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当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
はじめに
このたびは、血液中の白血球(特に好中球)が基準値よりも大きく減少する「減少症状」について詳しく解説します。本記事はJHO編集部がまとめた情報をもとに、医療分野で長年携わっている日本人の専門家の視点から構成した内容です。白血球の減少はさまざまな原因や病態に起因するため、感染症予防や治療法の理解、日常生活での注意点などを包括的に把握する必要があります。特に白血球数が著しく低下した状態では、細菌・ウイルスなどからの感染リスクが高まるおそれがあるため、早めの情報収集と医療機関への相談が大切です。
以下では、白血球の分類や減少のメカニズム、主な症状、原因、診断方法、さらに治療法や日常生活の工夫までを多角的に説明します。とりわけ、白血球のなかでも最も割合が高いとされる好中球が減少する(好中球減少症)ケースについて詳しく取り上げ、現代の日本国内における生活習慣や医療の実態に即して詳述していきます。
専門家への相談
本記事の内容は、血液内科領域の信頼できる文献や医療機関の情報をもとに構成しています。特に、以下の施設や医療データベースの知見を参照しています。
さらに、日本国内での血液学的診療を行ううえでの指針やガイドラインを日常臨床に反映している専門機関の情報も参考にしています。また、本記事における医療上の見解は、血液学領域や感染症領域のガイドラインで確立された標準的知見を中心に構成しています。
ただし、本記事で言及されている医療情報はあくまで参考目的であり、正式な医療行為の代わりにはなりません。体調や症状に不安のある方は必ず医師などの専門家に相談してください。本記事にはBác sĩ CKI Nguyễn Thị Lê Hương(Huyết học · Bệnh viện truyền máu huyết học Thành phố Hồ Chí Minh)の見解を一部反映しております。
減少する白血球とは:基本的な知識
白血球の役割と分類
白血球は体の免疫システムを司る重要な細胞で、外部から侵入する細菌やウイルス、真菌、寄生虫などを排除する機能を担っています。白血球には大きく分けて以下のような種類があります。
- 好中球: 白血球の中で最も数が多く、細菌感染防御の主役となる。
- リンパ球: T細胞やB細胞などがあり、ウイルス感染や腫瘍細胞の排除、抗体産生などに関与。
- 好酸球: アレルギー反応や寄生虫への反応に関与。
- 好塩基球: アレルギーや炎症反応でヒスタミンなどを放出。
- 単球: 組織に入りマクロファージなどに分化して食作用を担う。
このうち好中球は細菌感染との闘いで特に重要であり、減少すると重症化しやすい感染症が起こるリスクが高まります。
好中球減少症(減少した白血球数)とは
一般的に、成人の場合、好中球(ANC: Absolute Neutrophil Count)の値が1µlあたり1500個未満になると“好中球減少(Neutropenia)”とみなされます。子どもの場合は年齢によって基準値が異なります。好中球数による重症度の分類は、しばしば以下のように示されます。
- 軽度: 1000~1500/µl
- 中等度: 500~1000/µl
- 重度: 500/µl 未満
日本国内でも同様の基準が用いられることが多く、好中球が500/µlを下回る「重度減少症」では重篤な細菌感染、真菌感染などが起こりやすく、一刻を争う治療が必要になる場合があります。
また、この減少症状は急性(突然発症)、慢性(長期間継続)、あるいは周期的(増減を繰り返す)に分類できます。生まれつき好中球数が少ない人の場合(先天性)や、獲得性(後天性)の場合など、背景にさまざまな要因が絡み合います。
白血球(好中球)が減るとどうなるのか
症状とサイン
好中球が減少しても、多くの場合は無症状で進行します。人間は日常的に体外から微生物に接触していますが、好中球が十分に機能していれば感染症を抑え込みやすいのが通常です。ところが、以下のような症状が見られる場合は好中球が極端に減っている恐れがあります。
- 頻回に感染症にかかる: 風邪や口腔内の感染、皮膚の化膿、尿路感染症など。
- 発熱や倦怠感: とくに38.5℃以上の発熱が続く場合は注意。
- 口内炎や潰瘍: 歯茎の腫れやのどの痛みが長引く。
- 消化器症状: 下痢や吐き気、食欲不振、腹痛など。
- リンパ節の腫れ: 免疫細胞の活性化や感染を示唆。
とりわけ好中球減少を背景にした発熱(発熱性好中球減少症)は、一刻を争う重度の感染症リスクを伴うため、医療機関への速やかな受診がすすめられます。
白血球が減ることは危険か?
