糖尿病の「新常識」2025年版:痩せ型でもなる理由、食事、社会の偏見まで専門医が徹底解説
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糖尿病の「新常識」2025年版:痩せ型でもなる理由、食事、社会の偏見まで専門医が徹底解説

日本において、糖尿病はもはや他人事ではない深刻な健康課題です。厚生労働省の統計によれば、糖尿病が強く疑われる成人の数は増加傾向にあり、多くの国民がこの病気と向き合っています1。しかし、その一方で、糖尿病をめぐる情報は玉石混交であり、多くの誤解や時代遅れの「常識」が溢れているのが現状です。特に、「肥満の人がなる病気」という単純な認識は、日本人特有の病態を見過ごす危険性をはらんでいます。さらに、病気そのものだけでなく、「自己管理ができていない」といった社会的な偏見(スティグマ)が、患者の方々の心に重い負担をかけているという、もう一つの大きな課題が存在します2。この記事では、日本糖尿病学会(JDS)3、米国糖尿病協会(ADA)4、欧州糖尿病学会(EASD)5といった国内外の最も権威ある機関の最新の科学的根拠に基づき、糖尿病に関する誤解を一つひとつ丁寧に解き明かします。痩せ型でも発症する日本人に特有の理由から、最新の治療法、そして社会の偏見とどう向き合うかまで、包括的かつ共感的な視点から徹底的に解説し、あなたが糖尿病という病気と自信を持って向き合うための一助となることをお約束します。

この記事の科学的根拠

この記事は、入力された研究報告書で明示的に引用されている最高品質の医学的証拠にのみ基づいています。以下は、参照された実際の情報源と、提示された医学的ガイダンスへの直接的な関連性を示したリストです。

  • 日本糖尿病学会(JDS): 日本における診断基準、治療の基本方針、臨床的推奨事項に関する記述は、同学会が発行する「糖尿病診療ガイドライン2024」に基づいています3
  • 米国糖尿病協会(ADA): 持続血糖測定(CGM)、新薬、体重管理、睡眠の役割など、最新の国際的標準治療に関する記述は、同協会の「Standards of Care in Diabetes—2025」に基づいています4
  • ADA & 欧州糖尿病学会(EASD): 患者中心のアプローチやリスク因子の包括的管理に関する記述は、これら二大組織による2022年のコンセンサスレポートを根拠としています5
  • 順天堂大学 & 神戸大学: 日本人に「痩せ型糖尿病」が多い理由に関する遺伝的背景の解説は、これら大学の画期的な研究成果に基づいています67
  • 厚生労働省(MHLW): 日本国内の糖尿病患者数や、痩せ型の人の割合に関する統計データは、同省が実施する「患者調査」および「国民健康・栄養調査」の公式データに基づいています18
  • 日本イーライリリー株式会社 & 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社: 糖尿病患者が直面する社会的な偏見(スティグマ)に関する記述は、両社が支援したシンポジウムの報告書から得られた実体験の引用に基づいています2

要点まとめ

  • 糖尿病は単なる「贅沢病」ではなく、特に日本人においては遺伝的要因が深く関与しており、「痩せ型」でも発症する科学的理由があります。
  • 糖尿病の食事管理は「絶対禁止」ではなく「バランス」が鍵です。最新のガイドラインでは、総炭水化物量の管理が重視されています。
  • 全てのタイプの糖尿病は、放置すれば深刻な合併症を引き起こす可能性があり、「2型は軽症」という考えは危険な誤解です。
  • 糖尿病は「自己責任」や「怠惰」の結果ではありません。誤った社会の偏見(スティグマ)と闘うためには、正しい知識が最も強力な武器となります。
  • 近年の治療の進歩は目覚ましく、持続血糖測定器(CGM)や新薬の登場により、良好な血糖管理と生活の質の向上が十分に可能です。

第1部:糖尿病の基礎を再確認する:血糖とインスリンの科学

糖尿病を正しく理解するためには、まず私たちの体内で血糖値がどのように調節されているかを知る必要があります。食事から摂取した糖質はブドウ糖となり血液中に入りますが、このブドウ糖を細胞がエネルギーとして利用するために不可欠なのが、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込ませることで血糖値を下げる働きをします。日本糖尿病学会(JDS)および米国糖尿病協会(ADA)の定義によれば、糖尿病とは、このインスリンの作用が不足したり、分泌量が減少したりすることで、血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が慢性的に高くなる病気です34。この状態が続くと、全身の血管が傷つけられ、様々な合併症を引き起こす原因となります。糖尿病には主に以下のタイプが存在します。

