療の考え方
日本肺癌学会の肺癌診療ガイドラインでは、NSCLCの治療は病期ごとに大きく方針が分かれます。7
- ステージI〜II(早期):同ガイドラインでは、手術による切除が標準治療とされています。手術が困難な場合は、根治を目指した放射線治療(体幹部定位放射線治療など)が選択肢となります。手術後には、再発予防のための薬物療法(化学療法や、条件によっては分子標的薬・免疫療法)が検討されることがあります。7
- ステージIII(局所進行):同ガイドラインによれば、手術可能な場合は手術と薬物療法を組み合わせ、手術が難しい場合は放射線治療と化学療法を同時に行う「化学放射線療法」が中心となり、その後に免疫チェックポイント阻害薬による地固め療法が行われることがあります。7
- ステージIV(遠隔転移):同ガイドラインでは、治療の前に、EGFR・ALKなど「ドライバー遺伝子」に変異があるかを調べる遺伝子パネル検査が行われるのが標準とされています。変異が見つかった場合は、その遺伝子を標的とする分子標的薬(飲み薬)が第一選択となることが多く、変異がない場合は、がん細胞のPD-L1というたんぱく質の発現量に応じて、免疫チェックポイント阻害薬を単独、または化学療法と組み合わせて使う方針が検討されます。7
どの薬をどの順番で使うかは、遺伝子変異の種類、PD-L1発現量、体力(全身状態)、副作用の許容度など個別の事情によって大きく異なります。特定の薬剤名や用量については、本記事では詳述せず、必ず主治医と相談してください。
「分子標的薬」と「免疫チェックポイント阻害薬」は、名前が似ていますが仕組みが異なります。国立がん研究センターがん情報サービスによれば、分子標的薬は、がん細胞の増殖に関わる特定の分子(ドライバー遺伝子が作るタンパク質など)だけを狙い撃ちする飲み薬が中心で、その分子が変異している患者に特に効果が期待されるとされています。2 一方、免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞そのものを直接攻撃するのではなく、体が本来持っている免疫の力ががん細胞を攻撃しやすくなるよう手助けする薬とされています。2 このため、分子標的薬は特定の遺伝子変異がある患者に、免疫チェックポイント阻害薬はPD-L1の発現量などを参考にしながら使うかどうかが判断されるという違いがあります。どちらの薬が向いているかは、遺伝子検査・PD-L1検査の結果と、患者本人の体力・希望を踏まえて主治医が総合的に判断します。
治療方針について、担当医の説明だけでなく別の医師の意見も聞きたい場合は、「セカンドオピニオン」を利用することができます。国立がん研究センターの情報によれば、セカンドオピニオンは、今の主治医との関係を損なうものではなく、患者がより納得して治療を選ぶための一般的な仕組みとして位置づけられています。2 希望する場合は、現在の担当医に紹介状や検査データの準備を依頼したうえで、がん診療連携拠点病院などのセカンドオピニオン外来を利用するのが一般的な流れです。
日本肺癌学会のガイドラインによれば、手術に関しては、従来の開胸手術に加え、胸に小さな穴をあけて器具を挿入する胸腔鏡下手術(VATS)や、近年ではロボット支援下手術など、体への負担が少ない低侵襲な方法が広がりつつあるとされています。7 同ガイドラインでは、手術が難しい早期の患者に対しては、ピンポイントで放射線を集中させる体幹部定位放射線治療(SBRT)などの技術も選択肢のひとつとされています。7 どの手術・放射線治療の方法が適しているかは、腫瘍の位置や大きさ、患者の呼吸機能・全身状態によって異なるため、主治医・呼吸器外科医との相談が必要です。手術後には、リハビリテーションによって呼吸機能の回復を図ることも治療の一部として位置づけられており、退院後の生活動作(階段の昇り降り、入浴など)に不安がある場合は、入院中に理学療法士へ相談しておくとよいとされています。
小細胞肺がん(SCLC)の治療の考え方
国立がん研究センターの情報によれば、SCLCは進行が速く、喫煙との関連が強いとされるがんです。2 日本肺癌学会のガイドラインでは、病期は、放射線を照射できる範囲に収まる「限局型」と、それを超えて広がった「進展型」の2つに大きく分けられます。7
- 限局型:同ガイドラインでは、化学療法と放射線治療を同時に行う化学放射線療法が治癒を目指す標準治療とされています。ごく早期であれば手術が検討されることもあります。7
- 進展型:同ガイドラインによれば、プラチナ製剤を含む化学療法が治療の基本となり、近年は免疫チェックポイント阻害薬を併用する方針が広がっています。7
