本記事の作成と情報の信頼性について
本記事は、JHO(JapaneseHealth.org)編集委員会が、厚生労働省、日本産科婦人科学会(JSOG)、国立がん研究センター、日本の公的機関や大学病院、国際的なガイドライン、査読付き論文などの信頼できる情報に基づいて作成しました。
内容の整理や構成の検討にはAIツールも補助的に活用していますが、情報の選定・検証・加筆修正・最終チェックはすべてJHO編集部が行っています。個々の症状や治療方針は年齢や体質、持病などによって異なるため、具体的な診断・治療については必ず医療機関で専門家と相談してください。
この記事の要点まとめ
- 正常な生理周期は、日本産科婦人科学会(JSOG)の基準では、周期の長さが25~38日、出血持続日数が8日以内と定義されています1。多くの方では3〜7日程度で出血が終わります2。
- 生理周期は、卵巣で起こる「卵巣周期」と子宮で起こる「子宮内膜周期」という2つのサイクルが、脳とホルモンの働きによって連携することで成り立っています2。
- 日本人女性約31万人・約600万周期を解析した大規模データによると、生理周期の長さは年齢と共に変化し、20代前半で最も長くなり、その後40代半ばに向けて徐々に短くなるのが一般的です3。
- ストレス、過度なダイエットや急激な体重変化、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症などの婦人科系疾患、甲状腺の病気などは、生理不順の代表的な原因になります45。
- 2025年に報告された大阪大学の研究では、職場で心身のストレス反応が高い女性教職員は、そうでない人に比べて月経不順の発生リスクが最大約2.2倍高いことが示されています5。
- 出血が止まらない、周期が極端に短い・長い、痛みが日常生活に支障をきたす、不正出血が続くなどの症状は、婦人科への相談を検討すべき重要なサインです6。
- 日本産科婦人科学会(JSOG)や国際産科婦人科連合(FIGO)の基準に基づき、「無月経」「頻発月経」「稀発月経」「過多月経」「月経困難症」などのタイプに分けて考えることで、自分の状態を整理しやすくなります12。
- 生理の記録(アプリや手帳、基礎体温など)をつけておくと、ご自身の傾向を把握しやすくなるだけでなく、受診時に医師が原因を評価しやすくなります813。
- 思春期・妊娠期・産後・更年期など、ライフステージによって「普通」の生理の姿は変化します。年齢と背景を踏まえて、自分の周期を評価することが大切です13。
- 「体質だから」「みんな我慢しているから」と放置するのではなく、気になる変化が続くときは、早めに婦人科で相談することが、将来の妊孕性や全身の健康を守ることにつながります。
生理周期と月経不順ガイド
「自分の生理周期は本当に正常なのか」「最近周期が変わってきたけれど大丈夫?」と、不安やモヤモヤを抱えているかもしれません。毎月の出血の間隔や日数、量の変化は、体からの大切なサインなのに、「体質だから」「みんな我慢しているから」と見過ごしてしまいがちです。生理周期は女性の健康状態を映し出すバイタルサインですから、違和感を覚えたあなたが立ち止まって考えることは、とても自然で大切なことです。
まず知っておきたいのは、日本産科婦人科学会のガイドラインで「正常な生理周期」が、25〜38日周期、出血日数は8日以内、そして年齢ごとに決められた範囲内の規則性を保っている状態と定義されているという点です1。実際には多くの人で3〜7日程度で出血が終わります2。10代から20代前半にかけて周期がやや長く、その後40代半ばに向けて徐々に短くなるといった、年齢による自然な変化もあります。こうしたライフステージごとの変化を全体像として理解したいときは、女性の一生にわたる月経・妊娠・産後・更年期の流れをまとめた女性の健康ガイドもあわせて確認しておくと、自分の今の位置づけが見えやすくなります。
それでも、周期の乱れが続く背景には、単なる「体質」だけでなく、ストレスや急激な体重変化、ホルモンバランスの乱れ、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や子宮内膜症、甲状腺の病気といった、さまざまな要因が関わっている可能性があります。日本の職場環境における強いストレスは月経不順のリスクを高めることが示されており、「我慢の文化」が受診の遅れにつながっている現状も指摘されています51011。こうした複雑な背景を整理し、自分の症状がどのタイプの月経不順に当てはまるのかを理解するには、生理不順の原因や検査、治療法を体系的にまとめた解説を併せて読むと、医師に相談する際にも具体的なイメージが持ちやすくなります。
次の一歩として大切なのは、「いつもと違う出血」が異常子宮出血(AUB)に当てはまらないかをチェックすることです。この記事で紹介されているPALM-COEIN分類は、ポリープや子宮筋腫などの「構造的な原因」と、排卵障害や凝固異常など「機能的な原因」を整理するための国際的な枠組みで、過多月経や不正出血を評価する際の地図のような役割を果たします2513。出血量が急に増えた、だらだら長く続く、生理以外の時期にも出血があるといったサインがある場合は、自己判断で様子を見るのではなく、異常子宮出血(AUB)とPALM-COEIN分類に基づく詳しい解説を参考にしながら、早めに婦人科で相談することが勧められます。
