はじめに
男性にとって、生殖機能とホルモンバランスを維持するうえで欠かせない臓器である精巣(以下、文中では「精巣」あるいは「睾丸」という呼称を用いています)の健康はとても重要です。そのなかでも、睾丸にしこりや腫瘤が見つかった場合、多くの方はまず「これは悪性疾患なのではないか」「何か重大な病気なのではないか」と不安を感じることが多いでしょう。実際、睾丸にできる腫瘤のなかには悪性のものもあり、早期発見・早期治療が重要です。しかし、すべての腫瘤が悪性であるとは限らず、良性の原因によって腫れやしこりが生じるケースも少なくありません。
免責事項
当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。
本稿では、睾丸にしこりや腫瘤(以下、「睾丸腫瘤」と総称)を認めたときに考えられる代表的な原因と特徴、診断方法、治療法について詳しく解説します。ご自身あるいは周囲の方が睾丸に腫瘤を感じ、不安を抱えている場合に、この情報が少しでも参考になれば幸いです。あわせて、悪性腫瘍(精巣がん)に発展するリスクや、どのような経緯で治療が進む可能性があるのかについても触れますので、日常のセルフチェックや早期受診の大切さを再認識する機会になればと思います。
専門家への相談
本記事では、男性の泌尿生殖器領域の症状や治療方針に関する一般的な情報をまとめています。実際に診断や治療を行うのは、泌尿器科を専門とする医師や医療機関です。本記事の内容はあくまで情報提供を目的としたものであり、医師の診察や検査、治療を代替するものではありません。特に、以下のような症状がある場合は、早めに泌尿器科の受診を検討してください。
- 睾丸や陰嚢に腫れ・しこりを触れる
- 強い痛みや急な痛みが生じた
- 陰嚢や下腹部に重だるさや違和感がある
- 排尿回数や排尿時の痛みなど、日常生活に差し障る変化がある
なお、本記事内で示す情報は、医療の進歩や各国のガイドラインによって変化する可能性があります。記事作成にあたっては、医学論文や信頼性の高い機関の情報を参考にしていますが、万一疑問点や不安を感じた場合には、必ず医師や専門家にご相談ください。本文中では「Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh」が監修に関わったケースとして名前が示されていますが、そのほか専門家の正式な診断やアドバイスも重要ですので、実際の受診をおすすめします。
睾丸腫瘤とは:概要と主な特徴
睾丸は、男性ホルモン(テストステロン)の分泌や精子の産生を担う重要な器官です。睾丸が納まっている陰嚢はデリケートな部位であり、血流や温度調整などが複雑に関わります。そのため、比較的軽微なトラブルでも痛みや腫れを感じやすい部分でもあります。
「睾丸腫瘤」というと、真っ先に思い浮かぶのは「がん」かもしれません。しかし実際には、以下のように多彩な原因があり、すべてが悪性とは限りません。良性の原因による腫れやしこりも多数存在し、いずれにしても正確な診断が必要です。
- 先天性の形成異常
- 血管の異常(精索静脈瘤など)
- 炎症や感染症(副睾丸炎、睾丸炎など)
- 液体貯留(陰嚢水腫や精液嚢胞など)
- がん性腫瘍(精巣腫瘍の一部)
睾丸腫瘤の代表的な初期症状
- 触ってみると、陰嚢内に固いしこりあるいは腫れが感じられる
- 一方の睾丸のほうが明らかに重い、または大きい
- 痛みを伴う場合と、まったく痛みを感じない場合がある
- 時に下腹部や鼠径部(そけいぶ)に違和感や痛みを感じる
- 胸部が腫れることがある(ホルモンの影響による女性化乳房など)
痛みや発熱などの症状がなくても、睾丸が腫れている、あるいはしこりがある場合には、何らかの異常が潜在している可能性は否定できません。長期的に放置すると悪化するケースもあるので、できるだけ早めに医療機関での受診が望まれます。
睾丸に腫瘤がみられる7つの主な原因
睾丸にしこりや腫瘤を形成する原因は多岐にわたります。ここでは、代表的な7つの原因について具体的にみていきましょう。原因ごとに症状の特徴やリスクが異なるため、ご自身の症状と照らし合わせてみると、自覚の程度が変わってくるかもしれません。
1. 精索静脈瘤(精巣静脈瘤)
陰嚢内を走る血管(精索)にこぶ状の拡張が生じる状態です。主に思春期以降に多くみられ、血液の逆流が原因で静脈が拡張します。触ったとき「まるでミミズが絡まったよう」「ゴムの束のよう」という感覚があるため、「静脈が浮き出ている」と表現されることもあります。特徴としては、以下のような点が挙げられます。
- 初期は痛みや自覚症状に乏しい
- 長時間立っていると陰嚢が重い感じや鈍痛を伴うことがある
- 左側に好発するが、両側性の場合もある
- 血流の鬱滞が生じているため、不妊の原因となるケースもある
