この記事の科学的根拠
この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的根拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的ガイダンスとの直接的な関連性を示したリストです。
- 複数の系統的レビュー(Systematic Reviews):この記事における「中硬度(medium-firm)のマットレスが腰痛緩和と睡眠の質向上に最適である」という中心的な推奨は、Journal of Orthopaedics and Traumatology誌4やSleep Health誌5に掲載された複数の系統的レビュー(科学的証拠の最高峰とされる研究)の結果に基づいています。
- ランダム化比較試験(RCTs):権威ある医学雑誌The Lancetに掲載されたKovacsらの画期的な研究4をはじめとする複数のランダム化比較試験の結果を用いており、硬いマットレスよりも中硬度のマットレスの方が慢性腰痛患者の症状を改善することを示しています。
- 日本の公的統計データ:日本の睡眠問題の深刻さを明らかにするため、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」12の公式データを引用しています。
- 生体力学および材料科学の研究:マットレスの素材(ラテックス、ウレタンフォーム等)が体圧分散6や脊椎のアライメント7に与える影響に関する分析は、査読済みの専門研究に基づいています。
要点まとめ
- 科学的合意は「中硬度」:数多くの高品質な医学研究が、腰痛の緩和と睡眠の質の向上のためには「中硬度(medium-firm)」のマットレスが最適であることを一貫して示しています。「硬いほど良い」という通説は科学的根拠に乏しいです。
- 素材選びは「トレードオフ」:マットレスの素材(ポケットコイル、ラテックス、メモリーフォーム等)に絶対的な優劣はありません。体圧分散、通気性、動きの独立性など、ご自身の健康上の優先順位に基づいて選択することが重要です。
- 「睡眠システム」全体で考える:マットレス単体だけでなく、枕との相性や、日本の多湿な気候に対応するための「すのこ」や「除湿シート」の活用を含めた「睡眠システム」全体を最適化することが、健康な睡眠には不可欠です。
- 客観的な自己評価から始める:衝動的に購入するのではなく、まず現在の寝具が抱える問題を客観的に評価し、ご自身の体型や睡眠姿勢に合った製品を論理的に選ぶための手順を提供します。
第1章:なぜマットレスが重要なのか?睡眠と脊椎の科学
マットレスは単なる家具ではありません。それは毎晩6時間から8時間、私たちの身体を預ける健康器具です。その品質は、睡眠の質、そして日中の生産性や心身の健康に直接的な影響を及ぼします。その役割を科学的に理解するために、3つの重要な概念を見ていきましょう。
脊椎アライメント(Spinal Alignment)
私たちの背骨(脊椎)は、横から見ると自然なS字カーブを描いています。立っているときも、寝ているときも、この自然なカーブを維持することが、腰や首への負担を最小限に抑える鍵となります。理想的なマットレスは、体の重い部分(腰や肩)が適度に沈み込みつつ、軽い部分(腰のくびれなど)をしっかりと支え、背骨が一直線になるように保つ能力(脊椎アライメント)を持っています5。このアライメントが崩れると、周囲の筋肉が緊張し、痛みやこりの原因となります。
体圧分散(Pressure Distribution)
寝ている間、私たちの体重はマットレスとの接触面に集中し、「圧点」と呼ばれる高圧領域を作り出します。特に、肩、腰、かかとなどは圧力がかかりやすい部位です7。優れたマットレスは、この圧力を体全体に均等に分散させることで、特定の部位への負担を軽減します。これにより、血行が妨げられるのを防ぎ、寝返りの回数を減らし、より深く安定した睡眠を促進します6。
睡眠微気候(Sleep Microclimate)
睡眠微気候とは、体と寝具の間に形成される温度と湿度の環境のことです。私たちは睡眠中に汗をかくため、マットレスの通気性が悪いと、熱や湿気がこもり、不快感から目覚めてしまう原因となります。理想的なマットレスは、優れた通気性を持ち、熱と湿気を効果的に発散させることで、一晩中快適な睡眠環境を維持する役割を果たします8。
第2章:「中硬度」― 科学が証明した黄金律