一方で、「そもそも生理が来ない」というパターンも、見逃してはいけない重要なサインです。妊娠の可能性がないのに90日以上生理がない状態は無月経とされ、体重減少や激しい運動、強いストレスによる機能性のものから、ホルモン分泌や子宮・卵巣の器質的な異常まで、さまざまな原因が考えられます11117。無月経が長期化すると、将来の妊孕性だけでなく、骨密度の低下など全身の健康にも影響し得るため、「そのうち戻るだろう」と放置しないことが重要です。そうしたリスクや治療の選択肢については、無月経の原因・リスク・治療法をまとめた専門解説を参考にしながら、受診のタイミングを具体的にイメージしてみてください。
さらに、「1か月に2〜3回も出血が来る」「周期が極端に短くなってきた」といった頻発月経のパターンは、単なる年齢変化だけでなく、排卵障害や子宮の病気が隠れていることもあります。24日未満の周期が続く場合は注意が必要で、貧血症状や生活への支障があれば、我慢ではなく専門家の評価が欠かせません1922。頻発月経が疑われるときに確認すべきポイントや、PALM-COEIN分類に基づく原因の整理、日常生活でできる工夫については、頻発月経の原因と対処法を詳しく解説したガイドが参考になります。
生理周期は「みんなそうだから」「昔からこうだから」と流してしまいがちなテーマですが、実はあなたの体の今と未来を映し出す、とても大切なサインです。この記事で紹介されている正常な周期の基準や年齢による変化、受診を検討すべき具体的なサインを手がかりに、「我慢」ではなく「知ること」と「相談すること」を選んでみてください。小さな違和感に耳を傾けることが、これからの毎日を少しずつ軽く、安心できるものにしていく第一歩になります。
1. 生理周期(月経周期)とは?基本のキを理解しよう
まずは、「生理周期とは何か」をシンプルに押さえておきましょう。難しい専門用語をすべて覚える必要はありませんが、仕組みの全体像を知っておくと、自分の周期の変化や検査結果の意味がぐっと理解しやすくなります。
生理周期(月経周期)とは、生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの日数のことを指します。この周期的な変化は、女性の体が妊娠に備えるために、ホルモンの指令によってコントロールされる非常に精巧なメカニズムです。周期の長さや出血の状態は、卵巣や子宮だけでなく、脳や全身のコンディションを反映するため、「第5のバイタルサイン」と呼ばれることもあります。
1.1. 生理周期の正しい計算方法
ご自身の周期を把握するための計算は難しくありませんが、数え方を少し間違えると「正常」かどうかの判断もずれてしまいます。まず、生理が始まった日を「1日目」として記録します。そして、次に生理が来た日の前日までを数えます。その日数が、あなたの生理周期の長さとなります。
例えば、4月1日に生理が始まり、次の生理が4月30日に始まった場合、4月1日を1日目として29日まで数えるので、周期は29日間となります。この記録を数ヶ月続けることで、ご自身の平均的な周期の長さや規則性を知ることができます。最近は、生理管理アプリやスマートウォッチなどを使って自動的に記録できるツールも増えていますが、紙のカレンダーに○をつけるだけでも十分役立ちます81213。
大切なのは、「1回分だけで判断しない」ことです。たまたま仕事が忙しかったり、体調を崩したりした月は、いつもより早く来たり遅れたりすることがあります。少なくとも3周期以上の記録を並べて、全体としてどのくらいの間隔で来ているのか、変動の幅はどれくらいかを確認するようにしましょう。
1.2. 体の中で何が起きている?卵巣と子宮の2つのサイクル
生理周期は、脳の視床下部、下垂体、そして卵巣が連携してホルモンを分泌する「視床下部-下垂体-卵巣(HPO)系」という司令系統によって緻密に調節されています2。この過程は、主に2つの連動したサイクルから成り立っています。それが「卵巣周期」と「子宮内膜周期」です。多くの解説ではこれらを一つの流れで説明しますが、両者を分けて理解することで、「なぜ生理が起こるのか」「なぜ周期が乱れると妊娠しづらくなるのか」といった因果関係がより明確になります。
卵巣のサイクル(卵胞期→排卵期→黄体期)
卵巣周期は、卵子を成熟させ、排卵するためのサイクルです。妊娠を望む人にとっても、避妊や妊娠の計画を立てたい人にとっても、卵巣のサイクルを知っておくことは大きな助けになります。
- 卵胞期(Follicular Phase): 生理初日(1日目)から始まり、排卵で終わります。下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)の働きで、卵巣の中にある複数の卵胞が成長を始めます2。成長する卵胞はエストロゲン(卵胞ホルモン)を分泌し、これが子宮内膜を厚くさせます。周期の長さの変動は、主にこの卵胞期の長さによって決まります7。ストレスや体重変化などの影響を受けやすい部分でもあり、「今月はいつもより生理が遅れた」というときは、卵胞期が長くなっていることが多いと考えられます。
- 排卵期(Ovulation): エストロゲンの増加がピークに達すると、下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が急激に大量放出されます(LHサージ)。この刺激により、最も成熟した卵胞が破れて卵子を放出します。これが「排卵」です7。排卵は通常、次の生理開始日の約14日前に起こり、この時期が最も妊娠しやすい「妊娠可能期間」となります8。とはいえ、個人差や周期による変動もあるため、「必ず14日前」と決めつけてしまわないことも大切です。
