コンテンツへスキップ
お問い合わせ
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ホーム › 病気ライブラリ › 健康 › 緑内障
JHO 病気ペディア

緑内障

最終更新: 2026年7月 | 編集: JHO編集部(AI技術活用・公的資料に基づく)

スポンサーリンク
この症状、放置して大丈夫?次に確認すべきこと 関連記事
この記事では答えていない疑問です — 読み終えたら、続けてご確認ください
失明のリスクは怖くない? 今週37人が確認 記事へ 失明する確率はどのくらい? 記事へ 失明の確率はどのくらい? 記事へ 眼圧はいくつなら大丈夫? 記事へ

✦ 結論から言うと

緑内障は、視神経が障害されて視野の一部が徐々に欠けていく病気で、日本眼科学会は「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」と定義しています[1]。日本緑内障学会が岐阜県多治見市で行った大規模疫学調査(多治見スタディ)では、40歳以上の5.0%が緑内障と判定されており、20人に1人という頻度の高さです[3]。最も重要な事実は、いったん失われた視野は治療をしても元には戻らないということ、そして日本人の緑内障の多くは眼圧が正常範囲内でも起こる「正常眼圧緑内障」であり、自覚症状がほとんど出ないまま進行するということです[3]。この「気づきにくさ」こそが、緑内障が日本における視覚障害の原因の第1位を占め続けている最大の理由です[4]。緑内障の全体像は緑内障のすべて:原因から最新治療、日本の失明原因1位の真実まででも詳しく解説しています。

原因 房水(眼を満たす水)の排出が悪くなることによる眼圧の上昇、加齢、近視、家族歴などが視神経を障害する[1]
主な症状 初期はほぼ無自覚。進行すると視野の一部が欠け、末期になるまで自覚しにくい[2]
受診の目安 40歳を過ぎたら年1回の眼科検診。急激な目の痛み・頭痛・吐き気があれば救急受診[1]

緑内障とは?原因と視野が欠ける仕組み

目の中では、網膜の視細胞が受け取った光の情報が双極細胞を経て神経節細胞に伝わり、その軸索が束になって視神経となり、脳へと情報を送っています[2]。緑内障は、この神経節細胞とその軸索が何らかの理由で徐々に障害され、対応する視野の一部が欠けていく疾患です[2]。日本眼科学会の解説では、眼圧の上昇が視神経を圧迫・障害する主要な要因のひとつとされていますが、同時に「眼圧値は治療の評価に有用であるが、小児緑内障以外の病型においては診断に眼圧値が使われることはない」と、日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版は明記しています[2]。つまり、眼圧が正常範囲であっても緑内障は起こり得るというのが、現在の医学的な理解です。

危険因子としては、眼圧の上昇に加えて、加齢、角膜の薄さ、緑内障の家族歴、糖尿病、低血圧などが挙げられています[1]。特に40歳を超えると有病率が上がるため、日本眼科学会は40歳以降の定期的な眼科受診を呼びかけています[1]。神経節細胞は一度失われると再生しないため、緑内障によって欠けた視野は、どれほど治療を続けても元の状態には戻りません[2]。この不可逆性こそが、緑内障診療の目標が「治すこと」ではなく「これ以上進行させないこと」に置かれている理由です。

神経節細胞から脳へ視覚情報を伝える視神経は、目の奥の視神経乳頭という一点に、網膜全体からの神経線維が束になって集まっています。日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版は、眼底所見(視神経乳頭の形の変化)と視野検査結果の両方を確認して緑内障と診断するとしており[2]、視神経乳頭の構造的な変化と、視野という機能的な変化の両方を追いかけることが診断・経過観察の基本になります。前述のとおり、緑内障の進行は緩徐であり、末期になるまで自覚に乏しいことが多いため[2]、本人の自覚だけに頼らず、検査によって客観的に構造と機能の両面を確認し続けることが、進行を早期に捉えるうえで欠かせません。


緑内障の病型分類:開放隅角と閉塞隅角はまったく違う病気として考える

緑内障は一つの病気ではなく、房水の流れが妨げられる場所や原因によっていくつかの病型に分かれます。日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版は、緑内障を大きく「原発開放隅角緑内障」「原発閉塞隅角緑内障」「続発緑内障」「小児緑内障(発達緑内障)」に分類しています[2]。このうち原発開放隅角緑内障と原発閉塞隅角緑内障は、隅角(房水の出口)の構造がまったく異なり、進み方も対応の緊急度も別物であるため、この2つを混同しないことが極めて重要です。

緑内障の主な病型と多治見スタディにおける有病率(40歳以上)
病型 房水の流れの特徴 有病率(男女計) 進行の速さ
原発開放隅角緑内障(広義) 隅角は開いているが、排出路(線維柱帯)の目詰まりで眼圧が上がる、または眼圧が正常でも神経が障害される 3.9%(3.2-4.6)[3] 数年〜数十年かけて緩徐に進行
 うち正常眼圧緑内障 眼圧は統計的な正常上限(21mmHg)以下だが視神経が障害される 3.6%(2.9-4.3)[3] 緩徐(自覚症状はさらに乏しい)
原発閉塞隅角緑内障 隅角そのものが狭くなる、または閉じることで房水がせき止められる 0.6%(0.4-0.9)[3] 慢性型は緩徐、急性発作は数時間〜数日で急速に悪化
続発緑内障 ぶどう膜炎・外傷・ステロイド使用など他の病気や治療が原因で起こる 個別の原疾患の頻度に依存(統計は原疾患ごと) 原疾患による
小児緑内障(発達緑内障) 房水の排出路が生まれつき未発達 まれ(小児期に発症) 早期に進行しうる