SCLCは再発した場合の治療選択肢が長年限られてきた領域であり、新しい作用機序の薬剤の開発が進んでいると報告されていますが8、個々の薬剤の適応や承認状況は変わりやすいため、最新情報は主治医または日本肺癌学会のガイドラインで確認することが重要です。日本肺癌学会のガイドラインでは、SCLCは初回の化学療法・放射線治療への反応が良好なことが多い一方、再発しやすい性質があるとされ7、再発後の治療方針についても、体力や前治療の効果・副作用の状況を踏まえて主治医と相談することになります。SCLCは治療への初期反応が良いことが多い一方、再発した場合の治療選択肢が長年限られてきた領域とされ8、この分野での新しい治療薬の開発が国内外で進められていると報告されています。8 ただし、個々の薬剤がいつ承認され、どの患者に使えるかは変わりやすい情報のため、最新の状況は主治医または日本肺癌学会のガイドラインで確認することが重要です。
治療に伴う副作用とセルフケアの考え方
肺がんの治療は、手術・放射線治療・薬物療法のいずれも一定の副作用を伴う可能性があります。日本肺癌学会のガイドラインでは、手術後は呼吸機能の変化、放射線治療では皮膚炎や放射線肺臓炎、化学療法では吐き気・脱毛・倦怠感、分子標的薬や免疫療法では皮疹・下痢・間質性肺疾患など、薬剤の種類によって現れやすい副作用が異なるとされています。7 同ガイドラインによれば、特に免疫チェックポイント阻害薬では、投与開始からしばらく経ってから自己免疫反応に似た副作用(免疫関連有害事象)が現れることがあると報告されており7、いつもと違う体調の変化(強い下痢、息切れの悪化、皮膚の異常など)に気づいたら、我慢せずすぐに担当医療機関へ連絡することが重要とされています。副作用への対応法は薬剤ごと・個人ごとに異なるため、治療開始前に想定される副作用と、症状が出た場合の連絡先を主治医・薬剤師に確認しておくことが勧められます。
副作用への対処は「我慢すること」ではなく「早く伝えること」が基本とされています。多くのがん専門病院では、薬物療法を始める前に、想定される副作用とその対処法(吐き気止めの使い方、口内炎のケア、発熱時の連絡先など)についてオリエンテーションを行っており、外来化学療法室の看護師や薬剤師が窓口になっていることが一般的です。副作用の程度には個人差があり、同じ薬でも症状の出方は人によって異なります。
表:治療の種類と現れやすい副作用の傾向
| 治療の種類 | 現れやすい副作用の例 |
|---|---|
| 手術 | 呼吸機能の変化、創部の痛み7 |
| 放射線治療 | 皮膚炎、放射線肺臓炎、倦怠感7 |
| 化学療法 | 吐き気、脱毛、骨髄抑制(血球減少)、倦怠感7 |
| 分子標的薬 | 皮疹、下痢、肝機能障害など薬剤により異なる7 |
| 免疫チェックポイント阻害薬 | 皮疹、下痢、間質性肺疾患などの免疫関連有害事象7 |
この表はあくまで一般的な傾向であり、実際にどの副作用が起こりやすいかは、使用する薬剤・治療法や患者個人の状態によって異なります。
日常生活での違和感(普段と違う疲れやすさ、食欲低下、皮膚の変化など)を感じたら、次の診察日を待たずに医療機関に連絡してよいとされる基準(発熱の温度、下痢の回数など)を、治療開始時にあらかじめ確認しておくと安心です。免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象は、治療開始から数週間〜数か月経ってから現れることもあるとされ7、投与を終えてしばらく経ってからの体調変化についても、自己判断せず医療機関に相談することが勧められます。
入院・通院のスケジュールと生活の準備
肺がんの治療は、手術のようにまとまった入院を要するものから、外来で定期的に通院しながら行う薬物療法まで、内容によって生活への影響が大きく異なります。手術の場合、入院期間は術式や合併症の有無によって幅がありますが、退院後も体力の回復に一定の期間を要することが一般的とされています。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療は、多くの場合、数週間に一度の外来通院で行われ、副作用の程度によっては入院管理が必要になることもあります。化学放射線療法のように、一定期間ほぼ毎日通院が必要な治療もあります。ご自身の治療がどのパターンに近いかを早い段階で主治医に確認しておくと、仕事の調整や家族の協力体制を計画しやすくなります。治療の全体像(今後どのくらいの期間、どのようなスケジュールで治療が続く見込みか)についても、治療開始前に主治医から説明を受けておくと、生活設計を立てやすくなります。もちろん、実際の経過は検査結果や体調によって変わることがあるため、あくまで見込みとして捉え、変化があれば都度確認する姿勢が大切です。
