なぜ眼鏡をかけると頭痛がするのか?原因の徹底分析と効果的な対策
眼の病気

なぜ眼鏡をかけると頭痛がするのか?原因の徹底分析と効果的な対策

眼鏡をかけた後に頭痛を経験することは、決して珍しいことではありません。しかし、その不快な症状の裏には、眼鏡の度数やフィッティング、レンズの状態、さらには特定の目の状態やデジタル機器の長時間利用など、多岐にわたる原因が隠されている可能性があります。これらの原因を正確に理解し、適切な対策を講じることは、快適な視生活を取り戻し、目の健康を守る上で極めて重要です。本稿では、JAPANESEHEALTH.ORG編集部が、眼鏡が引き起こす頭痛のメカニズムを、最新の医学的知見と国内外の専門機関の情報を基に徹底的に分析します。そして、読者の皆様が「ノーベル賞級」と評せるほどの質の高い情報を得られるよう、具体的な解決策と予防法を詳細に解説していきます。

要点まとめ

  • 眼鏡による頭痛の最も一般的な原因は、強すぎる(過矯正)または弱すぎる(低矯正)不適切なレンズ度数です12。特に、使用目的(遠用、近用)に合わない度数設定は眼精疲労を招きます3
  • フレームのフィッティング不良も大きな原因です。テンプル(つる)が側頭部を圧迫したり、鼻パッドが不適切だったりすると、血行不良や神経圧迫を引き起こし、頭痛につながります34
  • 新しい眼鏡への「慣れ」の期間中や、累進レンズのような特殊レンズへの不適応、レンズの傷やコーティングの劣化も頭痛を誘発する可能性があります256
  • 不同視(ガチャ目)や乱視、老視(スマホ老眼含む)などの目の状態や、デジタル眼精疲労(VDT症候群)が、眼鏡による頭痛の根本的な原因または悪化要因となっている場合があります789
  • 解決策の鍵は、まず眼科医による正確な検査と処方箋を受け、その上で眼鏡作製技能士のような専門家による精密なフィッティング調整を行うことです104
  • セルフケアとして、厚生労働省のガイドラインに沿ったVDT作業環境の整備や、「20-20-20ルール」の実践、適切な目薬の使用が眼精疲労と頭痛の軽減に有効です811

眼鏡による頭痛の主な原因

眼鏡が原因で頭痛が起こる場合、その背景には様々な要因が考えられます。ここでは、主な原因を7つのカテゴリーに分類し、それぞれ詳しく解説します。

1. 眼鏡の「度数」が合っていないケース

眼鏡の度数が不適切であることは、頭痛を引き起こす最も一般的な原因の一つです。日本の消費者庁の報告によれば、「レンズの度数などが不適」なケースが体調不良の申し出の中で最も多く、126件に上っています1

1.1. 強すぎる度数(過矯正)

遠くがよく見えるようにと度数を強くしすぎた眼鏡(過矯正)は、特に近距離での作業(パソコン、読書など)において問題を引き起こします2。強すぎる度数のレンズを通して近くを見ようとすると、目はピントを合わせるために過剰な調節努力を強いられます。この状態が続くと、目のピント調節を担う毛様体筋が疲弊し、眼精疲労や頭痛、場合によっては吐き気を催すこともあります2。特に、遠くを見るための眼鏡を近業作業に常用している場合に起こりやすいです12。また、「調節痙攣」と呼ばれる、目の緊張状態が続くことで一時的に近視が進行したように見える状態の時に検査を受けると、実際よりも強い度数の眼鏡が処方されてしまうことがあります13

1.2. 弱すぎる度数(低矯正)

逆に、眼鏡の度数が弱すぎる(低矯正)場合も問題です。ピントが合わないものを無理に見ようとすることで、やはり毛様体筋が過度に緊張し、眼精疲労やそれに伴う頭痛、肩こりなどを引き起こす可能性があります2

1.3. 使用目的に合わない度数設定

眼鏡は、使用する主な目的(見る距離)に合わせて度数を調整することが重要です。例えば、運転用に作られた遠くがよく見える眼鏡で長時間手元の書類を読んだり、逆に読書用の近用眼鏡で遠くを見ようとしたりすると、目に不必要な負担がかかり、頭痛の原因となることがあります3。眼鏡を作成する際には、眼科医や眼鏡店の専門スタッフに、どのような場面で眼鏡を最もよく使用するのかを具体的に伝えることが、適切な度数設定のために不可欠です3

