緑内障の診断方法とは?眼圧・視野・OCT検査でわかること
この記事でわかること
目次
- 緑内障の診断方法はどう組み立てられるのか? 眼圧だけでは診断できない理由
- 眼圧検査(トノメトリー)の基準値と「正常眼圧緑内障」という罠
- 眼底検査とOCT(光干渉断層計)――視野が欠ける前に見つける
- 視野検査――なぜ緑内障の初期は自分で気づけないのか
- 隅角検査――開放隅角か閉塞隅角かで見えるリスクが変わる
- 開放隅角・閉塞隅角・正常眼圧――タイプによって検査の意味づけが変わる
- 健診・人間ドックの眼底検査だけでも緑内障は見つかる
- 検査当日はどんな流れになるか
- 1回の検査結果だけでは決まらない――経過観察という診断の基準
- 定期検査を受けるべき人・受けるべき頻度
- まとめ――緑内障の診断方法、5つの検査をどう理解しておけばよいか
- よくある質問
- この記事に関連する内部リンク
- 参考文献
結論から言うと
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緑内障の診断方法は、眼圧を測るだけでは成り立ちません。日本眼科学会は、眼底検査で視神経乳頭の状態を見て、OCT(光干渉断層計)で網膜の厚みを画像化し、視野検査で見える範囲の欠けを確認し、隅角検査で房水の出口の形を調べるなど、複数の検査を組み合わせて診断することを解説しています[1]。
同学会によれば、日本では40歳以上の約5%、つまり20人に1人が緑内障を有すると報告されており、決して珍しい病気ではありません[1]。日本眼科医会も、患者の多くは眼圧が正常範囲内にとどまる「正常眼圧緑内障」であり、視野の欠けにもほとんど自覚がないまま進行するため、健診や人間ドックの眼底検査で偶然発見されるケースが大半を占めると説明しています[3]。これから眼科を受診する方、あるいは受診したばかりで検査結果の意味を知りたい方に向けて、この記事では緑内障の診断方法だけを整理して解説します。
要点まとめ
- 日本眼科学会によれば、日本人の40歳以上では約5%、20人に1人の割合で緑内障がある[1]。日本眼科医会も、年齢が上がるほど頻度は増えると説明している[3]
- 日本眼科学会によれば、眼圧が正常範囲(10〜20mmHg程度)でも緑内障は起こりうる。日本人患者の多くは眼圧が正常な「正常眼圧緑内障」である[1]
- 緑内障診療ガイドラインを紹介する記事によれば、診断は眼圧だけで決まらず、眼底所見(視神経乳頭の陥凹)と視野検査の結果を軸に、OCTや隅角検査を組み合わせて判断される[2]
- 同ガイドライン解説記事は、緑内障の初期にほとんど自覚症状がない理由として、中心の視野が末期まで保たれやすいことと、片方の目の欠けをもう片方の目が補うことを挙げている[2]
- 日本眼科学会によれば、急に目が痛む・頭痛や吐き気を伴う・視界が急に霞むときは「急性緑内障発作」の可能性があり、通常の緑内障とは別に緊急受診が必要である[1]
編集方針: この記事の緑内障の診断方法に関する解説は、JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本眼科学会・公益社団法人日本眼科医会・日本内科学会雑誌に掲載されたガイドライン解説など公的機関・学会発の資料と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類は今後のガイドライン改定により変わる可能性があります(2026年7月時点の情報)。
緑内障の診断方法はどう組み立てられるのか? 眼圧だけでは診断できない理由
緑内障は、日本眼科学会の一般向け解説によれば、「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義される病気です[1]。この定義をよく読むと、「眼圧が高い病気」だとは一言も書かれていないことに気づきます。実際、緑内障診療ガイドライン第5版を紹介する日本内科学会雑誌の記事でも「眼圧値は治療の評価に有用であるが、小児緑内障以外の病型においては診断に眼圧値が使われることはない」と明記されており、大人の緑内障の診断は眼底所見(視神経の見た目)と視野検査の結果を軸に行われるとされています[2]。つまり定義の中にある「機能的異常」が視野検査で調べる部分、「構造的異常」が眼底検査・OCTで調べる部分にあたり、診断はこの両方が噛み合って初めて確定していく組み立てになっている、と理解すると全体像がつかみやすくなります。