出典:日本緑内障学会「多治見スタディ」疫学調査[3]/木内良明「緑内障診療ガイドライン第5版」日本内科学会雑誌111巻12号(2022年)[2]

見分けるカギ:多治見スタディの数値が示すとおり、日本人の緑内障の実に7割前後は「開放隅角+正常眼圧」型であり、自覚症状がないまま静かに進行します。一方で原発閉塞隅角緑内障は頻度こそ低いものの、急性発作を起こすと数時間〜数日という短時間で視野・視力が急速に失われる眼科救急疾患であり[3]、対応は「経過観察」ではなく「即受診」です。この2つを同じ「緑内障」という言葉でひとくくりにして考えることが、最も危険な誤解です。

病型ごとに対応が異なるという事実は、緑内障という診断名を聞いたときに抱く不安の大きさにも関わってきます。「緑内障=失明する怖い病気」というイメージが先行しがちですが、実際には診断された人の多くが、進行の緩やかな開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障であり、定期的な通院と点眼の継続によって長期にわたり視野を維持できているケースが大多数です。急性発作のような劇的な症状を伴わないタイプであっても軽視してよいわけではなく、逆に「自覚症状がないからこそ、通院を自己判断でやめてはいけない」というのが、開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障に特有の注意点です。

原因・危険因子:なぜ日本人には正常眼圧緑内障が多いのか

多治見スタディの数値をあらためて見ると、40歳以上の緑内障有病者のうち、眼圧が正常範囲にとどまる正常眼圧緑内障が原発開放隅角緑内障(広義)3.9%のうち3.6%を占めており[3]、日本人の緑内障の大多数が「眼圧だけを見張っていては見つからないタイプ」であることを示しています。これは欧米で報告されている疫学データとは傾向が異なるとされ、日本人において正常眼圧緑内障の占める割合が特に高いことは、日本緑内障学会がこの調査を通じて明らかにしてきた重要な知見です[3]。

危険因子として日本眼科学会が挙げているのは、眼圧の上昇に加え、加齢、角膜の薄さ、緑内障の家族歴、糖尿病、低血圧などです[1]。近視が強い人は眼球の形状の変化により視神経が障害されやすいと考えられており、若いうちから近視が強い人ほど注意が必要とされています[1]。また家族に緑内障の人がいる場合は、そうでない人に比べてリスクが高いことが知られているため、家族歴がある人は年齢にかかわらず早めの眼科受診が勧められます[1]。

危険因子の中でも近視は、日本のように近視人口が多い社会で特に注意が必要とされる要因です。近視、とりわけ強度近視では眼球の奥行きが伸びて眼球壁が引き伸ばされるような形状の変化が起こり、視神経が入る部分(視神経乳頭)の構造にも影響が及ぶと考えられており、これが緑内障の発症・進行に関わる要因のひとつとされています[1]。強度近視の人は、40歳未満であっても緑内障のリスクという観点では注意が必要なグループとされ、学生・若手社会人であっても、強い近視があり緑内障の家族歴も重なる場合には、一度は眼底・視野の検査を受けておく価値があります。

糖尿病や低血圧も危険因子として挙げられていますが[1]、これらは血流や血管の状態を介して視神経への栄養供給に影響する可能性が指摘されている要因です。糖尿病がある人は、糖尿病網膜症の検査と合わせて緑内障の有無もチェックしておくことが、限られた通院回数の中で複数の眼疾患を見落とさないための効率的な方法になります。

日本人において正常眼圧緑内障が眼圧上昇型よりなぜ起こりやすいのかという厳密な機序については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。正常眼圧緑内障に的をしぼった詳しい解説はなぜ日本人に多い?正常眼圧緑内障の真実と、失明を防ぐための最新知識で取り上げています。

危険因子は単独で緑内障を引き起こすものというより、複数が重なることで発症リスクが積み上がっていく性質のものと理解されています。たとえば「40歳以上」「強度近視」「緑内障の家族歴」の3つが重なる人は、いずれも当てはまらない人に比べて注意すべき優先度が高いグループとみなされます。逆に言えば、これらの危険因子に一つも当てはまらないからといって緑内障にならないわけではなく、多治見スタディの40歳以上5.0%という数値は、危険因子の有無にかかわらず一定の割合で発症しうることを示しています[3]。危険因子はあくまで「検診の優先度を上げる目安」であり、「検診が不要になる保証」ではない点に注意が必要です。

これまでに述べた危険因子と多治見スタディの有病率データを重ね合わせると、緑内障対策の実務的な優先順位が見えてきます。第一に、40歳を超えたすべての人が対象になるということ(有病率5.0%は年齢だけで区切った集団全体の数字です[3])。第二に、強度近視・家族歴・糖尿病のいずれかがある人は、40歳未満であっても優先度を上げて考えるべきだということ。第三に、突然の激しい目の痛みという急性発作のサインだけは、年齢や危険因子の有無にかかわらず、誰にでも起こりうる緊急事態として扱う必要があるということです。この3つの視点を持っておくと、自分自身がどのタイミングで、どのような検査を受けるべきかを判断しやすくなります。

症状・自覚症状が出にくい理由

緑内障の症状は、視野の一部が見えにくくなる「視野欠損」が中心ですが、この進行は非常にゆっくりであることに加え、人には左右の目で互いの見えない部分を補い合う性質(両眼視)があるため、片方の目の視野がかなり欠けていても、もう片方の目がそれを補ってしまい、自分では気づきにくいという特徴があります[2]。日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版でも「これらのため患者の自覚症状は乏しく、不自由を自覚的に感じるころは末期緑内障である場合が多い」と明記されています[2]。