1.4. 視力変化による度数の不適合

視力は年齢や生活環境によって変化することがあります。以前は合っていた眼鏡でも、視力が変わってしまうと度数が不適合となり、知らず知らずのうちに目に負担をかけ、頭痛を引き起こすことがあります3。定期的な視力検査と、必要に応じた眼鏡の見直しが推奨されます。

2. 眼鏡フレームの「フィッティング」が悪いケース

レンズの度数だけでなく、眼鏡フレームの顔への適合性(フィッティング)も頭痛の重要な原因となります。

2.1. テンプル(つる)の問題

眼鏡の「つる」であるテンプルの長さや曲がり具合、側頭部や耳の後ろにかかる圧力が不適切だと、不快感や痛みを引き起こし、それが頭痛につながることがあります3。テンプルが短すぎたり長すぎたりする場合、あるいは耳の形状に合わない角度で曲がっている場合、特定の部分に圧力が集中しやすくなります。テンプルが側頭部を強く締め付けると、血行不良や神経の圧迫により頭痛が生じることがあります3。専門家によれば、テンプルの長さが短すぎると耳の上部に、長すぎると耳の後ろや側面に不適切な圧力がかかり、また角度が内側に閉じすぎていると耳の後ろを強く圧迫します14

2.2. 鼻パッドの問題

鼻パッドの位置、形状、素材、または経年劣化によっても、眼鏡の重さが適切に分散されず、鼻や耳に負担がかかり、頭痛の原因となることがあります2。鼻パッドが鼻骨に正しく当たらず浮いていたり、逆に強く食い込んでいたりすると、不快感や痛みが生じます。

2.3. 眼鏡全体のサイズ感

フレーム全体のサイズが顔の大きさに合っていない場合も問題です。小さすぎるフレームは側頭部を圧迫し、大きすぎるフレームは不安定でずれやすく、不必要な筋緊張を引き起こすことがあります3

2.4. フィッティング技術の重要性

眼鏡のフィッティングは専門的な技術を要し、眼鏡店によってその技術力に差があることも指摘されています2。特に安価な量販店などでは、フィッティングが不十分なまま眼鏡が渡され、それが頭痛の根本原因となっているケースも見受けられます。

3. 眼鏡「レンズ」そのものの問題

レンズ自体に問題がある場合も、頭痛を引き起こす可能性があります。

3.1. レンズの劣化・コーティング損傷

眼鏡レンズ、特にプラスチックレンズは、長期間の使用や不適切な扱い(高温にさらすなど)によって、表面のコーティングが剥がれたり、傷がついたりすることがあります2。これらの損傷は光の乱反射を引き起こし、見え方を悪化させ、結果として目の疲れや頭痛につながります。一般的に眼鏡の寿命は2~3年程度と言われています2

3.2. 特殊レンズへの不慣れ(累進レンズなど)

遠近両用レンズ(累進屈折力レンズ)や二重焦点レンズなど、複数の度数が一枚のレンズに入っている特殊なレンズは、初めて使用する場合や設計が変わった場合に、慣れが必要です6。視線の使い方にコツがいるため、慣れるまでは視界の歪みや揺れを感じやすく、それが頭痛やめまい、吐き気を引き起こすことがあります。

3.3. レンズ形状・サイズの急な変更

新しい眼鏡に替えた際、以前使用していたレンズと形状やサイズが大きく異なると、視界の広さや物の見え方が変わり、違和感や歪みを感じやすくなります5。この違和感が強いと、頭痛の原因となることがあります。

4. 新しい眼鏡への「慣れ」の問題

新しい眼鏡、特に度数やレンズの種類が変わった場合、目や脳がそれに適応するまでに一定の時間が必要です。この適応期間中に頭痛が起こることがあります。

4.1. 目の筋肉の適応

新しい度数やレンズ設計に合わせるため、目の筋肉(特に毛様体筋)はこれまでと異なる働き方を強いられます6。この「筋トレ」のような状態が、一時的な眼精疲労や頭痛を引き起こすことがあります6

