女性の生理:正常な外陰部とは?
女性の健康

女性の生理:正常な外陰部とは?

はじめに

女性の身体において、「陰部」がどのように構成され、どのような役割を担っているのかは大変重要なテーマです。しかし、日常生活では「陰部」と「膣」を混同してしまうことも少なくありません。実際に、陰部のケアを行うつもりが膣内部にまで洗浄剤を入れてしまい、かえってトラブルを引き起こしてしまう例もあります。本記事では、女性の外陰部(以下では便宜上「陰部」と呼びます)の構造と変化、健康的な状態とはどのようなものなのか、また陰部を清潔に保つための具体的なケアについて詳しく解説します。加えて、年齢やライフステージによってどのような変化が起こるのかについても説明していきます。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

なお、本記事はあくまで情報提供を目的としたものであり、医療専門家による個別診断や治療方針の代替にはなりません。気になる症状がある場合は、必ず産婦人科や専門医に相談してください。

専門家への相談

本記事の内容は国内外の信頼できる医療情報をもとに作成しています。ただし、個々の症状・体質によって最適なケアや治療法は異なるため、最終的には産婦人科医、助産師、または専門の医療従事者にご相談いただくことを推奨します。以下に示す研究や医療機関なども参考にしていただくと、より多角的に情報を得ることができます。たとえば、日本産科婦人科学会や国内外の産婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologistsなど)が公表しているガイドラインはエビデンスに基づいた最新の知見が整理されています。

陰部(外陰部)とは?

陰部の構造

陰部とは、一般的に外陰部(Vulva)を指し、膣の外側にある女性の性器全体のことをいいます。具体的には以下のパーツから構成されます。

  • 恥丘(ちきゅう)
    いわゆる“丘”状の部分で、思春期以降は陰毛が生えてきます。
  • 大陰唇(だいいんしん)
    性器の左右に位置する大きな皮膚のひだで、外部からの刺激や雑菌から内側を保護します。
  • 小陰唇(しょういんしん)
    大陰唇の内側にある薄い皮膚のひだで、ここには陰毛は生えません。大陰唇よりも柔らかく、個人差が大きい部分です。
  • 陰核(いんかく/クリトリス)
    性的快感を感じやすい部分で、性感に深く関わる神経が集中しています。陰核の先端には包皮(陰核帽とも)に覆われている場合があります。
  • 尿道口
    膣口のすぐ上にあり、排尿のための出口です。
  • 膣口
    膣の入り口部分です。処女膜が一部を覆っている場合もあります。
  • 前庭(ぜんてい)
    小陰唇で囲まれた領域を指し、尿道口・膣口が含まれます。
  • 会陰(えいん)
    膣口と肛門の間の皮膚部分です。出産時に伸びることが多い箇所でもあります。

これらの部分が外陰部(陰部)としてまとまっていますが、膣(vagina)はこのさらに内側にある管状の器官です。外陰部(陰部)と膣は密接に関係しているものの、ケアの仕方や解剖学的構造上の機能は異なります。

陰部と膣、陰核(クリトリス)の違い

  • 陰核(クリトリス)
    性的快感に特化した器官で、神経が非常に集中しており、刺激を受けると性感が高まります。外陰部の表面に一部が露出しているだけで、体内には根元まで連続した組織が広がっているともいわれています。
  • 陰部(外陰部)
    大陰唇や小陰唇、尿道口など、目で見える部分の総称です。膣の外側に位置し、尿路や膣口を保護するとともに、排泄や性行為の入り口として重要な役割を担います。

  • 内側の管状構造で、生理の際の経血の出口、性交時の挿入部位、分娩経路など、多機能を果たします。膣は自浄作用があるため、むやみに洗浄液を奥まで入れることは推奨されません。

陰部はライフステージでどう変化する?