日本眼科学会の解説によれば、目の中は房水と呼ばれる水で満たされ、その量によって眼球内部の圧力(眼圧)が決まります。房水は毛様体で作られ、水晶体や角膜に栄養を与えながら前房を経て隅角へと移動し、隅角にある線維柱帯・シュレム管を通って静脈へ流れ出ていきます[1]。日本眼科医会の報告では、この出口が詰まったり塞がったりすると眼圧が上がり、視神経が傷みやすくなることが緑内障の代表的な仕組みの一つとして説明されています[3]。同会の報告によれば、日本人の緑内障患者ではこの「出口の詰まり」がはっきりしないまま、眼圧が正常範囲内なのに視神経が障害される「正常眼圧緑内障」が非常に多いことが知られています[3]。だからこそ、眼圧の数値1つだけを見て「異常なし」と判断することはできず、視神経そのものと視野の状態を直接調べる検査が診断の中心になります。
視神経そのものがどう障害されるのかも、診断の意味を理解するうえで役立ちます。緑内障診療ガイドライン第5版を紹介する記事によれば、網膜では視細胞が光を感知し、その信号は双極細胞を経て神経節細胞へ伝わり、その軸索(電線のような構造)は視神経乳頭、視神経、視交叉、視索を通って脳の視床にある外側膝状体まで延びています[2]。日本眼科学会も、神経節細胞は網膜の最も内側にある細胞であり、そこから伝わった情報が最終的に脳まで届けられると説明しています[1]。同ガイドライン解説記事はさらに、片目でおよそ100万から120万本ある神経節細胞の軸索が網膜全域から視神経乳頭部に集まり、視神経乳頭の辺縁を形作っていると述べています[2]。緑内障ではこの軸索が徐々に減っていくため、軸索が担当していた範囲の視野が見えづらくなっていくとされています[1]。眼底検査・OCT・視野検査は、それぞれこの一連の経路のどこに異常が出ているかを別々の角度から確かめる検査だとイメージすると、なぜ複数の検査を組み合わせる必要があるのかが理解しやすくなります。
また日本眼科医会の報告によれば、緑内障は原因によっていくつかの種類に分けられます。他に原因がない「原発緑内障」と、他の原因で眼圧が上がる「続発緑内障」、生まれつきや子どもの時期に眼圧が上がる「発達緑内障(小児の緑内障)」です[3]。同会の報告はさらに、続発緑内障で眼圧が上がる原因として、目に関するものではぶどう膜炎・目の手術後・ケガなどを、目以外の原因では糖尿病や脳疾患のほか、ステロイド点眼薬など薬の副作用を挙げています[3]。診断の際には、こうした続発緑内障の原因になりうる持病や使用中の薬がないかも合わせて確認されます。同会の報告によれば、原発緑内障はさらに、隅角が広い「開放隅角緑内障」と隅角が狭い「閉塞隅角緑内障」に分かれます[3]。本記事で扱う診断の流れは、主に成人の原発緑内障(開放隅角緑内障・閉塞隅角緑内障・正常眼圧緑内障)を対象にしています。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
眼圧検査(トノメトリー)の基準値と「正常眼圧緑内障」という罠
眼圧検査はほとんどの眼科で最初に行われる検査で、目に軽く空気を当てる、あるいは専用のチップを角膜に触れさせて眼圧を測定します。日本眼科学会は眼圧の正常範囲を「10 mmHgから20 mmHgが正常範囲内」としています[1]。公益社団法人日本眼科医会が発行する解説書でも同じく「眼圧は10〜20mmHgが正常範囲とされています」と述べられています[3]。一方で同医会の別の報告資料では「眼圧の正常値は10〜21mmHgですが、眼によって耐えられる眼圧が異なります」ともされています[5]。施設や資料によって上限の記載に1mmHg程度の幅があることも知っておくとよいでしょう。
