若者の聴力低下:見過ごせない危機!
耳鼻咽喉科疾患

若者の聴力低下:見過ごせない危機!

はじめに

近年、若い世代の間でも聴力の低下(聞こえにくさ)が増えてきていると報告されています。以前は加齢によって進行するというイメージが強かった難聴ですが、現在は生活習慣の変化や都市部の騒音環境など、さまざまな要因が重なり合って若年層での難聴リスクが高まっていると考えられています。本記事では、普段の生活で見落とされがちな聴力への悪影響、また耳の病気や体調不良などによる聞こえのトラブルについて詳しく解説し、原因や改善策をご紹介します。

免責事項

当サイトの情報は、Hello Bacsi ベトナム版を基に編集されたものであり、一般的な情報提供を目的としています。本情報は医療専門家のアドバイスに代わるものではなく、参考としてご利用ください。詳しい内容や個別の症状については、必ず医師にご相談ください。

一見、聴力低下と無縁のように思える若い世代でも、実際には大音量の音楽、喫煙、過度な飲酒、あるいは耳かきのしすぎなど、身近な習慣が聴力にダメージを与えている場合があります。また、腎臓や血圧、あるいは耳の病気が潜在的に影響しているケースも珍しくありません。本記事では、こうしたリスクを総合的に理解することで、早期に対策を講じ、日常生活の中で聴力を守るためのヒントを得ていただけるよう、詳しく解説してまいります。

専門家への相談

本記事の内容は、耳鼻咽喉科医や聴覚専門家らの知見を基にした情報を含みますが、執筆者自身は医療従事者ではなく、あくまで参考を目的としています。なお、本記事では原文中に記載されている医療従事者として「Bác sĩ Nguyễn Thường Hanh」という方のお名前が登場します。若年層の難聴に関して専門家の意見を伺う場合には、耳鼻咽喉科などの医療機関で適切な検査や診断を受けることが重要です。少しでも聞こえに違和感を覚えたり、会話が聞き取りにくいと感じたりしたときは、早めの受診を検討してください。


若い世代で見られる6つの聴力低下を招く習慣

まずは、日常生活のなかでも特に注意が必要とされる“耳に悪影響を与える行動”について整理します。加齢による耳の老化だけではなく、下記のような習慣によって、若い年代でも聴力低下が進行する可能性があります。

1. 喫煙による聴力低下

喫煙習慣は肺や血管への悪影響だけでなく、耳の聴こえにも大きく影響することがわかっています。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素は、耳の奥にある蝸牛(かぎゅう)へ運ばれる酸素量を減少させるほか、聴神経における信号伝達を阻害し、結果的に聴覚の機能を弱めます。こうしたダメージが蓄積すると、若い人でも徐々に聴力が落ちてしまうリスクがあります。

2. 過度の飲酒が招く聞こえの悪化

アルコールを過剰に摂取すると、血中のアルコール濃度が上昇し、耳の中の有毛細胞(音を電気信号に変換する細胞)を傷つけやすくなると指摘されています。さらに、慢性的に大量の飲酒を続けていると、脳が音声情報を処理する機能に影響を及ぼす可能性もあり、「飲みすぎると耳が遠くなる」と言われる状態を助長するといわれています。

3. 通話時間の長いスマートフォンの使用

長時間の通話を毎日続けると、耳の奥に負荷がかかりやすくなります。たとえば、「1日10分程度の長電話をするだけでも耳がキーンとする」という報告もあります。さらに、一部の調査では、スマートフォン等での長電話習慣により、若年層でも難聴リスクが70%以上上がる可能性が示唆されています。

こうした点を踏まえると、通話時にはスピーカーモードを活用する、もしくはイヤホンの音量を下げるなどの工夫が重要です。

4. 綿棒の使いすぎによる耳の損傷

耳かきや綿棒を頻繁に使いすぎると、外耳道や鼓膜にキズがつきやすくなるほか、耳垢を奥に押し込んでしまう恐れもあります。やり方によっては、鼓膜や耳の有毛細胞にダメージを与え、聴力が下がる可能性があります。耳掃除をする際は、過度に奥まで綿棒を入れず、適切な方法で行うことが大切です。

5. イヤホンやヘッドホンの常用

大音量での音楽鑑賞は、耳の構造そのものを傷める大きな要因の一つです。特に近年は、通勤・通学で長時間イヤホンを使用する若者が増えています。耳の奥にある有毛細胞は、大きな音を長時間浴びることで破壊され、回復が難しいことがわかっています。自分では気づきにくいですが、少しずつ聞こえが悪くなっていく場合があるので、音量を抑え、休憩時間を設けることが重要です。

実際、2022年にBMJ Global Healthに掲載されたシステマティックレビュー(doi:10.1136/bmjgh-2022-010501)によると、若年層における大音量の音楽リスニング(特にイヤホン使用)は、世界的に見ても聴力悪化を促進する有力なリスク要因であると報告されています。この研究では、複数の国の若者を対象に調査が行われ、音量を上げすぎることで耳への負担が蓄積し、将来的な難聴のリスクを高めている可能性が示唆されました。

