片側卵巣摘出でも妊娠できる?成功する受胎の秘訣とは
妊娠準備

片側卵巣摘出でも妊娠できる?成功する受胎の秘訣とは

 

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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

はじめに

卵巣を一つしか持たない場合、妊娠にどのような影響があるのか――これは多くの女性にとって大変気になるテーマです。たとえば、病気や手術などの理由で片方の卵巣を切除した場合、「果たして妊娠は可能なのだろうか」「妊娠率は低下しないだろうか」と不安を抱く方も少なくありません。一方で、先天的に卵巣が片方しかない場合もあり、そうした背景を抱えながら無事に出産した例が多数存在していることも事実です。本記事では、片側の卵巣を切除する理由や、それが妊娠・出産にどのような影響を及ぼすのか、そして妊娠を望む際にはどのような点に気をつければよいのかを詳しく解説します。医療の進歩や近年の研究結果などもあわせて整理しながら、なるべくわかりやすくお伝えできればと思います。

専門家への相談

本記事で取り上げる内容には、産婦人科領域の医学的情報や、複数の研究・文献情報が含まれています。ただし、個々の症例はそれぞれ異なる要因があり、誰にでも当てはまるわけではありません。もし卵巣の切除や将来的な妊娠を検討している場合は、事前に医師に相談し、専門家の診察や検査を受けることをおすすめします。下記の参考文献として示している海外の医療機関の情報や学会誌なども含め、複数の信頼できる情報源が存在しますが、あくまでも本記事は一般的な医学知識の紹介であり、個別事例に関する最終的な判断は専門医に委ねるのが望ましいでしょう。

片側の卵巣を切除する主な原因

片側の卵巣を切除する医学的な理由はいくつかあります。原因によっては妊娠への影響が大きく異なる場合もあるため、まずはどのような病態や手術適応があるのかを把握しておくことが大切です。

1. 卵巣のう腫(卵巣嚢胞)

卵巣に液体あるいは固形物質を含む嚢胞(のう腫)ができることがあります。多くの場合は無症状で自然に小さくなるケースもありますが、大きくなりすぎたり、多数の嚢胞が形成される多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの場合は、痛みや出血、月経異常などを引き起こすことがあります。重度の嚢胞が見つかったり、悪性化のリスクを排除できない場合などには、片側の卵巣を切除することがあります。

2. 卵巣がん

卵巣にできる悪性腫瘍(卵巣がん)は、放置していると病状が進行しやすく、手術や化学療法など大がかりな治療が必要になります。家族性の乳がん・卵巣がん症候群が疑われる場合(遺伝子変異BRCA1またはBRCA2など)には、予防的に片側あるいは両側の卵巣を切除することも検討されるほどです。ただし、がんが早期発見され、ごく限られた部位にとどまっている場合は、まだ正常に機能する片側の卵巣を残せることもあり、妊娠の可能性を維持できる場合があります。

3. 子宮内膜症

本来は子宮内部にある子宮内膜様の組織が、卵巣や卵管など子宮外部に増殖する病態を「子宮内膜症」と呼びます。この増殖した組織もホルモンの影響を受け、出血などが生じるのに体外へ排出されないため、慢性的な痛みや炎症、癒着が起こります。卵巣の機能障害や卵管の閉塞などに進展しやすく、必要に応じて手術が検討される場合には片側卵巣切除の可能性もあります。

4. 卵巣膿瘍(卵巣の感染症・膿瘍)

感染症などによって卵巣内部に膿がたまり、膿瘍を形成することがあります。抗生物質などの薬物療法だけでは完治が難しい場合、外科的処置として卵巣を一部または全部切除することが選択肢となり得ます。

片側の卵巣を切除しても妊娠は可能か?

「片側の卵巣を切除したら妊娠できなくなるのでは?」と不安になる方が多いかもしれませんが、実際には、片側の卵巣しか残っていない状態でも妊娠に成功する例は数多く報告されています。大きなポイントは以下のとおりです。

  • 残存する卵巣の機能
    卵巣は通常、左右交互で排卵が起きるといわれていますが、片側になった場合でも、もう一方の卵巣が健常であれば引き続き排卵が期待できます。
  • 卵管の状態
    片側卵巣を切除した際に卵管まで切除せざるを得なかったケースは、妊娠率が下がる可能性が高いです。卵管を残す場合は、卵を正常にキャッチして子宮へ運ぶ機能が保たれるため、自然妊娠が十分に期待できます。
  • 切除の理由
    良性の卵巣のう腫などで卵巣を一部切除した場合と、がんや重症な子宮内膜症などで大きく組織を摘出せざるを得ない場合では、生殖機能への影響度合いが異なります。