- 黄体期(Luteal Phase): 排卵後の卵胞は「黄体」という組織に変化します。黄体は、妊娠の準備をするために重要なプロゲステロン(黄体ホルモン)を大量に分泌し、受精卵が着床しやすいように子宮内膜をさらに成熟させます7。妊娠が成立しなかった場合、黄体は次第に萎縮し、ホルモンの分泌が急激に減少します。このホルモンの低下が生理を引き起こし、新しいサイクルが始まります9。黄体期は多くの人でおおむね13〜15日程度と比較的一定であり、「生理が来そうな不調(イライラ、浮腫み、胸の張りなど)」はこの時期に出やすくなります。
子宮のサイクル(月経期→増殖期→分泌期)
子宮内膜周期は、卵巣から分泌されるホルモンの影響を受けて子宮内膜が変化するサイクルです。卵巣の変化とセットで理解しておくと、エコー検査や子宮内膜の厚さの説明もイメージしやすくなります。
- 月経期(Menstrual Phase): 妊娠が成立せず、エストロゲンとプロゲステロンのレベルが低下すると、厚くなった子宮内膜を維持できなくなり、剥がれ落ちて血液と共に体外へ排出されます。これが「月経(生理)」です9。月経血には、血液だけでなく子宮内膜のかけらなども含まれており、レバーのような塊として出てくることもあります。
- 増殖期(Proliferative Phase): 卵胞期に対応します。卵巣から分泌されるエストロゲンの増加に伴い、剥がれ落ちた子宮内膜が再び厚くなり始めます2。この時期は、子宮内膜が着床に備えて「ふかふかのベッド」を整えているイメージです。
- 分泌期(Secretory Phase): 黄体期に対応します。黄体から分泌されるプロゲステロンの作用で、子宮内膜はさらに厚く、柔らかくなり、受精卵が着床(妊娠の成立)するのに最適な状態になります2。この時期のホルモンバランスの変化が、眠気やだるさ、気分の落ち込みなど、いわゆるPMS(月経前症候群)の症状にも関わっています。
このように、卵巣と子宮で別々の「サイクル」が進みつつ、ホルモンによって密接に連携しているのが生理周期です。どこか一つの部位だけでなく、脳・ホルモン・卵巣・子宮・全身の状態が影響し合っているため、ストレスや生活リズムの乱れ、体重の変化などでも周期が乱れやすくなります。
2. あなたの生理周期は正常?日本産科婦人科学会が定める基準
「自分の周期は普通なのか、それとも異常なのか」を考えるとき、まず頼りにしたいのが日本の専門学会が示す公式な基準です。巷のウェブサイトやSNSの情報だけに頼ると、過度に不安になったり、逆に注意すべきサインを見逃してしまうこともあります。ここでは、日本産科婦人科学会(JSOG)が「産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2023」で示している定義をもとに、正常な生理周期の目安を整理します1。
2.1. 「正常」を定義する3つの指標:周期・期間・規則性
JSOGのガイドラインでは、正常な生理周期は次の3つの指標で定義されています1。
- 周期の長さ(Frequency): 25日から38日の間。
- 出血持続期間(Duration): 8日以内。実際には3〜7日で終わる人が多いとされています214。
- 周期の規則性(Regularity): 直近の数周期のうち、最も短い周期と最も長い周期の差が、年齢に応じて以下の範囲内であること。
- 18~25歳: 9日以内
- 26~41歳: 7日以内
- 42~45歳: 9日以内
例えば、ある人の最近3回の生理周期が「27日→31日→28日」だった場合、最短27日と最長31日の差は4日なので、26~41歳の基準(7日以内)に当てはまります。一方、「24日→38日→40日」といった大きなばらつきが続く場合は、正常の範囲から外れる可能性があります。
なお、日本産婦人科医会などの資料では「正常な月経周期は25〜38日、持続日数は3〜7日」と表現されることもあり21018、ガイドラインの「8日以内」という上限と大きく矛盾しているわけではありません。実際の診療では、「毎回8日以上長く続く」「だらだら出血が続き日常生活に支障がある」といった全体の状況を踏まえて評価されます。
2.2. 国際基準との比較
これらの日本の基準は、国際産科婦人科連合(FIGO)が定める国際基準とほぼ一致していますが、わずかな違いを理解しておくと、海外の情報や英語論文を読むときにも役立ちます。FIGOは、正常な月経周期の長さを24〜38日、出血日数を8日以内と定義しており、日本の基準とは「周期の下限が1日違う」程度の差です2520。
| 指標 | 日本の基準(JSOG 2023)1 | 国際基準(FIGO)2 |
|---|---|---|
| 周期の長さ | 25~38日 | 24~38日 |
| 出血持続期間 | 8日以内(実際には3〜7日が多い) | 8日以内 |
| 周期の規則性(周期間の変動) | 年齢により7~9日以内 | 概ね同様の範囲 |
このように、日本のガイドラインは国際的な枠組みと整合性を保ちつつ、日本人女性のデータや診療現場の実情に即した形で細かく定義されています。「海外サイトでは24日からと書いてあるのに、日本の資料では25日からと書いてある」といった違いは、「誤り」ではなく、どの基準を採用しているかの違いと理解するとよいでしょう。
