はじめに
皆さん、こんにちは。JHO編集部です。本記事では、私たちが日常生活で意外と遭遇しやすい「皮膚の下に生じる血腫」について、できる限り詳しく解説いたします。見た目のあざ(内出血)として軽く扱われがちな血腫ですが、単に不便なだけではなく、重大な健康問題の初期サインになる可能性があることをご存じでしょうか。血腫は体内のさまざまな要因によって生じ、時に深刻な疾患や危険な状態と関わることがあります。そこで本記事では、血腫が起こるしくみ・主な症状・対応策・医師に相談する基準などを、専門的な視点を交えて総合的にご説明します。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
専門家への相談
本記事の内容は、血液内科の分野で幅広い知見を持つDoctor Nguyen Thi Le Huong氏(Hematology, Blood Transfusion Hospital, Ho Chi Minh City, Vietnam)の見識を一部参考に構成しています。血腫の原因や治療、日常生活での対処法まで多面的に知ることで、万が一異常が起こった際に早めに対処しやすくなります。なお、ここでご紹介する内容はあくまで情報提供を目的としており、最終的な診断や治療方針は医療機関でご相談いただくことを強くおすすめします。
血腫とは何か?
血腫とは、外力(衝撃や転倒など)によって皮膚や皮下組織にある毛細血管が破れ、その血液が周辺組織に漏れ出てたまることを指します。肌が破れていなくても、皮下で血管が損傷していれば血液がしみ出し、いわゆる「内出血」を生じるのが特徴です。血液はある程度その場で凝固し始めるため、出血し続けるというよりも「局所に血が固まった状態」になりやすいのが血腫です。
- あざ(内出血)との違い
一般的に、あざは傷口が開いていない状態で皮膚の色が変わることで認識されます。血腫は内出血の一形態ですが、血液が大量に組織内にとどまり、大きく腫れてくるケースも含まれます。単なる小さなあざと区別がつきにくいこともありますが、「腫れの大きさが増してくる」「強い痛みや熱感がある」などの症状がみられる場合には、慎重な観察と場合によっては医療的対応が必要です。
血腫の症状
血腫が生じると、患部に特有の感覚の乱れや炎症反応が起こることがあります。症状の強さは血腫の大きさやできた部位によってさまざまですが、以下の特徴が多く見受けられます。
- 色の変化
初期段階では赤みが目立ち、その後、紫、黒、青み、黄、茶色と時期に応じて変色します。これは、血液中のヘモグロビンが分解される過程で色素が変化するためです。問題がなければ数日から数週間かけて自然に薄れていきます。 - 痛み・触れた時の違和感
押すと痛みがある場合や、重い感覚、チクチクした不快感が伴うことがあります。大きな血腫の場合、日常動作にも支障をきたすことがあります。 - 熱感
炎症反応の一環として、腫れている部分が熱をもって感じられる場合があります。
症状が深刻化する場合の例
- 血腫が急激に大きくなる
- 強い痛みで動かしにくい
- 発熱や倦怠感など全身症状を伴う
これらの状態がみられる場合には、早急に医療機関を受診することが推奨されます。特に頭部の血腫で症状が進行しているときは、脳や神経系への影響が懸念されるため速やかな対応が大切です。
医師に相談が必要な場合
血腫は時間の経過とともに自然に治癒するケースも多いですが、以下のような状況であれば専門的な診断が重要になります。
- 大きさがどんどん増してくる
通常のあざや軽度の血腫であれば、しばらくすると痛みや腫れが軽減していくことが多いです。ところが、日に日に大きくなり痛みも増してくるようなら、持続的な出血やほかの病態(感染や血液凝固異常など)が疑われます。 - 神経学的な症状が伴う(頭部血腫の場合)
頭部に強い衝撃を受けたあと、頭痛やめまい、吐き気、視覚障害、意識障害などがみられる場合は、脳出血や脳挫傷を含む重大な疾患の可能性があります。早めに画像検査を受けることが肝心です。 - 原因不明の出血が繰り返される
特にこれといった外傷がないのに頻繁にあざや血腫ができる場合、血液凝固機能の異常(血友病、血小板異常など)や血管障害の可能性があります。 - 痛みや腫れ以外の症状が続く
高熱や極度のだるさ、局所の赤み・腫れの拡大など、二次感染やほかの炎症性疾患を示唆する症状が続く場合は、医師の判断を仰ぐことが大切です。
血腫の原因
血腫と聞くと、転倒や衝突などの直接的な衝撃を想像しやすいですが、それ以外にもさまざまな要因で血腫は生じます。以下は代表的な原因の例です。
- 抗凝血薬の使用
アスピリンやワルファリンなど、血液が固まりにくくなる薬を服用していると、ごく軽い刺激でも血管が破れて出血しやすくなります。 - 放射線治療または化学療法
がん治療で行われる放射線照射や化学療法剤によって、血管や血液細胞がダメージを受けやすくなることがあります。 - ウイルス感染や血液凝固に影響を与える疾患