通院の負担を減らす工夫としては、通院日をできるだけ固定してもらう、自宅から病院までの交通手段を事前に確認しておく、体調が悪いときの緊急連絡先を把握しておく、などが挙げられます。特に高齢の患者や、ひとり暮らしの患者の場合、通院の付き添いや生活支援について、早い段階で地域包括支援センターやケアマネジャー、病院の医療相談員に相談しておくことで、治療開始後にあわてずに済むことが多いとされています。
治療費と高額療養費制度
肺がんの治療、特に分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療は高額になることがあります。日本の公的医療保険は医療費の大部分をカバーしますが、自己負担額そのものが大きくなる場合に備えて「高額療養費制度」があります。この制度では、1か月の医療費の自己負担額に、所得区分に応じた上限が設けられており、上限を超えた分は払い戻されます。所得区分(年収の目安)によって上限額は異なり、区分が変わると負担額も変わるため、ご自身がどの区分に該当するかを事前に確認しておくと安心です。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
制度の具体的な手続きや事前の限度額適用認定証の申請方法については、加入している健康保険組合や市区町村の窓口、病院の医療相談員(メディカルソーシャルワーカー)に相談することが勧められます。あらかじめ「限度額適用認定証」を保険者から取得し医療機関の窓口に提示しておくと、月々の窓口負担そのものを自己負担限度額までに抑えられる場合があるとされています。また、国立がん研究センターの情報によれば、日本では人口の一定割合が生命保険・医療保険などの民間保険にも加入しているとされ2、診断時の一時金や入院日額給付金といった形で公的保険を補う役割を果たすことがあります。ご自身が加入している民間保険の保障内容についても、この機会に確認しておくとよいでしょう。加入している保険の種類や特約によって、がん診断時の給付金・通院給付金・先進医療特約の有無などが異なるため、契約内容がわからない場合は保険会社のコールセンターに問い合わせて確認することも一つの方法です。なお、高額な治療が続く場合、確定申告の際の医療費控除の対象になることもあるため、領収書は保管しておくことが勧められます。
費用に対する不安は、治療そのものへの不安と並んで大きな心理的負担になりやすいテーマです。「治療費がいくらかかるか分からないまま治療を始めるのが怖い」と感じる場合は、治療計画が決まった段階で、病院の医療費相談窓口やメディカルソーシャルワーカーに、想定される自己負担額の目安や、利用できる制度について事前に確認しておくことができます。高額療養費制度は、月をまたいで治療が続く場合や、複数の医療機関にかかっている場合など、計算方法がやや複雑になることもあるため、疑問点はそのままにせず、都度確認することが勧められます。
治療費以外にも、通院のための交通費、遠方の医療機関に通う場合の宿泊費、就労が難しくなった場合の収入減少など、間接的な経済的負担が生じることもあります。こうした点についても、傷病手当金や高額療養費制度以外に利用できる公的支援や民間保険の保障がないか、早い段階で確認しておくことで、治療に専念しやすい環境を整えることができます。自治体によっては、独自の医療費助成やがん患者への生活支援制度を設けている場合もあるため、お住まいの自治体の窓口やがん相談支援センターに確認してみることも有効です。制度は改定されることがあるため、「以前調べたときは対象外だった」という場合でも、治療のタイミングで改めて確認し直すことが勧められます。制度の名称や対象条件は自治体・保険者によって異なることがあるため、インターネット上の情報だけで判断せず、最終的にはお住まいの自治体窓口や加入している健康保険組合に直接確認することが確実です。
🖨️ 診察に持っていくメモ(印刷推奨)
- 症状はいつから、どのように変化したか(咳・痰・血痰・息切れ・体重減少など)
- 喫煙歴(本数×年数)、過去の職業(アスベスト等への曝露の有無)
- 現在飲んでいる薬・サプリメント
- これまでに受けた検査(胸部X線・CTなど)とその時期
- 質問したいこと(例:自分の病期は? 遺伝子検査は受けられるか? 高額療養費制度は使えるか? セカンドオピニオンは可能か?)