2.3. 年齢で周期は変わるのが当たり前:日本人女性31万人のデータから見る変化
生理周期は一生を通じて一定ではなく、年齢と共に変化するのが自然な姿です。「10代の頃はバラバラだったのに、20代になってから安定してきた」「40代に入ってから急に周期が短くなってきた」といった変化は、多くの人に見られます。こうした変化が「年齢による自然なものなのか」「病気が隠れている可能性があるのか」を考えるうえで、客観的なデータは大きな手がかりになります。
生理管理アプリ「ルナルナ」を運営する株式会社MTIと国立成育医療研究センターが共同で行った研究では、日本人女性約31万人、約600万周期にも及ぶ大規模データが解析されました3。この研究は、日本の女性の生理周期が年齢によってどのように変化するかを明らかにした画期的なものです。
この研究の主な発見は以下の通りです。
- 周期の長さの変化: 平均周期日数は10代から徐々に長くなり、23歳でピーク(平均30.7日)に達します。その後は年齢と共に徐々に短くなり、45歳で最短(平均27.3日)となった後、閉経に向けて再び長く、不規則になっていきます3。
- 基礎体温(BBT)の変化: 高温期(黄体期)の体温は29歳まで上昇し(平均36.7℃)、42歳以降に低下し始めます。一方で、低温期(卵胞期)の体温は年齢による変動が見られませんでした3。
- 季節の影響: 基礎体温は夏に高く冬に低いという季節変動が見られますが、生理周期の長さに有意な季節変動は認められませんでした3。
| 年齢層 | 平均周期日数の変化傾向 | 平均基礎体温(高温期)の変化傾向 |
|---|---|---|
| 10代~23歳 | 徐々に長くなり、23歳でピーク(30.7日)を迎える | 徐々に上昇する |
| 23歳~29歳 | 徐々に短くなり始める | 29歳でピーク(36.7℃)を迎える |
| 30歳~42歳 | 短くなる傾向が続く | 安定している |
| 42歳~45歳 | 45歳で最短(27.3日)となる | 低下し始める |
| 45歳以降 | 再び長くなり、不規則になる | 低下傾向が続く |
このデータは、「昔と比べて周期が変わってきたけれど大丈夫なのかな?」という不安を抱えたときに、「年齢による自然な変化なのか、それとも受診が必要なサインなのか」を考えるための参考になります。例えば、40代で周期が短くなってきた場合、閉経に向けた自然な変化である可能性もあれば、子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの病気が関わっている可能性もあります。「年齢だから仕方ない」と決めつけずに、「年齢変化」と「病気のサイン」の両方の視点からチェックしていくことが大切です。
3. 生理周期が乱れるのはなぜ?考えられる原因
安定していた生理周期が乱れると、多くの人が「どこか悪いのではないか」と不安になります。生理周期の乱れにはさまざまな原因があり、その多くは生活習慣やストレスなどの一時的な要因から、婦人科系の病気、全身の病気まで幅広く関わっています。ここでは、代表的な原因と、その背景にあるメカニズムを整理します。
3.1. ストレスや生活習慣の乱れ
生理周期をコントロールしているホルモンの司令塔は、脳の視床下部にあります。この部分はストレスの影響を非常に受けやすいため、精神的・身体的なストレスはホルモンバランスの乱れに直結し、生理不順を引き起こす大きな原因となります。睡眠不足や夜勤、シフト勤務、長時間労働なども、視床下部や自律神経に負担をかけます。
日本の働く女性とストレスの研究
特に、現代日本の労働環境におけるストレスは無視できません。2025年に発表された大阪大学の研究では、職場でストレスチェックと職員健診を受けた女性教職員2,078人を最大4年間追跡し、心身のストレス反応が高いほど月経不順の発生リスクが高まることが確認されました5。
ストレスチェックの「心身のストレス反応」が最も低いグループと比べて、ストレス反応が高いグループでは、月経不順の発生リスクが最大約2.2倍に増加していました5。「忙しくて休めない」「常にプレッシャーを感じている」「眠れない」といった状態が続くと、単に気分が落ち込むだけでなく、月経周期にも影響してしまうことが科学的にも示されつつあります。
「我慢」の文化がもたらす課題
さらに、日本社会に根強い「我慢(gaman)」の文化も、健康問題を見過ごす一因となっています。ニッセイ基礎研究所などの調査では、10代の女子の約4割が月経に伴うつらい症状を「我慢している」と回答し10、症状があっても婦人科を受診したことがない人が約半数に上るという報告もあります11。
日本の女性が経験する一般的な症状としては、「イライラする」「気分が落ち込む」「集中しづらい」といった精神的な症状や、「下腹部痛」「腰痛」「頭痛」などの身体症状が挙げられます41012。これらは単なる「体質」ではなく、適切な治療やサポートの対象となる症状です。「みんなつらいから」「自分だけじゃないから」と我慢してしまうことで、学校や仕事、家事・育児に支障が出ている人も少なくありません。
3.2. 過度なダイエットや体重変動
急激な体重減少や過度なダイエットは、視床下部に「今は妊娠に適した時期ではない」という信号を送り、排卵を抑制してしまうことがあります。体脂肪率が極端に低下すると、エストロゲンなどのホルモン産生が妨げられ、無月経(体重減少性無月経)に至ることもあります17。特に、スポーツやダンス、芸術などの分野で体重管理が重視される環境では注意が必要です。