白血球数の減少そのものが、常に危険というわけではありません。個人差があり、もともとやや低めの値であっても健康を維持できるケースもあります。たとえばアフリカ系や中東系の方々の一部では、もともと白血球(特に好中球)の基準値が平均的にやや低めな場合があることが知られています。
ただし、1000/µlを下回る場合は一般にリスクが高まるといわれ、特に500/µl未満になると、急激に感染症にかかりやすくなると報告されています。感染症が急速に全身に広がる敗血症を起こす危険性もあるため、定期的な血液検査や症状の観察が重要です。
白血球減少の原因
遺伝的要因・先天性
先天性の好中球減少症は、生まれたときから遺伝的な背景によって起こる場合があります。重症の先天性好中球減少症(重症先天性好中球減少症、通称コストマン症候群など)は、小児期から重篤な感染症を繰り返しやすく、早期に医療機関での対応が求められます。
後天的な病態・疾患
後天的に白血球や好中球が減少する代表的な要因には、以下のようなものがあります。
- 感染症: ウイルス感染(例えばB型肝炎ウイルス、エイズウイルスなど)、細菌感染、寄生虫感染が長期化することで好中球が消耗される。
- 栄養不良: ビタミンB12や葉酸の不足、極端な食事制限などが好中球の生成を妨げる。
- 骨髄の異常: 造血幹細胞に異常がある再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、骨髄線維症などでは、好中球を十分に作れない。
- がん(特に血液がん): 白血病やリンパ腫など、骨髄に腫瘍が入り込んで好中球の産生を阻害する。
- 自己免疫疾患: 全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、クローン病などで免疫系が自己の好中球を誤って攻撃する。
また、特定の薬剤(抗がん剤や免疫抑制剤など)の副作用により、一時的に好中球が極度に減少することもあります。
薬剤性の好中球減少
特に抗がん剤の化学療法(化学療法薬)や放射線治療(放射線療法)は、骨髄細胞を障害して好中球の産生を低下させる代表的な治療法です。これらはがん細胞だけでなく正常な造血細胞も傷害してしまうため、治療の過程で好中球数が危険な水準まで下がることがあります。
薬剤性の場合は、投与量や投与期間を調整したり、造血因子(G-CSF製剤など)を投与して好中球の回復を促すなどの対策が行われます。
主なリスク群
白血球(特に好中球)が減少しやすい、または減少した場合に感染症が重篤化しやすいリスク群として、以下の条件が挙げられます。
- がん患者: 特に抗がん剤治療中、あるいは放射線治療と化学療法を併用している患者。
- 骨髄移植後: 造血幹細胞移植(骨髄移植や末梢血幹細胞移植)直後は新しい造血が安定するまで好中球数が著しく下がる。
- 自己免疫疾患を抱える患者: 免疫抑制薬などの使用で好中球が減少するリスクがある。
- 高齢者: 一般に70歳以上で基礎疾患を複数抱えている場合、白血球再生能力や感染防御力が低下している可能性がある。
このような人々は定期的な血液検査と、感染徴候(発熱、倦怠感、口内炎など)の早期発見・早期治療が重要です。
診断:白血球減少を見つける検査
一般的な検査方法
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血液検査(CBC: Complete Blood Count)
- 白血球全体の数および好中球数を測定する。最も基本的なスクリーニング検査。
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連続測定
- 白血球数や好中球数の動向を観察するため、1週間に複数回測定する場合がある。周期性の有無を確認するためにも有用。
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骨髄検査(骨髄穿刺・骨髄生検)
- 骨髄に異常がある場合、白血球の生産が阻害される。その原因を探るために骨髄液を採取して形態学的・染色体学的検査を行う。
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免疫学的検査(自己抗体の存在など)
- 自己免疫疾患によって好中球が攻撃されている場合に自己抗体を検出する。
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遺伝子検査
- 先天性の好中球減少症を疑う場合、遺伝子変異の確認が行われることがある。
重症度や原因の絞り込み
- 血液像の変化が一過性なのか、慢性的なのかを把握