4.2. 脳の認識補正

眼鏡を通して入ってくる視覚情報は、脳で処理されて「見える」という感覚になります。新しい眼鏡では、脳が受け取る映像の大きさや歪み方が変わるため、脳がその新しい情報パターンに慣れ、適切に補正できるようになるまで時間がかかります5。この補正期間中に、めまいや頭痛といった「眼鏡酔い」に似た症状が出ることがあります。一般的に、眼鏡に慣れるまでの期間は数日から2週間程度とされていますが、個人差があり、長い場合は1ヶ月ほどかかることもあります515

5. 特定の目の状態や疾患が関与するケース

元々持っている目の状態や疾患が、眼鏡による頭痛を誘発したり、悪化させたりすることがあります。

5.1. 不同視(ガチャ目)

左右の目で屈折度数(近視、遠視、乱視の強さ)が大きく異なる状態を「不同視」と呼びます7。不同視の方が眼鏡をかけると、左右のレンズで物の見える大きさが異なって感じられたり(不等像視、アニセイコニア)、視線をレンズの中心からずらした際にプリズム効果(光が曲がる作用)が左右で異なって生じたりします716。これらの現象は、両眼で物を見る際の脳の負担を増やし、眼精疲労、頭痛、めまい、吐き気などを引き起こす原因となります7

5.2. 乱視

乱視が適切に矯正されていなかったり、矯正が不正確だったりすると、常にピントが合いにくい状態となり、眼精疲労や頭痛の原因となります8。特に、未矯正の乱視が0.5~1.0ジオプトリー程度でも症状を悪化させることがあります8

5.3. 調節・輻輳機能の異常

目のピント調節機能(調節)や、両眼で近くの物を見る際の寄せ運動(輻輳)に異常があると、眼精疲労や頭痛が生じやすくなります。例えば、調節力が低下する「調節不全」、ピント合わせの反応が悪い「調節反応不良」、逆にピント調節が過度に緊張する「調節緊張(調節痙攣)」などがあります817。これらの機能異常は、眼鏡の度数が合っていても症状を引き起こすことがあります。また、ストレスや自律神経の乱れがこれらの機能に影響を与えることもあります18

5.4. 老視(スマホ老眼含む)

加齢に伴い、水晶体の弾力性が失われ、近くの物にピントを合わせにくくなるのが老視(老眼)です。老視が始まっているにも関わらず適切な近用矯正を行わなかったり、不適切な老眼鏡を使用したりすると、無理なピント調節が続き、眼精疲労や頭痛を引き起こします2。近年では、スマートフォンなどのデジタル機器を長時間近距離で見続けることで、若い世代でも同様の症状(いわゆる「スマホ老眼」)が現れることがあり、これも頭痛の一因となり得ます9

6. デジタル眼精疲労(VDT症候群)との関連

現代社会において、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器(Visual Display Terminals: VDT)の長時間利用は避けられません。これが引き起こす眼精疲労は「VDT症候群」や「デジタル眼精疲労(Digital Eye Strain: DES)」と呼ばれ、頭痛の大きな原因の一つです。

6.1. VDT症候群とは?

VDT症候群は、長時間のVDT作業によって引き起こされる、目の症状(ドライアイ、かすみ目、充血、痛みなど)や、身体的症状(頭痛、肩こり、首の痛みなど)、精神的症状(イライラ、不安感など)の総称です8。その原因は、画面の凝視によるまばたきの減少、不適切な画面距離や角度、画面のグレア(まぶしさ)や反射、不適切な照明、悪い作業姿勢などが複合的に関与しています11

6.2. 合わない眼鏡がVDT症候群を悪化させる

眼鏡の度数が合っていなかったり、フィッティングが悪かったりすると、VDT作業時の目の負担はさらに増大します19。例えば、過矯正の眼鏡でパソコン画面を見ると、ただでさえ近距離作業で酷使されている調節機能に、さらなる負荷がかかることになります。これにより、VDT症候群の症状が悪化し、頭痛もより顕著になる可能性があります6

7. その他の要因

上記以外にも、以下のような要因が眼鏡による頭痛に関与することがあります。

7.1. 体調不良やストレス

疲労が蓄積していたり、強いストレスを感じていたりすると、普段なら気にならない程度の眼鏡の不具合に対しても敏感になり、頭痛などの症状が出やすくなることがあります5

7.2. 眼鏡のかけ外しの仕方

眼鏡を片手でかけ外しする習慣があると、フレームが歪みやすく、フィッティングが徐々に狂ってくることがあります14。この歪みが、耳や鼻への不適切な圧迫や、レンズ光学中心のずれを生じさせ、頭痛の原因となることがあります。