ここで重要なのは、「20mmHg以下だから緑内障ではない」とは言い切れない点です。日本眼科医会の報告では、開放隅角緑内障について「病気がかなり進行するまで自覚症状はほとんどありません。眼圧に関しては、正常眼圧緑内障が多いことに加え、20mmHgを少し超える程度の軽度の眼圧上昇では、特に異常を自覚することがないから」と説明されています[3]。つまり、眼圧の数値がわずかに高い程度でも、あるいはまったく正常範囲内であっても、視神経はすでに障害され始めている可能性があるということです。緑内障診療ガイドラインを紹介する記事も、成人の診断には眼圧値そのものは使われず治療の評価に使うものだとしており、そのため眼圧検査は「診断を確定する検査」ではなく「治療の目標値を決めるための手がかり」という位置づけで理解しておくと実態に近くなります[2]。
眼圧検査には、目に軽く空気を吹き当てて跳ね返り方から圧力を推定する方式や、麻酔の目薬をさしたうえで専用のチップを角膜に触れさせて測る方式など、複数の測定方法があります。どちらの方式を使うかは受診先の設備によって異なりますが、目的は同じく「今この瞬間の眼圧」を数値化することです。ただし眼圧は一日のうちでも変動することが知られており、朝と夕方で数値が違って測定されることも珍しくありません。1回の測定値だけで一喜一憂せず、複数回の測定結果を眼科医と一緒に見ていく姿勢が大切です。
| 状態 | 眼圧の目安 | 出典・備考 |
|---|---|---|
| 一般的な正常範囲 | 10〜20mmHg程度 | 日本眼科学会の解説による[1]。日本眼科医会の資料では10〜21mmHgとする記載もある[5] |
| 開放隅角緑内障で見られる軽度上昇 | 20mmHgを少し超える程度 | この程度では自覚症状がほとんどないとされる[3] |
| 急性緑内障発作時 | 正常値の倍以上、通常40〜60mmHg程度まで急上昇 | 眼痛・視力低下・嘔気・嘔吐を伴う緊急事態[1][3] |
出典:日本眼科学会「緑内障」[1]/公益社団法人日本眼科医会「よくわかる緑内障―診断と治療―」[3]/同会「緑内障といわれた方へ」[5]
眼底検査とOCT(光干渉断層計)――視野が欠ける前に見つける
眼底検査は、瞳孔を通して目の奥にある視神経乳頭(視神経が眼球から出ていく部分)を直接観察する検査です。日本眼科医会の報告によれば、緑内障になると目と脳をつなぐ神経線維が徐々に減っていき、視神経乳頭の中心にあるくぼみ(陥凹)が大きくなっていきます[3]。緑内障診療ガイドライン第5版を紹介する記事でも「その軸索が減少すると視神経乳頭の辺縁が薄くなり、逆に乳頭陥凹が大きく深くなる」と説明されており、眼科医はこの陥凹の大きさや形、左右差を見て緑内障を疑います[2]。
近年広く使われているOCT(光干渉断層計)は、目の奥の網膜や視神経乳頭の断面を画像として見ることができる装置です。日本眼科医会の報告では「視神経乳頭のごくわずかな陥凹や網膜の特定の層が薄くなっていることがわかるので、ごく初期の緑内障を診断できるようになっています」とされ、肉眼の眼底検査よりも早い段階の変化を捉えられる検査として位置づけられています[3]。緑内障診療ガイドラインを紹介する記事によれば、OCTでは黄斑部周囲にある網膜神経線維層・網膜神経節細胞層・内網状層といった網膜内層の厚みを、同年代の正常値のデータベースと比較します[2]。この比較結果は色分けされたマップ(カラーコードマップ)で示され、同ガイドライン解説記事によれば正常範囲内であれば緑色、5%の確率で異常な薄さであれば黄色、1%の確率で異常であれば赤色で表示される仕組みになっています[2]。つまり黄色や赤色の表示が出た部分は、同年代の平均よりも網膜が薄い=神経線維がすでに減っている可能性が高いというサインです。人間の網膜神経節細胞は片目でおよそ100万〜120万本の軸索が集まって視神経を作っていると考えられており、OCTはこの軸索の集まりがどれだけ減っているかを間接的に映し出す検査だといえます。
眼底検査とOCTは、いずれも「視野が欠けたと自覚する前」の段階で変化を捉えられる可能性がある点が価値です。視野の異常が自覚されるころには、すでに神経線維がかなり減っていることが多いため、この2つの検査は早期発見の要となります。