長年にわたり、「腰痛には硬いマットレスが良い」という神話が広く信じられてきました。驚くべきことに、ある調査では整形外科医の75%が依然として患者に硬いマットレスを推奨していることが示されています9。しかし、最高品質の科学的証拠は、この通説に明確な「否」を突きつけています。現代の睡眠医学におけるコンセンサスは、ほとんどの人にとって、特に腰痛に悩む人にとって最適なのは「中硬度(medium-firm)」のマットレスであるというものです。
科学的証拠が示す「中硬度」の優位性
この結論は、個々の体験談ではなく、厳格な科学的研究の積み重ねに基づいています。2021年に発表された系統的レビュー(複数の研究を統合・分析する最も信頼性の高い研究手法)では、39の論文を分析した結果、「中硬度のマットレスが快適性、睡眠の質、そして脊椎アライメントを促進する」と結論付けています4。同様に、2015年の別の系統的レビューでも、「主観的に中硬度と判断され、自己調整されたマットレスが最適である」と報告されています5。
個別のランダム化比較試験(RCT)も、この結論を裏付けています。医学界で最も権威のある学術誌の一つである「The Lancet」に2003年に掲載された画期的な研究では、慢性の非特異的腰痛を持つ313人の成人を追跡しました。その結果、硬い(firm)マットレスで寝たグループと比較して、中硬度(medium-firm)のマットレスで寝たグループの方が、痛みのレベルと身体機能障害の両方において、統計的に有意な改善を示しました4。他の研究でも、新しい中硬度の寝具システムを導入することで、腰痛が大幅に軽減され、睡眠の質が向上することが報告されています9。

図1:脊椎アライメントの比較。 柔らかすぎるマットレスは腰を沈ませ、硬すぎるマットレスは肩と腰に圧力をかけて背骨を曲げます。中硬度のマットレスは、体の自然なカーブを支え、背骨を理想的な一直線に保ちます。この図は、7で述べられている生体力学の原則を視覚化したものです。
硬いマットレス神話の崩壊
では、なぜ硬すぎるマットレスは体に良くないのでしょうか。生体力学の研究がその答えを明確に示しています。硬すぎるマットレスは、体の自然なS字カーブ、特に腰部のくびれ(腰椎前弯)を支えることができません。これにより、腰とマットレスの間に隙間が生まれ、その部分の筋肉が支えなく緊張し続けることになります。さらに、肩や腰のような体の出っ張った部分に圧力が集中し、痛みの原因となります7。対照的に、柔らかすぎるマットレスは体が「ハンモック」のように沈み込み、背骨を不自然な形に歪めてしまいます。中硬度のマットレスは、体をしっかりと支える硬さと、体の曲線に沿って柔軟にフィットする柔らかさの理想的なバランスを実現し、圧力を均等に分散させ、背骨をまっすぐに保つのです。
「整形外科用マットレス」という言葉は、しばしば製造元のマーケティング目的で乱用されます。真に「整形外科的」特性を持つマットレスとは、健康な脊椎の姿勢を維持できるものであり、現在の科学的証拠は明確に「中硬度」を支持しています。
表1:マットレスの硬度と健康への影響に関する高品質な研究の要約
著者・年 | 掲載誌・情報源 | 研究の種類 | 主要な結論 | 識別子 (PMID) |
---|---|---|---|---|
Caggiari G, et al. (2021) | Journal of Orthopaedics and Traumatology | 系統的レビュー | 中硬度のマットレスが快適性、睡眠の質、脊椎アライメントを促進する。 | 4 |
Cuesta-Vargas A, et al. (2015) | Sleep Health | 対照試験の系統的レビュー | 主観的に「中硬度」と特定され、自己調整されたマットレスが最適である。 | 5 |
Kovacs FM, et al. (2003) | The Lancet | ランダム化比較試験 (RCT) | 慢性腰痛患者は、硬いマットレスよりも中硬度のマットレスを使用した場合の方が良好な結果(痛みの軽減、障害の減少)を示した。 | 4 |
Jacobson BH, et al. (2009) | Journal of Chiropractic Medicine | 対照試験 | 新しい中硬度の寝具システムの使用は、睡眠の質を大幅に向上させ、腰痛を軽減した。 | 9 |
Lee J, et al. (2024) | Scientific Reports | 睡眠ポリグラフ検査を用いた実験的研究 | 中硬度のマットレスは、柔らかいマットレスと比較して、入眠潜時の短縮と睡眠段階の移行の減少により、より良い睡眠の質をもたらした。 | 10 |
第3章:あなたの優先順位に合わせた素材選び:賢明なトレードオフ