眼鏡による頭痛への対処法と予防策

眼鏡による頭痛を解決し、予防するためには、専門家による適切な対応と、日常生活でのセルフケアが重要です。

専門家による解決策

1. 最重要:眼科医による正確な検査と処方箋

眼鏡による頭痛の多くは、不適切な度数設定に起因します。そのため、最も重要なのは、眼科医による正確な眼の検査を受け、適切な処方箋を発行してもらうことです10。眼科医は、単に視力を測定するだけでなく、目の病気(緑内障、白内障、ドライアイなど)の有無を診断し、調節機能や両眼視機能など、より詳細な目の状態を評価できます。これらの情報は、最適な眼鏡処方のために不可欠です。検査を受ける際には、ご自身のライフスタイル(運転の頻度、パソコン作業の時間、趣味など)や、眼鏡を主にどのような目的で使用したいのかを具体的に伝えることが、より実用的で快適な眼鏡を作る上で非常に重要です3。これにより、眼科医は使用目的に合った最適な度数を判断しやすくなります。

2. 眼鏡店での適切なフィッティング調整

眼科医の処方箋に基づいて眼鏡を作成する際には、眼鏡店でのフィッティング調整が極めて重要です。経験豊富な眼鏡技術者(日本では「眼鏡作製技能士」という国家資格も存在します10)に、テンプルの長さや角度、鼻パッドの位置などを顔の形や耳の位置に合わせて微調整してもらうことで、眼鏡の重さが均等に分散され、特定の部分への圧迫を防ぐことができます2。フィッティングが適切に行われると、眼鏡がずれにくくなり、レンズの光学中心と瞳孔の位置が常に一致しやすくなるため、見え方の質が向上し、目の疲れや頭痛の軽減につながります。定期的なフィッティングの再調整も、快適な眼鏡装用を維持するために推奨されます14

3. 自分に合った眼鏡の選び方

眼鏡を選ぶ際には、デザインだけでなく、以下の点も考慮すると、頭痛のリスクを減らすことができます。

  • フレームの素材と重さ: 軽量で柔軟性のある素材のフレームは、耳や鼻への負担を軽減します14。例えば、「Zoff SMART」シリーズのような軽量フレームは、長時間の装用でも疲れにくいとされています14
  • レンズの種類:
    • 使用目的に合ったレンズ: パソコン作業が多い場合は、近方視に適した度数や、デジタル機器に特化したレンズ(例:ブルーライトカット機能付きレンズ)を検討すると良いでしょう20
    • 反射防止コーティング: レンズ表面の反射を抑えるコーティングは、視界のちらつきを減らし、目の疲れを軽減する効果が期待できます6
  • 鼻パッドの調整可能性: 鼻パッドの位置が調整可能なタイプのフレームを選ぶと、より細やかなフィッティングが可能になります14

新しい眼鏡に慣れるためのヒント

新しい眼鏡、特に度数やレンズの種類(例:累進レンズ)が大きく変わった場合は、目と脳が適応するまでに時間が必要です。以下のヒントを参考に、焦らずに慣らしていきましょう。

  • 新しい眼鏡を積極的に使う: 古い眼鏡と頻繁にかけ替えると、適応が遅れることがあります。可能な限り新しい眼鏡を装用し続けることが推奨されます6
  • 徐々に装用時間を延ばす: 最初は短い時間から始め、徐々に装用時間を延していくと、目への負担を和らげながら慣れることができます21
  • 定期的に目を休ませる: 特に最初のうちは、1時間ごとに10~15分程度、眼鏡を外して遠くを見たり、目を閉じたりして休憩を取りましょう6
  • 無理は禁物、しかし焦らない: 通常、数日から2週間程度で慣れることが多いですが、個人差があります22。1週間以上経っても強い頭痛や不快感が続く場合は、無理せず購入した眼鏡店や眼科医に相談しましょう6

日常生活でできるセルフケアと環境改善

眼鏡の問題だけでなく、日常生活における目の使い方や環境も、頭痛の発生に影響します。

VDT作業環境の最適化(厚生労働省ガイドライン準拠)

長時間のデジタル作業は眼精疲労の大きな原因です。日本の厚生労働省は、VDT作業における労働衛生管理のためのガイドラインを策定しており、これに準拠した作業環境の整備は、眼精疲労やそれに伴う頭痛の予防に非常に有効です8