陰部(外陰部)は年齢とともにホルモンバランスが変化し、その影響を受けやすい部位です。日本国内でも、多くの女性が思春期、妊娠・出産、更年期などのライフステージに応じて外陰部の状態が変化することを実感しています。

思春期

思春期になると、エストロゲンの分泌が活発化し、大陰唇や小陰唇が発達して形が変わり始めます。同時に恥丘や大陰唇部に陰毛が生え、体つきが女性らしく変わっていきます。個人差が大きく、陰毛の量や形などは人それぞれです。また、この時期から月経が始まり、外陰部を清潔に保つ重要性が増します。

妊娠期

妊娠するとエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が増え、陰部への血流が増加し、むくみや腫れを感じることがあります。大陰唇や小陰唇の色が濃くなる、あるいは膣内も含め全体的に色素沈着を起こしやすくなります。さらに、妊娠中は免疫バランスが変わるため、感染症やかゆみなどのトラブルが起こりやすいのも特徴です。もし痛みや異常なおりものが続く場合は、産科医に相談をしましょう。

出産後

出産時には会陰(かいいん)部分が大きく伸展され、場合によっては切開や自然裂傷が起こることがあります。小さな裂傷であれば自然に治癒しますが、大きな傷の場合は縫合が必要です。出産後はホルモンの急激な変化により、しばらくの間は膣内の乾燥や感染症への抵抗力低下が起こりやすくなります。授乳期にはエストロゲンが低下するため、外陰部や膣内の乾燥がさらに顕著になる場合があります。

更年期・閉経期

更年期から閉経にかけてはエストロゲン分泌が徐々に減少し、陰部や膣の粘膜が薄く乾燥しやすくなります。さらに、陰毛が薄くなったり、外陰部の弾力が低下したり、色合いが変わったりすることもあります。この結果、性交時に痛みを感じやすくなる「性交疼痛(dyspareunia)」などのトラブルが生じることがあります。最近の研究では、更年期以降の女性の約半数以上がこうした症状を何らかの形で経験すると報告されています(Salvatoreら, 2021, Int Urogynecol J, 32(4):921-929, doi:10.1007/s00192-020-04568-5)。

どんな形・色でも大丈夫?陰部が健康な状態とは

陰部の形や色、左右の大きさなどは本当に個人差が大きいです。大陰唇や小陰唇の左右非対称はよくあることですし、色もピンクや茶色、褐色系など多岐にわたります。手術やケガなどで外観が変わるケースもありますが、それによってただちに健康上の問題が生じるわけではありません。

異常サインを見逃さないために

以下のような症状が長引く場合は、産婦人科の受診をおすすめします。

  • かゆみやヒリヒリした痛みが続く
  • 異臭を伴うおりものが増加する
  • 陰部に潰瘍、ただれ、イボ状の隆起がある
  • 会陰や膣口のあたりに激しい痛みを感じる
  • 皮膚がただれたりカサカサしたりして、改善が見られない

これらの症状には感染症(細菌、真菌、性感染症など)のほか、皮膚疾患やホルモン異常が関わっている可能性があります。早期発見・早期治療が重要となる場合もあるため、放置せず専門医に相談しましょう。

陰部を清潔に保つケアのポイント

陰部のケアというと「膣内まで洗う」イメージを持つ方が少なくありません。しかし、膣には自浄作用があるため、洗浄剤を奥まで入れる必要はありません。一方、外陰部は汗やおりものなどが付着しやすく、かゆみやにおいの原因になるため、外陰部(陰部)の表面は毎日丁寧に洗うことが望ましいです。

正しい洗い方の基本

  1. ぬるま湯と刺激の少ない洗浄剤を使用
    香料や添加物の多いボディソープは避け、デリケートゾーン専用など、刺激の少ない製品を使います。泡立てネットなどでよく泡立てたうえで、直接肌をこすりすぎないよう注意してください。
  2. 大陰唇や小陰唇を優しく洗う
    片手で大陰唇や小陰唇を開きながら、指の腹を使って優しく洗います。陰核やその周辺も汚れがたまりやすいため、丁寧に泡を行き渡らせましょう。
  3. 膣口周辺はそっと洗う
    膣口は粘膜に近いため、強い刺激を加えないように注意します。膣内に洗浄剤を入れたり、シャワーを直接当てたりするのは避けましょう。
  4. すすぎはしっかり、拭き取りは優しく
    洗浄剤の泡が残ると、かゆみやかぶれの原因になります。ぬるま湯ですすぎ残しがないようにし、清潔なタオルやペーパーで優しく押さえるように拭き取ります。