「中硬度」という基準を確立した次のステップは、マットレスを構成する素材を検討することです。すべての要求を完璧に満たす「最高の素材」は存在しません。それぞれの素材には独自の物理的・熱的特性があり、選択は体圧分散、脊椎サポート、通気性、動きの独立性といった要素間の「トレードオフ(どちらかを立てれば、どちらかが立たない関係)」となります。最適な選択は、使用者の個人的なニーズと優先順位によって決まります。
各素材の科学的特性分析
- ラテックス(天然/合成ゴム):ラテックスは、その卓越した体圧分散能力で際立っています。ラテックスとポリウレタンフォームのマットレスを直接比較したある研究では、ラテックスマットレスが体幹部と臀部へのピーク圧を劇的に減少させることが示されました。具体的には、横向き寝で35.1%、仰向け寝で28.4%のピーク圧低下が確認されています6。耐久性も高く、メモリーフォームに比べて本質的に通気性が良いのも特徴です。
- ポリウレタンフォーム(メモリーフォームを含む):メモリーフォーム(粘弾性ポリウレタンフォーム)は、体の曲線に沿って沈み込み、「包み込まれる」ような感触と効果的な圧力緩和で知られています。しかし、この特性が「沈み込みすぎて寝返りが打ちにくい」と感じる原因にもなり得ます。また、従来の独立気泡構造は熱がこもりやすく、特に日本の湿度の高い気候では不快に感じることがあります11。ジェル注入フォームやオープンセルフォームといった新技術は、この問題の改善を目指したものです。
- 高反発ファイバー:ポリエステル繊維などを三次元的に編み上げた比較的新しい素材です。最大の利点は、その圧倒的な通気性と衛生性です。中空構造が空気の循環を容易にし、熱や湿気を効率的に逃がします。素材自体を水洗いできる製品も多く12、カビやダニ対策が重要な日本の環境に非常に適しています。ただし、機械的特性としては硬めの傾向があり、体圧分散能力はラテックスやメモリーフォームに及ばない場合があります13。
- コイル(スプリング):伝統的なタイプで、主に2種類に大別されます。
したがって、素材選びは優先順位に基づいた意思決定プロセスであるべきです。汗をかきやすい、または湿度の高い地域に住んでいる人は、通気性の高いファイバーやポケットコイルを。肩や腰などの圧点に痛みを感じる人は、ラテックスの恩恵を最も受けられるかもしれません。包み込まれる感覚が好きな人はメモリーフォームを、そしてパートナーと寝る場合はお互いの眠りを妨げないポケットコイルを検討すべきです。以下の比較表は、これらのトレードオフを理解するのに役立ちます。
表2:主要なマットレス素材の科学的特性比較
素材 | 体圧分散能力 | 脊椎サポート | 通気性・調湿性 | 動きの独立性 | 主な参考文献 |
---|---|---|---|---|---|
ポケットコイル | 良い | 非常に良い(点でのサポート) | 良い | 非常に良い | 14 |
ボンネルコイル | 普通 | 普通(面でのサポート) | 非常に良い | 悪い | 14 |
メモリーフォーム | 非常に良い(体に密着) | 良い(沈み込みの可能性) | 悪い〜普通 | 非常に良い | 11 |
ラテックス | 卓越(ピーク圧を低減) | 非常に良い | 良い | 良い | 6 |
高反発ファイバー | 普通〜良い(硬めの感触) | 良い | 卓越(水洗い可能) | 普通 | 12 |
第4章:あなたに合わせた5段階のマットレス選択プロセス
科学的知識を基に、ご自身の体とライフスタイルに最適なマットレスを見つけるための、実践的な5段階のプロセスをご紹介します。この手順に従うことで、マーケティングの言葉に惑わされず、論理的で賢明な選択が可能になります。
- ステップ1:ご自身の健康ニーズを評価する
まず、ご自身の体の声に耳を傾けます。慢性的な腰痛や肩こりがありますか3?特定の部位に圧力を感じやすいですか?アレルギー体質であったり、暑がり・寒がりであったりしますか?これらの問いに対する答えが、マットレスに求めるべき機能(例:高い体圧分散性、低アレルギー素材、優れた通気性)を明確にします。 - ステップ2:主な睡眠姿勢を特定する
あなたは主にどのような姿勢で眠りますか? - ステップ3:硬さを選択する
科学的根拠に基づき、「中硬度」を基本の出発点とします。ただし、体重を考慮して微調整することが賢明です。体重が重い方は少し硬めのものを、軽い方は少し柔らかめのものを選ぶと、適切な沈み込みとサポートが得られやすくなります。 - ステップ4:優先順位に基づき素材を選択する