代表的には肝疾患(肝硬変など)や血友病、その他の血液凝固障害が挙げられます。これらの病気では体内で血液がうまく固まらない状態が続くため、軽度の外力でも血腫を起こすリスクが上がります。 - 血小板減少症
血液中の血小板数が著しく低下すると、出血が止まりにくくなるため、あざや血腫ができやすくなります。 - 白血病
白血球の異常増殖によって血液成分のバランスが崩れ、出血傾向が生じる場合があります。 - 感染症性疾患
細菌やウイルスの感染が血管壁や血液成分に影響し、血腫を生じやすくすることがあります。 - 自己免疫疾患(ループス、関節リウマチなど)
自己免疫反応が血管や血液細胞を攻撃すると、血液凝固機能に支障が出やすくなります。
ここがポイント
「普段はあまり気にしなくてよい程度の打撲なのに、近年やけにあざが増えた」「少し当たっただけで大きな血腫ができるようになった」という変化があれば、服用薬の影響や血液疾患の可能性を見落とさないために、必ず専門家の診断を受けるようにしましょう。
診断と検査
血腫の診断は、まず医師による視診や触診に加え、外傷の有無や既往歴、服用薬の状況などを総合的に評価するところから始まります。その上で必要があれば、以下のような検査が行われることがあります。
- 血液一般検査(CBC)
赤血球、白血球、血小板の数値を確認し、貧血や感染症、血小板減少の有無などを調べます。 - 凝固機能検査
PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)などを測定して、血液が固まるまでの時間を確認します。抗凝固薬を服用しているかどうかを含め、凝固系の異常を見つけるために重要です。 - 骨髄生検
血液疾患(白血病など)が疑われる場合、骨髄の細胞を調べることで診断精度を高めます。 - 画像検査
X線やCTスキャン、MRIなどを使って、体内(特に頭蓋内や筋肉深部など)に大きな血腫がないか、または周囲の組織や臓器への影響を調べます。
こうした検査結果を総合的に判断し、血液凝固異常の有無や基礎疾患の可能性を探ることで、適切な治療プランを立てられます。
血腫の治療法
血腫の治療は、原因や部位、症状の程度によってさまざまです。小さく、痛みや腫れが軽度な場合には、自然治癒を待つことも珍しくありません。一方で、次のようなケースでは積極的に医療的介入が行われる場合があります。
- 頭部の血腫
脳出血や頭蓋内血腫のリスクがあるため、医師による詳しい診察や画像検査が必須です。必要に応じて外科的処置(血腫の排出・ドレナージ)などが行われることもあります。 - 薬物が原因の場合
抗凝固薬を服用していて血腫が頻繁にできる場合、薬剤の調整や変更を考慮することがあります。医師の指示なしに自己判断で中断や量の変更を行うと逆に血栓リスクが高まる可能性があるため、必ず専門家の指導を受けましょう。 - 原因不明・急激に増大する血腫
重大な疾患が隠れているか、感染や腫瘍形成など、ほかのリスク要因を排除するために医療機関での精査が推奨されます。
治療に用いられる主なアプローチ
- 投薬による対症療法
鎮痛剤や抗炎症薬、時に抗生物質が処方される場合があります。ただし、根本原因(血液疾患や薬剤影響など)に対処しなければ症状の再発が続く可能性があります。 - 外科的処置
血腫が大きく、周囲組織を圧迫している場合は、外科的に血腫を除去・排出する手術が検討されることがあります。 - 圧迫固定や患部の安静
末梢部位(手や脚など)の比較的小規模な血腫では、患部を包帯などで圧迫固定し、安静を保つことで自然治癒を促す方法があります。
日常生活での対処法
外傷後に血腫が生じた場合、痛みや不安を軽減するために自宅で簡単なケアを行うことがあります。ただし、「症状が軽度であり、重篤な合併症が疑われない」ことが大前提です。以下の方法を試す際は、必ず自己判断せず、状態が悪化する場合はすぐに医師に相談してください。
- 安静に過ごす
血腫ができた部分に負荷をかけないことで、悪化やさらなる出血を防ぎます。 - 冷却剤で患部を冷やす
外傷後直後(24~48時間程度)は患部を冷やすことで炎症と腫れの拡大を抑えるのに役立ちます。 - 温湿布を使用する
炎症の急性期が落ち着いてからは、温湿布などで患部の血流を促進し、血液の吸収を促す方法がとられることがあります。 - 包帯や弾性包帯で患部を固定する
適度な圧迫固定は腫れを抑え、痛みを軽減する一助となります。強く巻きすぎないよう注意が必要です。 - 患部を心臓より高い位置に保つ
例えば足に血腫ができた場合、足を上げて寝ることで血液のうっ滞を防ぎ、腫れを軽減します。 - 一般的な鎮痛薬の服用
痛みが気になる場合、市販の鎮痛薬を使用することがあります。ただし、抗凝固薬やその他の薬を服用中である場合は、必ず医師または薬剤師に確認しましょう。
血腫への最新の知見や研究(2020年以降)
血腫の発症要因や治療法に関しては、ここ数年(2020年以降)も世界各地で研究が進んでいます。例えば、高齢者が転倒などで打撲しやすい状況において、皮膚の下に広範囲の血腫が生じやすいことが報告されています。さらに、抗凝固薬の種類や血液凝固障害の程度によっては、比較的軽微な外力でも大きな血腫になりやすいというデータも集まっています。