日常生活で気をつけたいこと

  • 締め付けの強い下着やボトムを避ける
    通気性の良い綿素材を選ぶとムレを防ぐことができます。
  • 生理用品はこまめに交換
    目安として3~4時間ごとに交換し、常に清潔に保ちましょう。
  • 皮膚刺激の強い洗剤や柔軟剤は避ける
    デリケートゾーンが敏感な方は、無香料・無添加の洗剤を使いましょう。
  • 入浴後は早めに下着を着用
    湿ったまま放置すると雑菌が増えやすく、かぶれの原因になる可能性があります。

かゆみや炎症が起こった場合の対処

一時的なかゆみの場合は、まずは陰部を清潔に保ち、締め付けの強い服を避けるなどのセルフケアで対処しましょう。かゆみが数日たっても治まらない、またはおりものが異常に増えるなどの症状がある場合は、婦人科を受診し、原因を特定することが大切です。

実際、2022年に発表された研究(Marx ら, BMC Pregnancy Childbirth, 22(1):303, doi:10.1186/s12884-022-04607-x)では、妊娠中の外陰部・膣カンジダ症への対処として、早期の医療受診と適切な抗真菌薬の使用が症状の速やかな改善につながると報告されています。妊娠以外のケースでも、同様に原因を早期に見極め、適切な治療を行うことが重要とされています。

よくある疑問:陰部の「におい」「色」「形」

においが気になる場合

陰部は下着や衣服で密閉されやすく、汗や皮脂、おりものがたまりがちです。通常でもある程度の特有のにおいはありますが、においがきつくなったり、おりものの色が変わったりする場合は、細菌性膣炎や性感染症などの可能性があります。気になる変化があれば早めに専門医を受診しましょう。

色の違いは正常?

先述のとおり、肌の色は人種や遺伝によっても異なります。薄いピンク~褐色まで幅広い色のバリエーションがあり、左右の小陰唇でも色が違うことは珍しくありません。急に色素沈着が進む、暗褐色や灰色に変化しただけでなく痛みやかゆみがあるといった症状が出た場合には注意が必要です。

形の左右差や大きさ

大陰唇や小陰唇の大きさが左右で違うのはまったく珍しいことではなく、生まれつきの要因が強いです。ただし、片側だけ極端に腫れて痛みがある、あるいは歩行がしづらいほど大きくなってきたという場合は炎症や感染が疑われるので、医療機関を受診してください。

外陰部の健康と性行為・出産への影響

陰部が清潔で健康な状態を保つことは、性感や性生活の快適さにもつながります。たとえば、陰部の乾燥や炎症があると、性交時に痛みを感じるリスクが高くなることが指摘されています(日本産科婦人科学会のガイドライン等)。出産においても、外陰部や膣周辺の柔軟性が保たれているほど、裂傷などのリスクが軽減されるという報告もあります。

2023年に発表された国内の研究(※実査データは専門学会誌に掲載)では、外陰部の保湿と局所的なマッサージを数週間続けることで、会陰部の伸展性が改善する可能性が示唆されています。とくに出産前の妊婦を対象に行われた調査であり、日本人女性のライフスタイルにも比較的合わせやすいセルフケアとして注目されています。

より快適な生活を送るために

ホルモン補充療法(HRT)や保湿クリームの活用

更年期以降は、エストロゲン低下による膣・外陰部の乾燥感に悩まされる方が多いです。保湿クリームやエストロゲン軟膏などを局所に使用することで、乾燥によるかゆみやヒリヒリ感を軽減できます。また、医師の判断でホルモン補充療法(HRT)を行う場合もありますが、乳がんリスクなどとの関連も指摘されているため、メリット・デメリットを専門医とよく相談することが大切です。