- アレルギーや過去に薬で経験した副作用の有無
- 付き添いの家族の連絡先、緊急時に連絡してほしい相手
メモは診察の限られた時間を有効に使うための道具です。すべてを覚えておこうとせず、気になったことはその場で書き留め、答えてもらった内容も簡単にメモしておくと、後で家族と共有したり、別の医療者に説明したりする際に役立ちます。
治療後の経過観察と再発への不安との向き合い方
手術や放射線治療、薬物療法によって病状が落ち着いた後も、定期的な経過観察(フォローアップ)が続きます。国立がん研究センターがん情報サービスによれば、経過観察では、診察に加えて胸部X線・CT検査などを一定間隔で行い、再発や新たな病変がないかを確認するのが一般的とされています。2 経過観察の間隔や内容は、病期や治療内容によって異なるため、次回の検査がいつで、何を目的に行うのかを主治医に確認しておくと、見通しを持ちやすくなります。
治療が一区切りついた後も、「次の検査で何か見つかるのではないか」という不安(いわゆる再発不安)を抱える方は少なくないとされています。この不安そのものは自然な反応であり、抱えていること自体を悪いことだと考える必要はありません。不安が強く日常生活に影響する場合は、遠慮せずに主治医や看護師、心理士、がん相談支援センターに相談してよいとされています。同じ経験をした患者同士で気持ちを共有できる患者会も、こうした不安と向き合ううえでの支えになることがあります。経過観察の間隔があくと、かえって「本当に大丈夫なのか」と不安になる方もいれば、間隔があくことを回復のサインとして前向きに受け止める方もおり、感じ方には個人差があります。どちらの感じ方も自然なものであり、気持ちの整理がつかないときは、次の診察を待たずに相談窓口を利用してよいとされています。
治療の進歩と生活の質、緩和ケア
近年、周術期(手術の前後)における免疫療法の導入や、遺伝子変異に応じた分子標的薬の開発により、進行した肺がんであっても生存期間が延びる例が増えていると報告されています。7 一方で、治療期間が長くなるほど、症状や治療の副作用に対処しながら生活の質(QOL)を保つことの重要性が増します。国立がん研究センターがん情報サービスによると、緩和ケアは「終末期の医療」ではなく、がんと診断されたときから、治療と並行して受けられる医療と位置づけられていますが10、この考え方が十分に知られていないと指摘されることもあります。厚生労働省も、緩和ケアの提供体制の現状と課題を継続的に検討課題としてまとめています。11 気になる症状やつらさがあれば、終末期でなくても緩和ケアチームや主治医に相談してよいとされています。一方で、厚生労働省も緩和ケアの提供体制について現状と課題を継続的にまとめており11、身近な場所で十分な緩和ケアを受けにくいと感じる方が一定数いる可能性がうかがえます。「緩和ケア=終末期」という誤解が根強く残っていることも、早期からの利用が広がりにくい一因と考えられています。10 国立がん研究センターがん情報サービスによれば、緩和ケアチームは、医師・看護師・薬剤師・心理士・医療ソーシャルワーカーなど多職種で構成されることが多く、痛みや息苦しさといった身体症状のコントロールだけでなく、不安や気分の落ち込みへの心理的サポート、療養場所(自宅・緩和ケア病棟・ホスピスなど)に関する相談にも対応しているとされています。2 同センターの情報では、多くのがん診療連携拠点病院に「がん相談支援センター」が設置されており、患者本人だけでなく家族も、治療費・生活・仕事との両立などについて無料で相談できるとされています。2 転院や在宅療養への切り替えを検討する場合も、まずはこの相談窓口を通じて情報を集めることが勧められます。
治療中の生活習慣とセルフケア
治療中・治療後の生活習慣についても、気になる方が多いポイントです。禁煙は、診断後であってもその後の治療効果や回復に良い影響を与える可能性があると考えられており、喫煙を続けている場合は禁煙外来を含めて主治医に相談することが勧められます。バランスの取れた食事や、体調に合わせた軽い運動は、体力の維持や治療の副作用への対処に役立つと考えられていますが、治療内容によっては食事制限や運動制限が必要な場合もあるため、自己判断で新しい食事法やサプリメントを始める前には主治医・管理栄養士に相談することが重要です。特に、根拠が乏しい民間療法や高額な健康食品について不安や勧誘がある場合は、ひとりで判断せず、がん相談支援センターなど公的な相談窓口に確認することが勧められます。「これを摂れば治る」「標準治療をやめてこちらに切り替えるべき」といった強い勧誘には注意が必要で、標準治療を自己判断で中断・変更する前には、必ず主治医に相談することが重要です。呼吸苦や倦怠感などの症状がある場合は、無理に活動量を増やそうとせず、リハビリテーション専門職のアドバイスを受けながら、できる範囲で体を動かすことが勧められています。