ステップ1で特定した健康ニーズと、前章の「表2:素材比較」を照らし合わせ、ご自身の優先順位に最も合致する素材を選びます。例えば、衛生面を最優先するなら洗えるファイバー素材、パートナーへの配慮が第一ならポケットコイル、といった具合です。 - ステップ5:睡眠環境を考慮する
あなたはフローリングや畳の上に直接敷いて寝ますか、それともベッドフレームを使用しますか?部屋のスペースは限られていますか?これらの要因は、マットレスの厚みや、後述する湿気対策の必要性に影響します。
第5章:日本の環境への特化策:湿気とカビとの戦い
どれほど高価で高機能なマットレスでも、日本の多湿な環境下で湿気対策を怠れば、すぐに劣化し、健康を害する温床になりかねません。特に、梅雨の時期や、気密性の高い現代の住宅では、カビ(カビ)やダニ(ダニ)の発生は深刻な問題です17。したがって、マットレス選びは、湿気を管理するシステムと一体で考える必要があります。

図2:日本の住環境のための完全な睡眠システム。 床とマットレスの間に空間を作る「すのこ」と、湿気を吸収する「除湿シート」は、マットレスをカビやダニから守り、健康的な睡眠環境を維持するために不可欠な要素です17。
日本の知恵:すのこと除湿シートの活用法
この課題に対処するため、日本の生活文化には実用的で効果的な解決策が根付いています。
- すのこ(Sunoko):マットレスや布団の下に敷く、溝のある板や格子状のベッドのことです。すのこの主な機能は、マットレスと床の間に空間を作り出し、空気の通り道を確保することです。これにより、体から発散される湿気がマットレスの底面に滞留・結露するのを防ぎます17。桐や檜(ひのき)など、調湿性に優れた木材で作られたものが特に好まれます。
- 除湿シート(Joshitsu Sheet):シリカゲルなどの吸湿材を含み、マットレスや布団の直下に敷いて使用します。これは、湿気を直接吸収・保持し、マットレスへの浸透を防ぐためのものです18。現代の多くの除湿シートには「吸湿センサー」が付いており、シートが湿気を十分に吸って乾燥が必要になると色が変わって知らせてくれるため、メンテナンスが容易です19。
マットレスを定期的に天日干しすることも重要ですが、これらのアイテムを組み合わせることで、より効果的かつ継続的に湿度を管理できます。国際的なマットレスガイドでは見過ごされがちなこの視点こそ、日本の消費者にとって真に価値ある情報と言えるでしょう。
第6章:マットレスは物語の一部にすぎない―睡眠システム全体の最適化
慎重に選んだはずの新しいマットレスが、期待した効果をもたらさない、あるいは逆に新たな首や肩の痛みを引き起こすことがあります。その原因は、多くの場合、マットレス単体の問題ではなく、「マットレス・枕・寝姿勢」からなる睡眠システム全体のバランスが崩れたことにあります20。
見過ごされがちな枕との関係
長年使ってへたった古いマットレスから、体をしっかり支える新しいマットレスに変えると、体幹部の位置が以前より高くなります。これにより、今まで使っていた枕が相対的に低くなりすぎてしまい、首と頭を適切に支えられなくなります20。このわずかな高さの変化が、首周りの筋肉に予期せぬ負担をかけるのです。
ある生体力学研究は、この影響を驚くべき数値で示しています。柔らかいマットレスに寝ると、枕で支えられた頭部に対して体幹部が深く沈み込みます。この高低差により、首の椎間板にかかる負荷は、中硬度のマットレスで寝た場合に比べて最大で49%も増加する可能性が示唆されました7。この過剰な負荷こそ、新しいマットレスに変えた後に多くの人が経験する首や肩の痛みの直接的な原因となり得るのです21。
あなたの睡眠システムをチェック&調整する方法
真に包括的なガイドは、この問題を警告し、利用者が自身の睡眠システムを調整するための知識を提供しなければなりません。新しいマットレスを手に入れたら、以下の簡単なテストを行ってください。
- いつもの寝姿勢でリラックスして横になります。
- 家族や友人に頼んで、真後ろからあなたの背骨のラインを観察してもらうか、写真を撮ってもらいます。
- 目標:後頭部から首、背中、お尻までが、マットレスの面とほぼ平行な一直線になっているかを確認します。
もし背骨が上向きに曲がっていたり、下向きに沈んでいたりする場合、それは枕の高さが合っていないサインです。背骨が理想的な直線を描くまで、より高い、あるいはより低い枕に交換して調整することが、最適な脊椎アライメントを回復させる鍵となります。
よくある質問
腰痛持ちですが、本当に硬いマットレスはダメなのですか?