先ほど触れたOCTの色分けについて、もう少し補足しておきます。同ガイドライン解説記事による「黄色は5%の確率で、赤は1%の確率で異常値であることを示す」という仕組みは、同じ年代の健康な人たちの網膜の厚みのデータを集めたうえで、そこから外れた薄さである確率を色で表しているということです[2]。黄色や赤色が出たからといって、その場で緑内障が確定するわけではなく、他の検査(眼底所見や視野検査)と照らし合わせて総合的に判断されます。逆に、色分けマップが全体的に緑色であっても、眼圧や視野の結果によっては経過観察の対象になることもあります。OCTは非常に精密な検査ですが、あくまで「診断を助ける画像データ」であり、それ単独で白黒がつく検査ではない、という理解が実態に近いといえます。
眼底検査やOCT、視野検査は、通常の保険診療の範囲内で行われる一般的な検査です。健診で「要精密検査」の通知を受け取った場合も、多くは通常の眼科外来でこれらの検査を追加で受ける形になります。
視野検査――なぜ緑内障の初期は自分で気づけないのか
視野検査は、視界のどの部分が見えていて、どの部分が見えにくくなっているかを専用の装置で調べる検査です。日本眼科学会は「視野検査は緑内障診療の基本の検査で、緑内障が進行したかどうかは視野検査の結果で判定します」としており、診断だけでなく経過観察においても中心的な役割を担う検査です[1]。装置の中の一点を見つめたまま、周辺にランダムに現れる光の点が見えたらボタンを押す、という方法で見える範囲と感度を細かく記録していきます。
緑内障による視野の欠け方には特徴があります。緑内障診療ガイドライン第5版の解説記事によれば、視神経乳頭の耳側(目尻側)の神経線維は、網膜の中で上方と下方が混ざり合うことがないため、初期の視野障害は水平の線を境に上下どちらか一方に偏った形で、まず鼻側から出現するとされています[2]。実際に日本眼科学会が示す視野検査結果の一例でも、「鼻側欠損と弓状暗点」がみられると解説されています[1]。
ではなぜ、この欠けに本人が気づきにくいのでしょうか。緑内障診療ガイドラインを紹介する記事は、理由として2つを挙げています。第一に、緑内障の視野障害は病期が進んでも中心視野(見つめている真ん中の部分)が末期まで保たれることが多く、周辺から欠けていくため見え方の異常として感じにくいことです。第二に、片方の目の視野の欠けをもう片方の目の視野が補ってしまうことが少なくない点だと、同ガイドライン解説記事は指摘しています[2]。両目で見ている限り、片目の欠損部分をもう片目の情報が埋めてしまうため、両目を開けたまま日常生活を送っていると異常に気づきにくいのです。日本眼科医会も「開放隅角緑内障では、病気がかなり進行するまで自覚症状はほとんどありません」「視野に関しては、初期から中期の視野障害は視野検査では検出されますが、患者さんが視野の欠けを自覚することはまれです」と報告しており、視野検査という装置を使った検査だけが、この隠れた欠損を客観的な数値として可視化できると説明しています[3]。緑内障診療ガイドラインの解説記事も「急性緑内障発作の場合を除いて、その進行速度は緩徐である。これらのため患者の自覚症状は乏しく、不自由を自覚的に感じるころは末期緑内障である場合が多い」とまとめています[2]。なお日本眼科医会の報告によれば、視野検査では誰にでも生理的に存在する「マリオット盲点」と呼ばれる小さな見えない部分も検出されますが、これは正常な生理現象であり心配は不要です[3]。
🚦 受診の目安――急性緑内障発作
すぐに受診が必要なサイン
隅角検査――開放隅角か閉塞隅角かで見えるリスクが変わる
日本眼科学会によれば、隅角とは黒目の縁にあたる部分で、房水が眼の外へ流れ出ていく出口にあたる場所です。隅角検査(隅角鏡検査)では、隅角鏡と呼ばれる小さなレンズを目の表面にのせ、隅角が広く開いている「開放隅角」なのか、狭くなったり塞がっている「閉塞隅角」なのか、あるいは隅角に色素や異常な組織が蓄積していないかを直接観察します[1]。隅角は角膜の内側の奥まった位置にあるため、専用の鏡がついたレンズを介さないと外から直接のぞき込むことができません。そのため隅角検査には隅角鏡という特殊な器具が必須であり、通常の眼底検査や細隙灯顕微鏡検査だけでは代用できない検査です。日本眼科医会の報告でも「隅角検査は、隅角鏡という小さなレンズを目に当てて、隅角が開放隅角か閉塞隅角か、隅角に異常な物質の蓄積がないかなどを調べます」と説明されています[3]。