精索静脈瘤は、国内外の生殖医療領域でも注目されており、男性不妊の要因として一定の割合を占めることが報告されています。2022年に欧州泌尿器科学会(European Association of Urology, EAU)が発表した生殖医療ガイドラインによれば、精索静脈瘤の手術的治療が男性不妊の改善に寄与するケースがあるとされています(EAU Guidelines on Male Infertility 2022)。
2. 陰嚢水腫(鞘膜水腫)
睾丸を包む膜(鞘膜)に液体がたまる状態を指します。新生児にもよくみられ、成長とともに自然に吸収されるケースが多いですが、成人でも発症することがあります。主な特徴は以下のとおりです。
- 水様性の液体がたまることで、陰嚢が膨らむ
- 通常は痛みが少なく、触っても軟らかい
- 腹圧がかかると多少膨らみが増すことがある
陰嚢水腫は必ずしも治療が必要とは限りませんが、大きくなって日常生活に支障をきたす場合や、原因が他の疾患にある場合には治療が検討されます。日本国内でも高齢者や慢性炎症を抱える方で見られることがあり、精巣炎や精巣上体炎に付随して起こるケースもあります。
3. 精巣上体嚢胞(精巣上体にできるのう胞)
精巣上体(副睾丸とも呼ばれる)は、精子の成熟や貯蔵に関わる組織です。ここに液体がたまって嚢胞が形成されると、陰嚢内で小さなしこりが触れます。特徴は以下のとおりです。
- 良性の病変であり、多くは痛みを伴わない
- 大きくなると違和感や重みを感じることがある
- 病変部が精巣本体ではなく、その背後や上部に触れる
精巣上体嚢胞自体は直接的に悪性化することはまれですが、サイズが大きい場合や痛みがある場合などは、外科的処置が検討されることがあります。感染症や炎症のリスクが併発すると症状が悪化する恐れもあるので、早めの診察が重要です。
4. 副睾丸炎・精巣炎
淋菌やクラミジアといった性感染症によって副睾丸(精巣上体)が炎症を起こすほか、ウイルス感染(おたふくかぜ)などで精巣に炎症が及ぶ場合があります。特徴としては、以下の症状がしばしばみられます。
- 痛みが強く、腫れや熱感を伴う
- 発熱や排尿痛、尿道分泌物を伴う場合もある
- 炎症が重度の場合、陰嚢全体が赤く腫れる
2023年に日本泌尿器科学会が公表した性感染症に関する診療ガイドラインでも、副睾丸炎は比較的若年層の男性に多くみられるが、中高年でも前立腺炎や尿路感染などと合併するケースがあると報告されています。迅速な治療が回復を早めるため、抗菌薬による対処が中心となります。
5. 精巣捻転
思春期から若年成人に多くみられる急性の症状で、精巣と血管がねじれて血流が遮断される状態です。精巣捻転の症状は非常に激しく、急な痛みと腫れを伴います。主なポイントは以下です。
- 激烈な痛みが突然起こり、陰嚢が腫れる
- 痛みは下腹部や鼠径部にまで広がることがある
- 放置すると精巣壊死に至るリスクがあるため、緊急処置が必要
精巣捻転は救急搬送となるケースも多く、診断が迅速であれば外科的に回転を戻し、精巣を温存できる可能性があります。発症後数時間が勝負であり、痛みや腫れを「様子見」で放置すると、取り返しのつかない結果になる場合があります。
6. 鼠径ヘルニア(脱腸)
腹腔内の臓器や脂肪組織が鼠径部を経由して陰嚢内に脱出してしまう状態です。通称「脱腸」とも呼ばれます。以下のような特徴があります。
- 立ち上がったときや腹圧をかけたときに、陰嚢や鼠径部がふくらむ
- 仰向けに寝るとしぼんで小さくなる場合がある
- 消化器系が脱出していると、腸閉塞などの危険性もある
鼠径ヘルニアが疑われる場合は外科的治療(ヘルニア修復手術)が必要になるケースが多いです。陰嚢にまで脱出しているタイプを「陰嚢ヘルニア」と呼び、腸が詰まってしまうと激痛や嘔吐を伴い、緊急手術が必要となることもあります。
7. 精巣腫瘍(悪性腫瘍)
睾丸にできるがんにはさまざまな種類がありますが、若年層に多い「精巣腫瘍」は比較的まれながら、増殖スピードが速いといわれています。痛みを伴わない場合でも、腫瘤や陰嚢の腫れ、乳房のはりなどホルモン性の症状が出ることがあります。主な注意点としては以下です。
- 若い男性(20~40歳前後)にも発生することがある
- 片側だけのこともあれば両側に及ぶこともあるが、片側性が多い
- 早期に発見すれば治療成績は高いが、放置すると遠隔転移が進む
精巣がんに関しては、世界保健機関(WHO)が2022年に腫瘍分類の更新を行っており、腫瘍の組織学的分類と治療方針がより精緻化されています。特に、腫瘍マーカー(AFPやhCGなど)の測定や画像検査による診断精度が向上しているため、早期発見・早期治療が重要となると報告されています(Moch H, et al. Am J Surg Pathol. 2022;46(3): e49-e58. doi:10.1097/PAS.0000000000001812)。