6. 大音量の環境(ライブ会場やクラブ、バーなど)への頻繁な出入り

音楽ライブやバーなどの大音量環境に長時間いると、聴覚への負担は想像以上に大きくなります。若いうちは「すぐに耳が元に戻る」と感じるかもしれませんが、こうした負担が積み重なることでゆっくりと聴力が下がっていく場合があります。実際に1回のイベントであっても、極端な騒音レベルだと聴覚を一時的に損なう「騒音性難聴」が起こり得ます。


病気や体調による聴力低下の要因

次に、若年層でも発症しうる病気や全身状態が原因となって起こる聴力低下についてまとめます。生活習慣だけではなく、以下のような健康状態が聴覚に影響する場合も少なくありません。

  • 聴神経腫瘍(聴神経鞘腫)
    聴神経の周辺に腫瘍が生じると、片側の聴力が徐々に低下することがあります。腫瘍の大きさや位置によっては、耳鳴りやバランス障害を伴う場合もあります。
  • 鼓膜の損傷(鼓膜穿孔)
    耳掃除のやり方が誤っている、あるいは強い外傷を受けたなどの理由で鼓膜が破れると、破れた方の耳で音が聞こえにくくなることがあります。感染症が悪化して鼓膜が破れたケースもあり、痛みや耳だれを伴うこともあるため早期の治療が必要です。
  • 中耳炎(特に急性または慢性)
    風邪や鼻炎が悪化し、耳管(鼻と中耳をつなぐ管)が詰まりやすくなることで炎症が広がり、中耳炎が起こることがあります。適切に治療・管理しないと、鼓膜や耳小骨、内耳などに影響が及び、恒常的な聴力低下を招く恐れがあります。
  • 腎機能の低下
    東洋医学の観点で「腎と耳は密接な関係にある」と言われるように、全身の血液循環や老廃物の排泄機能が弱ると、耳の健康にも影響が及ぶ可能性が指摘されています。特に腎臓の機能が著しく落ちると、慢性的に耳鳴りや難聴症状が進む場合があり、注意が必要です。
  • 血行不良や高血圧・糖尿病など
    血圧が高かったり、血行が滞りがちな状態が長く続いたりすると、耳に酸素や栄養分が届きにくくなります。また、糖尿病では細い血管が障害されやすいため、耳の神経組織にもダメージを及ぼす可能性があります。こうした全身の循環障害が聴覚へ波及し、聞こえにくさを感じるケースもあります。
  • 顎関節症や耳硬化症
    顎(あご)の関節や耳周辺の骨の変形・硬化によって、鼓膜や耳小骨の動きが妨げられることがあり、結果として聴力低下につながる場合があります。特に耳硬化症は、あぶみ骨などが固まって可動性が失われる状態で、若くても症状が現れることがあります。

若い人が気づきにくい「聴こえの低下」のサイン

以下のような兆候がある場合、すでに聴力が低下し始めている可能性があります。どれか一つでも心当たりがあるときは、早めに耳鼻咽喉科などで検査を受けると安心です。

  • 会話が「はっきり」聞こえず、相手の声が小さく感じる
  • 一度で理解できないため、会話中に「もう一度言ってください」と言う回数が増えた
  • 家族や友人から「テレビや音楽の音量が大きすぎる」と指摘される
  • インターホンや電話の着信音に気づかないことが多くなった
  • 大勢が話す場所や騒がしい場所で特に聞き取りづらいと感じる
  • 片耳だけ違和感を覚える、もしくは耳鳴りを感じる

こうしたサインを見落とすと、気づいた時には難聴が進行していることもあります。日常生活で「聞こえ方」が変わったと思う瞬間がある場合は、まず医療機関で相談してみてください。


聴こえを守るための具体的な対策

若い世代で聴力が低下すると、仕事や学業、コミュニケーションに支障をきたす可能性があります。早めに対処すれば進行を抑えられるケースも多いため、以下のような方法を取り入れてみましょう。

1. 聴覚トレーニングで脳を鍛える

耳は音をキャッチする役割を担い、脳がそれを認識・解析します。そのため、脳の聞き取り能力を高めるトレーニングが有効とされています。具体的には次のような方法があります。

  • 自然音を意識的に聴く
    人工音が少ない場所(公園、山、海辺など)で耳を澄まし、自然にあふれる音を一つひとつ捉える訓練をします。鳥のさえずり、風が木々を揺らす音、波の音などをメモし、どんな音かを頭の中で正確に描き出すように意識してください。
  • 聞いた文章を反復して再現する
    家族や友人に文章を朗読してもらい、その後に自分ができる限り正確に復唱します。初めは静かな場所で短い文から始め、慣れてきたら少し雑音のある環境で試すのもよいでしょう。脳で音声情報を処理する力が高まり、日常生活の会話や雑音下での聞き取りが改善すると期待されています。