逆に、短期間での急激な体重増加や肥満も、インスリン抵抗性やホルモンバランスの乱れを介して、生理不順や排卵障害の原因となることがあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、肥満や体重増加と月経異常が組み合わさって見られることが多く、生活習慣の見直しが治療の一部となることも少なくありません1516。
3.3. 婦人科系の病気の可能性
生活習慣に大きな問題がないにもかかわらず生理不順が続く場合、何らかの婦人科系疾患が隠れている可能性があります。代表的なものには、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、甲状腺機能の異常などがあります1717。これらの病気は、早期に適切な評価と治療方針の検討を行うことで、痛みや出血、将来の妊孕性への影響を軽減できる可能性があります。
「最近周期が不規則になってきた」「生理痛が以前より強くなってきた」「生理以外の出血が増えた」といった変化が数ヶ月以上続くときは、年齢やライフステージを踏まえたうえで、一度婦人科で相談することを検討しましょう。
4.【症状でチェック】生理不順の種類と病院へ行くべきサイン
生理周期の異常は、いくつかのパターンに分類されます。「なんとなく不順」と感じるだけでなく、自分の状態を客観的な言葉で表現できると、医師に相談するときにもスムーズです。ここでは、JSOGのガイドライン1やその他の信頼できる情報源136に基づき、代表的な生理不順のタイプとその定義、そしてどのような場合に医療機関を受診すべきかについて解説します。このセクションは、これまでの情報を実践的な行動に移すための具体的なチェックリストです。「我慢」せずに専門家の助けを求めるための客観的な基準としてご活用ください。
4.1. 異常子宮出血(AUB)とPALM-COEIN分類とは?
医療の現場では、生理不順を含む月経に関する問題を評価する際、「異常子宮出血(Abnormal Uterine Bleeding:AUB)」という国際的な標準用語が用いられるようになりました。これは、以前使われていたさまざまな分かりにくい用語を統一したものです1520。そして、医師がAUBの原因を体系的に調べるために用いるのが「PALM-COEIN」という分類法です。
PALM-COEIN分類は、患者さんにとっては、医師が何を探しているのかを知るための「地図」のようなものです。診察室で「AUB-O(排卵障害)かもしれませんね」と説明されたときに、この分類の全体像を知っていると、次にどのような検査や治療の話が出てきそうかをイメージしやすくなります。
- PALM(構造的な原因): 超音波検査などで確認できる形態的な異常。
- Polyp(ポリープ)
- Adenomyosis(子宮腺筋症)
- Leiomyoma(子宮筋腫)
- Malignancy & hyperplasia(悪性腫瘍・子宮内膜増殖症)
- COEIN(構造的ではない原因): 形態的な異常以外の機能的な問題。
- Coagulopathy(凝固異常)
- Ovulatory dysfunction(排卵障害)
- Endometrial(子宮内膜の異常)
- Iatrogenic(医原性:薬剤の影響など)
- Not yet classified(その他、未分類)
実際の診療では、「超音波で子宮筋腫が見つかったので、PALMのLに当てはまりそうです」「出血量が多く検査で血液凝固異常が疑われるので、COEINのCかもしれません」といった形で、複数の原因を組み合わせて評価することもあります。
4.2. 生理不順の主な種類
生理不順は、「周期」「出血の長さ」「出血量」「痛み」などの特徴によって、いくつかのタイプに分類されます。ここでは主なものを整理します1611。
- 無月経(Amenorrhea): 妊娠していないにもかかわらず、90日以上月経がない状態。初経後、3ヶ月以上生理が来ない場合は「続発性無月経」とされます111。
- 稀発月経(Infrequent Menstruation): 周期が39日以上続く状態。40日以上90日未満の間隔で来る場合などが含まれます611。
- 頻発月経(Frequent Menstruation): 周期が24日より短い状態。1ヶ月に2回以上出血が来るケースなどが含まれます1922。
- 過長月経(Prolonged Menstruation): 出血が8日より長く続く状態113。
- 過多月経(Heavy Menstruation): 出血量が非常に多い状態。客観的な定義は難しいですが、ナプキンが1~2時間もたない、大きな血の塊が繰り返し出るなどの症状が目安となります6。
- 月経困難症(Dysmenorrhea): 生理中に起こる、日常生活に支障をきたすほどの強い痛み。主にプロスタグランジンという物質が原因で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が第一選択の治療薬となります14。子宮内膜症などの器質的な病気が隠れていることもあります。
4.3. 病院へ行くべきサイン:行動のためのガイド
「受診した方がよいのは分かるけれど、どのタイミングで行けばいいのか分からない」という声はよく聞かれます。以下の表は、代表的な症状と受診の目安を整理したものです。あくまで一般的な目安であり、これより軽い場合でも不安があれば受診して構いません。