- 骨髄の成熟異常や造血幹細胞の減少があるかどうか
- 感染症の有無・既往歴との関連(治療中のがんなど)
これらの要素を総合的に評価して、最適な治療方針が決定されます。
治療アプローチ
原因除去:最初のステップ
白血球減少(好中球減少)が見つかった場合、まずはその原因を特定し、取り除く(または軽減する)ことが治療の基本となります。以下のようなステップが考慮されます。
- 薬剤性の場合
可能であれば、問題を起こしている薬を中止・減量したり、別の薬剤に置き換えることで好中球数が回復するケースがある。 - 感染症が原因の場合
細菌感染なら適切な抗生物質、真菌感染なら抗真菌薬、ウイルス感染なら抗ウイルス薬を使用して根本的に対処する。 - 栄養不良が原因の場合
ビタミンB12や葉酸の補給、バランスの取れた食生活の再構築によって改善が期待できる。
重度減少例への対応
好中球が500/µl未満の重度減少例や感染リスクが高いと判断される場合、以下の治療法や管理法が考慮されます。
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G-CSF製剤(顆粒球コロニー刺激因子)
- 骨髄での白血球(特に好中球)産生を促進する薬剤。化学療法後の好中球減少や先天性の好中球減少症に対して使われることが多い。
- 日本国内でも抗がん剤治療の補助や慢性好中球減少症などで広く使用される。
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予防的抗菌薬の投与
- 好中球が極端に少ない状態で感染症にかかると重篤化しやすいため、あらかじめ予防的に広域スペクトラムの抗生物質を投与することがある。
- ただし耐性菌の問題があるため、慎重な対応が求められる。
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白血球(顆粒球)の輸血
- きわめて重症な好中球減少で、重篤な感染症を抱えている場合に限定的に行われることがある。
- 安定した供給と副作用のリスク管理が必要なため、一般的には頻繁に行われる方法ではない。
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骨髄移植・造血幹細胞移植
- 再生不良性貧血や白血病など、骨髄レベルでの大きな障害がある場合には移植によって造血能の回復を図る。
- 拒絶反応や移植片対宿主病(GVHD)のリスクもあるため、専門の施設で厳格な管理が必要。
化学療法との関連:最新のガイドラインの活用
がん治療(化学療法)を行う際の好中球減少管理は、国内外の学会がガイドラインを策定し、造血因子(G-CSF)の予防投与や抗菌薬の予防投与が推奨されるケースが明記されています。
たとえば、NCCNガイドライン(2023年版)では、化学療法後の好中球減少リスクに応じてG-CSF製剤の使用が推奨される基準が示されており、リスク評価(ハイリスク、中リスクなど)に基づいた対応が推奨されています。
日常生活での注意と工夫
感染予防:衛生習慣
白血球が減少している(またはその恐れがある)場合、日常生活での感染予防が極めて重要です。具体的には次のようなポイントが挙げられます。
- 手洗い: 外出先から帰宅したとき、トイレの後、調理や食事の前など、こまめに石けんやアルコール消毒液で手を洗う。
- 口腔ケア: 歯ブラシや歯間ブラシを用いて丁寧に磨き、必要に応じて殺菌性のうがい薬を使う。歯科医で定期チェックをする。
- 傷の手当: 皮膚が切れたり、擦りむいた場合はすぐに清潔な水で洗い、消毒や絆創膏で覆うなど適切に処置する。
- ワクチン接種: インフルエンザや肺炎球菌など、リスクの高い感染症を予防するワクチンを医師に相談のうえ検討する。
- 環境衛生: 調理器具や台所、トイレ、お風呂場などの清掃・消毒を心がける。
栄養バランスと食生活
食事は免疫機能を維持・回復するための基礎です。以下の点を意識するとよいでしょう。
- ビタミンB12や葉酸
これらは赤血球や白血球の生成に関与する重要な栄養素。レバー、緑黄色野菜、豆類などに多く含まれる。 - 良質なタンパク質
肉・魚・大豆製品などから適量を摂取することで血液細胞の合成を助ける。 - 過度な偏食やダイエットの回避
極端な食事制限は造血機能を妨げるリスクがある。無理な糖質制限や脂質制限などは医師や管理栄養士に相談。 - 十分な水分補給
血液循環を円滑に保ち、代謝を高めるためにも水分摂取が大事。
休養・ストレス管理
免疫力はストレスや睡眠不足の影響を強く受けます。
- 十分な睡眠
一般的に7~8時間程度の睡眠が推奨される。 - 適度な運動