はい、現在の最高品質の科学的証拠によれば、その通りです。「硬いほど良い」という考えは過去の通説であり、多くの高品質な研究、特に権威ある医学雑誌The Lancetに掲載された研究では、硬すぎるマットレスは腰の自然なカーブを支えられず、かえって痛みを悪化させる可能性があることを示しています。慢性的な腰痛を持つ患者さんでは、「中硬度(medium-firm)」のマットレスを使用した方が、痛みの軽減と機能改善の両面で優れた結果が得られることが証明されています4。
新しいマットレスに変えたら、首や肩が痛くなりました。なぜですか?
結局、どの素材(コイル、ラテックス、フォーム)が一番良いのですか?
「一番良い素材」というものは存在しません。それぞれの素材に長所と短所があり、選択はあなたの個人的な優先順位に基づく「トレードオフ」になります。例えば、パートナーの動きが気になるなら「ポケットコイル」、体へのフィット感と圧力分散を最優先するなら「ラテックス」や「メモリーフォーム」、通気性と衛生面を重視するなら洗える「ファイバー」素材が適しているかもしれません。本稿の「表2:主要なマットレス素材の科学的特性比較」を参考に、ご自身のニーズ(例:腰痛、暑がり、アレルギー)に最も合致する素材をお選びください。
マットレスの寿命はどのくらいですか?交換のサインは?
マットレスの寿命は素材や品質によって異なりますが、一般的には8年から10年が目安とされています。しかし、年数だけでなく、マットレスの状態で判断することが重要です。明確な交換のサインは、体の重い部分、特に腰の部分に明らかな「へこみ」や「沈み込み」が見られることです20。この状態では、背骨を適切に支えることができず、腰痛や睡眠の質の低下につながります。また、朝起きた時に以前より体の痛みを感じるようになった場合も、マットレスのサポート力が低下している可能性があります。
結論
最適なマットレスを選ぶことは、単なる快適性の追求ではなく、ご自身の健康への重要な投資です。本稿で詳述してきたように、科学的根拠に基づいた選択は、複雑に見えるプロセスを明確な道筋へと変えてくれます。要点を再確認しましょう。
- 「中硬度」を基準とする:科学的なコンセンサスは明確です。ほとんどの人にとって、特に腰痛に悩む方にとって、中硬度のマットレスが最良の選択です。
- ニーズに基づき素材を選ぶ:絶対的に優れた素材はありません。ご自身の体質、睡眠習慣、そして何を最も重視するか(圧力緩和、通気性、衛生面など)を基に、賢明なトレードオフを行ってください。
- システム全体で最適化する:マットレスは孤立して機能するものではありません。枕との高さのバランスを調整し、日本の気候に合わせた湿気対策(すのこ、除湿シート)を講じることで、初めて「完全な睡眠システム」が完成します。
JHO(JAPANESEHEALTH.ORG)の使命は、皆様が商業的な宣伝文句に惑わされることなく、ご自身の健康について情報に基づいた意思決定を下せるよう、客観的で信頼できる情報を提供し続けることです。まずはご自身の現在の睡眠システムを冷静に評価することから始めてみてください。それが、より健康で活力に満ちた毎日への第一歩となるはずです。
健康に関する注意事項
この記事で提供される情報は教育的な目的のためのものであり、専門的な医療診断や治療に代わるものではありません。睡眠に関する問題や体の痛みが慢性的である、あるいは日常生活に支障をきたしている場合は、購入を決定する前に、必ず医師や理学療法士などの医療専門家にご相談ください。特に、以下のような「危険信号(red flags)」が見られる場合は、速やかな医療機関の受診が必要です:
- 安静にしていても改善しない、持続的な激しい痛み
- 足へのしびれや脱力感の広がり
- 睡眠中に呼吸が止まる、または激しいいびき(睡眠時無呼吸症候群の可能性)
必要に応じて、日本睡眠学会などが認定する専門医療機関への相談もご検討ください22。
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