| 症状・異常 | 説明 | 受診を検討するタイミング |
|---|---|---|
| 無月経 / 周期が非常に長い | 妊娠の可能性がないのに、90日以上生理が来ない。または、周期が常に39日を超える。 | すぐに受診してください。特に3ヶ月以上生理がない場合は必須です。 |
| 周期が不規則 | これまで順調だった周期が急に不規則になった。周期の変動が7~9日(年齢による)を超える。 | この状態が3周期以上続く場合。 |
| 周期が短い(頻発月経) | 周期が常に24日より短い。1ヶ月に何度も生理が来る。 | この状態が数ヶ月続く場合。 |
| 出血が長い(過長月経) | 出血が8日以上だらだらと続く。 | この状態が頻繁に起こる場合。 |
| 出血が多い(過多月経) | ナプキンやタンポンが1~2時間もたない。レバーのような大きな血の塊が出る。 | 出血量が日常生活に影響したり、貧血症状(疲れやすい、めまい)を引き起こしたりする場合。 |
| 不正出血 | 生理期間以外に出血がある。 | 頻繁に起こる、または出血量が多い場合。 |
| 痛みがひどい(月経困難症) | 市販の鎮痛剤が効かないほどの強い痛みで、仕事や学業に支障が出る。 | 痛みが急に現れた、または以前より悪化している場合。 |
| 初経が来ない | 15歳になっても一度も生理が来ていない。 | 原因を調べるために受診が必要です15。 |
表の条件に当てはまらない場合でも、「なんとなく変だな」「不安が頭から離れない」と感じるときは、それ自体が受診の理由になります。生理の悩みは人と比べづらく、「こんなものだろう」と我慢してしまいがちですが、「一度相談してみる」ことが、安心して生活するための大切な一歩です。
5. 生理不順の裏に隠れているかもしれない主な病気
持続的な生理不順は、治療が必要な病気のサインであることがあります。ここでは、代表的な疾患について、あくまで「特徴のイメージ」をつかむために概要を整理します。実際の診断は、問診・内診・超音波検査・血液検査などを組み合わせて行われます。
5.1. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害(AUB-O)を引き起こす最も一般的な原因の一つで、生理不順や無月経につながります。日本での診断には、1)月経異常、2)超音波検査で卵巣に多数の小さな卵胞が見える(多嚢胞性卵巣)、3)ホルモンバランスの異常(男性ホルモンが高い、またはLHが高い)といった所見を総合的に評価することが推奨されています15。
PCOSでは、排卵が起こりにくくなるため、「生理が数ヶ月に一度しか来ない」「基礎体温をつけても二相性にならない」などの特徴が見られることがあります。また、体重増加やニキビ、多毛(体毛が濃くなる)などを伴うこともあります16。
妊娠を希望しない場合の治療は、まず生活習慣の見直し(適正体重への調整、運動、食事)から始まり、ホルモン療法によって周期を整え、子宮内膜を保護することが中心となります1516。妊娠を希望する場合は、排卵誘発剤などを用いた治療が検討されることもあります。
5.2. 子宮内膜症
子宮内膜症は、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜に似た組織が、子宮の外(例えば卵巣や腹膜など)で増殖する病気です。これは、激しい月経困難症や過多月経の主な原因となります17。月経のたびに病変部位も出血し、炎症や癒着を起こすことで、強い痛みや不妊の原因となることがあります。
治療の目的は、痛みの軽減、将来の妊娠能力の温存、そして合併症の予防です。低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)やディナゲスト、GnRHアゴニスト・アンタゴニストといったホルモン療法が一般的に用いられます1718。症状の程度や年齢、妊娠希望の有無によって、治療の選択肢は変わります。
5.3. 甲状腺の病気など
甲状腺ホルモンは、全身の代謝と深く関わっており、女性ホルモンの働きとも密接に関連しています。甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や機能低下症(橋本病など)があると、生理不順や出血量の変化、無月経などが生じることがあります7。動悸や体重変化、疲れやすさ、寒がり・暑がりなどの症状を伴う場合は、血液検査で甲状腺機能をチェックすることが勧められます。
その他にも、血液凝固異常、慢性疾患、薬剤(抗凝固薬、ホルモン剤など)の影響などが、月経異常の背景にあることがあります。生理不順が続く場合は、「婦人科」だけでなく「全身の健康」の観点からも評価してもらうことが大切です。
6. 日常生活でできるセルフケアと記録のコツ
生理周期の乱れに対して、「自分でできることは何もない」と感じてしまう人もいますが、日常生活の中でできる小さな工夫が、体調の安定や受診時のコミュニケーションに大きく役立ちます。ここでは、医療機関の受診と合わせて取り入れたいセルフケアと記録のポイントを紹介します。
6.1. 周期・症状・生活状況をセットで記録する
生理管理アプリや手帳を使って、「生理が来た日」だけでなく、「体調や気分の変化」「睡眠時間」「ストレスの度合い」なども一緒にメモしておくと、原因を考えるヒントになります81213。