軽いウォーキングやストレッチなど、心身のリフレッシュにつながり、血液の循環も促進する。 - ストレス解消
趣味やリラクゼーション法(ヨガ、呼吸法など)を取り入れ、ストレスホルモンを減らす工夫をする。
病院を受診する目安
- 38.5℃以上の発熱
好中球減少時の発熱は重症化する可能性が高い。早めに受診する。 - 口内炎や咽頭痛の悪化
粘膜トラブルが長引く場合、細菌や真菌感染が背景にある可能性。 - 排尿時痛や下腹部痛
尿路感染症や骨盤内の感染症が疑われる。 - 皮膚の腫れや発疹が拡大
蜂巣炎(セルライト)や皮膚感染症が悪化するリスクがある。
医療現場で注目される最新の知見
近年、日本国内の医療機関では造血因子の投与戦略や予防的抗菌薬の使用基準がより明確化されてきています。化学療法が行われるがん治療領域では、重度好中球減少症を予防するためにあらかじめG-CSF製剤を投与し、減少し始めた段階での感染リスクを下げるアプローチが一般的になっています。
さらに、海外の大規模研究においては、好中球減少症の早期発見と迅速な抗菌治療が患者の死亡率を下げるうえで重要な因子であることが繰り返し報告されています。日本でも同様の傾向が見られ、入院時の感染管理の強化や外来治療中の患者向けのセルフモニタリング指導が進んでいます。
結論と提言
白血球減少(とりわけ好中球減少)は、一見すると無症状のまま進行することが多いものの、感染症発症時には重篤化しやすいリスクの高い病態です。本記事では、原因や症状、診断から治療・予防策までを解説してきましたが、以下のポイントをまとめとして強調します。
- 好中球減少の早期発見が重要: 定期的な血液検査により、軽度~中等度の段階で対処することで重篤な感染症を未然に防げる可能性が高まる。
- 原因へのアプローチ: 感染症、薬剤性、自己免疫疾患、骨髄異常など原因が異なれば対処法も異なる。まずは原因の特定を最優先すべき。
- 重度の場合は専門的治療が必要: 好中球数が500/µl未満になると入念な感染対策やG-CSF製剤投与、あるいは造血幹細胞移植など高度医療の検討が重要。
- 日常生活の衛生管理: 手洗い、口腔ケア、傷の処置などを徹底することで感染症リスクを下げられる。
- 栄養と休養のバランス: ビタミンB12や葉酸など、必要な栄養素を摂りながら適切に休養をとることは免疫力維持に不可欠。
特に、がん治療や自己免疫疾患の治療中に好中球が大きく下がるケースでは、適切なモニタリングと医療スタッフとの連携が何よりも大切です。
今後の注意点と推奨事項(参考にとどめること)
- 感染予防の実践: 好中球が少ない間は軽微な感染でも重症化する可能性があるため、衛生習慣を意識する。
- 医療機関への早めの相談: とくに高熱、口内炎、排尿痛などの症状が出た場合は迅速に医師や医療スタッフへ連絡する。
- 治療方針の共有: 主治医との間で、G-CSF製剤の使用や薬剤の調整、定期的な血液検査のスケジュールを詳細に確認し、疑問点があれば遠慮なく質問する。
重要なお願い
本記事の内容は日本国内外の信頼できる医療情報やガイドラインをもとに作成していますが、あくまで一般的な知識の提供を目的としたものです。症状や治療についての最終的な判断は、必ず医師や医療専門家に相談してください。
参考文献
- Neutropenia – Cleveland Clinic (アクセス日不定)
- Neutropenia – Blood Cancer UK (アクセス日不定)
- Neutropenia – American Cancer Society(Cancer.org) (アクセス日不定)
- Neutropenia – infants. MedlinePlus (アクセス日不定)
- Neutropenia (low neutrophil count) – Mayo Clinic (アクセス日不定)
- NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines): Hematopoietic Growth Factors (Version 2.2023)
本記事は、読者の皆さまが白血球(特に好中球)減少の基礎知識を学び、日々の生活や治療に役立てていただくことを目的としています。しかしながら、記事内で提供する情報はあくまで参考であり、個人の症状や体質によって必要とされる対応は異なります。気になる症状があれば、早めに医師や医療の専門家に相談し、適切な治療指針を確認するようにしてください。日本国内の医療体制では、血液専門医や感染症専門医など、さまざまな専門領域の医師による総合的なサポートを受けられます。安心して医療機関を活用し、重症化を未然に防ぎながらより健康的な生活を目指しましょう。