肺がんと共に生きる:患者会・情報源
肺がんの患者や家族を支える患者会・支援団体は国内に複数存在し、同じ病気を経験した人同士の情報交換や心理的な支えの場になっているとされています。担当医療機関のがん相談支援センターに問い合わせると、地域の患者会や、病期・治療内容に応じた情報源を紹介してもらえることがあります。インターネット上には様々な体験談や情報がありますが、発信元が個人のブログや商業サイトである場合、内容の正確性にばらつきがあるため、本記事で紹介している国立がん研究センターや日本肺癌学会など、一次資料を発信する公的機関・学会の情報と照らし合わせながら参考にすることが勧められます。
標準治療以外の選択肢:臨床試験・治験について
標準治療で効果が乏しくなった場合や、新しい治療法に関心がある場合、臨床試験(治験)への参加が選択肢になることがあります。国立がん研究センターのがん情報サービスは、国内で実施中の臨床試験を検索できる情報サイトを公開しています。1 臨床試験への参加には、対象となる病期や遺伝子変異、これまでの治療歴などの条件があり、必ずしも希望すれば参加できるわけではないため、関心がある場合は主治医やがん相談支援センターに相談し、担当医療機関で実施しているか、あるいは紹介が可能かを確認することが勧められます。
ご家族が肺がんと診断されたときに知っておきたいこと
家族が肺がんと診断されると、本人だけでなく家族自身も大きな衝撃やショックを受けることが少なくありません。「何と声をかければいいのか分からない」「普段通りに接していいのか」と悩む方は多いとされています。決まった正解があるわけではありませんが、多くの場合、本人の話を否定せずに聞くこと、本人が望むペースで治療や今後について話し合うこと、そして必要以上に本人の代わりに物事を決めようとしないことが助けになるとされています。一方で、通院の付き添いや日常生活のサポートなど、具体的にできることを提案するのも良い方法です。
家族自身の心身の負担にも目を向けることが大切です。長期にわたる介護・付き添いは、家族の側にも疲労やストレスを蓄積させることがあります。がん相談支援センターは患者本人だけでなく家族からの相談にも対応しているとされており2、家族向けの相談窓口や、家族会(患者家族の交流の場)を紹介してもらえることもあります。「自分がしっかりしなければ」と抱え込みすぎず、利用できるサポートは積極的に活用することが、結果的に本人を支え続けるための力にもなると考えられています。子どもや高齢の家族がいる場合、本人の病気をどう伝えるかで悩む方も多いとされています。年齢や理解度に応じて、隠しすぎず、かつ不安をあおりすぎない伝え方について、がん相談支援センターや医療ソーシャルワーカーが相談に応じている医療機関もあるため、迷った場合は一人で抱え込まず専門職に相談することが勧められます。
治療と仕事・生活の両立
肺がんの治療は長期にわたることが多く、仕事や日常生活との両立が課題になる方も少なくありません。国立がん研究センターの情報では、傷病手当金など、治療のために仕事を休んだ際の収入を補う公的な制度があり2、加入している健康保険の種類によって利用できる制度が異なります。勤務先に治療スケジュールを伝え、通院日に配慮した勤務形態(時差出勤・在宅勤務・休暇制度など)について相談することも、治療を継続しながら働き続けるための現実的な一歩になります。同センターによれば、多くのがん診療連携拠点病院の「がん相談支援センター」では、就労に関する相談にも対応しているとされており2、社会保険労務士や産業医と連携した支援を受けられる場合もあります。ひとりで抱え込まず、まずは病院の相談窓口や勤務先の人事・産業保健スタッフに現状を共有することが勧められます。
治療を支える多職種チーム