  • 1型糖尿病: 主に自己免疫反応により、膵臓のインスリンを産生する細胞(β細胞)が破壊され、インスリンがほぼ分泌されなくなる状態。
  • 2型糖尿病: インスリンの分泌量が低下したり、インスリンが効きにくくなったりする(インスリン抵抗性)ことで発症。遺伝的要因と生活習慣が関与します。日本の糖尿病患者の大多数がこのタイプです。
  • その他の特定の機序、疾患によるもの: 遺伝子の異常や他の病気、薬剤が原因で起こるもの。
  • 妊娠糖尿病: 妊娠中に初めて発見または発症した、糖尿病に至っていない糖代謝異常。

1.1 糖尿病の診断基準:あなたはどの段階?

自分が糖尿病なのか、あるいはその手前の「予備群」なのかを正確に知ることは、対策を始める上で非常に重要です。診断は、採血によって血糖値や過去1〜2ヶ月の血糖の平均値を反映する「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」の値を調べることで行われます。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」で示されている診断基準は以下の通りです3

糖尿病の診断基準(JDS 2024準拠)
検査項目 正常域 境界型(糖尿病予備群) 糖尿病域
空腹時血糖値 110 mg/dL未満 110~125 mg/dL 126 mg/dL以上
75g OGTT 2時間値
(経口ブドウ糖負荷試験)
140 mg/dL未満 140~199 mg/dL 200 mg/dL以上
随時血糖値 200 mg/dL以上
HbA1c (国際標準値) 6.0%未満 6.0%~6.4% 6.5%以上

一度の検査で「糖尿病域」が確認されただけでは、すぐに糖尿病と診断されるわけではありません。別の日に行った再検査でも「糖尿病域」が確認された場合、または血糖値とHbA1cの両方が同時に「糖尿病域」であった場合に、糖尿病と診断されます。ただし、口渇、多飲、多尿、体重減少といった典型的な症状がある場合や、網膜症が確認された場合は、一度の検査で診断が確定することもあります。「境界型」はまだ病気ではありませんが、将来的に糖尿病へ移行する危険性が高い状態であり、生活習慣の見直しを始めるべき重要なサインです。

第2部:日本人に特有の課題:なぜ「痩せ型」でも糖尿病になるのか?

「糖尿病は太っている人の病気」というイメージは、特に日本人においては危険な誤解です。厚生労働省の2022年の国民健康・栄養調査によると、日本人男性の4.3%、女性の11.3%が「痩せ」に分類されており、決して少なくない人々が標準体重以下です8。それにもかかわらず、欧米人と比較して、日本人は少しの肥満、あるいは痩せていても2型糖尿病を発症しやすいことが知られています。この現象の背景には、日本人に特有の遺伝的な特徴が深く関わっています。

主な理由として、以下の2点が科学的に指摘されています。

  1. インスリン分泌能力の低さ: そもそも、日本人は欧米人と比べて、血糖値を下げるインスリンを分泌する能力が遺伝的に低い傾向にあります。そのため、インスリンの需要が少し増えただけでも、供給が追いつかなくなり、血糖値が上がりやすくなるのです。
  2. 内臓脂肪の蓄積しやすさ: 見た目は痩せていても、内臓の周りに脂肪が溜まる「内臓脂肪型肥満」である場合があります。この内臓脂肪はインスリンの働きを妨げる(インスリン抵抗性を高める)物質を分泌するため、糖尿病のリスクを高めます。

近年の研究は、この「日本人の体質」を遺伝子レベルで解明しつつあります。神戸大学の研究グループは、東アジア人に多い「EIF2AK4」という遺伝子の特定の変異が、インスリンを産生する膵臓のβ細胞を、軽度の肥満に対してさえも脆弱にすることを明らかにしました。これが、日本人が高いBMI(肥満指数)でなくても2型糖尿病を発症しやすい有力な理由の一つとされています7。さらに、順天堂大学の研究では、「MOTS-c」というミトコンドリア由来のペプチドに関連する遺伝子多型(K14Q)が、日本人の2型糖尿病リスクを高めることが発見されました。しかし、この研究は同時に、この遺伝的危険性を持っていても、定期的な運動習慣によってその影響を打ち消せる可能性があるという希望の光も示しています6。これらの科学的根拠は、糖尿病が単なる生活習慣の問題ではなく、個人の遺伝的背景に深く根差した病気であることを物語っています。したがって、体型だけで安心するのではなく、自身の遺伝的特徴を理解し、早期から予防を意識することが、日本人にとっては特に重要と言えるでしょう。

第3部:よくある誤解を科学的根拠で徹底解説

糖尿病に関する誤った情報は、患者さんの不安を煽り、適切な治療の妨げになることさえあります。ここでは、特によくある誤解を、最新の科学的根拠に基づいて一つひとつ解説していきます。

3.1 食事に関する誤解:「甘いものは絶対禁止」は本当か?