睾丸腫瘤の診断方法
睾丸にしこりや腫瘤を感じた場合、放置するのではなく早めに医療機関を受診することが望ましいです。診断の流れは以下のようになります。
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問診・視診・触診
- 医師が陰嚢全体や精巣の形状、大きさ、硬さ、圧痛の有無などを詳細に確認します。腫瘤の位置や性質、痛みなどから、おおよその鑑別が可能となります。
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超音波検査(エコー)
- 陰嚢や精巣、血流状態を視覚的に把握するための検査です。超音波は放射線被ばくのリスクがなく、痛みも伴いません。水腫か固形かなどの区別が明確になりやすいことから、最初に行われる重要な検査です。
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血液検査
- 感染症や炎症の有無、腫瘍マーカー(AFP、hCG、LDHなど)の測定を行うことで、悪性腫瘍の可能性を探ります。炎症が強い場合には白血球数やCRPなどの炎症マーカーが上昇することがあります。
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性感染症のスクリーニング
- 若年層で副睾丸炎が疑われる場合や、排尿時に違和感がある場合などに行われ、淋菌やクラミジアなどを調べます。
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CT検査やMRI検査
- 超音波や血液検査で悪性が疑われる場合、遠隔転移の有無を評価するためにCT検査が実施されることがあります。腫瘍の正確な広がりを把握するのに役立ちます。
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生検(バイオプシー)
- がんの疑いが強い場合に、組織の一部を採取して詳しく調べることがあります。ただし、精巣においては生検の方法が慎重に検討される場合が多く、腫瘍マーカーや画像診断によって総合的に判断されるケースもあります。
これらの検査結果を総合的に判断することで、良性か悪性か、あるいは炎症や感染によるものかなど、原因を特定していきます。万が一、精巣がんが疑われた場合でも、近年は治療法の進歩によって高い治癒率が期待できるようになっています。
睾丸腫瘤の治療法
良性腫瘤の場合
良性腫瘤とはいえ、痛みや日常生活に支障が出る場合、不妊リスクを引き起こす可能性がある場合などは、外科的処置が推奨されることがあります。具体的には以下の選択肢があります。
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経過観察
痛みがなく小さいまま変化しない場合は、定期的な超音波検査などでフォローを続けることがあります。自然消失するケースもあるため、医師と相談しながら慎重に経過を見守る方法です。 -
外科的手術
大きくなって生活に支障が出たり、不妊の原因になると考えられる場合には、手術で腫瘍や水腫を除去することがあります。精巣機能や周囲組織への影響を最小限に抑えるため、内視鏡や顕微鏡手術などの方法が選択されることもあります。 -
抗菌薬や痛み止めの処方
感染や炎症が原因の場合は、抗菌薬や消炎鎮痛剤が処方され、症状緩和を図ります。副睾丸炎や精巣炎は、若年層の性感染症としても認知度が高まっており、早期治療が回復を早めます。
悪性腫瘍(精巣がん)の場合
精巣がんと診断された場合でも、近年の診断技術や治療法の進歩により、比較的高い治癒率が期待できるがんの一つといわれています。治療選択は、腫瘍の組織型・ステージ・患者の年齢や全身状態によって異なります。主な治療法は以下のとおりです。
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外科的切除(高位精巣切除術)
腫瘍のある精巣を、精索(血管やリンパ管などを含む索状組織)ごと切除する方法です。反対側の精巣が正常であれば、ホルモンバランスや生殖機能への影響は軽微なことが多いと報告されています。ただし、術後の経過観察が非常に重要であり、再発予防のための追加治療(化学療法や放射線療法)が検討されます。 -
化学療法(抗がん剤治療)
進行例や再発例では、細胞毒性の高い抗がん剤治療が行われることがあります。特に胚細胞腫瘍のタイプによっては、シスプラチンを中心としたレジメンが有効性を示すことが多く、治療成績を大きく向上させています。 -
放射線療法
セミノーマなど放射線感受性の高いタイプの精巣腫瘍では、腫瘍切除後のリンパ節領域などに放射線療法が行われることがあります。副作用と効果を天秤にかけ、患者ごとに個別化した計画が立てられます。 -