肺がんの治療は、担当医(呼吸器内科医・呼吸器外科医・放射線治療医など)だけでなく、多くの専門職が連携するチーム医療によって支えられています。看護師は日常的な症状の相談窓口となり、薬剤師は薬の飲み合わせや副作用管理について助言します。管理栄養士は治療中の食事の工夫について、理学療法士・作業療法士はリハビリテーションについて、医療ソーシャルワーカーは医療費や社会保障制度、仕事との両立について、それぞれ専門的な立場から支援を行うとされています。がん診療連携拠点病院では、こうした多職種チームが定期的に情報を共有しながら治療にあたる体制が整えられていることが一般的です。カンファレンス(症例検討会)で複数の専門職の意見を突き合わせたうえで治療方針が検討される施設もあり、一人の医師の判断だけに頼らない体制づくりが進められていると考えられています。患者本人やご家族は、症状や不安の内容に応じて、これらの専門職に個別に相談することもできます。「これは誰に聞けばいいのか分からない」と迷った場合は、まず看護師やがん相談支援センターに相談すると、適切な窓口を案内してもらいやすくなります。診察の限られた時間内にすべてを聞き切れなくても、次回以降の診察や、他職種との面談で改めて確認することもできるため、一度に完璧に理解しようと焦る必要はありません。
日本のガイドラインの考え方:意思決定の3つの層
| 層 | 内容 | 典拠 |
|---|---|---|
| 学会ガイドライン | 日本肺癌学会の「肺癌診療ガイドライン」が、病期・組織型・バイオマーカーごとの標準治療を示す主要な参照文献です。 | 7 |
| 検診ガイドライン | 国立がん研究センターが厚生労働省の関与のもとで作成する検診ガイドラインが、どの検査を誰に勧めるかを定めます。 | 6 |
| 薬事・保険制度 | 厚生労働省が個別の高額医薬品について定める「最適使用推進ガイドライン」が、使用できる医療機関の要件などを規定します。 | 9 |
3つの層はおおむね整合していますが、新しいデータの反映速度には差が生じることがあるとされ7、最終的な治療方針は主治医が最新版のガイドラインと患者個人の状態を踏まえて判断します。
患者やご家族の立場からは、「自分が受けている治療がどの層のどの基準にもとづいているのか」を主治医に確認することで、セカンドオピニオンを検討する際にも、どの情報を比較すればよいかが整理しやすくなると考えられます。日本肺癌学会のガイドラインはウェブサイト上で一般公開されており7、医療者向けの内容ではありますが、目次だけでも眺めておくと診察時の質問を考える手がかりになることがあります。
ガイドラインは医療者の意思決定を支えるための「標準的な指針」であり、すべての患者に一律に同じ治療を強制するものではないという点も理解しておくと役立ちます。実際の治療方針は、ガイドラインが示す標準治療を土台としつつ、患者本人の体力・持病・希望、施設で利用可能な設備や薬剤などを踏まえて個別に決定されます。そのため、同じ病期・組織型の患者であっても、実際に受ける治療の詳細が異なることがあります。「ガイドライン通りではない治療を提案された」と感じて不安になった場合は、その治療がガイドラインとどう関係しているのか、なぜその選択が自分に適していると考えられるのかを、遠慮せず主治医に確認することが勧められます。
本記事では、個々の分子標的薬・免疫療法薬の承認時期や臨床試験の詳細な数値については、今回参照した一次資料の中で確実に確認できたもの以外は記載を控えています。特定の薬剤の選択やレジメン(用法・用量)についての判断は、必ず主治医にご確認ください。また、病期別の5年生存率の具体的なパーセンテージ(例:ステージ別の詳細な数値)は、国立がん研究センターの院内がん登録生存率集計結果閲覧システムという、ブラウザでの操作が必要な検索システムに掲載されており、本記事の作成時点では機械的な自動取得による確認ができませんでした。この点については、記事末尾の参考文献リンクから読者ご自身で直接ご確認いただくか、次回更新時に改めて反映する予定です。同様に、個々の薬剤の承認年月や臨床試験名についても、複数の情報源で一致が確認できたもの以外は本文への記載を控えています。喫煙による肺がんリスクの具体的な倍率(男女別など)についても、今回の作成過程で一次資料から明確な最新数値を確認できなかったため、「喫煙は最大の危険因子である」という定性的な事実にとどめ、具体的な倍率の記載は控えています。数値が必要な場合は、参考文献の国立がん研究センターのページで直接ご確認いただくか、今後の更新で反映する予定です。同様に、施設ごとの手術件数や治療成績など、病院選びの参考になりうる具体的な数値についても、今回一次資料から確実に確認できたもの以外は記載していません。こうした情報が必要な場合は、各医療機関やがん診療連携拠点病院のウェブサイト、または国立がん研究センターが公開している病院検索の仕組みなどをあわせてご確認いただくことをお勧めします。本記事は特定の製薬企業・医療機関・治療法を推奨・宣伝する目的では作成しておらず、公的機関・学会が公表している内容の整理を主な目的としています。