生活習慣の見直し

  • バランスの良い食事と水分補給
    便秘や過度のダイエットは骨盤内の血流を悪化させる要因になります。ビタミンやミネラル、適度なタンパク質を含む食事を心がけましょう。
  • 適度な運動
    骨盤底筋のエクササイズ(いわゆる“骨盤底筋体操”)は、膣や外陰部の筋力維持に役立つとされています。これにより尿漏れの予防にもつながります。
  • ストレス管理
    ストレスはホルモンバランスを乱す一因になります。入浴やリラクゼーション、良質な睡眠を確保するなど、自分に合った方法でケアしましょう。

おすすめのセルフチェック方法

自分の陰部がどのような状態なのかを知ることは、異常の早期発見にもつながります。生理前後や入浴時など、定期的に以下のようなポイントを確認してみましょう。

  1. 鏡で外陰部の色や形を確認
    日々の変化やトラブルのサインに気づきやすくなります。
  2. おりものの状態を観察
    色やにおい、量などがいつもと違うかどうかを把握し、明らかに異常なら婦人科へ。
  3. かゆみや痛みがないか
    下着や衣類の摩擦、合わない洗剤の使用などが原因になることもあるため、小さな違和感でもチェックを。

おりものと外陰部の関係

おりもの(膣分泌液)は、膣と外陰部の健康状態を示す指標のひとつです。正常なおりものは、半透明から白濁色で軽い酸味のあるにおいが特徴ですが、細菌性膣炎やカンジダなどに感染すると、おりものの色や量、においが大きく変化します。

2019年以降の数々の研究でも、おりものの異常は腟内フローラの乱れと関連が深いことが明らかになっています。たとえば2022年に行われたシステマティックレビュー(Rezaeiら, Int J Reprod Biomed, 20(2):97-106, doi:10.18502/ijrm.v20i2.10565)では、腟内フローラの乱れが外陰部の不快感や性的満足度の低下につながる可能性があると報告されています。日本人女性においても、ストレスや食生活の変化、過度な洗浄などが腟内環境に影響を及ぼすケースが指摘されています。

婦人科を受診するタイミング

  • 症状が1週間以上続く
    かゆみ、痛み、腫れ、おりものの異常などが長引く場合は要受診。
  • 大きな腫れやしこり
    バルトリン腺嚢胞や皮膚炎、性感染症などの可能性もあるため、放置は禁物です。
  • 性交時の強い痛み
    更年期以降のエストロゲン低下や感染症、会陰部の損傷などさまざまな要因が考えられます。
  • 原因不明の出血
    生理以外の出血が続く、性交後に出血が起こるなどの場合も診察が必要です。

まとめ:陰部のケアは“やりすぎ”より“適切に、やさしく”

陰部のケアは「膣内まで洗う」のではなく、あくまで外側を清潔に保つことが大切です。むやみに強い洗浄剤で膣奥まで洗ってしまうと、自浄作用を損なうだけでなく、かえって細菌感染リスクを高める可能性があります。生活習慣、下着の素材や洗剤選びなど、普段のちょっとした工夫が健康な外陰部を保つ第一歩です。

とはいえ、万が一違和感や痛み、不安な兆候を感じたら、迷わず専門の医師や助産師、または産婦人科クリニックなどを受診し、相談しましょう。早期発見と早期対応こそが、女性の性と健康を守るうえで最も重要なポイントです。

参考文献


最後に

本記事で取り上げた情報は、女性の陰部(外陰部)について正しい知識を得るための参考資料です。形や色、左右差は人それぞれ大きく異なりますが、日々のケアによってトラブルの予防や早期発見が可能になります。万が一気になる症状が続く場合は、専門家の診察を受けることを強くおすすめします。とくに、かゆみや痛みが長引く、おりものの量やにおいが急に変化するなどの異常があれば、迷わず医療機関へ足を運んでください。

本記事は医療専門家の診断や指示の代わりになるものではなく、あくまで参考情報として提供しています。個別の症状や治療に関する最終判断は、必ず医師をはじめとする有資格の医療従事者にご相談ください。私たち自身が自分の身体をしっかりと理解し、大切にケアしていくことで、より健康的で快適な毎日を過ごせるようになっていくでしょう。

免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者様の症状や状態に合わせた医療的アドバイスではありません。気になる症状がある場合は医療機関での受診をおすすめします。

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