唯一の例外が原発閉塞隅角緑内障の急性発作です。この場合は房水の流れが急激にせき止められて眼圧が短時間で著しく上昇するため、目の激しい痛み、頭痛、吐き気・嘔吐、目の充血、かすみといった強い症状が突然現れます[1]。頭痛や吐き気が前面に出ることが多いため、内科や脳神経外科をまず受診してしまい、眼科での診断・治療が遅れるケースがあることも指摘されています。目の激しい痛みを伴う頭痛・吐き気は、緑内障の急性発作を疑うべき組み合わせです。失明原因1位という事実と初期症状の見つけ方については眼の健康を守れ!緑内障の兆候を知るもあわせてご覧ください。

また、開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障であっても、まったく症状が現れないわけではありません。視野が欠ける場所や範囲によっては「なんとなく物にぶつかりやすくなった」「片方の目を隠すと見え方が違う気がする」といった、はっきりしない違和感として現れることがあります。ただし、両眼を開けたままの日常生活では、こうした変化に本人が気づくことは難しく、周囲の人から指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。片目ずつ見え方を確認する習慣(片目を手で隠して見比べる)は、症状に気づくきっかけの一つにはなりえますが、これ自体は正式な検査の代わりにはならず、あくまで定期的な眼科検診が基本であることに変わりはありません。

検査・診断の流れ:眼圧・眼底・視野・OCT

緑内障の診断は、単一の検査だけでなく複数の検査結果を総合して行われます。日本眼科学会は、視力・眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、隅角検査、眼底検査、光干渉断層計(OCT)検査、視野検査を診断に用いる検査として挙げています[1]。日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版は「眼底所見と視野検査結果で緑内障と診断する」とし、眼圧値そのものは診断の決め手ではなく治療効果を評価するための指標として位置づけられると明記しています[2]。

検査 調べること 備考
眼圧検査 眼球内の圧力を測定 正常範囲内でも緑内障は否定できない[2]
眼底検査(視神経乳頭) 視神経が出入りする部分(視神経乳頭)の陥凹の形を観察 緑内障の構造的変化を直接確認する検査[2]
視野検査 見える範囲とその感度を測定 機能的な障害の広がりと程度を確認[2]
光干渉断層計(OCT) 網膜の神経線維の厚みを画像で測定 視野検査で異常が出る前の変化を捉えられることがある[1]
隅角検査 房水の出口である隅角の広さ・形を観察 開放隅角か閉塞隅角かを見分けるための検査[1]

出典:日本眼科学会「緑内障」病気の解説[1]/木内良明「緑内障診療ガイドライン第5版」日本内科学会雑誌111巻12号(2022年)[2]

これらの検査は1回受ければ終わりというものではありません。緑内障は経過とともにゆっくり変化する病気であるため、眼底写真・視野検査・OCTを一定の間隔で繰り返し受け、過去の結果と比較することで、進行しているかどうかを判断していきます。視野検査は自覚的な検査(本人が見えたときにボタンを押す方式)であるため、1回だけの結果にはばらつきが出ることがあり、複数回の検査結果を並べて傾向を見ることが、進行の有無を正しく判断するうえで重要とされています。

OCT検査は、視野検査ではまだ異常として現れない段階の神経線維の菲薄化を捉えられる場合があるとされ[1]、視野検査とOCT検査を組み合わせることで、より早期の変化を見つけやすくなります。ただし、どちらか一方の検査結果だけで緑内障の有無や進行を断定することはできず、経過を追いながら総合的に判断されるのが通常の流れです。

続発緑内障・小児緑内障:他の病気や生まれつきの要因で起こる緑内障

緑内障には、原発(原因がそれ単独で完結するタイプ)以外に、他の病気や治療がきっかけで起こる「続発緑内障」と、生まれつきの構造上の問題で起こる「小児緑内障(発達緑内障)」があります[2]。続発緑内障の代表的な原因としては、ぶどう膜炎などの炎症性疾患、目のけがなどの外傷、糖尿病網膜症に伴う血管新生、ステロイド薬の長期使用などが挙げられます。原因となっている病気や治療の管理と並行して、眼圧のコントロールが行われます。ステロイド薬は皮膚科・呼吸器科・膠原病内科など眼科以外の診療科で長期に処方されることも多いため、ステロイドを長期間使用している人は、自覚症状がなくても定期的に眼圧・眼底のチェックを受けておくことが、続発緑内障の早期発見につながります。目のけがをした後は、受傷直後に問題がなさそうに見えても、数か月〜数年後に外傷性の続発緑内障として眼圧が上昇してくることがあるため、目を強く打った経験がある人は、その後も長期的に眼科でのフォローを受けておくことが勧められます。

小児緑内障は、房水の排出路が生まれつき十分に発達していないことによって起こるまれな病型で、乳幼児期に発見されることが多く、黒目(角膜)が大きく見える、白目が充血する、まぶしがる、涙が多いといった様子が発見のきっかけになることがあります。小児緑内障は成人の緑内障と異なり眼圧値そのものが診断に用いられる数少ない病型であり[2]、早期の手術的な治療が中心となります。