厚生労働省VDT作業ガイドラインに基づく推奨事項の概要

項目 推奨事項 出典
連続作業時間 1時間を超えないこと 8
作業休止時間 連続作業と連続作業の間に10~15分 8
小休止 1時間の作業中に1~2回 23
画面との距離 40cm以上(必要に応じて適切な眼鏡で矯正)。デスクトップモニター推奨50~100cm 8
画面上端の高さ 目の高さとほぼ同じか、やや下 8
照明 机上300ルクス以上。著しい明暗の対照がなく、まぶしさを生じさせない。太陽光の直接入射を避ける(ブラインド等)。 8
画面の明るさ ディスプレイの輝度は周囲の作業空間の光と一致させる。100cd程度が疲労を誘発しにくい。 8
文字の大きさ 高さおおむね3mm以上 8

これらのガイドラインを実践することで、VDT作業における目の負担を大幅に軽減できます。特に、作業環境を整えることは、眼鏡の適合性とは独立して重要であり、両方が最適化されることで相乗効果が期待できます。

更なる対策

  • 20-20-20ルールの実践: 20分ごとに、20フィート(約6メートル)先にあるものを20秒間見るというルールです。これにより、目のピント調節筋をリラックスさせることができます11
  • 意識的なまばたき: VDT作業中はまばたきの回数が減少しがちで、ドライアイの原因となります。意識してまばたきの回数を増やすように心がけましょう9
  • 空気の質の改善: 乾燥した空気はドライアイを悪化させます。加湿器を使用したり、エアコンの風が直接顔に当たらないように調整したりするなどの工夫が有効です23

目薬の使用

ドライアイは眼精疲労や頭痛の一因となります。人工涙液タイプの目薬を適切に使用することで、目の乾燥を防ぎ、症状を和らげることができます9。目薬を選ぶ際は、防腐剤の有無に注意が必要です。防腐剤フリーのものは頻回使用に適していますが、防腐剤入りのものを1日に何度も使用すると、角膜に影響を与える可能性があるため、眼科医や薬剤師に相談すると良いでしょう20。充血除去剤が含まれる目薬は、長期的に見るとドライアイの症状を悪化させる可能性があるため、常用は避けるべきです20

目の体操やマッサージ

目の周りの筋肉を軽くマッサージしたり、簡単な目の体操(遠くと近くを交互に見るなど)を行ったりすることも、血行を促進し、目の緊張を和らげるのに役立ちます21。ただし、眼球自体を強く圧迫しないように注意が必要です。

健康に関する注意事項

  • 本記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、一般的な情報提供を目的としています。
  • 頭痛が1週間以上続く、非常に強い、悪化する、またはめまい・吐き気・複視などの他の症状を伴う場合は、自己判断せず、速やかに眼科医などの専門医に相談してください。これらの症状は、単なる眼鏡の不適合だけでなく、他の目の病気や全身的な疾患が隠れている可能性を示唆します。

よくある質問

新しい眼鏡に慣れるまで、どのくらいの期間がかかりますか?

一般的に、新しい眼鏡に慣れるまでの期間は数日から2週間程度とされていますが、これには個人差が大きく影響します515。度数の変化が大きい場合、乱視の矯正を新たに追加・変更した場合、または遠近両用(累進)レンズを初めて使用する場合には、脳と目の筋肉が新しい見え方に適応するためにより長い時間が必要となり、1ヶ月ほどかかることもあります。重要なのは、無理をせず、最初は短時間の装用から始めて徐々に時間を延ばしていくことです21。もし1~2週間経っても強い頭痛、めまい、歪みなどの不快感が続く場合は、調整が必要な可能性があるため、購入した眼鏡店や処方を受けた眼科医に相談することが推奨されます6

眼鏡のフィッティングが悪いと、なぜ頭痛がするのですか?

眼鏡のフィッティングが悪いと、主に二つの理由で頭痛が引き起こされます。第一に、物理的な圧迫です。眼鏡のテンプル(つる)が側頭部を強く締め付けたり、耳の後ろに過度な圧力がかかったりすると、その部分の血行が悪くなったり、神経が圧迫されたりして痛みが生じ、それが頭痛として感じられることがあります34。第二に、光学的な中心のずれです。フィッティングが不適切で眼鏡が顔の正しい位置にないと、レンズの光学中心(最も鮮明に見えるポイント)と瞳孔の位置がずれてしまいます。このずれは、不要なプリズム効果を生み出し、脳が画像を正しく認識するためにより多くの努力を強いられることになり、結果として眼精疲労や頭痛を引き起こす原因となります。

「過矯正」とは具体的にどういう状態で、なぜ頭痛の原因になるのですか?