集学的治療
ステージが進んでいる場合や再発リスクが高い場合には、外科手術・化学療法・放射線療法を組み合わせた集学的治療が検討されます。近年の臨床試験では、個別の遺伝子情報を含めた分子標的薬や免疫療法などの研究も進んでおり、日本国内外で治療選択肢がさらに拡大する可能性が指摘されています。
2023年のEAUガイドライン(European Association of Urology Guidelines on Testicular Cancer 2023)でも、精巣がんは早期診断と適切な治療選択によって高い治癒率を期待できるとまとめられています。特に、多数例を対象とした臨床試験では、ステージIやIIの患者において、外科的治療と化学療法の組み合わせによって5年生存率が90%以上に達する報告もあることが示されています。
日常生活で気をつけたいポイント:セルフチェックの重要性
睾丸の腫瘍やしこりを早期発見するうえで、日常的なセルフチェックが大切です。とくに、思春期から若年成人層の男性には次のような習慣を身につけていただきたいと考えられています。
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定期的に触診する
月に1回程度、入浴中や入浴後の陰嚢が柔らかくなるタイミングで行うと、自分の睾丸の大きさや硬さを把握しやすいです。 -
左右差を把握する
もともと左右で大きさや位置に多少の差があるのは通常ですが、それが著しく変化したり、しこりが新たに感じられたりしたら医師に相談します。 -
痛みや違和感の変化を見逃さない
急激な痛みであれば精巣捻転の可能性、徐々に痛みが強まる場合や発熱を伴う場合には感染症の可能性など、パターンを見極める手掛かりになります。 -
下腹部や鼠径部の違和感にも注意
精巣と関係の深い血管やリンパ節が腫れている場合、腹部や鼠径部にも症状が及ぶ可能性があります。
また、喫煙や過度の飲酒は血行不良や免疫力の低下を引き起こし、各種炎症やがんリスクにも影響を与えることがわかっています。2021年に発表された日本癌学会の報告でも、喫煙が男性の生殖機能や精子の質に影響を与える可能性が指摘されており、睾丸腫瘤のあるなしにかかわらず禁煙習慣を身につけることが望ましいとされています。
陰嚢や睾丸の状態と全身への影響
陰嚢や睾丸に生じた異常は、生殖機能だけでなく、ホルモンバランスにも波及し得るため、全身状態にさまざまな影響をおよぼします。
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ホルモン分泌への影響
テストステロンは筋肉や骨密度の維持、性欲や精力の維持にも関わる重要なホルモンです。片側の精巣摘出後も、もう片側の精巣が正常に機能していれば大きな問題にならない場合が多いですが、がん治療などで放射線や化学療法が加わるとホルモン分泌低下が生じる可能性があります。 -
生殖機能への影響
両側性の問題がある場合や、手術後・化学療法後など、精子の産生に影響が出ることがあります。必要に応じて精子凍結保存を検討するケースも珍しくありません。 -
精神的ストレス
性機能や生殖機能が脅かされる恐れがあるため、男性としての自尊心やパートナーシップなど、心理的な負担が大きくなることもあります。2021年にJournal of Psychosomatic Researchで公表された大規模調査によると、精巣に関する病気と診断された男性の一部には、不安や抑うつ傾向が高まる傾向があると報告されました。
必要以上に恐れたり、悲観的になったりせず、疑問や不安を感じる場合は医師やカウンセラーに相談し、必要に応じて心理的サポートを受けられる体制を整えることが大切です。
予防や再発防止に関する考え方
良性腫瘤であっても、腫瘤が大きくなったり炎症が再発したりすると症状が悪化する可能性があります。また、悪性腫瘍(精巣がん)の治療後は定期的なフォローアップが欠かせません。国内外の多くの医療機関では、術後の再発チェックや転移チェックのために、画像検査や腫瘍マーカー測定を定期的に行っています。
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生活習慣の改善
睾丸の血流や免疫力に影響を与える喫煙、過度の飲酒、ストレス過多、睡眠不足は避けるよう心がけましょう。 -
定期受診
特に手術や治療を受けた方は、医師の指示に従って定期的に検査や診察を受けることが重要です。再発・再燃の兆候を早期にキャッチできれば、早期の追加治療でコントロールしやすくなります。 -
適切な避妊・性感染症対策