保護者にとって、乳幼児期の子どもが「見えにくい」ということを言葉で伝えるのは難しいものです。目の様子(角膜の大きさ・充血・涙目・まぶしがる仕草)や、物への反応の仕方に普段と違う点があると感じたら、様子を見すぎずに小児科または眼科に相談することが、早期発見の第一歩になります。小児緑内障は頻度としてはまれですが、早期の治療介入が将来の視機能に大きく影響しうる病型であるため、「心配しすぎかもしれないが念のため見てもらう」という選択が結果的に有益になることが多い病型です。

白内障との見分け方

「緑内障」と「白内障」は名前が似ているため混同されがちですが、原因も症状の出方もまったく異なる病気です。白内障は水晶体(レンズ)が濁る病気で、視界全体がかすむ・まぶしく感じるといった症状が比較的自覚しやすく、手術によって視力の回復が期待できます。一方、緑内障は視神経の障害で、前述のとおり自覚症状が出にくく、いったん失われた視野は手術をしても戻りません[2]。

項目 緑内障 白内障
障害される部位 視神経 水晶体(レンズ)
主な自覚症状 末期まで自覚しにくい(急性発作を除く)[2] かすみ・まぶしさ・視力低下(自覚しやすい)
視力・視野の回復 失われた視野は治療しても戻らない[2] 手術により視力の改善が期待できる
治療の目的 眼圧を下げ、進行を止める(現状維持)[2] 濁った水晶体を人工レンズに交換する

見分けるカギ:「見え方が改善するかどうか」が最大の違いです。白内障の手術後に視界がクリアになったと感じるのは水晶体を交換したためであり、緑内障の治療はどれだけ効果があっても「これ以上悪くしない」ためのものである点を、混同しないよう注意が必要です。なお両方の病気を同時に持つ人も珍しくなく、その場合は白内障手術と緑内障の治療を並行して検討することになります。実際、原発閉塞隅角緑内障の治療において白内障手術(水晶体再建術)が第一選択として強く推奨されているのは[2]、白内障の治療とはまったく別の理由——水晶体を取り除くことで隅角を広げ、房水の流れを改善させるという、緑内障そのものへの治療効果を狙ったものである点も、両者の関係を理解するうえで押さえておきたいポイントです。

また、緑内障と白内障はいずれも加齢とともに頻度が上がる病気であるため、40歳以降の定期検診では、この2つを含めた複数の眼疾患を同時にチェックすることになります。片方の病名だけを聞いて安心する、あるいは不安になるのではなく、検査結果全体を眼科医と一緒に確認することが大切です。白内障そのものについて詳しく知りたい方は、当サイトの白内障の病気ライブラリもあわせてご覧ください。

経過と治療:点眼・レーザー・手術の3段階、目標は「進行を止める」こと

緑内障治療の大原則は、日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版が明記するとおり「眼圧下降がその治療の基本である」という一点にあります[2]。同ガイドラインは「緑内障は多因子性疾患と言われているが唯一有効と示された治療は眼圧下降しかない」とも述べており[2]、現時点の医学で確立している治療手段は、眼圧を下げることを通じて視神経への負担を減らし、それ以上の進行を遅らせる・止めることに尽きます。すでに失われた視野を取り戻す治療法は確立していません。

治療は段階的に進められます。第一選択は点眼薬による眼圧下降で、日本緑内障学会のガイドラインでも開放隅角緑内障に対する第一選択は薬物治療(点眼薬)とされています[2]。1剤で効果が不十分な場合は薬剤の追加が検討され、従来の知見では点眼薬による治療はおおむね3剤程度が実質的な限界とされてきました[2]。点眼薬だけでは眼圧が十分に下がらない、あるいは視野障害の進行が止まらない場合には、レーザー治療や手術治療が検討されます[2]。

原発閉塞隅角緑内障(およびその前段階である原発閉塞隅角症)に対しては、日本緑内障学会の第5版ガイドラインにおいて、水晶体を取り除く白内障手術(水晶体再建術)を第一選択として強く推奨する内容に改訂されました[2]。これは、閉塞隅角の多くが加齢に伴う水晶体の変化を原因としており、レーザー治療(レーザー虹彩切開術)が対症療法にとどまるのに対し、水晶体を取り除く手術のほうが原因そのものに働きかけるという考え方に基づいています[2]。

急性緑内障発作を起こした場合は、緊急の対応が必要です。眼圧を下げる薬物治療、高浸透圧薬の点滴に加え、レーザー虹彩切開術または白内障手術によって隅角の閉塞を解除する治療が行われます。発作を起こした目と反対側の目についても、日本緑内障学会のガイドラインは将来の発作を防ぐための治療介入を強く推奨しています[2]。

点眼薬にはいくつかの種類(作用の仕方の異なる系統)があり、1種類で効果が不十分な場合は、作用の異なる薬を組み合わせて使うことが一般的です。日本緑内障学会のガイドラインの解説では、1剤で治療を行っているが効果が不十分な場合の薬剤追加について臨床課題として取り上げられており、点眼薬を追加しても眼圧に対する効果は大きくないというデータが示されたことも報告されています[2]。このため、薬を足せば足すほど眼圧が際限なく下がるわけではなく、従来の知見では薬物治療はおおむね3剤程度が実質的な限界とされ、それでも効果が不十分な場合や副作用で継続が難しい場合には、レーザー治療や手術治療への切り替えが検討されます[2]。点眼薬の種類・正しい使い方については緑内障治療の目薬のすべてで詳しく解説しています。