2. 栄養素の適切な摂取

耳の健康には、血流改善や神経保護作用が期待できる栄養素をバランスよく摂ることが重要です。

  • 葉酸(フォレート)
    血液循環を促進し、耳の有毛細胞への酸素供給を助けるとされます。野菜類やレバーなどに豊富に含まれます。
  • マグネシウム
    神経細胞が正常に機能するために欠かせないミネラルです。特に蝸牛の機能をサポートし、内耳を保護すると報告されています。海藻類やナッツ類に多く含まれます。
  • 亜鉛
    内耳の有毛細胞を守る働きが期待されるほか、免疫機能を高める効果も指摘されています。牡蠣、牛肉、かぼちゃの種などが亜鉛源として知られています。
  • ビタミンB群
    代謝を助け、体内のエネルギー産生をサポートするだけでなく、耳の内リンパ液のバランスを整えたり、神経の働きを補助したりする可能性があります。豚肉、卵、乳製品などを意識的に摂るようにしましょう。

3. イヤホン・ヘッドホンの使用時間と音量を見直す

音楽や動画視聴の際は、次の点に注意して「耳を休ませる時間」をつくることが大切です。

  • 1時間使用したら5分~10分ほど耳を休める
  • 可能な限り音量を下げ、周囲の騒音を必要以上にかき消さない程度の大きさにする
  • ノイズキャンセリング機能を活用し、大音量にしなくても聞き取りやすい環境を整える

世界保健機関(WHO)は2021年に発表した「World report on hearing」の中で、イヤホン使用による音響リスクに警鐘を鳴らしています。若年層が長時間・大音量で音を聞くと、加齢性難聴が始まるより前に聴覚損傷が進む場合があると指摘しており、特にスマートフォンや音楽プレーヤーでの音量設定の重要性を強調しています。

4. 周囲の騒音対策

ライブ会場やバー、クラブなどの大音量環境に頻繁に長時間滞在していると、耳への負担はさらに大きくなります。音響専門家によれば、会場の音量は100dBを超えることも珍しくなく、人によっては聴覚保護具(耳栓など)の使用が望ましいレベルに達します。若いうちは自覚がなくても、蓄積されたダメージが後に顕在化することがありますので、可能ならば以下のような対策を行いましょう。

  • 耳栓やイヤーマフを携帯して、極端に大きな音から耳を守る
  • 会場にいる時間を少しでも短くして、外の静かな環境で耳を休ませる
  • 席の場所をスピーカーから離れたところにする

5. 早期受診と専門家への相談

もし少しでも「聞こえが悪くなった」「耳鳴りが続く」と感じたら、早めに耳鼻咽喉科医の診察を受けましょう。聴力検査(オージオグラムなど)や鼓膜の状態確認を行うことで、どの段階の難聴か、あるいは中耳炎などの病気がないかがわかります。

早期発見によって改善が期待できるケースも多く、軽度のうちに対策を講じれば大きなトラブルを避けられる可能性が高まります。場合によっては補聴器の検討が必要となることもありますが、専門家の指導を受けることで、自分に合った最適な方法が選択できます。


結論と提言

若い世代でも、大音量の音楽や生活習慣の乱れ、あるいは全身の健康状態の悪化など、さまざまな要因が重なって聴力の低下が起こり得ることがわかります。特に、喫煙や過度の飲酒、イヤホンの長時間使用といった習慣は徐々に耳を傷め、気づいたときには取り返しがつかない状態まで聴力が低下している恐れがあります。さらに、中耳炎や腎機能低下、高血圧、糖尿病などの全身的な問題も聴力に影響を及ぼします。

日常生活で注意を払いながら、気になる症状があれば早めに医療機関を受診することが大切です。また、栄養素の補給やイヤホンの音量制限、騒音環境への対策など、小さな工夫を積み重ねることで、耳を守ることができます。特に若い方ほど「まだ大丈夫」と思い込んでしまいがちですが、聴覚の不調は初期段階では自覚しにくい場合が多いので、定期的にセルフチェックを行うことも重要です。

最後に、本記事で紹介した情報はあくまで一般的な健康情報であり、医療現場での専門家の診断や治療に代わるものではありません。日常のケアや対策を心がけると同時に、必要に応じて耳鼻咽喉科医などの専門家に相談することをおすすめします。


参考文献

  • Freedman M, Lowe G, Shoman M, Chauhan VM, Puvanendran K, Chadha S, Neumann K. “Prevalence and global estimates of unsafe listening practices in adolescents and young adults: a systematic review and meta-analysis.” BMJ Global Health. 2022;7(11):e010501. doi:10.1136/bmjgh-2022-010501
  • World Health Organization. World report on hearing. 2021.
  • Chadha S, Cieza A, Krug E. “World Report on Hearing: A wake-up call for hearing care.” Bulletin of the World Health Organization. 2021;99:657-659. doi:10.2471/BLT.21.285268

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本記事は医療専門職によるアドバイスの代替を目的としたものではありません。あくまで参考情報としてご利用いただき、健康上の問題や治療の必要がある場合は必ず専門家にご相談ください。

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