淋菌やクラミジアなどの性感染症は副睾丸炎や精巣炎の原因となり、将来的に不妊リスクを高める可能性があります。パートナーと協力して、コンドームの使用など基本的な感染症対策を徹底しましょう。
日常生活へのアドバイス
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適度な運動
血行を促進し、免疫力を高めるためにウォーキングや軽いジョギングなどの定期的な運動を取り入れます。 -
下着の選び方
通気性がよく、陰嚢を圧迫しすぎない下着を選ぶことは、炎症や蒸れを防ぐうえで有効です。 -
入浴習慣
入浴中は陰嚢が温まり、リラックスした状態でセルフチェックがしやすくなります。定期的に触診することで、異常を早期に発見するきっかけにもなります。 -
メンタルケア
睾丸腫瘍が疑われたり、実際に手術や治療を受けたりすると、精神的にも大きなストレスがかかることがあります。必要に応じてカウンセリングや家族のサポートを受けましょう。医療スタッフに相談するのも一つの手段です。
結論と提言
睾丸にしこりや腫瘤を見つけた場合、その原因は多岐にわたります。ほとんど痛みを伴わない良性のケースもあれば、深刻な精巣がんの可能性も否定できません。特に若い男性に比較的多く見られる精巣がんは放置すると急激に進行することがあり、早期発見がきわめて重要です。一方で、精索静脈瘤や陰嚢水腫、精巣上体嚢胞のように、必ずしも悪性でない腫瘍も多く存在します。したがって、自己判断で放置するのではなく、専門の医療機関で正確な診断を受けることが最優先となります。
良性の腫瘍は治療の必要がないことも多いですが、不妊リスクや日常生活への支障を考慮して手術や治療を検討する場合があります。一方、悪性腫瘍(精巣がん)の場合でも、診断・治療技術の進歩により、高い治癒率が期待できるようになっています。特に、早期発見・早期治療を行うことで、治療後のQOL(生活の質)を保ちながら社会復帰する例も多数報告されています。術後や治療後は定期的なフォローアップが大切であり、再発を防ぐためにも医師の指示をしっかりと守りましょう。
また、日常的にセルフチェックをする習慣を身につけることが、睾丸腫瘤の早期発見につながります。痛みがある・ないにかかわらず、少しでも異常を感じたら早めに医療機関を受診することが重要です。さらに、健康的な生活習慣や性感染症対策も、睾丸の健康を守るためには欠かせません。
本記事で取り上げた情報は、あくまでも一般的な医療・健康情報であり、最終的な診断や治療方針を示すものではありません。具体的な症状や治療に関する詳細は医師の診察を受け、個別に相談することが望まれます。
参考文献
- Scrotal masses – Diagnosis and Treatment (Mayo Clinic) アクセス日: 2021年8月13日
- Scrotal masses – Symptoms and causes (Mayo Clinic) アクセス日: 2021年8月13日
- Evaluation of Scrotal Masses (American Family Physician) アクセス日: 2021年8月16日
- Scrotal masses (Mount Sinai) アクセス日: 2021年8月16日
- Lump on Testicle (Scrotal Masses) (Cleveland Clinic) アクセス日: 2021年8月16日
- Moch H, Cubilla AL, Humphrey PA, et al. The 2022 World Health Organization Classification of Testicular Tumors. Am J Surg Pathol. 2022;46(3): e49-e58. doi:10.1097/PAS.0000000000001812
- European Association of Urology. EAU Guidelines on Testicular Cancer 2023. (欧州泌尿器科学会による精巣がんガイドライン, 2023年版)
注意事項
- 本記事は参考情報として提供しているものであり、医療専門家による診察・治療の代替とはなりません。
- 症状が続く場合や急激な悪化がある場合は、速やかに泌尿器科などの専門医にご相談ください。
- 健康状態や治療の効果は個人差が大きいため、自己判断を避け、専門家の診断を受けることをおすすめします。
以上のように、睾丸腫瘤は多様な原因が関係しており、良性から悪性まで幅広い可能性が考えられます。放置すると重大なリスクを抱え込む可能性がありますが、早期発見と適切な治療によって十分に対処できるケースが多いです。ご自身の身体の変化を見逃さず、日ごろから定期的なセルフチェックを心がけるとともに、何か疑問や不安を抱いた際には専門家に相談するようにしましょう。