レーザー治療は、房水の排出路に対してレーザーを照射し、房水の流れを改善させる治療法です。点眼薬に比べて体への負担が少なく外来で行えることが多い一方、効果の持続期間には個人差があります。手術治療(線維柱帯切除術など)は、房水の新しい排出経路を人工的に作る、あるいは既存の排出路の機能を改善させる治療で、点眼・レーザーでも眼圧のコントロールが難しい場合に検討されます[2]。日本緑内障学会のガイドラインでは、点眼治療である程度眼圧が下がっているにもかかわらず視野障害が進行する症例に対しても、手術を行うことが弱く推奨されるとされています[2]。

手術のタイミングについても、日本緑内障学会のガイドラインの解説では明確な結論が示されていない臨床課題として扱われています。手術に踏み切るタイミングについては推奨が明示されなかったものの、従来どおり薬物治療はおおむね3剤が限界であるという考え方が踏襲されていると報告されています[2]。また、緑内障の手術と白内障手術を同時に行うかどうかについても臨床上の課題とされており、白内障手術が視機能の改善に有用と判断される場合に同時に行うことが弱く推奨されています[2]。このように、緑内障の治療方針は「マニュアルどおりに機械的に決まる」ものではなく、患者一人ひとりの眼圧の推移、視野の進行速度、白内障の有無、生活状況などを踏まえて、眼科医が個別に判断していく性質のものです。

緑内障は治りますか、点眼薬をやめても大丈夫ですかという疑問に対して、点眼薬による眼圧下降は緑内障を根本的に治癒させるものではなく、進行を抑えるための継続的な管理であるという位置づけが、日本緑内障学会のガイドラインの一貫した立場です[2]。

受診の目安:今すぐ救急か、定期検診で様子を見てよいか

緑内障の大多数を占める開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障は、自覚症状がないまま進行するため「様子を見る」という判断そのものが難しい病気です。日本眼科学会は40歳を過ぎたら定期的な眼科検診を受けることを勧めています[1]。特に近視が強い人、緑内障の家族歴がある人、糖尿病がある人は、年齢にかかわらず早めに一度は眼底・視野の検査を受けておくことが望ましいとされています[1]。

一方で、次のような症状が急に現れた場合は、原発閉塞隅角緑内障の急性発作の可能性があり、様子を見ず直ちに眼科(または夜間・休日は救急)を受診すべき危険サインです[1]。

目安 症状・状態 対応
🔴 今すぐ受診(救急) 片目または両目の急激な激しい痛み、頭痛、吐き気・嘔吐、目の充血、視界がかすむ・虹が見えるなどが突然現れた 眼科救急を受診(急性緑内障発作の疑い)[1]
🟡 早めに受診 40歳以上で一度も眼底・視野検査を受けたことがない/近視が強い/緑内障の家族歴がある 数週間以内に眼科を受診し検査を受ける[1]
🟢 定期検診 すでに緑内障と診断され、経過観察・治療中である 指示された間隔(多くは1〜数か月ごと)で通院を継続

出典:日本眼科学会「緑内障」病気の解説[1]

急性緑内障発作は緊急性が非常に高い一方、頻度としては開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障に比べればまれです。多治見スタディでは原発閉塞隅角緑内障全体の有病率は0.6%と報告されており[3]、そのすべてが急性発作を起こすわけではありません。とはいえ、いったん発作が起これば数時間から数日という短時間で不可逆的な視野・視力の障害につながりうるため、「頻度が低い=軽視してよい」ということには決してならないという点が、この病型の特殊さです。目の激しい痛みに頭痛・吐き気が伴う場合は、まず内科や脳神経外科ではなく眼科(またはその日の救急外来)を受診先の選択肢に入れることが、診断の遅れを防ぐ鍵になります。

日本とヨーロッパのガイドライン比較:点眼薬とレーザーどちらが第一選択か

開放隅角緑内障の治療方針は、実は国・地域のガイドラインによって第一選択が異なります。日本緑内障学会の緑内障診療ガイドライン第5版の著者である木内良明氏は、日本内科学会雑誌に寄せた解説の中で「開放隅角緑内障に対してはわが国では点眼薬による治療が第1選択とされているが、ヨーロッパ緑内障診療ガイドラインではレーザー治療が第1選択として推奨されている」と、両者の違いを明確に指摘しています[2]。

項目 日本(日本緑内障学会 第5版・2022年) ヨーロッパ(European Glaucoma Society・2020年)
開放隅角緑内障の第一選択 点眼薬による薬物治療[2] レーザー治療(選択的レーザー線維柱帯形成術)[2]
閉塞隅角緑内障の第一選択 白内障手術(水晶体再建術)を強く推奨[2] レーザー治療が中心(地域差あり)[2]

木内氏はこの差の背景について「国によって保険制度をはじめとする社会保障制度が異なること、国の発達度が医師たちの経験の違いに影響しているためかもしれない」と考察しており[2]、どちらが絶対的に正しいと結論づけるものではないと述べています。同じ研究論文を根拠にしていても、医療制度や臨床経験の蓄積の違いによって最終的な推奨が変わりうるというのは、ガイドラインを読むうえで知っておく価値のある事実です。