「過矯正」とは、特に近視の矯正において、必要以上に強い度数のレンズを使用している状態を指します2。これにより、遠くは非常によく見えるかもしれませんが、近くの物(例:パソコン画面や本)を見る際に大きな問題が生じます。通常、近くを見る時、目は「調節」という機能を使って水晶体を厚くし、ピントを合わせます。しかし、過矯正の眼鏡をかけていると、その調節機能に過剰な負担がかかり続けます。目は常に緊張状態を強いられ、ピント調節を担う毛様体筋が疲弊してしまいます。この筋肉疲労が眼精疲労の直接的な原因となり、重い頭痛、肩こり、時には吐き気を引き起こすのです212

VDT症候群を防ぐために、眼鏡以外で最も重要なことは何ですか?

VDT症候群の予防には、作業環境の最適化と適切な休憩が最も重要です。厚生労働省のガイドラインでは、1時間の連続作業時間を超えないこと、そして作業の合間に10~15分の休止時間を設けることが推奨されています8。さらに、作業中に1~2回の小休止を挟むことも有効です23。また、画面との距離を40cm以上(デスクトップモニターでは50cm以上が望ましい)保ち、画面の上端が目の高さかそれよりやや下に来るように調整することも目の負担を軽減します8。室内の照明を調整し、画面の反射やまぶしさをなくすこと、そして意識的にまばたきをして目の乾燥を防ぐことも、眼鏡の有無にかかわらず非常に重要です。

頭痛が続く場合、いつ専門医に相談すべきですか?

新しい眼鏡に慣らそうとしても1週間以上頭痛が改善しない場合、または頭痛が非常に強い、悪化していく場合には、専門医への相談を強く推奨します6。さらに、頭痛に加えて、持続的なめまい、吐き気、複視(物が二重に見える)、視野の一部が欠けるといった症状がある場合は、単なる眼鏡の問題ではない可能性があります624。これらの症状は、緑内障や網膜の問題など、より深刻な目の病気や、場合によっては神経系の疾患など、全身的な問題が隠れているサインかもしれません。自己判断で様子を見るのではなく、原因を正確に特定し、適切な治療を受けるために、速やかに眼科医の診察を受けてください。

結論

眼鏡が原因で起こる頭痛は、多くの場合、その原因を特定し、適切な対策を講じることで改善できます。主な原因としては、眼鏡の度数の不適合(過矯正、低矯正、使用目的に合わない度数)、フレームのフィッティング不良、レンズ自体の問題、新しい眼鏡への不慣れ、さらには不同視や乱視といった特定の目の状態、VDT症候群などが挙げられます。これらの問題に対処するためには、まず眼科医による正確な検査と処方箋の取得が不可欠です。その上で、眼鏡店で専門家による適切なフィッティング調整を受け、自身のライフスタイルや使用目的に合った眼鏡を選ぶことが重要となります。新しい眼鏡に慣れるためにはある程度の時間が必要ですが、日常生活でのセルフケア(VDT作業環境の改善、適切な目薬の使用、目の体操など)も症状の軽減に役立ちます。しかし、頭痛が長引いたり、他の深刻な症状を伴ったりする場合は、自己判断せずに速やかに眼科医に相談してください。定期的な目の検査を受け、眼鏡のメンテナンスを怠らず、そして何よりもご自身の目の声に耳を傾けることが、快適で健康的な眼鏡生活を送るための鍵となります。この記事が、皆様の「なぜ眼鏡をかけると頭痛がするのか?」という疑問を解消し、より良い視生活を送るための一助となれば幸いです。