これは最も広まっている誤解の一つです。結論から言えば、「絶対禁止」は正しくありません。糖尿病の食事管理で最も重要なのは、「禁止」ではなく「バランスと賢い選択」です。米国糖尿病協会(ADA)の最新ガイドライン「Standards of Care 2025」でも、特定の食品を完全に排除することよりも、食事全体のカロリーと炭水化物の「総量」を管理することの重要性が強調されています4。もちろん、砂糖や果糖ぶどう糖液糖が多く含まれる菓子類や清涼飲料水は、血糖値を急激に上昇させやすく、カロリーも高いため、摂取を控えるべきです。しかし、それらを「ゼロ」にすることが目標ではありません。食事療法は、栄養バランスの取れた食事を適切な量、規則正しく摂ることが基本です。また、非栄養性甘味料(人工甘味料)については、砂糖の代替として適度かつ短期的に使用することは選択肢となり得るとADAは述べています4。さらに忘れてはならないのが、低血糖時の対応です。薬物療法中に血糖値が下がりすぎた場合、速やかに血糖を上げるためにブドウ糖や糖分を含むジュースなどが必要になります。このように、糖分は状況によっては命を救う役割も担うのです。食事については主治医や管理栄養士とよく相談し、自分に合った持続可能な方法を見つけることが大切です。

3.2 病態に関する誤解:「2型は軽症」「1型は子供の病気」の危険な思い込み

「1型に比べれば2型は軽い病気だ」という考えも、危険な誤解です。確かに、1型糖尿病はインスリンが絶対的に欠乏するため、生涯にわたるインスリン注射が必須です。一方、2型糖尿病は初期には食事や運動、内服薬で管理できる場合が多いかもしれません。しかし、全てのタイプの糖尿病は、血糖コントロールが不良な状態が続けば、深刻な合併症を引き起こす点では同じです。日本糖尿病学会(JDS)とADAのガイドラインは共に、高血糖が腎症(進行すれば透析が必要)、網膜症(失明の原因)、神経障害(足の切断につながることも)、そして心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる心血管疾患の重大な危険因子であることを明確に示しています34。2型糖尿病を「軽症」と侮り、治療を疎かにすることは、将来的に生活の質を著しく損なう結果を招きかねません。また、「1型は子供や若者がなる病気」というのも固定観念です。実際には、成人してから1型糖尿病を発症するケース(緩徐進行1型糖尿病、LADA)も少なくありません。逆に、食生活の変化などから若年層で2型糖尿病を発症する例も増えています。タイプや発症年齢に関わらず、糖尿病は早期に発見し、適切に管理していくべき病気なのです。

3.3 運動に関する誤解:「運動は危険」という思い込み

「糖尿病の人は運動すると危ない」と考えている方もいますが、これも多くの場合、誤りです。むしろ、計画的で適切な運動は、食事療法と並ぶ糖尿病管理の最も重要な柱の一つです。運動には、ブドウ糖や脂肪酸の利用を促進して血糖値を下げる、インスリンの効き目を良くする(インスリン抵抗性の改善)など、多くの利点があります。ADAとJDSは共に、特別な合併症がない限り、成人の糖尿病患者に対して週に150分以上の中等度の有酸素運動(早歩き、サイクリングなど)を推奨しています34。さらにADAの2025年版ガイドラインでは、体重減少時に筋肉量を維持することの重要性から、週に2~3回のレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせることが新たに強調されています4。もちろん、重い合併症(不安定な心疾患、増殖網膜症など)がある場合や、血糖値が極端に高い・低い場合には運動を控えるべきです。運動を始める前には必ず主治医に相談し、安全な運動の種類や強度、時間、注意点について指導を受けることが不可欠です。

第4部:「糖尿病」という言葉の壁:社会的な偏見(スティグマ)と向き合う

糖尿病がもたらす負担は、血糖値の管理や合併症への不安といった医学的な側面だけにとどまりません。多くの患者さんが、周囲からの誤解や偏見、すなわち「スティグマ」によって、心に深い傷を負っています。これは、日本社会において特に根深い問題です。2023年に行われたシンポジウムでは、患者さんから寄せられた痛切な声が共有されました。例えば、「わがままで、怠惰だから糖尿病になる」「低血糖対策のために補食していると『だから糖尿病になるんだ』と言われる」といった心ない言葉です2。このような経験は、患者さんから病気と前向きに向き合う気力を奪い、治療の中断や悪化につながることさえあります。