この検査が重要なのは、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障とでは進行の仕方と緊急度がまったく異なるためです。日本眼科医会の報告によれば、開放隅角緑内障は隅角が開いているにもかかわらず房水の通り道である線維柱帯が目詰まりを起こすタイプで、進行はゆるやかな慢性の経過をたどることがほとんどです。一方、閉塞隅角緑内障は虹彩と線維柱帯が接触して隅角がふさがるタイプで、急激に眼圧が上がる急性緑内障発作を起こす可能性があります[3]。日本眼科学会は「緑内障と診断された方はご自身が閉塞隅角、狭隅角か開放隅角かは主治医に確認されることをお勧めします」と述べており、風邪薬や鼻炎薬など市販薬の中に閉塞隅角緑内障の方が使えないものがある点にも触れています[1]。隅角のタイプを知ることは、日常生活で気をつけるべき薬の種類にも関わる情報だといえます。
なお、緑内障の中には地域差があることも報告されています。日本眼科医会の解説では「日本人の緑内障の多くは、慢性緑内障である原発開放隅角緑内障で、特に眼圧が正常な正常眼圧緑内障がとても多いことが知られています。沖縄地方では原発閉塞隅角緑内障の頻度が高いなど、緑内障の種類には地域差があるようです」とされています[3]。この地域差は、隅角の広さに関わる目の形(眼球の大きさや水晶体の厚みなど)が地域によって傾向を持つためではないかと考えられていますが、確実な原因は明らかになっていません。
また、緑内障は眼圧の上昇以外にも原因があると考えられています。日本眼科医会の解説では「眼圧が高くない人にも緑内障が少なくないことから、眼圧以外にも緑内障の原因があると考えられています。原因として『視神経が弱い』、『血流が少ない』、『視神経に毒として働く物質が存在する』、『免疫の異常』などいろいろ考えられていますが、どれも確実な証拠は見つかっていません」と説明されています[3]。隅角検査で隅角の形を確認することは、こうした複数の要因のうち「房水の出口の形」という側面を明らかにする作業であり、緑内障の原因すべてを説明するものではない、という位置づけも押さえておくとよいでしょう。
| 検査名 | 何がわかるか | 出典 |
|---|---|---|
| 眼圧検査 | 房水の量で決まる目の硬さ(圧力)を測定する | [1] |
| 眼底検査 | 視神経乳頭の陥凹(へこみ)の大きさや形を直接観察する | [3] |
| OCT(光干渉断層計) | 網膜神経線維層などの厚みを同年代正常値と比較し、ごく初期の変化を画像で検出する | [2][3] |
| 視野検査 | 見える範囲の欠損(暗点)を数値化し、進行の有無を判定する | [1] |
| 隅角検査(隅角鏡検査) | 開放隅角か閉塞隅角か、隅角の状態を観察する | [3] |
| 細隙灯顕微鏡検査 | 角膜・結膜など目の前方部分を観察する | [3] |
出典:日本眼科学会「緑内障」[1]/木内良明「緑内障診療ガイドライン第5版」日本内科学会雑誌[2]/公益社団法人日本眼科医会「よくわかる緑内障―診断と治療―」[3]
開放隅角・閉塞隅角・正常眼圧――タイプによって検査の意味づけが変わる
ここまで見てきた眼圧検査・眼底検査・OCT・視野検査・隅角検査は、いずれも「緑内障かどうか」だけでなく「どのタイプの緑内障か」を見分けるためにも使われます。タイプによって進行の速さや急変のリスクが異なるため、同じ「緑内障」という診断名でも、隅角検査や眼圧検査の結果次第で注意すべきポイントが変わってきます。
| タイプ | 隅角の状態 | 眼圧の傾向 | 進行の速さ |
|---|---|---|---|
| 開放隅角緑内障(正常眼圧緑内障を含む) | 隅角は開いているが線維柱帯が目詰まりしやすい[3] | 正常範囲〜軽度上昇のことが多い[3] | 慢性でゆるやか[3] |
| 閉塞隅角緑内障 | 虹彩と線維柱帯が接触し隅角がふさがる[3] | 急激に上昇しうる(急性発作時40〜60mmHg程度)[3] | 急性発作を起こすと短期間で進行しうる[3] |
| 続発緑内障 | 原因疾患により様々[3] | 原因(ぶどう膜炎・外傷・薬剤など)による[3] | 原因疾患の経過に左右される |