- 生理開始日・終了日
- 出血量の目安(ナプキンやタンポンの交換頻度、塊の有無など)
- 痛みの程度(0〜10のスケールなど)と鎮痛薬の使用状況
- 精神的な症状(イライラ、不安、気分の落ち込みなど)
- 睡眠時間やシフト勤務の有無
- 大きなストレスイベント(仕事の繁忙期、試験、家庭の変化など)
これらを1〜3ヶ月分でも記録しておくと、受診時に「単にバラバラ」に見えていた周期が、「特定の時期(忙しい時期)にだけ乱れている」など、具体的なパターンとして浮かび上がることがあります。
6.2. 食事・睡眠・運動のバランスを整える
ホルモンバランスは、睡眠・栄養・運動と深くつながっています。極端なダイエットや夜更かしが続くと、視床下部や卵巣に負担がかかり、生理不順のリスクが高まることが知られています17。
- 主食・主菜・副菜を意識したバランスの良い食事をとる
- カフェインやアルコールの摂り過ぎに注意する
- できる範囲で毎日同じ時間帯に寝起きする
- ウォーキングや軽めのストレッチなど、無理のない運動を続ける
「完璧を目指す」のではなく、「できる範囲で少しずつ整えていく」ことが大切です。どうしても生活リズムを整えにくい仕事(夜勤・シフト制など)の場合は、そのこと自体も受診時に医師へ伝えるようにしましょう。
6.3. 「我慢しない」ための一歩を決めておく
痛みや不正出血があっても、「忙しいから」「行きづらいから」と受診を先延ばしにしてしまう人は少なくありません。あらかじめ「ここまで来たら必ず受診する」という自分なりのラインを決めておくと、「我慢し続ける」状態から抜け出しやすくなります。
- 市販薬を飲んでも毎回痛みで仕事や学校を休むほどつらいとき
- ナプキンが1〜2時間もたない状態が続くとき
- 3ヶ月以上生理が来ないとき
- 「何となく不安」が数週間〜数ヶ月続くとき
これらはすべて、「一度婦人科で相談してよい」サインです。自分を責める必要はありません。
7. ライフステージ別に見る生理周期のポイント
同じ「生理周期の乱れ」でも、思春期なのか、妊娠を考えている時期なのか、更年期に近い年齢なのかによって、背景や対処の優先順位は変わってきます。ここではライフステージ別のポイントを簡単に整理します。
7.1. 思春期(10代)
初経から数年は、排卵がまだ安定せず、周期が不規則なことが少なくありません210。ただし、「半年以上生理が来ない」「強い貧血症状がある」「学校生活に支障が出るほどの痛みがある」といった場合は、思春期でも受診が必要です。学校や部活、家族には言いづらい場合もあるかもしれませんが、保健室や学校医、かかりつけの小児科・婦人科など、話しやすい窓口を見つけることが大切です。
7.2. 妊娠を考えている時期
妊娠を希望している場合、生理周期は「妊娠しやすいタイミング(排卵時期)」を考えるうえで重要な指標になります。周期が25〜38日の範囲でほぼ安定しており、基礎体温が二相性になっている場合、多くは排卵が起こっていると考えられます37。
一方で、周期が39日以上と長い、24日未満と短い、3ヶ月以上無月経などの場合は、排卵がうまく起こっていない可能性があり、妊娠を希望するのであれば早めの相談が勧められます。妊娠をとくに急いでいない場合にも、「将来に備えて、今のうちに自分の周期や卵巣の状態を確認しておきたい」という相談も増えています。
7.3. 産後・授乳期
出産後は、授乳によるホルモン変化などの影響で、生理の再開時期や周期が大きく変化することがあります。完全母乳の場合、数ヶ月〜1年程度生理が戻らないこともあり得ますが、「産後の無月経だから必ず大丈夫」とは言い切れません。出産から一定期間が経過しても生理が全く戻らない場合や、戻った後に極端な不正出血が続く場合は、一度婦人科で相談しましょう。
7.4. 更年期に向かう時期(40代〜)
40代半ばに近づくと、卵巣の機能低下に伴い、生理周期が徐々に短くなったり、不規則になったりすることがあります318。これは閉経に向かう自然な変化の一部ですが、同じ時期に子宮筋腫や子宮体がんなどのリスクも高まってくるため、「年齢のせい」と片付けずに、定期的な検診や必要に応じた検査を受けることが重要です。
特に、「これまでになかった不正出血」「閉経が近いと言われていたのに、急に大量の出血が続く」といった場合には、早めの受診が勧められます。
8. 婦人科受診の流れと相談の仕方
「婦人科に行った方がよいのは分かるけれど、何を話せばよいか分からない」「恥ずかしくてうまく説明できる自信がない」という声は珍しくありません。ここでは、受診のときに役立つ準備と、相談のポイントを紹介します。
8.1. 受診前にメモしておきたいポイント
- 最終月経の開始日と、おおよその周期(日数)
- 気になっている症状(例:出血量、痛みの強さ、不正出血、PMSなど)
- 症状がいつから続いているか
- 服用中の薬やサプリメント
- 妊娠歴・出産歴、流産・人工妊娠中絶の経験
- 基礎疾患(甲状腺の病気、糖尿病など)の有無
これらを紙やスマートフォンにメモしておくだけで、診察室で緊張しても必要な情報を伝えやすくなります。
8.2. よくある検査と、その意味
生理不順の評価では、問診に加えて、内診・経膣超音波検査・血液検査(ホルモン、貧血、甲状腺機能など)が行われることが多いです17。必要に応じて、子宮内膜組織検査やMRIなどが追加されることもあります。