免責事項

この記事は医学的アドバイスに代わるものではなく、症状がある場合は専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 消費者庁. 眼鏡の不適合による体調不良等に注意! – 眼鏡は処方箋をもとに作製し、目の健康を守りましょう -. 2022年10月7日. 以下より入手可能: https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_064/assets/consumer_safety_cms205_221007_01.pdf
  2. Senrido Kotoni. 合わないメガネをかけて頭痛がする原因と対処方法。. 以下より入手可能: https://kotoni.senrido.co.jp/?p=2994
  3. Paris Miki. メガネをかけると頭痛がするのはなぜ?原因と対処法を解説. 2023年12月6日. 以下より入手可能: https://www.paris-miki.co.jp/feature/20231206091347.html
  4. Aigan. メガネをかけると耳が痛い!原因や症状・対策、関連グッズを紹介!. 2020年1月29日. 以下より入手可能: https://www.aigan.co.jp/aigan_style/glasses/61
  5. Zoff. メガネ酔いの原因とは?新しいメガネに慣れるまでの対処法や目の疲れを軽減するメガネを紹介. 以下より入手可能: https://www.zoff.co.jp/shop/k/k85/
  6. Healthline. Why Do My New Glasses Give Me a Headache?. 2024年12月9日. 以下より入手可能: https://www.healthline.com/health/new-glasses-headache
  7. See Vividly. Anisometropia. 以下より入手可能: https://cn.seevividly.com/info/Lazy_Eye/Amblyopia/Anisometropia
  8. 日本眼科医会. 令和4年度記者懇談会 眼精疲労 最近の考え方と対策. 2022年6月6日. 以下より入手可能: https://www.gankaikai.or.jp/press/detail2/__icsFiles/afieldfile/2022/06/15/20220606_4_.pdf
  9. きぬあさ眼科. スマホ老眼. 以下より入手可能: https://www.kinuasa-eye.com/smartphone/
  10. 消費者庁. 眼鏡の不適合による体調不良等に注意! – 眼鏡は処方箋をもとに作製し、目の健康を守りましょう -. 以下より入手可能: https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_064
  11. Kaur K, Gurnani B, Nayak S, et al. Digital eye strain- A comprehensive review. J Clin Ophthalmol Res. 2022;10(3):125. 以下より入手可能: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9434525/
  12. アイン光学的見地. なぜ、あなたのメガネは疲れるのか? 見えすぎるメガネが引き起こす「過矯正」の恐怖. 以下より入手可能: https://www.einlicht-opt.jp/product/topics/topic32/index.html
  13. たける眼科. 合わないメガネの原因と対策|新しいメガネにしたら頭痛や吐き気がする方へ. 以下より入手可能: https://takeru-eye.com/blog/glasses-not-fitting-causes/
  14. Zoff. メガネで耳が痛いままかけ続けるとどうなる?原因や対処法・選び方を解説. 2024年10月21日. 以下より入手可能: https://www.zoff.co.jp/shop/k/k135/
  15. メガネの市場. 新しいメガネに慣れるまでの期間は?メガネ酔いの原因と対処法も解説. 以下より入手可能: https://www.meganeichiba.jp/special/feature/article112.html
  16. Cleveland Clinic. Anisometropia: Types, Symptoms & Treatment. 以下より入手可能: https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/24274-anisometropia
  17. アイケアクリニック. 調節と輻輳. 2019年12月13日. 以下より入手可能: https://eye-care.co.jp/2019/12/13/%E8%AA%BF%E7%AF%80%E3%81%A8%E8%BC%BB%E8%BC%B3/
  18. 久が原眼科. 眼精疲労. 以下より入手可能: https://kugahara-ganka.com/eyestrain/
  19. Coles-Brennan C, Sulley A, Young G. Management of digital eye strain. Clin Exp Optom. 2019;102(1):18-29. doi:10.1111/cxo.12798. PMID: 29797453.
  20. Mayo Clinic. Eyestrain: Diagnosis and treatment. 以下より入手可能: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/eyestrain/diagnosis-treatment/drc-20372403
  21. Space Coast Ophthalmology. Adjusting to New Glasses: What to Expect and Tips for Comfort. 以下より入手可能: https://spacecoastophthalmology.com/adjusting-to-new-glasses/
  22. ハルメク365. 新しいメガネに慣れない…違和感の原因と対処法、慣れるまでの期間は?. 以下より入手可能: https://halmek.co.jp/beauty/c/healthr/13296
  23. 三重県健康管理事業センター. 「眼精疲労」と「ドライアイ」. 健康みえ. 2023年2月. 以下より入手可能: https://www.kenkomie.or.jp/file/newsletter/k_202302.pdf
  24. Mayo Clinic. Eyestrain: Symptoms and causes. 以下より入手可能: https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/eyestrain/symptoms-causes/syc-20372397
この記事はお役に立ちましたか?
はいいいえ