出典:公益社団法人日本眼科医会「よくわかる緑内障―診断と治療―」[3]
この表からもわかるとおり、隅角検査の結果は単なる分類作業ではなく、「この患者さんは急性発作のリスクを持っているかどうか」を見極める安全確認の意味も持っています。診断を受けた際は、自分がどのタイプにあたるのか、特に閉塞隅角の要素があるかどうかを必ず確認しておくとよいでしょう。
健診・人間ドックの眼底検査だけでも緑内障は見つかる
眼科を受診する前段階として、職場健診や人間ドックの眼底検査だけでも緑内障は見つかります。三重大学医学部眼科学教授・近藤峰生氏が執筆した日本眼科医会の報告記事では「健康診断の眼底検査で最もよく見つかる病気は、緑内障です。緑内障は、40歳以上では、20人に1人もいるといわれます」と述べられています[4]。同解説では緑内障の眼底検査について「視神経乳頭のくぼみ(視神経乳頭の陥凹)が拡がったり、網膜の表面の視神経線維が欠損した状態を早期に発見できます。結果、症状の自覚のない初期から治療を受けることが可能になります」とも説明されています[4]。健診で「眼底に所見あり」「緑内障の疑い」と指摘された場合は、この段階ではまだ簡易的な眼底写真だけの評価であることが多く、眼科で改めてOCT・視野検査・隅角検査を受けて確定的な診断へ進むのが一般的な流れです。
眼底検査には目の病気以外の情報も含まれています。同解説では「体内で唯一、血管の状態をそのまま観察できるのが眼底なので、眼底検査により、目の病気だけでなく全身の病気を早期に診断することができます。高血圧や動脈硬化、また糖尿病の状態なども、眼底検査でよくわかります」とされており、緑内障の検査を受けることが結果的に全身の健康チェックにもつながる場合がある点も知っておくとよいでしょう[4]。
検査当日はどんな流れになるか
日本眼科学会によれば、眼科で緑内障の検査を受ける際、施設によって順番の細部は異なりますが、視力検査・眼圧検査・細隙灯顕微鏡検査・隅角検査・眼底検査・OCT・視野検査という項目を組み合わせて行うのが基本の流れです[1]。眼底やOCTの検査では、瞳孔を大きく広げる目薬(散瞳薬)を使うことがあり、使用すると数時間はピントが合いにくく眩しく感じることがあります。検査当日に自分で車を運転して帰る予定がある場合は、散瞳の有無を受付や医師にあらかじめ確認しておくと安心です。視野検査は集中力を要する検査で、片目ずつ、装置の中の一点を見つめながら数分間行います。日本眼科医会の報告によれば、視野検査の結果はそのときの体調が反映されやすいとされているため[5]、可能であれば体調の良い日に検査を受け、うまく反応できなかったと感じた場合は次回の検査でその旨を伝えるとよいでしょう。
1回の検査結果だけでは決まらない――経過観察という診断の基準
緑内障の診断で見落とされがちなのが、「1回の検査で異常値が出た=即・緑内障確定」とはならないという点です。眼圧は一日のうちでも変動しますし、視野検査の結果は「そのときの患者さんの気持ちや体調がよく反映される検査」だと日本眼科医会の報告も説明しています[5]。緑内障診療ガイドライン第5版の解説記事でも、眼圧が高いのに眼底や視野に緑内障性の変化が見られない場合(高眼圧症)と、逆に眼圧は正常でも眼底の変化がはっきりしている場合の両方が、治療を始めるかどうかを判断する重要な臨床課題として扱われており、「いずれも危険因子を勘案しながら」判断されるとされています[2]。つまり検査結果が「眼圧だけ高い」「眼底だけ変化がある」というように一部の検査項目だけで揃わない場合でも、それだけで診断が保留になるわけではなく、他の検査結果や危険因子と合わせて総合的に評価されるということです。このような「検査結果同士が単純に揃わないケース」があるからこそ、複数の検査を組み合わせる意味があるといえます。つまり眼科医は、1回の眼圧や視野の数値だけでなく、複数回の眼底写真・OCT画像・視野検査結果を時系列で並べ、視神経乳頭の陥凹や網膜の厚みが本当に進行しているか、視野の暗点が本当に広がっているかを継続的に確認しながら診断・経過観察を行っています。健診で「要精密検査」と言われた場合も、この時点ではまだ確定診断ではなく、眼科での複数回の検査を経て判断されるのが通常の流れです。