よくある質問
肺がんと診断されました。生存率はどのくらいですか?
低線量CT(LDCT)検診は受けた方がよいですか?
非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)はどう違いますか?
ステージIVと診断されました。もう治療法はありませんか?
治療費が高額になると聞きました。支援制度はありますか?
緩和ケアは末期にならないと受けられませんか?
肺がんの手術後、日常生活にどのくらいの影響がありますか?
肺がんのステージ別の生存率を正確に知りたいです。どこで確認できますか?
家族はどのようにサポートすればよいですか?
臨床試験(治験)には誰でも参加できますか?
セカンドオピニオンを受けたいのですが、今の主治医との関係が気まずくなりませんか?
更新日:2026年7月19日。本記事の内容に誤りやお気づきの点がございましたら、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
参考文献
- 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計 肺」https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/12_lung.html
- 国立がん研究センターがん情報サービス「肺がんについて」https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/about.html
- 国立がん研究センターがん情報サービス「肺がん 患者数(がん統計)」https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/patients.html
- 国立がん研究センター「有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン2025年度版」https://canscreen.ncc.go.jp/guideline/lung_guideline2025.pdf
- 日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2024年版」https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2024/
- 日本肺癌学会「肺癌診療ガイドライン2024年版 本ガイドラインについて」https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/2024/jo/24002024ho00.html
- 厚生労働省「最適使用推進ガイドライン ニボルマブ(遺伝子組換え)及びペムブロリズマブ(遺伝子組換え)」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000468384.pdf
- 国立がん研究センターがん情報サービス「緩和ケア」https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/relaxation/index.html
- 厚生労働省「緩和ケアの現状・課題について」(2021年)https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000800332.pdf
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本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