このように、片側卵巣しかない状態でも排卵は起こり得ますし、卵管が健康に保たれていれば、自然妊娠を含めて十分な可能性があります。ただし、切除した原因によっては卵巣機能に何らかのダメージが残る可能性や、排卵周期が不規則になる場合もあるため、妊娠を望む場合は専門医のアドバイスを積極的に受けるようにしましょう。

片側の卵巣でも妊娠しやすくするためのポイント

片側卵巣の状態でも、排卵と受精がスムーズに行われるようにいくつか工夫できることがあります。日常生活の中でできる対策や、医療機関への受診時に知っておきたいポイントを押さえておきましょう。

1. 産婦人科を受診し、定期検査を受ける

片側卵巣を切除していても、もう片方の卵巣が正常に機能しているかどうかは、超音波検査やホルモン検査などである程度把握できます。たとえば超音波検査で卵胞の成長状態を確認したり、血液検査で卵巣機能や排卵タイミングを推定します。
また、卵管が癒着していないか、子宮内膜症の再発リスクがないかなどを定期的にチェックすることで、不妊の要因を早期発見して対処できる利点があります。

2. 月経周期の把握と排卵日予測

残存する卵巣がきちんと排卵するタイミングを知るには、まずは月経周期をよく観察することが大切です。一般的な月経周期(約28〜30日)の方の場合、排卵は月経初日から数えておよそ11〜21日前後に起こるとされています。ただし、個人差が大きいため、基礎体温や排卵予測検査薬などを使って正確に把握するのが望ましいでしょう。
排卵日付近のタイミングで性交渉の頻度を高めることで、受精の確率を上げられます。

3. 排卵時のサインを見逃さない

排卵前後の時期は、頸管粘液(おりもの)の量や粘度が変化したり、基礎体温がわずかに上昇するなど、体調面にも特徴的なサインが現れやすいです。これらのサインに注意を払い、最適な時期に合わせてパートナーとの性交渉を計画すると妊娠率を高めやすくなります。

4. 健康的な生活習慣を維持

卵巣機能やホルモンバランスは、食生活や運動習慣、ストレスなどと深く関わっています。特に妊娠を望む場合は、以下のような点を意識するとよいでしょう。

  • 栄養バランスの良い食事
    タンパク質、ビタミン、ミネラルなどを偏りなく摂取し、極端なダイエットを避ける。
  • 適度な運動
    ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなどを取り入れ、血流改善とストレス解消を図る。
  • ストレス管理
    長期間の強いストレスはホルモン分泌や排卵リズムに影響する可能性があるため、十分な休息とストレス発散方法を見つける。

5. 不妊治療の選択肢も検討

片側卵巣を切除している場合でも、体外受精(IVF)や顕微受精(ICSI)などの生殖補助医療を受けることは可能です。残存卵巣の排卵機能が低下していたとしても、薬剤などを用いた排卵誘発や成熟卵の採取を試みることで、妊娠の確率を上げられる場合があります。
実際に、片側卵巣の患者を対象にした体外受精の成績については、両側卵巣がある場合と比較して大きな遜色が見られないとの報告もあります。シンガポールの学会誌であるSingapore Medical Journalで取り上げられた調査(下記参考文献内)によれば、女性の年齢や卵巣予備能、切除の原因などの要素を調整すれば、十分に結果を得られる可能性があるとしています。

具体的な研究報告と近年の知見

近年(4年以内)にも、卵巣機能の評価や不妊治療の成果に関する研究がいくつか発表されています。たとえば、American Society for Reproductive Medicine (ASRM) が2021年に発表したCommittee Opinionでは、卵巣予備能(どれだけ卵子を育成できる能力が残されているか)を測定することの重要性が示されています。この報告(Fertility and Sterility, 2021;116(3):e1-e7, doi:10.1016/j.fertnstert.2021.06.037)では、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値や超音波による卵胞数チェックが片側卵巣の患者にも有用であるとし、妊孕性を見極めるうえで積極的に活用されるべきだとされています。
また、ヨーロッパの生殖医学学会であるESHRE (European Society of Human Reproduction and Embryology) では、2022年のガイドラインの中で「卵巣刺激(ovarian stimulation)や体外受精における卵巣予備能評価」の手順をより詳しく示しており(Human Reproduction Open, 2022, doi:10.1093/hropen/hoac022とされるガイドライン更新)、片側卵巣を含むさまざまな症例の患者に対しての管理プロトコールや注射剤の用量調整などが具体的に検討されています。ただし、この場合も最終的な方針は個別の病歴やホルモン値、超音波所見を踏まえて決定されるため、専門医の判断が欠かせません。