経過観察の間隔は一律ではなく、危険因子の有無や初診時の所見の程度によって眼科医が個別に判断します。すでに視神経乳頭の陥凹や視野の異常がはっきりしている場合は間隔を短くして慎重に追いかけ、所見が軽度で経過を見る段階であれば間隔を空けて様子を見ることもあります。緑内障の疑いがあると言われたまま自己判断で通院をやめてしまうと、進行に気づく機会そのものを失うことになるため、次にいつ検査を受けるべきかは毎回の受診時に必ず確認しておくことをおすすめします。
定期検査を受けるべき人・受けるべき頻度
緑内障の危険因子について、日本眼科学会は緑内障診療ガイドラインを引用する形で「緑内障のリスク要因は眼圧が高いこと、高齢、家族に緑内障罹患者がいること、角膜が薄いこと、血圧が低いこと、糖尿病、そしてきちんと治療を継続していないことなどとなっています」と説明しています[1]。これらに複数当てはまる人ほど、症状がなくても定期的な眼科受診の優先度は高くなると考えられます。
受診のタイミングについて、日本眼科医会は40歳以降を目安とした定期検査を勧めています。「40歳を過ぎて何らかの目の症状のある方、また眼底検査を受ける機会のある方は、眼科専門医による年に1回程度の眼底の定期検査を、是非とも受けることをお勧めします」としており、40歳以上では約20人に1人という高い頻度で緑内障があることも踏まえ、年1回程度の眼底検査を目安とする考え方が示されています[4]。同会の別の報告でも「緑内障の早期発見のためにも、40歳を過ぎたら定期的な目の検診をお勧めします」と重ねて述べられています[3]。
危険因子について、もう少し具体的にイメージを補っておきます。日本眼科医会の報告によれば「高齢」は、年齢が上がるにつれて緑内障の頻度そのものが増えていくという関係を指しています[3]。日本眼科学会が挙げる「家族に緑内障の方がいること」は、血縁者に緑内障の診断歴がある場合、自分にも同じ体質的な要因が受け継がれている可能性があるという意味合いで挙げられています。「角膜が薄いこと」は、角膜の厚みが眼圧測定の値そのものに影響しうる要因として、また視神経が障害されやすい体質と関連する要因として整理されています[1]。近視の程度が強いことも、緑内障診療の現場でしばしば注意が向けられる背景の一つですが、今回参照した資料には近視の強さと発症頻度を具体的な数値で結びつけた記載は見当たりませんでした。強い近視がある方は、その点も踏まえて眼科医に相談するとよいでしょう。同学会が挙げる「血圧が低いこと・糖尿病」は、視神経への血流という全身の状態に関わる要因とされています[1]。糖尿病がある方はもともと定期的な眼底検査(糖尿病網膜症のチェック)を受ける機会が多いため、その際に緑内障のサインも一緒に確認してもらえるよう、受診の際に伝えておくとよいでしょう。「治療を継続していないこと」は、すでに緑内障と診断され通院・点眼を指示されている方が対象で、自己判断で通院や点眼をやめてしまうと、それ自体が危険因子になるという意味です。これらの危険因子は単独で緑内障の有無を決めるものではなく、複数当てはまる場合に眼科医が検査の間隔や精密検査の必要性を判断する際の参考情報として使われます。逆に言えば、目立った危険因子が今のところ見当たらない方であっても、日本眼科学会が報告する40歳以上の約20人に1人という高い頻度を踏まえると、油断してよいわけではありません[1]。危険因子の有無にかかわらず、40歳を過ぎたら年に1回程度の眼底検査を受けるという日本眼科医会の基本的な考え方は、危険因子が少ない方にも当てはまります[4]。
| 該当する危険因子 | 内容 |
|---|---|
| 眼圧が高いこと | 眼圧の数値が正常上限に近い、または超えている状態 |
| 高齢 | 年齢が上がるほど緑内障の頻度は高くなる |
| 家族に緑内障の方がいること | 血縁者に緑内障の診断歴がある場合 |
| 角膜が薄いこと | 眼圧測定の値にも影響しうる要因とされる |
| 血圧が低いこと・糖尿病 | 血流など全身状態に関わる要因とされる |
| 治療を継続していないこと | すでに診断されている場合、治療の中断は進行につながりうる |