この違いが生まれた背景には、レーザー治療と点眼治療のどちらを最初に行うべきかを比較した国際的な臨床研究の存在があります。木内氏の解説によれば、薬物治療とレーザー治療の有用性そのものに大きな差はないものの、点眼薬による治療から始めた場合は追加治療として手術が必要になる比率が高く、また調査期間中の医療コストはレーザー治療のほうが少なかったという結果が国際的な医学誌に報告されています[2]。ヨーロッパのガイドラインがレーザー治療を第一選択に位置づけた背景には、こうしたデータの評価の違いがあると考えられます。一方で、日本では点眼薬による治療の実績と保険診療上の位置づけが確立していることもあり、点眼薬が第一選択として維持されています。閉塞隅角緑内障についても、日本では水晶体を取り除く白内障手術が強く推奨される方向に改訂された一方、アジア太平洋地域のガイドラインではレーザー虹彩切開術が中心に据えられてきた経緯があり、同じ「閉塞隅角緑内障」という診断名であっても、国・地域によって標準治療の重心が異なることは、この病気について調べる際に知っておくべき視点です。

医療費の目安

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16


視覚障害の原因としての緑内障:全国調査が示す数字の変化

緑内障が「失明原因の第1位」と言われる根拠は、身体障害者手帳(視覚障害)の新規交付データをもとにした全国調査にあります。岡山大学が発表したプレスリリースによれば、2019年度に実施された視覚障害の原因疾患に関する全国調査(新規に視覚障害認定を受けた18歳以上を対象、全国161の福祉事務所から回答)で、原因疾患の第1位は緑内障、第2位は網膜色素変性、第3位は糖尿病網膜症であったと報告されています[4]。

特に注目すべきは、この調査で緑内障の占める割合が過去の調査時点の28.6%から40.7%へと急増していたことです[4]。この急増の背景には、2018年に23年ぶりに実施された視覚障害の認定基準の改正が影響したことが指摘されています[4]。つまり、この数字の変化は「緑内障そのものが急に増えた」ことだけを意味するのではなく、視覚障害の認定基準という物差しが変わったことも影響しているという点は、統計を読むときに押さえておくべき注意点です。とはいえ、基準改正の影響を差し引いても、緑内障が長年にわたり視覚障害原因の上位を占め続けてきたことに変わりはなく、日本眼科学会も緑内障を日本人の後天失明原因の第1位と位置づけています[1]。

この調査結果を正しく読むうえでもう一つ大切なのは、「視覚障害の原因の第1位」という数字は、あくまで身体障害者手帳の交付という一定の基準を満たした人の集団の中での割合であるという点です。緑内障と診断された人すべてがこの重い視覚障害に至るわけではなく、日本眼科学会も、早期に発見し治療を継続すれば進行を防げる可能性が高いことを述べています。「緑内障=いずれ手帳が必要になるほど失明する」という短絡的な理解ではなく、「治療を継続しなかった場合に、視覚障害の原因の中で最も多くを占めてしまう病気」という文脈で捉えることが、この統計の正確な読み方です。

日常生活・点眼の続け方(アドヒアランス)

緑内障の治療の多くは、毎日の点眼を何年にもわたって続けることが土台になります。しかし自覚症状がほとんどないぶん、「効果を実感できないまま続ける」ことになりやすく、途中で点眼をやめてしまう、忘れてしまうといったことが起こりがちです。日本緑内障学会のガイドラインが示すように、緑内障治療で確立している唯一有効な手段は眼圧下降であり[2]、点眼を自己判断で中断すると、その間も視神経の障害は静かに進行してしまいます。

日常生活で特別な制限が必要になることは少ないとされていますが、点眼薬の中には全身状態に影響するものもあるため、他の病気で治療中の薬がある場合や、喘息・心臓の持病がある場合は、使用している点眼薬の種類を主治医・眼科医の双方に伝えておくことが大切です。また、毎日決まった時間に点眼する習慣をつける、通院日をカレンダーやスマートフォンに登録しておく、といった工夫が継続の助けになります。

点眼を継続することによる具体的な失明予防効果(何年で何%のリスク低下といった数値)については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。

緑内障と付き合いながらの暮らし方

緑内障と診断されても、多くの場合は初期・中期の段階であれば仕事や日常生活に大きな制限はありません。ただし、視野の欠け方によっては見え方に癖が出ることがあるため、車の運転をする人は、視野の状態によって運転免許の適性についての注意事項がないか、通院先の眼科医に相談しておくと安心です。日本の道路交通法上の視野に関する基準の具体的な運用は個々の病状によって異なるため、詳細な可否については主治医の判断に従うことが基本です。

スポーツについても、多くの場合は特別な制限は必要ないとされていますが、頭を強く揺さぶる、あるいは目に強い衝撃が加わる可能性のある競技については、事前に眼科医に相談しておくことが勧められます。仕事面では、暗い場所での作業や細かい文字を長時間見続ける作業が多い職種の場合、見え方の変化に応じて照明や作業環境を調整することが、無理なく仕事を続けるための工夫になります。食事・栄養面での工夫は緑内障患者のための食事・栄養管理完全ガイドで取り上げています。

周囲の家族や職場に病気のことをどこまで伝えるかは、人によって考え方が分かれるところです。ただし、視野の一部が欠けている状態は、初対面の人には分かりづらいものです。特に、横や下から不意に声をかけられて気づかない、物を渡されても片方からだと見落とすといった場面が生活の中で出てくる場合は、家族や職場の身近な人にひとこと伝えておくことで、誤解や事故を防ぎやすくなります。「見えていないのに見ているふりをしてしまう」ことを避け、見えにくい方向がある場合は率直に伝える習慣を持つことが、周囲との関係を保ちながら生活を続けるうえでの実用的な工夫です。同居する家族がいる場合は、点眼薬の残量や通院予定を一緒に確認してもらうだけでも、飲み忘れならぬ「差し忘れ」を防ぐ助けになります。