こうした偏見の根源にあるのは、「糖尿病は自己責任である」という誤った認識です。本記事の第2部で詳述したように、特に日本人においては遺伝的要因が大きく関与しており、決して本人の意思や努力だけでコントロールできる問題ではありません。この「スティグマ」を解消するためには、社会全体が糖尿病に関する正しい知識を持つことが不可欠です。近年では、病名が持つ否定的なイメージを払拭するために、「糖尿病」という名称を「糖代謝異常症」などに変更すべきではないかという議論も専門家や患者団体の間でなされています2

もしあなたが患者としてスティグマに苦しんでいるなら、一人で抱え込まないでください。家族や信頼できる同僚に病気について正しく説明し、理解を求めることが第一歩です。また、同じ悩みを持つ仲間と繋がれる患者会や、国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターのような公的機関から信頼できる情報を得て、知識で武装することも、あなた自身を偏見から守る力になります9

第5部:最新の治療と自己管理の最前線(2025年更新)

糖尿病治療は日々進歩しており、患者さんの生活の質(QOL)を大きく向上させる新たな選択肢が登場しています。ここでは、2025年時点での最新の治療法と自己管理ツールを紹介します。

5.1 薬物療法の進歩:心臓や腎臓も守る新薬

かつての糖尿病治療薬は、主に血糖値を下げることに焦点が当てられていました。しかし近年登場した「GLP-1受容体作動薬」や「SGLT2阻害薬」といった新薬は、血糖コントロールを改善するだけでなく、心臓や腎臓を保護する効果があることが大規模な臨床試験で証明されています。ADAとEASDの合同コンセンサスレポートでは、心血管疾患や腎臓病のリスクが高い2型糖尿病患者に対し、これらの薬剤を積極的に使用することが推奨されています5。これにより、単に血糖値を下げるだけでなく、糖尿病の最も深刻な合併症である心筋梗塞や腎不全を予防するという、より包括的な治療戦略が可能になりました。

5.2 テクノロジーの活用:持続血糖測定器(CGM)

持続血糖測定器(CGM)は、皮下に挿入した小さなセンサーで、24時間連続して血糖値の変動を測定・記録する装置です。これにより、従来の指先穿刺による自己血糖測定では捉えきれなかった食後や夜間の血糖変動、無自覚性の低血糖などを「見える化」できます。ADAの2025年版ガイドラインでは、インスリン療法中の患者だけでなく、基礎インスリンのみを使用している2型糖尿病患者や、一部の内服薬治療中の患者にとっても、CGMが血糖コントロールの改善に有用である可能性が示唆されるなど、その適用範囲は広がりつつあります4。CGMから得られる詳細なデータを活用することで、より個人に最適化された治療計画を立てることが可能になります。

5.3 生活習慣の新たな柱:睡眠の重要性

食事と運動が糖尿病管理の二本柱であることはよく知られていますが、ADAの2025年版ガイドラインでは、これらに「睡眠」を加えた第三の柱としての役割が新たに強調されています4。睡眠不足や睡眠の質の低下は、インスリン抵抗性を悪化させ、食欲を増進させるホルモンバランスを乱すことで、血糖コントロールに悪影響を及ぼすことが分かってきました。質の良い睡眠を十分にとることは、もはや単なる休息ではなく、積極的な治療の一部と見なされています。一貫した睡眠スケジュールを保ち、快適な睡眠環境を整えることが、血糖管理を改善するための重要なステップです。

よくある質問

痩せているのに糖尿病と診断されました。なぜですか?

これは日本人に決して珍しくないケースです。理由は大きく2つあります。第一に、日本人は欧米人に比べて遺伝的にインスリンを分泌する能力が低い傾向にあります。第二に、見た目は痩せていても内臓の周りに脂肪が蓄積しやすく、これがインスリンの働きを妨げることがあります。神戸大学や順天堂大学の研究で、特定の遺伝子が日本人の糖尿病発症しやすさに関わっていることが示されています67。体型だけで判断せず、健康診断などで血糖値を確認することが重要です。

糖尿病になったら、もう甘いものは一生食べられないのでしょうか?

いいえ、「一生食べられない」わけではありません。重要なのは「ゼロ」にすることではなく、「量と頻度をコントロール」し、「バランスの取れた食事」を心がけることです。米国糖尿病協会(ADA)のガイドラインでも、食事全体の総炭水化物量や総カロリーを管理することが重視されています4。特別な日にお菓子を少し楽しむなど、上手に付き合っていくことは可能です。ただし、日常的に砂糖の多い飲料や菓子を摂取することは避けるべきです。詳しくは主治医や管理栄養士にご相談ください。

2型糖尿病は「軽い病気」で、あまり心配しなくても良いと聞きました。本当ですか?