- 高齢者における皮下血腫の増加傾向
近年、欧米や日本の医療機関から、高齢者が転倒によりできた皮下血腫が大きくなり、二次的に感染症や合併症を引き起こすケースが増えているとの報告が多く挙がっています。これは骨粗しょう症や筋力低下など、加齢による身体機能の変化に加え、生活習慣病の治療薬(抗凝固薬など)の服用が関与している可能性が指摘されています。
参考(既存研究): Cleveland Clinic(Bruises)、Mayo Clinic(Easy bruising: Why does it happen?)などでも、特に高齢者であざができやすい原因として皮膚の薄さ・血管の脆弱性・服薬状況が重要な要因であると示唆しています。 - 頭部外傷と血腫に関する警戒
2022年に米国の医療機関の報告で、頭部打撲を受けた高齢者の約20%が当初軽い血腫だけに見えても、実際には頭蓋内に慢性硬膜下血腫を生じていたという事例が示されています。この研究では、初期症状が軽度の場合でも、一定期間の観察とフォローアップの画像検査が推奨されました。これらの報告は日本の医療現場でも応用可能であり、特に独居の高齢者が転倒した際、周囲が早期に気づいて医療機関に連絡する体制づくりが大切です。 - 血液疾患・自己免疫疾患との関連
最近の血液学の論文では(2021~2023年にかけて医学誌複数)、自己免疫疾患や難治性の血液凝固異常を抱える患者ほど、軽度の皮下出血が大きな血腫に進展しやすい傾向があると指摘されています。特にループス患者は血小板減少や血管炎症が同時に起こりやすく、あざが治りにくいこともしばしば報告されています。
結論と提言
血腫は、一見ただのあざや軽い皮下出血のように見えますが、その奥には血液凝固異常や血管の脆化、ほかの基礎疾患、外力の程度以上に危険な要因が潜んでいる場合があります。放置して悪化させると、感染症や周辺組織の圧迫障害などにつながることもあります。また、頭部の血腫に関しては早期に医療的チェックを受けることが不可欠です。
- 原因不明の血腫が頻回に生じる場合
- 血腫が時間とともに大きくなる場合
- 強い痛みや神経症状を伴う場合
こうした症状がみられるときは早めに医療機関を受診し、専門家の診断を仰ぐことを強くおすすめします。特に持病がある方や抗凝固薬を服用中の方は、「少し当たっただけ」と油断せず、小さな変化でもチェックすることが大切です。
日常生活における総合的なアドバイス
血腫を予防し、あるいは早期に対処するためには、以下のようなポイントに気をつけてみましょう。
- 転倒防止や衝撃回避を心がける
家庭内ではカーペットや段差に注意し、通路の明るさを十分に確保します。高齢者や子どもの場合、さらに念入りな安全対策が必要です。 - 定期的な健康診断
血液凝固機能や血球数の異常を早期発見するため、年に1回程度の定期検査を受けることが望ましいです。 - 医師とのコミュニケーション
抗凝固薬などの薬を服用している場合は、あざや血腫ができやすい点について主治医や薬剤師に相談しましょう。必要があれば投薬量や種類を調整することもあります。 - 栄養バランスと適度な運動
皮膚や血管の健康を保つためには、たんぱく質、ビタミンC、ビタミンKなどをバランスよく摂取し、適度に身体を動かして血流を促進することが有効です。
最後に:専門家への早めの相談を
血腫は多くの場合、軽度であれば時間が解決してくれるケースも少なくありません。しかし、背景に潜む病態や外傷の程度によっては深刻な合併症をきたす可能性も否定できません。「これはおかしいかも」と感じたら、迷わず専門医に相談することが何より大切です。本記事で紹介した内容はあくまで一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の症状や体質、疾患によって対処法は大きく異なることがあります。必ず医師の判断を仰いでください。
本記事は情報提供のみを目的としており、医療上のアドバイスや診断の代替にはなりません。深刻な症状や疑問がある場合は、必ず医師や医療専門家にご相談ください。
参考文献
- Bruises アクセス日: 19/11/2022
- Easy bruising: Why does it happen? アクセス日: 19/11/2022
- Bleeding into the skin アクセス日: 19/11/2022
- Ecchymosis What Is It, Causes, Symptoms, and More アクセス日: 19/11/2022
- Trẻ bị ngã tụ máu dưới da đầu アクセス日: 30/9/2021
- Traumatic subcutaneous haematoma causing skin necrosis アクセス日: 25/12/2023
- Bleeding into the skin アクセス日: 25/12/2023