家族が緑内障と診断された場合、自分自身も家族歴という危険因子に該当することになります。多治見スタディが示す40歳以上5.0%という有病率の高さを踏まえると[3]、家族に緑内障の人がいる場合は、年齢を問わず一度眼科で検査を受けておくことが勧められます。

治療費や通院にかかる負担についても、生活の工夫の一部として考えておくとよい点です。緑内障の治療は長期間にわたることが多いため、高額療養費制度など公的な医療費支援制度の対象になる場合があります。個々の制度の適用条件や自己負担額は収入や医療機関によって異なるため、具体的な金額は医療費の目安に関する項目や、通院先の医療機関の窓口・医療ソーシャルワーカーに確認することが確実です。手術費用の内訳・種類については緑内障手術のすべて:費用・種類・リスクを徹底解説で詳しく解説しています。

視野障害が進行し、日常生活に支障が出る程度まで進んでしまった場合には、身体障害者手帳の交付対象となることがあります。手帳の交付を受けると、等級に応じて医療費の助成や税制上の優遇、補装具・日常生活用具の支給といった支援制度を利用できる場合があります。手帳の対象になるかどうかの判定基準や具体的な等級については、視野の状態を診察した眼科医が判断するものであり、対象になりうると考えられる場合は、通院先の眼科医に相談することが最初のステップになります。手帳交付の是非にかかわらず、視野障害が進んだ段階では、拡大読書器や音声読み上げ機能、白杖の使い方などを学べるロービジョンケアの窓口を紹介してもらえる場合があります。見え方が変化した後の生活を組み立て直すための専門的な支援があることも、覚えておいて損はありません。こうした支援制度は、通院先の眼科だけでなく、自治体の福祉窓口や地域の視覚障害者支援センターを通じて情報を得られる場合もあるため、一つの窓口だけで諦めず、複数の相談先を当たってみることも選択肢の一つです。

いつ眼科を受診・検診すべきか

緑内障は自覚症状が出るころには進行していることが多いため、症状の有無にかかわらず年齢を目安に検診を受けることが唯一の早期発見の手段です。日本眼科学会は40歳以上を対象とした定期的な眼科検診を勧めており[1]、多治見スタディでも40歳以上を対象に有病率が調査されています[3]。職場や自治体の健康診断に眼底検査の項目がある場合は積極的に受け、異常を指摘されたら自覚症状がなくても眼科を受診することが勧められます。

すでに緑内障と診断されている場合は、症状の進行がなくても、医師が指示する間隔での通院・検査を継続することが、視野をこれ以上失わないための最も確実な方法です。

「忙しくて眼科に行く時間がない」「症状がないから大丈夫だろう」という自己判断が、緑内障においては最もリスクの高い考え方です。日本緑内障学会のガイドラインが繰り返し強調するように、緑内障によって失われた視野は元に戻らず[2]、しかも本人が自覚するころには進行が進んでいることが多いという特性上、「症状が出てから受診する」という一般的な病気への向き合い方が通用しません。年に一度の健康診断や人間ドックのタイミングに合わせて眼科検診の予定を組み込んでおくなど、忘れずに継続できる仕組みを作っておくことが、実質的に最も有効な対策になります。

健診で「要精密検査」「眼底検査で異常あり」と指摘された場合は、症状の有無にかかわらず、できるだけ早く眼科を受診することが勧められます。指摘を受けたにもかかわらず受診を先延ばしにしてしまうと、次に自覚症状で気づいたときには、すでにかなり進行しているという事態になりかねません。

受診先を選ぶ際には、緑内障の診療実績がある眼科であれば基本的にどこでも初診・定期検査に対応できますが、レーザー治療や手術が必要になった場合には、設備の整った専門外来や病院への紹介となることが一般的です。かかりつけの眼科を決めておき、必要に応じて専門的な設備のある医療機関と連携してもらう形が、長期にわたる通院を無理なく続けるうえで現実的な選択肢になります。引っ越しや転勤などで通院先を変える場合は、それまでの眼圧・視野検査・OCTの記録(データ)を新しい受診先に引き継いでもらうことで、経過の連続性を保つことができます。過去の検査結果がないと、進行しているかどうかの判断に時間がかかってしまうため、お薬手帳と同様に、緑内障の検査記録も自分で把握しておく・コピーをもらっておくといった工夫が役立ちます。処方されている点眼薬の名称と本数、直近の眼圧の数値、視野検査を受けた時期といった基本情報を自分でも把握しておくと、初めての医療機関を受診する際や、災害時に普段の眼科に通えない状況になった際にも、スムーズに同じ治療を継続しやすくなります。

よくある質問(FAQ)