それは危険な誤解です。どのタイプの糖尿病であっても、血糖コントロールが悪い状態が続くと、失明や腎不全、足の切断、さらには心筋梗塞や脳卒中といった命に関わる深刻な合併症を引き起こす可能性があります34。2型糖尿病を「軽症」と侮らず、早期から医師の指導のもとで適切な治療と自己管理を続けることが、健康な未来を守るために不可欠です。

運動はしたいのですが、低血糖が怖いです。どうすればよいですか?

運動中の低血糖は、特にインスリンや一部の内服薬を使用している場合に注意が必要です。運動を始める前には必ず主治医に相談し、安全に行うための指導を受けてください。一般的には、運動前後に血糖値を測定する、運動強度や時間に合わせて薬の量を調整する(医師の指示)、補食としてブドウ糖などを携帯するといった対策が有効です。計画的に行うことで、運動は糖尿病管理の強力な味方になります。

結論

本記事を通じて、糖尿病にまつわる数多くの誤解が、いかに科学的根拠に乏しいものであるか、そして時には有害でさえあるかをお分かりいただけたかと思います。重要なメッセージを改めて確認しましょう。第一に、糖尿病は、特に日本人にとっては遺伝的背景も絡んだ複雑な病気であり、「太っているから」「怠けているから」といった単純なレッテルで語られるべきものではありません。第二に、正しい知識は、病気そのものをコントロールするためだけでなく、あなたを社会の無理解な偏見から守るための最も強力な武器となります。そして第三に、絶え間なく進歩する現代医学のサポートがあれば、糖尿病と共に豊かで充実した人生を送ることは十分に可能です。最新の治療法やテクノロジーは、あなたの負担を軽減し、より良い未来への扉を開いてくれるでしょう。この記事が、あなたが抱える不安や疑問を解消し、糖尿病と前向きに、そして自信を持って向き合うための一歩となることを心から願っています。

この記事は、糖尿病に関する一般的な情報提供を目的としています。個々の病状や治療計画は、患者さん一人ひとり異なります。あなたにとって最適な治療法を見つけるためには、必ず主治医や専門の医療スタッフと十分に相談してください。より詳しい公的な情報が必要な方は、国立国際医療研究センターの「糖尿病情報センター」9や、「日本糖尿病学会」3の公式ウェブサイトもご参照ください。

免責事項本記事は情報提供のみを目的としており、専門的な医学的アドバイスを構成するものではありません。健康に関する懸念がある場合、またはご自身の健康や治療に関する決定を下す前には、必ず資格のある医療専門家にご相談ください。

参考文献

  1. 厚生労働省. 患者調査. Available from: https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20-kekka.html
  2. 日本イーライリリー株式会社, 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社. 「知ってほしい!“糖尿病への誤解”」―誤解の実態と、企業や周囲ができること― シンポジウムレポート. 2023 [引用日: 2025年7月21日]. Available from: https://credentials.jp/2023-06/special-report2/
  3. 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024. 南江堂; 2024. Available from: https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00864/
  4. American Diabetes Association. Standards of Care in Diabetes—2025. Diabetes Care. 2025;48(Supplement_1). Available from: https://professional.diabetes.org/standards-of-care
  5. Davies MJ, Aroda VR, Collins BS, et al. Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes, 2022. A Consensus Report by the American Diabetes Association (ADA) and the European Association for the Study of Diabetes (EASD). Diabetes Care. 2022;45(11):2753-2786. doi:10.2337/dci22-0034. Available from: https://diabetesjournals.org/care/article/45/11/2753/147955/Management-of-Hyperglycemia-in-Type-2-Diabetes
  6. 順天堂大学. 日本人の2型糖尿病発症に関連するミトコンドリア遺伝子多型を発見. 2021 [引用日: 2025年7月21日]. Available from: https://www.juntendo.ac.jp/news/00216.html
  7. Komiya C, Tsuchiya Y, Shiba K, et al. The EIF2AK4-GCN2 pathway is a physiological regulator of β-cell function. JCI Insight. 2020;5(10):e136332. doi:10.1172/jci.insight.136332. Available from: https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/2020_05_29_03/
  8. 厚生労働省. 令和4年(2022年)国民健康・栄養調査の結果. Available from: https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010763.php
  9. 国立国際医療研究センター. 糖尿病情報センター. [引用日: 2025年7月21日]. Available from: https://dmic.ncgm.go.jp/
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