出典:日本眼科学会「緑内障」(緑内障診療ガイドラインを引用)[1]
緑内障の診断方法のうち、視野検査の1回あたりの所要時間や、隅角検査そのものの痛みの有無を数値・度合いとして示した記載は、今回参照した資料には見当たりませんでした。検査時間や痛みの感じ方には個人差があるため、受診先の眼科で直接確認することをおすすめします。近視の強さと緑内障の発症頻度を具体的な数値で結びつけた記載についても、今回参照した資料には見当たりませんでした。また、緑内障の薬物治療・レーザー治療・手術治療といった治療法の詳細、費用や保険適用の具体的な条件についても、本記事では診断方法に絞っているため扱っていません。治療や費用については別記事・受診先の窓口でご確認ください。
まとめ――緑内障の診断方法、5つの検査をどう理解しておけばよいか
ここまで見てきたように、緑内障の診断方法は「眼圧検査だけ」でも「視野検査だけ」でも成り立ちません。眼圧検査は目の圧力という一つの手がかりを、眼底検査とOCTは視神経乳頭や網膜の構造的な変化を、視野検査は見える範囲という機能的な変化を、隅角検査は房水の出口の形とタイプ分類を、それぞれ別の角度から確かめています。日本人に多い正常眼圧緑内障は、この中でも特に眼圧検査だけに頼ることの危うさを象徴する存在です[3]。そして緑内障診療ガイドラインを紹介する記事によれば、視野の欠けは中心視野が保たれやすいことと両目で補い合うことから自分では気づきにくく、装置による視野検査こそが客観的な証拠になります[2]。日本眼科医会は40歳を過ぎたら年に1回程度の眼底検査を目安とするよう勧めており[4]、家族歴や糖尿病などの危険因子がある方はより積極的に眼科での精密検査を検討し、急に目が痛む・頭痛や吐き気を伴うといった急性緑内障発作のサインが出たときは、通常の緑内障とは切り離して緊急受診を優先してください。
よくある質問
緑内障の診断方法では具体的に何がわかるのですか?
OCT検査とはどんな検査ですか。眼底検査と何が違いますか?
隅角検査は痛いですか?何のために行うのですか?
急性緑内障発作とは何ですか。普通の緑内障とどう違いますか?
視野検査で「マリオット盲点」が見つかりました。心配すべきですか?
緑内障と診断された場合、隅角のタイプを知っておく必要はありますか?
職場健診で「眼底に所見あり」と言われました。緑内障確定ですか?
近視が強いと緑内障になりやすいと聞きました。本当ですか?
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更新日:2026年7月21日。本記事の内容に誤りや古い情報などお気づきの点がございましたら、下記のお問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。
参考文献
- 日本眼科学会「緑内障」目の病気について 2025年 https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=35
- 木内良明「診療ガイドライン at a glance:緑内障診療ガイドライン第5版」日本内科学会雑誌111巻12号 p.2431-2436 2022年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/12/111_2431/_pdf/-char/ja
- 富所敦男「よくわかる緑内障―診断と治療―」公益社団法人日本眼科医会 2014年 https://www.gankaikai.or.jp/health/49/index.html
- 近藤峰生「40歳を過ぎたら受けよう!!眼底検査 目の健康を守るために」公益社団法人日本眼科医会 2024年 https://www.gankaikai.or.jp/health/63/index.html
- 公益社団法人日本眼科医会「緑内障といわれた方へ―日常生活と心構え―」2020年 https://www.gankaikai.or.jp/health/56/index.html
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