検査結果は専門的な用語で説明されることが多いため、「それはどういう意味ですか?」「日常生活では何に気をつければいいですか?」といった質問を遠慮なくして問題ありません。自分の状態を理解することは、治療方針を一緒に考えるうえでとても大切です。
8.3. 相談するときに覚えておきたい一言
うまく言葉にできないときは、次のような一言から始めてみるのも一つの方法です。
- 「生理のことが気になっているのですが、どこまでが『普通』なのか分からなくて不安です。」
- 「痛みや出血で、仕事(学校)に支障が出ています。」
- 「将来の妊娠のことも考えて、今の状態を一度チェックしておきたいです。」
こうした一言がきっかけになって、医師側から必要な質問をしてくれることも多くあります。「こんなこと聞いていいのかな」と迷う内容でも、婦人科では日常的に扱われているテーマです。
よくある質問(FAQ)
Q1: 40代になり、生理周期が短くなってきました。これは異常ですか?
A1: 40代で生理周期が短くなるのは、多くの場合、閉経に向けた自然な変化の一つです。日本人女性31万人を対象とした大規模な調査では、周期の長さは20代前半で最も長く、その後45歳頃に向けて徐々に短くなるという傾向が示されています3。
ただし、周期が24日よりも短くなる(頻発月経)、出血量が多い、不正出血があるなど、他の気になる症状を伴う場合は、子宮筋腫や子宮内膜ポリープ、子宮体がんなどの他の原因も考えられるため、一度婦人科で相談することをお勧めします。
Q2: ストレスで生理が止まってしまいました。どうすれば良いですか?
Q3: ピルを飲むと生理周期はどうなりますか?
Q4: 生理周期が毎回少しずつ違います。どの程度のズレなら「正常」ですか?
Q5: アプリで「排卵日」が表示されますが、どこまで信じてよいのでしょうか?
Q6: 生理痛がひどいとき、市販薬だけに頼り続けても大丈夫ですか?
A6: 市販の鎮痛薬(NSAIDs)は、月経困難症の痛みを和らげるための第一選択薬としてガイドラインでも位置づけられています14。適切な用量とタイミングで使用することで、多くの人が日常生活を送りやすくなります。
しかし、「毎回最大量を飲んでも効かない」「年々痛みが強くなっている」「痛みだけでなく出血量も増えている」といった場合は、子宮内膜症や子宮筋腫など、原因となる病気が隠れている可能性があります。市販薬で我慢し続けるのではなく、一度婦人科で原因を評価してもらうことをお勧めします。
Q7: 生理がある限りは妊娠できるのでしょうか?
結論:自分の体を理解し、「我慢」ではなく「相談」へ
生理周期は、単なる毎月の出来事ではなく、ご自身の健康状態を知らせてくれる貴重なメッセージです。周期を正しく記録し、その意味を理解することは、健康管理の第一歩です。この記事で解説したように、周期の変化には、年齢による自然なものから、ライフスタイルの影響、そして治療が必要な病気のサインまで、さまざまな背景があります。
大切なのは、変化に気づき、「これくらい大丈夫」と我慢し続けるのではなく、必要であれば専門家の助けを求めることです。婦人科を受診することは、決して特別なことではありません。それは、ご自身の体を大切にし、より健やかな未来を送るための積極的で賢明な選択です。
JapaneseHealth.org(JHO)編集委員会は、厚生労働省や日本の専門学会、世界保健機関(WHO)などの信頼できる情報に基づき、今後も日本の生活者の目線に立った分かりやすい情報をお届けしていきます。この情報が、皆さんがご自身の体と向き合い、自信を持って健康に関する決断を下すための一助となることを心から願っています。
参考文献
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- 日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編. (2017). 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017.
- Mayo Clinic. (2022). Menstrual cycle: What’s normal, what’s not. https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/womens-health/in-depth/menstrual-cycle/art-20047186
- 日本産科婦人科学会. (2021). 子宮内膜症取扱い規約 第2部 診療編 第3版.
- Johns Hopkins Medicine. (n.d.). Menstrual Cycle: An Overview. https://www.hopkinsmedicine.org/health/wellness-and-prevention/menstrual-cycle-an-overview
- 日本産婦人科医会. (2017). 正常な生理(月経)の目安を教えてください!.
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- ユビー AI症状チェック. (n.d.). 生理周期がおかしいという症状の原因と関連する病気. https://ubie.app/lp/search/abnormal-menstruation-s375
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