手術の理由と妊娠におけるリスク要因

片側卵巣を切除している場合、下記の要因にも注意が必要です。

  • 卵管の通過性
    片方の卵管を切除した、または閉塞したままになっていると、卵子が子宮に到達しにくくなるため、妊娠の可能性が下がります。卵管通水検査や卵管造影検査などで通過性を確認しておくのが望ましいです。
  • 手術時の癒着
    手術後の癒着が卵巣周辺や骨盤内に広がると、卵子の取り込みがうまくいかず、妊娠の成立を妨げることがあります。必要に応じて、癒着除去などの処置が検討される場合もあります。
  • 基礎疾患の影響
    もともとの疾患(卵巣がんや子宮内膜症など)が片側卵巣切除の原因の場合、同じ疾患が再発したり進行したりすると、妊娠に対するリスクが上がる可能性があります。こまめなフォローアップで早期に問題を発見することが大切です。

妊娠を試みるときの実践的なステップ

ここでは、「片側卵巣でも妊娠は可能」と理解したうえで、実際に妊娠を希望する際のフローを整理します。

  1. 産婦人科での総合的な健康チェック
    ホルモン値(FSH、LH、AMHなど)や超音波検査で卵巣の状態と卵胞の発達を確認し、手術歴による影響や癒着の有無、卵管の通過性などを把握します。
  2. 排卵時期の推定と性交タイミング
    月経周期をアプリやカレンダーなどで管理し、排卵予測検査薬や基礎体温計を活用しながら、排卵期前後に的確に性交を行うようスケジュールを組みます。
  3. 数ヶ月間の自然妊娠トライ
    片側卵巣でも正常に排卵が行われていれば、自然妊娠が期待できます。6〜12ヶ月程度自然妊娠を試みて妊娠成立しない場合は、不妊治療の専門医と相談するのが望ましいです(年齢や他のリスク要因によっては、より早期に専門医の助言を得る場合もあります)。
  4. 不妊治療の選択

    • 排卵誘発剤:クロミフェンやゴナドトロピン製剤などで排卵を促す
    • 人工授精(IUI):精子を子宮内に注入して受精率を上げる方法
    • 体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI):医師が必要と判断した場合は、卵巣刺激を行い採卵して体外で受精を試みる
  5. 継続的なフォローアップとライフスタイルの最適化
    ストレス管理や栄養バランスの確保、適度な運動習慣など、ライフスタイルを整えることが卵巣機能の維持に寄与します。定期的に検査を受け、治療方針をアップデートしながら取り組むことが大切です。

結論と提言

片側の卵巣を切除している方であっても、正常に残された卵巣と卵管の機能が維持されていれば、自然妊娠や不妊治療を通じて妊娠する可能性は十分にあります。特に手術の理由が良性腫瘍や早期の疾患であった場合、もう片方の卵巣がしっかりと排卵している限り、多くの女性が出産を迎えている事例が報告されています。
一方、もともとの病状が重かった場合や、卵管や子宮内に追加のトラブルがある場合には、妊娠の難易度が高まることも否めません。もし妊娠を強く希望しているならば、早めに産婦人科で検査を受けて自分の卵巣機能や卵管の状態、ホルモンバランスを把握することが第一歩です。必要に応じて体外受精などの生殖補助医療も検討し、専門医と相談しながら計画的に進めていくのが望ましいでしょう。
加えて、生活習慣の見直し(ストレスコントロール、睡眠の質の改善、栄養バランスなど)や定期的な健康診断も大切です。毎月の排卵をうまく捉えるためにも、基礎体温や頸管粘液の変化を把握するなど、日ごろから自分の身体のリズムを理解しておくと、妊娠に近づく可能性が高まります。

重要
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医学的アドバイスを代替するものではありません。個人の症状や手術歴、年齢や体質によって状況は大きく異なりますので、必ず産婦人科医などの専門家に相談し、指示を受けたうえで検査・治療を進めてください。

参考文献


本記事にある情報は、複数の海外医療機関や論文、学会誌などの知見をもとに編集・構成していますが、最終的な診断や治療方針は、必ず担当の専門医にご相談ください。特に重篤な病状や再発リスクを抱えている場合は、治療の優先度や手術の範囲が個別に大きく異なります。以上の内容はあくまでも参考情報としてご活用ください。もし疑問や不安がある場合は、早めに医療機関へ足を運び、直接医師にご相談いただくことをおすすめします。

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