緑内障は治りますか?
現在の医学では、緑内障によっていったん失われた視野を元に戻す治療法は確立していません。治療の目的は、眼圧を下げることでこれ以上の進行を止める、あるいは遅らせることにあります[2]。「治す」ではなく「これ以上悪くしない」ことが治療のゴールです。
眼圧が正常なのに緑内障と言われました。なぜですか?
日本人の緑内障で最も多いのが、眼圧が統計的な正常範囲内であっても視神経が障害される「正常眼圧緑内障」です。多治見スタディでは、開放隅角緑内障(広義)3.9%のうち3.6%が正常眼圧緑内障でした[3]。診断は眼圧値だけでなく、眼底の視神経乳頭の形や視野検査の結果を総合して行われます[2]。
緑内障は自覚症状がありますか?
開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障は、末期に近づくまでほとんど自覚症状がないのが特徴です[2]。一方、原発閉塞隅角緑内障の急性発作では、激しい目の痛み・頭痛・吐き気・嘔吐といった強い症状が突然現れます[1]。
緑内障は何歳から気をつければいいですか?
日本眼科学会は40歳以降の定期的な眼科検診を勧めています[1]。多治見スタディでも40歳以上の5.0%が緑内障と判定されており[3]、年齢とともに有病率が上がるため、40歳を過ぎたら症状がなくても一度は検査を受けることが望ましいとされています。
緑内障は失明する病気ですか?
全国調査では、緑内障は日本における視覚障害の原因疾患の第1位であり、その割合は2019年度調査で40.7%に達しています[4]。ただし、早期に発見し治療を継続すれば、多くの場合は生活に支障をきたすほどの重い視覚障害には至らないとされており、早期発見と治療の継続が最も重要です。
点眼薬はずっと続けないといけませんか?
はい。日本緑内障学会のガイドラインでも眼圧下降が緑内障治療の唯一有効な手段とされており[2]、点眼を中断するとその間も視神経の障害が進行しうるため、自己判断で中止せず継続することが基本です。
緑内障の治療は点眼薬だけで足りますか?
多くの場合、まず点眼薬(1剤、効果不十分なら追加)で治療を開始します[2]。それでも眼圧が下がらない、あるいは視野障害が進行する場合には、レーザー治療や手術治療が検討されます[2]。
急性緑内障発作とはどんな状態ですか?
房水の流れが急激にせき止められ、眼圧が短時間で著しく上昇する状態です。目の激しい痛み、頭痛、吐き気・嘔吐、視界のかすみなどが突然現れる眼科の救急疾患であり、様子を見ず直ちに受診が必要です[1]。
緑内障の手術をすれば視力は戻りますか?
緑内障の手術(レーザー治療・観血的手術を含む)は、眼圧を下げて進行を抑えることを目的としており、すでに失われた視野や視力を回復させるものではありません[2]。
片目だけ緑内障と言われました。もう片方の目は大丈夫ですか?
緑内障は両目に起こることが多い病気であり、片目に診断がついた場合はもう片方の目についても同様のリスクがあるとして検査・経過観察の対象になります。原発閉塞隅角緑内障の急性発作を起こした場合、日本緑内障学会のガイドラインは反対側の目への予防的な治療介入を強く推奨しています[2]。
白内障と緑内障は同じ病気ですか?
いいえ、まったく別の病気です。白内障は水晶体が濁る病気で手術により視力の改善が期待できますが、緑内障は視神経の障害で、治療の目的は進行を止めることにあり、失われた視野・視力の回復は期待できません[2]。
健康診断で緑内障の疑いと言われました。何をすればいいですか?
自覚症状がなくても、できるだけ早く眼科を受診し、眼圧検査・眼底検査(視神経乳頭)・視野検査・OCT検査などを受けて精密検査を行うことが勧められます[1]。診断が確定すれば、早期に治療を開始することで進行を抑えられる可能性が高まります。
緑内障の薬(点眼薬)に副作用はありますか?
個々の点眼薬の副作用の種類・頻度については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。使用中に気になる症状があれば、自己判断で中止せず処方した眼科医に相談してください。
続発緑内障とはどういう緑内障ですか?
ぶどう膜炎などの炎症性疾患、目のけがなどの外傷、ステロイド薬の長期使用といった、他の病気や治療がきっかけで起こる緑内障です[2]。原因となっている病気の管理と並行して眼圧のコントロールが行われます。
子どもも緑内障になりますか?
まれですが、房水の排出路が生まれつき十分に発達していないことで起こる「小児緑内障(発達緑内障)」があります[2]。黒目が大きく見える、まぶしがる、涙が多いといった様子が発見のきっかけになることがあります。
緑内障の点眼薬は何種類まで使えますか?
1剤で効果が不十分な場合は作用の異なる薬を追加しますが、従来の知見では点眼薬による治療はおおむね3剤程度が実質的な限界とされ、それでも眼圧が下がらない場合はレーザー治療や手術治療への切り替えが検討されます[2]。
緑内障で運転免許に影響はありますか?
視野の欠け方によっては見え方に影響が出ることがあるため、運転をする人は視野の状態について通院先の眼科医に相談しておくことが勧められます。具体的な可否は個々の病状によって異なるため、主治医の判断に従うことが基本です。
日本とヨーロッパで緑内障の治療方針は違いますか?
はい。開放隅角緑内障の第一選択について、日本緑内障学会のガイドラインでは点眼薬による薬物治療とされていますが、ヨーロッパのガイドラインではレーザー治療が第一選択として推奨されており、明確な違いがあります[2]。

緑内障に関する記事一覧

記事一覧 15件

基礎知識・原因 1

検査・数値 1

治療・薬 8

合併症・リスク 3

その他 2


正常眼圧緑内障がなぜ日本人において特に高頻度なのかという生物学的な機序、点眼アドヒアランスと長期的な視野予後との量的な関係については、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。

参考文献

  1. 日本眼科学会「緑内障|日本眼科学会による病気の解説」nichigan.or.jp/public/disease
  2. 木内良明「緑内障診療ガイドライン 第5版」日本内科学会雑誌 111巻12号 2431-2436頁(2022年)jstage.jst.go.jp/naika/111/12
  3. 日本緑内障学会「多治見スタディ(緑内障疫学調査)」ryokunaisho.jp/general/ekigaku/tajimi
  4. 岡山大学「視覚障害の原因疾患の全国調査:第1位の緑内障の割合が40%超」プレスリリース(2019年度調査結果)okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1082